JP3026079B2 - 持ち主を特定できる義歯の作製方法及びそれに用いる造溝具 - Google Patents

持ち主を特定できる義歯の作製方法及びそれに用いる造溝具

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  • Veterinary Medicine (AREA)
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、義歯のレジン層に
マイクロチップなどのマークを封埋することにより、誰
の義歯であるかを確実に識別できるようにした、持ち主
を特定できる義歯の作製方法及びそれに用いる造溝具に
関する。
【0002】
【従来の技術】老人ホームなど多数の老人を収容する施
設では、毎食後、義歯使用者全員の義歯を集めて洗浄し
ている。洗浄した義歯を持ち主に間違いなく返却するた
めに、かつては義歯のレジン床や金属床の表面に氏名を
彫り込んでいた。しかし、刻字は読みづらい上、刻字の
窪みに食片が詰まって悪臭の発生源になったり、長年の
使用で刻字が磨耗して判読不能になったりするなどの欠
点があった。そのため現在は、義歯作製の際、氏名を記
した名札をフラスコ内の蝋型の空間に挿入した後、加熱
重合型レジンを流し込んでレジン層に名札を封埋するよ
うにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記名
札の封入作業は極めて厄介であった。蝋型の空間内では
名札を固定できないので、氏名が読み取り易い最適な場
所に名札を封埋することは至難の技である。また、名札
が斜めに傾いて封埋されると氏名を読み取り難くなって
しまう。だが、経済的に作り直しが許されないので、歯
科医は患者に謝らねばならず、義歯を作製した技工士は
歯科医の叱責を免れない。そのため、厄介な仕事である
のに割りが合わぬと歯科技工士たちに不評であり、別の
義歯識別手段の開発が切望されていた。また、長年のタ
バコのヤニや茶渋などでレジンが汚れ、名札を判読でき
なくなってしまう場合も少なくない。そのため、老人ホ
ームの職員からも改善が要求されていた。本発明が解決
しようとする課題は、欠点が多い従来の名札封埋に代わ
る新規の義歯識別手段を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の発明者は、動物の個体識別用に普及しつつ
ある埋設型電子応答器のマイクロチップに着目した。し
かし、ガラスカプセル内に電子回路を内蔵するマイクロ
チップは熱に弱く、フラスコ内で沸騰させて硬化する加
熱重合型レジンの中に封埋することができない。そこ
で、発明者はマイクロチップを加熱することなく義歯に
封埋できる手段はないかと実験を重ね、ようやく本発明
を完成することができた。すなわち、本発明の持ち主を
特定できる義歯の作製方法は、義歯のレジン層にマーク
挿入溝を形成するステップと、マーク挿入溝に収納した
マークを封埋するステップとから成る。
【0005】上記義歯のレジン層にマーク挿入溝を形成
するステップでは、固化した蝋型にあらかじめ溝状の凹
みを作っておく。すなわち、義歯のレジン歯肉部などレ
ジン層が肉厚になる部位に加工してマーク挿入溝を形成
し、しかる後、粉液両剤を混和した加熱重合型レジンを
フラスコ内の蝋型の空間に注入して加熱する。このよう
にすると、硬化した肉厚のレジン層に設けられたマーク
挿入溝に、きちんとマイクロチップを収納することがで
きる。そのマイクロチップを常温で速やかに硬化する即
時重合型レジンなどで封埋するステップにより、熱に弱
いマイクロチップを安全かつ簡単に義歯へ封埋すること
ができる。このため、従来の名札封埋作業に比べると歯
科技工士の作業効率が格段に向上し、失敗の不安も一掃
されて精神的重圧から解放される。
【0006】上記方法で作製されたマイクロチップ封埋
の義歯は、リーダー(読み取り器)を用いて登録番号を
読み取れるので、簡単かつ確実に義歯の持ち主を特定す
ることができる。従って、食事のたびに多数の義歯をま
とめて洗浄しなければならない老人ホームなどにおいて
は、洗浄した義歯の登録番号をリーダーで次々と読み取
りつつ、持ち主ごとに登録番号を明記した義歯袋などの
