しかしながら、抽出液を肌に塗布し、或いは、アトマイザー等で吹きつける場合は、局部的なものになり易く、身体の表面に広く作用させることが困難であった。また、液を塗布したり吹き付けたりした場所が、べたつくという問題があった。
そこで、本考案は上記の実情に鑑み、漢方薬やハーブの抽出液等を、肌にべたつくことなく、且つ、身体の表面の広い範囲に作用させさせることが可能な、薬液噴霧装置の提供を課題とするものである。
本考案に係る薬液噴霧装置は、「水を収容する第一容器と、薬液を収容する第二容器と、前記第一容器に収容された水を加熱する第一ヒータと、該第一ヒータによる水の加熱により発生した水蒸気を前記第一容器から導出する水蒸気導出管と、該水蒸気導出管を流通する水蒸気を加熱する第二ヒータと、該第二ヒータにより加熱された水蒸気の流通に伴い発生する負圧により、前記第二容器から薬液を吸引する薬液吸引管と、該薬液吸引管により吸引された薬液を水蒸気と共に噴霧する噴霧口とを」を具備して構成されている。
「第一容器」は、収容した水が加熱されて内部で水蒸気となるため、所定の耐熱性、例えば百数十℃の耐熱性を有することが望ましい。また、内部で発生した水蒸気を効率良く使用するために、密閉可能に耐圧性を有して構成されることが望ましい。更に、内部の圧力が予め定めた所定の圧力を超えた場合に、弁を開いて圧力を開放するリリーフ弁を備えるものとしても良い。「水蒸気導出管」は、水蒸気に対する耐熱性を有し、錆びにくい材質で形成されることが望ましく、例えば、ステンレス管で構成することができる。
「薬液」は、漢方薬やハーブの抽出液、香料を添加した液を例示することができる。また、液媒体としては、水、アルコール、オイルを例示することができる。更に、「第二容器」及び「薬液吸引管」は、薬液の種類に応じた耐食性を考慮して適宜の材料により構成でき、例えば、樹脂やステンレス等の金属を使用することができる。
「第一ヒータ」は、例えば、第一容器に収容された水を直接的に加熱する電気ヒータや、第一容器に電気ヒータを巻回し第一容器を介して水を加熱する構成を例示することができる。また、「第二ヒータ」は、水蒸気導出管に巻回される電気ヒータや、水蒸気導出管を挟み込むように配される電気ヒータを例示することができる。
「薬液吸引管」は、水蒸気の流通によって発生する負圧により薬液を第二容器から吸引するため、一端は水蒸気の流通により負圧となる部分に開口する構成とされ、例えば、第二ヒータを経た後の水蒸気導出管に接続される構成、或いは、一方の端部が水蒸気導出管の端部から僅かに離隔させて配される構成とすることができる。また、薬液吸引管は、他端が第二容器に収容された薬液内に開口する構成とされ、例えば、他端側が第二容器に挿し込まれると共に、その先端が第二容器の底部近傍まで延ばされる構成や、他端が第二容器の底部に接続される構成とすることができる。
「噴霧口」は、薬液が水蒸気と共に流通する水蒸気導出管に穿設される構成とすることも、装置内部で水蒸気導出管の端部から噴出した水蒸気を、薬液と共に装置外に放出すべく装置の外殻に孔状に設けられる構成とすることもできる。
従って、本考案によれば、第一ヒータによって水が加熱されて発生した水蒸気は、第一容器内で更に発生する水蒸気により加圧され、更に第二ヒータによって加熱され、水蒸気導出管内を勢い良く流通する。そして、この水蒸気の流通に伴い発生する負圧により、薬液吸引管を介して第二容器から薬液が吸引され、吸引された薬液は、水蒸気と共に噴霧口から噴霧される。これにより、広い空間に向けて薬液を噴霧することができ、例えば、身体の表面に対して、広い範囲で肌に薬液を噴霧することが容易となる。
特に、本考案では、第一ヒータにより水の沸点まで加熱されて発生した水蒸気が、第二ヒータによって更に加熱される構成としたことにより、水蒸気が高温となる。そのため、水蒸気のブラウン運動がより激しくなり、水蒸気との衝突によって薬液が微細化されると共に、水蒸気の体積が膨張し、単位体積当たりの水蒸気の分子数が減少する。これにより、噴霧された薬液及び水蒸気が肌にべたつく感じが低減される。同時に、薬液が微細化し、水蒸気のブラウン運動が激しくなることにより、噴霧された分子が落下し難いものとなり、広範囲にわたり薬液及び水蒸気を噴霧することが可能となる。
