本考案は、ボトル、ビン、チューブなどの容器開口部、および容器・器具類のノズル部分を密封するための容器栓に関し、具体的には、操作性・耐衝撃性・密閉性の3つを兼ね備えるために、硬質素材と軟質素材から構成される容器栓に関する。
従来から、ガラス・合成樹脂・金属等により成型されたビン等の容器開口部、および容器・器具類のノズル部分を封止するための容器栓に関しては、様々な形状や素材が知られている。
例えば、容器栓の形状については、開口部に被冠してその外側から圧接・係留・締結等によって封止部を形成するタイプや、開口部に挿入してその内側から圧接・締結等によって封止部を形成するタイプがあり、特に前者においては、封止と同時に容器開口部の破損や汚染からの保護の目的も果たしている。一方、容器栓の素材については、硬質素材と軟質素材とに大別され、前者においては、ガラスや金属および合成樹脂が、後者においては、熱可塑性エラストマーに代表される合成樹脂が使用されている。特に、合成樹脂素材は安価に大量生産が可能であり、化学構造や組成によってあらゆる目的に対応して調整可能な点から、容器栓の素材としての需要が高い。そして、これらの形状や素材を組み合わせることにより、きわめて多種多様な容器栓が使用されるに至っている。
ところで、外部には漏れてはならない液体や気体が入った容器や、使用時まで内部環境が外部環境から隔絶される必要がある容器、すなわち食料品や医薬品を収容した容器、あるいは流体の流通口を有する医療器具・用具等においては、容器栓の密閉性が非常に重要である。そして、これは単に封止構造上の問題だけではなく、容器自体の寸法安定性にも関係している。
容器開口部への寸法安定性を高めるためには、通常は、例えば金属や硬質合成樹脂等の硬質素材で栓本体を形成している。ただし、硬質素材だけでは満足な密閉性は得られないので、容器開口部と接触する部分に、例えば軟質合成樹脂やゴム等の軟質素材からなるシール材を介して開口部の密閉性も高めている。このシール材としては、容器栓の構造や寸法に合わせて軟質材料をリング状にしたOリングや円盤状にしたシートパッキンが用いられていた。ところが、Oリングやシートパッキンと前記栓本体部とを、それぞれ別々に成型した後に両者を組み付けるタイプの容器栓は、組み付け不具合等が生じて密閉性が不十分になったり、組み付けコストが高まる等の問題があった。
そこで、一体成型によって、栓本体部にシール材を組み付けたタイプの容器栓がいくつか開示されている(特許文献1および2)。特許文献1においては、キャップ本体部を硬質合成樹脂で形成すると共に、容器開口部を密封するシール部を軟質合成樹脂で形成し、これらを二色成型により一体成形した容器栓が開示されている。また、特許文献2においては、中足部と天板の裏面との間に隙間を備えたキャップ本体を形成し、前記隙間を通して中足部内側の天板裏面から中足部外側の天板裏面にわたって塗布、押圧した軟質樹脂によって、容器開口部の上端部に圧接するライナーを天板裏面に形成した容器栓が開示されている。ところが、これらの二色成型による一体構造の物は、栓本体の表面(容器開口部側の面)に軟質素材のシール材を付けている事から剥離耐性に問題があった。そのため、相互の密着性が確保できる素材に限られる、あるいは、特殊な嵌合構造や係留構造を形成する必要がある等の問題があった。
なお、栓体全体を軟質素材で形成した医療用具用の容器栓はいくつか知られている(例えば、特許文献3および4)。しかし、本考案者らの知見によれば、特許文献3に記載の開口部挿入型の容器栓では、栓体全体が軟質素材であるがゆえに寸法安定性が満足できるものではなく、漏れなどの欠点が認められた。また、特許文献4に記載の被冠型の容器栓では、密閉性を高めると脱栓しにくい等の操作上の問題が認められた。さらに、栓体全体が軟質なエラストマーからなると、例えば、滑り抵抗が大きいがゆえに取り扱い性が悪く、特に大量生産を指向した工程ではロボットによるハンドリング性が悪いことがあった。
特開平10−203546号公報
特開2000−327015号公報
特開平7−275356号公報
特公平2−16147号公報
このように、従来知られている容器栓は、操作性や容器密閉性の点で必ずしも満足できるものではなかった。さらに、容器内部に精密部品等の破損しやすい部品が組み込まれた装飾品や、中空糸状分離膜モジュールおよび中空糸型血液浄化器などにあっては、操作性や密閉性だけではなく、運搬時や落下時などの耐衝撃性についても考慮した容器栓の構造設計が必要であるが、そこまで言及した技術はなかった。
