JP3018718B2 - 合成油入り電気機器の劣化度判定方法 - Google Patents

合成油入り電気機器の劣化度判定方法

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JP3018718B2
JP3018718B2 JP4048949A JP4894992A JP3018718B2 JP 3018718 B2 JP3018718 B2 JP 3018718B2 JP 4048949 A JP4048949 A JP 4048949A JP 4894992 A JP4894992 A JP 4894992A JP 3018718 B2 JP3018718 B2 JP 3018718B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、シリコ−ン油などの
合成油を冷却媒体を兼ねた絶縁媒体として使用した合成
油入り電気機器の劣化度判定方法に係わり、ことに合成
油入り電気機器から少量の合成油を採取して熱劣化で生
成した低分子量成分を定量分析することにり、局部過熱
や部分放電などの異常現象による劣化度を判定する方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】電気機器の冷却媒体を兼ねた絶縁油とし
て使用可能な合成油としては、シリコ−ン油をはじめ、
炭化水素からなるアルキルナフタレン,ジアリルエタ
ン、エステル結合を持つりん酸エステル,カルボン酸エ
ステル、ハロゲン化合物であるフッ素油などが知られて
おり、ことに、シリコ−ン油は鉱油に比べて耐熱性,難
燃性に優れているので、特に軽量化のために高い運転温
度と高度の信頼性が要求される車両用変圧器に鉱油系絶
縁油に代わって使用されている。これらの油入り電気機
器では運転温度においても徐々に熱劣化が進行するが、
機器内部で局部的な過熱や部分放電などの異常事態が発
生すると合成油および有機絶縁材料等の劣化が急速に進
行し、ついには絶縁事故に進展する危険性があるため、
これらの異常事態の発生を早期に検出して絶縁事故を未
然に防止できる予防保全技術の確立が求められている。
【0003】予防保全技術としては、分子構造が明らか
でない鉱油を用いた鉱油入り電気機器の場合、診断対象
機器から採取した鉱油試料中の溶存ガスを抽出して、そ
の成分および生成量を分析する操作を定期的に繰り返し
行うことにより、そのガス生成パタ−ンや成分および生
成量などから機器内部での局部過熱や部分放電などの異
常事態の発生を検知する劣化度判定方法が、非破壊方式
の診断技術として既に知られている。しかしながら、異
常の程度や機器の残存寿命を判定するまでには至ってい
ない。
【0004】一方、合成油入り電気機器の劣化度判定方
法としては、合成油の熱劣化に伴ってその引火点の低下
現象、および蒸発量の増加現象、あるいは低分子量成分
の増加現象が現れることが知られており、この現象を利
用した劣化度判定方法として、分子構造が明らかな合成
油,例えばシリコ−ン油を用いた合成油入り電気機器に
ついて、診断対象機器から少量採取した合成油試料の蒸
発量を測定する方法、および低分子量成分の生成総量を
測定する方法が知られている。
【0005】図5はシリコ−ン油の熱劣化による引火点
と蒸発量との関係を示す特性線図であり、シリコ−ン油
としてポリジメチルシロキサン(25°cにおける粘度
50cst)の強制加熱劣化処理条件を変えて求めた引
火点と蒸発量との相関関係を示しており、蒸発量が1%
を越えると引火点が急激に低下する傾向を示している。
そこで診断対象機器から少量採取したシリコ−ン油試料
を150°cで24時間加熱した後、試料油の蒸発によ
る減量を測定し、蒸発量1%を管理値として診断対象機
器の劣化度を判定する方法が知られている。
【0006】図6はポリジメチルシロキサンの熱劣化に
よる蒸発減量と生成低分子成分の濃度との関係を示す特
性線図であり、ポリジメチルシロキサンの熱劣化により