容器に、間違いなく各持ち主の義歯を配納することがで
きる。その結果、義歯洗浄係の職員は、ためつすがめつ
氏名の判読に苦労していた従来の面倒な識別作業から解
放され、てきぱきと迅速かつ容易に毎食後の義歯処理作
業を遂行できるようになる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の持ち主を特定できる義歯
の作製方法では、マイクロチップなどのマークを義歯の
レジン歯肉部などに封埋できるようにするため、あらか
じめマーク挿入溝として溝状の凹所をレジン層に形成し
ておく。すなわち、歯科医院で採取した患者の歯型を基
に技工所で蝋型を作製する際、人工大臼歯付近のレジン
歯肉部などレジン層が肉厚になる部位の蝋型に、マーク
挿入溝のための凹みを作る。
【0008】上記マーク挿入溝の形成には、専用の造溝
具を使用すると便利である。すなわち、封埋するマイク
ロチップとほぼ同じ長さと幅に成形したヘッドを柄など
の先端に取り付けた造溝具を、40゜Cほどの湯に漬け
て温めてから蝋型に押し付ける。すると、堅く固化した
パラフィンワックスを軟化させるので、蝋型を破壊せず
にマイクロチップよりもやや大きな凹みを形成すことが
できる。ただし、ヘッドが熱すぎると、ワックスが溶融
して蝋型を歪ませる恐れがあるので、湯温の調整に注意
を払わなければならない。
【0009】あるいは、技工用ナイフなどで蝋型のワッ
クスを溝状に削り取り、そこへ上記造溝具のヘッドを押
し込んでもよい。それによって、マイクロチッブがぴっ
たり納まるサイズのマーク挿入溝を簡単に形成すること
ができる。いずれにせよ、歯科技工士にとって、造溝具
の使用によるマーク挿入溝の形成は極めて容易な作業で
ある。これに要する時間も僅かであり、たいした手間は
かからない。ヘッドの材質としては、金属、合成樹脂、
セラミック、木、竹など任意に選択してよい。
【0010】蝋型にマーク挿入溝のための凹みを成形し
たら、次に、加熱重合型レジンを蝋型の空間に注いで加
熱する。加熱によって硬化したレジン歯肉部には、所望
の部位にマーク挿入溝が形成されている。マーク挿入溝
の形成部位は、作業性の点から、また、咬合力や外力に
よる破損の恐れがない点から、人工大臼歯付近の最も肉
厚なレジン歯肉部の頬側を最適とする。ただし、マイク
ロチップを封埋できる厚みがあれば、義歯のレジン床な
どレジン層のどこに設けてもよく、特に部位を限定する
ものではない。また、マーク挿入溝の深さは、マイクロ
チップを封埋したときにレジン層の表面から陥没せず隆
起もしない程度に形成する。このようにすれば、義歯の
機能を損なう恐れが全くないし、悪臭の発生源にもなら
ない。また、マイクロチップの封埋部が頬の粘膜を圧迫
して使用者に苦痛を与える心配もなく、義歯使用者が舌
で触っても違和感がない。
【0011】上記マーク挿入溝は、すでに使用中の義歯
に形成することも容易である。すなわち、肉厚のレジン
歯肉部を歯科用切削具で溝状に掘削し、即時重合型レジ
ンなどを用いて掘削した溝内にマイクロチッブを封埋す
ればよい。
【0012】本発明に用いるマークはマイクロチップを
好適とする。ただし、市販の動物用マイクロチップは直
径2mm、長さ11mmほどであり、本発明に使用でき
なくはないものの、やや大きすぎる。また、動物体内で
の移動防止手段として、ガラスカプセルにキャップを被
せるなど本発明には不要の加工が施されている。それ
故、本発明を歯科領域で普及させるに当たり、新たに歯
科専用のマイクロチップを開発することが望ましい。も
ちろんサイズは小さければ小さいほど好都合である。小
型化のためなら、情報記憶量をISO国際規格の15桁
以下にしても構わない。また、リーダーには数字だけで
なく、数桁の数字と一緒にキシガミ・ヒサシなどと氏名
がカタカナで表示できるようにすれば、義歯洗浄後の識
別作業が一段と迅速化される。その他のマークとして、
氏名を打ち抜いた金属板やアルファベット形の合成樹脂
板、星形や動物形などのセラミック板、あるいは将来普
及するかもしれないマイクロディスクやマイクロドット
などを封埋してもよい。
【0013】また、本発明に用いるマーク封埋手段とし
ては、メチルメタクリレートを主成分とするレペアジン
