JP3103532B2 - 高分子包摂性化合物 - Google Patents

高分子包摂性化合物

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JP3103532B2 JP11022398A JP2239899A JP3103532B2 JP 3103532 B2 JP3103532 B2 JP 3103532B2 JP 11022398 A JP11022398 A JP 11022398A JP 2239899 A JP2239899 A JP 2239899A JP 3103532 B2 JP3103532 B2 JP 3103532B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体親和性の高分
子包摂複合体を形成することができる高分子包摂性化合
物及びその製造方法に関する。また本発明は、該高分子
包摂性化合物と有機化合物とを含む高分子包摂複合体に
も関する。さらに本発明は、高分子包摂性化合物を用い
て有効成分を徐々に、そして持続的に放出させる方法に
も関する。
【0002】
【従来の技術】シクロデキストリン(CD)のようなア
ミノ多糖類(シクログリカン:CG)は、包摂機能を有
する環状オリゴ糖であって、従来、食品、衛生材料、医
学−生理学材料等の分野で広く使用されている。例え
ば、プロスタグランジンのような不安定な医薬を安定な
製剤にする等の経口投与製剤の分野をはじめとして、シ
クロデキストリンを包摂複合体または添加剤として利用
することが広く行われている。近年特に、栄養食品産業
(nutriceutical industry)分野において注目を浴びて
いる(Frank, S. G. J. Pharm. Sci. 1975, 64, 158
5.)。環状オリゴ糖は、複数の単糖単位からなる疎水性
空洞を有している。さらに疎水的な相互作用により、空
洞の中に種々の有機化合物をとりこんで複合体を形成す
る包摂作用を有する。このような極めて特異な性質によ
り、環状オリゴ糖はホストーゲスト化学の研究として独
立した研究対象となってきている(Szejtli, J.Cyclodex
trin and Their Inclusion Complexs; Akademiai Kaid
o: Budapest, 1982; Li, S.; Purdy, W. C. Chem. Re
v. 1992, 92, 1457.)。また、シクロデキストリンに新
たな機能を付与するために、これに置換基を導入する等
の化学変換を行う数多くの試みが行われてきている。例
えば、Tetrahedron,39、1417(1983)には、アシル
化、アルキル化、アミノ化、アチド化、ハロゲン化等の
化学変換を行う技術、及び変換された誘導体について記
載されている。また人工酵素の分野における数多くの研
究が、環状オリゴ糖及びその誘導体を用いて行われてき
ている(Bleslow, R. Science 1982, 218, 532; D'Sou
da, V. T.; Bender, M.L. Acc. Chem. Res. 1987, 20,
146)。さらに、環状オリゴ糖を構成要素として含む高
分子が分析化学の分野で広く用いられるようになってき
ており(Journal of Analytical Chemistry,211,333
(1988))、例えば、種々の立体異性体やエナンチオマ
ーの単離のためのHPLC(Armstrong, D.W.; DeMond,
W.; Alak, A; Hinze,W.L.; Riehl, T.E.; Bui,K.H.,
J. Analytical Chemistry, 1985, 57, 234,and Armstro
ng, D. W. J. Pharm. Biomed. Anal. 1990, 8, 123)
や、繊維芽細胞成長因子のような生体高分子を分離する
アフィニティクロマトグラフィー(Sheng, Y.; Forkma
n, J.; Weisz,P. B.; Joullie, M. M.; Ewing, W. R. A
nal. Biochem. 1990, 185, 108)などへの応用が挙げら
れる。しかしながら、生体親和性および/又は生分解性
の、環状オリゴ糖に結合した高分子を製造し、これを利
用することについてはほとんど研究が行われていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、生体親和性を有し、医学−生理学材料、化粧品添加
物、食品添加物、衛生材料等として使用することができ