本考案は前記問題点に鑑みて成されたものであり、ボトル、ビン、チューブなどの容器開口部、および容器・器具類のノズル部分を密封するための容器栓であって、操作性・耐衝撃性・密閉性の3つを兼ね備えた容器栓を提供することを目的とする。
本考案者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、硬質素材からなる天板部、スカート部および中足部を有する容器栓において、天板部下面に容器開口端に被冠される封止手段を設けるとともに、天板部上面に衝撃吸収手段を設けてそれらを互いに一体化すれば、操作性・耐衝撃性・密閉性の全てを満足できることを見出して、本考案を完成した。すなわち、本考案は、以下の(1)〜(8)に関する。
(1)硬質素材から形成された天板部および天板部から筒状に垂下して容器開口部外周に圧接する第一のスカート部と、容器開口部内周に圧接する中足部とを有する容器栓であって、天板部下面における第一のスカート部と中足部の間には、軟質素材から形成され容器開口端の肉厚部に被冠される封止手段が設けられ、天板部上面の少なくとも一部には、軟質素材から形成され衝撃を緩和する衝撃吸収手段が設けられ、更に前記封止手段と前記衝撃吸収手段とが前記天板部に設けた複数の貫通口を介して互いに連通し一体化されていることを特徴とする容器栓。
(2)前記衝撃吸収手段は前記天板部上面の全面にわたって設けられていることを特徴とする(1)に記載の容器栓。
(3)前記硬質素材が硬質の熱可塑性樹脂、前記軟質素材が熱可塑性エラストマーであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の容器栓。
(4)前記第一のスカート部の内周面に容器開口部と締結する締結手段が設けられていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の容器栓。
(5)前記第一のスカート部の外周面に突条部からなる締結手段が設けられ、更に前記第一のスカート部の外周に天板から筒状に垂下した第二のスカート部が形成されてルアーロック型となっていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の容器栓。
本考案の容器栓は、上記の構成を有することにより、従来技術で問題であった組み付け不良や剥離等の問題を生じることがなく、操作性・耐衝撃性・密閉性の3つの特性を兼ね備えた容器栓となっている。そのため、種々の容器に使用することができ、中でも、液体容器や中空糸状分離膜などの精密部品を内蔵した容器の容器栓として特に好ましく使用することができる。
以上説明したように、本考案の容器栓は、硬質素材からなる天板部、スカート部および中足部を有する容器栓であって、容器開口端に被冠される封止手段を設けるとともに、天板部上面に衝撃吸収手段を設けて、それらを天板部貫通口を介して互いに一体化したことにより、操作性・耐衝撃性・密閉性の3つの特性を兼ね備え、溶出物がなく機械的物性にも優れるという効果がある。
そして、これらの特性により、ボトル、ビン、チューブなどの種々の容器開口部、および容器・器具類のノズル部分を密封するための容器栓として使用できる。また、衝撃吸収手段により、内部に破損しやすい精密部品を内蔵した容器の栓として好ましく使用でき、その密閉性も考慮すれば、中空糸状分離膜を内蔵したウエット型の分離膜モジュールの栓として特に好ましく使用できる。
以下、図面を参照しながら本考案を詳細に説明するが、本考案は以下の図面に例示したものに限定されるものではない。
図1は、本考案の容器栓1の一実施形態を示す模式側断面図である。図1において、天板部2は栓体の上部を形成する天板であり、同時に容器開口面に水平に被冠される封止機能部分である。また、天板部2は、筒状に垂下して容器開口部の外周面に圧接するスカート部3を有しており、図2に示す別の実施態様と区別する便宜上、これを第一のスカート部3と称する。
前記天板部2の形状は、通常は水平面である容器開口面に水平に被冠される部分を有していれば特に限定されるものではなく、全体としては、円盤、円柱、立方体、多面角柱等の形状を取り得る。操作性やデザイン性を考慮して適宜採択すればよい。
一方、天板部2から筒状に垂下する第一のスカート部3は、密閉性の点から、その内周形状を容器開口部の外周形状に対応させる必要があり、使用する容器の開口形状に応じて適宜決定される。第一のスカート部3における圧接面の構造は特に限定しないが、例えば圧接面が突条部であり、さらに被圧接面と対応したネジ等の締結手段を形成していても良い。そのような形状であると、例えばネジ口ビンの容器栓として使用できる。さらに、第一のスカート部3の外周面には、締結性や打栓・抜栓の操作性を高める目的からローレット溝(ナール)等を設けても良い。
