JP2018124185A - 絶縁油分析による油入りケーブル中の有機銅化合物および硫化銅の生成状況の推定方法、並びに油入りケーブルの異常発生の危険度の診断方法 - Google Patents

絶縁油分析による油入りケーブル中の有機銅化合物および硫化銅の生成状況の推定方法、並びに油入りケーブルの異常発生の危険度の診断方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 絶縁油を用いた油入りケーブル中の有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定し、当該方法で推定された有機銅化合物および硫化銅の生成状況に基づいて、油入りケーブルの異常発生の危険度を評価する診断方法を提供すること。【解決手段】 絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成する工程1と、工程1で得られた測定値に基づき、最大油中溶解銅量を求める工程2と、工程2で求めた最大油中溶解銅量からの減少量を求める工程3と、油中溶解銅量に対するtanδの比を求める工程4と、を含み、最大油中溶解銅量と、TCGの最大値と、最大油中溶解銅量からの減少量と、油中溶解銅量に対するtanδの比から、有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定する。【選択図】図5

Description

本発明は、絶縁油分析による油入りケーブル中の有機銅化合物および硫化銅の生成状況の推定方法、並びに油入りケーブルの異常発生の危険度の診断方法に関する。
油入り変圧器などの油入り電気機器は、油入り電気機器の銅部品と絶縁油中の硫黄成分の反応により導電性の硫化銅が生成(硫化腐食)し、絶縁破壊を引き起こすために油入り電気機器に致命的な損傷を及ぼす場合があることが知られている。絶縁油中の推定硫黄成分としては、絶縁油中に含まれている硫黄成分や、絶縁紙等の部材から溶出する溶出硫黄成分や、絶縁油に後添加する酸化防止剤等の添加硫黄成分が考えられる。
大型変圧器などの油入り電気機器では、絶縁体として油浸紙を使用するため、この油浸絶縁紙に硫化銅が付着したときはコイル間で短絡が発生し、破壊されることになり、海外では絶縁破壊事例として報告されている。また、同じ絶縁体として油浸紙を使用している油入りケーブルの劣化は、非常に緩やかであると考えられてきたが、近年経年油入りケーブル線路における絶縁破壊事例も確認されている。ただし、絶縁破壊要因が硫化銅生成という報告はされていない。
硫化銅生成に関わる反応メカニズムは、絶縁油中に添加された酸化防止剤ジベンジルジスルフィド(以下、「DBDS」と略称することがある。)との関係で詳細に検討されている。すなわち、DBDSがコイル銅に吸着し、次に、DBDSがコイル銅と反応してDBDS−銅錯体を生成し、さらに、DBDS−銅錯体がベンジルラジカル及びベンジルスルフェニルラジカルと硫化銅へと分解する反応が起こるためと報告されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
特許文献1および特許文献2では、稼動中の変圧器から絶縁油を採取し、DBDSやその分解物、副生成物などを分析して硫化銅の生成を予測し、油入り電気機器の異常発生の危険度を診断する方法を開示している。また、特許文献3では、絶縁油が空気雰囲気下にある場合に、絶縁油中のジベンジルスルホキシドの濃度を測定し、該濃度に基づいて、硫化銅の生成量を推定する方法を開示している。
しかしながら、上記の診断方法は、絶縁油中にDBDSが添加されていることが不可欠であり、基本的にDBDSを添加していない絶縁油を用いている油入りケーブルの場合は、絶縁油中のDBDS−銅錯体生成量から絶縁油中の硫化銅生成量を推定できない問題点がある。また、従来、油入りケーブルの点検技術としては、絶縁油の誘電正接(tanδ)測定や、絶縁油中のガスを分析し、部分放電(絶縁油の局所的な絶縁破壊)により生成される可燃性ガス量を、劣化度合いの目安とする油中ガス分析が一般的であり、有機銅化合物や硫化銅の生成状況から危険度を診断する方法は実施されていない。
特開2010−010439号公報 特開2012−156232号公報 特開2014−045212号公報
本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたものであり、油入りケーブル中の有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定し、当該方法で推定された有機銅化合物および硫化銅の生成状況に基づいて、油入りケーブルの異常発生の危険度を評価する診断方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した。その結果、絶縁油を使用した油入りケーブルの解体調査結果より、当該油入りケーブル中においても硫化銅が生成すること;硫化銅の生成原因と思われる絶縁油中の溶解銅量(以下、油中溶解銅量という。)と絶縁油の誘電正接(tanδ)との間に相関関係が認められること;有機銅化合物および硫化銅生成時には、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の経時変化を示したトレンドグラフにおいてそれぞれの値が極大値をとった後に減少する傾向があること;有機銅化合物および硫化銅の生成時には絶縁油中に可燃性ガスが発生し、絶縁油中の可燃性ガス総量(Total Combustible Gas:TCG)が増加すること;に着目した。
