JP3060704B2 - 使用済核燃料貯蔵庫 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、例えば原子力発電所
から出される使用済核燃料を貯蔵する乾式の使用済核燃
料貯蔵庫に関する。

【０００２】

【従来の技術】原子力発電所では原子炉に装架された核
燃料集合体を使用年数に応じて順次新品と交換する作業
が行われている。炉から取り出された使用済核燃料は核
分裂物質の崩壊のために、未だに強い放射能と熱を放出
し続ける。このため一般には、発電所内に設けた貯蔵プ
ールに水沈させて冷却している。

【０００３】貯蔵プールに使用済核燃料を水沈させて冷
却する場合、冷却水は放射能に汚染されるため、その処
理に多大なコストが掛かる。このため使用済核燃料の発
熱量が規準以下に減少した時点で可及的速やかに貯蔵プ
ールから引き出し、再処理を行うか、または中間貯蔵を
行うかを選択し、なるべく貯蔵プールに保管している間
の時間を短くし、貯蔵コストの低減をはかっている。

【０００４】本出願人は、この中間貯蔵に適した乾式の
使用済核燃料貯蔵庫を「特願昭６０−３３５７号」によ
り提案した。図３を用いて先に提案した乾式の使用済核
燃料貯蔵庫の構造を簡単に説明する。先に提案した使用
済核燃料貯蔵庫は、例えばコンクリートのような放射線
遮蔽材料からなる隔壁３によって外気から隔離された空
間を地下に構築し、この空間の内の上部にハンドリング
エリア４を、下部に貯蔵セル５を配置する。

【０００５】貯蔵セル５は例えばコンクリート製のブロ
ック体に縦方向に孔を形成して貯蔵ピット５Ａを構成
し、この貯蔵ピット５Ａに図４に示した柱状容器１を収
納し、使用済核燃料２を保管する。ハンドリングエリア
４には天井クレーン６と、自走式装荷機７とを有し、天
井クレーン６と自走式装荷機７を使って柱状容器１をハ
ンドリングエリア４の床面に形成した孔を通じて貯蔵セ
ル５に設けた孔に挿入し、貯蔵セル５に鉛直に立った姿
勢で柱状容器１を格納し保管する。

【０００６】貯蔵セル５に形成された貯蔵ピット５Ａは
上面および下面が開放され、貯蔵ピット５Ａを構成する
孔の内壁面と柱状容器１との間には空気が流通できる程
度の空隙が形成される。従って、この空隙内で柱状容器
１から出される熱によって暖められた空気は上方に移動
し対流が形成され、この対流により柱状容器１は冷却さ
れる。

【０００７】貯蔵セル５の孔から吐き出された暖気はハ
ンドリングエリア４の床下に集められ、ハンドリングエ
リア４の側壁４Ａと隔壁３との間に形成した暖気循環路
８を通じてハンドリングエリア４の上部に移動させる。
ハンドリングエリア４の上部には、例えばヒートパイプ
のような熱交換手段９が設けられ、この熱交換手段９に
暖気の熱を吸収させ暖気を冷却する。熱交換手段９の他
端側は隔壁３を貫通して外気通路１１に露出され、外気
通路１１を通る外気に熱を放出させる。

【０００８】熱交換手段９によって冷却された空気は冷
気循環路１２に案内されて貯蔵セル５の下部に移され、
貯蔵セル５に形成された貯蔵ピット５Ａに吸い込まれ
る。このようにして、先に提案した使用済核燃料貯蔵庫
は隔壁３で隔離された空間内を自然対流によって冷却空
気を循環させ、柱状容器１に格納された使用済核燃料２
を冷却し、放射能を外気に洩らすことなく、温度の上昇
を抑え、使用済核燃料２を安全にしかも低コストで保管
することができるように構成されている。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】先に提案した使用済核
燃料貯蔵庫は隔壁３で囲まれた空間に貯蔵セル５の他に
ハンドリングエリア４をも格納した構造のため、建屋が
大きくなってしまい、建設コストが高くなる欠点があ
る。特に暖気循環路８および冷気循環路１２がハンドリ
ングエリア４の外側に構築されるから、更に建屋の形状
が大きくなってしまう欠点がある。