る新規な高分子包摂性化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】シクログリカンは、多官
能環状分子であるため、結合され得る高分子担体及び可
能な結合方法が限られており、従来生体親和性の高分子
シクログリカン誘導体が開発されていないのはこれに起
因するものと考えられる。本発明者は、シクログリカン
に多糖類等の生体高分子物質を結合させることを考え、
その結合方法を種々検討した結果、アルデヒドの還元的
アミノ化反応を利用することに着目し、本発明に至った
ものである。
【0004】本発明によれば、生体親和性を有し、医学
−生理学材料、化粧品添加物、食品添加物、衛生材料等
として使用することができる新規な高分子包摂性化合物
を、従来この分野で用いられていなかった反応方法を用
いて有利に提供することができる。そして、得られた高
分子包摂性化合物は、これを担体として用いた場合、薬
効成分、色素、香気成分等の低分子有効成分の効力を長
時間保持し、徐々に放出することができる。
【0005】
【0006】
【0007】すなわち本発明は、下記式(I)
【化5】 (式中、CGは6〜8個の単糖類で形成された、シクロ
グリカン残基、Rは水素原子または水酸基の誘導体基
であってシクログリカンの包摂を妨害しない基であり、
は水素原子あるいは1〜20個の炭素原子を有する
アシル基であり、Rは架橋性の基である)で表される
高分子包摂性化合物に関する。
【0008】また本発明は、前記CGが、α-、β-又は
γ−シクロデキストリン残基であることを特徴とする、
前記の高分子包摂性化合物に関する。さらにまた本発明
は、多糖類に基づく高分子包摂性化合物の製造方法であ
って、アルデヒド基を有するシクロデキストリン誘導体
とアミノ多糖類との間でシッフ塩基を形成すること、続
いて形成されたシッフ塩基を還元することにより環状オ
リゴ糖類に結合したキトサン誘導体を形成することを含
む、前記方法に関する。
【0009】また本発明は、アミノ多糖類が、下記式
(II)
【化6】 (式中、R2は水素原子または炭素原子1〜20を有す
るアシル基、Rは結合基である)で表わされる化合物
であり、環状オリゴ糖類が、下記式(III)
【0010】
【化7】 (式中、CGは、6〜8個の単糖類で形成されたシクロ
グリカン残基であり、R は水素原子または水酸基の誘
導体基であってシクログリカンの包摂を妨害しない基で
ある)で表わされる化合物であり、高分子包摂性化合物
が、下記式(I)
【0011】
【化8】 (式中、CG、R、RおよびRは夫々前記の意味
を有する)で表される化合物である、前記の方法に関す
る。
【0012】本発明は、前記の方法により製造された高
分子包摂性化合物にも関する。また本発明は、高分子包
摂性化合物による高分子包摂複合体の形成により、有機
化合物の放出及び/又は吸収の速度と量を制御する方法
にも関する。本発明において、環状オリゴ糖類は、直鎖
状アミノ多糖類に架橋結合基を介して分枝したシクログ
リカンであり、該シクログリカンとしては、例えばシク
ロイソマルトオリゴ糖類、シクロイヌロオリゴ糖類など
が挙げられるが、典型的にはα−、β−又はγ−シクロ
デキストリン(CD)が用いられる。またアミノ多糖類
骨格としては、生体親和性、生分解性を有するいかなる
アミノ多糖類残基であることができ、例えば、ポリガラ
クトサミン、コンドロイチン硫酸などのアミノ基含有単
糖類からなる直鎖状高分子残基であり、典型的にはキト
サン残基である。
【0013】さらに架橋結合基は、典型的にはアミノ多
糖類およびシクログリカンを架橋する2価のアルキリデ
ン基である。上記の物質のほとんどは安価で容易に入手
できる天然物である。本発明の多糖類に基づく高分子包
摂性化合物は、酵素及び微生物の作用により分解され、
またゲスト−ホスト複合体を通して放出及び/又は吸収
の量及び速度を制御できるものである。従って本発明は
医薬、化粧品、食品、環境科学、クロマトグラフィーな
ど種々の産業分野、技術分野に応用できるものである。
【0014】例えば本発明の高分子包摂性化合物は、不
安定な薬品や揮発性の化合物を安定化させたり、医薬の
効能を増強したり、有害な副作用を軽減させたり、薬品
の放出を制御するなどといった様々な分野での利用が可
能である。また内分泌かく乱物質(環境ホルモン)のよ
うな毒性のある物質を水や食品から収集したり、除去し
たりするのにも用いることができる。本発明において、
例えばHanessian's report(Hanessian, S., Benalil,
A.;Laferriere, C. J. Org. Chem. 1995, 60, 4786)に
