JP3031632B2 - 毛管電気泳動質量分析装置および分析法 - Google Patents

毛管電気泳動質量分析装置および分析法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、高分子の分析に用いられる毛管電気泳動質
量分析装置並びに分析法に関する。
[従来の技術] スミス(R.D.Smith)らの毛管電気泳動−質量分析法
(Capillary Zone Electrophoresis Mass Spectrometr
y,CZE−MS)の構成を第2図に示す。
試料3と電解溶液4は高電圧電源1によつて、+30kV
程度に印加されている。毛細管(キヤピラリ)5を電解
溶液4中に浸すことにより、該電解溶液は毛細管現象に
よって吸い上げられる。その後同様に試料3中に毛細管
5を浸すことにより試料を吸い上げる。吸い上げられた
電解溶液と試料の混合成分は正にイオン化され、管内の
電界により低電圧側に泳動するが、その泳動速度はそれ
ぞれの成分の移動度によつて異なる。
前記のようにして毛細管5内を泳動しイオン源6に到
達するまでに分析成分が分離され、イオン化されて質量
分析される。
[発明が解決しようとする課題] 毛管電気泳動のみで分離されるCZEスペクトルはスミ
スらによると、第3図のように各成分毎に出現する1ピ
ークの時間は、質量分析に要する時間としては短く10秒
程度である。
CZEで分離されたアミノ酸の各成分を質量分析する場
合、理想的には質量分析する間は分離成分の濃度が一定
であることが望ましい。
J.W.Jorgenesonら(Anal,Chem,1981,53,1298−1302)
によると、毛管内を泳動する速度νは、印加された電位
勾配に比例して ν=μE−μV/L …(1) μ:電気移動度 V:印加電圧 L:毛細管の長さ で表わされる。
また、電気泳動の分離能を表わす理論段数Nは、次式
にまとめられている。
N=μV/2D …(2) D:各成分の毛細管内での拡散係数 上記の理論式(2)から毛管電気泳動法で高速,高分
解能の分析を行なうためには、印加電圧Vを高くすれば
よいことになる。
CZEとしての分解能を上げるためには、印加電圧Vを
大きくした方がよく、一方質量分析装置として分離成分
のピークの時間変化率を小さくするにはVを低くする必
要がある。
本発明の目的は、上記相反する二つの要求を満たすこ
とのできる毛管電気泳動質量分析装置を提供するにあ
る。
[課題を解決するための手段] 本発明者らは、第3図に示すスミスらのCZEスペクト
ルは、イオン源の手前に紫外線吸収検知器を用いること
により得られるが、この信号がノイズレベルの2倍以上
に立ち上つた瞬間に、印加電圧を下げて泳動速度νを遅
くする、すなわち、前記式(1)により、印加電圧をV/
nに下げればピークの幅をn倍にすることができること
に気付いた。本発明は上記に基づいてなされたもので、
その要旨は次のとおりである。
(1)試料溶液と電解溶液に高電圧を印加する電圧印加
手段と、前記試料溶液と前記電解溶液を移動させる毛細
管と、該毛細管の両端に電位差を付与する電界印加手段
と、前記試料溶液と前記電解溶液が前記毛細管中を移動
中に分離された成分をイオン化するイオン源と、該イオ
ンの検知手段を備えた毛管電気泳動質量分析装置におい
て、 前記イオン源の手前に紫外線吸収検知器を設け前記分
離試料の移動速度を検知し、該検知信号により前記毛細
管の両端に印加する電圧を制御し、前記分離試料の移動
速度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする毛管
電気泳動質量分析装置。
(2)高電圧電源により電圧印加された試料溶液と電解
溶液が、毛細管の両端の電位差に基づく電界により該毛
細管中を移動中に分離された成分を、イオン源でイオン
化し、該イオンを検出することにより質量分析する毛管
電気泳動質量分析法において、 前記毛管電気泳動装置の毛細管の出口に設けた紫外線
吸収検知器が試料成分のピークを検知し、該試料成分が
前記イオン源に到達する前に、高電圧電源を制御して印
加電圧を下げ、前記試料成分の泳動速度を下げて、質量
