JP3051645B2 - 吸着剤の製造方法および吸着剤 - Google Patents

吸着剤の製造方法および吸着剤

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JP3051645B2 JP6286243A JP28624394A JP3051645B2 JP 3051645 B2 JP3051645 B2 JP 3051645B2 JP 6286243 A JP6286243 A JP 6286243A JP 28624394 A JP28624394 A JP 28624394A JP 3051645 B2 JP3051645 B2 JP 3051645B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粘土層間架橋体および
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】粘土の二次元ケイ酸塩層は、厚さが分子
レベルであり、適度に剛直であるので、水に良く膨潤す
る粘土を使用し、ケイ酸塩層間に無機陽イオン等の支柱
を立て、この支柱の間に細孔(マイクロポア)を形成
し、粘土層間架橋体を作成している。具体的には、粘土
層間に多核の無機イオンを導入しており、まず前駆体と
なる多核金属水酸化物イオンを粘土層間にイオン交換に
よって挿入し、次いで余分な前駆体イオンを水洗によっ
て除去し、層状ケイ酸塩の間に取り込まれた前駆体イオ
ンを加熱によって脱水させ、酸化物支柱を形成する。
【0003】例えば、アルミナ架橋体においては、多核
水酸化アルミニウムイオン〔Al1 3 4 (O
H)2 4 7 + を架橋前駆体イオンとして使用し、これ
を粘土の水分散液に加え、イオン交換を行う。この混合
物を加熱して前駆体イオンを脱水させると、層状ケイ酸
塩の底面間隔が約17オングストロームのアルミナ架橋
多孔体が得られる。層状ケイ酸塩の厚さは約9.6オン
グストロームであるから、アルミナ支柱の高さは約7〜
8オングストロームである。ジルコニア支柱を有する粘
土層間架橋体についても研究されている。
【0004】この他、正に荷電したCr2 3 やTiO
2 のようなゾル粒子を、層状ケイ酸塩の間に直接イオン
交換によって挿入することも知られており、これによっ
て、Al2 3 等からなる支柱を形成したときよりも、
層間距離が大きな架橋体を得ることができる。また、こ
のような粘土層間架橋体によって、例えば、窒素や1,
3,5─トリメチルベンゼン等の有機化合物を吸着しう
ることが知られており、このために新たなタイプの吸着
剤ないし分子ふるいとして注目されている(文献名「化
学総説」No.21、日本化学会、第39頁「層状ケイ
酸塩の層間架橋と細孔構造の設計」山中昭司)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、粘土層間
架橋体を、各種の吸着剤として、特に各種水処理や各種
排ガス処理に適用するために、研究を続けてきた。例え
ば、上水や家庭浄水では、トリハロメタン類を除去する
ことが必要であり、下水、産業排水処理分野では有機ハ
ロゲン系溶剤(トリクロロエチレン等や農薬類(シマジ
ン等)を除去する技術が望まれている。しかし、これら
の有機化合物類を効果的に低コストで吸着処理できるよ
うにするためには、特に多量の物質を高い効率で吸着で
きる粘土層間架橋体を提供する必要がある。
【0006】しかも、この観点から見て、排水等の中に
は種々の有機物質が存在しており、その中には無害なも
のや、有害性が少ないものも多い。しかし、粘土層間架
橋体は、これまで主として細孔の寸法の点については注
目され、研究されてきたが、ほぼ同様の寸法の有機化合
物であっても、上記のように高度に有害なものもあれ
ば、無害に近いものもあるので、特定の有害な有機化合
物を選択的に吸着することが望まれる。この点は、有害
な無機化合物を処理したい場合も、基本的に同様であ
る。
【0007】本発明の課題は、粘土層間架橋体におい
て、各種物質の吸着特性に、単なる物質の寸法によるふ
るい以外の選択性を付与し、または特定物質の吸着効率
を向上させうるようにすることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】特定物質に対する選択的
吸着性能を備えた粘土層間架橋体からなる吸着剤を製造
する方法であって、少なくとも層状ケイ酸塩、支柱を形