また、本考案による薬液噴霧装置は、上記構成に加え、「前記第二容器内に収容された薬液を加圧する加圧手段を」具備するものとすることができる。
「加圧手段」は、例えば、薬液を収容した第二容器の残余の空間に、気体を送入する手段とすることができ、第一容器で発生した水蒸気の一部を第二容器に導く構成や、第二容器に空気を圧送するポンプを備えた構成とすることができる。或いは、薬液面に面的に接する部材のピストン運動により、薬液を加圧する構成とすることができる。なお、第二容器は、加圧手段による加えられる圧力の設定に応じて耐圧性を備えることが必要となる。
従って、本考案によれば、第二容器内で薬液が加圧されることにより、第二容器から押出されるように、薬液が薬液吸引管の端部に向って送らるため、薬液吸引管を介した薬液の吸引がよりスムーズに行われるものとなる。
更に、本考案の薬液噴霧装置は、「前記薬液吸引管は、前記水蒸気導出管に接続部で接続され、前記噴霧口は、前記接続部より延長された前記水蒸気導出管の先端側に設けられる」ものとすることができる。
従って、本考案によれば、薬液吸引管を介して吸引された薬液は、接続部で水蒸気と合流し、水蒸気と共に水蒸気導出管を流通した後、接続部より先端側で水蒸気導出管に設けられた噴霧口から水蒸気と共に噴霧される。これにより、水蒸気導出管を長く延長させて形成し、離れた位置で薬液を噴霧することが可能となり、例えば、水蒸気導出管を浴室やサウナ室に導入し、第一容器、第二容器、第一ヒータ、第二ヒータ等の本考案の主たる構成は浴室等の外に設置する構成とすることができる。その結果、第一ヒータや第二ヒータを電気ヒータとし、他の構成を電気により制御する構成としても、漏電等の不具合が生じる恐れなく、安心して使用することができる薬液噴霧装置となる。加えて、本考案の薬液噴霧装置を、既存の浴室やサウナ室等に適用することが容易となる。
以上のように、本考案によれば、漢方薬やハーブの抽出液等を、肌にべたつくことなく、且つ、身体の表面の広い範囲に作用させさせることが可能な、薬液噴霧装置を提供することができる。
以下、本考案を実施するための最良の一実施形態である薬液噴霧装置について、図1乃至図3に基づいて説明する。なお、本実施形態では、本考案の薬液噴霧装置を使用して、漢方薬の抽出液をサウナ室内に噴霧する場合について例示する。ここで、図1は本実施形態の薬液噴霧装置の構成を示す説明図であり、図2は図1の薬液噴霧装置の制御の一例を示す説明図であり、図3は図1の薬液噴霧装置に加圧手段を付加した構成を示す説明図である。
本実施形態の薬液噴霧装置は、図1に示すように、水を収容する第一容器10と、薬液を収容する第二容器20と、第一容器10に収容された水を加熱する第一ヒータ31と、第一ヒータ31による水の加熱により発生した水蒸気を第一容器10から導出する水蒸気導出管41と、水蒸気導出管41を流通する水蒸気を加熱する第二ヒータ32と、第二ヒータ32により加熱された水蒸気の流通に伴い発生する負圧により、第二容器20から薬液を吸引する薬液吸引管42と、薬液吸引管42により吸引された薬液を水蒸気と共に噴霧する噴霧口51とを、主に具備して構成されている。
より詳細に説明すると、第一容器10は、蓋付きのステンレス鋼製の有底円筒状の容器であり、約20リットルの容量を有し、蓋部12と本体11との間にはシリコンゴム製のOリングが嵌め込まれて、密閉可能に構成されている。また、蓋部12には、コイルばねによって付勢され、容器内の圧力が設定値を超えた際に開いて圧力を開放するリリーフ弁65が設けられている。更に、第一ヒータ31は、第一容器10の内部の底部近傍に設けられた電気ヒータであり、第一容器10に収容された水を直接に加熱する構成となっている。加えて、第一容器10の上方には、内部空間の温度を測定する第一温度センサ33が設けられている。
