JP3069115B2 - セラミックス分散強化銅の製造方法 - Google Patents

セラミックス分散強化銅の製造方法

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JP3069115B2
JP3069115B2 JP2028706A JP2870690A JP3069115B2 JP 3069115 B2 JP3069115 B2 JP 3069115B2 JP 2028706 A JP2028706 A JP 2028706A JP 2870690 A JP2870690 A JP 2870690A JP 3069115 B2 JP3069115 B2 JP 3069115B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックス分散強化銅の製造方法に関
し、一層詳細には、作業が簡便であるとともに製造工程
を著しく短縮することができ、セラミックス分散強化銅
が効率よく得られるセラミックス分散強化銅の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅中に酸化物セラミックス等のセラミックスが分散析
出されてなるセラミックス分散強化銅は、銅単体と比較
して、強度、耐蝕性、耐摩耗性等の諸物性が優れている
ことが知られている。
【0003】 このようなセラミックス分散強化銅は、例えば次のよ
うにして製造される。まず、アルミニウムを銅に添加し
てアルミニウム−銅合金を製造し、これに多量の酸素を
吹き込めばアルミニウムが選択的に酸化され、銅中に酸
化アルミニウム(アルミナ)が分散析出されたアルミナ
分散強化銅が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したような酸化物セラミックス分
散強化銅の製造方法においては、酸化物セラミックスを
得るために、十分に多量の酸素を吹き込む必要がある。
例えば、アルミナ分散強化銅を製造する場合、アルミニ
ウムの酸化反応により酸化アルミニウムを生成させるに
は、以下に示す反応式(1)の化学量論比に相当する量
以上の酸素を吹き込む。
【0005】 4Al+3O2→2Al2O3 ……(1) したがって、酸化工程に続く次の工程では、アルミナ
分散強化銅中から余剰の酸素を除去する脱酸素処理をし
なければならない。
【0006】 また、酸素の吹き込みの際には、アルミニウムに比し
て酸素との反応性に乏しい銅の一部も、時として酸素と
反応し、酸化銅(CuO、Cu2O)が副生成されていまう。
このため、これらの酸化銅を還元して銅とする還元処理
工程が必要となる。
【0007】 このように、酸化アルミニウム等の酸化物セラミック
スが分散された酸化物セラミックス分散強化銅を製造す
るためには多数の工程を経なければならないため、結
局、酸化物セラミックス分散強化銅を得るのに長時間を
要している。にもかかわらず、得られる酸化物セラミッ
クスの量は極めて少なく、銅単体と比較して物性が著し
く向上されるには至らないという不都合を露呈してい
る。
【0008】 また、上記した製造方法は、銅と比して酸化されやす
いものを使用した場合にのみ行うことができる。酸化さ
れにくいものを使用すると、銅が優先的に酸化されて酸
化銅が生成するからである。このように、上記した製造
方法においては、酸化物セラミックスを生成するための
原料が限定されてしまうという不都合が顕在化してい
る。
【0009】 一方、例えば、銅粉末と酸化物セラミックス粉末とを
混合し、これを鋳造することによって酸化物セラミック
ス分散強化銅を製造することも考えられる。
【0010】 しかしながら、ほとんどの酸化物セラミックスの比重
は銅の比重の2/3以下であり、著しく異なる。このた
め、銅粉末と酸化物セラミックス粉末の混合粉末を溶融
して溶湯とした際に均一な混合が困難となり、その結
果、酸化物セラミックスが均一に分散された酸化物セラ
ミックス分散強化銅が得られなくなるという不都合が存
在している。
【0011】 本発明は上記した種々の問題を解決するためになされ
たもので、脱酸素処理および還元処理を行う必要がな
