JP3099064B2 - 非熱可塑性セルロース系天然高分子物質からの熱可塑化複合体の製造法、及びその成形体 - Google Patents
非熱可塑性セルロース系天然高分子物質からの熱可塑化複合体の製造法、及びその成形体Info
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は非熱可塑性セルロー
ス系天然高分子物質を乾式機械的粉砕により熱可塑性を
発現する複合体にする製造法、及びその成形体を提供す
るものである。
ス系天然高分子物質を乾式機械的粉砕により熱可塑性を
発現する複合体にする製造法、及びその成形体を提供す
るものである。
【0002】
【従来の技術】綿や木材等のセルロース、海老殻や蟹殻
のキチン質等は天然バイオマス資源として、地球上で大
量に存在し、広く利用されている。しかし、非熱可塑性
のため、通常の化学合成高分子物質のように加熱成形す
ることが不可能な物質である。そのため、これら非熱可
塑性天然高分子物質の成形加工法は限られている。非熱
可塑性天然高分子の代表的な物質としてセルロースがあ
る。セルロースは紙、レーヨン等の原料として大量に利
用されている。しかし、非熱可塑性のため加熱成形する
ことができず、製造工程で多量の水や特殊な溶剤等を必
要とする。紙の場合、セルロースは木材から精製された
パルプとして用いられている。このパルプを大量の水に
懸濁・分散させ、抄紙されている。レーヨン等の再生セ
ルロース繊維では、パルプあるいは綿花から得られるリ
ンター等を原料として、銅−アンモニア、二硫化炭素等
の特殊な溶剤に溶解し、紡糸されている。これらの結
果、製造工程では多量の廃棄物が発生する。また、これ
らの製造方法では立体成形体を製造することが困難であ
る。
のキチン質等は天然バイオマス資源として、地球上で大
量に存在し、広く利用されている。しかし、非熱可塑性
のため、通常の化学合成高分子物質のように加熱成形す
ることが不可能な物質である。そのため、これら非熱可
塑性天然高分子物質の成形加工法は限られている。非熱
可塑性天然高分子の代表的な物質としてセルロースがあ
る。セルロースは紙、レーヨン等の原料として大量に利
用されている。しかし、非熱可塑性のため加熱成形する
ことができず、製造工程で多量の水や特殊な溶剤等を必
要とする。紙の場合、セルロースは木材から精製された
パルプとして用いられている。このパルプを大量の水に
懸濁・分散させ、抄紙されている。レーヨン等の再生セ
ルロース繊維では、パルプあるいは綿花から得られるリ
ンター等を原料として、銅−アンモニア、二硫化炭素等
の特殊な溶剤に溶解し、紡糸されている。これらの結
果、製造工程では多量の廃棄物が発生する。また、これ
らの製造方法では立体成形体を製造することが困難であ
る。
【0003】パルプから製造されている立体成形体とし
てパルプモールドがあるが、抄紙工程に類似した方法
で、パルプ水懸濁・分散液から製造されている。紙の場
合と同様に、水が廃液となり、形状も比較的単純なもの
に限られている。また、大型の成形体の製造は困難であ
る。製造に比較的時間を必要とし、生産性が低い問題点
がある。また、成形工程や廃水処理に費用がかかり、製
品がコスト高となる。これらの問題点のため、合成高分
子物質、いわゆるプラスチック製品に対する市場での競
争力が低い。
てパルプモールドがあるが、抄紙工程に類似した方法
で、パルプ水懸濁・分散液から製造されている。紙の場
合と同様に、水が廃液となり、形状も比較的単純なもの
に限られている。また、大型の成形体の製造は困難であ
る。製造に比較的時間を必要とし、生産性が低い問題点
がある。また、成形工程や廃水処理に費用がかかり、製
品がコスト高となる。これらの問題点のため、合成高分
子物質、いわゆるプラスチック製品に対する市場での競
争力が低い。
【0004】セルロースを完全に溶解して製造する成形
品として、レーヨン等の繊維以外にも、フィルム状に成
形加工したセロハンがある。しかし、溶解液のセルロー
ス濃度は数10重量%が限度で、高濃度では粘度が高く
なり、工程内での輸送等に支障がある。そのため、製品
は繊維状あるいはフィルム状が主で、一部、スポンジ等
の発泡製品が製造されているのみで、立体成形体を製造
