JP3062159B2 - 水中吸音装置 - Google Patents

水中吸音装置

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JP3062159B2 JP10324791A JP32479198A JP3062159B2 JP 3062159 B2 JP3062159 B2 JP 3062159B2 JP 10324791 A JP10324791 A JP 10324791A JP 32479198 A JP32479198 A JP 32479198A JP 3062159 B2 JP3062159 B2 JP 3062159B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば音響測定用
水槽の壁面等に使用される水中吸音装置に関する。
【0002】
【従来の技術】音響測定用水槽としては、例えば船舶の
プロペラの設計等に使用する水槽が知られているが(特
開平9−38635号,特開平9−38636号公報等
参照)、雑音計測装置を設置した水槽の中でプロペラを
実動させて雑音源の検出等を行うため、水槽の測定部付
近の壁面には雑音の反射を防ぐ吸音装置が取り付けられ
る。そしてこのような水槽の壁面等に取り付けられる水
中吸音装置には、くさび構造型装置と平板多層構造型装
置とが知られている。
【0003】図5はくさび構造型装置の一例を示す断面
図であり、符号20は松材で形成された松くさびであ
る。吸音装置は良く知られているように、固有音響イン
ピーダンスρc(ρは密度,cは音速であるが、以下に
言うρcは水のρcをρc=1とした場合の割合を示
す)を徐々に変化させて行って音の反射を抑えながら音
を吸収する構造となっており、図5に示す松くさび吸音
装置は固有音響インピーダンスρc=2.4程度の松材
をくさび型にすることで、垂直方向から見た平均の音響
インピーダンスをρc=1付近からρc=2.4付近ま
で、音波の進行に従って連続的に変化させる構造とした
ものである。
【0004】図6は平板多層構造型装置の一例を示す断
面図であり、それぞれ固有音響インピーダンスρcが異
なる吸音シート30をそれぞれ接着剤の層31で接着さ
せて、水の固有音響インピーダンスρc=1に近いもの
から順に重ねた構造としたものであり、図5に示すくさ
び型と同様、垂直方向から見た固有音響インピーダンス
ρcを水のρc=1付近から徐々に変化させて行って音
の反射を抑えながら音を吸収する構造としたものであ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の水中吸音装置は
以上のように構成されており、図5に示すくさび構造型
装置はくさび形状で音響インピーダンスを連続的に変化
させることができるため高い吸音性能を持たせることが
可能であるが、一定の大きさのくさびを敷き詰めた構造
となるため製造コストがかかると共に薄くすることがで
きず、且つ取り扱いに不便であり壁面や床面に設置する
吸音装置として適当とは言えない。
【0006】また図6に示す従来の平板多層構造型装置
は、くさび形状に比べて薄くでき、取り扱いも容易であ
るが、各接着層に含まれる気泡の影響が無視できない場
合がある。図7は、各媒質の水に対するρcと反射率を
示す図であるが、空気と水との境界では音波は90%以
上反射してしまう。このため水槽等、水深の浅い場所で
は受ける水圧が低く、気泡の膨張により吸音性能が安定
しない場合があり、各層の接着工程における気泡の混入
を極力少なくするため製造コストも高くなる。
【0007】本発明はかかる問題点を解決するためにな
されたものであり、高い吸音性能を有する平板多層構造
型の水中吸音装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の水中吸音装置
は、複数枚のシートを重ね合わせた多層構造を成し、水
中に設置される平板多層構造型の水中吸音装置におい
て、前記シートの一面(或は両面)に溝を設け、装置を
水中に設置した場合に前記溝から各シートの隙間に水を
浸透させる構造としたことを特徴とする。また前記シー
トの一面(或は両面)に吸水性繊維を設け、装置を水中
に設置した場合に前記繊維を介して各シートの隙間に水
を浸透させる構造としたことを特徴とする。また前記溝
又は吸水性繊維は、装置を水中に設置した場合に前記シ
ートの一面を斜めに横切る位置に設けられることを特徴
とする。また各シート間に固有音響インピーダンスが水
に近いグリス状物質を配設、封入することにより空気の
入り込む余地をなくする構造としたことを特徴とする。
【0009】本発明の水中吸音装置は、上述のように各
シートを接着剤で接着せず、その隙間に積極的に水又は
水に近い物質を導入することにより気泡を除去する構造
としたことで、平板多層構造型装置でありながらくさび
形状型装置と同程度の吸音性能を持たせることが可能と
なる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。図1,図2は、本発明の一実施形
態を示す図であり、図において、10はそれぞれ吸音シ
ート(単にシートとも言う)、11はシート固定用のナ
ット、101は各吸音シート10の片面に設けられた導
水溝(単に溝とも言う)である。各吸音シート10はそ
れぞれ固有音響インピーダンスρcを、例えばρc=
0.95、ρc=0.9、ρc=0.85、ρc=0.
8、ρc=0.7と言うように異ならせてある。この固
有音響インピーダンスρcを異ならせる方法は、使用す
る粘弾性体(ゴムあるいはウレタン)の材質と、混入さ
せる空気量及び混合物(フェライト等)の量の選択によ
って異ならせることができる。なお吸音シート10は一
般的には1枚の厚さが1〜2cm程度であり、数枚から
数十枚のシートが多層されて吸音装置が構成される。
【0011】本実施形態の水中吸音装置は図1に示すよ
うに、それぞれ固有音響インピーダンスρcの異なる吸
音シート10を水の固有音響インピーダンスρcに近い
ものから順に積層した平板多層構造型装置としたもので