第二容器20も、蓋付きのステンレス鋼製の有底円筒状の容器であり、約5リットルの容量を有し、第一容器10と同様に密閉可能に構成されている。
水蒸気導出管41は、内径約10mmのステンレス管であり、一端が第一容器10の上部の導出口15に接続されている。一方、薬液吸引管42は、内径約6mmのステンレス管であり、一端側が第二容器20内部に挿入されて先端が底部まで延ばされ、もう一方の端部は接続部50で水蒸気導出管41に接続されている。この薬液吸引管42には、水蒸気導出管41を流通する水蒸気の流入を防ぐための逆止弁63が設けられている。また、接続部50に至る手前の水蒸気導出管41には、第二ヒータ32としてのバンドヒータが巻回され、第二ヒータ32には、第二温度センサ34が取り付けられている。
また、本実施形態では、水蒸気導出管41は接続部50から更に長く延長され、約50℃に保持されたサウナ室9内に引き込まれて、水平方向に延ばされている。そして、水蒸気導出管41には、サウナ室9内で開口するように、直径約1.5mmの噴霧口51が所定間隔で複数設けられている。
また、水蒸気導出管41には、導出口15と第二ヒータ32との間において、ソレノイド62aによるプランジャ62bの駆動によって流路が二方に切り替えられる切替弁62が設けられ、水蒸気導出管41を介して第二ヒータ32に至る流路と、放出管43を介して外部へ放出される流路とに、水蒸気の流路を切替え可能な構成となっている。更に、切替弁62と導出口15との間には開閉弁60が設けられ、導出口15と開閉弁60との間には圧力計35が取り付けられている。加えて、第一容器10の上部には、第一容器10から水蒸気を排出する排出管45が、開閉弁61を介して接続されている。
加えて、薬液噴霧装置1は制御部7を備え、この制御部7によって、第一温度センサ33及び第二温度センサ34の検知に基づいた第一ヒータ31及び第二ヒータ32による加熱の制御や、非常停止時の制御が行われる。制御部7における制御の一例を図2に示す。本例によれば、電源スイッチ80のON操作によって、商用電源から電力が供給されると、電源ランプ90が点灯し、更に第一スイッチ81をON操作すると、第一温度調節器71が作動する。このとき、第一温度センサ33によって検知された温度が設定温度より低い場合は、接点71sが閉じられる。これにより、第一電磁開閉器73のマグネットコンタクタの電磁力によって、第一主接点73aが閉じて第一ヒータ31に通電すると共に、第一補助接点73bが閉じて第一運転表示灯91が点灯する。
ここで、万一、第一ヒータ31に過電流が流れた場合は、第一電磁開閉器73のサーマルリレーが作動し、第一主接点73aが開いて第一ヒータ31が非通電となると共に、第一補助接点73bが開いて第一運転表示灯91が消灯する。また、第一温度センサ33により検知された温度が設定温度以上のときは、第一温度調節器71により接点71sは閉じられず、第一ヒータ31には電流は供給されない。なお、本実施形態では、第一温度調節器71が接点71sを開閉する境界の温度は、約125℃に設定されている。
一方、第二ヒータ32への通電・非通電及び第二運転表示灯92の点灯・消灯の切替えも同様の制御で行われ、第二温度センサ34の検知に基づいて接点72sを開閉する第二温度調整器72、及び、第二主接点74a及び第二補助接点74bを開閉する第二電磁開閉器74が、第二スイッチ82のON操作により作動する。なお、第二温度調節器74が接点74sを開閉する境界の温度は、約250℃に設定されている。
また、非常停止ボタンの操作により非常停止スイッチ83が閉じると、継電器76のコイル部に通電して接点76aが閉じ、ソレノイド62aがプランジャ62bを駆動する。これにより、切替弁62において、水蒸気導出管41を介して接続部50に至る流路から、放出管43側に水蒸気の流路が切替えられる。本例では、非常停止スイッチ83は自動復帰型とされ、接点76aと共に接点76bが閉じられることにより、水蒸気の流路が放出管43側に切替えられている間は、非常灯93が点灯する。