分析のための測定時間を長くすることを特徴とする毛管
電気泳動質量分析法。
本発明の構成の一例を第1図に示す。
前記従来例である第2図の構成と異なる点は、イオン
源の手前に紫外線吸収検知器11を設け、通過する分離成
分による紫外線の吸収が検知された時点で高圧電源制御
回路12が作動して、高圧電源1の出力電圧Vを下げるよ
うにしたことにある。
また、前記の毛管電気泳動質量分析装置において、注
目する試料のイオンが、質量分析装置のイオン検知器に
より検知され始めた時点で、高電圧制御回路を作動さ
せ、印加電圧を下げて電気泳動の速度を遅くし、質量分
析の時間を長くして試料イオンの変動を緩やかにし、ス
ペクトル・パターンの変動率を小さくしてもよい。
[作用] 本発明の前記印加電圧と、紫外線吸収検知器11による
CZEスペクトルの関係を第4図で説明する。
検知器の信号がノイズレベルの間は、試料3や電解溶
液4に電圧Vを印加しておき、紫外線吸収検知器11の信
号が所定のレベル以上になった時に、前記印加電圧をV/
nに低下させる。
CZEスペクトルは、本来、第3図のように鋭いピーク
を示すが、毛管内の移動速度νが前記式(1)により、
ν/nに低下すると第4図に示すような幅の広い三角波と
なる。
このようにCZEで分離された成分のピーク幅が、加速
電圧をV/nに低下したことでn倍に拡がり、その後、イ
オン(エレクトロンスプレーイオン)源6でイオン化さ
れて、4重極質量分析計8での分析時間を長くとること
ができる。これによって質量分析中における試料のピー
ク毎の時間変化率を従来より小さくすることができ、当
該定量分析の信頼性を向上することができる。
[実施例] イオン源6の手前に設けた紫外線吸収検知器11からの
信号により、高電圧電源1の出力電圧Vを制御する当該
分析装置について第1図に述べたが、これとは別の実施
例を第5図に示す。
本実施例では、4重極質量分析計8の後にイオン検知
器10を設け、その出力信号によって高圧電源制御回路12
を駆動し、高電圧電源1を制御するようにしたものであ
る。
この場合の測定方法は、あらかじめ試料成分のイオン
の注目する質量数に質量分析計8を合わせておく。試料
成分以外の電解溶液のバックグラウンドスペクトルはイ
オン検知器の信号が0であるが、注目している試料成分
が分離され信号が立ち上り始めた時点で、高圧電源制御
回路12が動作して、印加電圧Vを低下させ、質量分析ス
ペクトルを得る。
この方法が前記第1図の場合より優れている点は、紫
外線吸収検知器11とイオン検知器10の間の時間の遅れが
少ない点にある。
なお、第1図および第5図において、質量分析計8は
従来と同様に4重極質量分析計を用いたが、磁場と電場
を組合せた2重収束形質量分析計でもよい。
なお、本発明の毛管電気泳動−質量スペクトルと従来
のものとの比較を第6図に示す。
[発明の効果] 従来は質量分析の時間内に分離された試料のピークは
第3図のように急激に増減し、ピークパターンが大きく
変動し、特に第6図Aで示すように分離速度の遅い分子
イオンMはピーク強度が小さく、検出されない場合があ
った。
本発明では試料成分が出現する時点で印加電圧Vを下
げるので、第4図に示すようにピーク強度の時間変化が
少なく、第6図Bで示すように分子イオンMのピーク強
度も十分得られ、ピークパターンの変化(減少)も少な
い。
また、S/N比がよく、正確な質量の決定ができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の毛管電気泳動質量分析装置の構成図、
第2図は従来の毛管電気泳動質量分析装置の構成図、第
3図は従来の毛管電気泳動(CZE)スペクトル、第4図
は本発明の印加電圧とCZEスペクトルの関係図、第5図
は本発明の他の実施例の毛管電気泳動質量分析装置の構
成図、第6図は従来と本発明とのCZE−MSスペクトルの
比較図である。 1……高電圧電源、2……高電圧印加部分、3……試
料、4……電解溶液、5……毛細管、6……イオン源、
7……差動排気系、8……4重極質量分析計、9……主
排気系、10……イオン検知器、11……紫外線吸収検知
