JP3132133B2 - アルミニウム缶胴の化成被膜形成方法および装置 - Google Patents
アルミニウム缶胴の化成被膜形成方法および装置Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、清涼飲料やビール等の
容器として使用されるアルミニウム缶胴の表面に、Zr
化成被膜を形成するための方法および装置に関する。
容器として使用されるアルミニウム缶胴の表面に、Zr
化成被膜を形成するための方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にアルミニウム缶は、周壁部および
底部とからなる有底円筒状の缶胴と、この缶胴の開口部
に嵌合される円形の缶蓋とから構成されており、前記缶
胴は現在、次のような工程を経て製造されている。
底部とからなる有底円筒状の缶胴と、この缶胴の開口部
に嵌合される円形の缶蓋とから構成されており、前記缶
胴は現在、次のような工程を経て製造されている。
【0003】まず、アルミ板を深絞り成形した後、成形
時に付着した潤滑油や汚れを脱脂工程で除去する。次
に、脱脂した缶胴の表面に化成処理を施して、耐食性お
よび塗装性を高めるための化成被膜を形成する。さら
に、缶胴の内面および外面を塗装したうえ、缶胴の開口
部近傍に複数段の絞り加工(ネッキング加工)を施し、
くびれたネック部を形成する。
時に付着した潤滑油や汚れを脱脂工程で除去する。次
に、脱脂した缶胴の表面に化成処理を施して、耐食性お
よび塗装性を高めるための化成被膜を形成する。さら
に、缶胴の内面および外面を塗装したうえ、缶胴の開口
部近傍に複数段の絞り加工(ネッキング加工)を施し、
くびれたネック部を形成する。
【0004】前記化成処理は通常、クロムまたはジルコ
ニウムのリン酸塩系溶液を缶胴の表面に吹き付けて行な
われ、これにより、厚さ数10〜数100オングストロ
ーム程度のリン酸クロム系(Cr量換算で8〜50mg
/m2)またはリン酸ジルコニウム系(Zr量換算で5
〜20mg/m2)の化成被膜が缶胴表面に形成され
る。 なお、リン酸クロム系化成処理では6価クロムを
含む廃液が生じるため、最近ではリン酸ジルコニウム系
化成被膜が主流となりつつある。
ニウムのリン酸塩系溶液を缶胴の表面に吹き付けて行な
われ、これにより、厚さ数10〜数100オングストロ
ーム程度のリン酸クロム系(Cr量換算で8〜50mg
/m2)またはリン酸ジルコニウム系(Zr量換算で5
〜20mg/m2)の化成被膜が缶胴表面に形成され
る。 なお、リン酸クロム系化成処理では6価クロムを
含む廃液が生じるため、最近ではリン酸ジルコニウム系
化成被膜が主流となりつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、例えば缶胴
にZr化成被膜を形成する場合、以下のような解決しが
たい問題があった。 化成被膜の厚さがZr換算7mg/m2 以下である
と、缶胴に内容物を充填して缶蓋を固定し、温水殺菌
(パステライザーと称する)を行う段階で、化成被膜が
露出している缶底部外面が腐食し、黒変する。
にZr化成被膜を形成する場合、以下のような解決しが
たい問題があった。 化成被膜の厚さがZr換算7mg/m2 以下である
と、缶胴に内容物を充填して缶蓋を固定し、温水殺菌
(パステライザーと称する)を行う段階で、化成被膜が
露出している缶底部外面が腐食し、黒変する。
【0006】 缶内容物に雑菌繁殖の可能性があるコ
ーヒー,ウーロン茶等の場合には、缶胴の水蒸気殺菌
(レトルトと称する)が必要となり、缶胴底部外面の腐
食を防ぐためにはZr換算量20mg/m2 以上の被膜
量が必要となる。
ーヒー,ウーロン茶等の場合には、缶胴の水蒸気殺菌
(レトルトと称する)が必要となり、缶胴底部外面の腐
食を防ぐためにはZr換算量20mg/m2 以上の被膜
量が必要となる。
【0007】 しかし、缶胴の表面にZr換算16m
g/m2 以上の被膜を形成した場合には、ネック部の絞
り加工時にネック部のZr化成被膜が凝集破壊され、そ
の上の塗膜が剥離するため、缶胴開口部側の被膜量はZ
r換算16mg/m2未満に制限される。 さらに、Zr化成処理液を単に缶胴に作用させる方
法では、Zr換算20mg/m2程度で化成処理反応が
飽和するから、それ以上の厚さの化成被膜を得ることが
困難である。
g/m2 以上の被膜を形成した場合には、ネック部の絞
り加工時にネック部のZr化成被膜が凝集破壊され、そ
の上の塗膜が剥離するため、缶胴開口部側の被膜量はZ
r換算16mg/m2未満に制限される。 さらに、Zr化成処理液を単に缶胴に作用させる方
法では、Zr換算20mg/m2程度で化成処理反応が
飽和するから、それ以上の厚さの化成被膜を得ることが
困難である。
【0008】上記〜のような制約があるために、現
在では、特公平3−53170号公報にも記載されてい
るように、缶胴の表面全面に亙って化成被膜量をZr換
算8〜15mg/m2 の範囲内の一定値に厳密に管理し
ている。このため、缶底部では化成被膜量が不足して耐
食性に不満がある一方、缶胴周面では化成被膜量が過剰
となり化成被膜がもろくなって、ネック部の塗膜安定性
即ち塗膜の密着性に不安が生じる問題を有している。
在では、特公平3−53170号公報にも記載されてい
るように、缶胴の表面全面に亙って化成被膜量をZr換
算8〜15mg/m2 の範囲内の一定値に厳密に管理し
ている。このため、缶底部では化成被膜量が不足して耐
食性に不満がある一方、缶胴周面では化成被膜量が過剰
となり化成被膜がもろくなって、ネック部の塗膜安定性
即ち塗膜の密着性に不安が生じる問題を有している。
【0009】また、従来法では、処理効率を上げるため
に化成処理液の濃度を比較的高濃度に維持する必要があ
り、結果的に液の使用効率が低くなり、ランニングコス
トがかかるという欠点もある。さらに、前述のレトルト
処理を行う必要のある場合には、缶胴の周壁部の塗膜と
は別に底部表面に有機系塗膜を形成して耐食性を補なわ
なければならず、いっそう生産性が悪化する。
に化成処理液の濃度を比較的高濃度に維持する必要があ
り、結果的に液の使用効率が低くなり、ランニングコス
トがかかるという欠点もある。さらに、前述のレトルト
処理を行う必要のある場合には、缶胴の周壁部の塗膜と
は別に底部表面に有機系塗膜を形成して耐食性を補なわ
なければならず、いっそう生産性が悪化する。
