JP3143446U - 着脱容易な安全靴 - Google Patents

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要 酒井
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要 酒井
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Abstract

【課題】地震等の災害発生に備え、災害発生時には敏速に履いて避難場所に安全に移動することができる、着脱容易な安全靴を提供することであり、第2課題は、通常時は、高齢者等が屋内外で簡便に履用できる、着脱容易な安全靴を提供する。
【解決手段】靴本体1の履き口2周縁端部から甲被前部4にかけ、くさび状の切欠溝Vを形成し、切欠溝Vが形成された甲被中央部3には伸縮可能な伸縮シート8a〜8dが縫着され、該伸縮シートの甲被左側部3a、甲被右側部3bには雄部材面状ファスナー9、10が縫着され、固定片6が靴本体1の甲被前部4から甲被中央部3にかけて伸縮シートを被覆するように一体的に延設され、固定片6の下面には、一部分を除き、雌部材面状ファスナー11が縫着されている。
【選択図】図1

Description

本考案は、着脱容易な安全靴に関し、より詳しくは、特に地震・津波又は台風等の災害発生が予測される時に備え、又は災害が発生した時には敏速に履くことができ、避難場所に安全に移動し、また通常時においては、高齢者、身障者及び要介護者等が、屋内外で簡便に履用することができる、着脱容易な安全靴に関する。
1995年1月17日に発生した、阪神・淡路大地震は、不幸にも「天災は忘れた頃にやってくる」という古い諺が実証された。その後、新潟地震をはじめ、我が国ではもちろん、世界の各地で大地震やこれに伴う大津波等の被害が報じられている。近年、東京等大都市の直下を震源とする大地震が発生する可能性があるといわれており、このような天災地変が発生した場合は、危険地域から可能な限り早くかつ安全に避難する必要がある。このため、カンパン、インスタント食品等の非常食料品や飲料水、懐中電灯、外傷薬などの医薬品、ヘルメットあるいは防災頭巾といった防災用品を常備することに対する認識が高まりつつある。しかしながら、地震等の災害発生の際に着用する履物に関しては盲点となっており、あまり考慮されていなかったのが実情である。
防災センター等のシミュレーションによれば、例えば東京都心部に、直下型地震等によって建物の倒壊などを含む大きな被害が発生した場合、拡大する火災等から確実に逃れるには、都心から20〜30km圏の地域へ5時間以内に移動しなければならないことが判明している。ところが、密集した建物の内外や道路等には、多量の窓ガラスや照明器具等の破片、その他の破損物が散乱し、滑りやすくなるため、通常の履物、例えばサラリーマンが着用している革靴やサンダル、あるいは女性のハイヒール等の着用では、徒歩による
避難地域へ安全かつ迅速に逃れることが極めて困難になると予想されている。
地震等の災害が発生した時に備えた、防災又は安全を目的とする履物として若干の提案がなされている。例えば、特開平9−108002(特許文献1)の「緊急防災サイズレス靴」は、収納時に嵩張らないと共に、足の大きさの相違に好適に対応させることを課題とし、その課題を解決する手段は、折り曲げ可能な板状に形成された靴底部を備え、靴底部の前部上側には、カップ状に形成された爪先覆が後向きに履き口して固設され、靴底部の後部両側には、引掛用紐の一端が固着され、爪先覆の上面には、引掛用紐の先端側を固定する面ファスナー等の紐固定部が設けられ、靴底部の両側には、折り畳み可能な布状に形成された甲被部の縁が固着され、甲被部の他縁には締結用紐部等の締結部が設けられていることを特徴としている。