器、12……高圧電源制御回路。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】試料溶液と電解溶液に高電圧を印加する電
    圧印加手段と、前記試料溶液と前記電解溶液を移動させ
    る毛細管と、該毛細管の両端に電位差を付与する電界印
    加手段と、前記試料溶液と前記電解溶液が前記毛細管中
    を移動中に分離された成分をイオン化するイオン源と、
    該イオンの検知手段を備えた毛管電気泳動質量分析装置
    において、 前記イオン源の手前に紫外線吸収検知器を設け前記分離
    試料の移動速度を検知し、該検知信号により前記毛細管
    の両端に印加する電圧を制御し、前記分離試料の移動速
    度を制御する制御手段を備えたことを特徴とする毛管電
    気泳動質量分析装置。
  2. 【請求項2】試料溶液と電解溶液に高電圧を印加する電
    圧印加手段と、前記試料溶液と前記電解溶液を移動させ
    る毛細管と、該毛細管の両端に電位差を付与する電界印
    加手段と、前記試料溶液と前記電解溶液が前記毛細管中
    を移動中に分離された成分をイオン化するイオン源と、
    該イオンの検知手段を備えた毛管電気泳動質量分析装置
    において、 前記イオン源の手前に紫外線吸収検知器を設け前記分離
    試料の移動速度を検知し、該検知信号により前記毛細管
    の両端に印加する電圧を下げ、前記分離試料の移動速度
    を低下させる制御手段を備えたことを特徴とする毛管電
    気泳動質量分析装置。
  3. 【請求項3】試料溶液と電解溶液に高電圧を印加する電
    圧印加手段と、前記試料溶液と前記電解溶液を移動させ
    る毛細管と、該毛細管の両端に電位差を付与する電界印
    加手段と、前記試料溶液と前記電解溶液が前記毛細管中
    を移動中に分離された成分をイオン化するイオン源と、
    該イオンの検知手段を備えた毛管電気泳動質量分析装置
    において、 前記イオン検知手段の出力信号によって前記毛細管の両
    端に印加する電圧を制御し、前記分離試料の移動速度を
    制御する制御手段を備えたことを特徴とする毛管電気泳
    動質量分析装置。
  4. 【請求項4】高電圧電源により電圧印加された試料溶液
    と電解溶液が、毛細管の両端の電位差に基づく電界によ
    り該毛細管中を移動中に分離された成分を、イオン源で
    イオン化し、該イオンを検出することにより質量分析す
    る毛管電気泳動質量分析法において、 前記毛管電気泳動装置の毛細管の出口に設けた紫外線吸
    収検知器が試料成分のピークを検知し、該試料成分が前
    記イオン源に到達する前に、高電圧電源を制御して印加
    電圧を下げ、前記試料成分の泳動速度を下げて、質量分
    析のための測定時間を長くすることを特徴とする毛管電
    気泳動質量分析法。
  5. 【請求項5】高電圧電源により電圧印加された試料溶液
    と電解溶液が、毛細管の両端の電位差に基づく電界によ
    り該毛細管中を移動中に分離された成分を、イオン源で
    イオン化し、該イオンを検出することにより質量分析す
    る毛管電気泳動質量分析法において、 注目する試料のイオンが、イオン検知器で検出され始め
    た時に前記高電圧電源の制御して印加電圧を下げて電気
    泳動速度を遅くし、イオンの移動を緩やかにすることに
    より質量スペクトルパターンの時間変動率を小さくする
    ことを特徴とする毛管電気泳動質量分析法。
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KR100496977B1 (ko) * 2002-07-10 2005-06-23 주식회사 옵트론-텍 모세관 전기영동 마이크로 칩을 위한 다기능 시료주입장치.
CN110132870B (zh) * 2019-04-30 2021-03-26 聊城鲁西聚碳酸酯有限公司 一种聚碳酸酯中紫外线吸收剂种类和含量的分析方法

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