そして、油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量、誘電正接(tanδ)及び可燃性ガス量(TCG)から有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することができ、当該方法で推定された有機銅化合物および硫化銅の生成状況に基づいて、油入りケーブルの異常発生の危険度を診断することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の硫化銅生成状況の推定方法は、
絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定する方法であって、
前記油入りケーブルの使用経過に応じて、該ケーブルから絶縁油を採取して、該絶縁油の油中溶解銅量、誘電正接(tanδ)および可燃性ガス総量(TCG)を測定し、得られた測定値に基づき、油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成する工程1と、
前記工程1で得られた測定値に基づき、下記式(1)により、最大油中溶解銅量を求める工程2を含み、
作成されたトレンドグラフにおいて、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値が極大値を示した後に減少して行く期間を、有機銅化合物および硫化銅の生成期と推定し、前記工程2で求めた最大油中溶解銅量と、前記トレンドグラフで示される有機銅化合物および硫化銅の生成期における可燃性ガス総量(TCG)の最大値から、油入りケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することを特徴とする。
[Cu]max=(tanδmax−tanδ)×{[Cu]/(tanδ−tanδ)}・・・(1)
(ただし、上記式(1)において、[Cu]maxは、最大油中溶解銅量であり、tanδmaxは、前記工程1で作成された誘電正接(tanδ)のトレンドグラフから導いた極大値であり、tanδは、油入りケーブルの使用開始前における絶縁油(新品の絶縁油)の誘電正接(tanδ)の値であり、tanδおよび[Cu]はそれぞれ、油入りケーブルの使用開始後のある時点における絶縁油の誘電正接(tanδ)および油中溶解銅量の各値である。)
このような本発明の有機銅化合物および硫化銅の生成状況の推定方法は、油入りケーブルを構成する導体が、絶縁油中の炭化水素や非炭化水素化合物と反応し、銅錯体もしくは銅化合物として絶縁油中に溶解し、当該銅錯体が高電界領域にある補強絶縁層の絶縁紙に誘電泳動により凝集し、銅触媒として絶縁油の酸化や銅錯体もしくは銅化合物との結合反応を促進させ、有機銅化合物を生成する、ひいては硫化銅を生成し、この有機銅化合物もしくは硫化銅が高電界領域に誘電泳動し、絶縁紙上に凝集堆積するとの推定に基づいている。
また、油入りケーブル使用前の絶縁油について、誘電正接(tanδ)と油中溶解銅量との間に直線性の正の相関が認められるため、上記式(1)に基づき、最大油中溶解銅量が算出でき、該最大油中溶解銅量は大きいほど、有機銅化合物および硫化銅の生成量が多くなるとの推定に基づいている。
また、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)のトレンドは相関する。いずれのパラメータを使用しても有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することが可能である。蓄積データ量、信頼性の高さ、データ処理のし易さ等を考慮して任意に選択できる。
また、本発明の硫化銅生成状況の推定方法においては、
前記工程1で得られた測定値および前記工程2で求めた最大油中溶解銅量に基づき、最大油中溶解銅量からの減少量を求める工程3をさらに含み、
前記工程3で求めた最大油中溶解銅量からの減少量をさらに用いて、油入りケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することが好ましい。
また、本発明の硫化銅生成状況の推定方法においては、
前記工程1で得られた測定値に基づき、油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比を求める工程4をさらに含み、
前記工程4で求めた油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比をさらに用いて、油入りケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することが好ましい。
