JP3128630B2 - 粉末状脂質小胞体製剤の製造方法 - Google Patents

粉末状脂質小胞体製剤の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、親水性物質を含有する
粉末状脂質小胞体製剤の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】親水性物質を含有する脂質小胞体製剤、
例えば、ヘモグロビンを含有する脂質小胞体製剤は既に
開発されている(特開昭62-178521 号公報、特表平2-50
1826号公報、米国特許第4532130 号公報、米国特許第47
76991 号公報) 。これらの脂質小胞体製剤には、膜材料
としていずれも天然の脂質を改質したもの、例えば、水
添レシチンあるいは合成の非重合性脂質、例えば、ジミ
リストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホス
ファチジルコリンなどが用いられている。
【0003】保存性や使用面の観点から、親水性物質を
含有する粉末状脂質小胞体製剤の開発が強く要望されて
いる。しかしながら、前記の脂質小胞体は、膜構造が極
めて弱く、凍結や乾燥時に融合や凝集など構造変化が起
こり、含有されている物質が漏れ出す。例えば、凍結乾
燥の保護剤としてトレハロースなど糖類を小胞体の外水
相及び内水相に250mM 以上の濃度で添加して、ヘモグロ
ビン含有脂質小胞体型人工赤血球の凍結乾燥が試みられ
ているが、凍結乾燥後の含有ヘモグロビンの漏出率は10
〜30%にも達する[Cryobiology, 25, 277(1988); Cry
obiology, 27,585(1990) ]。しかも得られたヘモグロ
ビンを含有する脂質小胞体型人工赤血球の内水相に存在
する余分な糖類の除去ができないという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、この
ような欠点がなく、脂質小胞体内水層からの含有物質の
漏出が極めて低く、脂質小胞体の粒径変化がなく、保護
剤として添加した糖類を再分散時に除去できる粉末状脂
質小胞体製剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、親水性物
質を重合性の脂質小胞体内水相に包埋させ、膜を構成す
る脂質の重合を施したうえで、除去可能な外水相だけに
分子量1200以下の糖類を添加すると、この水性分散液を
冷凍させ、かつ水分を昇華させ乾燥しても、脂質小胞体
の構造変化がなく、しかも含有物質の漏出が乾燥前と比
較してほとんど変わらないということを見出し、この知
見に基づいて本発明を成すに至った。
【0006】即ち、本発明は、重合性脂質を膜の構成成
分とし親水性物質を含有する小胞体の膜構成成分を重合
させた後、この小胞体の外水相に分子量1200以下の糖類
を添加し、この小胞体の水性分散液を凍結乾燥させるこ
とを特徴とする粉末状脂質小胞体製剤の製造方法に関す
るものである。このような方法で得られた粉末状脂質小
胞体製剤を、水や緩衝液で再分散すると、系に存在する
糖類を限外濾過や超遠心などの方法で簡単に除去でき
る。
【0007】本発明において小胞体を構成する重合性脂
質は、分子内に少なくとも一つの重合可能な基、例え
ば、ビニル基、ジエン基、ジイン基などを有する脂質化
合物であり、例えば、重合性リン脂質、重合性糖脂質な
どが利用できる。リン脂質は、グリセロールに二分子の
脂肪酸と一分子のリン酸がエステル結合したものと、ス
フィンゲニンのリン酸エステル誘導体が利用できる。糖
脂質は、脂肪酸またはスフィンゲニンが一個以上の親水
基としての糖残基と結合した誘導体である。
【0008】重合性リン脂質は、例えば、1,2−ジ
(オクタデカ−2,4−ジエノイル)−sn−グリセロ−
3−ホスホコリン(DODPC)、1,2−ビス(α−メチレ
ンヘキサデカノイル)−3−グリセロホスホコリン、 r