あるが、積層には接着剤を用いず複数の吸音シート10
を貫通させたボルトをナット11で固定したもので、各
吸音シート10間は接着されていないので、この吸音装
置が水中に設置された場合に残存している気泡が水と置
換して、各吸音シートの間の隙間は水で満たされる構造
としている。
【0012】なお本実施形態の水中吸音装置は、各吸音
シート10の間に生じる隙間は、音の反射を極力抑える
ことから極僅かでなければならず、この吸音装置を水中
に配設しても隙間に閉じ込められた気泡が抜けない場合
も考えられる。従って図2に示す実施形態では、各シー
ト10の片面または両面(図示せず)に導水溝101を
設け、各吸音シート10の隙間が積極的に水で満たされ
る構造とした。
【0013】本実施形態の水中吸音装置は上述のような
構造とすることで、くさび構造型吸音装置に匹敵する吸
音性能を有する装置が、その厚さで1/3〜1/5、質
量を同程度の大きさとすることができる。なお導水溝1
01の数や大きさは音響的に大きな反射が生じない程度
とし、導水溝101を吸音シート10の底辺に対し斜め
に設けることで、装置が設置された場合に導水溝101
が平行になって導水溝101に気泡が溜ってしまうこと
を防止している。
【0014】図3は本発明の第2の実施形態を説明する
ための図である。図3に示す実施形態では、各吸音シー
ト10の片面または両面(図示せず)に吸水性繊維10
2を設けたものであり、各吸音シート10の隙間に吸水
性繊維102を設けることによって、装置を水中に設置
した場合にこの吸水性繊維102で吸音シートの隙間に
積極的に水を導入させ、水を空気と置換させる構造とし
たもので、図2に示す装置と同様の効果を奏する。なお
吸水性繊維102は、図3に示すように吸音シート10
平面を所定間隔を開けて斜めに横断するように設けるこ
ととしても良いが、どのように配置しても良く、例えば
各吸音シート10間に布状繊維を挟み込ませる構造とし
ても良い。
【0015】図4は本発明の第3の実施形態を説明する
ための図である。図4に示す実施形態では、製造時に各
吸音シート10の表面に固有音響インピーダンスが水に
近いグリス状の物質103を塗布して複数の吸音シート
を重ね合わせたものであり、このような構造とすること
によって、固有音響インピーダンスの大きく異なる空気
の入り込む余地をなくする構造としたものであり、図2
に示す装置と同様の効果を奏する。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように本発明の水中吸音装
置は、各吸音シート間に接着剤を用いず、各吸音シート
間に生じる隙間に積極的に水又は固有音響インピーダン
スが水に近い物質を導入する構造とすることにより、く
さび構造型装置と同程度の吸音性能を有する装置を1/
2以下の大きさで実現できるようになる。また各吸音シ
ート間は接着を行わないので製造工程を簡略化でき、吸
音シートを重ね合わせることから、材質または特性を問
わず自由に組合せを選択でき、吸音したい音の周波数や
設置場所に適した装置を構成できる。さらに水中に設置
後もシートの増減が可能で、また取り扱い容易な形状で
あることから仕様変更等の追加要求に容易に対応できる
効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を説明するための斜視図で
ある。
【図2】同じく本発明の一実施形態を説明するための図
である。
【図3】本発明の第2の実施形態を説明するための図で
ある。
【図4】本発明の第3の実施形態を説明するための断面
図である。
【図5】従来のくさび構造型装置を説明するための図で
ある。
【図6】従来の平板多層構造型装置を説明するための図
である。
【図7】各媒質の水に対するρcと反射率を示す図であ
る。
【符号の説明】
10 吸音シート 11 固定ナット 101 導水溝 102 吸水性繊維 103 グリス状物質
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−242529(JP,A) 特開 平4−297865(JP,A) 特開 昭59−222895(JP,A) 特開 平5−50560(JP,A) 特開 昭55−123457(JP,A) 特開 平5−474(JP,A) 実開 昭50−82121(JP,U) 実開 平4−127346(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/16

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数枚のシートを重ね合わせた多層構造
    を成し、水中に設置される平板多層構造型の水中吸音装
    置において、 前記シートの一面或は両面に溝を設け、装置を水中に設
    置した場合に前記溝から各シートの隙間に水を浸透させ
    る構造としたことを特徴とする水中吸音装置。
  2. 【請求項2】 複数枚のシートを重ね合わせた多層構造
    を成し、水中に設置される平板多層構造型の水中吸音装
    置において、 前記シートの一面或は両面に吸水性繊維を設け、装置を
    水中に設置した場合に前記繊維を介して各シートの隙間
    に水を浸透させる構造としたことを特徴とする水中吸音
    装置。_
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の水中吸音装
    置において、 前記溝又は吸水性繊維は、装置を水中に設置した場合に
    前記シートの一面を斜めに横切る位置に設けられること
    を特徴とする水中吸音装置。
  4. 【請求項4】 複数枚のシートを重ね合わせた多層構造
    を成し、水中に設置される平板多層構造型の水中吸音装
    置において、 各シート間にグリス状物質を配設し、空気が入り込む余
    地をなくする構造としたことを特徴とする水中吸音装
    置。
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