く、これにより工程数が低減され、しかも、銅または銅
合金中におけるセラミックスの分散を均一化または偏在
化させることが可能なセラミックス分散強化銅の製造方
法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明は、酸化剤、
炭化剤、窒化剤、ホウ化剤からなる群から選択された少
なくとも1つからなる元素供与体、前記元素供与体から
供与された酸素、炭素、窒素あるいはホウ素を受容する
元素受容体または銅合金の少なくともいずれか一方、お
よび、銅粉末を混合して混合体とする混合工程と、前記
各成分が互いに相分離を起こさない温度で攪拌しながら
前記混合体を溶融して溶湯とし、かつ、前記元素供与体
から酸素、炭素、窒素あるいはホウ素を分離させるとと
もに前記銅合金を銅と銅以外の構成金属とに分離させ、
さらに、前記元素供与体から分離された酸素、炭素、窒
素あるいはホウ素を溶湯中に分散された前記元素受容体
または構成金属の少なくともいずれか一方に化合させて
該元素受容体または構成金属の少なくともいずれか一方
を酸化物、炭化物、窒化物あるいはホウ化物に変化させ
る溶融工程と、前記溶湯を、該溶湯中の酸化物、炭化
物、窒化物あるいはホウ化物と銅とが互いに相分離を起
こさない温度に加熱しながら金型のキャビテイに導入し
て鋳造する鋳造工程とを有することを特徴とする。
【0013】 この製造方法により、酸化物セラミックス、炭化物セ
ラミックス、窒化物セラミックスあるいはホウ化物セラ
ミックス等のセラミックスが銅中に均一に分散されたセ
ラミックス分散強化銅が得られる。
【0014】 また、本発明は、酸化剤、炭化剤、窒化剤、ホウ化剤
からなる群から選択された少なくとも1つからなる元素
供与体、前記元素供与体から供与された酸素、炭素、窒
素あるいはホウ素を受容する元素受容体または銅合金の
少なくともいずれか一方、および、銅粉末を混合して混
合体とする混合工程と、前記各成分が互いに相分離を起
こさない温度で攪拌しながら前記混合体を溶融して溶湯
とし、かつ、前記元素供与体から酸素、炭素、窒素ある
いはホウ素を分離させるとともに前記銅合金を銅と銅以
外の構成金属とに分離させ、さらに、前記元素供与体か
ら分離された酸素、炭素、窒素あるいはホウ素を溶湯中
に分散された前記元素受容体または構成金属の少なくと
もいずれか一方に化合させて該元素受容体または構成金
属の少なくともいずれか一方を酸化物、炭化物、窒化物
あるいはホウ化物に変化させる溶融工程と、前記溶湯
を、該溶湯中の酸化物、炭化物、窒化物あるいはホウ化
物と前記銅とが相分離を起こす温度に加熱しながら金型
のキャビテイに導入して鋳造する鋳造工程とを有するこ
とを特徴とする。
【0015】 この製造方法により、酸化物セラミックス、炭化物セ
ラミックス、窒化物セラミックスあるいはホウ化物セラ
ミックス等のセラミックスが内部よりも表層部に多く偏
在して分散されたセラミックス強化分酸銅が得られる。
【0016】 これら2つの製造方法においては、混合体を作製し、
次いでこれを溶融して溶湯とし、この溶湯を鋳造すると
いう簡便な作業でセラミックス強化分散銅を製造するこ
とができる。また、脱酸素処理や還元処理を行う必要が
ない。すなわち、工程数が低減されるので、セラミック
ス強化分散銅を効率よく製造することができる。
【0017】 いずれの方法においても、前記混合体をペレットに成
形し、前記溶融工程において前記ペレットを溶融すると
よい。銅の溶湯中にセラミックスの溶湯が均一に分散さ
れるからである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るセラミックス分散強化銅につき好
適な実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明
する。
【0019】 まず、第1の実施の形態として、セラミックスが均一
に分散されたセラミックス分散強化銅の製造方法につい
て説明する。第1の実施の形態に係るセラミックス分散
強化銅の製造方法は、銅粉末と、元素供与体と、元素受
容体または銅合金の少なくともいずれか一方を混合して
混合体とする混合工程と、前記混合体を溶融して溶湯と
