JP3131175B2 - 摺動材用合金及び該合金を使用した機器 - Google Patents

摺動材用合金及び該合金を使用した機器

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JP3131175B2
JP3131175B2 JP09272908A JP27290897A JP3131175B2 JP 3131175 B2 JP3131175 B2 JP 3131175B2 JP 09272908 A JP09272908 A JP 09272908A JP 27290897 A JP27290897 A JP 27290897A JP 3131175 B2 JP3131175 B2 JP 3131175B2
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正敏 岡野
整 本田
克己 平野
博行 末松
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Okano Valve Mfg Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種の硬質合金と
組み合わせて使用する摺動材用合金に関し、特に、弁体
と弁座のように相当接する摺動面を有する一対の摺動材
を備えた弁のような機器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】原子力や火力発電所で使用されるような
高温高圧弁の弁座に使用される摺動材用合金としては、
通常の滑り軸受に適用されるような、ケルメットやアル
ミ合金あるいは銅合金のような、許容面圧が2.5Kg
f/mm2以下という摺動材用合金では不適当であり、
許容面圧が少なくとも10Kgf/mm2以上の合金が
必要とされる。また、この合金は、潤滑材のない金属接
触状態での摺動において、焼き付きやカジリを生じず、
また、耐食性に優れている必要がある。
【0003】このような要求に対応するため、従来から
弁の弁座およびガイド等の摺動部品には、一般に、米国
溶接標準(AWS)に定めるRCoCr−Aである、約
30重量%のCrと、約4重量%のWと、約1重量%の
Cとを含有し、残部がCoからなるCo基合金が使用さ
れてきた。しかし、このCo基合金が原子力用弁の部品
に適用された場合、弁座やガイドの腐食や摩耗により生
じるCoが、原子炉内で放射能化してCo60となり、メ
ンテナンス作業員の被爆を増大させるという欠点があっ
た。また、この合金は、工業資源として貴重な希少金属
であるCoを含有しているため、Coの使用を制限する
ためにも、Coを含まない摺動用材料として使用できる
合金の出現が望まれていた。
【0004】このため、本願発明者等は、Coを含有し
ない摺動材用合金として、特開平第07−305129
号により、第一合金材料と第二合金材料とを組み合わせ
て、弁の弁座やその他の機器の摺動部に適用することが
できるものを特許出願しており、この第一合金材料とし
ては、5〜15重量%のCrと、3〜7重量%のSi
と、10〜40重量%のFeと、1〜4重量%のWと、
1重量%を超えないBと、1重量%を超えないCとを含
有し、残部がNiからなる合金(以下、「SP1」と称
す。)を用い、第二合金材料としては、15〜20重量
%のCrと、3〜7重量%のSiと、35重量%を超え
ないFeと、1〜4重量%のWと、0.5〜1.0重量
%のSnと、1重量%を超えないBと、1重量%を超え
ないCとを含有し、残部がNiからなる合金を用いてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の第二合
金材料は、Crの含有量が15〜20重量%と高く、ま