することは不可能である。また、これらの製造工程で
は、溶剤として用いられている銅−アンモニア、二硫化
炭素等が廃液として発生し、環境負担が高い。
品として、レーヨン等の繊維以外にも、フィルム状に成
形加工したセロハンがある。しかし、溶解液のセルロー
ス濃度は数10重量%が限度で、高濃度では粘度が高く
なり、工程内での輸送等に支障がある。そのため、製品
は繊維状あるいはフィルム状が主で、一部、スポンジ等
の発泡製品が製造されているのみで、立体成形体を製造
することは不可能である。また、これらの製造工程で
は、溶剤として用いられている銅−アンモニア、二硫化
炭素等が廃液として発生し、環境負担が高い。
【0005】非熱可塑性であるセルロースを成形加工し
やすくするため、化学修飾により誘導体が製造されてい
る。セルロイドやアセテートはその代表的な物質であ
る。これらセルロース誘導体は熱可塑性を発現すると共
にアセトン等の一般的有機溶剤にも可溶で、繊維やフィ
ルムの他、立体成形体を製造することが容易である。し
かし、誘導体を製造する過程では誘導体化試薬や酸触
媒、再生・洗浄液が廃液となる問題がある。また、化学
反応を効率的に進めるため、原料であるセルロースは比
較的純粋である必要があり、セルロース含有量が高くて
も70重量%程度しかない木材等を直接に誘導体化する
ことは困難である。更に、誘導体は原料であるセルロー
スとは全く別の物質になっているため、生分解性等の本
来の特性は失われている。これまで、セルロースを化学
修飾することなく熱可塑性を付与する方法は開発されて
いない。
やすくするため、化学修飾により誘導体が製造されてい
る。セルロイドやアセテートはその代表的な物質であ
る。これらセルロース誘導体は熱可塑性を発現すると共
にアセトン等の一般的有機溶剤にも可溶で、繊維やフィ
ルムの他、立体成形体を製造することが容易である。し
かし、誘導体を製造する過程では誘導体化試薬や酸触
媒、再生・洗浄液が廃液となる問題がある。また、化学
反応を効率的に進めるため、原料であるセルロースは比
較的純粋である必要があり、セルロース含有量が高くて
も70重量%程度しかない木材等を直接に誘導体化する
ことは困難である。更に、誘導体は原料であるセルロー
スとは全く別の物質になっているため、生分解性等の本
来の特性は失われている。これまで、セルロースを化学
修飾することなく熱可塑性を付与する方法は開発されて
いない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】セルロース等の非熱可
塑性天然高分子物質から成形体を製造する場合、その非
熱可塑性のため加熱成形が不可能で、工程で大量の水や
特殊溶剤等が必要となり、廃棄物も多く発生する。ま
た、成形体の形状、大きさも制限されていた。更に、熱
可塑性を発現する誘導体は比較的純粋な原料からしか製
造できず、反応薬品や再生・洗浄のための水や溶剤が廃
棄物となっている。また、本来の天然物特有の性質も失
っている。そこで、本願発明の課題は、薬剤や水を用い
ることなく、また大きな化学反応を伴うことなく、本来
の特性を維持したまま、非熱可塑性天然高分子物質を熱
可塑性物質に転換させ、従来のプラスチックと同様に成
形可能とし、その工業的利用範囲を極めて広くすること
にある。
塑性天然高分子物質から成形体を製造する場合、その非
熱可塑性のため加熱成形が不可能で、工程で大量の水や
特殊溶剤等が必要となり、廃棄物も多く発生する。ま
た、成形体の形状、大きさも制限されていた。更に、熱
可塑性を発現する誘導体は比較的純粋な原料からしか製
造できず、反応薬品や再生・洗浄のための水や溶剤が廃
棄物となっている。また、本来の天然物特有の性質も失
っている。そこで、本願発明の課題は、薬剤や水を用い
ることなく、また大きな化学反応を伴うことなく、本来
の特性を維持したまま、非熱可塑性天然高分子物質を熱
可塑性物質に転換させ、従来のプラスチックと同様に成
形可能とし、その工業的利用範囲を極めて広くすること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶剤等に溶
解、膨潤等をさせることなく固体状態のままで、非熱可
塑性セルロース系天然高分子物質と少量の熱可塑性高分