また、本発明の診断方法は、
絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における異常発生の危険度を評価する診断方法であって、
前記油入りケーブルの使用経過に応じて、該ケーブルから絶縁油を採取して、該絶縁油の油中溶解銅量、誘電正接(tanδ)および可燃性ガス総量(TCG)を測定し、得られた測定値に基づき、油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成する工程1と、
前記工程1で得られた測定値に基づき、下記式(1)により、最大油中溶解銅量を求める工程2と、
前記工程1で得られた測定値および前記工程2で求めた最大油中溶解銅量に基づき、最大油中溶解銅量からの減少量を求める工程3と、
前記工程1で得られた測定値に基づき、油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比を求める工程4と、を含み、
前記工程1で作成されたトレンドグラフで示される油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方が減少過程または減少後ほぼ定常状態にある油入りケーブルを、要診断と評価し、
前記要診断と評価された油入りケーブルについて、(a)前記工程2で求めた最大油中溶解銅量と、(b)前記トレンドグラフで示される有機銅化合物および硫化銅の生成期における可燃性ガス総量(TCG)の最大値と、(c)前記工程3で求めた最大油中溶解銅量からの減少量と、(d)前記工程4で求めた油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比を、予め設定しておいた各基準値に基づき評価し、前記危険度を評価することを特徴とする。
[Cu]max=(tanδmax−tanδ)×{[Cu]/(tanδ−tanδ)}・・・(1)
(ただし、上記式(1)において、[Cu]maxは、最大油中溶解銅量であり、tanδmaxは、前記工程1で作成された誘電正接(tanδ)のトレンドグラフから導いた極大値であり、tanδは、油入りケーブルの使用開始前における絶縁油(新品の絶縁油)の誘電正接(tanδ)の値であり、tanδおよび[Cu]はそれぞれ、油入りケーブルの使用開始後のある時点における絶縁油の誘電正接(tanδ)および油中溶解銅量の各値である。)
また、本発明の診断方法においては(a)前記工程2で求めた最大油中溶解銅量と、(b)前記トレンドグラフで示される有機銅化合物および硫化銅の生成期における可燃性ガス総量(TCG)の最大値との両方が、予め設定しておいた各基準値を超える場合を、前記危険度がより高いと評価することが好ましい。
なお、油中溶解銅量は、有機銅化合物および硫化銅の生成要因となる銅量を表す指標であるため、有機銅化合物および硫化銅の生成に直結する因子である。また、可燃性ガス総量(TCG)量は、絶縁油溶存ガスの増加を表す指標であるため、部分放電の危険性を評価する上で重要である。
本発明の有機銅化合物および硫化銅の生成状況の推定方法によれば、トレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値が、極大値を示した後に、減少して行く期間を、有機銅化合物および硫化銅の生成期と推定するので、油入りケーブルから採取した絶縁油の油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値から、有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することが可能になる。
また、本発明の診断方法によれば、油中ガス分析(部分放電や熱劣化により発生したガスのトレンド傾向診断)、絶縁油の電気特性の低下傾向診断(tanδ、TCG、体積抵抗率、AC耐圧測定)、水の浸入診断(水分量測定)等による従来の診断方法とは異なる観点で、硫化銅生成メカニズムに基づいて診断するので、ジベンジルジスルフィドを添加していない絶縁油を使用した油入りケーブルについても劣化診断が可能になる。
さらに、絶縁油の誘電正接(tanδ)と絶縁油中の可燃性ガス総量(TCG)の測定データを使用するので、油入りケーブル稼働時より蓄積してきた測定データからトレンドグラフを作成することができる。さらに、上記式(1)によれば、絶縁油の誘電正接(tanδ)の最大値から、最大油中溶解銅量を容易に算出でき、生成期における可燃性ガス総量(TCG)の最大値や、最大油中溶解銅量からの減少量、油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比と共に、解体した油入りケーブルにおける硫化銅生成範囲の広狭データと関連付けることで、危険度を評価、診断することができる。
従って、運転開始から30〜40年を迎える油入りケーブルについて、従来の蓄積データを活用しながら、手軽に精度よく診断することができる。