た、Cの含有量が1重量%を超えないとされているた
め、使用環境によっては、オーステナイト・ステンレス
鋼に特徴的に認められる粒界腐食感受性が現れるという
問題点があった。
【0006】従って、本発明は、上述した問題点を解決
するためになされたもので、摺動材用合金におけるCの
含有量を制限し、また、Nbを添加することにより、耐
食性及び耐粒界腐食性の双方の点で優れた摺動材用合金
を提供することを主な目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、請求項1に記載の本発明は、0.2〜0.4重量%
のCと、5.0〜20重量%のCrと、2.5〜10重
量%のNbと、1〜4重量%のWと、2〜7重量%のS
iと、1重量%を超えないBと、1重量%を超えないS
nと、20重量%を超えないFeと、残部がNiから
り、Nb/Cが12.5〜25を満足する摺動材用合金
でなるものである。
【0008】請求項2に記載の本発明は、相当接する摺
動面を有する一対の摺動材を備えた機器において、少な
くとも一方の摺動材を請求項1に記載の摺動材用合金か
ら構成したことを特徴とするものである。
【0009】請求項3に記載の本発明は、請求項2に記
載の機器において、摺動材付き機器が弁であり、摺動材
の一方がこの弁の弁座であり、摺動材の他方がこの弁の
弁体からなるものである。
【0010】
【作用】摺動材用合金におけるCの含有量を制限し、ま
た、Nbを添加することで、Cr炭化物を微粒化させる
と共にその生成量を減少させ、その替わりにNb炭化物
を生成させ、これにより、この摺動材用合金中における
Crの分布を均一化させ、Cr欠乏層を無くすことによ
り、粒界腐食を防ぎ、耐食性及び耐粒界腐食性の双方に
優れた摺動材用合金が得られる。
【0011】また、この摺動材用合金を、例えば、原子
力や火力発電所のような高温高圧下で使用される弁のよ
うな機器に使用すると、耐食性及び耐粒界腐食性に優れ
ているため、信頼性の高い機器が得られる。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、本発明に従う実施の形態に
ついて添付図面を参照しながら詳細に説明するが、図
中、同一符号は、同一または対応部分を示すものとす
る。以下に、本発明に従う摺動材用合金を使用した摺動
材による実証テストを詳述する。実証テストは、仕切弁
の実弁では、面圧が十分に大きく取れず、20Kgf/
mm2という高面圧下の試験ができないので、以下に述
べる摺動試験装置で実施した。摺動試験は、摺動試験材
として、本発明に従う合金からなる摺動試験体と特開平
第07−305129号に記載された第一合金(SP
1)またはRCoCr−Aからなる摺動試験体とを組み
合わせて行った。
【0013】図1は、本発明に従う摺動材用合金に組み
合わされる合金(以下、「組合せ合金」という。)を摺
動材とした摺動試験体1の平面と断面を示している。摺
動試験体1は、円筒形をした炭素鋼よりなる基材1a
と、この基材1aの上側表面に溶接された、組合せ合金
から構成された環状の摺動材(以下、[「組合せ材」と
いう。)1bとからなる。組合せ材1bの上側表面は、
他の摺動試験材(後述する)と接触して摺動する摺動面
としての試験面1eを構成している。また、基材1aに
は、摺動試験中に、試験面同志が摺動して漏洩が生じた
場合、漏洩液体を検出できるように、流出孔1dが設け
られている。さらに、この摺動試験体1を摺動試験装置
に取り付けるために、ねじ部1cが基材1aに設けられ
ている。
【0014】図2は、本発明に従う摺動材用合金を摺動
材に適用した摺動試験体2の平面と断面を示している。
摺動試験体2は、円筒形をした炭素鋼よりなる基材2a
と、この基材2aの上側表面に溶接された、本発明に従