成するための支柱形成材料および前記特定物質を混合お
よび攪拌して混合物を得、この混合物を密閉容器中で加
圧状態で熱処理することによって、粘土層間架橋体を製
造することを特徴とする。
【0009】また、本発明は、層状ケイ酸塩が支柱によ
って架橋されており、隣り合う支柱間に細孔が形成され
ている粘土層間架橋体からなる吸着剤であって、前記の
製造方法によって得られた吸着剤に係るものである。
【0010】
【作用】本発明者は、各種の粘土層間架橋体によって各
種有機物質を吸着する研究を続けていたが、この過程
で、次の事実を発見した。
【0011】即ち、本発明者は、粘土層間架橋体を合成
するのに際して、まず1,1,1─トリクロロエタンと
モンモリロナイト等の粘土材料とを混合、攪拌し、次い
でTiO2 ゾルを添加して更に混合および攪拌し、オー
トクレーブ内に混合物を入れて加圧状態で熱処理した。
こうして得られた反応物を冷却し、水洗し、乾燥し、粒
状の粘土層間架橋体を得た。そして、この粘土層間架橋
体を使用して1,1,1─トリクロロエタンの吸着実験
を行ったところ、驚くべきことに、この吸着特性が予想
外に急上昇していることが判明した。
【0012】即ち、1,1,1─トリクロロエタンを最
初の合成段階で粘土材料に対して混合しておき、その後
密閉容器内で熱合成すると、驚くべきことに、細孔の壁
面に1,1,1─トリクロロエタンに親和性の記憶部が
形成されており、これによって細孔に1,1,1─トリ
クロロエタンに対する選択性が付与されていたことを確
認し、本発明を完成した。
【0013】この過程で、細孔の壁面に1,1,1─ト
リクロロエタンに親和性の置換基が付着しており、この
置換基によって1,1,1─トリクロロエタンに対する
選択性が付与されていたものである。
【0014】更に、本発明者は、各種の化合物群につい
て同様の効果を確認し、上記の化合物の記憶という考え
方が広く汎用性を有していることを確認した。
【0015】なお、粘土材料を混合する際に有機物を添
加することによって、細孔の寸法を制御するという思想
は、知られている。例えば、ポリビニルアルコールを粘
土材料に添加してアルミナ架橋を行ったり、オクタデシ
ルトリメチルアンモニウムイオンを添加してゾル粒子に
よる層間架橋体を合成する方法がある。しかし、これら
の製造方法では、比較的に融点の高い固体の有機化合物
を粘土材料と混合して、支柱を形成する加熱段階で細孔
の形状を有機化合物によって制御し、合成の後に十分な
高温で粘土層間架橋体を加熱して、ポリビニルアルコー
ル等を熱分解させている。むろん、これらの有機化合物
を吸着するわけではありえない。従って、これは、ゼオ
ライトにおける有機テンプレート剤(鋳型剤)と同様の
思想でしかない(「層状ケイ酸塩の層間架橋と細孔構造
の設計」前出)。
【0016】
【実施例】最初に、粘土層間架橋体について、図面を参
照しつつ説明する。図1(a)は、粘土層間架橋体の構
成を模式的に示す斜視図であり、図1(b)は、粘土層
間架橋体の一部分の断面を模式的に示す断面図である。
層状ケイ酸塩1は、所定間隔を置いて、層状に積み重な
っている。各層状ケイ酸塩の形状は、通常は図1(b)
に示すように若干湾曲している。隣り合う層状ケイ酸塩
1の間に支柱2が挿入され、形成されており、層状ケイ
酸塩1と各支柱2の間にそれぞれ細孔3が形成されてい
る。
【0017】本発明の吸着剤は、特に有機物質の吸着、
更には有害有機物質の吸着に対してきわめて効果的であ
るが、無機化合物や気体の吸着に対しても有用に使用す
ることができる。こうした有機物質としては、次のもの
を例示することができる。
【0018】まず、分子径5〜6オングストロームの有
害有機化合物としては、トリクロロメタン、トリブロモ
メタン等のジハロメタン、トリハロメタンを例示するこ
とができる。分子径6〜8オングストロームの有害有機
化合物としては、有機ハロゲン系溶剤類ないしフロン類
(トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロ
ロエチレン、ジクロロエタン、トリクロロフルオロエタ
ン、ジクロロジフルオロエタン)を例示することができ
る。また、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系
有機溶剤を例示することができる。
【0019】また、分子径10〜20オングストローム
の有害有機化合物としては、農薬等の生物除去剤(ダイ
