JP3088158B2 - 指令によって破壊されるボルトから生じる破片に対する防護装置 - Google Patents

指令によって破壊されるボルトから生じる破片に対する防護装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人工衛星ないし宇宙船
に備え付けられたアンテナその他の機器を拘束しかつ開
かせる(hold and deploy)機構等において使用されるボ
ルトが、指令によって破壊されることにより生ずる破片
の飛散を防止する防護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】宇宙船では、比較的脆弱でかさばるアン
テナやセンサ支持部材やソーラー・パネルなどの開くこ
とが可能な装置は、打ち上げ時に損傷しないよう保護す
る目的で、折りたたまれた状態あるいは引き込まれた状
態で堅固な構造物に固定される必要がある。しかし、ひ
とたび打ち上げられ、人工衛星あるいは宇宙船が軌道に
乗れば、これらの装置はその機能を果し得るように解放
され開かれる必要がある。
【0003】通常爆薬に点火する指令によって破壊さ
れるボルトは、可動部材を静止部材に固定する機構にお
いて極めてよく用いられる手段である。これらのボルト
には予備応力を加えられるタイプや脆弱な領域を有する
タイプ等があり、破壊されると大きな運動エネルギーを
持つ破片ないしは金属片生じ、回路をショートさせた
り、機器にジャミングを発生させたり、導波管を損傷さ
せたりというように種々の損害の原因となる。
【0004】それらの問題を解決するため、金属ケーブ
ルをより合わせたものを必要に応じて外側からプラステ
ィックでコーティングして、ボルトの替わりに用いる方
法が提案された。そのようなケーブルが破壊されたとき
にでるくずは、金属ボルトが破壊されたときの破片より
も小さいが、量は多い。それに加え、比較的フレキシブ
ルなケーブルを使用することから来る機械的制約によ
り、適用範囲が限られる。
【0005】合成材料から成るボルトを使用し、これを
ジュール効果によって加熱された高温の導線を用いて融
して切断することも提案された。このように切断すれば
材料の破片ないしくずはまったく生じないが、有機化合
物が気化し、その化合物は特に光学部材に付着し易い
め、人工衛星内あるいは宇宙船内に容認し難い汚染を生
じさせることがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、指令によっ
て破壊されるボルトを使用する従来技術における上記問
題を解決しようとするものである。本発明の目的は、
令に応じた爆発等を利用して破壊される金属ボルトから
生ずる破片の飛散を防止する防護装置を提供することで
あり、本防護装置は、破壊されたボルトから生ずる金属
くず、細片ないしは破片をすべて小さな空間内に閉じ込
める。
【0007】また、本発明の他の目的は、人工衛星ある
いは宇宙船において極めて高い信頼性を持って使用され
る上記タイプの防護装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明は、
人工衛星ないし宇宙船に備えつけられたアンテナその他
の機器を保持しかつ展開を許容する機構等、可動部材が
固定部材にボルトにより拘束されるとともに、そのボル
トの軸が、指令に応じて作動する破壊装置に挿通された
機構に設けられて、そのボルトの軸の破壊により生ずる
破片の飛散を防止する防護装置であって、前記ボルトの
軸を前記破壊装置から離れたところで囲む封鎖体を含
み、その封鎖体が、ボルトの軸をほぼシールした状態
受け入れ、かつ、そのボルトの軸が抜けると自動的に閉
じ、ボルトの軸の破壊によって生じた破片を封鎖体内に
閉じ込める可とう性変形可能手段を備えたことを特徴と
する防護装置を提供する。
【0009】上記封鎖体は、上記破壊装置のハウジング
に底面で固定されてボルトの軸を囲むスリーブないしリ
ングによって構成され、ハウジングとは反対側の部分に
上記可とう性変形可能手段を備えたものとすることがで
きる。この封鎖体はコンパクトなものとすることがで
き、人工衛星ないしは宇宙船上で機器を拘束しかつ開か
せる機構と共に備えつけるために利用可能な空間に適し
ている。
【0010】指令によって破壊される従来型の金属ボル
トも、試験をした上であれば、従来そのボルトの使用に
伴って発生した問題を回避しつつ使用することができ
る。
【0011】本発明の好適な実施例では、前記可とう性
変形可能手段が、ボルトの軸が中心部を貫通し、周囲が
封鎖体内壁によって保持されるダイアフラムないし膜が
複数枚重ねられたものを含む。これら各膜は前記通路を