う合金から構成された環状の摺動材(以下、「試験材」
という。)2bとからなる。試験材2bの上側表面は、
上述した摺動試験体1の試験面1eと接触して摺動する
摺動面としての試験面2dを構成している。また、この
摺動試験体2を摺動試験装置に取り付けるために、ねじ
部2cが基材2aに設けられている。なお、摺動試験体
は、実証テストに当たり、各合金から構成された組合せ
材や試験材を基材に溶接して構成したが、摺動試験体全
体を、各合金により作成することもできる。
【0015】図3は、摺動試験を実施するための仕切弁
を模擬した焼き付き摩耗試験機の断面を示す。この摩耗
試験機は、摺動試験体1がねじ込まれる弁座支持リング
13と、摺動試験体1に当接する摺動試験体2がねじ込
まれる弁体23とを内部に有する圧力容器10を備え
る。圧力容器10の上部及び側面には、上蓋11及び横
蓋12が取り付けられ、夫々Oリング10a、15によ
り圧力容器10との気密を維持する。上蓋11の上に
は、試験体摺動装置20が設置されており、この試験体
摺動装置20は、試験体摺動用の油圧ラム22と、この
油圧ラム22の先端に取り付けられ、上蓋11を貫いて
伸延する弁軸21と、この弁軸21の先端に取り付けら
れた弁体23とから構成され、油圧ラム22の駆動によ
り、弁軸21を介して、弁体23が上下動するように構
成される。なお、弁軸21と上蓋11との間の封止は、
パッキンをパッキン押さえ24で締め付けることにより
維持する。
【0016】横蓋12は、弁座支持リング13に取り付
けた摺動試験体1の組合せ材1bに加わる内圧による荷
重を支えるように機能する。弁座支持リング13と圧力
容器10との間は、Oリング21により気密が維持され
る。なお、弁座支持リング13と横蓋12とには、流体
の漏洩を検出するための孔13a、12aが設けられて
おり、これらの孔13a、12aは、摺動試験体1の流
出孔1dと導通している。
【0017】圧力容器10の側面の、横蓋12に関して
円周方向にほぼ180度隔てられた位置には、油圧ラム
32と、この油圧ラム32の先端に取り付けられ、圧力
容器10を貫いて伸延する初期面圧付加軸31とが取り
付けられている。この初期面圧付加軸31は、弁体23
の側面に当接し、油圧ラム32の作用により、弁体23
に取り付けた摺動試験体2の試験体2bに初期面圧を付
加するように機能する。また、初期面圧付加軸31と圧
力容器10との間の封止は、パッキン10cをパッキン
押さえ25で締め付けて維持する。摺動試験装置の外側
には、加熱ヒータ42が取り付けられ、圧力容器10内
部の流体を加熱昇圧できるようになっている。なお、圧
力容器10への流体の流入と昇圧は、ポンプ41で行
う。
【0018】摺動試験は、摺動試験体1、2の夫々の試
験面1e、2dを、指定の面圧を加えながら互いに接触
させて、流体中で摺動することにより実施される。先
ず、摺動試験体2に取り付けた、本発明に従う合金から
構成された試験材2bの試験面2dは、約600メッシ
ュまで研磨され、その後、摺動試験体2を、摺動試験装
置の弁体23に固定する。また、摺動試験体1に取り付
けた、組合せ合金から構成された組合せ材1bの試験面
1eは、約600メッシュまで研磨され、その後、摺動
試験体1を弁座支持リング13に固定する。
【0019】次に、油圧ラム32を作動させ、初期面圧
付加軸31を介して弁体23を側面から押圧し、弁体2
3の試験材2bの試験面2dを組合せ材1bの試験面1
eに密着させることにより、試験面に約0.05Kgf
/mm2の初期面圧を発生させる。この状態で、ポンプ
41から水を注入して、圧力容器10の内部に充満させ
て昇圧する。圧力容器10の内部の圧力が、約0.1K
gf/mm2まで昇圧すると、試験材2bと組合せ材1