次に、本実施形態の薬液噴霧装置1の使用方法及び動作について、図1及び図2を使用して説明する。まず、薬液噴霧装置1の使用に先立ち、第一容器10内に水を、第二容器20内に薬液を入れておく。また、開閉弁60,61は共に閉じ、切替弁62は水蒸気導出管41側に切替えられた状態としておく。ここで、電源スイッチ80をON操作し、更に第一スイッチ81をON操作すると、上記に例示した制御により、第一容器10内の水が第一ヒータ31によって加熱され、第一容器10内で水蒸気が発生する。圧力計35の指示により、発生した水蒸気で第一容器10内の圧力が所定の圧力を超えたことを確認したら、開閉弁60を開く。これにより、水蒸気は、切替弁62を経て水蒸気導出管41を流通していく。なお、開閉弁60が開かれず、第一容器10内の圧力が設定値を超えた場合は、リリーフ弁65が開き、圧力が開放される。
第二ヒータ32は、第二スイッチ82を適宜の時期にON操作することにより、予熱しておくことができる。そして、第一容器10内で更に発生する水蒸気により加圧されて水蒸気導出管41内を流通する水蒸気は、加熱された第二ヒータ32によって更に加熱されて高温となり、水蒸気導出管41内を勢い良く流通する。このとき、接続部50で水蒸気導出管41に接続された薬液吸引管42には逆止弁63が設けられているため、水蒸気は薬液吸引管42側に流入することなく、サウナ室9に導入された先端側に向って勢い良く流通する。これに伴って発生する負圧により、薬液吸引管42を介して第二容器20から薬液が吸引され、吸引された薬液は接続部50から蒸気導出管41に供給される。供給された薬液は、水蒸気と共に水蒸気導出管41内を流通し、サウナ室9内で開口する噴霧口51から水蒸気と共に噴霧される。
何らかの事情で、サウナ室9内での薬液及び水蒸気の噴霧を緊急に停止させたい場合は、非常停止ボタン(図示しない)を押す。この非常停止ボタンは、例えば、サウナ室9内や、サウナ室9外の薬液噴霧装置1の構成の近辺に、複数を設けておくことができる。そして、非常停止ボタンの操作により非常停止スイッチ83が閉じられると、上記のように、切替弁62のプランジャ62bの作動により、水蒸気の流路が放出管43側に切替えられ、水蒸気は放出管43から外部に放出される。これにより、第一ヒータ31や第二ヒータ32における加熱が継続されていたとしても、噴霧口51から薬液及び水蒸気が噴霧されることを停止させることができる。
第一ヒータ31による水の加熱、及び第二ヒータ32による水蒸気の加熱は、それぞれ第一スイッチ81及び第二スイッチ82のOFF操作により、別個に手動で停止させることができる。また、薬液噴霧装置1の使用を停止するときは、電源スイッチ80をOFF操作すると共に、開閉弁61を開け開閉弁60を閉じれば、第一容器10内に残留する水蒸気は、排出管45を介して外部に排出される。
以上のように、本実施形態の薬液噴霧装置1によれば、広い空間に向けて薬液を噴霧することができる。特に、本実施形態では、水蒸気導出管41を延長させてサウナ室9内に導入し、サウナ室9内で漢方薬の抽出液を噴霧する構成としたことにより、漢方薬の抽出液を全身に噴霧することができる。これにより、抗炎症作用、抗菌作用、保湿作用などの肌に良いといわれる成分を含むと言われる漢方薬を、広い範囲で肌に直接作用させることができ、例えば、アトピーや肌荒れ等の症状の改善が期待される。
また、本実施形態では、水を沸点まで加熱可能な第一ヒータ31に加え、水蒸気を更に加熱する第二ヒータ32を備えることにより、水蒸気が更に高温となって分子のブラウン運動がより激しくなる。これにより、水蒸気との衝突によって薬液がより微細化されると共に、単位体積当たりの水蒸気の分子数が減少し、肌にべたつく感じが低減される。また、薬液が微細化し、水蒸気のブラウン運動が激しくなることにより、噴霧された分子が落下し難いものとなり、サウナ室9内に広く薬液及び水蒸気を噴霧することができる。
