JP3144280B2 - エッチング加工用鉄系金属材の前処理方法 - Google Patents

エッチング加工用鉄系金属材の前処理方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鉄系金属のエッチン
グ加工によりリ−ドフレ−ムやシャドウマスクといった
電子部品等を製造する際の、加工素材とフォトレジスト
との密着性を改善するための前処理方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】エッチング加工法は金属の腐食現象を利
用した加工技術であり、現在ではプリント配線板,ブラ
ウン管のシャドウマスク,ICリ−ドフレ−ム等の如き
複雑形状品の微細加工を行う手段として欠かせない技術
となっている。
【0003】図1は、このエッチング加工工程の概要説
明図である。図1において、被エッチング材(金属板)
には、まず表面の汚染物除去に続いて、フォトレジスト
膜との密着性を高める目的での前処理が施される。次
に、被エッチング材表面にフォトレジスト膜が被覆さ
れ、更に露光用マスク原版が重ねられて紫外線の照射が
なされる。ここで、フォトレジストとしては光照射によ
り不溶性となるタイプ(ネガ型)の高分子物質が主に用
いられている。次いで、露光用マスク原版を取り外して
からフォトレジストが被覆されている材料を現像液で処
理すると、紫外線が照射されなかった部分のフォトレジ
ストが溶けて除去され、該部分の金属面が露出する。
【0004】そこで、この状態の材料を塩化第二鉄溶液
等のエッチング液(銅系材料にも鉄系材料にも適用され
る)で処理すると上述した金属の露出部分が溶解するの
で、その後に、残ったフォトレジスト膜を剥離除去する
と露光用原版と同じパタ−ンにエッチング加工された製
品が得られる。
【0005】なお、工業生産的には、上記エッチング工
程は図2で示したタイプのエッチング設備で実施される
のが一般的である。即ち、図2に示すエッチング設備で
は、エッチング液(塩化第二鉄溶液等)を噴霧するため
のエッチング槽2に続いて、エッチング液を洗浄するた
めのスプレ−水洗槽3が複数段設けられている。このエ
ッチング設備において、予備処理を終えて連続的にエッ
チング槽2に送られてくる被エッチング材1の表面にエ
ッチング液スプレ−ノズル4よりエッチング液が噴霧さ
れ、フォトレジスト膜から露出している部位のエッチン
グによる除去が行われる。そして、続く複数段のスプレ
−水洗槽3でエッチング後の被エッチング材面に水洗用
スプレ−ノズル5より洗浄水(液)が噴霧され、製品表
面に腐食の原因となる塩化物が残留しないように十分な
洗浄が行われる。
【0006】上述のように、エッチング加工によって製
品を得るまでには幾つもの工程を経なければならない
が、フォトレジスト膜と加工素材との密着性を高める目
的で実施される素材の前処理も非常に重要な工程で、製
品品質に大きな影響を与えるものである。
【0007】即ち、素材の前処理が不適切な場合にはフ
ォトレジスト膜と素材との密着性が十分に得られず、エ
ッチング過程でフォトレジスト膜が剥離してその部分で
意図しない素材の溶解が起きるために目的とする製品形
状が得られない。また、フォトレジスト膜が剥離しない
までもフォトレジスト膜と素材表面との界面にエッチン
グ液が浸透して隙間腐食を発生する場合があり、隙間腐
食部分から横方向へのエッチングが進行することになっ
て微細なエッチング加工が困難になる。
【0008】図3はエッチング加工後における加工素材
断面の模式図であるが、加工素材とフォトレジスト膜と
の密着性が低い場合には、素材とフォトレジストの界面
にエッチング液が浸透して隙間腐食が生じ、これが起点
となって側面方向へのエッチング(サイドエッチ)が進
行してしまうためにエッチング加工断面は破線で示した
如く不本意なものとなって、微細な抜き加工が不可能と
なる。
【0009】ところで、従来、フォトレジスト膜と加工
素材との密着性を高める目的で実施される素材の前処理
としては、アルカリ脱脂,溶剤脱脂,電解脱脂等の脱脂
処理を施した後で洗浄,乾燥を行う方法が採用されてい
た。しかし、この方法のみではフォトレジスト膜との密
着性改善効果が十分とは言えず、この不満は特に加工素