bとの間の封止が、接触する夫々の試験面2d、1eの
間で保たれるようになる。そこで、油圧ラム32を解放
することにより初期面圧付加軸31を弁体23から引き
離し、圧力容器10の内部圧力のみで組合せ材1bと試
験材2bとに面圧を付加する。その後、圧力容器10の
内部の圧力を88Kgf/Cm2まで昇圧すると、両試
験面1e、2dに20kgf/mm2の面圧が発生す
る。この状態で、摺動用油圧ラム22を作動させること
により、弁軸21を介して弁体23を上下動させ、試験
材2bの試験面2dと組合せ材1bの試験面1eとを摺
動させて試験する。高温水中の試験は、加熱ヒータ42
により、液体の温度と内圧の昇圧とバランスを保ちなが
ら行い、高温高圧水の中で両試験面に面圧を付加した状
態で摺動させる。なお、摺動試験の結果は、試験後の試
験面の粗さを測定して、摺動性の良否を判定する。
【0020】[摺動試験]摺動試験の試験条件は、以下
のようである: (1)室温水および摂氏300度の高温水(圧力:88
Kgf/Cm2)。 (2)摺動面圧:20Kgf/mm2。 (3)摺動回数:100回。 (4)摺動距離:1200mm。 (5)良否の判定基準:平均粗さの最大値が1μmRa
程度以下であること。(この粗さは、弁座を摺合せるこ
とによって容易に修復できる粗さである。) (6)摩擦係数:0.5以下。
【0021】
【表1】 表1は、「本発明の確性試験用合金」の表であり、摺動
試験に供試した試験材に使用した合金の化学成分を示し
ている。なお、合金より形成された試験材をFeからな
る基材に溶接した場合、基材の溶け込みによって、化学
組成は、多少変化することがある。
【表2】 表2は、「本発明合金の摺動性確認試験の組合わせ」の
表であり、室温水中と高温水中における摺動試験の試験
材の組み合わせを示している。
【0022】図4及び図5は、摺動試験結果を示してお
り、図4には、「本発明合金とSP1との摺動試験結
果」が、図5には、「本発明合金とRCoCr−Aとの
摺動試験結果」が、夫々縦軸を「表面粗さμmRaと摩
擦係数」、横軸を「Nb/C量比」として描かれてい
る。図4から分かるように、Nbの添加量がCの量の8
倍以下と少ない場合には、室温水中で50回の摺動試験
を行った時点で漏洩量が多くなり、試験を中止した。こ
の際、試験面には、著しく粗い摺動傷が生じた。しか
し、高温水中では、摺動後の試験面の粗さは、1μmR
a程度で、許容範囲内に納まった。この原因は、摺動相
手である第一合金(SP1)と本発明に従う合金とが、
高温で適度な酸化被膜を形成して、焼き付きを防止する
ためである。一方、Nbの添加量がCの量の12.6倍
以上の場合には、室温水中の摺動試験では、試験面の表
面粗さが非常に小さくなり、1μmRa以下となった。
高温水中では、試験面の表面粗さは、1μmRa程度に
なった。
【0023】図5に示したように、RCoCr−Aと本
発明に従う合金とを組み合わせた摺動試験は、Nbの添
加量がCの量の13.3倍以上の場合について実施し
た。室温水中の試験では、試験面の表面粗さは非常に小
さくなり、1μmRa以下となった。高温水中では、摺
動後の試験面の粗さは、1μmRa程度となった。
【0024】[腐食試験]粒界腐食試験は、JIS−G
−0575に規定されている、オーステナイト系ステン
レス鋼の粒界腐食性を検査する試験を適用して実施し
た。この場合の腐食時間は、本発明に従う合金にとっ
て、JISに規定している16時間の沸騰試験による粒
界腐食性の判定では長すぎるので、4時間とした。
【0025】図6に、縦軸を「粒界腐食深さμm」、横
軸を「Nb/C量比」として、「本発明合金の粒界腐食
試験結果」を示す。図6から分かるように、特開平第0
7−305129号に記載された第二合金である、0.