子物質の混合物を機械的に粉砕し、それにより圧力およ
びせん断力を加えると、両高分子鎖間の分子レベルでの
相互作用により相溶化等が起こり、複合化すること、及
びこの複合化によりそれぞれの高分子物質の融点等の熱
転移温度が変化し、生成した複合体は熱可塑性を発現す
ることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成
するに至った。
を解決するために鋭意研究を重ねた結果、溶剤等に溶
解、膨潤等をさせることなく固体状態のままで、非熱可
塑性セルロース系天然高分子物質と少量の熱可塑性高分
子物質の混合物を機械的に粉砕し、それにより圧力およ
びせん断力を加えると、両高分子鎖間の分子レベルでの
相互作用により相溶化等が起こり、複合化すること、及
びこの複合化によりそれぞれの高分子物質の融点等の熱
転移温度が変化し、生成した複合体は熱可塑性を発現す
ることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成
するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、非熱可塑性セルロー
ス系天然高分子物質と熱可塑性高分子物質の混合物を固
体状態のまま乾式で機械的に粉砕することを特徴とする
熱可塑性を有する複合体の製造方法を提供するものであ
る。
ス系天然高分子物質と熱可塑性高分子物質の混合物を固
体状態のまま乾式で機械的に粉砕することを特徴とする
熱可塑性を有する複合体の製造方法を提供するものであ
る。
【0009】
【発明の実施の形態】セルロース等の非熱可塑性セルロ
ース系天然高分子物質(以下、セルロース系物質ともい
う)が非熱可塑性で一般的な溶剤に溶解しないのは分子
間・分子内に存在している強固な水素結合が原因であ
る。この水素結合により安定な結晶構造や分子集合状態
をとっている。この水素結合を切断し、本来の安定な分
子集合状態にならないようにすれば、セルロース系物質
の物性は大きく変化する。最も物性が変化する誘導体で
は、セルロースの水酸基を化学反応によりエステル化等
を行い、別の官能基にすることによって、本来の水素結
合を破壊している。このため、セルロイドやアセテート
は熱可塑性を発現する。しかし、これら誘導体は天然セ
ルロース系物質と異なった化学構造になっており、物質
としては全く別のもので、本来の生分解性等の重要な性
質が失われている。この問題を解決するためには、セル
ロース系物質の化学構造を変化させることなく、安定化
の要因である水素結合を切断し、結晶構造を破壊して、
本来の安定な分子集合状態をとれないように分子鎖間に
他の熱可塑性物質を挿入し、その物質を水素結合や疎水
結合等で保持させれば、熱挙動等の物性を変化させるこ
とができる。
ース系天然高分子物質(以下、セルロース系物質ともい
う)が非熱可塑性で一般的な溶剤に溶解しないのは分子
間・分子内に存在している強固な水素結合が原因であ
る。この水素結合により安定な結晶構造や分子集合状態
をとっている。この水素結合を切断し、本来の安定な分
子集合状態にならないようにすれば、セルロース系物質
の物性は大きく変化する。最も物性が変化する誘導体で
は、セルロースの水酸基を化学反応によりエステル化等
を行い、別の官能基にすることによって、本来の水素結
合を破壊している。このため、セルロイドやアセテート
は熱可塑性を発現する。しかし、これら誘導体は天然セ
ルロース系物質と異なった化学構造になっており、物質
としては全く別のもので、本来の生分解性等の重要な性
質が失われている。この問題を解決するためには、セル
ロース系物質の化学構造を変化させることなく、安定化
の要因である水素結合を切断し、結晶構造を破壊して、
本来の安定な分子集合状態をとれないように分子鎖間に
他の熱可塑性物質を挿入し、その物質を水素結合や疎水
結合等で保持させれば、熱挙動等の物性を変化させるこ
とができる。
【0010】すなわち、セルロース系物質を熱可塑性高
分子物質と共に機械的に粉砕すると、圧力およびせん断
力によって固体状態特有のメカノケミカル反応が起こ
る。この作用により、セルロース系物質の結晶構造が破
壊され、お互いの高分子が分子レベルで接近し、水素結