生成する低分子量化合物、ヘキサメチルシクロトリシロ
キサン(D 3 )、オクタメチルシクロテトラシロキサ
(D 4 )、デカメチルシクロペンタシロキサン(D 5 )、
およびドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D 6 )の
生成総量と蒸発量との間には直線的な比例関係があり、
蒸発量1%に相応する低分子量成分の濃度は0.75%
であることを示している。そこで、診断対象機器から少
量採取したシリコーン油試料中の低分子量成分をガスク
ロマトグラフィーを用いて定量分析し、低分子量成分の
総量の管理値を0.75%として診断対象機器の劣化度
を判定する方法が知られている(特公昭61―3182
4号公報参照)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一般的に耐熱性,難燃
性に優れたシリコ−ン油などの合成油を冷却媒体を兼ね
た絶縁媒体として使用した合成油入り電気機器において
は、機器の定常的な温度上昇による劣化よりも、機器内
部の局部的な過熱や部分放電等の異常事態による劣化が
支配的要因となる場合が多く、これらの異常事態を早期
に検知できる劣化度判定方法が望まれている。ところ
が、局部的な異常現象部分で劣化した合成油は油の対流
あるいは循環によって機器内部の油全体に拡散し,希釈
されてしまうために、機器から採取した合成油試料中の
蒸発量または低分子量成分濃度の総量を測定する従来の
劣化度判定方法では、検出量の変化が少なく、局部的異
常現象の発生を感度よく早期に検出できないという欠点
がある。また、蒸発量を測定する従来の劣化度判定方法
では、蒸発減量を測定するための加熱処理に24時間を
要すること、また多数回の秤量を行うために作業工数が
嵩むこと、ならびに約10mlの合成油試料を定期的な
測定を行うたびに採取するために、合成油使用量の少な
い機器においては不足した合成油の補充が必要になるこ
となどの欠点がある。
【0008】この発明の目的は、診断対象電気機器から
微量の合成油を採取して分析することにより、局部過熱
温度を的確に判定でき、さらには主要材料の劣化度,残
存寿命を判定できる劣化度判定方法を得ることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、この発明によれば、合成油入り電気機器から合成油
試料を採取し、分析機器により前記合成油試料中の所定
の低分子量成分を定量分析し、得られた分析結果から特
定低分子量成分に対する各低分子量成分の濃度比率を求
め、この濃度比率および累積加熱時間をあらかじめ同種
の合成油について求めた判定カ−ブと照合し、前記電気
機器内部における発熱部位の温度を判定することとす
る。
【0010】また上記劣化度判定方法において判定カー
ブが、合成油入り電気機器内の合成油と同種の合成油の
加熱温度と加熱時間を変えて強制劣化させた劣化油につ
いて得られた低分子量成分の濃度比率データに基づいて
作成されたものであることとする。さらに、上記劣化度
判定方法において合成油試料がシリコーン油である場
合、所定の低分子量成分が、ヘキサメチルシクロトリシ
ロキサン(D 3 )、オクタメチルシクロテトラシロキサ
ン(D 4 )、デカメチルシクロペンタシロキサ
(D 5 )、およびドデカメチルシクロヘキサシロキサ
(D 6 )の内少なくとも2つ以上を含むこととする。
【0011】さらに、上記各劣化度判定方法において、
ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D 3 )を特定低分
子量成分とし、その濃度を基準として他の低分子量成分
の濃度比率を求めることとする。さらにまた、合成油入
り電気機器から合成油試料を定期的に採取し、分析機器
により前記各合成油試料中の所定の低分子量成分を定量
分析して濃度比率を求め、得られた濃度比率が急増する
時点を判別して起点とし、この時点からの経過時間を累
積過熱時間とすることとする。