【００１０】また暖気循環路８および冷気循環路１２が
ハンドリングエリア４の外周に沿って形成されるから循
環経路が長くなり、対流する空気に対して抵抗が大きく
なり冷却効率が低下する欠点もある。この発明の目的
は、建屋の形状を小さくし、建設コストを低減させるこ
とができ、しかも冷却効率を高めることができる構造と
した使用済核燃料貯蔵庫を提供しようとするものであ
る。

【００１１】

【課題を解決するための手段】この発明では、放射線遮
蔽材料で構成した隔壁によって空間を形成し、この空間
内に使用済核燃料を収納した柱状容器を鉛直な姿勢に支
持する貯蔵セルを設け、貯蔵セルの上部に暖気収集室を
形成すると共に、使用済核燃料を収納した柱状容器の外
側に筒状のヒートパイプを被せ、使用済核燃料から発散
される熱を直接ヒートパイプを通じて暖気収集室に集め
る。

【００１２】暖気収集室には隔壁によって囲まれた空間
の内部から外部に連通する吸気通路を形成すると共に、
吸引した外気をヒートパイプで暖め、ヒートパイプで暖
められた暖気を外部に搬出させる排気通路とを設けた構
造としたものである。この発明の構成によれば、使用済
核燃料から発散される熱は柱状容器を介してヒートパイ
プに伝達される。ヒートパイプは柱状容器から受け取っ
た熱を上方に伝達し、熱を暖気収集室に移動させる。ヒ
ートパイプで運ばれた熱は暖気収集室で空気に伝達され
周囲の空気を暖め暖気に変換する。

【００１３】暖気は排気路を通じて隔壁で形成された空
間から外部に排気されると共に、吸気通路を通じて外気
を暖気収集室に吸引する。このようにして暖気収集室に
は順次外気が吸引されるから、この吸引された外気によ
ってヒートパイプが冷却され、柱状容器を効率よく冷却
することができる。このように、この発明によれば暖気
収集室に直接外気を吸引し、ヒートパイプを冷却する構
造としたから、自然対流する空気の経路を短くすること
ができる。よって冷却効率を高めることができる。

【００１４】また隔壁で囲まれる空間には貯蔵セルと暖
気収集室を設けるだけであるから、隔壁で囲まれる空間
の容積を小さくすることができる。この結果、貯蔵庫を
構成する建屋を小さくすることができ、建設コストを低
減することができる利点が得られる。

【００１５】

【実施例】図１にこの発明の一実施例を示す。図１にお
いて図３と対応する部分には同一符号を付して示す。こ
の発明では、放射線遮蔽材料で構成される隔壁３で囲ま
れる空間に貯蔵セル５と、この貯蔵セル５の上部に暖気
収集室１０を設け、貯蔵セル５には従来の技術でも説明
したように、使用済核燃料２を収納した柱状容器１を鉛
直に立った姿勢で支持させる。このためには、例えば図
２に示すようにフレーム２２に孔を形成し、この孔に例
えばステンレス製の外筒２３を嵌着する。外筒２３にガ
イドされて柱状容器１７が鉛直な姿勢を保って支持され
る。

【００１６】ここで、この実施例では使用済核燃料２を
収納した柱状容器１を大形の第２の柱状容器１７に挿入
し、使用済核燃料２を２重に保護すると共に、放熱面積
を大きく得るように構成した場合を示す。第２の柱状容
器１７はハンドリングエリア４の床に形成された孔を通
じて貯蔵セル５に挿入される。貯蔵セル５はフレーム２
２と、このフレーム２２に支持された外筒２３とによっ
て構成される。ハンドリングエリア４の床に形成した孔
には直径の違いによる段部が設けられ、この段部に引っ
掛かって第２の柱状容器１７が吊り下がった状態で鉛直
な姿勢に支持される。第２の柱状容器１７は全長が約７
〜８メートル程度となる。

【００１７】第２の柱状容器１７の外側に筒状のヒート
パイプ２４を被せる。このヒートパイプ２４は直径がわ
ずかに異なる円筒体を上下で連結し、２重構造の円筒体
構造とし、内側の円筒体と外側の円筒体の間の間隙部分
に冷媒を充填した構造とすることができる。ヒートパイ
プ２４は第２の柱状容器１７の全長にわたって被せられ
る。図２に示す１３は第２の柱状容器１７の開口に嵌着
した遮蔽プラグ、２５は外側の遮蔽プラグを示す。外側
の遮蔽プラグ２５を外すことによりヒートパイプ２４を
ハンドリングエリア４に引き上げることができ、修理お
よび交換ができるように構成される。

