JP3157055B2 - アリルアルコールの還元方法 - Google Patents

アリルアルコールの還元方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明還元方法は、各種医薬品の
製造原料として使用されるアリルアルコール型化合物の
水酸基を選択的に還元する方法に関し、各種医薬品の製
造に幅広く使用し得る。例えば、最近では15−デオキ
シプロスタグランジン誘導体が緑内障治療薬として有望
視されているが、該誘導体製造における15−ヒドロキ
シの選択的還元に特に重要である。
【0002】
【先行技術】アリルアルコール型部分構造を有する化合
物の水酸基の間接的還元方法としては、例えば、水酸基
を一旦臭素化した後NaBH4で還元する方法がプロシ
ーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サ
イエンシーズ オブ ザ ユウエスエイの第74巻、第4
007頁(1977)(Proc. Natl. Acad. Sic. USA,
74, 4007,(1977))に報告されている。また、直接的還
元方法としては、ジャーナル オブ オーガニック ケミ
ストリーの第51巻、第3038頁(1986)(J. Or
g. Chem., 51, 3038(1986))にNaBH3CN/ZnI2
を使用する方法が報告されている。しかし、該還元方法
では、アリルアルコール部分の水酸基以外にエステル基
が還元されたり、またアリル転位が起こりやすい等、選
択性が見られず、さらに収率も好ましいものではない。
またテトラヘドロン レターズの第2447頁(196
7)(Tetrahedoron Letters, 2447(1967))にはLiAl
4/AlCl3を使用する方法が報告されているが、該
方法ではエステル基も還元されることが一般に知られて
いる。
【0003】
【発明が解決すべき課題】以上のように、従来の還元方
法では、アリルアルコール部分の水酸基を還元する際に
副反応として、アリル転位がおこったり、またエステル
基等の水酸基以外の置換基も還元されてしまうため、ア
リルアルコール部分の水酸基のみを選択的に高収率で還
元するのは困難であった。また、アリル転位により生成
する異性体と目的とする不飽和化合物とは、しばしばカ
ラムクロマトによる分離が困難であるため、目的物のみ
を高収率で得るのは至難であった。よって、工業的生産
の面からも、アリルアルコール型部分構造を有する化合
物において、アリルアルコール部分の水酸基のみを、ア
リル転位を伴わずにかつ高収率で還元する方法が要望さ
れていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記状況に鑑み、本発明
者らは鋭意検討した結果、アリルアルコール型化合物の
新規な還元方法、即ち、AlX3(式中、Xはハロゲン
を表わす)の存在下、トリアルキルシランで処理するこ
とにより、アリルアルコール型化合物の水酸基を選択的
に還元する方法を見出し本発明を完成した。
【0005】本発明において、アリルアルコール型化合
物とは、式II:
【化2】 (式中、R1,R2,R3,R4はそれぞれ独立して置換基
を表わす)で示される構造を有する化合物(以下、化合
物(II)という)を意味する。該置換基は特に限定され
るものではないが、例えば水素、低級アルキル、シクロ
アルキル、シクロアルキル低級アルキル、低級アルコキ
シ、アミノ、モノ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキル
アミノ、カルボキシ、アリール、複素環、アラルキル、
アリールオキシ、アラルキルオキシ、アルカノイルオキ
シ、アロイルオキシ、アルキルチオ、アルコキシカルボ
ニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカ
ルボニル、ヒドロキシカルバモイル、カルバゾイル、カ
ルバモイルオキシ等から任意に選ばれる。好ましくは、
1、R2の少なくとも一方がR3およびR4よりも立体障
害の大きい置換基であり、その意味では、R1、R2はそ
れぞれ独立してジアルキルメチル(i-プロピル、i-ブチ
ル、s-ブチル、t-ブチル、i-ペンチル、ネオペンチル、
s-ペンチル、t-ペンチル、ネオヘキシル、i-ヘキシル、
s-ヘキシル、t-ヘキシル等)、シクロアルキル、アリー
ル、複素環などから適宜選ばれる。一方、R3、R
は、好ましくは出来るだけ立体障害の小さい置換基で
あり、少なくとも一方が水素であれば更に好ましい。
尚、上記の置換基は、更にヒドロキシ、アミノ、カルボ
キシ等の置換基を有していてもよい
【0006】本発明還元方法を適用するに当り、化合物
(II)の一例としては、式I:
【化3】 で示される化合物(以下、化合物(I)という)を挙げる
ことが出来る。尚、化合物(I)の15−デオキシ体
(但し、番号はプロスタグランジンの命名法に基づく)
である式III:
【化4】 で示される化合物は、緑内障治療薬として有用な15−
デオキシプロスタグランジンの重要な合成中間体となり
うる。また、そのヒドロキシ保護体は、特願平2−57
476号に記載されている。
【0007】本発明還元方法を更に詳しく説明すると、
本発明は、該アリルアルコール型化合物をAlX3(式
中、Xはハロゲンを表わす)の存在下、トリアルキルシ
ランで処理してアリルアルコール型化合物の水酸基を選
択的に還元する方法であるが、前記アリルアルコール型
化合物をアルコールのまま本発明方法で還元しても、ア
ルコールを一旦ハロゲン化した後に本発明方法により還
元しても良い。本発明の大きな特徴の一つとしては、ハ
ロゲン化を経由しなくても、直接還元反応に付して、高
収率で目的化合物を得ることが出来るという点を挙げる
ことが出来る。この方法を取れば余分な試薬を使用する
必要がないので、非常に好ましい。しかしながら、一旦
ハロゲン化(さらに好ましくは臭素化)をした後に、本
発明方法により還元しても高収率で目的化合物を得るこ
とが出来、勿論これも本発明が意図するところである。
【0008】ハロゲン化は、塩素化、臭素化、よう素化
のいずれでもよく、また自体公知の方法により行なわれ
る。例えば、臭素化であればトリフェニルホスフィン等
の有機リン化合物と四臭化炭素等の臭素化剤を使って行
なうことができる。AlX3(式中、Xはハロゲンを表
わす)とは、AlF3、AlCl3、AlBr3、AlI3
を意味するが、好ましくは、AlCl3である。AlX3
の使用量は、化合物(II)に対してモル比で、約1倍量
以上であるが、特に化合物(I)に対しては、約3倍量
以上が好ましい。トリアルキルシランとは、トリメチル
シラン、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、ジメ
チルエチルシラン、ジエチルメチルシラン等、Si原子
に低級アルキル基が3個置換したものを意味する。トリ
アルキルシランの使用量は、化合物(II)に対してモル
比で約1倍量以上であるが、特に化合物(I)に対して
は、約5倍量以上が好ましい。
【0009】本反応は、好ましくは溶媒中で行ない、使
用する溶媒の種類は、化合物(II)の種類によって適宜
選択されればよいが、通常、ジクロロメタン、クロロホ
ルム等のハロゲン化炭化水素類などが使用される。ま
た、一般にフリーデルクラフト反応に使用される溶媒
(ベンゼン、ニトロベンゼン、二硫化炭素等)も使用可
能である。反応温度は、化合物(II)の種類、試薬の使
用量等により異なることもあり必ずしも限定されない
が、通常、約−25〜約50℃、好ましくは約−10〜
約40℃であり、反応は数分から数時間で完結する。
【0010】また、本発明還元方法を適用する際に、
化合物(II)に、例えばヒドロキシ、アミノ、カルボキ
シ等本発明還元方法によって影響を受け易い置換基が存
在する場合には、該置換基を自体公知の適当な保護基に
より保護しておくことが望ましい。例えば、ヒドロキシ
に対しては、通常ヒドロキシ保護基として使用されるも
ののうち、本発明還元方法により脱保護されないものを
幅広く使用出来、例えばプロテクティブ・グループス・
イン・オーガニック・シンセシス(Protective groups i
n organic synthesis. T.W.Greene, John Wiley & Son
s, Inc., New York,P.10, 1981)に記載されている種々
の保護基、特にメチル、メトキシメチル、メチルチオメ
チル、2−メトキシエトキシメチル、1−エトキシエチ
ル等のアルキル(チオ)エーテル型の保護基、トリエチ
ルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ブチルジフ
ェニルシリル等のシリルエーテル型の保護基、アセチ
ル、ベンゾイル、p−メチルベンゾイル、o−メトキシ
ベンゾイル、p−フェニルベンゾイル等のアシル型の保
護基、ベンジル、p−メトキシベンジル等のアラルキル
型の保護基を意味する。但し、化合物(I)に対して
は、結晶化の点からp−フェニルベンゾイルが好適であ
る。
【0011】以下に、本明細書中における各用語につい
て説明する。低級アルキルとは、直鎖状または分枝状の
1-6アルキルを意味し、メチル、エチル、n-プロピ
ル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブ
チル、n-ペンチル、i-ペンチル、ネオペンチル、s-ペン
チル、t-ペンチル、n-ヘキシル、ネオヘキシル、i-ヘキ
シル、s-ヘキシル、t-ヘキシル等が例示され、これらは