【0012】一方、合成油入り電気機器から合成油試料
を定期的に採取し、分析機器により前記各合成油試料中
の所定の低分子量成分を定量分析し、得られた分析結果
から特定低分子量成分に対する各低分子量成分の濃度比
率を求め、この濃度比率および累積加熱時間をあらかじ
め同種の合成油について求めた判定カ−ブと照合して前
記電気機器内部における発熱部位の温度を判定するとと
もに、判定温度の急増時点から累積加熱時間を求め、得
られた判定温度および累積加熱時間を前記合成油入り電
気機器内部の特定構成材料についてあらかじめ求めた熱
劣化判定カ−ブと照合して前記合成油入り電気機器の劣
化度を判定することとする。
【0013】また、上記劣化度判定方法において熱劣化
判定カ−ブが、合成油入り電気機器内の有機絶縁材料と
同種の有機絶縁材料の加熱温度と加熱時間を変えて強制
劣化させた劣化試料について所定の特性低下率デ−タを
アレニウスプロットして得られた寿命曲線であり、この
寿命曲線に判定温度を照合して得られる寿命時間と累積
加熱時間との差を残存寿命とすることとする。
【0014】さらに、熱劣化判定カ−ブが、合成油入り
電気機器内の有機絶縁材料と同種の有機絶縁材料の加熱
温度を判定温度として強制劣化させた劣化試料について
得られた特性低下曲線であり、この特性低下曲線と累積
加熱時間とを照合して得られる特性値とその特性の初期
値との比を前記有機絶縁材料の劣化度とすることとす
る。
【0015】
【作用】この発明の構成において、合成油入り電気機器
から合成油試料を採取し、分析機器により合成油試料中
の所定の低分子量成分を定量分析し、得られた分析結果
から特定低分子量成分に対する各低分子量成分の濃度比
率を求め、この濃度比率および累積過熱時間をあらかじ
め同種の合成油について求めた判定カ−ブと照合し、電
気機器内部における発熱部位の温度を判定するよう劣化
度判定方法を構成したことにより、例えば局部過熱部で
生成した低分子量成分が対流や循環により希釈されて
も、特定低分子量成分に対する各低分子量成分の濃度比
率は変化しないので、これをあらかじめ同種の合成油に
ついて求めた判定カ−ブと照合することにより、電気機
器内部における発熱部位の温度を検知する機能が得られ
る。
【0016】また、上記劣化度判定方法において判定カ
−ブを、合成油入り電気機器内の合成油と同種の合成油
の加熱温度と加熱時間を変えて強制劣化させた劣化油に
ついて得られた低分子量成分の濃度比率デ−タに基づい
て作成すれば、使用する合成油の分子構造によって異な
る低分子量成分の濃度比率を的確に捉えて電気機器内部
における発熱部位の温度を精度よく検知する機能が得ら
れる。
【0017】さらに、上記劣化度判定方法において合成
油試料がシリコーン油である場合、所定の低分子量成分
が、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D 3 )、オク
タメチルシクロテトラシロキサン(D 4 )、デカメチル
シクロペンタシロキサン(D 5 )、およびドデカメチル
シクロヘキサシロキサン(D 6 )の内少なくとも2つ以
上、好ましくはヘキサメチルシクロトリシロキサン(D
3 )を特定低分子量成分とし、その濃度を基準として他
の低分子量成分との濃度比率を求めることにより、局部
過熱部の温度と累積過熱時間に対して特徴のあるシリコ
ーン油固有の濃度比率特性パターンを有する温度判定カ
ーブが得られるので、この判定カーブを利用して、電気
機器内部における発熱部位の温度を精度よく検知する機
能が得られる。
【0018】さらにまた、合成油入り電気機器から合成
油試料を定期的に採取し、分析機器により各合成油試料
中の所定の低分子量成分を定量分析して濃度比率を求
め、得られた濃度比率が急増する時点を判別して起点と
し、この時点からの経過時間を累積過熱時間とすれば、
定期的監視を頻繁に行うことにより精度の高い過熱温度
の検知が可能になるとともに、合成油試料として僅か1
μl を採取してガスクロマトグラブィ−を用いて簡単か