本考案においては、天板部2と第一のスカート部3は、その間に不連続面を有さず、連続的に形成されたものである。そして、これらが一体となって容器栓1の本体部分を成しているため、容器強度や栓体の操作性を確保する目的から、硬質素材で形成されている。硬質素材としては、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属や、硬質の熱可塑性樹脂が生産性、製造コストおよび形状安定性の点から好ましい。錆び、破損および永久変形が生じにくい点から、適度な硬度を有する合成樹脂が特に好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリウレタン等の汎用ポリマーが使用できる。なお、ここでいう適度な樹脂硬度とは、ASTM規格(試験方法D2240、試験条件ショア−D)において、50〜80程度の硬度のことをいう。
これらの硬質素材を使うことで、第一のスカート部3によって容器開口部が被覆保護され、開口部の破損や汚染が防止されるばかりではなく、容器栓全体の寸法精度を向上させることも可能となる。その結果、人が使用するときの操作性だけでなく、大量生産工程でロボットが打栓する際のハンドリング性も向上する。
本考案の容器栓1は、天板部2から垂下して容器開口部の内周面に圧接する中足部4も有している。中足部4は、第一のスカート部3と同様に天板部2と連続的に一体化した硬質素材のもので、その圧接面に後述する軟質素材が被覆されたものであっても良く、あるいは、中足部4全体が軟質素材から形成されたもので、二色成型等によって天板部2に一体化されたものであっても良い。なお、図1では、中足部4全体が軟質素材から形成されたもので、後述する封止手段5及び衝撃吸収手段6と共に一体化されたものを例示している。
この中足部4は、天板部2から垂下して容器開口部の内周面に圧接することにより、外周面から圧接する第一のスカート部3と共に容器開口部の側面を両側から挟んで封止部分を形成する。中足部4の圧接面の構造としては、垂下方向に向かって適度なテーパーで縮径する形状が打栓・抜栓の操作に好ましく、容器栓を完全に被冠した際に、軟質素材が適度に収縮して容器開口端の肉厚部近傍を隙間無く被冠できるようなテーパー角と直径が設定されていれば良い。また、中足部4の圧接面が突条部であり、さらに、被圧接面と対応してネジ等の締結手段を形成していても良い。
また、中足部4の全体形状としては、例えば、容器開口部にはまり込む略凸状でも、略凸部が中空になった筒状であってもよく、特に限定はしない。図1は、この後者の形状を示している。
さらに、本考案の容器栓1は、中足部4と第一のスカート部3との間隙において、天板部2の下面が容器開口端の肉厚部に被冠され、圧接されることにより封止部分を形成するものであり、この部分に封止手段5を有している。この封止手段5は、前記中足部4を形成する軟質素材の一部が、第一のスカート部3との間隙において天板部2の下面を被覆しつつ第一のスカート部3の内周面まで到達したものである。本考案の容器栓1は、この一体形成された封止手段5と中足部4を有することによって、打栓された際に、容器開口端面の肉厚部分から容器内周面の一定深さ部分までが軟質素材によって密着被冠される。
この封止手段5の厚みは特に限定する必要はなく、後述する軟質素材の硬度や容器開口部の材質等を考慮して適宜設定すればよい。
前記軟質素材としては、容器密着性(密封性)と後述する衝撃緩和性(クッション性)を兼ね備える素材が良く、例えば、ブチルゴム系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマーが好ましい。これらの熱可塑性エラストマーは、浸透性や揮発性の高い物質を入れる容器の封止部分に好ましく用いることが可能であり、例えば、各種医薬品、硫酸や塩酸等の劇薬類、アルコール等の揮発性物質、塩素漂白剤等の洗浄剤、香水やオーデコロン等の化粧品類を入れる容器の封止部分に適している。軟質性エラストマーでない軟質合成樹脂で対応できる場合もあるが、容器開口部の寸法バラつき、キズ、凹凸等に柔軟に対応できないことと、長期保管時には樹脂のクリープ特性により密封栓として十分な機能が得られないことがあり、好ましくない。なお、ここでいう軟質とは、JIS規格(試験方法K6301、試験条件JIS−A)において40〜95程度の硬度のことをいう。