【００１８】上述したこの発明の構成によれば、使用済
核燃料２を収納した第１の柱状容器１を第２の柱状容器
１７に挿入し、放熱面積を大きくした上に、第２の柱状
容器１７の外側にヒートパイプ２４を装着した構造とし
たから、使用済核燃料２から放出される熱は第２の柱状
容器１７を通じてヒートパイプ２４に有効に伝達され
る。ヒートパイプ２４に伝達された熱は、ヒートパイプ
２４の伝達特性に従って効率よく上部に設けた暖気収集
室１０に向かって伝達され、暖気収集室１０で空気に放
出される。

【００１９】ヒートパイプ２４に接触して暖められた空
気は排気通路２１を通じて外気に排気される。この排気
に伴って吸気通路１２から外気が吸引され、この外気に
よってヒートパイプ２４の上端側が冷却され、冷却され
て液化された冷媒がヒートパイプ２４の下側に還流し、
再び熱によって気化されて上向きに上昇し、熱を上方に
伝達する。この繰り返しによって使用済核燃料２から放
出される熱は効率よく空気に伝達され、外気に放出され
る。

【００２０】

【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば
第２の柱状容器１７と熱結合したヒートパイプ２４から
直接熱を取り出して外気に放出させる構造としたから、
隔壁３で囲まれる空間内に閉ループ状の冷却空気の循環
路を設ける必要がない。よって隔壁３によって囲まれる
空間の容積を小さくすることができ、地下に構築する構
造物を小さくでき、建設コストを安価にすることができ
る。

【００２１】また、この発明では第２の柱状容器１７の
外側にヒートパイプ２４に被せた構造としたから、使用
済核燃料２は第１の柱状容器１と、第２の柱状容器１７
と、ヒートパイプ２４の３重構造で覆われるから、ヒー
トパイプ２４を冷却した空気を外気に排出しても安全性
を確保することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例を示す断面図。

【図２】この発明の要部の構造を説明するための断面
図。

【図３】従来の技術を説明するための断面図。

【図４】使用済核燃料の収納容器の構造を説明するため
の一部を切欠いて内部を示した斜視図。

【符号の説明】

１ 第１の柱状容器 ２ 使用済核燃料 ３ 隔壁 ５ 貯蔵セル １０ 暖気収集室 １２ 吸気通路 １７ 第２の柱状容器 ２１ 排気通路

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 Ａ．外気及びハンドリングエリアから隔
   離されるように放射線遮蔽材料で隔壁が構成された放射
   線遮蔽室と、 Ｂ．上記放射線遮蔽室内の下部に配置された貯蔵セル
   と、 Ｃ．２重筒状に構成され、内部に冷媒が充填されたヒー
   トパイプとを備え、 Ｄ．上記貯蔵セルは、使用済核燃料を格納した第１柱状
   容器を収容する第２柱状容器を鉛直な姿勢で支持保管す
   るものであり、 Ｅ．上記放射線遮蔽材料の天井隔壁に、上記貯蔵セルと
   対向して複数の支持孔が貫通形成され、その各支持孔に
   上記貯蔵セルに支持保管された上記第２柱状容器の上端
   部が挿入保持され、 Ｆ．上記ヒートパイプは上記貯蔵セルに支持保管された
   上記第２柱状容器の外側にこれと接近して同軸心的に設
   けられ、そのヒートパイプの上端は上記天井隔壁の内面
   の近くに位置し、下端は上記第２柱状容器の下端より下
   に位置し、 Ｇ．上記貯蔵セルの上面と上記天井隔壁の内面との間に
   間隙が設けられ、これら両面と、上記放射線遮蔽室の外
   周隔壁の内面とにより、ほぼ囲まれて暖気収集室が構成
   され、 Ｈ．上記放射線遮蔽室には、外部から外気を吸引して上
   記暖気収集室へ供給する吸気通路が設けられ、 Ｉ．又上記放射線遮蔽室には上記暖気収集室から外部へ
   暖気を排出する排気通路が設けられていることを特徴と
   する使用済核燃料貯蔵庫。