オキシン、シマジン、チウラム、ダイアノジン等)を例
示することができる。更に、分子径数十オングストロー
ム以上の有機物質としては、蛋白質およびウイルスを例
示することができる。
【0020】更に、前記の混合物を加熱処理すれば、層
状ケイ酸塩間に前記記憶部がある程度形成されるが、特
に前記混合物を密閉容器中で加圧状態で熱処理すると、
この記憶部がきわめて強固に形成され、保持されるらし
く、吸着効率が特に飛躍的に向上することがわかった。
【0021】また、吸着の目標である前記特定物質が、
常温で液体の有機化合物であり、混合物を加熱処理した
後に、粘土層間架橋体を乾燥することによって有機化合
物を蒸発させることが、吸着効率の向上という観点から
特に好ましい。即ち、目的の前記特定物質が常温で固体
の有機化合物である場合には、粘土層間架橋体を合成し
た後に、これを加熱して固体の有機化合物を熱分解する
必要があるが、固体の有機化合物を熱分解する温度で
は、いったん形成された記憶部が変質したり、失われ
て、吸着の選択性が劣化する傾向があった。
【0022】常温で液状の有機化合物を蒸発させる場合
には、このような記憶部の劣化を防止できるので、一層
選択性が向上するのである。この観点から、乾燥温度は
200℃以下とすることが好ましく、150℃以下とす
ることが一層好ましい。
【0023】常温で液状の有機化合物のうち、特に好ま
しい特定物質は、トリハロメタン、有機ハロゲン系溶剤
類、フロン類、芳香族系有機溶剤である。本発明によれ
ば、例えば、前記したフロン系化合物の中でも、1,
1,1─トリクロロエタンとテトラクロロエチレンと
を、きわめて高い比率で選択的に吸着することができる
のであり、驚くべき成果であると言える。
【0024】層状ケイ酸塩としては、特に制限はない
が、スメクタイト、バーミキュライト、マイカをいずれ
も使用することができる。特にスメクタイトは、普通
は、例えばカルサイトやドロマイト等で汚染された形で
産出しており、特にベントナイトと呼ばれるコロイド粘
土が代表的である。このような自然に産出する粘土か
ら、自然沈降法や遠心分離法を採用することによって、
モンモリロナイト等の目的の層状ケイ酸塩を得ることが
できる。
【0025】スメクタイトとしては、更にパイロフェラ
イト、タルク、モンモリロナイト、ヘクトライト、パイ
デライト、サボナイト等を例示できる。また、スメクタ
イトの間にマイカ層が挿入された混合層鉱物からなる粘
土(レクトライト等)や、四ケイ素雲母のような合成フ
ッ素雲母を使用できる。
【0026】粘土層間架橋体を製造する際には、本発明
では、粘土材料を水等の分散液中に分散し、この分散液
に前記特定物質を添加し、攪拌し、次いでこれに架橋前
駆体イオンを添加することができる。また、前記特定物
質が常温で液状の有機化合物である場合には、この有機
化合物中に粘土材料を分散させ、この分散液に前記特定
物質を添加し、攪拌し、次いでこれに架橋前駆体イオン
を添加することができる。
【0027】このように、吸着の目標である前記特定物
質を、粘土の分散媒体として使用することによって、層
状ケイ酸塩の細孔全体に前記記憶部を一層明瞭に形成す
ることができ、吸着効率が一層向上する。
【0028】また、前記特定物質、粘土材料および架橋
前駆体イオンを同時に混合し、この混合物を攪拌するこ
ともできる。
【0029】この支柱のうち、酸化物支柱としては、A
2 3 、Ga2 3 、ZrO2 、Fe2 3 、Cr2
3 、TiO2 、ZrO2 −Al2 3 、Bi23
2 5 、SiO2 、Al2 3 −SiO2 を例示する
ことができる。また、Cr2 3 、TiO2 、TiO2
−SiO2 、Fe2 3 −TiO2 、イモゴライトのよ
うなゾル粒子を層状ケイ酸塩間に挿入することができ
る。
【0030】層状ケイ酸塩の平均間隔は、好ましくは、
6〜200オングストロームの間で変更することができ
るが、これは吸着すべき物質の分子の寸法に応じて、変
化させることができる。しかし、一般的には、8〜10
0オングストロームとするのが更に好ましい。層状ケイ
酸塩の平均間隔は、粉末X線回折測定法によって、直接
測定することができる。
【0031】本発明の粘土層間架橋体によれば、特定の
化合物を選択的に吸着することができるが、特に有害有
機物質の吸着量を、従来の粘土層間架橋体よりも顕著に
増大させることができる。そこで、粘土層間架橋体に有