本考案の容器栓1は、前記軟質素材から形成され、落下衝撃を緩和するための衝撃吸収手段6が天板部2の上面の少なくとも一部に設けられている。通常、容器栓1は容器の外部に突出して装着されており、落下時あるいは衝突時には最も大きな衝撃が集中する確率が高いが、前述したように天板部2の上面に衝撃吸収手段6を設けることにより前述の衝撃を緩和することができ、前述の衝撃から容器や内容物を保護することができる。
衝撃吸収手段6は、衝撃吸収効果の点から天板部2の上面に厚みを持って設けられていることが好ましく、さらには、天板部2上面の50%以上の表面積を占めることがより好ましい。また、天板部2自体が上面に凸部を有する場合には、少なくともその凸部を被覆していることが好ましい。最も好ましいのは、天板部2の上面全面を被覆するように設けられていることであり、この時に衝撃吸収効果が最大となる。このように、衝撃吸収手段6の表面積や厚みが大きい方が好ましいのは当然ではあるが、容器の内容物、重量、サイズ、材質、さらにはコスト、機能性およびデザイン性等も加味して適宜設定すればよい。
前記衝撃吸収手段6は、例えば図1に示すように天板部2に埋め込まれていても良い。なお、ここでは、衝撃吸収手段6が天板部2に埋め込まれている構成を例示しているが、本考案はこれに限定されるものではない。例えば、後述(図2参照)するように、衝撃吸収手段6が天板部2上全体を覆っていていれば特に好ましい態様である。これは、前述の軟質素材からなる封止手段5は容器開口部端面に密着被冠されるので、この封止手段5は密閉性だけでなく衝撃吸収効果にも寄与しているからである。この封止手段5は、後で詳述するが、軟質素材によって天板部2の貫通口8を介して前記衝撃吸収手段6と一体に成形されている。従って、運搬時の振動衝撃や万が一の落下時の衝撃などにより容器開口部側から封止手段5に向けて衝撃応力が作用した場合であっても、該衝撃応力は封止手段5だけでもある程度吸収されるが、更に双方の手段5,6を一体に連通する貫通口8の軟質素材を経て衝撃吸収手段6に吸収・分散される。このため、本考案に係る容器栓の構成によれば、密閉性だけでなく耐衝撃性にも優れている。
本考案の容器栓1においては、前述したように、前記衝撃吸収手段6と前記封止手段5が天板部2に設けられた貫通口8を介して互いに連通して一体化しており、双方の手段5,6の間には不連続面が存在しない。すなわち、衝撃吸収手段6と封止手段5は同一の軟質素材で連続的に形成されたものである。更には、図1では、前記衝撃吸収手段6及び封止手段5と共に、前記中足部4も同一の軟質素材で一体に形成した構成を例示している。
前記天板部2は、その本体としての強度が実用上低下しない程度に、複数箇所の貫通口8を有している。貫通口8の開口形状、開口面積、開口数、開口位置等については特に限定する必要はなく、容器栓1の衝撃吸収手段6及び封止手段5の製造時に軟質素材が天板部2の一方から他方へ滞りなく流れ、双方の手段の間に不連続面や不連続部を形成しなければ任意に設定できる。ただし、天板部2のほぼ中央に主貫通口8aを設け、その周辺に副貫通口8bを複数配置しておくとより好ましい。なぜなら、主貫通口8aを満たした軟質素材が、封止手段5と衝撃吸収手段6との橋かけ部として機能すると同時に、副貫通口8bを満たした軟質素材が、天板部2と軟質素材との張り合わせ部に隙間が出ないように固定部として機能するので、操作時に栓を回転させたり、引っ張ったりする応力に対して機械的強度が高まるからである。この形態によって、特に、繰り返し使用の耐久性が高く確保できる。なお、例えば、天板部2の面積に対して貫通口8の占有率を大きくせざるを得ない時は、天板部2の厚みを上げる、あるいは、より硬度が高い素材を選択するなどして容器栓全体の強度を適宜設定し、操作時、保管時および落下時などに変形や破損が生じないようにすることもできる。
このように、軟質素材が複数箇所の貫通口8を介して天板部2の内側から外側に連通することによって、天板部2の下面の一部に封止手段5を形成すると同時に上面の少なくとも一部に衝撃吸収手段6を形成し、双方の手段が一体化した構造を取ることができる。これにより、従来、軟質素材で形成した衝撃吸収部を栓本体に組み付ける場合に見られた組付け不良による密閉破壊や、軟質素材を栓本体表面に接着した場合に見られた接着剤の溶出問題は解消され、単に栓本体の表面に軟質素材を被覆した場合に見られた剥離問題も回避できる。そして、操作性・耐衝撃性・密閉性の三つの特性を兼ね備えた容器栓となっており、内部に精密部品を内蔵した容器などの栓として特に好ましいものである。