材が鉄系金属の場合に著しかった。
【0010】そこで、鉄系金属に対しては、希硝酸,硫
酸,塩酸,燐酸等の水溶液で酸洗又は化学研磨する方法
(特開平1−259183号公報参照)や、クロム酸と硫酸の
混合水溶液あるいはアルカリ性酸化液(水酸化ナトリウ
ムと硝酸ナトリウムの混合水溶液等)を用いて表面に酸
化皮膜を形成させる方法(特開昭55−122876号公報参
照)等が提案された。ところが、この方法でもフォトレ
ジスト膜との十分な密着性が得られないばかりか、エッ
チング加工後の金属表面にCl- イオンが残留して発銹の
原因となったり、また硫酸や硝酸を単体で用いた場合又
は硝酸と弗酸の混酸を用いた場合には金属表面が変色し
て製品の外観を損なうという問題が指摘された。
【0011】このようなことから、本発明が目的とした
のは、エッチング加工を施す鉄系金属材のフォトレジス
ト密着性を顕著に改善し、微細で正確なエッチング加工
を安定に実施し得る手段を提供することであった。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成すべく鋭意行われた本発明者等の研究結果等を基にし
て完成されたものであり、「鉄系金属材をエッチング加
工する際のフォトレジスト塗布工程の前に、 該被処理鉄
系金属材の表面を“水素2フッ化アンモニウムが1に対
し過酸化水素が2〜7の重量比で混合した混合液の5〜
30重量%水溶液”によって化学研磨することにより、
フォトレジストとの密着性を顕著に改善し得るようにし
た点」に大きな特徴を有するものである。
【0013】なお、ここでの「鉄系金属」とは、鉄は勿
論のこと、炭素鋼やステンレス鋼等の鋼、更にはFe−Ni
合金といったFeを主成分とする金属材料の総称である。
【0014】
【作用】さて、本発明法を実施するに際しては、まず被
エッチング材たる鉄系金属材の表面に付着している油分
や汚染物を除去するために脱脂処理が施される。脱脂方
法としては、溶剤脱脂,アルカリ脱脂,電解脱脂等の何
れであっても構わない。そして、この脱脂処理に続いて
本発明に係る化学研磨処理が行われる。
【0015】化学研磨処理は、まず1水素2フッ化アン
モニウムと過酸化水素とを「1水素2フッ化アンモニウ
ム:過酸化水素=1:2〜7」の重量比で混合した混合
液を作り、これを水に5〜30重量%の濃度となるよう
に希釈した溶液を用いて実施する。
【0016】この場合、1水素2フッ化アンモニウムに
対する過酸化水素の混合比率が重量比で2よりも少ない
と、フォトレジストの密着性が得られないばかりか、金
属表面に肌荒れを生じて外観上好ましくなく、、一方、
その比率が7よりも多いと金属表面が不働態化して化学
研磨の効果が得られずフォトレジストの密着性が劣るこ
ととなる。また、水溶液中における“1水素2フッ化ア
ンモニウム−過酸化水素混合液”の濃度が5重量%より
も低いと化学研磨の効果が発揮されず、フォトレジスト
の密着性が劣り、また十分な化学研磨の効果を得ようと
すると長時間を要することとなって生産性が劣ってしま
う。逆に、その濃度が30重量%よりも高いと化学研磨
が過多になり肉厚減少することとなる。
【0017】上記水溶液を用いて行う鉄系金属材の化学
研磨は、被処理材をその水溶液に浸漬するか、あるいは
該水溶液を被処理材表面にスプレ−噴霧する形態で実施
するのが良い。この時、化学研磨が過多になった場合に
は被処理材の肉厚減少が進行して製品規格を外れること
になるため、処理水溶液の濃度や温度、更には処理時間
を適切に選ぶ必要がある。なお、処理水溶液の温度は2
5〜40℃程度、そして処理時間は処理方法によっても
異なるが通常1〜5分程度とするのが良い。また、必要
に応じて、化学研磨の後に苛性ソ−ダ等のアルカリ溶液
によって被処理材表面の中和処理を行うことが好まし
い。
【0018】上述のような化学研磨処理を施すと、被処
理材表面の微細な凹凸が溶解して平滑な表面が得られる
と同時に、表面の酸化皮膜も溶解して活性な金属面が露
出する。これらの効果等が総合される結果、フォトレジ
スト膜との優れた密着性が付与されるものと考えられ
る。そして、このフォトレジスト膜との密着性向上効果
によってエッチング時における被処理材とフォトレジス
ト膜の界面へのエッチング液の浸透が無くなり、横方向