害有機物質を捕捉するのに際して、支柱を、この有機物
質の分解を触媒する材料によって形成することが好まし
い。例えば、加熱により有機化合物の分解を触媒する酸
化物材料や貴金属を担持した酸化物材料によって形成し
てもよいし、あるいは、光の照射時にこの有機物質の分
解を触媒する半導体材料によって形成してもよい。支柱
を、この有機物質の分解を触媒する材料によって形成す
ることで、有害有機物質を選択的に吸着しつつ、しかも
同時に分解する選択的分解装置および選択的分解方法を
提供することができる。
【0032】即ち、半導体触媒を使用し、これに光を照
射することによって有機物質を分解できることは、知ら
れている。そこで、粘土層間架橋体の支柱として、この
ような触媒活性を有する半導体材料を使用すると共に、
吸着が終了した後に、あるいは吸着と同時進行で、粘土
層間架橋体に対して光を照射することによって、粘土層
間架橋体内で有害有機物質を分解することが可能になる
ことを確認した。この分解によって、有害有機物質は二
酸化炭素等の気体に分解され、粘土層間架橋体から除去
されるので、このまま粘土層間架橋体を吸着剤として再
使用することができる。
【0033】こうした半導体材料としては、ルチルTi
2 、アナターゼTiO 2 、CdS、SrTiO3 、Z
nO、WO3 、α─Fe2 3 を例示することができ
る。また、半導体材料からなる支柱の表面に、白金、ロ
ジウム、パラジウムといった貴金属触媒を担持させるこ
とも可能である。
【0034】これによって分解可能な有害有機物質とし
ては、ジハロメタン、トリハロメタン、有機ハロゲン系
溶剤類、フロン類、芳香族系有機溶剤、クロロフェノー
ル類、有機リン系農薬、ポリ塩化ビフェニールを例示す
ることができる。このうち、前記した理由から、常温で
液体の有機化合物であるトリハロメタン、有機ハロゲン
系溶剤類、フロン類、芳香族系有機溶剤、クロロフェノ
ール類が特に好ましい特定物質である。
【0035】また、人工光源も使用できるが、水処理の
場合には太陽光を使用することもできる。
【0036】また、粘土層間架橋体に直接光を照射する
場合には、層状ケイ酸塩として、透明度が高いものを使
用することが好ましい。こうした層状ケイ酸塩として
は、スメクタイト類、バーミキュライトを例示すること
ができる。また、粘土層間架橋体の寸法が大きいと、光
が粘土層間架橋体の内部まで透過しにくく、内部に挿入
された有害有機物質が残留し易いので、この観点から
は、粘土層間架橋体の粒径は50μm以下とすることが
好ましい。
【0037】また、粘土層間架橋体を水等の分散媒体の
中に収容して放置し、その内部に吸着された有害有機物
質を分散媒体中へと放出させることができる。この場合
には、この分散媒体中に放出された有害有機物質を無害
化処理する必要がある。この処理方法としては、前記半
導体触媒を分散媒体中へと投入して光を照射したり、分
散媒体全体を加熱して有害有機物質を熱分解させる方法
がある。
【0038】更に、本発明の粘土層間架橋体によれば、
各種の有機物質を選択的に吸着させることができる。そ
こで、目的物質、特に有機物質または有害物質の存在を
検出する検知管内に充填する充填剤として、本発明の粘
土層間架橋体を使用することによって、実用的な高精度
の検知管を提供できる。
【0039】具体的には、ガラス管等の透明部材中に、
本発明の吸着剤を充填し、この吸着剤に、目的とする物
質と反応して発色する検知剤をしみ込ませる。検知管と
しては、シリンダー式の真空方式の検知管、シリンダー
式の送入方式の検知管、蛇腹形の検知管がある。また、
検知方式としては、目的物質を含有する分散液または溶
液中に気体を通すか、またはこれを加熱することによっ
て、液中の目的物質を揮発させ、揮発した目的物質を検
知することができる。また、目的物質を含有する分散液
または溶液を検知管内に注入して、検知できる。
【0040】この目的物質が一酸化炭素である場合に
は、検知剤として硫酸パラジウムまたはモリブデン酸ア
ンモニウムを使用できる。目的物質がアンモニアである
場合には、検知剤として硫酸変性のチモールブルーを使
用できる。目的物質が塩素である場合には、検知剤とし
てo−トリジン硫酸塩を使用できる。目的物質が塩化水
素である場合には、検知剤としてHgCl2 とメチルオ
レンジとの混合物を使用できる。目的物質が硫化水素で
ある場合には、検知剤としてPb(OAc)2 またはP
b(NO3 2 を使用できる。更に、有機物質について