合を形成することにより相溶化等が起こり、複合化す
る。生成した複合体では、それぞれの高分子が強く相互
作用するため、融点等の相転移温度が極端に変化し、熱
可塑性を発現する。
分子物質と共に機械的に粉砕すると、圧力およびせん断
力によって固体状態特有のメカノケミカル反応が起こ
る。この作用により、セルロース系物質の結晶構造が破
壊され、お互いの高分子が分子レベルで接近し、水素結
合を形成することにより相溶化等が起こり、複合化す
る。生成した複合体では、それぞれの高分子が強く相互
作用するため、融点等の相転移温度が極端に変化し、熱
可塑性を発現する。
【0011】さらに言えば、セルロース等のセルロース
系物質に対し、熱可塑性高分子物質を5〜20重量%程
度混合し、機械的粉砕機等で機械的に粉砕すれば、粉砕
中の圧力やせん断力によってメカノケミカル反応が起こ
り、セルロース系物質の結晶構造や水素結合が破壊され
活性化する。それと同時に、非熱可塑性セルロース系天
然高分子鎖間に混合した熱可塑性高分子が挿入され、両
高分子鎖間で水素結合や疎水結合が形成されることによ
り複合化し、熱可塑性を発現する複合体が得られる。こ
の複合体からは、加熱成形により容易に立体成形体を成
形することができる。更に、この成形体を粗粉砕して得
られた粉末やペレットは再度加熱成形により容易に立体
成形可能である。今までに、このようなセルロース系物
質の熱可塑化複合体およびその成形体は得られていな
い。
系物質に対し、熱可塑性高分子物質を5〜20重量%程
度混合し、機械的粉砕機等で機械的に粉砕すれば、粉砕
中の圧力やせん断力によってメカノケミカル反応が起こ
り、セルロース系物質の結晶構造や水素結合が破壊され
活性化する。それと同時に、非熱可塑性セルロース系天
然高分子鎖間に混合した熱可塑性高分子が挿入され、両
高分子鎖間で水素結合や疎水結合が形成されることによ
り複合化し、熱可塑性を発現する複合体が得られる。こ
の複合体からは、加熱成形により容易に立体成形体を成
形することができる。更に、この成形体を粗粉砕して得
られた粉末やペレットは再度加熱成形により容易に立体
成形可能である。今までに、このようなセルロース系物
質の熱可塑化複合体およびその成形体は得られていな
い。
【0012】
【発明の効果】本発明方法によれば、非熱可塑性セルロ
ース系天然高分子物質を熱可塑性高分子物質と共に無溶
媒で、比較的単純な乾式粉砕で機械的処理することによ
り熱可塑性を発現する複合体を製造することができる。
また、この複合体の製造工程では原材料の溶解、懸濁・
分散等の操作が必要ないため、綿、パルプ、木材チッ
プ、製材屑、古紙、レーヨン屑等、種々のセルロース系
物質資源を特別に精製等の前処理をすることなく利用で
き、天然に産するままの状態で原料として用いることが
できる。更に、製造工程で溶剤や水等が必要でなく、廃
液等の廃棄物もほとんど発生しないため、複合体の製造
設備も簡素化しやすい。本発明方法により得られる複合
体は、熱可塑性を発現し、一般的なプラスチックと同様
の操作で成形体を製造することができる。更に、この熱
可塑化複合体を他の物質に混練り等の操作により分散、
複合化させることも容易である。これらの性質により、
これまで廃棄されていた非熱可塑性セルロース系天然高
分子物質資源や未利用資源等を加熱成形可能な複合体に
することにより該天然高分子物質本来の特性を生かした
リサイクル可能な容器、建築材料等に利用できる。ま
た、成形も既成の装置で可能である。この熱可塑化複合
体および成形体では化学構造が変化するような新たな共
有結合の形成はほとんど起こっていない。そのため、得
られた成形体は、粗粉砕等によるペレットあるいは粉末
を原料とし再成形が可能であり、原料である高分子物質
の特性も維持している。従って本発明は、多種多様なセ
ルロース系物質資源を主要成分とする資源から、無溶媒
で、廃棄物を発生しない環境負荷の極めて小さな方法に
よる熱可塑化複合体の製造法、および加熱成形による立
体成形体を提供できることから、これまで材料化が困難
で廃棄されていたセルロース系物質やこの種の未利用天
然資源の新規材料化法として広範囲の産業に応用でき、
環境調和型および資源循環型産業構造の構築に大きく貢
献できる。