3重量%のCと、17重量%のCrと、7重量%のSi
と、5重量%のFeと、1.2重量%のWと、0.7重
量%のSnと、0.6重量%のBとを含有し、残部がN
iからなる合金及びNbの添加量をCの量の3.5〜8
倍にした合金では、粒界腐食性が確認された。しかし、
Nbの添加量をCの量の12.6〜25.6倍にした合
金では、粒界腐食性は、確認されなかった。
【0026】この結果を金属組織的に考察すると、Nb
を少量添加した合金では、長く大きなCr炭化物から粒
状のNb炭化物へ移行する過程において、Cr炭化物と
Nb炭化物とが混在した状態で、残存するCr炭化物の
周囲にCr欠乏層ができ、粒界腐食を防止できないこと
が分かった。一方、NbをCの量の12.6倍以上添加
した合金では、Cr炭化物が、微粒化すると共に生成量
が減少して、粒状のニオブの炭化物(NbC)に変化
し、Crがマトリックスの中に均一に分布され、Cr欠
乏層ができなくなるため、粒界腐食が生じないと考えら
れる。
【0027】ここで、各化学組成の割合の選定根拠につ
いて述べると、Cは、本発明に従う摺動材用合金の硬さ
を維持するために、少なくとも0.2重量%は必要であ
るので、下限値を0.2重量%とし、一方、合金製造時
の変動範囲を見込んで、上限値を0.4重量%とした。
従って、Cの範囲は、0.2〜0.4重量%とする。
【0028】Crは、本発明に従う摺動材用合金の良好
な耐食性や耐酸化性を維持するために必要であるが、こ
の合金では、同じく耐酸化性を高めるNbを添加するた
め、下限値を5重量%とした。また、Crは、金属の耐
酸化性を向上させる元素である反面、弁座の摺動により
生じる摩耗粉の酸化を妨げ、金属の剥離片を生じさせて
摺動部に焼き付きやカジリを発生させる原因となるた
め、上限値を20重量%とした。従って、Crの範囲
は、5〜20重量%とする。
【0029】Nbは、合金に含有されるCと化合してニ
オブの複炭化物(Ni・Si・Nb−C)を形成して、
クロム炭化物を微粒化し、また、クロム炭化物の生成量
を減少させる効果を有している。オーステナイト系ステ
ンレス鋼の場合、Nbの炭化物(NbC)が生成される
ので、理論的には、Nbは、Cの含有量の8倍添加すれ
ばよいが、実際には、窒化物、酸化物あるいは一部固溶
することを見込んで、Cの含有量の10が添加されてい
る。しかし、研究の結果、本発明に従う摺動材用合金の
場合、NbをCの含有量の約3.5〜8倍添加すると、
逆に、粒界腐食が促進され、また、室温水での摺動特性
を劣化させることが判明した。さらに、耐摺動性を良好
に維持しながら、同時に耐粒界腐食性を向上させるため
には、NbをCの含有量の約12.5〜25倍添加する
必要があることも判明した。そこで、この合金では、C
の範囲を0.2〜0.4重量%としているので、Nbの
範囲は、2.5〜10重量%とする。
【0030】Feは、Niと共に、本発明に従う摺動材
用合金の基材であり、マトリックスを形成するが、他の
効果として、この合金の硬さを調節する役割も果たす。
また、Feは、摺動の際に、水中の酸素と結合して酸化
被膜を形成し、この合金の摺動性能を維持する。しか
し、Feは、合金の耐食性維持の観点より少ない方が良
いので、Feの範囲は、20重量%を超えないものとす
る。
【0031】Wは、タングステン炭化物を形成して硬さ
を維持すると共に、摺動に際して、潤滑性のある酸化タ
ングステン(WO3)を生成して焼き付きやカジリを防
止する効果を有するが、多量に加えると炭化タングステ
ン(WC)の量が多くなって高度が高くなり過ぎるの
で、Wの範囲は、1〜4重量%とする。
【0032】Siは、Niとの化合物(Ni3Si)を
形成して本発明に従う摺動材用合金の融点を下げると共
に、酸類に対する耐食性を高める。また、硬度と耐摩耗
性を維持するのに有効であるが、多量に加えると靭性が
低下し、溶接施工性を劣化するので、Siの範囲は、2
〜7重量%とする。
【0033】Bは、本発明に従う摺動材用合金の溶接肉
盛の際、酸化物等の不純物と結合して、この不純物を浮
上させて除去するのに有効であり、また、炭化硼素(B
C)を形成して硬さを高くするが、この炭化硼素が多い
と溶接性が劣化し、また、相手材をカジル傾向が大きく
なるので、Bの範囲は、1重量%を超えないものとす
る。
【0034】Snは、Niの中にわずかに固溶するが、
残りはニッケルとの化合物(Ni3Sn)を形成する。
この化合物は、合金の中に、少量含有されるときには、