つ短時間で低分子量成分を測定できるので、定期的監視
を頻繁に行うに必要な合成油の採取量が僅かで済み、か
つ測定作業を簡単化する機能が得られる。
【0019】一方、上記各実施例で得られた判定温度お
よび累積加熱時間を合成油入り電気機器内部の特定構成
材料についてあらかじめ求めた熱劣化判定カ−ブと照合
して合成油入り電気機器の劣化度を判定するよう構成す
れば、熱劣化判定カ−ブを例えば、合成油入り電気機器
内の有機絶縁材料と同種の有機絶縁材料の加熱温度と加
熱時間を変えて強制劣化させた劣化試料について所定の
特性低下率デ−タをアレニウスプロットして得られた寿
命曲線とすれば、この寿命曲線に判定温度を照合して得
られる寿命時間と累積加熱時間との差から、合成油入り
電気機器の劣化度を局部過熱部における有機絶縁材の残
存寿命として容易に推定することができる。また、熱劣
化判定カ−ブを、合成油入り電気機器内の有機絶縁材料
と同種の有機絶縁材料の加熱温度を判定温度として強制
劣化させた劣化試料について得られた特性低下曲線とす
れば、この特性低下曲線と累積加熱時間とを照合して得
られる特性値とその特性の初期値との比から、有機絶縁
材料の劣化度を容易に判定することができる。
【0020】
【実施例】以下、この発明を実施例に基づいて説明す
る。合成油入り電気機器が例えば車両用油入り変圧器で
ある場合、その冷却媒体を兼ねた絶縁媒体としての合成
油にはシリコ−ン油が一般的に使用される。このシリコ
−ン油としてはポリジメチルシロキサン(25°cにお
ける粘度50cst)が多く用いられている。そこで先
ず、この劣化度判定方法を実施するにあたり、あらかじ
め用意すべき温度判定カ−ブの作成方法について説明す
る。
【0021】図1はポリジメチルシロキサンを300#
cで加熱劣化した場合における低分子化合物濃度の経時
変化を示す特性線図、図2はこの発明の実施例になる合
成油入り電気機器の劣化度判定方法における温度判定カ
ーブの一例を示す特性線図である。図1は300#cで
連続加熱中のポリジメチルシロキサンから、一定時間毎
に1μlの試料油を採取し、ガスクロマトグラフィーを
用いて低分子量成分を定量分析し、得られた低分子化合
物濃度を累積過熱時間を横軸とする両対数グラフ上にプ
ロットして得られた特性線図である。ポリジメチルシロ
キサン(25#cにおける粘度50cst)を加熱劣化
すると、劣化初期には末端からの主鎖の開裂により、ヘ
キサメチルシクロトリシロキサン(D 3 )、オクタメチ
ルシクロテトラシロキサン(D 4 )、デカメチルシクロ
ペンタシロキサン(D 5 )、およびドデカメチルシクロ
ヘキサシロキサン(D 6 )などの環量体と称する低分子
量化合物が主に生成する。ことに図から明らかなよう
に、最初低分子量化合物の主成分である 3 は不安定な
物質であるため、加熱時間の経過とともにより安定な物
4 5 6 へと変化し、これに伴って 3 のみが濃
度1%を上限にしてそれ以上加熱しても濃度が増加しな
い飽和特性を示す。
【0022】したがって、飽和特性を持つ 3 を特定低
分子量成分として他の低分子量成分 4 5 6 との
成分濃度比率を求めれば、得られた成分濃度比率は過熱
温度および過熱時間の関数としてポリジメチルシロキサ
ン固有の特性パターンを持つことになり、この発明にお
いて局部加熱温度を判定するための温度判定カーブとし
て利用することができる。図2は、図1に示すと同様の
特性線図を異なる複数の加熱温度に対応して求め、得ら
れた多数のデータから成分濃度比率 3 5 を求めた温
度判定カーブであり、成分濃度比率 3 4 3 6
についても同様に温度判定カーブを作成することができ
る。
【0023】次に、実施例になる劣化度判定方法の手順
を説明する。先ず、診断対象機器からシリコーン油試料
としてのポリジメチルシロキサン(25#cにおける粘
度50cst)を約1μl採取し、ガスクロマトグラフ
ィーを用いてシリコーン油試料中の低分子量化合物濃度
を定量分析する。得られた低分子量化合物濃度データか