【0010】なお、この種の問題は程度の差こそあれ、
クロム化成処理液など他種の化成処理液にもいえること
である。また、化成処理は化学反応であるために、膜厚
を制御するには反応時間または処理液濃度を変更しなけ
ればならない。このため、缶胴の表面で局部的に膜厚を
変更することは困難であり、そのような試みは従来なさ
れていない。
クロム化成処理液など他種の化成処理液にもいえること
である。また、化成処理は化学反応であるために、膜厚
を制御するには反応時間または処理液濃度を変更しなけ
ればならない。このため、缶胴の表面で局部的に膜厚を
変更することは困難であり、そのような試みは従来なさ
れていない。
【0011】そこで、本発明者らは、缶胴に対して電圧
を印加することにより化成被膜の形成量を制御できない
かとの観点から種々実験を試み、化成処理液中での缶胴
表面の電極電位を、電圧を印加しない場合の自然電位よ
りも貴にすると、缶胴表面が酸化性雰囲気となり、化成
処理反応が促進されて、より速く厚い化成被膜が形成さ
れるという新規な現象を見いだすに至った。
を印加することにより化成被膜の形成量を制御できない
かとの観点から種々実験を試み、化成処理液中での缶胴
表面の電極電位を、電圧を印加しない場合の自然電位よ
りも貴にすると、缶胴表面が酸化性雰囲気となり、化成
処理反応が促進されて、より速く厚い化成被膜が形成さ
れるという新規な現象を見いだすに至った。
【0012】本発明は上記知見に基づいてなされたもの
で、缶胴の周壁部よりも底部の外表面で厚い化成被膜を
形成することができ、缶胴底部外面の耐食性を向上する
とともに周面の塗膜安定性が高められるアルミニウム缶
胴の化成被膜形成方法および装置を提供することを課題
としている。
で、缶胴の周壁部よりも底部の外表面で厚い化成被膜を
形成することができ、缶胴底部外面の耐食性を向上する
とともに周面の塗膜安定性が高められるアルミニウム缶
胴の化成被膜形成方法および装置を提供することを課題
としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明のアルミニウム缶胴の化成被膜形成方法は、
円筒状の周壁部とこの周壁部の一端を塞ぐ底部とからな
るアルミニウム缶胴の表面に化成処理液を作用させ、前
記缶胴の表面に化成被膜を形成するアルミニウム缶胴の
化成被膜形成方法において、前記化成被膜の形成に際
し、缶胴を電界中に保持し化成処理液と接触している缶
胴外表面の電極電位が缶胴の開口部側よりも前記底部外
面側で貴になるように電界を形成することを特徴として
いる。
に、本発明のアルミニウム缶胴の化成被膜形成方法は、
円筒状の周壁部とこの周壁部の一端を塞ぐ底部とからな
るアルミニウム缶胴の表面に化成処理液を作用させ、前
記缶胴の表面に化成被膜を形成するアルミニウム缶胴の
化成被膜形成方法において、前記化成被膜の形成に際
し、缶胴を電界中に保持し化成処理液と接触している缶
胴外表面の電極電位が缶胴の開口部側よりも前記底部外
面側で貴になるように電界を形成することを特徴として
いる。
【0014】なお、前記化成処理液は、Zr化成処理液
であってもよい。また、Zr化成処理液における前記缶
胴の底部表面の電極電位は、飽和甘汞電極を基準として
0mVより貴であってもよい。また、陰極に接触させた
化成処理液を液の連絡性をもって缶胴の底部の外表面側
から缶胴外表面に吹き付ける一方、缶胴を電源正極に導
通接続し、前記陰極と前記缶胴との間に電圧をかけるこ
とにより、前記電圧印加を行ってもよい。
であってもよい。また、Zr化成処理液における前記缶
胴の底部表面の電極電位は、飽和甘汞電極を基準として
0mVより貴であってもよい。また、陰極に接触させた
化成処理液を液の連絡性をもって缶胴の底部の外表面側
から缶胴外表面に吹き付ける一方、缶胴を電源正極に導
通接続し、前記陰極と前記缶胴との間に電圧をかけるこ
とにより、前記電圧印加を行ってもよい。
【0015】また、陰極に接触させた化成処理液を、缶
胴の底部外表面側から連続した水流として缶胴外表面に
沿って流す一方、缶胴を通り過ぎた水流を陽極に接触さ
せ、前記陰極と前記陽極との間に電圧をかけることによ
り、前記缶胴に間接的に電圧印加を行ってもよい。ま
た、化成被膜の形成過程の前期には前記電圧印加を行わ
ず、化成被膜の形成過程の後期にのみ前記電圧印加を行
なってもよい。
胴の底部外表面側から連続した水流として缶胴外表面に
沿って流す一方、缶胴を通り過ぎた水流を陽極に接触さ
せ、前記陰極と前記陽極との間に電圧をかけることによ
り、前記缶胴に間接的に電圧印加を行ってもよい。ま
た、化成被膜の形成過程の前期には前記電圧印加を行わ
ず、化成被膜の形成過程の後期にのみ前記電圧印加を行
なってもよい。
【0016】一方、本発明に係わる第1のアルミニウム
缶胴の化成被膜形成装置は、円筒状の周壁部とこの周壁
部の一端を塞ぐ底部とからなるアルミニウム缶胴の表面
に化成処理液を作用させ、前記缶胴の表面に化成被膜を
形成するためのアルミニウム缶胴の化成被膜形成装置で
あって、前記化成処理液を缶胴の表面に沿って底部側か
ら開口部側へ流通させる処理液供給手段と、缶胴表面に
供給される直前の化成処理液を電源負極に導通させる陰
極通電手段と、缶胴を支持するとともに缶胴を電源正極
に導通させる陽極通電手段とを具備することを特徴とし
ている。
缶胴の化成被膜形成装置は、円筒状の周壁部とこの周壁
部の一端を塞ぐ底部とからなるアルミニウム缶胴の表面
に化成処理液を作用させ、前記缶胴の表面に化成被膜を
形成するためのアルミニウム缶胴の化成被膜形成装置で
あって、前記化成処理液を缶胴の表面に沿って底部側か
ら開口部側へ流通させる処理液供給手段と、缶胴表面に
供給される直前の化成処理液を電源負極に導通させる陰
極通電手段と、缶胴を支持するとともに缶胴を電源正極
に導通させる陽極通電手段とを具備することを特徴とし
ている。
【0017】また、本発明の第2の装置は、化成処理液
を缶胴の表面に沿って底部側から開口部側へ流通させる
処理液供給手段と、缶胴表面に供給される直前の化成処
理液を電源負極に導通させる陰極通電手段と、缶胴を通
り過ぎた液流を電源正極に導通させる陽極通電手段とを
具備することを特徴とする。
を缶胴の表面に沿って底部側から開口部側へ流通させる
処理液供給手段と、缶胴表面に供給される直前の化成処
理液を電源負極に導通させる陰極通電手段と、缶胴を通
り過ぎた液流を電源正極に導通させる陽極通電手段とを