また、登実3026063(特許文献2)の「災害時用安全靴」は、非常持出袋に入れておくのに適するように、嵩張らず軽量であり、ズボンのすそを折り込んで入れることができ、暗闇の中ですばやく履け、釘を踏み抜くおそれがなく、火の中をくぐりぬけうるようにすることを課題とし、その解決手段は、災害時用安全靴は、筒状口部を有する甲被が、表面にアルミニウムの真空蒸着されたビニロン布により形成せられ、筒状口部にこれの上部絞り手段としての紐が設けられるとともに、下部絞り手段として面ファスナーにより固定されるバンドが設けられている。屈曲自在な厚さ0.6mmの鋼板およびその上面に設けられたフェルト層よりなる中敷を備えている。鋼板の周縁部に前後左右に4つの下向きの切り起こし爪が設けられて本底に突き立てられることにより、中敷が本底に固定されている。靴全体は半長靴状でかつ左右対称に形成せられ、しかも前側、後側および左右両側に蛍光部がそれぞれ設けられていることを特徴としている。
さらに、登実3026345(特許文献3)の「安全スリッパ」は、日常は普通のスリッパとして使用出来、地震等の災害時にガラス片、陶器片等が床に散乱しても、安全に且速やかに避難出来る履物を提供することを課題とし、これを解決するための手段は、スリッパの靴底部にガラス片や陶器片等を踏み付けてもこれらが貫通しない充分な強度を有する金属板、セラミック板又は合成樹等、或いはアラミド繊維(商品名ケブラー)、炭素繊維等の布地を、爪先には柔軟性を有し躓いてもガラス片や陶器片等を貫通させない充分な強度を有する金属板又は合成樹脂板等、或いはアラミド繊維及び炭素繊維等の布地を足を保護する層としてスリッパに組み込むことを特徴としている。
特許文献1の「緊急防災サイズレス靴」における足と靴を固定する手段は、締結用紐によって行うように構成されているが、例えば地震等にあっては、必然的に身体は前後又は左右に揺動するので、締結用紐を結ぶことは極めて困難であるという欠点がある。また特許文献2の「災害時用安全靴」は、まず持出袋の中から取り出し、折り畳まれた筒状口部を起立、履き口してから足を靴内に挿入し、ズボンの裾部を筒状口部に折り込んで入れた後、紐と面ファスナーによって足と靴を固定するので、退避するまでかなりの時間を要し、地震・津波等1秒をあらそう緊急時における履用する靴としては、不向きであると言わざるをえない。さらに、特許文献3の「安全スリッパ」は、構造上、踵部がないので、急いでの歩行や走行、又は障害物を跨いだりするとき、スリッパは足から簡単に脱げやすいので、日常のスリッパとしての使用には問題ないが、緊急避難時の履物としては、安全性に問題がある。
特開平9−108002号公報 実用新案登録第3026063号公報 実用新案登録第3026345号公報
本考案が解決しようとする第1の課題は、地震・津波又は台風等の災害発生に備えておき、災害が発生した時には敏速に履くことができ、避難場所に安全に移動することができる、着脱容易な安全靴を提供することであり、第2の課題は、通常時においては、高齢者、身体障害者又は要介護者等が、屋内外で簡便に履用が可能な着脱容易な安全靴を提供することにある。
本考案者等は、上記従来技術が有する各種問題点に鑑み、鋭意検討を重ね、課題を解決するための本考案を完成させたものである。
本願の明細書等に記載された用語の解釈上の疑義を解消すべく、以下用語の説明を行う。
***************************************
<用語の説明>
○ 切欠溝とは、靴本体の履き口周縁端部から甲被前部にかけてカッター又は鋏等により、平面視くさび状又はV字状に形成された切り欠き部分をいう。
○伸縮シートとは、柔軟性ある合成樹脂材を素材とし、上面を防水又は撥水加工した厚さが0.1mm〜0.3mmで、展開図がほぼ扇形をなし、該伸縮シートの上辺から下辺にかけて複数の折れ線が形成されてなり、靴本体の履き口周縁端部から甲被前部にかけて形成された切欠溝の上面を被覆するように取り付けられる。
○固定片とは、靴本体の甲被前部から甲被中央部周縁にかけて伸縮シートを全面的に被覆するように一体的、かつ前後に開閉可能に延設され、舌片状をなしている。該固定片の下面には、一部分を除き、面状ファスナーの雌部材が取り付けられている。
○滑面加工とは、靴内のインソール又は中底の表皮面を滑らかにする加工をいう。
○蓄光材とは、俗に夜光とも呼ばれ、自然光である太陽光や人口光の蛍光灯等の光エネ