記載の方法によりシクログリカンを、ヨウ化リチウムの
存在下で臭化アリル−水素化リチウムで処理して、モノ
アリル誘導体とし、次いでアリル基のC−C2重結合を
オゾン酸化してアルデヒド中間体を生成する。アミノ多
糖類は酸性媒体に可溶であるため、シッフ塩基の形成が
低いpHで促進される。従って、ホルミルメチル化した
シクログリカンとアミノ多糖類との間で、pH3.5〜
6.0の酢酸緩衝液中において、還元カップリングが行
われる。形成されたシッフ塩基は直接水素化ホウ素ナト
リウム、水素化シアノホウ素ナトリウム等で還元し、キ
トサンに結合したシクログリカンを形成する。シクログ
リカン残基の置換の程度は、多糖類とシクログリカンと
の比によって5〜80%の間で可変である。以下、本発
明の態様をより具体的に説明するが、これは本発明の範
囲を限定するものではない。
【0015】
【発明の実施の態様】本発明の高分子包摂性化合物は、
好適には以下のようにして製造される。下記式(II)
【化9】 (式中、Rは水素原子あるいは1〜20個の炭素原子
を有するアシル基であり、Rは架橋性の基である)で
表されるキトサン誘導体と下記式(III)
【0016】
【化10】
【0017】(式中、CGは6〜8個のグルコースで形
成されたシクログリカン残基であり、Rは水素原子ま
たは水酸基の誘導体基であってシクログリカンの包摂を
妨害しない基である)で表されるアルデヒド基を有する
シクログリカン誘導体とを反応させ、それによって形成
されたシッフ塩基を次いで還元することによって、下記
式(I)
【0018】
【化11】 (式中、CGは6〜8個のグルコースで形成されたシク
ログリカン残基であり、Rは水素原子または水酸基の
誘導体基であってシクログリカンの包摂を妨害しない基
であり、Rは水素原子あるいは1〜20個の炭素原子
を有するアシル基であり、Rは架橋性の基である)で
表される高分子包摂性化合物を製造する。
【0019】式(I)、式(II)及び式(III)に
おいて、Rは、シクログリカンを構成するグルコース
の水酸基に由来する基であって、これが遊離の水酸基で
ある場合のRは水素原子であり、また、該水酸基がシ
クログリカンの包摂を妨害しない誘導体を形成している
場合のRはシクログリカンの包摂を妨害しない官能基
である。このような官能基の例としては、炭素数10個
以下のアルキル基、カルボン酸アシル基、硫酸基、リン
酸基、グシコシル基等が挙げられる。好ましいRの具
体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロ
キシプロピル基等が挙げられる。シクログリカンを構成
するグルコースの水酸基が誘導体を形成する割合は任意
であって、全てが遊離の水酸基であってもよく、部分的
に又は全てが誘導体を形成していてもよい。CGの記号
を付した環状構造部分は、好ましくは6〜8個のグルコ
ースで形成されるα−、β−又はγ−シクロデキストリ
ン残基である。Rは、キトサンを構成するグルコサミ
ンのアミノ基に由来する基であって、これが遊離のアミ
ノ基である場合のRは水素原子であり、また、該アミ
ノ基がアシル化されている場合のRはアシル基であ
る。アシル基である場合の例としては、炭素数1〜20
個のアシル基、特にカルボン酸のアシル基が挙げられ
る。好ましいアシル基の例としては、アセチル基、プロ
ピオニル基等が挙げられる。Rは、キトサンを構成す
るグルコサミンのアミノ基に置換された架橋性の基であ
って、このような基の例として、アルキリデン基、ジア
シル基、あるいはビスカルバモイル基が挙げられる。好
ましい架橋性の基はヘキサメチレンビスカルバモイル
基、ヘプタンジオイル基、ヘキシリデン基等である。キ
トサンを構成するグルコサミンのアミノ基に架橋性の基
が導入される比率は、どの程度の分子量の高分子包摂性
化合物を所望するかによって異なるが、一般的には5〜
50%程度が適当である。架橋性の基の導入比率は、キ
トサンに反応させる架橋性化合物の割合によって調節で
きる。
【0020】式(III)で示されるアルデヒド基を有
するシクログリカン誘導体は、既知のモノアリル誘導体
をオゾン酸化、オスミウム酸化等のオレフィンの酸化反
応としてそれ自体知られている方法を用いて酸化するこ
とによって製造される。モノアリル誘導体の製造につい
ては、例えばJ.Org.Chem.、60、4786(1995)に記載
されている。また、モノアリル誘導体の酸化工程につい
ては、反応溶媒として水、アルコール類、ジメチルスル
ホキシド等の極性溶媒を使用し、−50℃〜50℃の反