具備することを特徴とする。
【0018】
【作用】本発明のアルミニウム缶胴の化成被膜形成方法
および装置においては、化成処理液に対する缶胴表面の
電位が、缶胴の開口部側よりも底部外面側で高くなるよ
うに缶胴に電圧を印加することにより、缶胴の底部側の
外表面を、開口部側の表面よりも強い酸化性雰囲気と
し、底部側の外表面での化成被膜生成速度を開口部側よ
りも相対的に高め、底部の外表面化成被膜量を開口部側
より大きくすることができる。
および装置においては、化成処理液に対する缶胴表面の
電位が、缶胴の開口部側よりも底部外面側で高くなるよ
うに缶胴に電圧を印加することにより、缶胴の底部側の
外表面を、開口部側の表面よりも強い酸化性雰囲気と
し、底部側の外表面での化成被膜生成速度を開口部側よ
りも相対的に高め、底部の外表面化成被膜量を開口部側
より大きくすることができる。
【0019】これにより、缶底部外面に十分な耐食性を
付与するとともに、缶周面の化成被膜の柔軟性を高める
ことにより周部での塗膜安定性を向上し、ネッキング加
工時に周壁部の塗膜が剥離することが防止できる。しか
も、缶底部での化成被膜の形成速度を、従来法より向上
することが可能であるから、化成処理に要する時間を低
減し、生産効率が向上でき、その分、液使用効率の向上
も図れる。
付与するとともに、缶周面の化成被膜の柔軟性を高める
ことにより周部での塗膜安定性を向上し、ネッキング加
工時に周壁部の塗膜が剥離することが防止できる。しか
も、缶底部での化成被膜の形成速度を、従来法より向上
することが可能であるから、化成処理に要する時間を低
減し、生産効率が向上でき、その分、液使用効率の向上
も図れる。
【0020】さらに、Zr化成処理液を使用した場合に
は、電位をかけることにより、従来法では形成困難だっ
たZr換算20mg/m2以上の化成被膜を缶底部外表
面に形成することが容易であるから、水蒸気殺菌を行う
際にも、缶底部外表面に有機系塗膜を形成せずに済ませ
ることが可能となる。
は、電位をかけることにより、従来法では形成困難だっ
たZr換算20mg/m2以上の化成被膜を缶底部外表
面に形成することが容易であるから、水蒸気殺菌を行う
際にも、缶底部外表面に有機系塗膜を形成せずに済ませ
ることが可能となる。
【0021】
【実施例】以下、本発明に係わるアルミニウム缶胴の化
成被膜形成方法および装置の一実施例を詳細に説明す
る。なお、以下の実施例ではZr化成処理について説明
しているが、本発明は他にクロム化成処理に付いても適
用可能である。
成被膜形成方法および装置の一実施例を詳細に説明す
る。なお、以下の実施例ではZr化成処理について説明
しているが、本発明は他にクロム化成処理に付いても適
用可能である。
【0022】図1は、本発明の装置の一実施例を示す正
面図で、図中符号1は金属製メッシュ体からなる搬送ベ
ルト(陽極通電手段)である。この搬送ベルト1は、図
示しない前工程から、洗浄された缶胴Wを次工程まで水
平に搬送するもので、その上面に缶胴Wが等間隔毎1列
に並べられ、底部を上にして載置される。搬送ベルト1
の材質としては、Zr化成処理液により腐食しないよう
に、SUS316,SUS304等が好適である。
面図で、図中符号1は金属製メッシュ体からなる搬送ベ
ルト(陽極通電手段)である。この搬送ベルト1は、図
示しない前工程から、洗浄された缶胴Wを次工程まで水
平に搬送するもので、その上面に缶胴Wが等間隔毎1列
に並べられ、底部を上にして載置される。搬送ベルト1
の材質としては、Zr化成処理液により腐食しないよう
に、SUS316,SUS304等が好適である。
【0023】搬送ベルト1の上方には、搬送ベルト1と
平行に給液パイプ(陰極通電手段)2が配置されてい
る。この給液パイプ2には、図示しないケミカルポンプ
を介してZr化成処理液が供給されるようになってお
り、給液パイプ2の下面には、間隔を空けて複数の流下
ノズル(処理液供給手段)4が下向きに取り付けられて
いる。これら流下ノズル4は、搬送ベルト1の幅方向に
延びる複数(図では3個)のスリット4Aを有し、これ
らスリット4Aから、搬送ベルト1上にまで切れ目なく
連続する液流Aを帯状に落下させる。これら液流Aの幅
は、缶胴Wの幅よりも大きい程度とされ、下を通過する
缶胴Wを均一に濡らす。
平行に給液パイプ(陰極通電手段)2が配置されてい
る。この給液パイプ2には、図示しないケミカルポンプ
を介してZr化成処理液が供給されるようになってお
り、給液パイプ2の下面には、間隔を空けて複数の流下
ノズル(処理液供給手段)4が下向きに取り付けられて
いる。これら流下ノズル4は、搬送ベルト1の幅方向に
延びる複数(図では3個)のスリット4Aを有し、これ
らスリット4Aから、搬送ベルト1上にまで切れ目なく
連続する液流Aを帯状に落下させる。これら液流Aの幅
は、缶胴Wの幅よりも大きい程度とされ、下を通過する
缶胴Wを均一に濡らす。
【0024】給液パイプ2の上方には、給液パイプ6が
搬送ベルト1と平行に配置され、ケミカルポンプ8を介
してZr化成処理液が供給されるようになっている。こ
の給液パイプ6の下面には、流下ノズル4同士の中間位
置とそれぞれ対応して、複数のスプレーノズル10が取
り付けられ、これらスプレーノズル10から搬送ベルト
1の上面に、Zr化成処理液が均一に散布される。
搬送ベルト1と平行に配置され、ケミカルポンプ8を介
してZr化成処理液が供給されるようになっている。こ
の給液パイプ6の下面には、流下ノズル4同士の中間位
置とそれぞれ対応して、複数のスプレーノズル10が取
り付けられ、これらスプレーノズル10から搬送ベルト
1の上面に、Zr化成処理液が均一に散布される。
【0025】また、搬送ベルト1の下方には、搬送ベル
ト1と平行に給液パイプ12が配置され、ケミカルポン
プ14を介してZr化成処理液が供給されるようになっ
ている。この給液パイプ12の上面には、スプレーノズ
ル16が搬送ベルト1に向けて前記スプレーノズル10
と対向するように取り付けられ、搬送ベルト1の編目を
通して缶胴W、特に内側にZr化成処理液を散布する。
ト1と平行に給液パイプ12が配置され、ケミカルポン
プ14を介してZr化成処理液が供給されるようになっ
ている。この給液パイプ12の上面には、スプレーノズ
ル16が搬送ベルト1に向けて前記スプレーノズル10
と対向するように取り付けられ、搬送ベルト1の編目を