ルギーを短時間で吸収して、暗闇で長時間に亘って光を放出するもので、素材はアルミナ系酸化物の無機顔料であり、1000℃以上の温度で溶融されてつくられているため、耐候性や耐熱性に対して極めて安定しており、半永久的に発光を繰り返し、有害物質は全く含まれていないので安全性にも問題がない。
****************************************
課題を解決するための手段は、本願、実用新案登録請求の範囲の各請求項に記載の考案であり、その具体的な解決手段は、以下の通りである。
○第1の考案(請求項1に記載の考案)
上記の課題を解決するための第1の考案(請求項1に記載の考案)は、
「靴本体の履き口周縁端部から甲被前部にかけてくさび状の切欠溝を形成し、
該切欠溝が形成された甲被中央部周縁には上下及び左右に伸縮可能な伸縮シートが縫着され、
前記伸縮シートの甲被左側部及び甲被右側部には面状ファスナーが取り付けられ、
かつ、前記伸縮シートの上面を被覆すると共に足部を固定する固定片を備えた」
ことを特徴としている。
○第2の考案(請求項2に記載の考案)
上記の課題を解決するための第2の考案(請求項2に記載の考案)は、
「前記靴本体は、防水加工又は撥水加工された軟質合成皮革を素材としている」
ことを特徴とする請求項1に記載の着脱容易な安全靴である。
○第3の考案(請求項3に記載の考案)
上記の課題を解決するための第3の考案(請求項3に記載の考案)は、
「前記伸縮シートは、柔軟性ある素材からなり、展開図形がほぼ扇形をなし、該伸縮シートの上辺から下辺にかけて複数の折れ線が形成されている」
ことを特徴とする請求項1〜請求項2の何れかに記載の着脱容易な安全靴である。
○第4の考案(請求項4に記載の考案)
上記の課題を解決するための第4の考案(請求項4に記載の考案)は、
「前記伸縮シートの上面は、防水加工又は撥水加工された軟質合成樹脂材である」
ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の着脱容易な安全靴である。
○第5の考案(請求項5に記載の考案)
上記の課題を解決するための第5の考案(請求項5に記載の考案)は、
「前記伸縮シートの甲被左側部及び甲被右側部に取り付けられた面状ファスナーは、雄部材である」
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の着脱容易な安全靴である。
○第6の考案(請求項6に記載の考案)
上記の課題を解決するための第6の考案(請求項6に記載の考案)は、
「前記固定片は、靴本体の甲被前部から甲被中央部周縁にかけて伸縮シートを全面的に被覆するように一体的、かつ前後に開閉可能に延設されている」
ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の着脱容易な安全靴である。
○第7の考案(請求項7に記載の考案)
上記の課題を解決するための第7の考案(請求項7に記載の考案)は、
「前記固定片の下面には、面状ファスナーの雌部材が取り付けられている」
ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の着脱容易な安全靴である。
○第8の考案(請求項8に記載の考案)
上記の課題を解決するための第8の考案(請求項8に記載の考案)は、
「前記靴本体の踵内側部には、当て布片が縫着されている」
ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の着脱容易な安全靴である。
○第9の考案(請求項9に記載の考案)
上記の課題を解決するための第9の考案(請求項9に記載の考案)は、
「前記靴本体の踵外側部、摘み片及び前記靴本体の下部外周縁には、蓄光材又は蛍光材入り塗料が塗布された表示部が形成されている」
ことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の着脱容易な安全靴である。
○第10の考案(請求項10に記載の考案)
上記の課題を解決するための第10の考案(請求項10に記載の考案)は、
「前記靴本体の内靴底部には、防水、消臭及び抗菌加工すると共に、上面が滑面加工されたインソールが貼着されている」
ことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れかに記載の着脱容易な安全靴
である。
○第11の考案(請求項11に記載の考案)
上記の課題を解決するための第11の考案(請求項11に記載の考案)は、
「前記靴本体の靴底部は、硬質合成樹脂材よりなり、該靴底部の爪先から土踏まず部にかけて彎曲面を形成すると共に、踵部は厚底とし、かつ防滑材が接着されている」
ことを特徴とする請求項1〜請求項10の何れかに記載の着脱容易な安全靴である。
本考案に係る着脱容易な安全靴は、上記のような特徴的構成要件から構成され、特徴的構成用件に応じた、以下のような本願考案特有の効果を奏する。また、上記のような特徴的構成要件から構成された着脱容易な安全靴によれば、本願考案の課題を十分解消することができる。
○第1の考案の効果
第1の考案によれば、
「靴本体の履き口周縁端部から甲被前部にかけてくさび状の切欠溝を形成し、
該切欠溝が形成された甲被中央部周縁には上下及び左右に伸縮可能な伸縮シートが縫着され、
前記伸縮シートの甲被左側部及び甲被右側部には面状ファスナーが取り付けられ、
かつ、前記伸縮シートの上面を被覆すると共に足部を固定する固定片を備えた」
という当業界では想到することが困難な特徴ある構成としているから、
地震・津波又は台風等の災害発生に備えておき、災害が発生した時には敏速に履くことができ、避難場所に安全に移動することができる、着脱容易な安全靴を提供するという第1の課題と、通常時においては、高齢者、身体障害者又は要介護者等が、屋内外で簡便に履用が可能な着脱容易な安全靴の提供という、本考案の第2の課題を解決することができた。
○第2及び第3考案の効果
第2の考案によれば、
「前記靴本体は、防水加工又は撥水加工された軟質合成皮革を素材としている」
という考案であり、
第3の考案によれば、
「前記伸縮シートは、柔軟性ある素材からなり、展開図形がほぼ扇形をなし、該伸縮シートの上辺から下辺にかけて複数の折れ線が形成されている」
という何れも当業界では想到することが困難な特徴ある構成としているから、
履き易く、靴本体は防水加工又は撥水加工されているので、雨天時でも重くなることがない。また伸縮シートの上辺から下辺にかけて複数の折れ線が形成されているので着用者の足が靴内に挿入されたら、折れ線により伸縮シートは、上下及び左右に拡張され、着用者の足全体は靴内に包まれるようにフィットし、歩行又は走行が快適となる効果を奏する。
○第4の考案の効果
第4の考案によれば、
「前記伸縮シートの上面は、防水加工又は撥水加工された軟質合成樹脂材である」
という当業界では想到することが困難な特徴ある構成としているから、
靴の中に水が浸入するのを防ぎ、快適な歩行又は走行が可能である。
○第5、第6及び第7の考案の効果
第5の考案によれば、
「前記伸縮シートの甲被左側部及び甲被右側部に取り付けられた面状ファスナーは、雄部材である」
という考案であり、
第6の考案によれば、
「前記固定片は、靴本体の甲被前部から甲被中央部周縁にかけて伸縮シートを全面的に被覆するように一体的、かつ前後に開閉可能に延設されている」
という考案であり、
第7考案によれば、
「前記固定片の下面には、面状ファスナーの雌部材が取り付けられている」
という何れも当業界では想到することが困難な特徴ある構成としているから、
足と靴本体の固定と開放は、面状ファスナーの雄部材と固定片の下面に取り付けられた面状ファスナーの雌部材によって行われるので極めて簡易であると共に、面状ファスナーの雌部材が足の甲被部にクッション性とフィット感を付与するので、長時間の歩行にも疲労感と苦痛を緩和させることができる。
○第8の考案の効果
第8の考案によれば、
「前記靴本体の踵内側部には、当て布片が縫着されている」
という当業界では想到することが困難な特徴ある構成としているから、
当て布片は、靴本体の踵部を補強すると共に、靴の着用者が、足を靴本体の履き口に挿入するのに際しては、足の爪先又は土踏まず部で靴の踵部を踏みつぶすようにして靴内に挿入して敏速に履くことができ、靴の踵部は当て布片の弾性力によって起立するという効果を奏する。