応温度で、1〜24時間オゾン等と反応させる。式(I
I)で示されるキトサン誘導体は、天然の生体高分子多
糖類であるキチンを任意の程度に脱アセチル化したキト
サン又はそのアシル化物にアルキリデン基、ジアシル
基、ビスカルバモイル基等の架橋性の基を導入し、架橋
させることにより製造される。
【0021】式(II)の化合物と式(III)の化合
物を縮合させて目的とする高分子包摂性化合物を得るに
は、両者を混合した後、水素化ホウ素ナトリウム、水素
化シアノホウ素ナトリウム等の還元剤を加えて還元的に
縮合させることにより製造される。反応溶媒は水、アル
コール類、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒が適当で
あり、pHは2〜13、反応温度は−30℃〜70℃
で、1〜10日間反応させる。また、別法として、式
(III)のアルデヒド基を有するシクログリカン誘導
体と未だ架橋性の基が導入されていないキトサン誘導体
とを還元的に縮合させた後、架橋性の基を導入して架橋
させることによっても、目的とする高分子包摂性化合物
が得られる。
【0022】本発明の高分子包摂性化合物のもつ選択的
吸収性 シクロデキストリン包摂複合体の形成のために数多くの
化合物が試験されてきているが、今回はまずp−ニトロ
フェノール(PNP)及び3−メチル−4−ニトロフェ
ノール(MPNP)をCD結合型キトサンの吸収性を見
るために基体として用いた。α−シクロデキストリンと
のPNPとMPNP包摂複合体の解離定数は、夫々4.
1×10ー4、4.1×10ー2Mと報告されている
(Monnlog,C. A.; Kennedy, R. T. Anal. Chem. 1994,
66, 280R)。
【0023】これらの2つのゲスト分子は類似の構造を
有するが、後者のメチル基は包摂複合体の形成を著しく
抑制する。PNPとMPNPをα−CDに結合したキト
サンビーズ上でカラムクロマトグラフィーにさらしたと
ころ、401nmで吸収が記録された(図2)。ホスフェ
ート緩衝液でpH11.0でカラムから洗浄したとこ
ろ、MPNPはα−CDに対する親和性が小さいことを
示し、PNPのバンドはカラムの上部に留まった。PN
Pは、移動相がメタノール水溶液のような疎水性の小さ
い溶液に交換することにより溶出された。これらの結果
からα−CDを結合したキトサンビーズは、種々の分子
の複合体から有機化合物を選択的に吸収するシステムと
して有用であることがわかる。内分泌かく乱物質である
ビスフェノールA及びβ−CDを結合したキトサンビー
ズを用いた同様の実験においても、キトサンビーズで吸
収されたことが示された(図3)。この結果は、β−C
Dを結合したキトサンビーズが環境ホルモンのような有
害な有機化合物の除去にも有用であることを示してい
る。
【0024】本発明の高分子包摂性化合物による徐放性 α−CDを結合したキトサンの他の応用例では、α−C
D結合型キトサン内に捕獲された有機分子が徐々に放出
される徐放性を示す。その測定に際しては、PNP溶液
中にビーズを浸した後、それらをp9.0でリン酸緩衝
液中に加え、また緩衝液は30分毎に入れ替えて上澄液
の吸光度の経時的変化を401nmで測定する(図4、
5)。これらのデータとは対照的に包摂複合体を形成す
る能力をほとんど有さないキトサンビーズは数時間以内
でPNPのほとんど全てを放出してしまう(実施例3、
4参照)。PNPはα−CD結合型キトサンビーズキト
サン内に捕獲され、緩衝液中に徐々に放出され、緩衝液
を30回置換した後、PNPの40%以上がビーズ中に
留まる。これらの実験は、CD結合型キトサンが薬品や
芳香剤の放出を制御するための吸収体として供されるこ
とを示す。
【0025】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明するが、本
発明の範囲は、これに限定されるものではない。
【0026】実施例1 (a) 架橋されたキトサンゲルの調製 脱アセチル化度99%のキトサン(30g)を水(50
0ml)と酢酸(15ml)の混合溶媒に溶解し、完全
に透明な溶液になるまで撹拌した。その後、キトサンの
重量分率が4%になるように水を加えて調整した。再び
撹拌した後、注射針を用いてアルカリ性溶媒(水酸化ナ
トリウム:水:エタノール=16g:304ml:80
ml)中に滴下した。滴下が終わった後デカンテーショ
ンによりアルアカリ性溶媒を除去し、残ったビーズをエ
タノール中で1日間静置した。もう1度デカンテーショ
ンした後、N,N−ジメチルホルムアミドを用いてゲル
を数回洗浄し、ヘキサメチレンジイソシアネート(2.