通して缶胴W、特に内側にZr化成処理液を散布する。
【0026】次に、上記装置を用いた化成被膜形成方法
の一実施例を説明する。本発明に使用されるZr化成処
理液は、従来から使用されているいかなるものでもよ
く、例えば以下のような組成が挙げられる。 (NH4)2ZrF6:120ppm H3PO4 : 70 〃 HBF4 : 70 〃 グルコン酸Na : 50 〃 HF : 20 〃 HNO3 :100 〃
の一実施例を説明する。本発明に使用されるZr化成処
理液は、従来から使用されているいかなるものでもよ
く、例えば以下のような組成が挙げられる。 (NH4)2ZrF6:120ppm H3PO4 : 70 〃 HBF4 : 70 〃 グルコン酸Na : 50 〃 HF : 20 〃 HNO3 :100 〃
【0027】また、本発明の対象となる缶胴Wの材質
は、従来使用されているいかなるものでもよく、例えば
JISA3004やJISA5182が一般的である。
例えばJISA3004は、以下の組成からなる合金で
ある。 Al: 95.5〜98.2wt% Mg:0.8〜1.3wt% Mn:1.0〜1.5wt% Cu:0.25wt%以下
は、従来使用されているいかなるものでもよく、例えば
JISA3004やJISA5182が一般的である。
例えばJISA3004は、以下の組成からなる合金で
ある。 Al: 95.5〜98.2wt% Mg:0.8〜1.3wt% Mn:1.0〜1.5wt% Cu:0.25wt%以下
【0028】この実施例の方法ではまず、搬送ベルト1
を電源正極に接続するとともに、給液パイプ2を電源負
極に接続する。電源電圧の好適値は、処理条件によって
異なり、一概にはいえないが、搬送ベルト1上の缶胴心
の底部外面から流下ノズル4の下面までの高さH2でそ
の電圧値を割った電界強度が4〜500V/m程度であ
ることが好ましく、より望ましくは7〜150V/m程
度とされる。4V/mより小さいと缶底部におけるZr
化成被膜量を相対的に増大する効果が十分得られず、5
00V/mよりも高くなると、それ以上効果が向上しな
いうえ、被膜および液の破壊等のおそれを生じる。
を電源正極に接続するとともに、給液パイプ2を電源負
極に接続する。電源電圧の好適値は、処理条件によって
異なり、一概にはいえないが、搬送ベルト1上の缶胴心
の底部外面から流下ノズル4の下面までの高さH2でそ
の電圧値を割った電界強度が4〜500V/m程度であ
ることが好ましく、より望ましくは7〜150V/m程
度とされる。4V/mより小さいと缶底部におけるZr
化成被膜量を相対的に増大する効果が十分得られず、5
00V/mよりも高くなると、それ以上効果が向上しな
いうえ、被膜および液の破壊等のおそれを生じる。
【0029】上記のように電圧を印加することにより、
Zr化成処理液に対する缶胴表面の電位は、缶胴の開口
部側よりも底部外面側で貴になる。その理由は次のよう
に説明される。缶胴Wと陰極間にZr化成処理液を介し
て電圧を印加すると、缶胴Wの各部位には陰極間の抵抗
に反比例した電流が流れ、缶胴Wの各部位は流れた電流
値に対応する活性化分極を生ずる。したがって陰極との
距離の最も近い缶胴Wの底部外表面に最も多くの電流が
流れ、活性化分極が最も大きくなり、缶底部外表面の電
位の方が、開口部側の電位よりも貴になる。
Zr化成処理液に対する缶胴表面の電位は、缶胴の開口
部側よりも底部外面側で貴になる。その理由は次のよう
に説明される。缶胴Wと陰極間にZr化成処理液を介し
て電圧を印加すると、缶胴Wの各部位には陰極間の抵抗
に反比例した電流が流れ、缶胴Wの各部位は流れた電流
値に対応する活性化分極を生ずる。したがって陰極との
距離の最も近い缶胴Wの底部外表面に最も多くの電流が
流れ、活性化分極が最も大きくなり、缶底部外表面の電
位の方が、開口部側の電位よりも貴になる。
【0030】すると缶底部では、Zr化成処理液と缶表
面との電位差が拡大して、Al→Al3+の酸化溶解反応
が促進されて、Zr被膜の形成が行われる。Zrに限ら
ず、化成処理被膜の形成反応は、アルミニウムの酸化溶
解反応を伴って化成被膜を生成させるものであるから、
アルミニウム表面を貴に分極すると化成被膜の形成速度
が向上する。
面との電位差が拡大して、Al→Al3+の酸化溶解反応
が促進されて、Zr被膜の形成が行われる。Zrに限ら
ず、化成処理被膜の形成反応は、アルミニウムの酸化溶
解反応を伴って化成被膜を生成させるものであるから、
アルミニウム表面を貴に分極すると化成被膜の形成速度
が向上する。
【0031】一方、缶胴Wの開口部側では、陰極との距
離が最も大きく、このため抵抗分極が大きくなり、相対
的に活性化分極が小さいので、Zr化成処理液と缶表面
との電位差の拡大が小さく、アルミニウムの溶解速度の
増大が小さいため、缶底部に比較して低い反応速度で化
成被膜が形成される。これにより、開口部側に比して缶
底部側では被膜量の大きい化成被膜が形成される。
離が最も大きく、このため抵抗分極が大きくなり、相対
的に活性化分極が小さいので、Zr化成処理液と缶表面
との電位差の拡大が小さく、アルミニウムの溶解速度の
増大が小さいため、缶底部に比較して低い反応速度で化
成被膜が形成される。これにより、開口部側に比して缶
底部側では被膜量の大きい化成被膜が形成される。
【0032】これにより、缶底部外面の化成被膜厚さと
缶胴Wの開口部近傍の化成被膜厚さの制御が可能とな
り、缶底部の耐食性を向上すると同時に、ネッキング加
工時にネック部の塗膜が剥離することが防止できる。し
かも、電圧を印加しない場合に比して化成被膜の形成速
度を向上することが可能であるから、化成処理に要する
時間を短縮し、缶胴の生産効率および液使用効率の向上
が図れる。
缶胴Wの開口部近傍の化成被膜厚さの制御が可能とな
り、缶底部の耐食性を向上すると同時に、ネッキング加
工時にネック部の塗膜が剥離することが防止できる。し
かも、電圧を印加しない場合に比して化成被膜の形成速
度を向上することが可能であるから、化成処理に要する
時間を短縮し、缶胴の生産効率および液使用効率の向上
が図れる。
【0033】さらに、電位をかけることにより、従来法
では形成困難だったZr換算20mg/m2 以上の厚さ
の化成被膜を、缶底部に形成することが容易となり、缶
胴の水蒸気殺菌(レトルト)を行う場合にも、缶底部に
有機系塗膜を形成せずに済ませることが可能となり、底
部塗装工程をなくすことができる。また、従来必要以上