○第9の考案の効果
第9の考案によれば、
「前記靴本体の踵外側部、摘み片及び前記靴本体の下部外周縁には、蓄光材又は蛍光材入り塗料が塗布された表示部が形成されている」
という当業界では想到することが困難な特徴ある構成としているから、
地震等が、夜間に発生したとき、蓄光材又は蛍光材入り塗料が塗布された表示部が、室内の暗闇の中でもはっきりと確認でき、敏速に靴を履いて屋外に退避することができる。また夜間における路上等の歩行や走行に際しては、後方又は側面からの車や自転車等への歩行者の存在を知らせて、交通事故を未然に防止することができる。
○第10の考案の効果
第10の考案によれば
「前記靴本体の内靴底部には、防水、消臭及び抗菌加工すると共に、上面が滑面加工されたインソールが貼着されている」
という当業界では想到することが困難な特徴ある構成としているから、
長期間、快適に使用することができると共に、インソールの上面が滑りやすいので、敏速に靴を履くことができる。
○第11の考案の効果
第11の考案によれば
「前記靴本体の靴底部は、硬質合成樹脂材よりなり、該靴底部の爪先から土踏まず部にかけて彎曲面を形成すると共に、踵部は厚底とし、かつ防滑材が接着されている」
という当業界では想到することが困難な特徴ある構成としているから、
地震によって破砕されたガラス片や釘とによる外傷を未然に防ぐことができ、また爪先は地面より浮いた状態となっているので、歩行中のつまずきを防ぐと共に、靴底が彎曲面を形成しているので、足の疲労を少なくすることができる。さらに踵部の防滑材により路面又は床面で滑ったり転倒することなどを防ぐことができる。
以下、本考案に係る、着脱容易な安全靴に関する最良の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本考案に係る、着脱容易な安全靴の構成部材を分離した状態の平面図、図2は、同各構成部材を縫着又は取り付けた履用前の斜視図、図3は、固定片を伸縮シート上に取り付けた状態の斜視図、図4は、図2における4−4線拡大断面図、図5は、伸縮シートの拡大展開図、図6は、踵部の背面図、図7は、図3における7−7線拡大断面図である。
本考案に係る着脱容易な安全靴(以下、靴Sという)は、図1〜図7に示すように、靴本体1を構成する履き口2、甲被中央部3、甲被前部4、爪先5、固定片6及び踵部7と、伸縮シート8、雄部材の面状ファスナー9、10、雌部材の面状ファスナー11、インソール12、靴底部13、防滑材14、当て布片15及び摘み片16の各部材からなっている。
靴本体1は、防水加工又は撥水加工された軟質合成皮革、例えばモダンカーフ(商品名)を素材としている。図1に示すように、靴本体1の履き口2の周縁端部2aから甲被前部4にかけてくさび状(V字状)の切欠溝Vが形成されている。該切欠溝Vは、靴滑り等を使用することなく、足の甲部が敏速かつスムーズに靴本体1内に収まることを目的とし、カッター又は鋏(図示しない)等によって形成されている。切欠溝Vが形成された甲被中央部3の周縁には上下及び左右に伸縮可能な伸縮シート8が縫着されている。伸縮シート8は、柔軟性ある合成樹脂材を素材とし、上面8aを防水又は撥水加工した厚さが0.1mm〜0.3mmで、展開図形がほぼ扇形(図1及び図5参照)をなしている。伸縮シートの上辺8bから下辺8cにかけて複数の折れ線8d、8d(山折り線又は谷折り線)が形成されている。着用者の足が靴S内に挿入されたら、折れ線8d、8dにより伸縮シート8は、上下及び左右に拡張され、着用者の足全体は靴S内に包まれるようにフィットする。伸縮シート8が縫着された甲被左側部3a及び甲被右側部3bには雄部材の面状ファスナー9、10、例えばマジックテープ(登録商標、株式会社クラレ)が取り付けられている。
固定片6は、靴本体1の甲被前部4から甲被中央部3にかけて伸縮シート8を全面的に被覆するように一体的、かつ前後に開閉可能に延設され、舌片状をなしており、該固定片6の下面6aには、一部分6bを除き、雌部材の面状ファスナー11、例えばマジックテープ(登録商標、株式会社クラレ)が取り付けられている。固定片6は、靴Sを不使用時は、図2に示すように甲被前部4から爪先5に向けて折り返された状態とされ、所定の場所、例えば、地震等災害発生時に備え、寝室のベッド近傍等に置かれている。