図2は、本考案の容器栓における他の実施態様を示す模式側断面図である。この容器栓1においては、天板部2の上面全面に衝撃吸収手段6が設けられており、衝撃吸収効果が最大のものとなっている。また、第一のスカート部2の外周面には突条部を有するネジ状の締結手段が設けられている。さらに、第一のスカート部3の外周に、天板部2から筒状に垂下した第二のスカート部7が形成されている。第二のスカート部7は、第一のスカート部3と同様、天板部2との間に不連続面を持たずに一体化されており、硬質素材から形成されている。図2から明らかな通り、この第二のスカート部7は容器栓1の最外周に位置するので、これが天板部2と共に栓本体の強度を担っている。また、最外周に位置することから、操作者の手やロボットハンドに掴まれる部分であるので、容器開口部の破損や汚染から保護する部分でもある。また、封止手段5は、少なくとも天板部2の下面において第一のスカート部3と中足部4の間に形成されていれば良いが、図2に示すように、第二のスカート部7と第一のスカート部3との間にも形成されていると、より好ましい。
この容器栓形状は、合成樹脂の筒状容器に中空糸状分離膜を多数内蔵する分離膜モジュール、特に血液透析器、の血液入口側および出口側ノズルに対する容器栓の一例である。この例では、容器両端部に、血液回路との接続をより確実にするためにネジ機構による締結手段を備えたノズル(ルアーロック型ノズルと称される)があり、そこに被冠されるものである。図3にこのルアーロック型ノズルの一例を示す。図3において、10はノズル本体であり、10aは開口部、10bは保護壁である。本実施態様においては、中足部4が容器開口部10aの内周面に圧接すると共に、第一のスカート部3が容器開口部10aの外周面に圧接して開口部10aを内外から挟んで封止する。更に、第一のスカート部3の外周面に設けた突条部(締結手段9)が、ルアーロック型ノズルの保護壁10bの内周部に設けられた突条部間の溝部に嵌り込んでネジ機構によって強固に締結され、同時に、第二のスカート部7の内周面が前記保護壁10bの外周部に圧接してノズル部全体を保護する。
血液透析器は、衝撃によって破損しやすい繊細かつ精密な中空糸状分離膜を内蔵するものであり、しかも、種々の目的から容器内に液体を満たしたウエット型が多い。このような血液透析器では、衝撃による局所的な液体移動によって中空糸膜の脆弱部に応力集中が生じ、膜破損が起こることがある。ところが、図2に示す実施態様の容器栓1は落下衝撃の吸収力が大きいので、そのような問題を低減することが可能であり、しかも、血液透析器の製造工程や移動・運搬時における容器栓の脱落も確実に回避できるため、滅菌状態の破壊も起こらず、血液透析器の容器栓として特に好ましいものである。
次に、本考案の容器栓の製造方法について詳細に説明する。
従来の二色成型の方式では、2種類の樹脂を注入(射出)する注入口を備え、割り当てられた範囲に樹脂が行き渡るような複雑な構造の金型が用いられていた。それゆえ、金型の作成コストとメンテナンスを考慮すると、さらに複雑な形状の成型品を、従来の二色成型方法で大量生産を指向して多数個取りすることは非現実的であった。そこで、本考案者らは、本考案に係る容器栓の製造工程を、先ず硬質素材で容器栓本体部を作成する工程と、この容器栓本体部を別の金型に移動させる工程と、最後に軟質素材を注入して容器栓本体部と一体化し容器栓を仕上げる工程とに分割し、これを一連の製造工程とした。なお、ここでは図1に示す容器栓1の製造工程を例示して説明する。
第一の工程は、少なくとも、貫通口8を有する容器栓1の天板部2と、天板部2から筒状に垂下して容器開口部外周に圧接する第一のスカート部3を第一の金型によって硬質素材から形成し容器栓1の本体部を得る工程である。第一の金型においては、容器栓1の本体部をなす天板部2と第一のスカート部3との間に不連続面が生じないように互いに連続したキャビティー(cavity)が形成されている。
この工程は、硬質素材が熱可塑性樹脂の場合には金型を用いた射出成型であり、硬質素材が金属の場合には切削加工によって行なわれる。いずれも、公知の樹脂成型方法や切削加工方法に準じれば良く、特に限定する必要はないが、本考案の容器栓1は、前述のとおり天板部2に複数の貫通口8を形成する必要があるため、そのような複雑な形状を簡便かつ高精度に得るには熱可塑性樹脂による射出成型が好ましい。
この第一の工程によって、天板部2に貫通口8を有し、第一のスカート部3が筒状に垂下した容器栓1の本体部が得られる。なお、本考案の容器栓1は、図2に示す第二のスカート部7を有する態様があるが、この場合も前記同様に、第一の金型によって、天板部2との間に不連続面を生じないように同一の硬質素材から形成される。さらに、中足部4を硬質素材から形成する場合も同様に、不連続面を生じないように同一の硬質素材から形成される。