についていた周壁部のZr被膜を少なくできるため、コ
スト低下もはかれる。
では形成困難だったZr換算20mg/m2 以上の厚さ
の化成被膜を、缶底部に形成することが容易となり、缶
胴の水蒸気殺菌(レトルト)を行う場合にも、缶底部に
有機系塗膜を形成せずに済ませることが可能となり、底
部塗装工程をなくすことができる。また、従来必要以上
についていた周壁部のZr被膜を少なくできるため、コ
スト低下もはかれる。
【0034】なお、上記実施例では、搬送ベルト1に電
源正極、給液パイプ2に電源負極を接続していたが、本
発明はこの構成に限定されない。例えば、図1に示すよ
うに、搬送ベルト1に電源正極を接続する代わりに、搬
送ベルト1の下方に陽極板(陽極通電手段)18を配置
し、これを電源正極に接続する構成も可能である。
源正極、給液パイプ2に電源負極を接続していたが、本
発明はこの構成に限定されない。例えば、図1に示すよ
うに、搬送ベルト1に電源正極を接続する代わりに、搬
送ベルト1の下方に陽極板(陽極通電手段)18を配置
し、これを電源正極に接続する構成も可能である。
【0035】この場合、流下ノズル4からの連続した液
流Aが陽極板18に達し、電流は基本的には液流Aを伝
わって流れるが、缶胴Wを構成するアルミニウムはZr
化成処理液に比して優れた電気伝導性を有するため、陽
極板18より流れた電流は液流Aを伝わって一部は缶胴
W開口部近傍より一度缶胴内に入り、缶胴を通って缶胴
外表面より液流Aに流れ出て合流し陰極に至る。
流Aが陽極板18に達し、電流は基本的には液流Aを伝
わって流れるが、缶胴Wを構成するアルミニウムはZr
化成処理液に比して優れた電気伝導性を有するため、陽
極板18より流れた電流は液流Aを伝わって一部は缶胴
W開口部近傍より一度缶胴内に入り、缶胴を通って缶胴
外表面より液流Aに流れ出て合流し陰極に至る。
【0036】すなわち缶底部側ではアルミニウムが正と
なり、アルミニウムの酸化が促進されてZr被膜の形成
が促進されるが、一方ネック部側では流入電流によりア
ルミニウムの酸化が抑制されてZr被膜の形成速度が低
下する。したがって、電圧を印加しない場合に比して、
缶底部では化成被膜量が増し、ネック部では化成被膜量
が減少する。
なり、アルミニウムの酸化が促進されてZr被膜の形成
が促進されるが、一方ネック部側では流入電流によりア
ルミニウムの酸化が抑制されてZr被膜の形成速度が低
下する。したがって、電圧を印加しない場合に比して、
缶底部では化成被膜量が増し、ネック部では化成被膜量
が減少する。
【0037】酸化促進領域と還元促進領域の境界位置
は、流下ノズル4と陽極板18の間における缶胴Wの位
置に拘らず、ほぼ缶胴Wの上下方向中央部になる。ま
た、流下ノズル4と陽極板18の間隔を狭めるか、両者
間の電圧を上げると、それぞれの部位において酸化性あ
るいは還元性が強くなり、缶底部とネック部との化成被
膜量の差が拡大する。
は、流下ノズル4と陽極板18の間における缶胴Wの位
置に拘らず、ほぼ缶胴Wの上下方向中央部になる。ま
た、流下ノズル4と陽極板18の間隔を狭めるか、両者
間の電圧を上げると、それぞれの部位において酸化性あ
るいは還元性が強くなり、缶底部とネック部との化成被
膜量の差が拡大する。
【0038】図1の例では、スプレーノズル10と流下
ノズル4を搬送ベルト1の進行方向に向けて交互に設置
していたが、必ずしもスプレーノズル10と流下ノズル
4を交互に配置する必要はなく、スプレーノズル10
だけを設けた区間、および流下ノズル4だけを設けた区
間に分けても良いし、スプレーノズル10を省いて流
下ノズル4のみとした構成、あるいは給液パイプ6に
電源陰極を接続するとともに、給液パイプ2および流下
ノズル4を省いた構成も可能である。
ノズル4を搬送ベルト1の進行方向に向けて交互に設置
していたが、必ずしもスプレーノズル10と流下ノズル
4を交互に配置する必要はなく、スプレーノズル10
だけを設けた区間、および流下ノズル4だけを設けた区
間に分けても良いし、スプレーノズル10を省いて流
下ノズル4のみとした構成、あるいは給液パイプ6に
電源陰極を接続するとともに、給液パイプ2および流下
ノズル4を省いた構成も可能である。
【0039】上記構成においては、処理液流を通じて
搬送ベルト1と給液パイプ6との導通がとれるようにす
ることが必要であり、スプレーノズル10の処理液噴き
出し角度を狭くし、処理液の噴き出し密度を高めること
が好ましい。さらに、この構成において、搬送ベルト
1に電源正極を接続する代わりに、搬送ベルト1の下方
に陽極板18を配置し、これを電源正極に接続する構成
も可能である。
搬送ベルト1と給液パイプ6との導通がとれるようにす
ることが必要であり、スプレーノズル10の処理液噴き
出し角度を狭くし、処理液の噴き出し密度を高めること
が好ましい。さらに、この構成において、搬送ベルト
1に電源正極を接続する代わりに、搬送ベルト1の下方
に陽極板18を配置し、これを電源正極に接続する構成
も可能である。
【0040】
【実験例】次に、実験例を挙げて本発明の効果を実証す
る。 (実験例1)図2に示す実験装置を使用し、Zr化成処
理液に浸漬したアルミニウム試験片の電位を、ポテンシ
オスタットを用いて任意の一定電位に保ちつつ、試験片
の電位と、形成されるZr化成被膜量とを比較した。
る。 (実験例1)図2に示す実験装置を使用し、Zr化成処
理液に浸漬したアルミニウム試験片の電位を、ポテンシ
オスタットを用いて任意の一定電位に保ちつつ、試験片
の電位と、形成されるZr化成被膜量とを比較した。
【0041】図2中符号20はビーカーで、Zr化成処
理液Lが満たされている。このZr化成処理液Lの組成
は次の通りである。 (NH4)2ZrF6 :120ppm H3PO4 : 70 〃 HBF4 : 70 〃 グルコン酸Na : 50 〃 HF : 20 〃 HNO3 :100 〃
理液Lが満たされている。このZr化成処理液Lの組成
は次の通りである。 (NH4)2ZrF6 :120ppm H3PO4 : 70 〃 HBF4 : 70 〃 グルコン酸Na : 50 〃 HF : 20 〃 HNO3 :100 〃
【0042】Zr処理化成液Lには、JISA3004
製の試験片22およびTi−Pr製の陰極板を浸漬し
た。試験片22およびこの陰極板24の寸法は等しく、
30×60×0.4mmであり、両者の間隔は130m
