JP3038239B2 - 魚 網 - Google Patents

魚 網

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、海水中の微生物による分解性を有し、且つ
防藻性を有する魚網の提供に関する。
(従来技術) 従来、魚網を構成する素材としては、ポリアミド系、
アラミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等の各
種の合成繊維が用いられている。
(発明が解決しようとする問題点) しかしながら、かかる素材は自然の環境下において極
めて安定であり、長期にわたってその強度が維持される
ため廃棄に伴う環境汚染の問題を生ずる。
一方、タイ、ハマチ、トリ貝、赤貝等の養殖に際して
は稚魚、稚貝等を長期にわたって網で囲ったり、また網
の中に入れて成育するが、飼育中に網に藻類が付着した
り、他の貝類が付着したりして、歩留りを低下させた
り、除藻のための作業を必要とし、また、網の扱い性を
低下させる原因となっている。
本発明はかかる点、自然の環境下において、微生物、
光、水等の影響によって分解し、併せて、使用に際し、
珪藻類の付着しない新規な魚網を提供するものである。
(問題を解決するための手段) しかるに、本発明は銅イオン及び/または銀イオンを
溶出する化合物を含む溶解性ガラスを配合して成るポリ
カプロラクトンをその構成素材としたことに特徴を有す
る魚網の提供に関する。
(作用) 本発明は、前記した構成、即ち、微生物、或は、光、
水等の作用によって分解するカプロラクトンをその構成
素材とし、更に、これに銅イオン及び/または銀イオン
を溶出する化合物を含む溶解性ガラスを配合させた構成
としたので、自然環境下に放置し、数ヵ月〜1年以上で
ポリマーの状態において海水中の微生物の影響を受けて
劣化し、最終的にはモノマー化して微生物の餌となって
消失してしまうので従来のような放、廃棄に伴う環境汚
染の問題を解消できる。
また、使用に際して藻類、貝類の付着がなく、作業性
を低下させることがなく、また、歩留りの向上にも寄与
できるものである。
尚、本発明でいうポリカプロラクトンとは、以下に示
す構造式より成るものをさす。
式中、Rは個々に水素、アルキル、ハロゲンおよびア
ルコキシからなる群から選ばれ、Aはオキシ基、xは1
〜4の整数、yは1〜4の整数、zは0または1の整数
であり、x+y+zの和は少なくとも4であり、7より
大きくてはならなく、水素以外の置換基である変数Rの
全数は3を越えず、好ましくは1繰返し単位当たり3を
越えない繰返し単位とし、Rの例としてはメチル、エチ
ル、イソプロピル、n−ブチル、メトキシ、エトキシ等
を、又、各Rは水素、低級アルキル、例えば、メチル、
エチル、n−プロピル、イソブチル、及び/又は低級ア
ルコキシ等を例示できる。
また、R置換基中の炭素原子の全数は20を越えないも
のが好ましい。
本発明における重合体の重量平均分子量は30,000〜20
0,000、特に好ましくは、約70,000〜100,000の範囲にあ
ることが魚網として必要な強度、分解性等の面において
好ましく、約50〜80℃で熱軟化する性質を有する。
尚、上記重合体には不活性の酸化チタン、タルク、炭
酸マグネシウム等の絶縁性充填材が添加されてもよい。
また、場合によってはかかるポリカプロラクトンに分
解性を異にするポリグリコール酸,グリコリド、L−ラ
クチド、D,L−ラクチド、D−ラクチド、L体とD体の
混合ラクチド、パラジオキサノン等の加水分解性ポリマ
ーを共重合化し、或は、混合し、更には、これらの加水
分解性ポリマーの共重合化物との共重合化、混合化をし
て用いることもその分解性、弾性、強度、伸度等の性能
に変化を加える上において有効な手段である。
一方、かかる素材に添加する銅イオン及び/または銀
イオンを溶出する化合物を含む溶解性ガラスとは、ガラ
ス中で、或は、ガラスから溶出後に金属イオンまたは、
金属イオン形成物になるものをさし、例えば、銅化合物
としてはCu2O、Cu2S、CuO、CuS、ハロゲン化銅、Cu(O
H)、CuSO4などの無機化合物、酢酸銅、アミノ酢酸
銅、蟻酸銅などの有機化合物を用いることができる。ま
た、銀化合物としては、Ag2O、Ag2S、AgNO3、ハロゲン
化銀、Ag2SO4、Ag2CO3などの無機化合物、酢酸銀、しゅ
う酸銀、サリチル酸銀などの有機化合物を用いることが
できる。
更に、前述の各種化合物の同種または異種の1種また
は2種以上の化合物を併用してもよい。しかしながら、
ガラスとの相溶性、含有金属率の観点からは、CuO、CU2
O、或はAg2Oが好んで用いられるが、特にその効果にお
いて銅イオンを放出するものが有効である。
又、前記金属イオンを含有する溶解性ガラスは通常、