する溶融工程と、前記溶湯を鋳造する鋳造工程とを有し
ている。
【0020】 まず、混合工程において、セラミックス分散強化銅の
母材銅の原料となる銅粉末、元素供与体、および、銅合
金または元素受容体の少なくともいずれか一方が混合さ
れる。
【0021】 ここで、元素供与体とは、後述する溶融工程におい
て、自身の構成元素である酸素、炭素、窒素あるいはホ
ウ素等を、元素受容体や銅合金の銅以外の構成金属に供
与することが可能な物質のことをいい、酸化剤、炭化
剤、窒化剤、ホウ化剤からなる群から選択された少なく
とも1つからなる。すなわち、元素供与体は、例えば、
酸化剤のみからなるものであってもよく、あるいは酸化
剤と炭化剤とが混合されてなるもの等であってもよい。
【0022】 元素供与体としては、溶湯中で自身が還元されること
により上記した各元素を分離するものであれば特に限定
されるものではない。例えば、酸化剤としては、CuO、C
u2O、FeO、Fe2O3、Ag2O、Au2O、NiO、MnO等を挙げるこ
とができ、炭化剤としては、チタニウムイソプロポキシ
ド等を挙げることができる。
【0023】 また、元素受容体とは、前記元素供与から分離された
酸素、炭素、窒化あるいはホウ素等と化合することが可
能な物質のことをいい、換言すれば、前記元素供与を還
元する還元剤である。そして、この元素受容体が酸素、
炭素、窒素あるいはホウ素等と化合することにより酸化
物、炭化物、窒化物あるいは炭化物が生成する。すなわ
ち、酸化物セラミックス、炭化物セラミックス、窒化物
セラミックスあるいはホウ化物セラミックスが生成す
る。
【0024】 元素受容体としては、前記元素供与体から分離された
酸素、炭素、窒素あるいはホウ素等と銅よりも優先的に
化合するものであれば特に限定されるものではなく、A
l、Cr、Ti、Mg、Zr、Ca、Mo等を好適例として挙げるこ
とができる。
【0025】 元素供与体から供与された酸素、炭素、窒素あるいは
ホウ素等は、後述するように、銅合金の銅以外の構成金
属に化合させてもよい。このように、銅合金の構成金属
が酸素、炭素、窒素あるいはホウ素等と化合することに
よっても酸化物セラミックス、炭化物セラミックス、窒
化物セラミックスあるいはホウ化物セラミックスが生成
する。
【0026】 銅合金としては、銅よりも優先的に酸素、炭素、窒素
あるいはホウ素等と化合する金属を構成金属とするもの
であれば特に限定されるものではなく、Al−Cu合金やCr
−Cu合金等を好適例として挙げることができる。
【0027】 以上のようなものおよび銅からなる混合体は、混合粉
末状でもよいが、ペレットに成形することが好ましい。
銅の溶湯中にセラミックスが均一に分散されるようにな
るからである。なお、混合体のペレットへの成形は、例
えば、公知の湿式顆粒圧縮法や乾式顆粒圧縮法等のいわ
ゆるSlug法により行うことができる。
【0028】 次いで、溶融工程において、前記混合体、好ましくは
ペレットに形成された前記混合体を溶融し、溶湯とす
る。この溶融は、図1に概要を示す設備により行うこと
ができる。図1において、参照符号10は炉であり、この
炉10はシャッター箱12によって外気から遮断されてい
る。そして、シャッター箱12内にはるつぼ14が設置され
ており、また、真空ポンプ16を作動させることによりシ
ャッター箱12内を真空引きすることが可能である。
【0029】 すなわち、混合体をるつぼ14内に配置した後に真空ポ
ンプ16を作動させてシャッター箱12内を真空引きし、次
いでアルゴンガスボンベ30からアルゴンガスを供給し、
シャッター箱12内をアルゴンガス雰囲気とする。そし
て、るつぼ14を昇温し、前記混合体を溶融して溶湯とす
る。
【0030】 この溶融は、銅、元素供与体、元素受容体または銅合
金の少なくともいずれか一方の各成分が互いに相分離を
起こさない温度、具体的には、混合体の融点付近で、攪
拌翼18により攪拌しながら行う。この時点で各成分が相
分離を起こすと、セラミックスが均一に分散されたセラ
ミックス分散強化銅が得られなくなるからである。ま
た、攪拌することにより、相分離が一層回避される。
【0031】 この溶湯は高温であるため、該溶湯中においては、元