ース系天然高分子物質を熱可塑性高分子物質と共に無溶
媒で、比較的単純な乾式粉砕で機械的処理することによ
り熱可塑性を発現する複合体を製造することができる。
また、この複合体の製造工程では原材料の溶解、懸濁・
分散等の操作が必要ないため、綿、パルプ、木材チッ
プ、製材屑、古紙、レーヨン屑等、種々のセルロース系
物質資源を特別に精製等の前処理をすることなく利用で
き、天然に産するままの状態で原料として用いることが
できる。更に、製造工程で溶剤や水等が必要でなく、廃
液等の廃棄物もほとんど発生しないため、複合体の製造
設備も簡素化しやすい。本発明方法により得られる複合
体は、熱可塑性を発現し、一般的なプラスチックと同様
の操作で成形体を製造することができる。更に、この熱
可塑化複合体を他の物質に混練り等の操作により分散、
複合化させることも容易である。これらの性質により、
これまで廃棄されていた非熱可塑性セルロース系天然高
分子物質資源や未利用資源等を加熱成形可能な複合体に
することにより該天然高分子物質本来の特性を生かした
リサイクル可能な容器、建築材料等に利用できる。ま
た、成形も既成の装置で可能である。この熱可塑化複合
体および成形体では化学構造が変化するような新たな共
有結合の形成はほとんど起こっていない。そのため、得
られた成形体は、粗粉砕等によるペレットあるいは粉末
を原料とし再成形が可能であり、原料である高分子物質
の特性も維持している。従って本発明は、多種多様なセ
ルロース系物質資源を主要成分とする資源から、無溶媒
で、廃棄物を発生しない環境負荷の極めて小さな方法に
よる熱可塑化複合体の製造法、および加熱成形による立
体成形体を提供できることから、これまで材料化が困難
で廃棄されていたセルロース系物質やこの種の未利用天
然資源の新規材料化法として広範囲の産業に応用でき、
環境調和型および資源循環型産業構造の構築に大きく貢
献できる。
【0013】
【実施例】次に、実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明はこれらの例によってなんら限定される
ものではない。
するが、本発明はこれらの例によってなんら限定される
ものではない。
【0014】実施例1 非熱可塑性天然高分子物質として高純度セルロースを、
熱可塑性高分子物質としてポリエーテル類のポリエチレ
ングリコールを用いた場合の例を示す。原料の高純度セ
ルロースは綿花由来の繊維状セルロースであるワットマ
ン社製のCF11を、ポリエチレングリコールは和光純
薬工業社製の分子量200万の一級試薬を用いた。CF
11(50g)と、CF11に対し2〜20重量%のポ
リエチレングリコールを同一の粉砕容器に入れ、振動ボ
ールミルを用いて30〜120分間、乾式粉砕した。得
られた粉末状の粉砕生成物(熱可塑化複合体)を示差走
査熱量計により熱特性を測定した。また、CF11およ
びポリエチレングリコールをそれぞれ単独で同様の粉砕
操作を行った後、単純に混合して得られた単純混合物に
ついても熱特性を測定した。ポリエチレングリコール由
来の熱転移温度(融点)の変化を図1に示す。
熱可塑性高分子物質としてポリエーテル類のポリエチレ
ングリコールを用いた場合の例を示す。原料の高純度セ
ルロースは綿花由来の繊維状セルロースであるワットマ
ン社製のCF11を、ポリエチレングリコールは和光純
薬工業社製の分子量200万の一級試薬を用いた。CF
11(50g)と、CF11に対し2〜20重量%のポ
リエチレングリコールを同一の粉砕容器に入れ、振動ボ
ールミルを用いて30〜120分間、乾式粉砕した。得
られた粉末状の粉砕生成物(熱可塑化複合体)を示差走
査熱量計により熱特性を測定した。また、CF11およ
びポリエチレングリコールをそれぞれ単独で同様の粉砕
操作を行った後、単純に混合して得られた単純混合物に
ついても熱特性を測定した。ポリエチレングリコール由
来の熱転移温度(融点)の変化を図1に示す。
【0015】図1において、粉砕生成物の場合、ポリエ
チレングリコールの割合が少なくなるのに従い、転移温
度が大きく低下している。一方、単純混合物では転移温
度は多少低下するのみである。このことから、セルロー
スとポリエチレングリコールの間で相互作用が起こり複
合化していることは明らかである。また、この複合化に