SiO2、B2O3、P2O5などの網目形成酸化物、及び、Na2O、
K2O、CaO、MgO、BaO、Al2O3、ZnOTiO2などの網目修飾酸
化物などから構成され、これら酸化物の組成比によりそ
の溶解度を調整することができ、防藻性、性能維持期間
等に応じて適宜調整する。また、これの粒径は概ね10〜
30ミクロンの範囲にあり、重量比において数%の前記し
た、CuO、Cu2O、Ag2O等の化合物が添加される。
かかる金属イオンを放出する化合物を含有する溶解性
ガラスは、カプロラクトンポリマーに対し、0.05〜1.0
重量%の割合で添加され、紡糸温度120〜170℃、ノズル
径0.5〜1.5mm、冷却温度1〜25℃、引っ張り速度5〜10
m/分、延伸温度50〜58℃、延伸倍率6.0〜7.0倍の範囲に
おける紡糸を行い、概ね5g/d以上の強度と20〜30%の伸
度を備えた溶解性ガラスが混在した糸条とする。
尚、かかる化合物の添加量はその効果、或は、糸の強
度等を勘案して、適宜の量を加える。
以下、本発明について具体的に実施例を挙げて説明す
る。
(実施例1) 重量平均分子量85,000のダイセル(株)製のポリカプ
ロラクトン(商品名:プラクセルH)を原料とし、これ
にCuOを1.0重量%含むP2O565モル%、CaO15モル%、Na2
O14モル%Al2O36モル%の組成より成る溶解性ガラスを
0.5重量%、及び、ステアリン酸カルシウムを0.1重量%
添加させ、均一に混合した後、温度155℃,直径1.5mmの
ノズルより押出し、15℃の水中を10m/minのスピードで
引き取った後、約6倍に延伸して直径0.25mm、558デニ
ールの魚網用モノフィラメント糸を得た。
かかる糸条について、JISの測定法に準じ、その物性
を測定したところ強度6.38g/d,伸度24.4%の性能を有し
た。
以上のようにして得た糸条により網を構成し、約20cm
の断片をステンレス金網に取付け、6〜11月の5ヵ月間
養魚場の水深1.5mの海中に浸漬し、藻、貝類の付着、強
度変化について溶解性ガラスを添加しない対照区と比較
した。
その結果、対照区においては6週間後にはワカメ状の
藻、及び貝類が密生し、網が見えないほどになったのに
対し、本発明実施例によるものはアオミドロ状のものが
その表面に薄く着生したのみであった。
また、9週目までは両区とも強度変化は見られなかっ
たが、12週目より急激にその表面が虫食い状に変化し、
強度が低下した。
これは、37℃の生理食塩水中で行うIn Vitroにおい
て、25週間経過後においても全く変化を来さないのに対
し、大きな違いであった。
その原因については、海中における微生物の作用、及
び、溶解性ガラスの混在が考えられるが、予想のつかな
い結果であった。
(発明の効果) 本発明は以上のような強度劣化し、消失する特性を有
するので環境汚染の問題を解消でき、加えて、防藻効果
も有するので栽培漁業用の網、特に、数ヵ月ごとに網の
入替えを行う各種、魚、貝等の養殖用として用いて好適
である。
特に、稚貝の段階での外敵保護用の遮蔽網として、ま
た、成長につれてこれを他の網と取り替えるトリ貝、赤
貝等への適用において、分解性を有するので、段階的に
網の上に別の網を使うことができ、作業の著しい軽減と
藻、貝等が付着しないことによる分留り向上に格別の効
果を有する。
尚、本発明においては、ポリカプロラクトンの分子量
を変えたり異種のポリマーとの共重合化、混合等により
分解性のコントロールが可能であり、その目的に応じて
性能に変化を持たせることができる。
また、本発明は前記した魚網のほか、ロープ、ネッ
ト、シート、釣糸等、水中で長期に取り扱われ、また、
放置に伴う環境汚染の可能性のある用途に適用可能であ
る。
また、紡糸されたカプロラクトン繊維糸にバインダー
等を用いて銅イオン及び/または銀イオンを溶出する化
合物を含む溶解性ガラスをコーティング等して表面に
接、付着させてもよい。
尚、かかる構成において、親水性の加工剤、例えば、
有機、無機の親水性剤をポリマーに添加させることは、
水中での分解性を促進し、不要となった魚網を早期に分
解し、消失させるために有効である。
以上のように、本発明は従来にない優れた特性を有す
るものとして、特に、養殖用用途に用いて好適なもので
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01K 75/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】銅イオン及び/または銀イオンを溶出する
    化合物を含む溶解性ガラスを配合して成るポリカプロラ
    クトンをその構成素材としたことを特徴とする魚網。
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