素供与体が還元されることにより該元素供与体から酸
素、炭素、窒素あるいはホウ素が分離される。また、混
合体に銅合金が混合された場合には、この銅合金が銅と
銅以外の構成金属とに分離する。
【0032】 元素供与体から分離された酸素、炭素、窒素あるいは
ホウ素は、元素受容体または銅合金を構成していた銅以
外の構成金属に化合される。この化合によって、元素受
容体または前記構成金属が酸化物セラミックス、炭化物
セラミックス、窒化物セラミックスあるいはホウ化物セ
ラミックスに変化する。
【0033】 この変化を、Cu粉末、Al−Cu合金粉末、Cr−Cu合金粉
末、および元素給与体としてCu2O、Fe2O3(ともに酸化
剤)からなる混合体を800℃で溶融する場合を例とし
て、具体的に説明する。
【0034】 この場合、溶湯中には、Al−Cu合金、Cr−Cu合金が分
離することによって生成したAl、Cr、Cuが存在する。こ
のAl、Crと、元素供与体であるCu2O、Fe2O3との間に、
以下の反応式(2)〜(5)に示される反応が起こる。
【0035】 3Cu2O+2Al→Al2O3+6Cu ……(2) Fe2O3+2Al→Al2O3+2Fe ……(3) 3Cu2O+2Cr→Cr2O3+6Cu ……(4) Fe2O3+2Cr→Cr2O3+2Fe ……(5) しかしながら、反応式(2)〜(5)の800℃におけ
る生成エネルギの変化は、それぞれ、−250kcal、−190
kcal、−160kcal、−95kcalである。したがって、反応
式(2)および(3)に示される反応が優先的に起こ
る。次いで、過剰の上記酸化剤により反応式(4)およ
び(5)に示される反応が起こる。
【0036】 ここで、以下の平衡反応式(6)における平衡酸素分
圧は10-9気圧程度である。
【0037】 4Cu+O2=2Cu2O ……(6) したがって、Cu2Oの熱による分解反応よりも、元素受
容によってCu2Oが還元され、かつ該元素受容体が酸化さ
れるという、いわば置換反応が支配的となる。
【0038】 なお、溶融工程においては、溶湯を得るための加熱条
件、例えば、昇温スピード等をElingham、Coughlin、El
liot、Gleister等が作成した公知のダイヤグラムに則っ
て設定および制御する。加熱条件がこのように設定およ
び制御されることにより、酸化剤から分離された酸素同
士が結合して酸素ガスとなり、反応系外へ排出されてし
まう等の不都合が生じることがない。
【0039】 このようにして得られた溶湯を、次いで、鋳造工程に
おいて鋳造する。具体的には、図1に示す設備のスライ
ドゲート20を開き、流路22を介して溶湯を金型28のキャ
ビテイ29に導入する。
【0040】 この導入の際には、流路22の途中の取付部26に設置さ
れている高周波加熱装置28により、溶湯中の銅と、酸化
物セラミックス、炭化物セラミックス、窒化物セラミッ
クスあるいはホウ化物セラミックス等のセラミックスと
が、互いに相分離を起こさない温度に該溶湯を加熱す
る。具体的には、上記した混合体が溶融されてなる溶湯
を鋳造する場合、1210℃程度とすればよい。
【0041】 そして、キャビテイ内で成形された溶湯を冷却固化さ
せれば、セラミックス分散強化銅が得られる。このセラ
ミックス分散強化銅においては、溶湯がキャビテイ29に
導入される際、銅とセラミックスとが互いに相分離を起
こさない温度に該溶湯が加熱されているので、セラミッ
クスが均一に分散されたセラミックス分散強化銅が得ら
れる。
【0042】 次に、第2の実施の形態として、セラミックスが表層
部に高濃度で分散されたセラミックス分散強化銅の製造
方法について説明する。
【0043】 第2の実施の形態に係るセラミックス分散強化銅の製
造方法は、溶湯を鋳造する鋳造工程の際に、該溶湯中の
銅とセラミックスとが相分離を起こす温度に該溶湯を加
熱することを除いては、上記した第1の実施の形態に係
るセラミックス分散強化銅の製造方法と同様である。
【0044】 すなわち、混合工程において混合体、好ましくはこの
混合体のペレットを作製し、次いで溶融工程において図
1に示す設備のるつぼ14内で混合体を溶湯とする。次い
