JP3133794B2 - タンパク質からなる液状油脂代替品 - Google Patents

タンパク質からなる液状油脂代替品

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JP3133794B2 JP03253173A JP25317391A JP3133794B2 JP 3133794 B2 JP3133794 B2 JP 3133794B2 JP 03253173 A JP03253173 A JP 03253173A JP 25317391 A JP25317391 A JP 25317391A JP 3133794 B2 JP3133794 B2 JP 3133794B2
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杵川洋一
北畠直文
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、乳清タンパク質を原料
とする、液状油脂代替品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、脂肪代替品の発明は数多くあ
る。例えばショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル
類,加工澱粉,老化澱粉,多糖類ガム質,卵白等である
が、その多くは、ホイップクリーム状で、主として冷菓
等に利用されている。これらの代替品はいずれも優れた
物であり、特にアイスクリームに使用されているもの
は、殆ど見分けがつかないものであり、カロリー低減効
果も高いものである。しかしながら、液状油脂の代替品
としては、多糖類ガム質による粘稠液があるものの、粘
性パターンは油脂とは大きく異なり、単に見かけが似て
いるに過ぎない物であった。これは、液体油脂が持つニ
ュートニアンな粘性に比べ、他の増粘剤類やタンパク質
は非ニュートン性であるためである。一方カロリー過多
による肥満は、現在大きな医学的問題であり、飽食の時
代を反映して嗜好性の高い食品を摂取し、しかも総摂取
熱量を低く維持する事は、その是非はともかく、食品企
業や研究者にとって大きなテーマである。他方、酪農加
工品の余剰産物である乳清、特に乳清タンパク質は優れ
た機能を持つにも関わらず、現在限られた分野での利用
に留まっている。乳清の高度利用は、有用資源の活用だ
けでなく、公害防止の観点からも重要な課題である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、酪農加工品
の余剰産物である乳清を用いて、ダイエット食品など広
範な食品に適用できる液状油脂代替品を提供することを
課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明では、精製した乳
清タンパク質を、無塩または低イオン強度下、pH4以
下または6以上において、55℃以上に加熱して得られ
た物に、500mM以下の有機または無機塩を添加したも
のを液状油脂代替品として提供する。
【0005】即ち、乳清タンパク質を無塩または低イオ
ン強度になるように精製した後、タンパク質濃度を1%
〜20%,pHを4以下または6以上に調整し、更に、
55℃以上に加熱し、その結果得られた溶液又は粘稠ゾ
ルに、500mM以下の有機または無機塩を添加して得た
粘稠液が、ニュートニアンな油状特性を示すことを見出
し、本発明は達成されたのである。
【0006】精製乳清タンパク質には、前述の如く55
℃以上に加熱した後、10℃以下に冷蔵又は冷凍・解凍
し、その後に、1〜500mMの有機または無機塩を添加
してもよく、また、有機または無機塩を添加した後に、
再度55℃以上に加熱してもよい。更に、このようにし
て得た粘稠液を、10℃以下に冷蔵又は冷凍保存した物
(冷凍した物は解凍物)を、油脂代替品としてもよい。
【0007】いずれにしても、粘稠液製造に当たって、
pHは、乳清タンパク質の等電点域(pH4〜6)以外
に調整し、一般的な乳清タンパク質の変成温度55℃以
上に温度を調整する必要がある。この加熱温度は、65
℃以上であるのが好ましく、必要に応じて70〜121
℃程度に設定されるのがよい。
【0008】本発明で使用する塩は、有機塩及び無機塩
いずれでもよく、その種類は限られないが、一般に、有
機塩としては、クエン酸ナトリウム又はカリウム、酒石
酸ナトリウム又カリウム等が好ましく、無機塩として
は、塩化ナトリウム又はカリウム等が適している。