第二の工程は、第一の工程で得られた容器栓1の本体部を、封止手段5および衝撃吸収手段6を形成させるための第二の金型にセットする工程である。第二の金型は、軟質素材を注入して封止手段5と衝撃吸収手段6を形成するようなキャビティーを有しており、さらに、前記容器栓本体部を、天板部2の貫通口8が天板部2を介して双方の手段5,6に接するようにセットし固定できる構造を有していればよい。
第二の金型への容器栓本体部のセッティングにあたっては、該容器栓本体部が金属の切削加工品の場合には、金型の傷つきを防止するために人手でセットする。一方、合成樹脂による射出成型品の場合には、人手の他にロボットハンドが適用可能であり、一度に数個〜数十個の容器栓本体部をセットできる。特に後者においては、第一の金型からの成型品の抜き取りと、第二の金型へのセッティングが自動化できるため、より好ましい。
また、第一の金型から成型品を完全に抜き取らずに、金型の受け側に硬質素材からなる本体部成型品をセットした状態で、金型の一部の部品のみを変更しつつ、次の工程に移動させる手順を踏んでもよい。例えば、コア部のみの変更等である。
第三の工程は、第二の金型に軟質素材を注入して、前記容器栓本体部における天板部1の貫通口8を介して封止手段5および衝撃吸収手段6を連通し一体的に形成させると同時に、容器栓1の本体部にも一体化させる工程である。
先の第二の工程によって第二の金型にセットし固定された容器栓1の本体部は、天板部2の貫通口8が天板部2を介して封止手段5と衝撃吸収手段6の双方に接するようにセットし固定されている。この状態で、第二の金型における封止手段5となるキャビティーまたは衝撃吸収手段6となるキャビティーの何れかに軟質素材を射出注入し、他方からエア抜きを行うと、注入された樹脂は一方の空間から貫通口を経て他方の空間に流れ、これらを連続的に一体化して硬化し、本考案の特徴を備えた容器栓1が形成される。
この製造工程によれば、従来の二色成型のような複雑な構造の金型を用いることなく、硬質素材の容器栓本体部と軟質素材の封止手段及び衝撃吸収手段が天板部の貫通口を介して連通した本考案の容器栓1を簡便に生産することができる。
なお、上記第一〜第三の工程において、金型温度、樹脂注入速度および硬化時間等の射出成型条件を特に明記していないが、これらは、使用する素材や成型品の形状・サイズ等に応じて公知の射出成型方法を参照しつつ適宜設定すればよい。本考案の製造方法は、構造に特徴がある特定の容器栓を三つの要素工程によって製造するところに特徴があるものなので、詳細な成型条件を限定するものではない。
以下、実施例によって、本考案の作用効果をさらに具体的に説明するが、本考案はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず始めに、容器栓の衝撃吸収性を評価する落下衝撃試験、および密閉性を評価する耐圧試験の方法について説明する。
〔落下衝撃試験〕
図6(a)に示すように、試験用の容器栓1を取り付けるための開口部と、反対側に落下衝撃測定用のセンサー取り付け部とを有する筒状容器21を準備した。容器21は、ポリプロピレンからなる長さ300mmの円筒形状であり、開口部として、内径15mm、外径20mm、長さ30mmのストレートな円筒状ノズルを有する。また、容器の重量は、500gになるように内部に重り等を充填して調整した。
落下衝撃は、一定重量(500g)の容器21が所定高さから落下した際に一定の天板面積で受けるG値として定量的に測定した。すなわち、筒状容器21の開口部に天板面積が3.15cm2の容器栓1を取り付け、他方に、G値測定器22(吉田精機株式会社製:ショックドクター3DP)に接続されたG値センサー23(吉田精機株式会社製:3DG−S200G)を取り付けた状態で、容器栓1天板とタイル床24の着地面とが略水平になる状態で所定の高さhからタイル面に落下させ、G値を測定した。
なお、測定は、一度落下した毎に新しい栓に取り替えて5回実施し、平均値を求めた。
〔耐圧試験〕
図6(b)に示すように、試験用の容器栓1を取り付けるための開口部と、圧力導入部25aとを有する耐圧性評価用の筒状容器25を準備した。容器25は、ポリプロピレンからなる長さ300mmの円筒形状であり、開口部として、内径15mm、外径20mm、長さ30mmのストレートな円筒状ノズルを有する。これを標準容器とした。
