JP3031726B2 - 弱酸形強塩基性陰イオン交換樹脂、変換法及び蛋白及び/または糖類の除去方法 - Google Patents

弱酸形強塩基性陰イオン交換樹脂、変換法及び蛋白及び/または糖類の除去方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は種々の用途に供されてい
る強酸形強塩基性陰イオン交換樹脂の弱酸形への安定な
変換方法、この変換方法により得られる弱酸形強塩基性
陰イオン交換樹脂及び該樹脂を用いた蛋白及び/または
糖類除去方法に関する。
【0002】
【従来の技術】強塩基性陰イオン交換樹脂は種々の陰イ
オンを除去するために各種分野で利用され、用途によっ
て強塩基性陰イオン交換樹脂はOH形、弱酸形の形で用
いられている。強酸形強塩基性陰イオン交換樹脂を弱酸
形に変換するには、従来、苛性ソーダのような強アルカ
リを用いてOH形に変換後、該弱酸で処理して弱酸形と
している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】強酸形強塩基性陰イオ
ン交換樹脂を弱酸形にする時に、苛性ソーダ、苛性カ
リ、水酸化カルシウムのような強アルカリを用いると樹
脂の種類によってはイオン交換基の脱落や樹脂担体の分
解が起こり、樹脂の性能を著しく劣化することがある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、強アルカ
リに不安定な強塩基性陰イオン交換樹脂の交換容量を落
とす事なく、強酸形から弱酸形へ変換する方法について
鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即
ち本発明は、
【0005】(1)強アルカリに不安定な強酸形強塩基
性陰イオン交換樹脂を弱酸形へ変換するに当たり、該強
塩基性陰イオン交換樹脂をホウ酸塩類で処理することを
特徴とする弱酸形への変換法。 (2)上記(1)に記載の変換法により得られる弱酸形
強塩基性陰イオン交換樹脂。
【0006】(3)上記(2)で得られる弱酸形強塩基
性陰イオン交換樹脂を用いることを特徴とする蛋白質及
び/または糖類を含む液体から蛋白質及び/または糖類
を吸着除去する方法。に関する。なお、ここで「強酸
形」、「弱酸形」とは、強塩基性陰イオン交換樹脂の対
イオンの種類を示す。
【0007】従来、強塩基性陰イオン交換樹脂をOH形
として用いる場合、強アルカリに安定なスチレン−ジビ
ニルベンゼン系の樹脂を担体とするものが用いられ、そ
の再生には、苛性ソーダなどの強アルカリが使用されて
きた。また、強酸形強塩基性陰イオン交換樹脂を弱酸形
にする場合、一旦OH形に変換後、弱酸で中和すること
により行われていた。
【0008】一方、親水性担体からなる強酸形強塩基性
陰イオン交換樹脂のなかには、強アルカリに不安定なも
のが多く、スチレン−ジビニルベンゼン系の樹脂と同様
のOH形を経る弱酸形への変換法を用いると、再生時に
使用する強アルカリにより、イオン交換基の著しい脱離
や、担体の分解を起こすことが分かった。
【0009】本発明では、強アルカリに不安定な強酸形
強塩基性陰イオン交換樹脂の対イオンの変換にホウ酸塩
類等の弱酸塩を用いているため、OH形を経由すること
なしに弱酸形に変換され、不安定なOH形を経由しない
し、高いpHの強アルカリの条件を通らないため、イオ
ン交換基の脱離や担体の分解も少ない事が分かった。な
お、強塩基性陰イオン交換樹脂のイオン交換基の数は、
イオン交換容量を定量すれば測定できる。
【0010】本発明の変換法により得られる弱酸形強塩
基性陰イオン交換樹脂は、従来の強アルカリを用いた方
法により得られるものと比較するとイオン交換容量は高
く、大きく改善されていた。また、再生に強アルカリを
用いる従来方法では、過剰のアルカリを除去する必要が
あり、そのため大量の精製水を使用し、流出液が中性に
なるまで長時間の処理を要する。
【0011】本発明による方法では、アルカリを用いな
いため、流出液を中性にするのに必要な精製水は少量で
済み、処理が短時間で終わるので、経済効果も大きい。
本発明において、強アルカリに不安定な強酸形強塩基性
陰イオン交換樹脂としては、親水性ビニルポリマー、ア
クリル系ポリマー、メタクリル系ポリマー、アクリルア
ミド系ポリマー、セルロース系、デキストラン系等の親
水性担体に強塩基性陰イオン交換基を導入した樹脂でC
l形等の強酸形のものが挙げられる。
【0012】弱酸塩としては、酢酸塩等のカルボン酸
