JP3072372B1 - 流通式高圧nmrセル精密温度制御システム - Google Patents

流通式高圧nmrセル精密温度制御システム

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JP3072372B1
JP3072372B1 JP11047044A JP4704499A JP3072372B1 JP 3072372 B1 JP3072372 B1 JP 3072372B1 JP 11047044 A JP11047044 A JP 11047044A JP 4704499 A JP4704499 A JP 4704499A JP 3072372 B1 JP3072372 B1 JP 3072372B1
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貴教 川上
佐藤  修
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Abstract

【要約】 【課題】 NMR計測器における流通式高圧セルを提供
する。 【解決手段】 核磁気共鳴(NMR)分析装置における
流通式高圧セルであって、セル上部にヒーターを取り付
け、セル内部に熱電対を挿入し、セル内部に脱着可能な
スペーサーを挿入し、必要により、セルの外部に温調ガ
スの流通を可能とするサンプル・ホルダー(セルホルダ
ー)を嵌着し、上記熱電対及びヒーターでセル内部の試
料温度を精密に制御するようにしたことを特徴とする流
通式高圧セル。 【効果】 高圧セル部全体の温度を精密に制御し、超臨
界流体及びそれらの媒体中の物質の様々な核種のNMR
測定をすることが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核磁気共鳴(NM
R)分析装置における流通式高圧セルに関するものであ
り、更に詳しくは、該高圧セル及びセルホルダー部を改
良し、セル部全体の温度を精密に制御し得るようにする
ことによって、水、各種有機溶媒、各種気体、超臨界流
体、及びそれらの媒体中の物質の様々な核種のNMR測
定をすることを可能とする新規な流通式高圧セルに関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】超臨界二酸化炭素など、温度に敏感にそ
の密度が変化する流体中に溶存する物質の様々な核種の
NMRを測定することが重要となっているが、通常の試
料セルで測定した場合、セル内部の温度勾配により対流
が生じて、測定が不可能になるという問題がある。一般
に、核磁気共鳴(NMR)分析装置は、そのような流体
中における化学反応を観測するのに役立つが、印加する
圧力、温度を常に調整する必要がある。このため、この
種の分析装置では、温度調整付きの可変定圧装置を備え
ることが必要となる。
【0003】NMR分光器の温調手段として、例えば、
温度制御ユニットから供給される冷却液体又は加温液体
が流通するコイル状バルブをNMR高圧計測装置のハウ
ジングを囲繞して設け、該コイル状バルブを通って流れ
る流体を介して計測領域の均一な温度制御を行うように
したタイプのものや、NMR計測セルを内包するシール
ド内に温調ガスを供給して計測サンプルを一定温度に保
持するタイプのもの、等が例示される。しかし、市販の
NMR分光器を用いて、分光器に既存のガス吹き付け装
置により試料セルの温度調整を行うと、該セルの下部と
上部で温度勾配が生じるという問題がある。特に、超臨
界流体などの温度に敏感に密度が変化するものは、セル
内部の温度勾配により対流が引き起こされ、NMR測定
が不可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、超臨界二酸
化炭素中における特異的な挙動の多くは、溶質−溶媒間
及び溶質−溶質間の相互作用に大きく依存することが知
られている。非極性分子で大きな四極子モーメントをも
つ二酸化炭素中において溶質分子の溶存状態を知ること
は、そのような挙動を理解する上で非常に重要である。
そこで、本発明者らは、溶媒効果に敏感であるNMR分
光法を用いて分子間相互作用の検討及び各種反応の追跡