ac−1−{8−(p−ビニルベンゾイル)ノナノイル}
−2−O−ステアリル−グリセロ−ホスホコリン、1−
パルミトイル−2−(オクタデカ−2,4−ジエイノ
ル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリンなどである。重
合性糖脂質は、例えば、1,2−ジ(オクタデカ−2,
4−ジエノイル)−O−β−D−マルトシル(1’→
3)−rac −グリセロール、1,2−ジ(オクタデカ−
2,4−ジエノイル)−O−β−D−セルビオシル
(1’→3)−rac −グリセロールなどである。
【0009】膜表面の電荷や親水性物質のカプセル化効
率を考慮すると、重合性基を持つ電荷的に中性のリン脂
質を用いるのが望ましい。本発明において、脂質小胞体
に含有される親水性物質は、蛋白質類、生理活性ペプチ
ド剤、抗ガン剤、抗生物質、ビタミン類、免疫賦活剤、
ホルモン類などが利用できる。
【0010】蛋白質の例としては、ヘモグロビン、免疫
蛋白質、スーパーオキシドジスムターゼ、ペプシン、ト
リプシン、アルギナーゼなどが挙げられる。生理活性ペ
プチド剤の例としては、インスリン、リュウプロライド
などが挙げられる。抗ガン剤の例としてはアドリアマイ
シン、アクチノマイシン、シスプラチン、マイトマイシ
ンなどが挙げられる。抗生物質の例としては、スルベニ
シリン、セフメトキシム、カナマイシン、グンタミシン
などが挙げられる。ビタミン類の例としては、チアミ
ン、ニコチン酸アミド、アスコルビン酸などが挙げられ
る。免疫賦活剤の例としては、ムラミルトリペプチド、
ムラミルジペプチドなどが挙げられる。ホルモン類の例
としては、成長ホルモン、プロラクチン、副腎皮質刺激
ホルモンなどが挙げられる。
【0011】本発明において、親水性物質を含有する脂
質小胞体の重合方法は特に限定されず、光(増感)重
合、ラジカル重合または放射線(γ線)重合、いずれも
利用できる。重合の進行は脂質の重合性残基の紫外スペ
クトルの強度減少から確認できる。例えば1,2−ジ
(オクタデカ−2,4−ジエノイル)−sn−グリセロ−
3−ホスホコリン(DODPC)小胞体の重合に伴って、ジエ
ン残基の255nm の吸収が減少するので、その減少の程度
から重合率を算出できる。含有される親水性物質の変
性、特に生理活性物質の変性を防止するために、重合は
不活性ガス雰囲気下低温(20℃以下) で行うのが望まし
い。
【0012】本発明に用いる糖類は、分子量1200以下の
糖であり、望ましくは単糖、二糖及び三糖である。糖類
の分子量が1200を超えると、糖の疎水性指標が高く、脂
質小胞体の融合を引き起こす恐れがあるので望ましくな
い。用いられる糖類は、例えばスクロース、トレハロー
ス、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトー
ス、メトジトース、マルトトリオース、ケストース、ス
タキオース、キトビオース、ガラクトース、ラフィノー
ス、マルトース、ラクトース、マルトヘプタオース、キ
シロース、デキストラン、マンロース、アラビノース及
びグルコースなどである。
【0013】本発明においては、親水性物質を含有する
膜成分を重合した脂質小胞体の外水相に添加する糖類の
濃度は25〜650mM が望ましい。さらに望ましくは、100
〜250mM である。25mMより低い糖濃度では、凍結乾燥に
おける保護効果があまり認められず、逆に650mM より高
い濃度の糖を添加する場合、浸透圧の差によって脂質小
胞体膜が破れる恐れがある。最終的に糖の除去が困難で
あるという欠点があるので、望ましくない。本発明にお
いては、脂質小胞体の外水相だけに糖を添加するので、
脂質小胞体の内水相に糖が存在せず、外水相に添加した
糖類を必要に応じて除去できる。一般の場合には一種類
の糖類を小胞体の外水相に添加するが、必要に応じて二
種以上の混合物を使用しても良い。
【0014】粉末化の直前に、糖類を添加するのが望ま