より粉砕生成物は原料とは異なった熱特性、つまり熱可
塑性を発現することが示される。
チレングリコールの割合が少なくなるのに従い、転移温
度が大きく低下している。一方、単純混合物では転移温
度は多少低下するのみである。このことから、セルロー
スとポリエチレングリコールの間で相互作用が起こり複
合化していることは明らかである。また、この複合化に
より粉砕生成物は原料とは異なった熱特性、つまり熱可
塑性を発現することが示される。
【0016】実施例2 高純度セルロースであるCF11以外のセルロース系物
質として、木材チップ、新聞古紙を用い、これらの各々
とポリエチレングリコール20重量%から、実施例1と
同様の条件で粉砕し得られた複合体の成形性を表1に示
す。木材チップとしては米松および杉の切削片をカッテ
ィングミルで2〜3mm程度に粗粉砕したものを用い
た。新聞古紙は新聞紙を直接にシュレッダーで3〜5m
m程度にカットしたものを用いた。成形性は、直径5c
mのステンレス製円形金型に複合体を充填し、ホットプ
レスを用いて2分間プレス成形した場合に、均一な円盤
状成形体が得られる最低の温度および圧力条件として示
した。その結果、高純度セルロースであるCF11で
は、120℃、10MPaの条件で均一な成形体が得ら
れた。また、セルロースを50〜70重量%含有する木
材チップでは米松および杉ともより低い温度および圧力
条件で成形体が得られた。新聞古紙では木材チップより
多少高い圧力を必要とした。
質として、木材チップ、新聞古紙を用い、これらの各々
とポリエチレングリコール20重量%から、実施例1と
同様の条件で粉砕し得られた複合体の成形性を表1に示
す。木材チップとしては米松および杉の切削片をカッテ
ィングミルで2〜3mm程度に粗粉砕したものを用い
た。新聞古紙は新聞紙を直接にシュレッダーで3〜5m
m程度にカットしたものを用いた。成形性は、直径5c
mのステンレス製円形金型に複合体を充填し、ホットプ
レスを用いて2分間プレス成形した場合に、均一な円盤
状成形体が得られる最低の温度および圧力条件として示
した。その結果、高純度セルロースであるCF11で
は、120℃、10MPaの条件で均一な成形体が得ら
れた。また、セルロースを50〜70重量%含有する木
材チップでは米松および杉ともより低い温度および圧力
条件で成形体が得られた。新聞古紙では木材チップより
多少高い圧力を必要とした。
【0017】
【表1】
【0018】表1の複合体の立体成形については、同様
の温度および圧力条件で、直径10cm、高さ3cmの
ステンレス製皿状金型を用い皿状の立体成形体を製造で
きた。これらセルロース系物質とポリエチレングリコー
ルの場合の成形体は、ポリエチレングリコールが水溶性
のため水中で数日間で崩壊した。
の温度および圧力条件で、直径10cm、高さ3cmの
ステンレス製皿状金型を用い皿状の立体成形体を製造で
きた。これらセルロース系物質とポリエチレングリコー
ルの場合の成形体は、ポリエチレングリコールが水溶性
のため水中で数日間で崩壊した。
【0019】実施例3 実施例2と同様のセルロース系物質に対し、熱可塑性高
分子物質としてポリエステル類のポリ‐ε‐カプロラク
トンを20重量%用い、実施例1と同様の条件で粉砕
し、得られた複合体の成形性を表2に示す。ポリ‐ε‐
カプロラクトン(分子量:7〜10万)は和光純薬工業
社製の一級試薬を用いた。この場合も、表2と同様の温
度および圧力条件で皿状立体成形体を製造できた。これ
らセルロース系物質とポリ‐ε‐カプロラクトンの場合
の成形体は、水に対し安定であり、6ケ月間水中に放置
しても、形状、強度ともほとんど変化しなかった。
分子物質としてポリエステル類のポリ‐ε‐カプロラク
トンを20重量%用い、実施例1と同様の条件で粉砕
し、得られた複合体の成形性を表2に示す。ポリ‐ε‐
カプロラクトン(分子量:7〜10万)は和光純薬工業
社製の一級試薬を用いた。この場合も、表2と同様の温
度および圧力条件で皿状立体成形体を製造できた。これ
らセルロース系物質とポリ‐ε‐カプロラクトンの場合
の成形体は、水に対し安定であり、6ケ月間水中に放置
しても、形状、強度ともほとんど変化しなかった。
【0020】
【表2】