をすることを目的とし、流通式高圧セルの製作を試みた
結果、セル上部にヒーター線を巻き、セル内部に挿入し
た熱電対で温度コントロールし、セル内部に着脱可能な
スペーサーを挿入し、温調ガスの流通可能なセルホルダ
ー(サンプル・ホルダー)を用いることにより、セル内
部の温度勾配を抑えて、セル部全体の温度を精密に制御
することが可能となること、そして、それにより、超臨
界流体などの媒体中の物質のNMR測定が可能となるこ
とを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】即ち、本発明は、NMR分析装置における
流通式高圧セルのセル及びセルホルダー部を改良して、
セル部全体の温度を精密に制御できるようにした新規高
圧セルを提供することを目的とする。また、本発明は、
セル内部の試料温度を精密に制御して、水、各種有機溶
媒、各種気体、超臨界流体、及びそれらの媒体中の物質
の様々な核種のNMR測定をすることが可能な高圧セル
を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、以下の技術的手段から構成される。 (1)核磁気共鳴(NMR)分析装置における流通式高
圧セルであって、セル上部にヒーターを取り付け、セル
内部に熱電対を挿入し、セル内部に脱着可能なスペーサ
ーを挿入し、必要により、セルの外部に温調ガスの流通
を可能とするサンプル・ホルダー(セルホルダー)を嵌
着し、上記熱電対及びヒーターでセル内部の試料温度を
精密に制御するようにしたことを特徴とする流通式高圧
セル。 (2)サンプル・ホルダーが、NMR計測セルを冷却又
は加温し、計測試料を一定の温度に保持する温調ガスの
流通を可能とする通気孔を有することを特徴とする前記
(1)記載の流通式高圧セル。 (3)セラミックセルの内部の少なくとも一部に着脱可
能なテフロン(登録商標)・スペーサーを挿入し、該スペ
ーサーを介してTiチューブを内挿したことを特徴とす
る前記(1)記載の流通式高圧セル。
【0007】
【発明の実施の形態】次に、本発明について図面の記載
に基づいて更に詳細に説明する。図4は、流通式高圧N
MR分光システムの概要を示す説明図であり、計測試料
は、試料溶解セルからNMR分光器の流通式高圧セルに
移送され、該高圧セル内部の試料は、温度制御ユニット
(図示せず)から供給される温調ガス及び上部ヒーター
により所定の温度制御が行われる。図1は、本発明の一
実施の形態に係る流通式高圧NMRセル(セラミックス
セル)の正面図(左側)及びその断面図(右側)であ
り、該高圧セルには、セルの上部から中部にかけてヒー
ター線を巻き、セル内部に熱電対を挿入し、セラミック
スセルの内部に着脱可能なテフロン・スペーサーを挿入
し、セルの外部に温調ガスの流通可能なサンプル・ホル
ダー(セルホルダー)を嵌着した構造に形成されてい
る。ヒーターは、適宜の構造のヒーターをセル上部の適
宜の位置に取り付けることができる。セラミックスセル
は、例えば、外形5mm〜10mm程度の管であり、プ
ローブコイル内に挿入される。プローブコイルは、該セ
ルが緩く嵌挿される内径を有し、試料セルは、このプロ
ーブコイル内の適宜の位置で上記サンプル・ホルダーを
介して支持される。
【0008】高圧セルの上部開口には、その中心にTi
チューブ及びセルが貫通するテフロン・リング及びO−
リングを介してTi−Alバルブが装着され、該Ti−
Alバルブの上部開口には、該Ti−AlバルブとO−
リングを介して着脱自在に上記Tiチューブ及びセルの
上部開口を密閉することができる上部Ti−Alバルブ
が嵌着される。
【0009】本発明の高圧セルは、特に、セル上部にヒ
ーター線を巻回し、セル内部に挿入した熱電対で温度コ
ントロールし、セル内部の試料温度を精密に制御するよ
うにした点、セル内部の試料用空間を除く少なくとも1
部に脱着可能なスペーサーを挿入し、上記ヒーター及び
スペーサーで温度制御できるようにした点、高圧セルに
温調ガスの流通可能なセルホルダー(サンプル・ホルダ
ー)を着脱可能に嵌着し、高圧セルの下部に位置する計
測試料を冷却又は加温する温調ガスが高圧セルの上部へ
流通するようにした点、を重要な構成要素としている。