5ml)を加えて室温で24時間撹拌し、架橋反応を行
った。反応終了後十分に水洗し、キトサンゲルを得た。
【0027】(b) アルデヒド基を有するシクロデキ
ストリン誘導体の調製 J.Org.Chem.,60,4786(1995)
に記載の方法により合成したアリル化シクロデキストリ
ン(20g)を50%メタノール水溶液(800ml)
に懸濁させ、エバポレーターで撹拌し、15℃で撹拌し
ながらオゾンガスを4時間バブリングさせた。次いでジ
メチルスルフィド(6ml)を加え、一晩撹拌した後、
300mlまで濃縮した。
【0028】(c) 両原料化合物の縮合 前記(b)で調製したアルデヒド基を有するシクロデキ
ストリンの溶液を、前記(a)で調製した架橋されたキ
トサンゲル(15g)を2%の酢酸に懸濁させた懸濁液
(700ml)に加え、次いで酢酸ナトリウムを少量ず
つ加えてpHを4に調整した。得られた混合物を5時間
撹拌し、次いで水素化ホウ素ナトリウム(900mg)
を加えてさらに一晩撹拌した。さらに、酢酸(5ml)
及び水素化ホウ素ナトリウム(750mg)を加え、室
温で4日間ゆるやかに撹拌した後、デカンテーションに
より上澄液を除去した。次いで、イオン交換水中で1日
静置した後デカンテーションを行う操作を数回繰り返
し、シクロデキストリン結合キトサンゲル(17g)を
得た。生成物の構造を確認するために行った赤外線吸収
スペクトルを図1に示す
【0029】実施例2 架橋されたキトサンゲルの代わりに未架橋のキトサンを
用いて実施例1の(c)に準じて縮合反応を行い、次い
で実施例1の(a)に準じて架橋反応を行うことによ
り、実施例1と同様のシクロデキストリン結合キトサン
ゲルが得られた。
【0030】実施例3 実施例1で得られたシクロデキストリン結合キトサンゲ
ル及び対照としてシクロデキストリンの結合していない
キトサンゲルを使用し、それぞれ1×10−4Mのp−
ニトロフェノールをりん酸緩衝液(0.1M,pH1
1)に溶解した溶液中に24時間靜置する。次いでデカ
ンテーションにより上澄液を除き、りん酸緩衝液(0.
1M,pH11)で2回洗浄した。得られたゲルを5m
lのりん酸緩衝液(0.1M,pH11)を満たした石
英製角形可視紫外線吸収スペクトル測定用セル中に移
し、静置させたまま15分毎に401nmの波長の吸光
度を測定した。結果を図4に示す。図4において、黒い
ドットのグラフは、実施例1のシクロデキストリン結合
キトサンゲルを用いた場合であり、白い三角のグラフ
は、対照としてのシクロデキストリンの結合していない
キトサンゲルを用いた場合である。黒いドットのグラフ
の方がゆるやかなカーブを描いて上昇しているところか
らみて、実施例1のシクロデキストリン結合キトサンゲ
ルの方が対照に比べてp−ニトロフェノールを溶液中に
放出する速度が遅く、徐放性であることが示されてい
る。
【0031】実施例4 実施例1で得られたシクロデキストリン結合キトサンゲ
ル及び対照としてシクロデキストリンの結合していない
キトサンゲルを使用し、それぞれ1×10−4Mのp−
ニトロフェノールをりん酸緩衝液(0.1M,pH1
1)に溶解した溶液中に24時間靜置する。次いでデカ
ンテーションにより上澄液を除き、りん酸緩衝液(0.