mとした。試験片2はリード線28を介してポテンシオ
スタット26の正極に接続され、陰極板24はリード線
30を介してポテンシオスタット26の負極に接続され
ている。
製の試験片22およびTi−Pr製の陰極板を浸漬し
た。試験片22およびこの陰極板24の寸法は等しく、
30×60×0.4mmであり、両者の間隔は130m
mとした。試験片2はリード線28を介してポテンシオ
スタット26の正極に接続され、陰極板24はリード線
30を介してポテンシオスタット26の負極に接続され
ている。
【0043】符号32は飽和甘汞基準電極32であり、
標準水素電極の電極電位を0Vとすれば、この基準電極
32の電極電位は0.2412Vである。基準電極32
はリード線34を介してポテンシオスタット26の基準
端子36に接続される一方、標準電極32はキャピラリ
(ガラス細管)38を介してZr化成処理液Lと接触
し、キャピラリ38の開口端は試験片22の表面近傍に
位置決めされている。
標準水素電極の電極電位を0Vとすれば、この基準電極
32の電極電位は0.2412Vである。基準電極32
はリード線34を介してポテンシオスタット26の基準
端子36に接続される一方、標準電極32はキャピラリ
(ガラス細管)38を介してZr化成処理液Lと接触
し、キャピラリ38の開口端は試験片22の表面近傍に
位置決めされている。
【0044】この構成により、試験片22の電極部位を
基準電極32との電位差として測定し、その値に基づい
て試験片22のZr化成処理液L中における電極電位を
任意の一定値にフィードバック制御しつつ、化成処理を
行った。
基準電極32との電位差として測定し、その値に基づい
て試験片22のZr化成処理液L中における電極電位を
任意の一定値にフィードバック制御しつつ、化成処理を
行った。
【0045】化成処理の条件は、処理液温度35℃、無
攪拌、反応時間30秒とした。その結果を図3に示す。
グラフの横軸は、試験片22の基準電極である飽和甘汞
電極32に対する電極電位であり、縦軸は試験片22の
表面に形成されたZr化成被膜量を示している。また、
横軸の下方の数値は、この試験条件において陰極板24
と試験片22との間に印加した電圧(mV)を示してい
る。Zr化成被膜量は蛍光X線分析によって測定した。
攪拌、反応時間30秒とした。その結果を図3に示す。
グラフの横軸は、試験片22の基準電極である飽和甘汞
電極32に対する電極電位であり、縦軸は試験片22の
表面に形成されたZr化成被膜量を示している。また、
横軸の下方の数値は、この試験条件において陰極板24
と試験片22との間に印加した電圧(mV)を示してい
る。Zr化成被膜量は蛍光X線分析によって測定した。
【0046】この結果から明らかなように、試験片22
の電極電位を、グラフ中黒丸で示す自然電位(基準電極
に対し約−900mV)よりも貴にしていくと、形成さ
れるZr化成被膜量が徐々に増していき、基準電極に対
し0mV程度より貴ではZr換算20mg/m2 以上で
ほぼ一定となる。また、試験片22の電極電位を自然電
位より卑にすると、形成されるZr化成被膜量が徐々に
減少した。したがって、缶胴の電極電位を調整すること
により、化成被膜量を広範に調整できること、および従
来法では困難だったZr換算20mg/m2 以上の被膜
が短時間で容易に得られることがわかる。
の電極電位を、グラフ中黒丸で示す自然電位(基準電極
に対し約−900mV)よりも貴にしていくと、形成さ
れるZr化成被膜量が徐々に増していき、基準電極に対
し0mV程度より貴ではZr換算20mg/m2 以上で
ほぼ一定となる。また、試験片22の電極電位を自然電
位より卑にすると、形成されるZr化成被膜量が徐々に
減少した。したがって、缶胴の電極電位を調整すること
により、化成被膜量を広範に調整できること、および従
来法では困難だったZr換算20mg/m2 以上の被膜
が短時間で容易に得られることがわかる。
【0047】(実験例2)実際のアルミニウム缶胴(高
さH1:124mm,外径:66mm)を図4に示す装
置にセットし、電圧印加した場合としない場合のそれぞ
れにおいて化成処理を行い、被膜量を比較した。
さH1:124mm,外径:66mm)を図4に示す装
置にセットし、電圧印加した場合としない場合のそれぞ
れにおいて化成処理を行い、被膜量を比較した。
【0048】図中40は電源正極に接続された金属メッ
シュ、42は電源負極に接続された金属メッシュ、44
は真下に配置された缶胴WにZr化成処理液を流下する
ノズルである。Zr化成処理液は実験例1と同じものを
使用した。缶底部と金属メッシュ42との距離H2は1
00mm、両者間の印加電圧は1000mVとした。ま
た、処理液温は35℃、処理液の吹き付け時間は20秒
とした。
シュ、42は電源負極に接続された金属メッシュ、44
は真下に配置された缶胴WにZr化成処理液を流下する
ノズルである。Zr化成処理液は実験例1と同じものを
使用した。缶底部と金属メッシュ42との距離H2は1
00mm、両者間の印加電圧は1000mVとした。ま
た、処理液温は35℃、処理液の吹き付け時間は20秒
とした。
【0049】処理条件と、蛍光X線分析にて測定した缶
底部およびネック部のZr被膜量を測定した。結果を表
1に示す。
底部およびネック部のZr被膜量を測定した。結果を表
1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】表1の結果から明らかなように、本発明の
化成被膜形成方法および装置では、電圧を印加すること
により、缶胴の缶底部により多くの化成被膜を形成する
ことが可能であり、また、印加電圧を高くすることによ
り化成被膜の形成速度を缶胴底部と缶胴開口部側とでコ
ントロールできた。
化成被膜形成方法および装置では、電圧を印加すること
により、缶胴の缶底部により多くの化成被膜を形成する
ことが可能であり、また、印加電圧を高くすることによ
り化成被膜の形成速度を缶胴底部と缶胴開口部側とでコ
ントロールできた。
【0052】(実験例3)実際のアルミニウム缶胴(高
さH1:124mm,外径:66mm)を図5に示す位
置にセットし、電圧印加した場合としない場合のそれぞ
れにおいて化成処理を行い、被膜量を比較した。図中5
0は電源正極に接続された金属メッシュ、52は電源負
極に接続された金属メッシュ、54は真下に配置された
缶胴WにZr化成処理液を流下するノズルである。
さH1:124mm,外径:66mm)を図5に示す位