形成する所定の長さのスリットを中心部に有し、例えば
そのスリットの数は4で、90度間隔で形成される。こ
れら複数の膜のスリットは、膜同士の間で位相をずらす
ことにより、ボルトの軸の破壊によって生ずる金属くず
ないし破片を通過させないようにすることが好ましい。
可とう性の変形可能な膜を形成するための材料は、使用
条件との関連において決定される。人工衛星あるいは宇
宙船で使用される場合には、弾性変形能が高く、ボルト
に軸に対する摩擦係数が小さい等、一定の特性を満足さ
せるシリコーンゴムを使用することができる。
【0012】
【実施例】添付の図面に基づいた以下の説明によって本
発明はよりよく理解され、他の特徴、詳細、利点がより
明確になるであろう。
【0013】図1の例において、可動部材10は破壊装
と関連付けられた金属製のボルト14により固定構造
体12に固定的に保持されている。破壊装置は、例え
ば、固定構造体12に固定されたハウジング18内にお
いて、ボルト14の軸線に対し垂直に案内されるブレー
ドあるいはチゼル(Chisel) 16を含むものである。
【0014】従来と同様に爆薬に点火されるとチゼル1
6が図1に示す位置まで入り込み、ボルト14のシャン
クないし軸が破壊されてふたつの部分に分断される。一
方の部分20は可動部材10につながったままこの部材
10と共に解放されるのに対し、もう一方の部分22は
固定構造体12内に留まる。
【0015】チゼル16で金属ボルト14が破壊される
際、大きな運動エネルギーを有する大量の金属細片ない
し破片が生じてハウジング18から飛び出し、前記のよ
うな種々の損傷を与えるリスクが高い。
【0016】本発明は、ボルト14の軸を前記破壊装置
ハウジング18から離れたところで囲む封鎖体24に
よって前記金属片を閉じ込めるものである。本実施例で
は、封鎖体24は金属製のリングあるいはスリーブ26
を含む。スリーブ26は円筒形を有し、ボルト14の軸
と同軸をなし、その底面はハウジング18に固定され、
また、反対側の端面は可動部材10がボルト14によっ
て保持された状態では可動部材10と当接する。
【0017】封鎖体24は、ハウジング18から離れた
位置において弾性ないし可とう性の変形可能な一群の膜
28で封鎖されている。各膜28は切り込みを有し、可
動部材10につながったボルトの一部20がこの切り込
みに挿通されている。
【0018】図2において明らかなように、各膜28は
円形を成し、その中心32から径方向に放射状に伸びる
複数のスリット30を有する。各スリット30の長さは
ボルト14の軸の半径の函数として決められる。そのよ
うにすれば、軸が膜28に挿通されても膜28は破れる
ことなくしかもシーリングが十分に為され、可動部材1
0がその一部を成す装置が解放されあるいは開かされる
際にボルト14の軸の一部20が動かないという事態も
起きない。図2の例では、4本のスリット30が互いに
90度間隔で形成されている。
【0019】膜28の外径は実質的にスリーブ26の内
径に等しく、各膜28は適当な厚みの環状スペーサ34
により軸方向に互いに離間させられた状態でスリーブ2
6の内側において重ね合わされている。膜28とスペー
サ34とを重ねたものは、公知の1対の弾性止め輪36
によって挟まれ、スリーブ26の内側に配置される。弾
性止め輪36は、スリーブ26の内周壁に形成された溝
に嵌め込まれる。
【0020】以下、本防護装置の作用を説明する。
【0021】可動部材10が固定部材12にボルト14
で拘束された状態おいては、スリット30によって規定
された膜28の中心部分が、図1に示すように、ボルト
14の軸に沿ってハウジング18の方へ曲がる。スリー
ブ26の底面と、下方の弾性止め輪36との間には十分
な距離が確保され、一番下に位置する膜28の中心部分
の変形が妨害されないようになっている。この状態にお
いて、ボルト14の軸の一部20は膜28の中心部にほ
ぼにシールされて挿通されている。
【0022】爆薬が点火されると、チゼル16がボルト
14の軸を切断するように進み、可動部材10が解放さ
れる。ボルト14の軸がこのように破壊されることによ
って生ずる金属細片ないし破片は膜28によって封鎖体
24内に閉じ込められる。この閉じ込めは、ボルト14
の軸の一部20がいまだ膜28のスリットに挿通された
状態においても、また、それから引き抜かれたあとにお
いても継続する。膜28はボルト14の軸がそこから引
き抜かれるとすぐに膜28自身の弾性ないし可とう性に
より自然に閉じるからである。
【0023】各膜28はスリーブ26の軸線まわりの位
相がずらされ、隣接する膜28のスリット30が角度的
に一致しないように配置されている。