【0021】実施例4 高純度セルロースであるCF11とポリオレフィン類で
ある高密度ポリエチレン(三井日石ポリマー製)、ポリ
アルコール類であるポリビニルアルコール(重合度:3
500、部分ケン化型、和光純薬工業社製)、ポリアミ
ド類である6‐ナイロン(米国アルドリッチ社製)、天
然高分子物質であるコラーゲン(昭和電工社製)および
溶性デンプン(和光純薬工業社製)の場合に得られた複
合体の成形性を表3および表4に示す。添加割合はいず
れの場合もCF11に対し20重量%である。製造条件
は実施例1と同様である。
ある高密度ポリエチレン(三井日石ポリマー製)、ポリ
アルコール類であるポリビニルアルコール(重合度:3
500、部分ケン化型、和光純薬工業社製)、ポリアミ
ド類である6‐ナイロン(米国アルドリッチ社製)、天
然高分子物質であるコラーゲン(昭和電工社製)および
溶性デンプン(和光純薬工業社製)の場合に得られた複
合体の成形性を表3および表4に示す。添加割合はいず
れの場合もCF11に対し20重量%である。製造条件
は実施例1と同様である。
【0022】
【表3】
【0023】
【表4】
【図1】 CF11とポリエチレングリコールを用い、
本発明により得られた粉砕生成物および予め粉砕処理し
た原料の単純混合物について示差走査熱量計で測定し
た、ポリエチレングリコールの混合割合による熱転移温
度の変化を示すグラフである。
本発明により得られた粉砕生成物および予め粉砕処理し
た原料の単純混合物について示差走査熱量計で測定し
た、ポリエチレングリコールの混合割合による熱転移温
度の変化を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−20564(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 3/00 - 3/28 C08L 1/00 - 101/16
Claims (2)
- 【請求項1】 非熱可塑性セルロース系天然高分子物質
と熱可塑性高分子物質の混合物を固体状態のまま乾式で
機械的に粉砕することを特徴とする熱可塑性を有する複
合体の製造方法。 - 【請求項2】 請求項1により製造される熱可塑性を有
する複合体を加熱成形することにより得られる成形体。
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JP10377777A JP3099064B2 (ja) | 1998-12-10 | 1998-12-10 | 非熱可塑性セルロース系天然高分子物質からの熱可塑化複合体の製造法、及びその成形体 |
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JP10377777A JP3099064B2 (ja) | 1998-12-10 | 1998-12-10 | 非熱可塑性セルロース系天然高分子物質からの熱可塑化複合体の製造法、及びその成形体 |
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JP2000169594A JP2000169594A (ja) | 2000-06-20 |
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JP10377777A Expired - Lifetime JP3099064B2 (ja) | 1998-12-10 | 1998-12-10 | 非熱可塑性セルロース系天然高分子物質からの熱可塑化複合体の製造法、及びその成形体 |
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CN113318785B (zh) * | 2021-04-20 | 2023-03-31 | 常州大学 | 一种虾壳/金属有机框架聚合物型生物质复合催化剂及其制备方法和应用 |
-
1998
- 1998-12-10 JP JP10377777A patent/JP3099064B2/ja not_active Expired - Lifetime
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