(ジーシー株式会社商品名)などの即時重合型レジンを
好適とする。通常の筆積法により、即時重合型レジンの
液(モノマー)と粉末(ポリマー)を混和して、マーク
挿入溝内のマイクロチップに塗布する。すると、常温で
7〜8分後に硬化し、マイクロチップを確実にレジン歯
肉部などのレジン層へ封埋することができる。この即時
重合型レジンとレジン歯肉部の成形に用いた加熱重合型
レジンとは完全に密着接合するので、マーク封埋部が剥
落する恐れは全くない。あるいは、ユニファスト(ジー
シー株式会社商品名)など可視光線で硬化する光重合型
レジンを用いて封埋してもよい。粉末と液を混和してマ
ーク挿入溝内のマイクロチップを被覆してから、光線照
射器を用いて封埋部に光線を照射すれば、加熱すること
なく常温で数分間後に光重合型レジンが硬化する。
【0014】なお、マーク封埋部を透明にしたり、ピン
ク色のレジン歯肉部と色違いにしてもよい。こうする
と、マーク封埋部が一目で分かるので、リーダーの読み
取り距離が短かくても、素早く登録番号を読み取ること
ができる。従って、読み取り作業が楽になり、義歯識別
に要する作業時間をさらに短縮することができる。
【0015】さらに、本発明の用途は義歯だけに限ら
ず、床矯正装置などレジン層を有する口腔人工物のすべ
てに応用できる。また、本発明によって作製されたマイ
クロチップ入りの義歯や矯正装置は、歯科医院において
も非常に役に立つ。例えば、一人の患者が複数個の義歯
を所持している場合が少なくないのであるが、マイクロ
チップの登録番号をカルテあるいはパソコンで照合する
ことにより、たちどころに義歯の作製年月日が判明す
る。また、将来、マイクロチップによる義歯の登録が全
国的に普及すれば、大阪駅や東京駅などに忘れ物の義歯
が山積することもなくなるであろう。
【0016】
【実施例】実施例について図面を参照して説明すると、
図1および図2において、マイクロチップ6を封埋する
マーク挿入溝5は、義歯1の義歯床2で支持されたレジ
ン歯肉部3の頬側に設けている。通常の義歯1では、レ
ジン歯肉部3に植立された人工大臼歯4付近のレジン層
が最も肉厚であるので、市販の動物用マイクロチップで
も充分に余裕をもって確実に封埋することができる。
【0017】封埋に当り、まず、マーク挿入溝5に即時
重合型レジンの液(モノマー)を塗布し、しかる後、図
2の矢印Aに示すようにマイロチップ6をマーク挿入溝
5に押し込む。そして、マイクロチップ6の表面にも液
を塗布する。次に、通常の筆積操作により、筆先に液を
含ませて粉末(ポリマー)に触れ、筆先に付着した粉末
をレジン歯肉部3とマイクロチップ6との隙間やマイロ
チップ6の表面に充填する。数分間で液と粉末とが重合
し始めるので、さらに数回続けて積み上げる。最後に、
レジン歯肉部3の表面よりやや盛り上がる程度に積み重
ね、セロファンや銀箔などを被せて硬化を待つ。常温で
は約7分後に硬化反応が完了する。硬化後、約70゜C
の温湯中に20分間ほど漬けてから、封埋部を研磨具で
滑らかにし、義歯使用者の舌感に支障を来さないように
する。
【0018】本発明を完成させるまで実験に使用したマ
イクロチップは、大日本製薬株式会社が米国デストロン
社から輸入したライフチップ(商品名)であり、直径2
mm、長さ11mmの円筒形をしている。これには体内
移動防止のためのプラスチック製キャップが被せられて
いるので、キャップを除去してから実験に供した。実験
の結果、義歯に封埋されたマイクロチップは正常に作動
し、手持ちリーダーをマイクロチップ封埋部から5cm
以内の距離に接近させて質問電波を発すると、直ちにマ
イクロチップより応答電波が返り、リーダーの表示板に
15桁の数字が表示された。従って、義歯のどこにマイ
クロチップを封埋しても、封埋部の位置に関係なく義歯
の持ち主の登録番号を読み取ることができる。手持ちリ
ーダーのスイッチを一々押すのは煩雑なので、多数の義
歯を連続して識別する場合は、設置型リーダーのアンテ
ナに1個ずつ義歯を近付けるようにすればよい。
【0019】図3に示されている実施例は、本発明の方
法を実行するために必要な造溝具7の一例である。当
初、マイクロチップの実物を指先で蝋型のワックスに押
