JP3044049U - 糞便採取具及びそのドロッパー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 便潜血検査時における糞便溶液の作製から滴
下までを容易、正確かつ安全に行うことができる糞便採
取具を提供すること。 【解決手段】 本考案の糞便採取具による糞便溶液の滴
下は、糞便溶液を作製した後、糞便容液保持容器３の底
部にドロッパーを嵌合させ、糞便溶液保持容器３を圧迫
することにより行われる。本考案の糞便採取具は糞便溶
液保持容器３にスリット４が設けられているため、糞便
溶液保持容器３の側面は変形し易く圧迫が容易であり、
所定量の糞便溶液をスムーズに滴下することができる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【考案の属する技術分野】

本発明は、便潜血検査時に糞便溶液の滴下を容易かつ安全に行うことができる 糞便採取具及び糞便溶液滴下用ドロッパーに関する。 本発明の糞便採取具により、糞便採取後から糞便溶液の滴下を完了するまでの 間に不意に糞便溶液が漏れる、飛散する等の汚染の心配をすることがなく操作を 行うことができる。

【０００２】

【従来の技術】

大腸癌検診等ではしばしば便潜血検査が行われる。便潜血検査を行うにあたっ ては、検体となる糞便を過不足なく採取する必要がある。糞便を採取する方法と しては、ロ紙を用いる方法が先行していたが、便を塗るという作業を避けること ができないため、汚い、臭う等の理由で受検者及び検査担当者から敬遠されてい た。近年は、その点を改善した採取棒を用いる方法が主流の傾向にある。採取棒 を用いる糞便の採取はロ紙を用いる方法よりも糞便を一定量採取することが難し く、採取棒先端部を紙で拭いたり、スクレーパーに通す等の作業を行うことによ って余分な糞便を取り除かなければならなかった。

【０００３】 特開平６−１４８１７７号公報には、糞便採取棒を抽出溶液保持容器に嵌合さ せ、糞便溶液を作製し便潜血検査を行うことができる糞便採取具が記載されてい る。さらに、該公報には、前記抽出溶液保持容器の開放されている端に薄膜を有 した軟質材料により作成されたスクレーパーが配設されていること及びドロッパ ーを用いて前記抽出溶液保持容器の底面に穴を開け糞便溶液の滴下を行うことが できることも記載されている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、従来の容器では測定に用いる糞便溶液をドロッパーを用いて滴 下する際、抽出溶液保持容器の側面が固いため滴下に大きな力を要していた。こ れに起因し、力加減の調節が難しく糞便溶液を所定量滴下することができない場 合があった。

【０００５】 また、糞便採取棒を抽出溶液保持容器に嵌合させる際に、スクレーパーが堅密 すぎることや、糞便採取棒とスクレーパーとの間の空気が圧縮されること等によ り嵌合が完全とならず操作時に漏れたりする等の不安があった。

【０００６】 さらに、糞便溶液を滴下する際に用いる従来のドロッパーを抽出溶液保持容器 の底面に穴を開けるため抽出溶液保持容器に嵌合する際、抽出溶液保持容器とド ロッパーとの間の空気が圧縮され、前記と同様に嵌合が不完全になり、糞便溶液 滴下時にドロッパーが外れたり、所定量の滴下ができない場合があった。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本願考案者らは、鋭意努力した結果、所定量の滴下を容易かつ正確に行うこと ができ、糞便溶液が不意に漏れる等のおそれがなく安全に作業を行うことができ る本考案を完成するに至った。

【０００８】 本考案の糞便採取具の一つは、吸水性を有する繊維束でできている糞便採取棒 と、糞便採取棒支持部材と、側面にスリットを有する抽出溶液保持容器とからな る糞便採取具である。

【０００９】 また、本考案の別の態様の糞便採取具は、吸水性を有する繊維束でできている 糞便採取棒と、糞便採取棒支持部材と、薄膜を有するスクレーパーと、抽出溶液 保持容器とからなり、前記糞便採取棒を前記抽出溶液保持容器に嵌合させる際に 前記スクレーパーと前記糞便採取棒支持部材との間の空気を逃がすことができる 孔を前記抽出溶液保持容器に設けた糞便採取具である。