しい。糖類を添加した後、直ちに脂質小胞体の水性分散
液を凍結することによって糖の内水相への拡散を防止す
ることができる。
【0015】本発明において、親水性物質を含有する脂
質小胞体分散液の凍結は、−10℃以下で行い、例えば液
体窒素やドライアイス/メタノールの寒剤もしくは低温
フリーザーなどを用いることができる。凍結において
は、なるべく不活性ガス、例えば窒素やアルゴンガスな
どの雰囲気下で行う。ロータリーエバポレーター等の装
置を用いて、脂質小胞体分散液を入れたフラスコを回転
させながら、冷媒に浸漬し、液が膜状になるように均一
に器具の壁に凍結するのが望ましい。次いでフラスコを
凍結乾燥器に取り付け、−30〜−85℃、望ましくは−60
〜−85℃で、1〜100mtorr、望ましくは1〜10mtorr の
真空度で凍結乾燥を行う。凍結乾燥時には外温度を0〜
25℃、望ましくは0〜10℃に維持するようにする。外温
度が低すぎると、乾燥の速度が遅くなり、高すぎると、
含有物質の変性を引き起こす恐れがある。凍結乾燥処理
により、親水性物質を含有する粉末状脂質小胞体製剤が
得られる。含有する親水性物質の変性を防止するため
に、得られた粉末状脂質小胞体製剤を4℃以下の乾燥雰
囲気下で保存するのが望ましい。
【0016】本発明で得られる親水性物質を含有する粉
末状脂質小胞体製剤の再分散には、溶媒として例えば蒸
留水、生理食塩水またはリン酸塩、炭酸水素塩、HEPE
S、トリス塩などのバッファーが挙げられる。上記のバ
ッファーまたは蒸留水を粉末状脂質小胞体製剤に加え
て、0〜20℃、望ましくは4〜10℃で再分散する。攪拌
や振動を与えると、再分散の速度を著しく向上すること
ができる。得られた分散液は、例えばフィルターでの濾
過などの方法によって、不溶物を除去すると共に、脂質
小胞体製剤を滅菌できる。
【0017】本発明で得られる粉末状脂質小胞体製剤は
再分散した後、粉末化前に外水相に添加した糖類を必要
に応じて除去できる。糖類を含まない脂質小胞体分散液
は、例えば12,000gで15〜60分間、超遠心分離により脂
質小胞体を分画することで糖類を除去できる。他に、限
外濾過膜やセファロースもしくはセファデックスのゲル
カラムなどを用いても外水相に存在する糖類を除去でき
る。分離洗浄時、用いる洗浄水やバッファーなどのpH
や浸漬圧は脂質小胞体の内水相と同等にすることが望ま
しい。必要に応じて、得られた親水性物質を含有する脂
質小胞体製剤を限外濾過膜を用い適当濃度まで濃縮す
る。
【0018】本発明における親水性物質を含有する脂質
小胞体の調製法は特に制限がなく、既知の方法、例えば
フレンチプレス法、薄膜化−超音波照射法、逆相蒸発
法、押し出し法、マイクロフルイダイザー法、マントン
ガウリン法などいずれも利用できる。粉末化用のサンプ
ルとして調製する親水性物質を含有する脂質小胞体製剤
の形態や粒径は使用目的において任意に選択することが
できる。
【0019】重合前の脂質小胞体分散液を調製すると
き、外水相に存在する親水性物質の分離は超遠心法、限
外濾過膜法(例えば旭メディカル社のAC−1760型ホロー
ファイバー)またはセファロースゲルもしくはセファデ
ックスゲル(例えばファルマシアファインケミカルス社
のセファロースCL−4B) のカラム分画法などが適当であ
る。分離洗浄液としては、等張生理食塩水や適当な緩衝
液、例えば、炭酸水素ナトリウム緩衝液、HEPES 緩衝液
などが使用できる。分離洗浄はなるべく低い温度(20 ℃
以下) 、不活性ガスの雰囲気下で行うのが望ましい。
【0020】
【実施例】次に、実施例、参考例及び比較例によって本
発明をさらに詳細に説明する。 参考例1 期間切れのヒト赤血球20リットルを遠心分離機で生理食
塩水によって洗浄し、混在する白血球などの血漿成分を
除去した。この洗浄赤血球4リットルに対して10リット
ルの蒸留水を添加して、溶血を行った。この溶血液を孔
径0.45μmの血漿成分分離器を用い赤血球膜成分などを