さらにヒドロキシ、アミノ、カルボキシ等の置換基を有
しても良い。
【0012】シクロアルキルとは、C3-7シクロアルキ
ルを意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペ
ンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等が例示され
る。これらは、1個以上の置換基によって置換されてい
てもよい。該置換基としては水酸基やアセチルオキシ等
が例示され、また該シクロアルキルは、ラクトン環と縮
合していてもよい。シクロアルキル低級アルキルとは、
前記低級アルキルに前記シクロアルキルが置換したもの
を意味し、シクロプロピルメチル、シクロブチルエチ
ル、シクロヘキシルn-プロピル等が例示される。低級ア
ルコキシとは、直鎖状または分枝状のC1-6アルキルオ
キシを意味し、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-
プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-
ブトキシ、n-ペンチルオキシ、i-ペンチルオキシ、ネオ
ペンチルオキシ、s-ペンチルオキシ、t-ペンチルオキ
シ、n-ヘキシルオキシ、ネオヘキシルオキシ、i-ヘキシ
ルオキシ、s-ヘキシルオキシ、t-ヘキシルオキシ等が例
示され、これらはさらにヒドロキシ、アミノ、カルボキ
シ等の置換基を有しても良い。
【0013】モノ低級アルキルアミノとは、前記低級ア
ルキルの中の1個が窒素原子に置換したアミノ基を意味
し、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、
i-プロピルアミノ、n-ブチルアミノ、i-ブチルアミノ、
s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、n-ペンチルアミノ、
i-ペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、i-ヘキシルアミ
ノ等が例示される。ジ低級アルキルアミノとは、前記低
級アルキルの中の任意の2個が窒素原子に置換したアミ
ノ基を意味し、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、N-メ
チル-エチルアミノ、N-メチル-プロピルアミノ、N-エチ
ル-プロピルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミ
ノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、N-ペンチル
−ヘキシルアミノ等が例示される。また、アミノ基に置
換する2個の基はその窒素原子と一緒に、更に窒素、酸
素及び/又は硫黄原子を有していてもよい環状イミノ基
を形成することができ、ポリメチレンイミノ(ピロリジ
ノ、ピペリジノ、ピペラジノ等)、N-置換ピペラジノ、
モルホリノ、チオモルホリノ、ホモピペラジノ、N-置換
ホモピペラジノ等が例示される。
【0014】アリールとしては、フェニルまたは(α又
はβ)ナフチル等が例示される。これらはさらにヒドロ
キシ、アミノ、カルボキシ等の置換基を有しても良い。
複素環とは、芳香族複素環または完全飽和複素環を意味
する。芳香族複素環とは、酸素原子、硫黄原子又は窒素
原子を環内に1個以上含み、他の芳香族環と縮合してい
てもよい5〜6員の芳香族の環を意味し、ピロリル、イ
ンドリル、カルバゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、
ベンズイミダゾリル、インダゾリル、インドリジニル、
ピリジル、キノリル、イソキノリル、アクリジル、フェ
ナントリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジ
ニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナ
フチリジニル、キノキサリニル、フェナジニル、1,3,5-
トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、1,2,3-トリアジニ
ル、プリニル、プテリジニル、イソキサゾリル、ベンズ
イソキサゾリル、オキサゾリル、ベンズオキサゾリル、
1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,
2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、ベン
ズオキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチア
ゾリル、チアゾリル、ベンズチアゾリル、1,2,3-チアジ
アゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリ
ル、1,3,4-チアジアゾリル、ベンズチアジアゾリル、フ
ラニル、ベンゾフラニル、チエニル、ベンゾチエニル等
が例示される。これらはさらにヒドロキシ、アミノ、カ
ルボキシ等の置換基を有しても良い。
【0015】完全飽和複素環とは、酸素原子、硫黄原子
または窒素原子を環内に1個以上含む3〜8員の完全飽
和の複素環を意味し、アゼチジニル、ピロリジニル、ピ
ペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペラ
ジニル、オキシラニル、チエタニル等が例示される。こ
れらはさらにヒドロキシ、アミノ、カルボキシ等の置換
基を有しても良い。アラルキルとは、前記低級アルキル
に前記アリールが置換したものを意味し、ベンジル、フ
ェネチル、フェニルプロピル、(α又はβ)ナフチルメ
チルが例示される。アリールオキシとしては、フェニル
オキシまたは(α又はβ)ナフチルオキシが例示され
る。これらはさらにヒドロキシ、アミノ、カルボキシ等
の置換基を有しても良い。アラルキルオキシとしては、
フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシ等が例示さ
れる。
【0016】アルカノイルオキシとは、カルボニルオキ
シに前記低級アルキルが置換したものを意味し、例え
ば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等を意味す
る。アロイルオキシとは、ベンゾイルオキシ、ナフトイ
ルオキシ等を意味する。これらはさらにヒドロキシ、ア
ミノ、カルボキシ等の置換基を有しても良い。アルキル
チオとは、前記低級アルキルが硫黄原子に結合したもの
を意味し、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブ
チルチオ、ヘキシルチオ等が例示される。アルコキシカ
ルボニルとは、前記低級アルコキシがカルボニルに置換
したものを意味し、メトキシカルボニル、エトキシカル
ボニル、プロポキシカルボニル等が例示される。アリー
ルオキシカルボニルとしては、フェニルオキシカルボニ
ルまたは(α又はβ)ナフチルオキシカルボニルが例示
される。これらはさらにヒドロキシ、アミノ、カルボキ
シ等の置換基を有しても良い。アラルキルオキシカルボ
ニルとしては、フェネチルオキシカルボニル、フェニル
プロピルオキシカルボニル等が例示される。
【0017】以下に、本発明を更に詳細に説明するため
に参考例および実施例を示すが、これらは、何等本発明
を制限するものではない。参考例1 (1S,6R,7R)−2−オキサ−3−オキソ−6−
[(3R)−ブロモ−(1E)−オクテニル]−7−p
−フェニルベンゾイルオキシ−シス−ビシクロ[3.3.
0]オクタン(化合物2)および(1S,6R,7R)−
2−オキサ−3−オキソ−6−[1−ブロモ−(3E)
−オクテニル]−7−p−フェニルベンゾイルオキシ−
シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン(化合物3)の合
(1S,6R,7R)−2−オキサ−3−オキソ−6−
[(3S)−ヒドロキシ−(1E)−オクテニル]−7
−p−フェニルベンゾイルオキシ−シス−ビシクロ
[3.3.0]オクタン(化合物1)(750mg,1.
67mmole)をジクロロメタン(15ml)に溶か
し、0℃で四臭化炭素(665mg,2.00mmol
e)およびトリフェニルホスフィン(1.053g,4.
00mmole)を加え、同温度で30分間撹拌する。
反応混合物をシリカゲル(25g)のカラムにかけ、酢
酸エチル−ヘキサン(1:3)で溶出して粗生成物(7
00mg)を得る。これを更にローバーカラム(酢酸エ
チル−ヘキサン(1:3))で精製して、目的化合物3
(96mg,11%)および化合物2(501mg,5
9%)を溶出順に得た。なお化合物1は、ジャーナル
オブ ジ アメリカン ケミカル ソサイエティー(Journa
l of the American Chemical Society)の第24巻、第
1491頁(1971年)に記載の化合物である。
【0018】参考例2 (1S,6R,7R)−2−オキサ−3−オキソ−6−
[(1E)−オクテニル]−7−p−フェニルベンゾイ
ルオキシ−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン(化合
物4)の合成 参考例1より得られた化合物2(451mg,0.88
2mmole)をジメチルスルホキシド(9ml)に溶
かし、室温で水素化ホウ素ナトリウム(67mg,1.