塩、炭酸塩、ホウ酸塩等が挙げられ、塩としては、最も
一般的なナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カル
シウム塩、バリウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土
類金属塩、あるいはアンモニウム塩等を挙げる事ができ
るが特に限定されない。特に好ましい弱酸塩はホウ酸塩
類である。ホウ酸は一般的にオルトホウ酸H3 BO3
して存在しているが、ホウ酸の塩類はメタホウ酸塩、四
ホウ酸塩、五ホウ酸塩があり、このいずれの塩類をもち
いても良い。
【0013】本発明による弱酸形への変換方法は一般的
に行われているイオン交換樹脂の再生方法に準じて行え
ば良く、カラムに樹脂を充填し、弱酸塩水溶液を流し、
水洗する事で変換を行う事ができる。さらに弱酸水溶液
を流す弱酸処理工程を設けて完全に弱酸形にしてもよ
い。また、ビーカー等の容器の中で樹脂と弱酸塩水溶液
を撹拌混合しそれを濾過する工程を繰り返すようなバッ
チ式の方法によって行うことも可能である。
【0014】弱酸塩水溶液中の弱酸塩の濃度は、弱酸塩
が水に溶ける範囲ならいずれでも良いが、0.1M〜
0.2Mの範囲が好ましい。また弱酸塩水溶液の使用量
は、樹脂量の2倍容量から20倍容量程度が好ましく、
特に好ましい範囲としては例えば0.1Mの弱酸塩水溶
液を用いたときには6倍容量から12倍容量である。樹
脂を弱酸塩で処理する際の温度は特に限定されないが、
通常は30℃以下である。また、この時の通液速度は、
特に限定されないが、接触時間との関係から樹脂容量と
同量の通過液を1時間で通す即ちSV1、0程度が最も
好ましい。
【0015】次いで、樹脂を水で洗浄する。この際用い
る水の量は少量で済み、例えば、樹脂に対し、2〜5倍
容量用いれば十分である。この場合の処理条件は弱酸塩
による処理の場合と同様で良い。このようにして得られ
た樹脂は、必要により、更に弱酸で処理しても良い。
【0016】樹脂を弱酸で更に処理する場合、弱酸とし
ては前述した弱酸塩に対応する弱酸が使用でき、この弱
酸の水溶液を用いて、上記の弱酸塩水溶液を用いた処理
方法と同様にして行う事ができる。その場合の処理条件
は、弱酸塩による処理の場合と同様で良い。
【0017】このように、弱酸塩で処理したのち水洗
し、必要により更に弱酸で処理することにより、弱酸形
(例えば酢酸形、炭酸形、ホウ酸形)の強塩基性陰イオ
ン交換樹脂が得られる。なお、ホウ酸以外の弱酸形に変
換する場合、強酸形強塩基性陰イオン交換樹脂を一旦ホ
ウ酸形とし、次いで変換したい弱酸で処理して所望の弱
酸形としても良い。
【0018】本発明の変換法は、特に、強アルカリに不
安定なエステル結合、アミド結合等を含み、強塩基性イ
オン交換基と担体との結合が加水分解しやすい結合を有
する強塩基性陰イオン交換樹脂の場合に顕著に本発明の
効果が現われる。
【0019】本発明の蛋白及び/または糖類を除去する
方法において、蛋白及び/または糖類を含む液体として
はとくに限定されないが、具体的には、血清、血漿、
尿、髄液等の体液や、動物等の組織の抽出液などが挙げ
られる。この方法において使用する樹脂の使用量はとく
に限定されないが、蛋白及び/または糖類を含む液体1
ml当り樹脂を1ml以上用いるのが好ましく、特に3
〜10ml用いるのが好ましい。
【0020】この方法は、例えば、カラムに樹脂を充填
し、これに蛋白及び/または糖類を含む液体を通す事に
より行うことができる。その際の温度は特に限定されな
いが、通常30℃以下が好ましい。この方法により、液
体から蛋白及び/または糖類を容易に吸着除去すること
ができ、特に本発明の方法によれば、蛋白と糖類を同時
に吸着除去することができる。
【0021】
【実施例】以下に実施例、比較例、試験例を挙げて本発
明を具体的に説明する。 実施例1 直径25mm×長さ300mmのガラス製カラムにQA
Eトヨパール550C(親水性ビニルポリマー系
(株)東ソー製)湿潤ゲル300mlを充填し、室温
で、0.1M−Na2 4 7 水溶液3000mlをS
V1.0で流し、次いで、水600ml、0.2N−ホ
ウ酸水溶液600mlを流して、ホウ酸形のQAEトヨ
パール550Cを得た。
【0022】実施例2 実施例1と同じカラムを用いてショウデックスTM−L
(メタクリル系ポリマー 昭電(株)製)の湿潤ゲル3
00mlを充填し、室温で、0.1M−NH4 5 9