除去し、さらにこの溶液は限外濾過により濃縮を行い、
赤血球膜除去ヘモグロビンとした。ポリカーボネートフ
ィルター(孔径0.2μm)によって無菌処理を行った後、
濃度30g/dl(w/v) のヘモグロビン溶液5リットルを得
た。得られたヘモグロビン溶液を用い、次に示す実施例
及び比較例の実験を行った。
【0021】実施例1 参考例1で調製したヘモグロビン溶液1リットルに一酸
化炭素ガスを導入させることによって、ヘモグロビンの
一酸化炭素配位体(COHb) を調製した。重合性リン脂質
1,2−ジ(オクタデカ−2,4−ジエノイル)−sn−
グリセロ−3−ホスホコリン(DODPC)、パルミチン酸及
びコレステロールの10/3/9のモル比からなる混合脂
質粉末50gに、上記の濃度30g/dl(w/v) のCOHb溶液1リ
ットルを加えて4℃で15時間攪拌した。得られた懸濁液
を4℃で押し出し法により、孔径8.0μmから0.4μmまで
の多孔性ポリカーボネート膜を遂次に通し、ヘモグロビ
ン含有脂質小胞体分散液を得た。外水相に存在するヘモ
グロビンを限外濾過膜(旭メディカル社、AC−1760型ホ
ローファイバー) で除去した。カプセル化率、粒径はそ
れぞれ21%、286±130nm であった。
【0022】得られた脂質小胞体分散液をバイアル瓶に
移し、氷冷下、γ線の照射(照射量0.73Mrad) によっ
て、重合性脂質成分の重合を行った。重合の進行は、リ
ン脂質のジエン基の255nm付近の吸収の消失から確認
し、最終的な重合率は75%であった。8個の1リットル
フラスコにヘモグロビンを含有する重合脂質小胞体分散
液を100mlずつ分注し、それぞれのフラスコにグルコー
ス、ガラクトース、ラクトース、マルトース、ラフィノ
ース、マルトヘプタオース、スクロース及びトレハロー
スを125mM の濃度となるように添加した。フラスコを回
転させながら液体窒素に浸漬し、溶液を凍結した。フラ
スコを凍結乾燥器(バーチス社、25SL型) に取り付け、
−85℃、2〜10mtorrで凍結乾燥した。外温度を15〜19
℃の間に維持した。25時間後、いずれの糖添加脂質小胞
体についても、鮮やかな赤色の粉末を得た。
【0023】得られた粉末状脂質小胞体製剤に蒸留水を
加えて、4℃で軽く振動を与えることによって、均一な
脂質小胞体再分散液を得た。外水相に存在する糖類をセ
ファロースCL-4B(ファルマシアファインケミカルス社)
ゲルカラムで除去した。得られた脂質小胞体再分散液の
粒径、漏出率などを表1に示した。粉末化前後の可視吸
収スペクトルの解析により、実施例では脂質小胞体に含
有するヘモグロビンの変性が殆ど観察されなかった。代
表例として、図1に粉末化前(点線)と、糖類としてス
クロースを用いて得られたヘモグロビン含有粉末状脂質
小胞体(実線)の可視スペクトルを示した。
【0024】比較例1−1 ヘモグロビンを含有する重合脂質小胞体分散液20mlを、
100mlのフラスコに入れて、糖類を添加しない以外は、
実施例1の操作に準じて凍結乾燥した。25時間後、灰色
の粉末を得た。蒸留水を加え再分散後の粒径は、凍結乾
燥前に比べて大きく変わり、脂質小胞体に含有するヘモ
グロビンの漏出及びメト化率はいずれも20%以上であっ
た。
【0025】比較例1−2 ヘモグロビンを含有する重合脂質小胞体分散液20mlを10
0mlのフラスコに入れて、デキストラン(分子量40,000)
を125mMの濃度で添加した以外は、実施例1の操作に準
じて凍結乾燥を行った。25時間後、灰色の粉末を得た。
蒸留水を加え再分散後の粒径は凍結乾燥前に比べて大き
く変わり、脂質小胞体に含有するヘモグロビンの漏出及
びメト化率はいずれも20%以上であった。
【0026】
【表1】 *粒径分布には二つのピークがあり、括弧内数値は各ピ
ークが占める割合である。
【0027】実施例では、粉末化前後のヘモグロビン含
有脂質小胞体の粒径、含有ヘモグロビンの漏出及びメト
化率など性質の変化がほとんど認められなかったのに対