靴本体1の踵部7の内側部には靴べら形状の当て布片15が縫着されている。当て布片15の素材は、靴本体1と同一又は異素材からなるが、製作コスト等の問題から、靴本体1と同一素材であることが好ましい。当て布片15は、踵部7を補強すると共に、靴の着用者が、足を靴本体1の履き口2に挿入するのに際しては、足の爪先又は土踏まず部で靴の踵部7を踏みつぶすようにして靴S内に挿入して敏速に履くことができ、靴Sの踵部7は当て布片15の弾性力によって起立させることを目的としている。また高齢者、身体障害者又は要介護者等が、足及び腰部を屈曲することなく履用することができる。
靴本体1の踵部7の頂部には、摘み片16が縫着され、該摘み片16、踵部7の外側部7a及び靴本体1の下部外周縁1aには、蓄光材又は蛍光材入り塗料が塗布された表示部Lが形成されている。表示部Lは、地震等が、夜間に発生した際には、蓄光材又は蛍光材入り塗料が塗布されているので、室内の暗闇の中でも即刻に確認でき、敏速に靴Sを履いて屋外に退避することができる。また夜間における路上等の歩行や走行に際しては、後方又は側面からの車や自転車等への歩行者の存在を知らせて、交通事故を未然に防止することを目的としている。
靴本体1の靴底部13には、防水、消臭及び抗菌加工すると共に、上面材12aが滑面加工されたインソール12が接着剤により貼着されており、インソール12は、上面材12aと緩衝材12bからなっている。上面材12aは、防水、消臭及び抗菌加工されているので、着用者は長期間、快適に使用することができると共に、インソールの上面材12aが滑面加工されているので、敏速に靴Sを履くことができる。さらに緩衝材12b及び後述する軽量素材で製作された靴底部13等により、靴Sの総重量を軽量とすると共に、着用者は緩衝材12bのクッション作用により、疲労度を軽減することができる。
靴本体1の靴底部13は、軽量で衝撃吸収力に富んだ硬質合成樹脂材、例えば、EVA(エチレンビニールアセテート)又はEVAと同等の性質を有する素材である、例えば、EVAフォームを加熱圧縮し一体成形したファイロン素材等よりなっている。また該靴底部13の爪先5から土踏まず部13aにかけて彎曲面を形成すると共に、踵部13bは、厚底とし、かつ防滑材14が接着されている。防滑材14の接地面14aには、直線状又は曲線状の細溝が多数本刻設されている。靴底部13は、地震によって破砕されたガラス片や釘等による外傷を未然に防ぐことができ、また爪先5は地面より浮いた状態となっているので、歩行中のつまずきを防ぐと共に、靴底部13が彎曲面を形成しているので、着用者の長時間の歩行による足疲労を少なくすることができる。さらに踵部13bの防滑材14により路面又は床面で滑ったり転倒することなどを未然に防ぐことができる。
図5は、伸縮シート8の拡大展開図を示し、靴本体の長さが26cmであるとき、上辺8bの巾寸法W1は、約10cm、下辺8cの巾寸法W2は、約2.5cmとし、上辺8bから下辺8cの高さ寸法Hは、約8cmとしている。折れ線8d、8dは、図面上、伸縮シート8の中心から寸法約2cm(上辺8b)の位置から下辺8cの約5mmの位置に相似形とした二本の折れ線8d、8dが配設されているが、三本以上の折れ線を形成することもできる。
図7は、例えば本考案に係る靴Sに着用者の足(図示しない)が挿入されたとき、固定片6を伸縮シート8上に固定した状態を示している。固定片6の雌部材の面状ファスナー11は、甲被中央部3の両側に取り付けられた雄部材の面状ファスナー9、10に係止される。靴Sを脱ぐときは固定片6の一部分1b(図3参照)を指先で摘んで上方に引き上げれば、固定片6は、雄部材の面状ファスナー9、10から離脱するので、着用者の足は容易に靴Sから開放することができる。
は、本考案に係る、着脱容易な安全靴の構成部材を分離した状態の平面図である。 は、同各構成部材を縫着又は取り付けた履用前の斜視図である。 は、固定片を伸縮シート上に取り付けた状態の斜視図である。 は、図3における4−4線拡大断面図である。 は、伸縮シートの拡大展開図である。 は、踵部の背面図である。 は、図3における7−7線拡大断面図である。