ら例えば成分濃度比率 3 5 を求め、図2に示す温度
判定カーブと照合する。この時、診断対象機器の内部に
局部過熱や部分放電などの異常現象が無ければ、成分濃
度比率は約6.3(上限値)を示し、かつ運転温度が例
えば200#cよりかなり低い温度であれば、シリコー
ン油試料を定期的に採取して上記診断を繰り返し行って
も最初の診断からの累積過熱時間に対する成分濃度比率
の低下が少なく、このことから診断対象機器に異常が無
いことを検知できる。
【0024】一方、診断対象機器が運転中例えば過負荷
運転などにより巻線温度が200#cを超える異常温度
上昇を伴う場合、その過負荷時間の合計値を累積過熱時
間とし、得られた成分濃度比率を上記累積過熱時間の相
当する温度判定カーブと照合することにより、過負荷運
転による温度上昇値を判定することができる。すなわ
ち、累積過熱時間tA が250時間であり、得られた成
分濃度比率 3 5 が約3.2であったとすれば、図2
の温度判定カーブを用いて過負荷による巻線の異常温度
上昇値TA を250#cと判定することができる。
【0025】さらに、定期的な診断において成分濃度比
率つたは成分濃度値が急変した場合、診断周期の半分に
相当する時間を累積過熱時間として判定を行うことによ
り、局部過熱温度を推定できるとともに、診断周期を短
縮して濃度比率を求め、成分濃度比率急変時からの経過
時間を累積加熱時間として局部過熱温度を判定すること
により、より精度の高い過熱温度を得ることができる。
【0026】次に、局部過熱温度の判定値から機器内部
の主要構成材料の劣化度を判定する方法について説明す
る。図3はこの発明の異なる実施例になる合成油入り電
気機器の劣化度判定方法における劣化度判定カ−ブを示
す特性線図である。診断対象機器の耐熱寿命を左右する
構成材料が有機絶縁材料である場合、この有機絶縁材料
をシリコ−ン油中で過熱温度と過熱時間を変えて強制過
熱劣化させ、その機械的特性または電気的絶縁特性を測
定し、その特性値が初期値に対して所定レベル低下する
時間と温度を、時間の対数と絶対温度の逆数を横軸およ
び縦軸に採ったグラフ上にプロットして得られる耐熱寿
命曲線(アレニウスプロット曲線と呼ぶ)が直線で近似
できることは既に知られており、この耐熱寿命曲線を劣
化度判定カ−ブとして判定温度と照合することにより、
判定温度における有機絶縁材料の劣化度(残存寿命)を
判定することができる。
【0027】図3は車両用シリコ−ン油入り変圧器の巻
線導体の被覆材として使用される芳香族ポリアミド紙
(商品名 Nomex)について求めた劣化判定カ−ブであ
り、診断対象機器から採取したシリコ−ン油試料の判定
温度がTA °cであった場合、図3からその寿命時間t
b を求めることができる。したがって、判定温度TA
おける累積過熱時間がta であった場合、寿命時間tb
と累積過熱時間との差tb−ta が上記巻線絶縁被覆材
の残存寿命時間となり、診断対象機器の残存寿命が求ま
るので、定期的な診断を行うことにより機器の絶縁事故
を未然に防止できるとともに、機器の改修や更新時期を
早期に計画することができる。
【0028】図4はこの発明の他の実施例になる合成油
入り電気機器の劣化度判定方法における劣化度判定カ−
ブを示し、判定温度TA °cにおける芳香族ポリアミド
紙の機械的強度と加熱時間との関係を示す特性線図であ
る。図において、累積加熱時間ta をこの劣化判定カ−
ブと照合することにより、判定温度TA ,累積加熱時間
a に対応する機械的強度Ntaを求めることができる。
したがって、機械的強度の初期値N0 と機械的強度の判
定値Ntaとの比から芳香族ポリアミド紙の劣化度を判定
できるとともに、許容できる機械的強度の下限値Ntx
管理値としてあらかじめ設定しておけば、管理値Ntx
対応する寿命時間tx と累積加熱時間t a との差から診
断対象機器の残存寿命を求めることができる。
【0029】なお、上述の実施例は、シリコ−ン油を用
いた合成油入り電気機器の場合を例に説明したが、他の