765mmole)を加え2時間撹拌する。希塩酸を加
えた後、ジクロロメタンで抽出し、抽出液を水洗、乾
燥、溶媒留去して、無色油(520mg)を得る。これ
をシリカゲル(2.6g)のカラムにかけ、酢酸エチル
−ヘキサン(1:3)で溶出して無色油(330g)、
酢酸エチルで溶出して黄色油(68mg)を得る。前者
をローバーカラム(酢酸エチル−ヘキサン(1:3))
で更に精製して標品化合物4(214mg,56%)を
得た。
【0019】参考例3 (1S,6R,7R)−2−オキサ−3−オキソ−6−
[(2E)−オクテニル]−7−p−フェニルベンゾイ
ルオキシ−シス−ビシクロ[3.3.0]オクタン(化合
物5)の合成 参考例1より得られた化合物3(129mg,0.23
5mmole)をジメチルスルホキシド(2ml)に溶
かし、室温で水素化ホウ素ナトリウム(18mg,0.
47mmole)を加える。参考例2と同様に処理して
得た無色油(120mg)をシリカゲル(1.2g)の
カラムにかけ、酢酸エチル−ヘキサン(1:3)で溶出
して油(72mg)を得る。これを更にローバーカラム
(酢酸エチル−ヘキサン(1:3))で精製して、標品
化合物5(33mg,33%)を得た。
【0020】実施例1(化合物1の直接還元) トリエチルシラン(106.8ml,0.669mol
e)をジクロルメタン(360ml)に溶かし、0℃で
塩化アルミニウム(71.4g,0.5352mol
e)、次いで化合物1(60g,0.1338mol
e)のジクロロメタン(180ml)溶液を加え、同温
度で1時間撹拌する。反応混合物を冷却した希塩酸に注
ぎ、ジクロロメタンで抽出する。抽出液を水洗、乾燥
後、溶媒留去して得た残渣(84g)をシリカゲル(1
70g)カラムにかけ、ヘキサン−ジクロロメタン−酢
酸エチル=(40:10:3〜40:10:5)で溶出
して化合物4と化合物5の混合物(64g,HPLCか
ら化合物4と化合物5の割合は、97:3)を得る。こ
れを酢酸エチル−ヘキサンより再結晶して、融点74〜
76℃の化合物4(55.3g,96%)を得た。
【0021】実施例2(化合物1′の直接還元) トリエチルシラン(11ml,0.069mole)を
ジクロロメタン(37ml)に溶かし、0℃で塩化アル
ミニウム(7.36g,0.052mole)、(1S,
6R,7R)−2−オキサ−3−オキソ−6−[(3
R)−ヒドロキシ−(1E)−オクテニル]−7−p−
フェニルベンゾイルオキシ−シス−ビシクロ[3.3.
0]オクタン(化合物1′)(6.19g,0.0138
mole)のジクロロメタン(18ml)溶液を加え、
同温度で1時間撹拌する。この後、実施例1の場合と同
様に処理して、化合物4と化合物5の混合物(6.5
g,HPLCか ら化合物4と化合物5の割合は、9
6:4)を得る。これを酢酸エチル−ヘキサンより再結
晶して、融点74〜76℃の化合物4(5.53g,9
3%)を得た 。なお化合物1′は、化合物1同様、前
記文献に記載の化合物である。
【0022】実施例3(化合物1および化合物1’の等
量混合物の直接還元) トリエチルシラン(53.4ml,0.3345mol
e)をジクロロメタン(180ml)に溶かし、0℃で
塩化アルミニウム(35.67g,0.2676mol
e)、次いで化合物1と化合物1’の等量混合物(30
g,0.0669mole)のジクロロメタン(90m
l)溶液を加え、同温度で1時間撹拌する。この後、実
施例1の場合と同様に処理して、化合物4と化合物5の
混合物(38g,HPLCから化合物4と化合物5の割
合は、97:3)を得る。これを酢酸エチル−ヘキサン
より再結晶して、融点74〜76℃の化合物4(27.