これらの構成要件の点を除き、前記した高圧セルの各構
成要素は、それと同様の機能を有する他の適宜の要素に
置換することが可能であり、前記したものに限定される
ものではない。
【0010】上記ヒーター、スペーサー、セルホルダー
(サンプル・ホルダー)は、所定の機能を有するもので
あれば、適宜の形態及び材質のものが利用可能である
が、例えば、スペーサーは、テフロンなどの不活性かつ
不溶性な材料、セルホルダーは、ピークなどの熱に強く
加工しやすいものが好適なものとして例示される。この
場合、スペーサーは、セル内部の少なくとも1部に試料
用空間を残して着脱可能に挿入する。セルホルダー(サ
ンプル・ホルダー)は、高圧セルの外部に嵌着され、高
圧セルを該セルホルダーを介してプローブコイル内の適
宜の位置に支持したときに、該セルの下部に位置する計
測試料を冷却又は加温する温調ガスが該セル上部へ流通
し得るようにしたものであれば、その形態は特に限定さ
れないが、例えば、図2に示されるセルホルダーの中心
に位置するセル挿入孔の周囲に適宜数の通気孔を形成し
たもの又はそれと同効の機能を有するものが好適なもの
として例示される。また、セルホルダーは、フランジ部
のない環体など適宜の形態のものであってもよい。
【0011】次に、図4に基づいて、本発明の高圧セル
を用いて超臨界二酸化炭素中のn−ヘキサンの 1H−N
MRを測定した例を説明する。あらかじめ高圧セルをN
MR分光器にセットし、セル下部からの温度調整用ガス
及びセル上部のヒーターを所定温度に設定した。高圧セ
ル及び試料溶解セルに50気圧程度の二酸化炭素ガスを
フローさせ、系内を二酸化炭素で置換した。この操作を
数回繰り返した。
【0012】シリンジ・ポンプで昇圧した二酸化炭素を
試料溶解セル中に送り込み、試料を溶解させ、次いで、
試料が溶け込んだ二酸化炭素溶液を高圧セル内部に送り
込んだ。この場合、試料濃度を希釈する場合は、試料溶
解セルを通過させずに二酸化炭素を直接高圧セルに送り
込んだ。次いで、分光器の上部のコックを閉じ、背圧弁
でセル内の圧力を調整した。しばらく静置し、各種NM
R測定を実施した。
【0013】図1に製作し、使用した流通式高圧セルの
概略図を示す。本発明の高圧セルは、通常市販されてい
る分光器(ここでは、Varian Inova500 を使用)に適用
でき、比較的大容量(約0.3cm3 )の試料を観測領
域のみに設置することができる。更に、セル内部にテフ
ロン(登録商標)・スペーサーを挿入し、セル上部にヒー
ターを取り付けることで、セル内部の試料温度を40.
1±0.2℃に制御した。また、キャピラリ中に封入し
た外部基準試料(TMS/C66)を用いて、測定時
の試料濃度を決定できるようにした。外部基準法により
求めた化学シフト(δobs )は、媒質の磁化率の違いに
よる補正を行わなければならない。ソレノイド型磁石で
円筒形の試料管を用いた場合には、補正式は(1)式で
表される。
【0014】
【数1】
【0015】ここで、χ、ρ、Μはモル磁化率、密度、
分子量を、また、下付のref とsamは基準溶液及び試料
溶液を意味する。
【0016】図5にδcorrを二酸化炭素の密度に対して
プロットした。高圧セル内にスペーサーを用いず上部ヒ
ーターを切った状態で測定した場合には、密度変化の大
きな臨界密度(0.466gcm-3)付近に極小値が見
られた。これは、セル内の温度勾配に起因するものと推
測される。一方、スペーサーを挿入しヒーターで温度制
御した場合には極小が消え、全密度領域でδcorrはほぼ
一定であった。非極性分子のn−ヘキサンと二酸化炭素
では、van der Waals 相互作用が考えられるが、上記の
結果はそのような相互作用が小さいことを示唆してい
る。
【0017】図6に、二酸化炭素の密度に対してプロッ
トした水の化学シフトを示す。この結果は、δcorrが二
酸化炭素の密度に顕著な依存性があることを示してい
る。更に、密度の低いところから臨界密度付近まではδ
corrが直線的に増加し、水と二酸化炭素とがn−ヘキサ
ンの場合と比較して強く相互作用していることを示唆し
ている。図7に、二酸化炭素中の水及びメタノールの化
学シフトの濃度依存性を示す。水及びメタノールの水酸