合成油を用いた合成油入り電気機器の劣化度判定方法
も、図2,図3,あるいは図4に対応する判定カ−ブを
異なる合成油および有機絶縁材料毎にあらかじめ準備し
ておくことにより、容易に実施することができる。
【0030】
【発明の効果】この発明は前述のように、合成油入り電
気機器から合成油試料を採取し、分析機器により合成油
試料中の所定の低分子量成分を定量分析し、得られた分
析結果から特定低分子量成分に対する各低分子量成分の
濃度比率を求め、この濃度比率および累積過熱時間をあ
らかじめ同種の合成油について求めた判定カ−ブと照合
し、電気機器内部における発熱部位の温度を判定するよ
う劣化度判定方法を構成した。その結果、例えば局部過
熱部で生成した低分子量成分が対流や循環により希釈さ
れても、特定低分子量成分に対する各低分子量成分の濃
度比率は変化しないので、これをあらかじめ同種の合成
油について求めた判定カ−ブと照合することにより、診
断対象機器内部における発熱部位の温度を検知すること
が可能になり、機器から採取した合成油試料中の蒸発量
または低分子量成分濃度の総量を測定する従来の劣化度
判定方法で問題となった、局部的な異常現象部分で劣化
した合成油が油の対流あるいは循環によって機器内部の
油全体に拡散,希釈されてしまうことにより検出量の変
化が少なく、局部的異常現象の発生を感度よく早期に検
出できないという欠点が排除され、局部的過熱部の温度
を精度よく早期に判定できる合成油入り電気機器の劣化
度判定方法を提供することができる。
【0031】また、診断対象機器から1μl程度の微量
の合成油試料を採取して生成低分子量成分を簡単かつ短
時間で定量分析できるので、蒸発量を測定する従来の劣
化度判定方法で問題となった蒸発減量の測定時間を短縮
し、秤量作業を排除できるとともに、採取する油量が極
めて微量で済むので、合成油使用量の少ない機器におい
ても合成油を補充することなく診断を定期的に行うこと
ができる。
【0032】さらに、主要構成材料の熱劣化判定カ−ブ
をあらかじめ用意しておけば、判定温度および累積過熱
時間と照合することにより、局部的異常現象の発生部位
におてる主要構成材料の劣化度および残存寿命を判定で
きる合成油入り電気機器の劣化度判定方法を提供するこ
とができるので、局部的異常現象を早期に検知してこれ
に起因する絶縁事故を未然に防止できるとともに、機器
の改修や更新などを計画的に行える予防保全効果が得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリジメチルシロキサンを300°cで過熱劣
化した場合における低分子化合物濃度の経時変化を示す
特性線図
【図2】この発明の実施例になる合成油入り電気機器の
劣化度判定方法における温度判定カ−ブの一例を示す特
性線図
【図3】この発明の異なる実施例になる合成油入り電気
機器の劣化度判定方法における劣化度判定カ−ブを示す
特性線図
【図4】この発明の他の実施例になる合成油入り電気機
器の劣化度判定方法における劣化度判定カ−ブを示す特
性線図
【図5】シリコ−ン油の熱劣化による引火点と蒸発量と
の関係を示す特性線図
【図6】ポリジメチルシロキサンの熱劣化による蒸発減
量と生成低分子量成分の濃度との関係を示す特性線図
【符号の説明】 3 ヘキサメチルシクロトリシロキサ 4 オクタメチルシクロテトラシロキサ 5 デカメチルシクロペンタシロキサ 6 ドデカメチルシクロヘキサシロキサA 判定温度 ta 累積過熱時間 tb 寿命時間 N0 機械的強度の初期値(主要構成材料) Nta 判定機械強度(主要構成材料) Ntx 機械強度の管理値(主要構成材料)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/26 H01F 27/00 H02H 5/04 G01N 25/52

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】合成油入り電気機器から合成油試料を採取