33g, 95%)を得た。
【0023】実施例4(化合物1の臭素化経由による還
元) 化合物1(61.92g,0.138mole)をジクロ
ロメタン(750ml)に溶かし、−40℃でトリフェ
ニルホスフィン(76.04g,0.290mole)、
次いで四臭化炭素(48.9g,0.145mole)の
ジクロロメタン(75ml)溶液を加え、1時間撹拌す
る。容量が約半分になるまで濃縮した後、室温でトリエ
チルシラン(110ml,0.689mole)、塩化
アルミ ニウム(73.64g,0.552mole)を
加え、35〜40℃で1時間撹拌する。冷却した希塩酸
に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、水洗、乾燥後、溶媒留去
する。残渣にトルエン−ヘキサン(4:1)を加え、生
じた沈殿を濾過して除いた後、濾液をシリカゲルカラム
(600g,酢酸エチル−ヘキサン)で精製して、化合
物4と化合物5の混合物(44.94g,75.3%,
=9:1)を得る。これを酢酸エチル−ヘキサン
から再結晶して、化合物4(25g,42%)を得た。
【0024】実施例5(化合物1′の臭素化経由による
還元) 化合物1′(45mg,0.1mmole)をジクロロ
メタン(5ml)に溶かし、−20℃でトリフェニルホ
スフィン(55mg,0.21mmole)、次いで四
臭化炭素(34.8mg,0.105mmole)を加
え、室温で30分間撹拌する。次いで、トリエチルシラ
ン(80μl,0.5mmole)、塩化アルミニウム
(53.3mg,0.4mmole)を加え、室温で1時
間撹拌する。反応混合物を氷水に注ぎ、ジクロロメタン
で抽出し、水洗、乾燥後、溶媒留去する。残渣をシリカ
ゲルカラム(5g,酢酸エチル−ヘキサン)で精製し
て、化合物4と化合物5の混合物(33mg,76%)
を得た。HPLCから化合物4と化合物5の割合は、9
1:9であった。
【0025】実施例6(化合物1および化合物1′の等
量混合物の臭素化経由による還元) 化合物1および化合物1′の等量混合物(45mg,
0.1mmole)をジクロロメタン(5ml)に溶か
し、−20℃でトリフェニルホスフィン(55mg,
0.21mmole)、次いで四臭化炭素(34.8m
g,0.105mmole)を加え、室温で30分間撹
拌する。次いで、トリエチルシラン(80μl,0.5
mmole)、塩化アルミニウム(53.3mg,0.4
mmole)を加え、室温で1時間撹拌する。この後、
実施例5の場合と同様に処理して化合物4と化合物5の
混合物(33mg,76%)を得た。HPLCから化合
物4と化合物5の割合は、96:4であった。
【0026】
【発明の効果】本発明により、種々のアリルアルコール
型化合物において、例えばエステル基、エーテル基等に
影響を及ぼさずにアリル転位をほとんど生じることな
く、アリルアルコール部分の水酸基のみを選択的に高収
率で還元することが出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 阪田 輝雄 大阪府大阪市東淀川区下新庄5丁目26番 10−406号 (72)発明者 高橋 喜美男 岩手県胆沢郡金ヶ崎町西根北荒巻14−13 (72)発明者 岸 守男 京都府京都市西京区樫原蛸田町31−26 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 307/93 C07B 35/02 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 AlX3(式中、Xはハロゲンを表わ
    す)の存在下、トリアルキルシランで処理することを特
    徴とする、式II: 【化5】 (式中、R1,R2,R3,R4はそれぞれ独立して水素、
    低級アルキル、シクロアルキル、シクロアルキル低級ア
    ルキル、低級アルコキシ、アミノ、モノ低級アルキルア
    ミノ、ジ低級アルキルアミノ、カルボキシ、アリール、
    複素環、アラルキル、アリールオキシ、アラルキルオキ
    シ、アルカノイルオキシ、アロイルオキシ、アルキルチ
    オ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル
    およびアラルキルオキシカルボニルから選択される置換
    基を表わす)で示されるアリルアルコール型化合物の水
    酸基を選択的に還元する方法。
  2. 【請求項2】 該アリルアルコール型化合物の水酸基を
    ハロゲン化することなく、直接AlX3(式中、Xはハ
    ロゲンを表わす)の存在下トリアルキルシランで処理す
    る請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 該アリルアルコール型化合物の水酸基を
    一旦ハロゲン化した後、AlX3(式中、Xはハロゲン
    を表わす)の存在下トリアルキルシランで処理する請求
    項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 該ハロゲン化が臭素化である請求項3記
    載の方法。
  5. 【請求項5】 該アリルアルコール型化合物が、式I: 【化1】 で示される化合物である請求項1、2または3に記載の
    方法。
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