基プロトンの化学シフトは濃度の増加にともない直線的
に増加することが分かった。この結果は、非極性である
二酸化炭素中において水やアルコールが水素結合により
会合体を形成することを示している。同様の方法によ
り、超臨界二酸化炭素中の水分濃度を推定することがで
きた。
【0018】図3に、セル内部の各試料の位置による温
度勾配を示す。ヒーターで温度制御することにより、圧
力範囲1気圧から350気圧、温度範囲25℃から10
0℃において、セル内部の試料温度を±0.2℃以内で
制御可能となることが分かった。
【0019】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明は、NMR
分光器における高圧セル及びセルホルダーを改良するこ
とで、セル部全体の温度を精密に制御するようにした点
に特徴を有するものであり、本発明により、1)セルの
下部と上部で温度勾配が生じることを防ぐことができ
る、2)スペーサー及びヒーターでセル部全体の温度を
精密に制御できる、3)水、各種有機溶媒、各種気体、
超臨界流体、及びそれら媒体中の物質の様々な核種のN
MR測定をすることを可能とする、4)観測したスペク
トルから試料の濃度(溶解度)を決定することが可能と
なる、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の流通式高圧NMRセルの説
明図である。
【図2】本発明に係るセルホルダー(サンプル・ホルダ
ー)の一実施例を示す説明図である。
【図3】セル内の各試料の位置の違いによる温度勾配を
示す説明図である。
【図4】流通式高圧NMR分光システムの概要を示す説
明図である。
【図5】二酸化炭素の密度に対してプロットしたn−ヘ
キサンの化学シフトを示す説明図である。
【図6】二酸化炭素の密度に対してプロットした水の化
学シフトを示す説明図である。
【図7】二酸化炭素中の水及びメタノールの化学シフト
の濃度依存性を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 修 宮城県仙台市宮城野区苦竹四丁目2番1 号 工業技術院東北工業技術研究所内 (72)発明者 生島 豊 宮城県仙台市宮城野区苦竹四丁目2番1 号 工業技術院東北工業技術研究所内 (72)発明者 畑田 清隆 宮城県仙台市宮城野区苦竹四丁目2番1 号 工業技術院東北工業技術研究所内 (72)発明者 斉藤 功夫 宮城県仙台市宮城野区苦竹四丁目2番1 号 工業技術院東北工業技術研究所内 (56)参考文献 特開 昭53−39187(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 24/00 - 24/14 G01R 33/20 - 33/64

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 核磁気共鳴(NMR)分析装置における
    流通式高圧セルであって、セル上部にヒーターを取り付
    け、セル内部に熱電対を挿入し、セル内部に脱着可能な
    スペーサーを挿入し、必要により、セルの外部に温調ガ
    スの流通を可能とするサンプル・ホルダー(セルホルダ
    ー)を嵌着し、上記熱電対及びヒーターでセル内部の試
    料温度を精密に制御するようにしたことを特徴とする流
    通式高圧セル。
  2. 【請求項2】 サンプル・ホルダーが、NMR計測セル
    を冷却又は加温し、計測試料を一定の温度に保持する温
    調ガスの流通を可能とする通気孔を有することを特徴と
    する請求項1記載の流通式高圧セル。
  3. 【請求項3】 セラミックスセルの内部の少なくとも一
    部に着脱可能なテフロン・スペーサーを挿入し、該スペ
    ーサーを介してTiチューブを内挿したことを特徴とす
    る請求項1記載の流通式高圧セル。
JP11047044A 1999-02-24 1999-02-24 流通式高圧nmrセル精密温度制御システム Expired - Lifetime JP3072372B1 (ja)

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