1M,pH11)で2回洗浄した。得られたゲルを5m
lのりん酸緩衝液(0.1M,pH11)を満たした石
英製角形可視紫外線吸収スペクトル測定用セル中に移
し、30分毎に新たに同量のりん酸緩衝液(0.1M,
pH11)と交換しながら401nmの波長の吸光度を
測定した。結果を図5に示す。図5において黒い棒グラ
フは実施例1のシクロデキストリン結合キトサンゲルを
用いた場合であり、白い棒グラフは対照としてのシクロ
デキストリンの結合していないキトサンゲルを用いた場
合である。この図からみて、実施例1のシクロデキスト
リン結合キトサンゲルを用いた場合は20回を越える溶
媒交換の後もp−ニトロフェノールが新たな溶媒中に放
出されるのに対して、対照のキトサンゲルを用いた場合
は数回の溶媒交換で完全に放出されてしまうことが示さ
れている。
【0032】
【発明の効果】本発明によって提供される高分子包摂性
化合物は、シクログリカン固有の包摂化合物形成能を有
するとともに、生体親和性であるため、生体に直接適用
される医学−生理学材料、化粧品添加物、食品添加物、
衛生材料等に使用してその薬効成分、香気成分、色素等
の低分子有効成分を放摂させた場合、効力が長時間にわ
たって保持されるという優れた効果を奏するものであ
る。この点については、図4及び図5に明らかに示され
ている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたシクロデキストリン結合キ
トサンゲルの赤外線吸収スペク9トルをKBr法で測定
したものである。
【図2】PNPとMPNPをα−CD結合型キトサンビ
ーズ上でカラムクロマトグラフィーをさらしたときの吸
収を示すグラフである。
【図3】ビスフェノールAのβ−CD結合型キトサンビ
ーズへの吸収を示すグラフである。
【図4】実施例1で得られたシクロデキストリン結合キ
トサンゲルにp−ニトロフェノールを包摂させ、そこか
らp−ニトロフェノールが溶媒中に放出される速度を時
間の経過による濃度変化を用いて示し、対照としてシク
ロデキストリンの結合されていないキトサンゲルを用い
た場合と対比するグラフである。
【図5】実施例1で得られたシクロデキストリン結合キ
トサンゲルにp−ニトロフェノールを包摂させ、そこか
らp−ニトロフェノールが溶媒中に放出される速度を、
溶媒を入れ替えながら測定した濃度によって示し、対照
としてシクロデキストリンの結合されていないキトサン
ゲルを用いた場合と対比するグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08B 37/16 A61K 47/36 CA(STN)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記式(I) 【化1】 (式中、CGは6〜8個の単糖類で形成された、シクロ
    グリカン残基、Rは水素原子または水酸基の誘導体基
    であってシクログリカンの包摂を妨害しない基であり、
    は水素原子あるいは1〜20個の炭素原子を有する
    アシル基であり、Rは架橋性の基である)で表される
    高分子包摂性化合物。
  2. 【請求項2】CGが、α−、β−又はγ−シクロデキス
    トリン残基であることを特徴とする、請求項1に記載の
    高分子包摂性化合物。
  3. 【請求項3】多糖類に基づく高分子包摂性化合物の製造
    方法であって、アルデヒド基を有するシクログリカン誘
    導体とアミノ多糖類との間でシッフ塩基を形成するこ
    と、続いて形成されたシッフ塩基を還元することにより
    環状オリゴ多糖類に結合したキトサン誘導体を形成する
    ことを含む、前記方法。
  4. 【請求項4】アミノ多糖類が、下記式(II) 【化2】 (式中、R2は水素原子または炭素原子1〜20を有す
    るアシル基、Rは結合基である)で表わされる化合物
    であり、環状オリゴ類が、下記式(III) 【化3】 (式中、CGは、6〜8個の単糖類で形成されたシクロ
    グリカン残基であり、Rは水素原子または水酸基の誘
    導体基であってシクログリカンの包摂を妨害しない基で
    ある)で表わされる化合物であり、高分子包摂性化合物
    が、下記式(I) 【化4】 (式中、CG、R、RおよびRは夫々前記の意味
    を有する)で表される化合物である、請求項3に記載の
    方法。
  5. 【請求項5】請求項3又は4に記載の方法により製造さ
    れた高分子包摂性化合物。
  6. 【請求項6】請求項1、2および5のいずれかに記載の
    高分子包摂性化合物による高分子包摂複合体の形成によ
    り、有機化合物の放出及び/又は吸収の速度と量を制御
    する方法。
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