この容器25の圧力導入部25aに主導加圧ポンプ26と圧力計27を配した配管をセットし、容器25内に水を満たした後、試験用の容器栓1を取り付けた。この状態で3、5、7および10kg/cm2の各圧力を負荷し、容器栓1と容器25の隙間からの水漏れの有無を目視確認した。水漏れの確認時間は最大10分間とした。
また、容器開口部に寸法バラツキや傷があった場合を想定し、前記標準容器に加えて、1)内径・外径が標準容器よりも0.5%大きい開口部、2)内径・外径が標準容器よりも0.5%小さい開口部、3)開口部の肉厚断面部に深さ0.2mm、長さ2mmの傷をつけた開口部、4)同じく、深さ0.5mmの傷をつけた開口部、をそれぞれ有する不良容器も準備し、標準容器と同じ条件で耐圧試験を行った。
<実施例1>
第一の射出成型機に容器栓本体部形成用の第一の金型をセットした。第一の金型は、主貫通口と4個所の副貫通口とを設けた天板部と、第一のスカート部とを有する円筒状の容器栓本体部を形成するキャビティーを有しており、40個仕様である。第一の金型温度を70℃、原料温度を240℃として、硬質素材である高密度ポリエチレンを15秒サイクルで射出成型した。次いで、ロボットハンドでこの成型品(容器栓本体部)を取り出し、同様にロボットハンドで、今度は、第二の射出成型機にセットされた第二の金型に前記容器栓本体部をはめ込んだ。第二の金型は、封止手段と、天板部上面を全面的に被覆する衝撃吸収手段を形成するためのキャビティー溝を有しており、同じく40個仕様である。第二の金型温度を60℃、原料温度を230℃として、軟質素材としてスチレン・ブタジエン系ゴムを20秒サイクルで射出成型することで封止手段と衝撃吸収手段を一体成型した後、金型と成型品を冷却して本考案の容器栓を得た。
得られた容器栓は、容器栓本体部の外径が23mm、高さが16mm、天板部と第一のスカート部の肉厚が1.5mm、中足部の基底部の外径が16mm、衝撃吸収手段の厚さが5mmであった。
図4(a)にこの容器栓1の断面構造を示す。図4(a)から明らかなように、封止手段5と衝撃吸収手段6とが、天板部2に設けた複数の貫通口8(主貫通口8aと副貫通口8b)を介して連通し一体化した構造である。
次に、この容器栓1を用いて落下衝撃試験と耐圧試験を実施した。この容器栓の評価結果を表1〜表6に示す。
<実施例2>
硬質素材としてポリカーボネート、軟質素材としてフッ素系熱可塑性エラストマーを用い、第一および第二の金型を10個仕様とした以外は、実施例1の条件に従って容器栓を得た。
得られた容器栓は、容器栓本体部の外径が23mm、高さが16mm、天板部と第一のスカート部の肉厚が1.5mm、中足部の基底部の外径が16mm、衝撃吸収手段の厚さが5mmであった。
素材が異なっているが、この容器栓の断面構造は図4(a)に示す実施例1の容器栓と同等であるため、図示していない。また、この容器栓の評価は実施例1と同等であるため、表1〜表6には示していない。
<実施例3>
衝撃吸収手段が天板部面積の50%の同心円状となり、天板部に埋め込まれてその上面で面一となるようなキャビティーを有する第二の金型を用い、さらに、第一および第二の金型を50個仕様とした以外は、実施例1の条件に従って容器栓を得た。
得られた容器栓は、容器栓本体部の外径が23mm、高さが27mm、天板部の肉厚が2.5mm、第一のスカート部の肉厚が1.5mm、中足部の基底部の外径が16mm、衝撃吸収手段の厚さが1.5mmであった。
図4(b)にこの容器栓1の断面構造を示す。封止手段5と貫通口8(主貫通口8aと副貫通口8b)は実施例1の断面構造と同等であり、衝撃吸収手段6は天板部2の一部を被覆する構造である。この容器栓の評価結果を表1〜表6に示す。
<比較例1>
第一の射出成型機に容器栓形成用の第一の金型をセットした。第一の金型は、貫通口を設けない天板部と、第一のスカート部と、中足部からなる容器栓を形成するキャビティーを有している。この金型を用いて、硬質素材である高密度ポリエチレンを射出し、容器栓を成型した。金型および成型品を冷却した後、成型品を取り出した。
得られた容器栓は、本体部の外径が23mm、高さが26mm、天板部と第一のスカート部の肉厚が1.5mm、中足部の基底部の外径が16mmであった。
図5(a)にこの容器栓の断面構造を示す。硬質素材から形成された本体部のみからなる構造である。図5(a)において、11は容器栓、12は天板部、13は第一のスカート部、14は中足部である。この容器栓の評価結果を表1〜表6に示す。
<比較例2>
第二の射出成型機に、軟質素材からなる容器栓成型用の第三の金型をセットした。第三の金型は、天板部と中足部のみからなる容器栓を形成するキャビティーを有している。この金型を用いて、軟質素材であるスチレン系熱可塑性エラストマーを射出し、容器栓を成型した。金型および成型品を冷却した後、成型品を取り出した。