    し、分析機器により前記合成油試料中の所定の低分子量
    成分を定量分析し、得られた分析結果から特定低分子量
    成分に対する各低分子量成分の濃度比率を求め、この濃
    度比率および累積過熱時間をあらかじめ同種の合成油に
    ついて求めた判定カ−ブと照合し、前記電気機器内部に
    おける発熱部位の温度を判定することを特徴とする合成
    油入り電気機器の劣化度判定方法。
  2. 【請求項2】判定カ−ブが、合成油入り電気機器内の合
    成油と同種の合成油の加熱温度と加熱時間を変えて強制
    劣化させた劣化油について得られた低分子量成分の濃度
    比率デ−タに基づいて作成されたものであることを特徴
    とする請求項1記載の合成油入り電気機器の劣化度判定
    方法。
  3. 【請求項3】合成油試料がシリコーン油である場合、所
    定の低分子量成分が、ヘキサメチルシクロトリシロキサ
    ン(D 3 )、オクタメチルシクロテトラシロキサ
    (D 4 )、デカメチルシクロペンタシロキサン(D 5 )、
    およびドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D 6 )の
    内少なくとも2つ以上を含むことを特徴とする請求項1
    または請求項2記載の合成油入り電気機器の劣化度判定
    方法。
  4. 【請求項4】ヘキサメチルシクロトリシロキサ
    (D 3 )を特定低分子量成分とし、その濃度を基準とし
    て他の低分子量成分との濃度比率を求めることを特徴と
    する請求項3記載の合成油入り電気機器の劣化度判定方
    法。
  5. 【請求項5】合成油入り電気機器から合成油試料を定期
    的に採取し、分析機器により前記各合成油試料中の所定
    の低分子量成分を定量分析して濃度比率を求め、得られ
    た濃度比率が急増する時点を判別して起点とし、この時
    点からの経過時間を累積過熱時間とすることを特徴とす
    る請求項1記載の合成油入り電気機器の劣化度判定方
    法。
  6. 【請求項6】合成油入り電気機器から合成油試料を採取
    し、分析機器により前記合成油試料中の所定の低分子量
    成分を定量分析し、得られた分析結果から特定低分子量
    成分に対する各低分子量成分の濃度比率を求め、この濃
    度比率および累積過熱時間をあらかじめ同種の合成油に
    ついて求めた判定カ−ブと照合し、前記電気機器内部に
    おける発熱部位の温度を判定するとともに、得られた判
    定温度および累積加熱時間を前記合成油入り電気機器内
    部の特定構成材料についてあらかじめ求めた熱劣化判定
    カ−ブと照合して前記合成油入り電気機器の劣化度を判
    定することを特徴とする合成油入り電気機器の劣化度判
    定方法。
  7. 【請求項7】熱劣化判定カ−ブが、合成油入り電気機器
    内の有機絶縁材料と同種の有機絶縁材料の加熱温度と加
    熱時間を変えて強制劣化させた劣化試料について所定の
    特性低下率デ−タをアレニウスプロットして得られた寿
    命曲線であり、この寿命曲線に判定温度を照合して得ら
    れる寿命時間と累積加熱時間との差を残存寿命とするこ
    とを特徴とする請求項6記載の合成油入り電気機器の劣
    化度判定方法。
  8. 【請求項8】熱劣化判定カ−ブが、合成油入り電気機器
    内の有機絶縁材料と同種の有機絶縁材料の加熱温度を判
    定温度として強制劣化させた劣化試料について得られた
    特性低下曲線であり、この特性低下曲線と累積加熱時間
    とを照合して得られる特性値とその特性の初期値との比
    を前記有機絶縁材料の劣化度とすることを特徴とする請
    求項6記載の合成油入り電気機器の劣化度判定方法。
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