し当てて凹みを作っていたのであるが、実験を繰り返す
うちに、ヘッド8の形は円筒形よりも断面を台形にした
方が便利であることに気付いた。台形にすると、蝋型に
押し付けたヘッドを抜き取るとき、凹みの縁が崩れず、
きれいにマーク挿入溝を形成できる。よって、図示した
造溝具7では、ヘッド8の天面のサイズをマイクロチッ
プとほぼ同寸の長辺12mm、短辺2mmとし、高さ約
3mm、底面の長辺12mm、短辺3mmとしている。
そして、底面の中央に摘み状の柄9を取り付けている。
柄9の形状は任意であり、片手で把握できる大きさにし
てもよい。ヘッド8を堅いツゲの木で試作したところ、
温湯で温めて使用するとき熱くなりすぎず、蝋型のワッ
クスを溶かす心配がないので非常に便利であった。しか
し、ツゲは高価で成形に手間がかるので、製品にはテフ
ロン加工をしてワックスが付着しないようにした合成樹
脂製のものでもよい。
【0020】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0021】本発明の持ち主を特定できる義歯の作製方
法は、義歯のレジン層にマーク挿入溝を形成し、このマ
ーク挿入溝に挿入したマイクロチップなどのマークを即
時硬化型レジンなどで封埋するものである。この方法の
工程中、格別困難な技術は必要でないから、従来の厄介
な名札封埋作業と比較して、はるかに簡単な加工で済
む。このため、歯科技工士の誰もが安心して、持ち主を
特定できるマイクロチップ入りの義歯を作製できるよう
になる。
【0022】また、義歯に封埋するマークとしてマイク
ロチップを使用することにより、確実に義歯の持ち主の
登録番号を読み取ることができる。このため、老人ホー
ムなどにおける義歯洗浄後の識別作業が、従来の読み辛
い名札方式と比較して、はるかに楽になる。しかも、長
年の使用でタバコのヤニや茶渋による義歯の汚れが酷く
ても、間違いなく義歯の持ち主を特定することができ
る。
【0023】さらに、即時硬化型レジンを使用すること
により、耐熱性のないマイクロチップを加熱することな
く、簡単かつ確実に義歯へ封埋することができる。この
ため、従来の名札封埋による欠点がすべて解消され、義
歯作製に携わる歯科技工士にも、義歯洗浄に携わる老人
ホームなどの職員にも大きな福音となる。
【0024】そして、前記方法によって義歯のレジン層
にマーク挿入溝を形成するとき、本発明の造溝具を使用
することにより、蝋型を破壊することなく極めて容易か
つ確実にマイクロチップとほぼ同寸大の凹みを作ること
ができる。このため、レジン層に形成されたマーク挿入
溝にマイクロチップをきちんと収納し、速やかに即時硬
化型レジンなどで封埋することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の実施例を示す義歯の側面図であ
る。
【図2】本発明の方法の実施例を示す義歯の部分的断面
図である。
【図3】本発明の方法に用いる造溝具を示す斜視図であ
る。
【符号の説明】
1 義歯 5 マーク挿入溝 2 義歯床 6 マイクロチップ 3 リジン歯肉部 7 造溝具 4 人工大臼歯 8 ヘッド

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】義歯のレジン層に形成されたマーク挿入溝
    にマークを封埋する義歯の作製方法において、義歯のレ
    ジン層を成形するための蝋型にマーク挿入溝を形成する
    ステップと、蝋型に注入したレジンが硬化して形成され
    マーク挿入溝にマークを封埋するステップとから成
    る、持ち主を特定できる義歯の作製方法。
  2. 【請求項2】 蝋型に押し付けてマーク挿入溝を形成す
    るための造溝具であって、封埋するマークとほぼ同じ長
    さと幅に成形されたヘッドを備えた請求項1記載の方法
    に用いる造溝具。
JP10687398A 1998-03-14 1998-03-14 持ち主を特定できる義歯の作製方法及びそれに用いる造溝具 Expired - Lifetime JP3026079B2 (ja)

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