得られた容器栓は、天板部の径が25mm、天板部の厚みが5.0mm、中足部の基底部の外径が16mm、高さが17mmであった。
図5(b)にこの容器栓の断面構造を示す。本体部が軟質素材のみからなる構造であり、スカート部を有していない。図5(b)において、11は容器栓、12は天板部、14は中足部である。この容器栓の評価結果を表1〜表6に示す。
<比較例3>
射出部を回転することにより、2箇所の射出口から別々の樹脂原料を射出して二色成型できる第三の射出成型機に、本体部と軟質部とを二色成型できる第四の金型をセットした。第三の金型は、天板部と第一のスカート部のみからなる本体部を形成するキャビティーを有し、また、天板部の下面に軟質素材を被覆するためのキャビティーも有しており、10個仕様である。この金型を用いて、硬質素材として高密度ポリプロピレンを一方の射出口から射出した後、成型機の射出部を回転し、次に、軟質素材として低密度ポリプロピレンを他方の射出口から射出した。金型および成型品を冷却した後、成型品を取り出した。
得られた容器栓は、本体部の外径が23mm、高さが16mm、天板部と第一のスカート部の肉厚が1.5mm、封止手段の厚さが0.5mmであった。
図5(c)にこの容器栓の断面構造を示す。硬質素材からなる本体天板部の下面に、軟質素材が被覆されている。図5(c)において、11は容器栓、12は天板部、13は第一のスカート部、15は封止手段である。この容器栓の評価結果を表1〜表6に示す。
表1は、容器栓の落下衝撃試験結果である。この結果によれば、実施例1の容器栓は落下高さが50cm以上で、実施例3の容器栓は40cm以上でG値の測定限界以上となり、軟質素材による衝撃吸収手段を欠く比較例1および比較例3の容器栓に比べて衝撃吸収力が優れていた。
また、実施例1および実施例3から、天板部2の全体を被覆した方が衝撃吸収効果により優れていることが明らかであり、容器、容器栓および内容物の破損防止にとってより好ましい形態といえる。
表2は、容器開口部の寸法バラツキや傷がない標準容器に打栓した際の耐圧試験結果である。この結果によれば、硬質素材からなる本体内部に封止手段5設けた実施例1と実施例3の容器栓は、高圧を負荷しても水漏れなく密閉性に優れていたが、容器栓全体が軟質素材で形成された比較例2の形状においては耐圧性が相対的に低く、密閉性に劣ることが確認された。比較例2の容器栓は、表1に示した通り、落下衝撃吸収性には優れているものの、密閉性をも両立できるものではなかった。
表3は、容器開口部の内径・外径が標準容器よりも0.5%大きい不良容器に打栓した際の耐圧試験結果、表4は、容器開口部の内径・外径が標準容器よりも0.5%小さい大きい不良容器に打栓した際の耐圧試験結果である。
また、表5は、容器開口部の肉厚断面部に深さ0.2mm、長さ2mmの傷をつけた不良容器に打栓した際の耐圧試験結果、表6は、容器開口部の肉厚断面部に深さ0.5mm、長さ2mmの傷をつけた不良容器に打栓した際の耐圧試験結果である。
これらの結果によれば、硬質素材からなる本体内部に封止手段5を設けた実施例1と実施例3の容器栓は、開口部の寸法バラツキや多少の傷に対して許容性があり、前述したような不良容器であってもなお密閉性に優れていた。ところが、比較例1のように硬質素材のみで形成された容器栓は、開口部の寸法不足や傷には柔軟に対応できず、密閉性に劣っており、比較例3のように中足部を欠く容器栓は、開口部の傷に対する許容性が劣っていた。さらに、比較例2のように全体が軟質素材で形成された容器栓においても、密閉性に劣ることが確認された。
以上述べたように、本考案の構成を有する容器栓は、耐衝撃性と密閉性に優れ、しかも硬質素材の本体部により操作性も優れている。上記の比較例から分かるように、従来のタイプの容器栓は、これらの特性を全て同時に満足できていなかった。
本考案に係る容器栓の一実施形態を例示的に示す模式側断面図である。
本考案に係る容器栓の他の実施形態を例示的に示す模式側断面図である。
本考案に係る容器栓により被冠するノズルの一例を示す模式側断面図である。
本考案に係る容器栓の実施例1、実施例3を示す模式側断面図である。
容器栓の比較例1、比較例2、比較例3を示す模式側断面図である。
落下衝撃テスト及び耐圧テストを行うための各システム構成を示す模式説明である。
符号の説明
1 …容器栓
2 …天板部
3 …第一のスカート部
4 …中足部
5 …封止手段
6 …衝撃吸収手段
7 …第二のスカート部
8 …貫通口
8a …主貫通口
8b …副貫通口
9 …締結手段