し、比較例では、これらの性質に大きな変化が認められ
た。
【0028】実施例2 実施例1と同様な方法で500mlのヘモグロビン含有重合
脂質小胞体分散液を調製した。5個の1リットルフラス
コに100mlずつ上記の分散液を分注し、それぞれのフラ
スコにトレハロースを25、50、125、200、650mMの濃度
で添加した。実施例1と同様に凍結乾燥を行った後、赤
色のヘモグロビンを含有する粉末状脂質小胞体を得た。
【0029】得られたヘモグロビンを含有する粉末状脂
質小胞体の再分散は4℃で行った。蒸留水をヘモグロビ
ンを含有する粉末状脂質小胞体に加えて10分間攪拌した
後、均一に分散したヘモグロビンを含有する脂質小胞体
再分散液を得た。外水相に存在するトレハロースを、限
外濾過(旭メディカル社のAC−1760型ホローファイバ
ー)によって除去した。得られたヘモグロビンを含有す
る脂質小胞体再分散液の粒径や漏出率などを表2に示
す。25mM以上のトレハロースの添加によって含有ヘモグ
ロビンの漏出及びメト化の進行を著しく抑制することが
できた。
【0030】
【表2】 *粒径分布には二つのピークがあり、括弧内数値は各ピ
ークが占める割合である。
【0031】実施例3 実施例2において125mMのトレハロース存在下で得られ
たヘモグロビンを含有する粉末状脂質小胞体の4℃下で
の保存安定性を調べた。粉末を5個のサンプル瓶に分け
て4℃の乾燥状態で保存し、0、1、5、7、20週間後
に、それぞれ蒸留水を加えて再分散を行った。生理食塩
水を洗浄液として用い、外水相に存在する糖をセファロ
ースCL-4B (ファルマシアファインケミカル社)ゲルカ
ラムで除去した。得られた再分散液の粒径変化及びHb漏
出率などを測定した。保存期間に伴う上記性能の変化を
表3に示した。粒子の融合や凝集等の変化(粒径変化)
及び含有ヘモグロビンの漏出率の増大は4ヶ月以上保存
した後でも認められなかった。
【0032】
【表3】
【0033】実施例4 実施例2の125mMのトレハロースの存在下で得られたヘ
モグロビンを含有する粉末状脂質小胞体を50mMのトリス
緩衝液(pH7.3)に分散し、4℃で軽く攪拌して再分散を
行った。同様の緩衝液を洗浄液として用い、外水相に存
在するトレハロースをセファロースCL-4B(ファルマシ
アファインケミカルス社)ゲルカラムで除去した。氷冷
下で、得られた再分散液を60Wの白色光で照射しなが
ら、酸素ガスを1時間吹き込み、ヘモグロビンに結合し
ている一酸化炭素を脱離させた。
【0034】酸素化錯体(オキシ体ヘモグロビンoxyHb)
の形成は、UVスペクトルの415nmの吸収から確認し
た。ヘモグロビン含有脂質小胞体の再分散液の酸素運搬
能を常法に従い、ヘモックスアナライザー(TCSメディカ
ルプロダクト社製) で測定した。酸素親和性(P50)、ヒ
ル係数及び酸素運搬効率(OTE%) は、それぞれ24mmHg、
1.8、21%であった。
【0035】実施例5 トレハロースの代わりに25、50、125、200、650mMの濃
度でスクロースを添加した以外は、実施例2の操作に準
じて凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、赤色のヘモグロビ
ンを含有する粉末状脂質小胞体を得た。粉末は4℃の乾
燥雰囲気下で保存した。得られたヘモグロビンを含有す
る粉末状脂質小胞体の再分散は、実施例2の操作に準じ
て行った。得られた脂質小胞体溶液の性能を表4に示
す。スクロースを25〜650mM の濃度で添加することによ
って、粉末化後の脂質小胞体に含有するヘモグロビンの
漏出及びヘモグロビンメト化の進行を防止できた。
【0036】
【表4】 *粒径分布には二つのピークがあり、括弧内数値は各ピ
ークが占める割合である。
【0037】実施例6 実施例1と同様の方法でアドリアマイシンを含有する脂
質小胞体分散液100mlを調製した。この分散液を最終的
に通過させたポリカーボネート製フィルターの孔径は0.