更に、本実施形態は、水蒸気導出管4を延ばしてサウナ室9内に引き込み、それ以外の構成はサウナ室9の外に設置する構成としたため、第一ヒータ31及び第二ヒータ32に電気ヒータを使用し、制御部7における制御が電気によるものであっても、漏電等の不具合を生じる恐れなく、安心して薬液噴霧装置1を使用することができる。加えて、既存のサウナ室9に、後付けで薬液噴霧装置1を適用することが容易となる。また、通常の浴室を、薬液のミスト浴室として使用することも可能となる。
加えて、本実施形態の薬液噴霧装置1は、非常時に水蒸気の流路を切り替える構成を具備している。これにより、第一ヒータ31による水の加熱を停止しても水蒸気の発生はすぐには止まらないところ、噴霧口51からの水蒸気及び薬液の噴霧を迅速に止めることができ、安全かつ使い勝手の良い薬液噴霧装置となる。
なお、図3に示すように、第二容器20内の薬液を加圧する加圧手段6を更に具備する薬液噴霧装置2とすることができる。以下では、上述と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。また、図3では、水蒸気導出管41がサウナ室9まで延ばされている部分は省略して図示している。
加圧手段6は、導出口15と開閉弁60との間で水蒸気導出管41から分岐し、第二容器20の上部と接続された加圧管47と、加圧管47を介して第二容器20に導入される水蒸気の圧力を調整する圧力調整弁67を有して構成されており、圧力調整弁67は圧力計37を具備している。なお、加圧管47は、直径約6mmのステンレス管により構成されている。
また、薬液噴霧装置2では、薬液吸引管42は第二容器20の底部から接続部50まで延ばされ、途中には加圧された薬液の供給量を調整する流量調整弁55が設けられている。更に、水蒸気導出管41から加圧管47が分岐している部分には、圧力計38及び圧力調整弁68を具備する第二放出管48が接続され、水蒸気の外部への放出により水蒸気導出管41や加圧管47内の圧力を調整可能な構成とされている。
上記のように、加圧手段6を備えた構成とすることにより、第一容器10内で発生した水蒸気は、その一部が第二容器20に導入され、薬液が加圧される。これにより、第二容器20から押出されるように、接続部50に向って薬液が送られ、薬液吸引管42を介した薬液の吸引がよりスムーズなものになる。また、第一容器10内で発生した水蒸気を利用する構成としたことにより、極めて簡易な構成で薬液を加圧することができ、小型化やコストの低減が可能な薬液噴霧装置となる。
また、本考案は、下記のような小型の薬液噴霧装置3とすることもできる。薬液噴霧装置3は、図4に示すように、水を収容する第一容器110と、薬液を収容する第二容器120と、第一容器110に収容された水を加熱する第一ヒータ131と、第一ヒータ131による水の加熱により発生した水蒸気を第一容器110から導出する水蒸気導出管141と、水蒸気導出管141を流通する水蒸気を加熱する第二ヒータ132と、第二ヒータ132により加熱された水蒸気の流通に伴い発生する負圧により、第二容器120から薬液を吸引する薬液吸引管142と、薬液吸引142により吸引された薬液を水蒸気と共に噴霧する噴霧口151と主に具備して構成されている。
ここで、第一容器110及び第二容器120は、本体に螺合係止する蓋部112,122をそれぞれ有する有底円筒状の容器であり、第一容器110は約250ml、第二容器120は約100mlの容量を有し、共に函型のケーシング100に収容されている。このケーシング100の上方を覆うカバー部102は、一部突出して側方に開口し、噴霧口151が形成されている。また、第一容器110はカバー部102に設けられた孔部(図示しない)から蓋部112が露呈した状態で、ケーシング100に固定され、第一容器110の本体111には、第一ヒータ131としてのバンドヒータが巻回されている。この第一容器110の本体111の上部には、水蒸気導出管141の一端が接続され、もう一方の端部150は、先端ほど縮径して形成されている。更に、第二ヒータ132は小型の電気ヒータであり、端部150に至る手前で水蒸気導出管141を挟み込むように設けられている。