符号の説明
S 靴
V 切欠溝
L 表示部
1 靴本体
2 履き口
3 甲被中央部
4 甲被前部
5 爪先
6 固定片
7 踵部
8 伸縮シート
9、10 雄部材の面状ファスナー
11 雌部材の面状ファスナー
12 インソール
13 靴底部
14 防滑材
15 当て布片
16 摘み片
1a 下部外周縁
2a 周縁端部
3a 甲被左側部
3b 甲被右側部
6a 下面
6b 一部分
7a 外側部
8a 上面
8b 上辺
8c 下辺
8d、8d 折れ線
12a 上面材
12b 緩衝材
13a 土踏まず部
13b 踵部
14a 接地面

Claims (11)

  1. 靴本体の履き口周縁端部から甲被前部にかけてくさび状の切欠溝を形成し、
    該切欠溝が形成された甲被中央部周縁には上下及び左右に伸縮可能な伸縮シートが縫着され、
    前記伸縮シートの甲被左側部及び甲被右側部には面状ファスナーが取り付けられ、
    かつ、前記伸縮シートの上面を被覆すると共に足部を固定する固定片を備えた、
    ことを特徴とする着脱容易な安全靴。
  2. 前記靴本体は、防水加工又は撥水加工された軟質合成皮革を素材としている、
    ことを特徴とする請求項1に記載の着脱容易な安全靴。
  3. 前記伸縮シートは、柔軟性ある素材からなり、展開図形がほぼ扇形をなし、該伸縮シートの上辺から下辺にかけて複数の折れ線が形成されている、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項2の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
  4. 前記伸縮シートの上面は、防水加工又は撥水加工された軟質合成樹脂材である、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
  5. 前記伸縮シートの甲被左側部及び甲被右側部に取り付けられた面状ファスナーは、雄部材である、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
  6. 前記固定片は、靴本体の甲被前部から甲被中央部周縁にかけて伸縮シートを全面的に被覆するように一体的、かつ前後に開閉可能に延設されている、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
  7. 前記固定片の下面には、面状ファスナーの雌部材が取り付けられている、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
  8. 前記靴本体の踵内側部には、当て布片が縫着されている、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
  9. 前記靴本体の踵外側部、摘み片及び前記靴本体の下部外周縁には、蓄光材又は蛍光材入り塗料が塗布された表示部が形成されている、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
  10. 前記靴本体の内靴底部には、防水、消臭及び抗菌加工すると共に、上面が滑面加工されたインソールが貼着されている、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
  11. 前記靴本体の靴底部は、硬質合成樹脂材よりなり、該靴底部の爪先から土踏まず部にかけて彎曲面を形成すると共に、踵部は厚底とし、かつ防滑材が接着されている、
    ことを特徴とする請求項1〜請求項10の何れかに記載の着脱容易な安全靴。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2015181642A (ja) * 2014-03-24 2015-10-22 芳太郎 利行 要介護者用靴

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