置にセットし、電圧印加した場合としない場合のそれぞ
れにおいて化成処理を行い、被膜量を比較した。図中5
0は電源正極に接続された金属メッシュ、52は電源負
極に接続された金属メッシュ、54は真下に配置された
缶胴WにZr化成処理液を流下するノズルである。
【0053】Zr化成処理液は実験例1と同じものを使
用した。缶底部と金属メッシュ52との距離H2は75
mm、両者間の距離は270mm、両極間の印加電圧は
30Vとした。また、処理液温は35℃、処理液の吹き
付け時間は20秒とした。処理条件と、蛍光X線分析に
て測定した缶底部およびネック部のZr被膜量を測定し
た。結果を表2に示す。
用した。缶底部と金属メッシュ52との距離H2は75
mm、両者間の距離は270mm、両極間の印加電圧は
30Vとした。また、処理液温は35℃、処理液の吹き
付け時間は20秒とした。処理条件と、蛍光X線分析に
て測定した缶底部およびネック部のZr被膜量を測定し
た。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係わるア
ルミニウム缶胴の化成被膜形成方法および装置によれ
ば、缶胴を電界中に保持し、化成処理液と接触している
缶胴表面の電極電位が缶胴の開口部側よりも底部側で貴
になるように電界を形成することにより、缶胴の底部側
の外表面を、開口部側の表面よりも強い酸化性雰囲気と
し、底部側の外表面での化成被膜生成速度を開口部側よ
りも相対的に高め、底部の化成被膜量を開口部側より大
きくすることができる。
ルミニウム缶胴の化成被膜形成方法および装置によれ
ば、缶胴を電界中に保持し、化成処理液と接触している
缶胴表面の電極電位が缶胴の開口部側よりも底部側で貴
になるように電界を形成することにより、缶胴の底部側
の外表面を、開口部側の表面よりも強い酸化性雰囲気と
し、底部側の外表面での化成被膜生成速度を開口部側よ
りも相対的に高め、底部の化成被膜量を開口部側より大
きくすることができる。
【0056】これにより、缶底部に十分な耐食性を付与
するとともに、缶周面の化成被膜の柔軟性を向上するこ
とにより塗膜安定性を向上し、ネッキング加工時に周壁
部の塗膜が剥離することを防止できる。しかも、缶底部
での化成被膜の形成速度を、従来法より向上することが
可能であるから、化成処理に要する時間を低減し、生産
効率が向上でき、その分、液使用効率の向上も図れる。
さらに、Zr化成処理液を使用する場合には、電位をか
けることにより、従来法では形成困難だったZr換算2
0mg/m2以上の化成被膜を缶底部に形成することが
容易であるから、水蒸気殺菌を行う用途にも、缶底部に
有機系塗膜を形成せずに済ませることが可能となる。
するとともに、缶周面の化成被膜の柔軟性を向上するこ
とにより塗膜安定性を向上し、ネッキング加工時に周壁
部の塗膜が剥離することを防止できる。しかも、缶底部
での化成被膜の形成速度を、従来法より向上することが
可能であるから、化成処理に要する時間を低減し、生産
効率が向上でき、その分、液使用効率の向上も図れる。
さらに、Zr化成処理液を使用する場合には、電位をか
けることにより、従来法では形成困難だったZr換算2
0mg/m2以上の化成被膜を缶底部に形成することが
容易であるから、水蒸気殺菌を行う用途にも、缶底部に
有機系塗膜を形成せずに済ませることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるアルミニウム缶胴の化成被膜形
成装置の一実施例を示す正面図である。
成装置の一実施例を示す正面図である。
【図2】本発明の実験例1で使用した実験装置を示す正
面図である。
面図である。
【図3】本発明の効果を示すグラフである。
【図4】本発明の効果を示すグラフである。
【図5】本発明の実験例2で使用した実験装置を示す正
面図である。
面図である。
【図6】本発明の実験例3で使用した実験装置を示す正
面図である。
面図である。
W アルミニウム缶胴 1 搬送ベルト 2,6 給液パイプ 4 流下ノズル 4A 液流 8,14 ケミカルポンプ 10,16 スプレーノズル 12 給液パイプ 18 陽極板 40,50 電源正極に接続された金属メッシュ 42,52 電源負極に接続された金属メッシュ 44,54 流下ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 菊池 俊夫 埼玉県大宮市北袋町1丁目297番地 三 菱マテリアル株式会社 中央研究所内 (56)参考文献 特開 平2−180145(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 11/00 - 11/38 B65D 8/04
Claims (8)
- 【請求項1】円筒状の周壁部とこの周壁部の一端を塞ぐ
底部とからなるアルミニウム缶胴の表面に化成処理液を
作用させ、前記缶胴の表面に化成被膜を形成するアルミ
ニウム缶胴の化成被膜形成方法において、 前記化成被膜の形成に際し、缶胴を電界中に保持し、化
成処理液と接触している缶胴外表面の電極電位が缶胴の
開口部側よりも前記底部外面側で貴になるように、前記
電界を形成することを特徴とするアルミニウム缶胴の化
成被膜形成方法。 - 【請求項2】前記化成処理液は、Zr化成処理液である
ことを特徴とする請求項1記載のアルミニウム缶胴の化
成被膜形成方法。 - 【請求項3】Zr化成処理液における前記缶胴の底部の
外表面の電極電位は、飽和甘汞電極を基準として0mV
より貴であることを特徴とする請求項2記載のアルミニ
ウム缶胴の化成被膜形成方法。 - 【請求項4】陰極に接触させた化成処理液を液の連絡性
をもって缶胴の底部の外表面側から缶胴外表面に吹き付
ける一方、缶胴を電源正極に導通接続し、前記陰極と前
記缶胴との間に電圧をかけることにより、前記缶胴に電
圧印加を行うことを特徴とする請求項1,2または3記
載のアルミニウム缶胴の化成被膜形成方法。 - 【請求項5】陰極に接触させた化成処理液を、缶胴の底
部の外面側から連続した水流として缶胴外表面に沿って
流す一方、缶胴を通り過ぎた水流を陽極に接触させ、前
記陰極と前記陽極との間に電圧をかけることにより、前
記缶胴に間接的に電圧印加を行うことを特徴とする請求
項1,2または3記載のアルミニウム缶胴の化成被膜形
成方法。 - 【請求項6】化成被膜の形成過程の前期には前記電圧印