【００１０】 さらに、本考案のドロッパーは、糞便溶液を測定に供するために抽出溶液保持 容器に穴をあけ糞便溶液を滴下するドロッパーであり、該ドロッパーの内壁面に は溝が設けてある。該溝により、ドロッパーを抽出溶液保持容器に嵌合させる際 にドロッパーと抽出溶液保持容器との間の空気が外に逃げることができるため、 抽出溶液保持容器とドロッパーとの嵌合を完全に行うことができる。

【００１１】 本考案の糞便採取具を用いて検査を行う場合には、まず、糞便を糞便採取棒の 繊維間に浸み込ませることにより糞便の採取が行われる。糞便採取棒は吸水性の 繊維束よりなっており、側面からの液漏れを防ぐために先端部を除いて熱収縮性 樹脂でコーティングされている。糞便を採取する際、糞便は糞便採取棒の繊維間 にしみこんで保持されるため、該採取棒の先端部からのみ糞便が繊維間にしみこ めばよい。よって、糞便採取棒の先端部は任意の形状を採用できる。 また、糞便が糞便採取棒にしみこむ際は、繊維束がロ過材として作用するため 、測定を阻害する検体中の固形物、粘稠物質はここで区別され、繊維間にしみこ むことはなく、測定対象となる糞便のみが糞便採取棒の繊維間に保持される。

【００１２】 次に、抽出溶液保持容器に糞便採取棒を挿入し、糞便抽出溶液中に一定時間放 置し、糞便を抽出溶液中に十分溶解させる。 作製した糞便溶液を測定に供するためには、内壁に溝を設けたドロッパーを抽 出溶液保持容器の底面に嵌合させ、抽出溶液保持容器の側壁を圧迫し、ドロッパ ーより糞便溶液を強制的に滴下させればよい。

【００１３】 前記ドロッパーを抽出溶液保持容器に嵌合させる際、その間の空気はドロッパ ーの内壁に設けた溝を通り、逃げるため嵌合を完全にすることができる。

【００１４】 また、糞便溶液を滴下する際に抽出溶液保持容器の側面にスリットが設けられ ているため側壁が変形し易く、圧迫が容易であり、正確に所定量の滴下を行うこ とができる。 側面のスリットは、その深さが０．１〜０．５ｍｍの範囲が好ましく、底部へ いくに従って勾配をつけてもよい。また、スリットの本数は６〜１０本の範囲で 設けられていることが好ましく、８本であることがより好ましい。

【００１５】 抽出溶液保持容器の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸 ビニル等を用いることができる。また、ドロッパーの材料としては、ポリスチレ ン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ＡＢＳ樹脂（アクリロ ニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体）等を用いることができる。また、前 記抽出溶液保持容器若しくはドロッパーのどちらかにフィルターを設けることも でき、また、ドロッパーの代わりに穴を貫通させた後、チップを差し込むことに より糞便溶液を滴下することも可能である。

【００１６】 さらに、本考案の別の態様である、糞便採取棒と、糞便採取棒支持部材と、薄 膜を有するスクレーパーと、抽出溶液保持容器とからなる糞便採取具により検査 を行う場合には、まず、前記と同様に糞便を採取する。

【００１７】 このとき、糞便採取棒の先端部は前記と同様に任意の形状を採用することがで きるが、スクレーパーの薄膜を破断するに支障のない形状であることが好ましく 、さらには、鋭角の円錐形であることがより好ましい。

【００１８】 次に、抽出溶液保持容器に糞便採取棒を挿入するが、ここではスクレーパーが 設けられているため、糞便採取棒はまずスクレーパーを通ることになる。スクレ ーパーは抽出溶液保持容器を密閉して糞便溶液が漏れることを防止すると共に、 糞便採取棒の外表面に付着した余剰検体を取り除く作用をもつ。

【００１９】 該スクレーパーは中央部に糞便採取棒より直径の小さい穴と、その穴を遮蔽す る薄膜を有し、該薄膜は破られることでスクレーパーの一方の端から他端へ穴が 貫通する構造になっている。