合金の耐摺動性を向上させるが、多量に含有されるとき
には、摩擦係数が増加してしまうため、Snの範囲は、
1重量%を超えないものとする。
【0035】本実験では、本発明に従う合金を弁の弁体
に取る付ける摺動材として説明したが、本発明はこの実
施の態様に限定されるものではなく、弁の弁座に取り付
ける摺動材として用いることもできる。また、弁以外の
機器の摺動材に適用することも可能である。さらに、高
温高圧下で使用するために高い耐食性及び耐粒界腐食性
を必要とする適宜の部材にも同様に適用することができ
る。
【0036】また、本発明に従う摺動材用合金を、弁体
にねじ込まれる摺動試験体の摺動材として適用したが、
摺動試験体全体を一つの摺動材としてこの合金により構
成することも可能であり、その場合、この摺動材を弁体
に溶接や、周知の方法で接合することもできる。さら
に、一つの摺動材として鋳造したり、熱間静水圧加工法
(HIP)等で製造してもよい。
【0037】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明は、摺動
材用合金におけるCの含有量を制限し、また、Nbを添
加することで、Cr炭化物を微粒化させると共にNb炭
化物を生成させ、これにより、この摺動材用合金中にお
けるCrの分布を均一化させ、Cr欠乏層を無くすこと
ができる。このため、粒界腐食を防ぐことにより、耐食
性及び耐粒界腐食性の双方に優れた摺動材用合金を提供
することができる。
【0038】また、この摺動材用合金を、例えば、原子
力や火力発電所のような高温高圧下で使用される弁のよ
うな機器に使用すると、耐食性及び耐粒界腐食性に優れ
ているため、信頼性の高い機器を提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従う摺動材用合金に組み合わされる
合金を摺動材とした摺動試験体の平面図と断面図であ
る。
【図2】 本発明に従う摺動材用合金を摺動材に適用し
た摺動試験体の平面図と断面図である。
【図3】 摺動試験を実施するための仕切弁を模擬した
焼き付き摩耗試験機の断面図である。
【図4】 本発明に従う合金と第一合金(SP1)とを
組み合わせて摺動試験をした場合の表面粗さ及び摩擦係
数とNb/C量比との関係をしめした図である。
【図5】 本発明に従う合金とRCoCr−Aとを組み
合わせて摺動試験をした場合の表面粗さ及び摩擦係数と
Nb/C量比との関係をしめした図である。
【図6】 本発明に従う合金のNb/C量比と粒界腐食
試験での腐食深さとの関係をしめした図である。
【符号の説明】
1,2…摺動試験体、1a,2a…基材、1b,2b…
摺動材(組合せ材、試験材)、1c,2c…ねじ部、1
d…流出孔、1e,2d…試験面、10…圧力容器、1
0a,15,21…Oリング、10c…パッキン、11
…上蓋、12…横蓋、12a,13a…孔、13…弁座
支持リング、20…弁体摺動装置、21…弁軸、22,
32…油圧ラム、23…弁体、24,25…パッキン押
さえ、31…初期面圧付加軸、41…ポンプ、42…加
熱ヒータ。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−305129(JP,A) 特開 昭60−162757(JP,A) 特公 昭47−23054(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 19/05 G21D 1/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 0.2〜0.4重量%のCと、5.0〜
    20重量%のCrと、2.5〜10重量%のNbと、1
    〜4重量%のWと、2〜7重量%のSiと、1重量%を
    超えないBと、1重量%を超えないSnと、20重量%
    を超えないFeと、残部がNiからなり、Nb/Cが1
    2.5〜25を満足する摺動材用合金。
  2. 【請求項2】 相当接する摺動面を有する一対の摺動材
    を備えた機器において、少なくとも一方の該摺動材を前
    記摺動材用合金から構成したことを特徴とする請求項1
    に記載の合金を使用した機器。
  3. 【請求項3】 前記機器が弁であり、前記摺動材の一方
    が該弁の弁座であり、前記摺動材の他方が該弁の弁体で
    ある請求項2に記載の機器。
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