水溶液3000mlをSV1.0で流し、次いで、水1
200ml、0.1N−ホウ酸水溶液500mlを流し
て、ホウ酸形のショウデックスTM−Lを得た。
【0023】実施例3 実施例1と同じカラムを用いてQA−トリスアクリルM
(アクリルアミド系ポリマー IBFバイオテクニック
ス社製)湿潤ゲル300mlを充填し、室温で、0.1
M−Na2 4 7 水溶液2000mlをSV1.0で
流し、次いで、水1000ml、0.1N−ホウ酸水溶
液500mlを流して、ホウ酸形のQA−トリスアクリ
ルMを得た。
【0024】比較例1 実施例1と同じカラムを用いてQAEトヨパール550
C300mlを充填し、室温で、0.2N−NaOH水
溶液1500mlをSV1.0で流し、次いで、水60
00ml、0.2N−ホウ酸水溶液600mlを流し
て、ホウ酸形のQAEトヨパール550Cを得た。
【0025】比較例2 実施例1と同じカラムを用いてショウデックスTM−L
300mlを充填し、室温で、0.1N−NaOH水溶
液3000mlをSV1.0で流し、次いで、水600
0ml、0.1N−ホウ酸水溶液500mlを流して、
ホウ酸形のショウデックスTM−Lを得た。
【0026】比較例3 実施例1と同じカラムを用いてQA−トリスアクリルM
300mlを充填し、室温で、0.1N−NaOH水溶
液2000mlをSV1.0で流し、次いで、水500
0ml、0.1N−ホウ酸水溶液500mlを流して、
ホウ酸形のQA−トリスアクリルMを得た。次ぎに、実
施例、比較例で得た樹脂の性能の比較の試験を行ったの
で、その結果を試験例として以下に示す。試験例
【0027】 イオン交換容量 蛋白吸着量 グルコース吸着量 meq/ml-gel mg/ml-gel mg/ml-gel 実施例1 0.40 84 70 比較例1 0.26 62 45 実施例2 0.73 134 98 比較例2 0.41 108 72 実施例3 0.15 132 28 比較例3 0.12 115 20
【0028】(1)イオン交換容量は、サクションドラ
イで定量した湿潤ゲル5mlに、1N−食塩水溶液25
mlを加え、ブロムチモールブルー指示薬を用いて、
0、1N−塩酸水溶液にて滴定し、以下の計算式にて算
出した。 イオン交換容量(meq/ml-gel)=滴定量(ml)×0.1×フ
ァクター/5 (2)蛋白吸着量は実施例及び比較例で得られた湿潤ゲ
ル1mlを小カラムに充填し、水5mlで水洗し、0.
25%牛血清アルブミン水溶液100mlをポンプで1
ml/minの流速で常温で2時間循環し、その濃度をフォー
リンローリー法で定量した。その濃度差から吸着量を算
出した。 (3)グルコース吸着量は、0、25%グルコース水溶
液100mlを用い、(2)と同様にして、HPLCで
定量し、その濃度差から吸着量を算出した。
【0029】
【発明の効果】強アルカリに不安定な強酸形強塩基性陰
イオン交換樹脂を弱酸形に変換する際には、一般的に行
われている強アルカリでOH形に変換後、弱酸で置き換
える方法では、樹脂の性能を大きく低下させてしまう。
本発明による方法即ち弱酸塩を直接作用させることで、
試験例に示したように樹脂の性能の低下の少ない強塩基
性陰イオン交換樹脂の弱酸形が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特公 昭54−29815(JP,B1) 特公 昭59−5014(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 41/00 - 41/18 B01J 49/00 - 49/02 B01D 15/04 B01J 20/00 - 20/34 C02F 1/42

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】強アルカリに不安定な強酸形強塩基性陰イ
    オン交換樹脂を弱酸形へ変換するに当たり、該強塩基性
    陰イオン交換樹脂をホウ酸塩類で処理することを特徴と
    する弱酸形への変換法。
  2. 【請求項2】請求項1の変換法により得られる弱酸形強
    塩基性陰イオン交換樹脂。
  3. 【請求項3】請求項2で得られる弱酸形強塩基性陰イオ
    ン交換樹脂を用いることを特徴とする蛋白質及び/また
    は糖類を含む液体から蛋白質及び/または糖類を吸着除
    去する方法。
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