【００２０】 糞便採取棒を挿入することによりスクレーパーの薄膜は破られるが、破られた 薄膜は糞便採取棒に密着し、薄膜を破る前と同様に密閉状態は保っている。 さらに、薄膜と糞便採取棒は密着しているため、余剰検体を完全に拭い去るこ とができる。よって、糞便採取棒が採取する糞便の量を一定にすることができる 。

【００２１】 スクレーパーに用いることができる材料としては、例えば、サーマルプラスチ ックエラストマー、ゴム、各種軟質プラスチック、ウレタンラバー、ポリウレタ ン等を用いることができる。

【００２２】 この嵌合の際に、抽出溶液保持容器には空気逃がし孔が設けられているため糞 便採取棒支持部材とスクレーパーとの間の空気は圧縮されずに外へ逃げることが できる。よって、嵌合を完全に行うことができる。

【００２３】 その後、作製した糞便溶液を測定に供するために、前記と同様の操作により滴 下を行う。この場合に、さらに抽出溶液保持容器にスリットが設けられている場 合には滴下をより容易かつ正確に行うことができる。

【００２４】

【実施例】

以下、本考案を図面を参照することにより説明する。

【００２５】 （実施例１） 本考案の一実施例として、図１、図２及び図３に表される糞便採取具を示すこ とができる。 図１は、糞便採取具の側面図であり、図２はその縦断面図である。また、図３ は糞便採取具の横断面図である。 本実施例の糞便採取具は、糞便採取棒１と、糞便採取棒支持部材２及びスリッ ト４を有する抽出溶液保持容器３からなっている。糞便採取棒１は吸水性の繊維 束からなっており、断面は直径２．０ｍｍを有する円形である。先端部は円錐形 で、頂点は直径０．８ｍｍの半球形である。糞便採取棒１は糞便採取棒支持部材 ２に支持され、通常は糞便採取棒支持部材２を把手として使用する。 抽出溶液保持容器３は直径１０ｍｍ、長さ７０ｍｍの円筒形の容器であり、外 側面にはスリットが８本設けられている。スリットの深さは抽出溶液保持容器２ の開放端から底部へ向かって０．１４から０．４６ｍｍの勾配をもったものであ る。 本実施例における糞便採取具を使用することによって、検体試料を測定に供す るには、まず、糞便採取棒１を糞便に接触させ検体として糞便を採取する。糞便 は糞便採取棒１の繊維間にしみこんで保持され、固形物、粘稠物等はここで除く ことができる。糞便採取棒１は先端部を除いて熱収縮性樹脂でコーティングされ ているので、側面からの糞便の漏れを防ぐことができる。

【００２６】 次に、抽出溶液保持容器３に糞便を採取した糞便採取棒１を嵌合させる。嵌合 後一定時間放置し、採取した糞便を抽出溶液中に十分溶解させる。 作製した糞便溶液を測定に供するために、内壁に溝を設けたドロッパー３１を 抽出溶液保持容器３の底面に嵌合させる。この際、ドロッパー３１と抽出溶液保 持容器３との間の空気は、ドロッパー内壁の空気逃がし溝３２から外へ逃げるた め嵌合を完全に行うことができる。空気逃がし溝はドロッパー内壁に、幅１．５ ｍｍ、長さ１１ｍｍ、深さは溶液滴下口３３側から容器嵌合口３４側へ向かって ０．０８から０．１３ｍｍの勾配をもったものである。 嵌合させた後、抽出溶液保持容器３の側壁を指で圧迫し、ドロッパー３１より 糞便溶液を強制的に滴下させる。抽出溶液保持容器３の側面にはスリット４が設 けられているため、圧迫に要する力は小さく容易に所定量の滴下を行うことがで きる。

【００２７】 （実施例２） さらに、本考案の別の実施例として、図４及び図５に表される糞便採取具を示 すことができる。 図４は、糞便採取具の縦断面図であり、図５はその側面図である。 本実施例における糞便採取具は、糞便採取棒１１と、糞便採取棒支持部材１２ と、薄膜を有するスクレーパー１５と、抽出溶液保持容器１３とからなり、抽出 溶液保持容器１３には空気を逃がすことのできる孔１６が設けられていることを 特徴とする糞便採取具である。