【0009】本発明において、無塩または低イオン強度
下とは、イオン強度が塩化ナトリウム換算で0〜300
mM程度であることを意味する(但し、乳清タンパク質固
有のイオン強度は除外する)。
【0010】本発明において使用する乳清は、チーズ製
造時に生成するチーズホエー、酸カゼイン製造時に生成
する酸ホエー、レンネットカゼイン製造時に生成するレ
ンネットホエーのいずれでもよく、また乳清タンパク質
を構成するタンパク質単体、あるいは複合物であっても
よい(β−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、
血清アルブミン等)。
【0011】乳清タンパク質の分離精製方法としては透
析法,電気透析法、ウルトラフィルトレーション、逆浸
透膜法、各種クロマトグラフィ(イオン交換、ゲルクロ
マト、疎水クロマトなど)、電気泳動法、吸着分離法、
沈澱分離法などがいずれも使用でき、これらを二種以上
組み合わせて使用してもよい。
【0012】本発明において使用する乳清タンパク質濃
度としては特に限定されないが、濃度により粘稠度、作
業性,経済性等が違うため、一般には1〜20%程度で
あるのがよい。
【0013】冷蔵、冷凍保存温度は、+10℃以下であ
ることが必要であるが、一般に+5℃〜−197℃であ
るのが好ましい。また、冷蔵、冷凍保存時間は、特に限
定されず、数分間、あるいは数週間保存されてもよい。
【0014】本発明では、このようにして得た調整乳清
ゾルを液状油脂代替品とするのであるが、このゾルの製
造工程を簡単に図示すると図1の如くなる。なお、この
ゾルは、食用油の代替品として、食品素材又は食品添加
物に、幅広く使用できるだけでなく、医薬品、化粧品、
工業原料等の油脂代替にも広く利用可能であることがわ
かっている。また、本発明において、調整乳清タンパク
質の使用形態は、溶液、粘稠液、ゲルだけでなく、これ
らをスプレードライ又はフリーズドライ等により粉体化
した物であってもよい。
【0015】
【実施例】実施例1 チーズ製造時に生成するホエーを原料として、逆浸透膜
法及びウルトラフィルトレーション法を組合せ、タンパ
ク質の濃縮及び精製を行った。得られたタンパク液の濃
度を6、6.5、6.7%に、pHを7.0に調整後、80℃
で1時間加熱した。室温まで冷却し、それぞれに塩化ナ
トリウムを50mM添加し、更に80℃で1時間加熱し透
明な調整乳清ゾルA〜Cを得た。得られた調整乳清ゾル
A〜C及び対照品D、Eの粘度をR型粘度計(東京計器
製VISCONICED型ELD−R,東機産業製コントローラ
E型)で測定し、流動解析(東機産業製、粘度計測デー
タ処理プログラムTOP)を行った。 検体 A.調整乳清ゾル(タンパク含量: 6%、 NaC
l: 50mM) B.調整乳清ゾル(タンパク含量: 6.5%、NaCl: 50
mM) C.調整乳清ゾル(タンパク含量: 6.7%、NaCl: 50
mM) D.生卵白液 (タンパク含量: 3%: NaCl: 50
mM) E.市販サラダ油(大豆,菜種油 原液) 測定条件 試料量 1ml 温度 25℃ 予備加熱時間 5分 測定時間 5分 コーン 1゜34’48 回転数 加速 1、2.5、5、10、20、50、10
0 rpm 減速 50、20、10、5、2.5、1 rpm 測定結果を図2〜11に示す。 図9に示されるように、検体Dの生卵白液は、極度に非
ニュートニアンの挙動を示す─即ち、小さなシェアの場
合は高粘度であるが、シェアがかかるに連れて粘度は減
少する─が、検体Eの食用サラダ油は、図11に示され
るように、シェアに関わらず、安定した粘度を維持し
た。これに対し、検体A〜Cの調整乳清ゾルは、いずれ
も生卵白液の様に粘度低下しないで、ニュートニアンの
挙動を示した(図3、5、7参照)。更に、官能検査の
結果、調整乳清ゾルと食用サラダ油は非常によく似た食
感を呈することが分かった。すなわち、口中でモタッと
する、サラダ油特有の食感が得られた。この場合の熱量
は、サラダ油が9kcalであるのに対し、調整乳清ゾルは
0.24〜0.27kcalとなり、サラダ油の約3%程度であ
った。
【0016】実施例2 チーズ製造時に生成するホエーを原料として、イオン交
換クロマトグラフイ及びウルトラフィルトレーション法
を組合せ、タンパク質の分離及び精製を行った。得られ
たタンパク液の濃度を6%に,pHを7.0に調整後、8
0℃で1時間加熱した。室温まで冷却し、塩化ナトリウ
ムを50mM添加し、透明な調整乳清ゾルを得た。実施例
1同様の、流動解析及び官能検査を行った。その結果を