加を行わず、化成被膜の形成過程の後期にのみ前記電圧
印加を行なうことを特徴とする請求項1,2,3,4ま
たは5記載のアルミニウム缶胴の化成被膜形成方法。 - 【請求項7】円筒状の周壁部とこの周壁部の一端を塞ぐ
底部とからなるアルミニウム缶胴の表面に化成処理液を
作用させ、前記缶胴の表面に化成被膜を形成するための
アルミニウム缶胴の化成被膜形成装置であって、 前記化成処理液を缶胴の表面に沿って底部側から開口部
側へ流通させる処理液供給手段と、缶胴表面に供給され
る直前の化成処理液を電源負極に導通させる陰極通電手
段と、缶胴を支持するとともに缶胴を電源正極に導通さ
せる陽極通電手段とを具備することを特徴とするアルミ
ニウム缶胴の化成被膜形成装置。 - 【請求項8】円筒状の周壁部とこの周壁部の一端を塞ぐ
底部とからなるアルミニウム缶胴の表面に化成処理液を
接触させ、前記缶胴の表面に化成被膜を形成するための
アルミニウム缶胴の化成被膜形成装置であって、 前記化成処理液を缶胴の表面に沿って底部側から開口部
側へ流通させる処理液供給手段と、缶胴表面に供給され
る直前の化成処理液を電源負極に導通させる陰極通電手
段と、缶胴を通り過ぎた液流を電源正極に導通させる陽
極通電手段とを具備することを特徴とするアルミニウム
缶胴の化成被膜形成装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04085668A JP3132133B2 (ja) | 1992-04-07 | 1992-04-07 | アルミニウム缶胴の化成被膜形成方法および装置 |
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---|---|---|---|
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Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH05287587A JPH05287587A (ja) | 1993-11-02 |
JP3132133B2 true JP3132133B2 (ja) | 2001-02-05 |
Family
ID=13865208
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---|---|---|---|
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Country Status (1)
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---|---|
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Cited By (5)
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---|---|---|---|---|
US7569132B2 (en) * | 2001-10-02 | 2009-08-04 | Henkel Kgaa | Process for anodically coating an aluminum substrate with ceramic oxides prior to polytetrafluoroethylene or silicone coating |
US7820300B2 (en) | 2001-10-02 | 2010-10-26 | Henkel Ag & Co. Kgaa | Article of manufacture and process for anodically coating an aluminum substrate with ceramic oxides prior to organic or inorganic coating |
US8663807B2 (en) | 2001-10-02 | 2014-03-04 | Henkel Ag & Co. Kgaa | Article of manufacture and process for anodically coating aluminum and/or titanium with ceramic oxides |
US9023481B2 (en) | 2001-10-02 | 2015-05-05 | Henkel Ag & Co. Kgaa | Anodized coating over aluminum and aluminum alloy coated substrates and coated articles |
US9701177B2 (en) | 2009-04-02 | 2017-07-11 | Henkel Ag & Co. Kgaa | Ceramic coated automotive heat exchanger components |
Families Citing this family (2)
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---|---|---|---|---|
AU2011211399B2 (en) * | 2004-10-25 | 2013-05-16 | Henkel Kommanditgesellschaft Auf Aktien | Article of manufacturing and process for anodically coating aluminum and/or titanium with ceramic oxides |
US8048288B2 (en) * | 2009-11-25 | 2011-11-01 | Empire Technology Development Llc | Impressed current protection for food or beverage containers |
-
1992
- 1992-04-07 JP JP04085668A patent/JP3132133B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JPH05287587A (ja) | 1993-11-02 |
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