2μm で、得られたアドリアマイシンを含有する脂質小
胞体分散液の粒径は220±49nmであった。この溶液を窒
素で10分間バブリングした後、氷冷下、高圧水銀灯で10
時間照射することによって、膜構成脂質の重合を行っ
た。高圧水銀灯の275nm以下の光をUVフィルターでカ
ットした。重合の進行はDODPCのジエン基の255nm付近の
吸収の消失から確認した。重合率は80%であった。
【0038】重合したアドリアマイシン含有脂質小胞体
分散液にグルコースを60mMとトレハロースを60mMの濃度
で加えて、実施例1の方法で凍結乾燥を行った。24時間
の乾燥によって粉末状アドリアマイシン含有脂質小胞体
を得た。粉末を実施例1と同様の方法で再分散した。得
られた再分散液の粒径及び脂質小胞体に含有するアドリ
アマイシンの漏出率はそれぞれ 212±46nm、1.2%であ
った。
【0039】比較例2 実施例1と同様の方法で、混合脂質として大豆由来の水
素添加レシチン、パルミチン酸及びコレステロールの混
合脂質粉末(モル比10/3/9)を用い、内外水相にト
レハロースを300mMの濃度で含有する脂質小胞体分散液
を調製し、得られた分散液の凍結乾燥を行い、ヘモグロ
ビンと共に300mMのトレハロースを内水相に含有する脂
質小胞体を調製した。
【0040】最終的に通過させたポリカーボネート製フ
ィルターの孔径は0.2μmで、得られた脂質小胞体分散液
の粒径は221±42nmであった。未内包ヘモグロビンを限
外濾過膜(旭メディカル社、AC−1760型ホローファイバ
ー) で除去した。洗浄液として300mMのトレハロースを
含有する緩衝液を用いた。得られた未重合脂質小胞体分
散液の外水相に、トレハロースを300mMの濃度で添加し
た後、実施例1に準じて凍結乾燥を行った。得られた赤
色のヘモグロビンを含有する粉末状脂質小胞体を4℃で
乾燥雰囲気下保存し、その保存安定性を調べた。
【0041】限外濾過法によって再構成した溶液の外水
相に存在するトレハロースは除去できたが、内水相に存
在するトレハロースの除去はできなかった。粉末化後、
含有するヘモグロビンの漏出率は8%に達し、さらに5
週間の保存後では20%に達した。
【0042】
【表5】 比較例3 ヘモグロビンを含有する未重合脂質小胞体を使用した以
外は、実施例1の操作に準じて行った。トレハロースを
125mMで添加した場合、得られたヘモグロビンを含有す
る粉末状脂質小胞体の粒径は、295±107nmで、凍結乾燥
前に比べて変わりがないが、ヘモグロビン漏出の上昇が
認められ、漏出率は34%であった。
【0043】比較例4 125mMのトレハロースをヘモグロビン含有脂質小胞体の
膜成分の重合前に添加した以外は、実施例1の操作に準
じて行った。得られたヘモグロビンを含有する粉末状脂
質小胞体の粒径、ヘモグロビンの漏出率及びメト化率
は、それぞれ285±98nm、3.6%及び8%で、凍結乾燥前
に比べて殆ど変わりがなかった。これにより、重合工程
中、外水相に添加したトレハロースが小胞体の内水相に
拡散したことが認められた。得られたヘモグロビンを含
有する粉末状脂質小胞体を再分散した後、内水相に存在
する糖の除去ができなかった。
【0044】
【発明の効果】従来から残された課題であった脂質小胞
体に含有する親水性物質の漏出防止と不必要な系に存在
する多量の糖などの問題を克服した。本発明により得ら
れる親水性物質を含有する粉末状脂質小胞体製剤は、再
分散後も、粒径の変化及び含有物質の漏出がほとんどな
く、外水相に添加した糖類を除去できる。また、粉末化
における糖類の使用は、トレハロースに限らず、生体内
になじみの深いグルコースやスクロースなども利用でき
る。従って、本発明により得られる親水性物質を含有す
る粉末状脂質小胞体製剤は、長期にわたり安定に保存で
きるDDS 製剤やヘモグロビンを含有する脂質小胞体型人
工赤血球として、極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例1において、粉末化前と、スクロ
ースの存在下で粉末化した後のヘモグロビン含有脂質小
胞体の可視スペクトルである。図において、実線は粉末
化前のスペクトル、点線は粉末化後のスペクトルであ
る。
フロントページの続き (72)発明者 土田 英俊 東京都練馬区関町南2−10−10 (56)参考文献 特開 昭64−3115(JP,A) 特開 昭63−232841(JP,A) 国際公開90/3795(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 9/127 B01J 13/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重合性脂質を膜の構成成分とし親水性物質
    を含有する小胞体の膜成分を重合させた後、この小胞体
    の外水相に分子量1200以下の糖類を添加し、この小胞体
    の水性分散液を凍結乾燥させることを特徴とする粉末状
    脂質小胞体製剤の製造方法。
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