は、次の組み合わせを例示できる。
【0041】
【表1】
【0042】以下、更に具体的な実験結果について述べ
る。以下の各製造例に従って、各粘土層間架橋体を製造
した。
【0043】(製造例1)1,1,1─トリクロロエタ
ン10リットルに、Naモンモリロナイト〔化学組成:
(Na0.350.01Ca0.02)(Si3.89Al0.11)(A
1.60Mg0.32Fe0.08)O10(OH)2nH2 O〕10
0グラムを添加、混合し、混合物を1時間攪拌した。こ
の中に、TiO2 ゾル130グラムを添加し、混合し、
混合物を1時間攪拌した。こうして得られた混合物を、
オートクレーブ中に入れ、180℃で10時間熱処理し
た。この内容物を冷却した後、遠心分離し、得られた固
体を水洗し、150℃で10時間乾燥させ、粉砕した。
【0044】(製造例2)1,1,1─トリクロロエタ
ン10リットルに、Mgバーミキュライト〔化学組成:
(Mg0.33)(Mg2.91Al0.01Fe0.02)(Si3.34
Al0.66)O10(OH)2nH2 O〕100グラムを添
加、混合し、混合物を1時間攪拌した。この中に、Ti
2 ゾル130グラムを添加し、混合し、混合物を1時
間攪拌した。こうして得られた混合物を、オートクレー
ブ中に入れ、180℃で10時間熱処理した。この内容
物を冷却した後、遠心分離し、得られた固体を水洗し、
150℃で10時間乾燥させ、粉砕した。
【0045】(製造例3)水10リットルに、製造例1
と同じNaモンモリロナイト100グラムを添加、混合
し、混合物を1時間攪拌した。この中に、TiO2 ゾル
130グラムを添加し、混合し、混合物を1時間攪拌し
た。こうして得られた混合物を、オートクレーブ中に入
れ、180℃で10時間熱処理した。この内容物を冷却
した後、遠心分離し、得られた固体を水洗し、150℃
で10時間乾燥させ、粉砕した。
【0046】(製造例4)水10リットルに、製造例1
と同じNaモンモリロナイト100グラムを添加、混合
し、混合物を1時間攪拌した。この中に、TiO2 ゾル
130グラムを添加し、混合し、混合物を1時間攪拌し
た。この混合物に対して、更に有機カチオン剤(塩化オ
クタデシルトリメチルアンモニウム)70グラムを添
加、混合し、混合物を1時間攪拌した。こうして得られ
た混合物を、オートクレーブ中に入れ、180℃で10
時間熱処理した。この内容物を冷却した後、遠心分離
し、得られた固体を水洗し、150℃で10時間乾燥さ
せ、粉砕した。
【0047】(実験1:吸着効率の測定)上記で製造し
た各粘土層間架橋体について、特定物質の吸着効率を測
定した。即ち、濃度10ppmの1,1,1−トリクロ
ロエタン水溶液を、前記ガラス管の充填剤層に通過させ
た。この供給を開始してから1分経過後に、充填剤層通
過後の水溶液(処理水)中の1,1,1−トリクロロエ
タンの濃度Cを、ヘッドスペース式ガスクロマトグラフ
法によって測定し、次式によって吸着効率(%)を求め
た。吸着効率=〔1−処理水における濃度C(ppm)
/10ppm〕×100%。これらの測定結果を表2に
示す。
【0048】
【表2】
【0049】表2からわかるように、本発明に従って細
孔内に記憶部を形成した、製造例1、2による粘土層間
架橋体を使用した場合(実験番号1A、1B)には、
1,1,1−トリクロロエタンの吸着効率が99%以上
と顕著に向上していた。一方、たとえオートクレーブ中
で熱処理した場合であっても、特定物質を含有させてい
ない製造例3の粘土層間架橋体を使用した場合(実験番
号1C)では、吸着効率は75%程度に減少していた。
【0050】更に、製造例4では、有機化合物として細
孔の制御のための有機カチオン剤を混合し、かつオート
クレーブ中で水熱処理したが、吸着効率の方は製造例3
と比較しても、かえって低下している。このように、細
孔形状の制御剤を添加しても、吸着効率はかえって低下
することが分かる。
【0051】(実験2:吸着の選択性の試験)内径30
mm×長さ100mmのガラス管内に、上記した各製造
例の粘土層間架橋体を吸着剤として充填し、吸着剤層を
形成した。1,1,1−トリクロロエタン100ppm
およびテトラクロロエチレン100ppmを含有する水
溶液を供給試験水とし、上記したガラス管内の吸着剤層
に流通させた。そして、吸着剤による吸着が飽和状態に
達するまで(即ち、1,1,1−トリクロロエタンおよ
びテトラクロロエチレンの濃度が、ガラス管の入口と出