で、この溶湯を鋳造工程において鋳造する。
【0045】 第2の実施の形態に係るセラミックス分散強化銅の製
造方法においては、溶湯を金型28のキャビテイ29に導入
する際、流路22の途中の取付部26に設置されている高周
波加熱装置28により、溶湯中の銅と、酸化物セラミック
ス、炭化物セラミックス、窒化物セラミックスあるいは
ホウ化物セラミックスとが互いに相分離を起こす温度に
該溶湯を加熱する。この温度を調整することにより、各
成分の分離の度合いを調整することができる。
【0046】 そして、キャビテイ内で成型された溶湯を冷却固化さ
せれば、セラミックス分散強化銅が得られる。このセラ
ミックス分散強化銅においては、溶湯がキャビテイ29に
導入される際、銅とセラミックスとが相分離を起こす温
度に該溶湯が加熱されたため、セラミックスの一部が銅
や銅合金から分離して表層部に偏在している。すなわ
ち、表層部におけるセラミックスの濃度が内部よりも高
くなる。
【0047】 このようなセラミックス分散強化銅においては、内部
になるにつれてセラミックスの濃度が低くなるので、物
性が表層部から内部にかけて徐々に変化する。すなわ
ち、表層部は耐摩耗性、強度が優れ、内部は靭性が優れ
る。このことから、第2の実施の形態に係るセラミック
ス分散強化銅の製造方法によれば、表層部から内部にか
けて物性が変化していくセラミックス分散強化銅を製造
することができるということがいえる。
【0048】 このように、第1および第2の実施の形態に係るセラ
ミックス分散強化銅の製造方法においては、従来技術に
係るセラミックス分散強化銅の製造方法において必須工
程であった脱酸素処理および還元処理を行う必要がな
い。したがって、工程数が低減される。また、混合体を
作製し、これを溶融して溶湯とした後、該溶湯を金型の
キャビテイに導入して冷却固化させるという簡便な作業
でセラミックス分散強化銅を製造することができる。
【0049】
【実施例】
[実施例1] 平均粒径20μmの電気銅粉末粉末と、粉砕され200メ
ッシュを篩過するCr含量2.6重量%のCr−Cu合金粉末
と、粉砕され60メッシュを篩過するAl含量0.6重量%のA
l−Cu合金粉末と、平均粒径1.2μmのCu2O粉末と、平均
粒径0.6μmのFe2O3粉末とを、電気銅粉末:Cr−Cu合金:
Al−Cu合金:CuO2O:Fe2O3=28.2:30:30:10:1.8(重量
比、以下同じ)で混合し、混合体とした。この混合体
を、2000kgf/cm2(204.1MPa)の加圧力で成形し、直径5
0mm×厚さ5mmのペレットとした。このペレットを直径1m
m以下に粉砕し、再び成形して直径50mm×厚さ5mmのペレ
ットとした。
【0050】 このペレットを図1に示したるつぼ14中に移し、シャ
ッター箱12内を真空引きした後アルゴンガス雰囲気と
し、真空ポンプ16を作動させなら、室温から500℃まで3
0分で昇温し、次いで、500〜700℃までを20℃/min、700
〜950℃までを10℃/minの昇温速度で昇温した。なお、9
50℃まで昇温する途中、800℃で30分間保持した。次い
で、1000℃まで昇温して30分間保持し、その後1050℃ま
で昇温して1時間保持し、さらに昇温して1130℃とし
た。なお、いずれの場合も昇温速度は10℃/minとした。
【0051】 そして、1130℃で攪拌翼18をるつぼ14中に下降させ、
低速で攪拌しながらペレットを溶融し、溶湯とした。
【0052】 次いで、スライドゲート20を開き、流路22を介して金
型28のキャビティ29に溶湯を導入した。この際、流路22
の取付部26に設置された高周波加熱装置24により溶湯を
1210℃に昇温させた。
【0053】 最後に、1010℃で2時間窒素雰囲気中で溶体化処理し
た後急冷し、500℃で2時間時効して、セラミックス分
散強化銅を製造した。
【0054】 このようにして製造されたセラミックス分散強化銅を
電子顕微鏡により観察したところ、50〜200Åの大きさ
に凝集したAl2O3が銅中に均一に分散されていることが
認められた。また、Cr2O3の生成は認められなかった。
【0055】 また、このセラミックス分散強化銅の硬度はHRB=72