薬液吸引管142は、一方の端部152が水蒸気導出管141の端部150のごく近傍に位置すると共に噴霧口151に臨むよう、ノズル位置調整具108によってケーシング100に留め付けられている。一方、薬液吸引管142のもう一方の端部側は第二容器120に挿し込まれ、その先端が第二容器120の底部近傍まで延ばされている。また、ケーシング100の側壁には、第二容器120の出し入れを行うための扉部106が設けられている。なお、ノズル位置調整具108によって、薬液導出管141の端部150と、薬液吸引管142の端部152との間隔を微調整することができる。
次に、薬液噴霧装置3の制御部8における制御の一例を図5に示す。本例によれば、電源スイッチ85のON操作によって、電源ランプ95が点灯すると共に、タイマ78が稼動を開始し、第一ヒータ131及び第二ヒータ132が通電状態となる。そして、予め設定した所定時間の経過をタイマ78が検知すると、接点78aが開き、第一ヒータ131及び第二ヒータ132への電流の供給が停止されると共に、接点78bが閉じてブザー79が鳴る。電源スイッチ85をOFF操作すると、ブザー79が止まると共に、電源ランプ95が消灯する。
薬液噴霧装置3の使用にあたっては、第一容器110内に水を入れ、第二容器120内に薬液を入れ、電源スイッチ85をON操作すれば、第一容器110内の水が第一ヒータ131によって加熱され、第一容器110内で水蒸気が発生する。発生した水蒸気は、第一容器110内で更に発生する水蒸気により加圧されて水蒸気導出管141内を流通し、第二ヒータ132で更に加熱され、端部150から噴出する。このとき、端部150は先端に向けて縮径しているため、水蒸気はより加速されて噴出する。そして、水蒸気の噴出に伴って発生する負圧により、端部150の近傍に開口した薬液吸引管142を介して、第二容器120から薬液が吸引される。そして、吸引された薬液は、水蒸気と衝突して微細化され、水蒸気と共に噴霧口151から噴霧される。
薬液噴霧装置3では、水及び薬液の全量が噴霧されるまでの所要時間を超えて稼働させられることがないよう考慮されて、第一容器110の容量、第二容器120の容量、及びタイマ78の設定可能な時間範囲が設定されている。これにより、水や薬液がなくなる前に、タイマ78の動作により第一ヒータ131及び第二ヒータ132への電流の供給が絶たれ、第一ヒータ131や第二ヒータ132が過熱状態となる恐れなく安全に使用可能なものとなっている。
以上のように、薬液噴霧装置3によれば、薬液噴霧装置1,2に比べ、極めて小型の装置であるため、容易に持ち運ぶことができ、使用者の所望の場所で薬液を噴霧させることができる。また、大掛かりに薬液が噴霧される構成ではないため、短い時間で気軽に使用できる薬液噴霧装置となる。加えて、極めて簡易な構成で安価に製造できるため、家庭用の普及型の装置として適したものとなる。
以上、本考案について好適な実施形態を挙げて説明したが、本考案はこの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本考案の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
例えば、薬液噴霧装置1は、電源スイッチまたは非常停止スイッチの操作により手動で停止する構成を例示したが、タイマを使用した制御により、所定時間の経過後に自動的に停止する構成としても良い。また、薬液噴霧装置2は、第一容器10内で発生した水蒸気により薬液が加圧される構成としたが、第二容器内に空気を挿入するポンプを備える構成とすることもできる。更に、薬液噴霧装置3は、極めて簡易な構成を例示したが、温度センサや温度調節器を備える構成としても良い。なお、上記の実施形態では、各構成についてのサイズや材質、温度設定など、具体的な値を例示して説明したが、もちろん、それらの数値や材質に限定されるものではない。
また、上記では何れも漢方薬の抽出液を噴霧する場合を例示したが、ハーブの抽出液や香料を含む液を薬液として噴霧することもできる。加えて、肌に有効な成分を肌に直接作用させる場合について例示したが、薬液を含む水蒸気の吸引による呼吸器系の症状の改善や、リラクゼーション効果等も期待される。