口とで等しくなるまで)、試験水を流通させた。
【0052】次いで、試験水の流通を停止し、吸着剤層
から吸着剤を取り出し、吸着剤の水分を除去した後、吸
着剤をガラス容器に移し、加熱することによって、吸着
剤に吸着している吸着物質を脱離させた。脱離したガス
の一部を試験用ガスとして採取し、試験用ガス中の1,
1,1−トリクロロエタンおよびテトラクロロエチレン
の濃度をガスクロマトグラフ法によって測定した。試験
用ガス中の1,1,1−トリクロロエタンとテトラトリ
クロロエチレンとの濃度の比率によって、各吸着剤の選
択性を評価した。この結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】表3からわかるように、製造例1、2で製
造した本発明の粘土層間架橋体によれば、1,1,1−
トリクロロエタンに対する記憶部が細孔内に形成されて
おり、これに親和性を有する置換基が細孔壁面に形成さ
れているので、1,1,1−トリクロロエタンの選択性
が驚くべく高い。これに対して、製造例3、4の粘土層
間架橋体を使用すると、ほとんど選択性は見られないこ
とが分かる。これは、1,1,1−トリクロロエタンと
テトラクロロエチレンとの分子径や分子の形状が、ほぼ
同じだからであろうと考えられる。
【0055】(実験3:半導体触媒を利用した光分解機
能の向上)前記した各製造例の粘土層間架橋体および製
造例1に記載したNaモンモリロナイトについて、図2
に模式的に示す測定装置を使用して、有機化合物の吸着
および半導体触媒を利用した光分解の効率を測定した。
【0056】即ち、各粘土層間架橋体を、内径30m
m、長さ100mmの透明石英管8内に充填して充填剤
層7を形成し、透明石英管8を所定の枠に保持した。透
明石英管8と平行にブラックライト6を配置した。ブラ
ックライトを点灯しないままで、濃度5.00ppmの
1,1,1−トリクロロエタン水溶液を、入口9から供
給し、透明石英管8の充填剤層7に通過させ、出口10
から排出させた。そして、充填剤による1,1,1−ト
リクロロエタンの吸着が飽和状態に達するまで、即ち、
入口9における水溶液の濃度と出口10における濃度と
が等しくなるまで、通水した。
【0057】この後、ブラックライトを点灯し、充填剤
層7へと光を照射し続け、出口10での濃度を測定し
た。この出口濃度も表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】表4からわかるように、有機化合物を吸着
しながら光分解する装置においても、やはり本発明の範
囲内の粘土層間架橋体を充填剤として使用すれば(実験
番号3A、3B)、出口濃度を継続的に顕著に減少させ
ることができた。実験番号3Eでは、層状ケイ酸塩の間
隔が小さいことから、吸着が起こらないし、半導体支柱
も使用していないので、光を照射しても光分解の効率は
非常に低い。実験番号3C、3Dでは、半導体支柱を使
用しているので、光触媒分解は生じているが、本発明例
と比較すると、光分解の効率が低い。
【0060】(実験4:検知管による有機化合物の検出
機能の向上)表5に示す各吸着剤を検知管の充填剤とし
て使用し、図3に模式的に示す検知装置によって、その
検出性能を検査した。
【0061】即ち、内径30mm、長さ100mmのガ
ラス管11内に、表5に示す各試料を充填して充填剤層
12を形成した。1,1,1−トリクロロエタン水溶液
14を、散気筒13内に採取した。この水溶液は、蒸留
水で希釈することによって、表5に示す各濃度となるよ
うに調整した。散気筒13に対して、即座に検知管11
を挿入し、エアポンプ15を作動させて空気を供給し、
気化した1,1,1−トリクロロエタンを検知管11に
導入した。水溶液14内の1,1,1−トリクロロエタ
ンがすべて気化するまで、10分間程度空気の供給を続
けた。検知管11の発色した部分の長さから、検量線方
式によって濃度に換算した。
【0062】
【表5】
【0063】表5からわかるように、有機化合物を吸着
して測定する検知管においても、やはり本発明の粘土層
間架橋体を充填剤として使用すれば(実験番号4A〜4
D)、吸着量が多く、充填剤層中に目的の化合物が浸透
し易いので、正確に測定をすることができる。即ち、試
験水の濃度が0.10ppm、0.50ppmであって
も、ほぼ良好に検出が可能であるし、1.00または
5.00ppmの濃度の試験水を使用した場合にも、±