へのエッチングの進行(サイドエッチ)が抑制される。
このため、図3に示したエッチング加工幅Wを従来より
も小さくすることができ、微細なエッチング加工が可能
となる。また、本発明に係る上記化学研磨処理では被処
理材表面に変色を生じることがなく、従って外観が損な
われることもない。
【0019】化学研磨処理あるいは必要に応じてその後
に実施される中和処理の後は、被処理材表面を十分に水
洗して乾燥し、それからフォトレジストの塗布を行う。
この時のフォトレジストとしては、ネガ型,ポジ型の何
れでも良く、また水溶系,溶剤系あるいはドライフィル
ムの何れであっても構わない。
【0020】次いで、本発明を実施例により説明する。
【実施例】被加工材としてFe−Ni系の42ニッケル合金
板(0.15mm厚)を準備した。そして、まず、70℃に保
持された10%苛性ソ−ダ水溶液に被加工材を浸漬して
その表面を脱脂処理した後、“種々割合(重量割合)で
混合した1水素2フッ化アンモニウム(NH4 HF2
と過酸化水素(H2 2 )の混合溶液を種々の濃度に薄
めた水溶液”を用いて化学研磨処理を行った。なお、こ
の化学研磨処理は、25℃の処理水溶液に被加工材を2
分間浸漬する手法で実施した。化学研磨処理の後は、2
%苛性ソ−ダ水溶液にて被加工材表面の化学研磨処理液
残留分を中和し、それから十分に水洗し乾燥を行った。
【0021】続いて、上記前処理を施した被加工材表面
にフォトレジストを10μmの膜厚で塗布し、その後は
通常の工程で露光,現像を行った。この時の現像パタ−
ンは、フォトレジスト開孔幅(図3の符号ωで示した
幅)が50μmであった。
【0022】次に、前記図2に示した装置を用い、上記
処理を終えた被加工材にスプレ−エッチング方式でエッ
チング加工を施した。この時、エッチング液としては4
7ボ−メ塩化第二鉄溶液を用い、液温は48℃とした。
【0023】そして、エッチング加工の後にフォトレジ
スト皮膜を剥離除去し、サイドエッチ幅(図3の符号a
で示した幅)及び隙間腐食幅(図3の符号bで示した
幅)の測定を行った。この結果を、別に実施した比較例
(フォトレジスト塗布工程の前の処理条件が異なる例)
と対比して表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】表1に示される結果からも明らかなよう
に、本発明で規定する条件通りの前処理を施した42ニ
ッケル合金板は優れたフォトレジスト密着性を示す結
果、素材/フォトレジスト間の隙間腐食を生じることが
なく、極力小さいサイドエッチ幅で精密なエッチング加
工を実施できることが分かる。
【0026】
【効果の総括】以上に説明した如く、この発明によれ
ば、比較的簡単な前処理によって鉄系金属材のフォトレ
ジスト密着性を顕著に改善することができ、微細なエッ
チング加工をも適正に実施することを可能にするなど、
産業上非常に有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エッチング加工工程の概要説明図である。
【図2】工業生産的なエッチング設備例の説明図であ
る。
【図3】エッチング加工後の加工素材断面を示す模式図
である。
【符号の説明】
1 被エッチング材 2 エッチング槽 3 スプレ−水洗槽 4 エッチング液スプレ−ノズル 5 水洗用スプレ−ノズル a サイドエッチ幅 b 隙間腐食幅 D エッチング加工深さ W エッチング加工幅 ω フォトレジスト開孔幅
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23F 1/00 - 3/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エッチング加工におけるフォトレジスト
    塗布工程の前に、被処理鉄系金属材の表面を“1水素2
    フッ化アンモニウムが1に対し過酸化水素が2〜7の重
    量比で混合した混合液の5〜30重量%水溶液”によっ
    て化学研磨することを特徴とする、エッチング加工用鉄
    系金属材のフォトレジスト密着性改善のための前処理方
    法。
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