図12〜13に示す。この試験結果から、本実施例で
も、実施例1と同様に、ニュートニアンで油状の粘稠液
が得られたことがわかる。
【0017】実施例3 酸カゼイン製造時に生成する、酸ホエーを原料に、硫安
沈澱法及び透析法を行いタンパク質の分離及び精製を行
った。得られたタンパク質の濃度を6%に、pHを7に
調整後、90℃で1時間加熱・冷却後、クエン酸ナトリ
ウムを75mM添加し、更に80℃で1時間加熱し、透明
な調整乳清ゾルを得た。更に得られたゾルを5℃で1週
間冷蔵保存を行った。冷蔵保存前の調整乳清ゾルは、実
施例1及び2の製品と同様に、油性の粘稠液でサラダ油
に非常に似た食感を示した。更に冷蔵保存した物は、粘
度が増加し、非常にこってりとした、油脂状の食感とな
った。
【0018】実施例4 実施例1の検体Cを用いて、サラダドレッシングを下記
の配合で製造し(試験区)、サラダ油を使用した通常の
サラダドレッシング(対照区)と比較して、官能検査を
実施した。 (試験結果)対照区は、標準的な分離型ドレッシング
で、静置すると短時間で分離するため、良く振り混ぜ
て、使用することが必要であったが、本発明に従った試
験区は、分離することなく、安定して使用可能であっ
た。官能検査の結果は、対照区が、酢とサラダ油とを別
々に感じるのに対し、試験区は、対照区と同様の粘性を
感じるにも関わらず、均一な味を感じた。野菜に掛け
て、食したところ、試験区は非常に良好な食味を有し、
ノンオイルであるとは分からなかった。また、試験区の
熱量は、33Kcalで、対照区の熱量521Kcalの約6.3
%に低減された。
【0019】
【発明の効果】本発明では、酪農加工品の余剰産物であ
る乳清から、経済的に安定して、液状油脂代替品が得ら
れる。この製品は、ニュートニアンな粘性を示し、しか
も、比較的低カロリーでありながら、油脂状の食感を呈
するため、食用又は食品添加物として、非常に有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する調整乳清ゾルの製造工程を示
す説明図である。
【図2】実施例1の検体A(調整乳清ゾル─タンパク質
含量6%)の流動解析で得られたS−D曲線である。
【図3】実施例1の検体A(調整乳清ゾル─タンパク質
含量6%)の流動解析で得られたη−D曲線である。
【図4】実施例1の検体B(調整乳清ゾル─タンパク質
含量6.5%)の流動解析で得られたS−D曲線である。
【図5】実施例1の検体B(調整乳清ゾル─タンパク質
含量6.5%)の流動解析で得られたη−D曲線である。
【図6】実施例1の検体C(調整乳清ゾル─タンパク質
含量6.7%)の流動解析で得られたS−D曲線である。
【図7】実施例1の検体C(調整乳清ゾル─タンパク質
含量6.7%)の流動解析で得られたη−D曲線である。
【図8】実施例1の検体D(生卵白液─タンパク質含量
3%)の流動解析で得られたS−D曲線である。
【図9】実施例1の検体D(生卵白液─タンパク質含量
3%)の流動解析で得られたη−D曲線である。
【図10】実施例1の検体E(サラダ油)の流動解析で
得られたS−D曲線である。
【図11】実施例1の検体E(サラダ油)の流動解析で
得られたη−D曲線である。
【図12】実施例2の検体(調整乳清ゾル─タンパク質
含量6%)の流動解析で得たS−D曲線である。
【図13】実施例2の検体(調整乳清ゾル─タンパク質
含量6%)の流動解析で得たη−D曲線である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // A23D 7/00 504 A23D 7/00 504

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 精製した乳清タンパク質を、無塩または
    低イオン強度下、pH4以下または6以上において、5
    5℃以上に加熱して得られた物に、500mM以下の有機
    または無機塩を添加したものからなり、タンパク質濃度
    が1〜20%である粘稠液で、ニュートニアンの挙動を
    示すものであることを特徴とする液状油脂代替品。
  2. 【請求項2】 請求項1の液状油脂代替品からなること
    を特徴とする食用又は食品添加物。
  3. 【請求項3】 サラダ油の代わりに請求項1の液状油脂
    代替品を使用してなることを特徴とするサラダドレッシ
    ング。
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