0.1ppmの誤差で測定が可能であった。
【0064】従来検知管用途で多用されているシリカゲ
ルを充填剤として使用したが(実験番号4E〜4H)、
試験水の濃度が低い場合(0.10ppm、0.50p
pm)には、測定不能であり、試験水の濃度が1.00
または5.00ppmの場合には、指示濃度の誤差は±
0.5ppmであった。
【0065】また、本発明外の製造例4の粘土層間架橋
体を使用した場合には、やはり本発明例よりも測定誤差
が大きい。このように、本発明の粘土層間架橋体は、特
定の化合物に対する検出感度がきわめて良好な吸着剤で
ある。
【0066】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、粘
土層間架橋体において、特定の物質、特に有機物質の吸
着特性を、顕著に向上させることができ、かつ特定物質
のみを選択的に吸着することができる。従って、特定物
質を多量に吸着する吸着剤、特定物質を選択的に吸着す
る吸着剤、特定物質を吸着して分解する吸着剤、特定物
質の検出剤、特定物質以外の成分のみを得るための分子
ふるいまたはフィルターとして、きわめて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、粘土層間架橋体の構造を模式的に示
す斜視図であり、(b)は、粘土層間架橋体の構造を模
式的に示す断面図である。
【図2】半導体触媒を利用した有機化合物の光分解の実
験装置を模式的に示す模式図である。
【図3】検知管の性能を検査するための実験装置を模式
的に示す模式図である。
【符号の説明】
1 層状ケイ酸塩 2 支柱 3 細孔 6
ブラックライト 7、12 充填剤層 8 透明石
英管 11 検知管 13散気筒 14 水溶液
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−16386(JP,A) 特開 平4−254408(JP,A) 特開 平3−257011(JP,A) 特開 平5−139719(JP,A) 特開 平5−170429(JP,A) 特開 平1−47445(JP,A) 特開 平6−154591(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 20/12 C01B 33/40

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】特定物質に対する選択的吸着性能を備えた
    粘土層間架橋体からなる吸着剤を製造する方法であっ
    て、少なくとも層状ケイ酸塩、支柱を形成するための支
    柱形成材料および前記特定物質を混合および攪拌して混
    合物を得、この混合物を密閉容器中で加圧状態で熱処理
    することによって、前記粘土層間架橋体を製造すること
    を特徴とする、吸着剤の製造方法。
  2. 【請求項2】前記特定物質が常温で液体の有機化合物で
    あり、前記混合物を加熱処理した後に、前記粘土層間架
    橋体を乾燥することによって前記有機化合物を蒸発させ
    ることを特徴とする、請求項1記載の吸着剤の製造方
    法。
  3. 【請求項3】前記特定物質中に前記層状ケイ酸塩および
    前記支柱形成材料を分散させることを特徴とする、請求
    項1または2記載の吸着剤の製造方法。
  4. 【請求項4】層状ケイ酸塩が支柱によって架橋されてお
    り、隣り合う支柱間に細孔が形成されている粘土層間架
    橋体からなる吸着剤であって、請求項1−3のいずれか
    一つの請求項に記載の製造方法によって得られた吸着
    剤。
  5. 【請求項5】前記細孔の壁面に前記特定物質に親和性の
    置換基が付着しており、この置換基によって前記特定物
    質に対する選択性が付与されていることを特徴とする、
    請求項4記載の吸着剤。
  6. 【請求項6】前記細孔に有機物質を捕捉するための粘土
    層間架橋体であって、前記支柱が、光の照射時にこの有
    機物質の分解を触媒する半導体材料からなることを特徴
    とする、請求項4または5記載の吸着剤。
  7. 【請求項7】前記特定物質の存在を検出する検知管内に
    充填する充填剤であることを特徴とする、請求項4また
    は5記載の吸着剤。
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