【0024】膜28はボルト14の軸の移動を妨害しな
いように、例えば、弾性変形能が高くボルト14の軸に
対して摩擦係数の小さいシリコーンゴムにて形成され
る。
【0025】本発明の防護装置を人工衛星ないしは宇宙
船で使用する際には、膜28の材料が以下のような一定
数の基準を満たすものから選択される。弾性的に変形さ
せられた状態(すなわち、ボルト14の軸が挿通された
状態)が、それの特性が劣化することなく一年程度の比
較的長期間維持されること。極めて低い温度(零下50
゜C程度)でも使用可能であること。力学的特性及び摩
擦特性が、解放機構の作動特性に適合すること。環境の
汚染(例えば、光学部材への付着)を起こしるいかな
る凝縮性物質も生成あるいは放出しないこと。接触する
他の材料に適合すること(特にボルト14の金属との化
学的相互作用あるいは腐食を起こしてはならない)。
【0026】系統的な試験の結果、エリカ(Erika)の名
称で販売されているシリコーンゴムが、航空宇宙産業に
おいてそのような膜として使用するに適した材料の1つ
であることが判った。この材料は約24時間、200C
°の炉のなかで加熱することにより、そのガス放出能が
十分に低減させられている
【0027】温度と圧力の限界条件における試験によっ
て、本発明の防護装置が適切に作動し高い信頼性を持っ
ていることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【図1】指令によって破壊されるボルトに関連付けられ
た本発明の防護装置の軸方向縦断面略図である。
【図2】本発明の防護装置の一構成要素である膜の平面
図である。
【符号の説明】
10 可動部材 12 固定構造体 14 金属ボルト 16 ブレードないしチゼル 18 ハウジング 24 封鎖体 26 金属製リングないしスリーブ 28 変形可能膜 30 スリット 34 スペーサ 36 弾性止め輪
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B64G 1/64

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 人工衛星ないし宇宙船に備えつけられた
    アンテナその他の機器を保持しかつ展開を許容する機構
    等、可動部材(10)が固定部材(12)にボルトによ
    り拘束されるとともに、そのボルトの軸が、指令に応じ
    て作動する破壊装置に挿通された機構に設けられて、そ
    のボルトの軸の破壊により生ずる破片の飛散を防止する
    防護装置であって、 前記ボルトの軸を前記破壊装置から離れたところで囲む
    封鎖体を含み、その封鎖体が、ボルトの軸をほぼシール
    した状態で受け入れ、かつ、そのボルトの軸が抜けると
    自動的に閉じ、ボルトの軸の破壊によって生じた破片を
    封鎖体内に閉じ込める可とう性変形可能手段(28)を
    備えたことを特徴とする防護装置。
  2. 【請求項2】 前記可とう性変形可能手段が、前記ボル
    トの軸が中心部を貫通し、周囲が前記封鎖体内壁によっ
    て保持されるダイアフラムないし膜(28)が複数重ね
    られたものを含む請求項1に記載の防護装置。
  3. 【請求項3】 前記膜(28)の各々、前記通路を形
    成する所定の長さのスリット中心から等角度間隔で放
    射状に延びる状態で形成された請求項2に記載の防護
    置。
  4. 【請求項4】 前記複数の膜(28)同士の間で、前記
    スリットの位相が互いにずらされている請求項3に記載
    の防護装置。
  5. 【請求項5】 前記複数の膜(28)が、それぞれの周
    辺部においてスペーサ(34)により互いに離間させら
    れている請求項2〜4の何れか1つに記載の防護装置。
  6. 【請求項6】 前記複数の膜が重ねられたものが、前記
    封鎖体(24)の内壁に形成された溝と係合する一対の
    弾性止め輪の間で保持され請求項2〜5の何れか1つ
    に記載の防護装置。
  7. 【請求項7】 前記膜がシリコーンゴムから成る請求項
    2〜6の何れか1つに記載の防護装置。
  8. 【請求項8】 前記封鎖体が、底面において前記破壊
    置(16)のハウジング(18)に固定されて前記ボル
    ト(14)の軸を囲むリングないしスリーブによって構
    成され、そのハウジングとは反対方向の部分に前記可と
    う性変形可能手段(28)を備えている請求項1〜7の
    何れか1つに記載の防護装置。
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