〜74であり、電気伝導度は、純銅を100とし場合、80〜8
3であった。
【0056】 [実施例2] 溶湯を金型28のキャビテイ29に導入する際に該溶湯を
1350℃に昇温させたことを除いては、実施例1に準拠し
てセラミックス分散強化銅を製造した。このセラミック
ス分散強化銅を電子顕微鏡により観察したところ、300
〜1000Åの大きさに凝集したAl2O3が表層部により多く
存在していることが認められた。この場合も、Cr2O3
生成は認められなかった。
【0057】 このセラミックス分散強化銅の表層部および内部の硬
度をそれぞれ測定した。その結果、表層部ではHRB=86
〜87、内部ではHRB=54〜56と著しく差があった。この
ことから、このセラミックス分散強化銅は、表層部は耐
摩耗性、強度に優れ、内部は靭性が大きく、したがって
耐衝撃吸収性に優れるという、表層部と内部とでは異な
る物性を有する複合材であることが諒解される。
【0058】 なお、電気導電度は、純銅を100とした場合、70〜75
であった。
【0059】 [実施例3] 平均粒径20μmの電気銅粉末と、粉砕され60メッシュ
を篩過するAl含量1.2重量%のAl−Cu合金粉末と、平均
粒径1.2μmのCu2O粉末と、平均粒径1.2μmのSnO粉末
と、平均粒径0.5μmのNi粉末と、チタニウムイソプロ
ポキシドとを、電気銅粉末:Al−Cu合金:Cu2O:SnO:Ni:チ
タニウムイソプロポキシド=30:30:30:0.5:1:8.5で混合
し、混合体とした。この混合体に、結合剤および賦型剤
としてアルコールを添加した後、2000kgf/cm2(204.1MP
a)の加圧力で成形してペレットとした。次いで、この
ペレットを直径1〜2mmに粉砕し、粒状体とした。
【0060】 次いで、この粒状体と直径1〜2mm程度に裁断された
粒状銅とを、粒状体:粒状銅=30:70で混合した後、100
0kgf/cm2(102.04MPa)の加圧力で成形してペレットと
した。
【0061】 以下、実施例1に準拠してセラミックス分散強化銅を
製造した。このセラミックス分散強化銅を電子顕微鏡に
より観察したところ、100Å以下の大きさに凝集したAl2
O3、50〜200Å以下の大きさに凝集したTiO2、およびTiC
が銅中に均一に分散されていることが認められた。ま
た、Cr2O3の生成は認められなかった。
【0062】 なお、このセラミックス分散強化銅の硬度はHRB=64
〜67であった。
【0063】 [実施例4] 溶湯を金型28のキャビテイ29に導入する際に該溶湯を
1300℃に昇温させたことを除いては、実施例3に準拠し
てセラミックス分散強化銅を製造した。このセラミック
ス分散強化銅を電子顕微鏡により観察したところ、Al2O
3、TiO2およびTiCが表層部により多く存在していること
が認められた。この場合も、Cr2O3の生成は認められな
かった。
【0064】 このセラミックス分散強化銅の表層部および内部の硬
度をそれぞれ測定したとろ、表層部ではHRB=74〜75、
内部ではHRB=58〜60と著しく差があった。すなわち、
実施例4においても、表層部は耐摩耗性、強度に優れ、
内部は靭性が大きく、したがって耐衝撃吸収性に優れる
という、表層部と内部とで異なる物性を有するセラミッ
クス分散強化銅複合材が得られた。
【0065】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るセラミックス分散
強化銅の製造方法によれば、従来技術に係るセラミック
ス分散強化銅の製造方法において必須工程であった脱酸
素処理と還元処理が不要となる。すなわち、工程数が低
減されるので製造時間が短縮され、効率的にセラミック
ス分散銅が製造される。
【0066】 また、混合体をペレットに成形することにより、該混
合体の溶融時に、該混合体中の各成分が均一に混合され
る。
【0067】 さらに、溶湯をキャビテイに導入する前に、該溶湯中
の銅とセラミックスとが相分離を起こす温度に該溶湯を
加熱すれば、表層部と内部とで物性が異なるセラミック
ス分散強化銅を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 セラミックス分散強化銅を製造する際に使用した鋳造設