【００２８】 本実施例における糞便採取具により検査を行う場合には、まず糞便採取棒１１ を用いて実施例１と同様に糞便を採取し、抽出溶液保持容器１３に嵌合させる。 この嵌合の際、糞便採取棒１１は最初にスクレーパー１５を通過するが、スク レーパー１５の中央には薄膜が設けられており、糞便採取棒１１の先端により薄 膜は破られる。 薄膜は使用前には容器を密閉し、液漏れや蒸発を防ぐものであり、糞便採取棒 １１が通過した後も糞便採取棒１１に密着し、薄膜を破る前と同様に密閉状態を 保持している。 また、この密着により糞便採取棒１１の外表面に付着している余剰の糞便をぬ ぐい去り、糞便の量を一定にすることができる。

【００２９】 さらに差し込むと、糞便採取棒支持部材１２が抽出溶液保持容器１３を密閉す るようになるが、このときに糞便採取棒支持部材１２とスクレーパー１５との間 の空気は抽出溶液保持容器１３に設けられた空気逃がし孔１６を通り外部へ排出 される。よって、嵌合を完全にするため糞便採取棒支持部材１２をさらに差し込 んでも糞便採取棒支持部材１２とスクレーパー１５との間の空気は圧縮されず外 に逃げるので、糞便抽出溶液保持容器１２と抽出溶液保持容器１３との嵌合を完 全にすることができる。 従来は、前記間の空気が逃げることができず、そのまま圧縮されていたため、 嵌合が不完全となっていた。

【００３０】 これに続いて、糞便溶液の作製及び作製した糞便溶液をドロッパーにより滴下 する操作を行うが、これらは実施例１に記載した操作と同様に行えばよい。

【００３１】

【考案の効果】

本考案によれば、糞便採取棒支持部材と抽出溶液保持容器との嵌合及び抽出溶 液保持容器とドロッパーとの嵌合を完全にすることができ、糞便溶液滴下時には 溶液を容易に滴下をすることができる。これらの効果により、糞便溶液作製から 糞便溶液を滴下するまでの操作を、容易、正確かつ安全に行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の一実施例である糞便採取具の側面図
である

【図２】 本考案の一実施例である糞便採取具の縦断面
図である。

【図３】 本考案の一実施例である糞便採取具の横断面
図である。

【図４】 本考案の別の実施例である糞便採取具の縦断
面図である。

【図５】 本考案の別の実施例である糞便採取具の側面
図である。

【図６】 本考案のさらに別の実施例である糞便採取具
の側面図である。本実施例の縦断面図は図４と同一であ
る。

【図７】 本考案の糞便溶液滴下用のドロッパーの縦断
面図である。

【図８】 本考案の糞便溶液滴下用のドロッパーの別の
角度から見た縦断面図である。

【図９】 本考案の糞便溶液滴下用のドロッパーの容器
嵌合口側から見た平面図である。

【符号の説明】

１、１１ 糞便採取棒 ２、１２ 糞便採取棒支持部材 ３、１３ 抽出溶液保持容器 ４、１４ スリット １５ スクレーパー １６ 空気逃がし孔 ３１ ドロッパー ３２ 空気逃がし溝 ３３ 溶液滴下口 ３４ 容器嵌合口

フロントページの続き (72)考案者 角谷 雅實 東京都中央区日本橋浜町２丁目62番５号 富士レビオ株式会社内

Claims (5)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 吸水性の繊維束でできている糞便採取棒
   と、糞便採取棒支持部材と、側面にスリットを有する抽
   出溶液保持容器とからなる糞便採取具
2. 【請求項２】 薄膜を有するスクレーパーを備えた請求
   項１に記載の糞便採取具
3. 【請求項３】 吸水性の繊維束でできている糞便採取棒
   と、糞便採取棒支持部材と、薄膜を有するスクレーパー
   と、抽出溶液保持容器とからなり、前記糞便採取棒を前
   記抽出溶液保持容器に嵌合させる際に前記スクレーパー
   と前記糞便採取棒支持部材との間の空気を逃がすことが
   できる孔を前記抽出溶液保持容器に設けた糞便採取具
4. 【請求項４】 抽出溶液保持容器の側面にスリットを有
   することを特徴とする請求項３に記載の糞便採取具
5. 【請求項５】 内壁面に空気逃がし溝を設けた糞便溶液
   滴下用ドロッパー