備の全体概略説明図である。
【符号の説明】 10……炉、12……シャッター箱 14……るつぼ、16……真空ポンプ 18……攪拌翼、20……スライドゲート 22……流路、24……高周波加熱装置 26……高周波加熱装置取付部、28……金型 29……キャビテイ、30……アルゴンガスボンベ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭61−136640(JP,A) 特開 昭61−136641(JP,A) 特開 昭61−136642(JP,A) 特開 昭63−213627(JP,A) 特開 平1−198436(JP,A) 特開 昭57−194228(JP,A) 特開 昭55−145135(JP,A) 特開 昭60−152644(JP,A) 特開 平1−279715(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 19/14 C22C 9/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸化剤、炭化剤、窒化剤、ホウ化剤からな
    る群から選択された少なくとも1つからなる元素供与
    体、前記元素供与体から供与された酸素、炭素、窒素あ
    るいはホウ素を受容する元素受容体または銅合金の少な
    くともいずれか一方、および、銅粉末を混合して混合体
    とする混合工程と、 前記各成分が互いに相分離を起こさない温度で攪拌しな
    がら前記混合体を溶融して溶湯とし、かつ、前記元素供
    与体から酸素、炭素、窒素あるいはホウ素を分離させる
    とともに前記銅合金を銅と銅以外の構成金属とに分離さ
    せ、さらに、前記元素供与体から分離された酸素、炭
    素、窒素あるいはホウ素を溶湯中に分散された前記元素
    受容体または構成金属の少なくともいずれか一方に化合
    させて該元素受容体または構成金属の少なくともいずれ
    か一方を酸化物、炭化物、窒化物あるいはホウ化物に変
    化させる溶融工程と、 前記溶湯を、該溶湯中の酸化物、炭化物、窒化物あるい
    はホウ化物と銅とが互いに相分離を起こさない温度に加
    熱しながら金型のキャビテイに導入して鋳造する鋳造工
    程と、 を有することを特徴とするセラミックス分散強化銅の製
    造方法。
  2. 【請求項2】酸化剤、炭化剤、窒化剤、ホウ化剤からな
    る群から選択された少なくとも1つからなる元素供与
    体、前記元素供与体から供与された酸素、炭素、窒素あ
    るいはホウ素を受容する元素受容体または銅合金の少な
    くともいずれか一方、および、銅粉末を混合して混合体
    とする混合工程と、 前記各成分が互いに相分離を起こさない温度で攪拌しな
    がら前記混合体を溶融して溶湯とし、かつ、前記元素供
    与体から酸素、炭素、窒素あるいはホウ素を分離させる
    とともに前記銅合金を銅と銅以外の構成金属とに分離さ
    せ、さらに、前記元素供与体から分離された酸素、炭
    素、窒素あるいはホウ素を溶湯中に分散された前記元素
    受容体または構成金属の少なくともいずれか一方に化合
    させて該元素受容体または構成金属の少なくともいずれ
    か一方を酸化物、炭化物、窒化物あるいはホウ化物に変
    化させる溶融工程と、 前記溶湯を、該溶湯中の酸化物、炭化物、窒化物あるい
    はホウ化物と前記銅とが相分離を起こす温度に加熱しな
    がら金型のキャビテイに導入して鋳造する鋳造工程と、 を有することを特徴とするセラミックス分散強化銅の製
    造方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載のセラミックス分散
    強化銅の製造方法において、 前記混合体をペレットに成形し、前記溶融工程において
    前記ペレットを溶融することを特徴とするセラッミック
    ス分散強化銅の製造方法。
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