OFケーブルの(a)断面図と(b)接続部構造の一例を示す図である。 ケーブルコア部の有機銅化合物、硫化銅生成例を示す図である。(a);オイルギャップに沿って生成された例を示す写真である。(b);ケーブルコア(絶縁紙全体)に生成された例を示す写真である。 解体調査した経年OFケーブルの補強層での有機銅化合物、硫化銅生成傾向を示す図である。 解体調査した経年OFケーブルの補強層での有機銅化合物、硫化銅生成傾向を示す図である。 tanδ、TCGの経時変化を示すトレンドグラフの一例を示す図である。 油中溶解銅量とtanδの相関図である。 OFケーブルに使用前の絶縁油を用いて銅棒から銅を溶解させた絶縁油における、油中溶解銅量とtanδの相関図である。 油中溶解銅量と解体調査結果との関係図である。 油中溶解銅量とtanδ、有機銅化合物の凝集力の相関図である。 トレンドグラフ形状別の油中溶解銅量、tanδ、TCG、H量を示す図である。
以下、本発明による油入りケーブル(以下、OFケーブルと記す)内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況の推定方法、ならびに、異常発生の危険度を評価する診断方法を詳細に説明する。
≪OFケーブルにおける劣化状況≫
OFケーブルの一例を図1に示す。図1(a)はOFケーブルの断面図、図1(b)はOFケーブル接続部構造を示したものである。OFケーブルは、単に油浸絶縁紙を絶縁体としただけでは、温度変化による絶縁油の圧力低下で絶縁油中に気泡が生じ、要求特性を満足しないため、導体(または金属被)の内側に油通路を設け、絶縁油に大気圧以上の圧力を外部に設置した油槽によって常時加え、高電界強度にも耐えられるように設計されている。OFケーブルの絶縁体は、図1(b)に示すように、テープ状の絶縁紙を巻き付けて絶縁油を含浸させることで構成される。その際、曲げ特性を向上させるために、通常、絶縁紙はラップさせず、ギャップを均等に設けて構成されている。
OFケーブルの絶縁性能が低下する要因は、過熱による絶縁紙重合度の低下、振動・熱伸縮による損傷・変形・絶縁体の崩れ、負圧、漏油、絶縁油特性異常などが考えられており、従来より、各種点検技術が報告、実施されている。点検技術としては、例えば、油中ガス分析技術(部分放電や熱劣化により発生したガスのトレンド傾向診断)、絶縁油の電気特性(tanδ、TCG、体積抵抗率、AC耐圧測定)の低下傾向を診断する技術、水の浸入診断(水分量測定)等が存在する。
OFケーブルの電気特性はAC電圧に対し裕度をもっているが、コアずれ等により絶縁紙のずれや損傷により欠陥が存在する場合、過電圧の侵入により欠陥部で部分放電が発生してガスが発生し、それが繰り返される場合には欠陥部にボイドとして存在する可能性がある。さらに、ボイドは絶縁耐力が著しく低いため、AC電圧の印加により部分放電が継続することも考えられる。
図2は、実設備で30年以上運転された経年OFケーブルを撤去し、解体調査を行った結果、ケーブルコア(ケーブル絶縁体)において、オイルギャップに沿ってスジ状に生成堆積した有機銅化合物や硫化銅(図2(a))、あるいは、ケーブルコア(絶縁紙)全体に点状の有機銅化合物や硫化銅(図2(b))が生成堆積した例を示した写真である。ケーブルコア部の有機銅化合物や硫化銅は、セミストップ下部のケーブルコア部に最も生成堆積する傾向がある。
また、図3に示すように、ギャップ部に最も生成堆積するが、絶縁紙全体に生成堆積するケースもある。有機銅化合物や硫化銅は、ケーブルコア部の外層〜内層〜中層の順に生成堆積していくが、絶縁破壊したケーブルでは中層付近まで有機銅化合物や硫化銅が生成堆積していた例も存在する。
図4は、絶縁破壊につながる可能性のある生成状況の一例を示したものである。図4に示すように、上下のオイルギャップが互いに近かったりつながったりした状況の場所で硫化銅が中層まで生成堆積すると、硫化銅生成堆積部も内外層から中層までつながることになる。これにより、絶縁性能が著しく低下し、絶縁破壊に至る可能性が大きくなる。
≪OFケーブル中の硫化銅生成メカニズム≫
従来からのDBDSを添加した絶縁油中での硫化銅の生成は、DBDSと導体の銅が反応し、DBDS−銅錯体が絶縁油中に拡散し、油中拡散したDBDS−銅錯体が絶縁紙に吸着し、熱エネルギーにより分解されることで硫化銅が生成する、というメカニズムによるものと推定されている。
一方、本発明では、OFケーブル中の硫化銅の生成は、(i)導体と絶縁油が反応し、(ii)銅錯体もしくは銅化合物として絶縁油中に溶解し、(iii)溶解した銅錯体もしくは銅化合物が誘電泳動により高電界領域に凝集し、(iv)銅触媒として絶縁油の酸化や銅錯体もしくは銅化合物との結合反応を促進させ、高分子状の有機銅化合物を生成し、(v)生成した有機銅化合物は高電界領域に誘電泳動によりさらに凝集し、高電界領域に凝集した銅錯体、銅化合物あるいは有機銅化合物が、絶縁紙あるいは絶縁油中に含まれる硫黄成分と反応することで硫化銅が生成する、というメカニズムによると推定している。そして、本発明では、銅錯体、銅化合物あるいは有機銅化合物と反応する硫黄成分は、DBDSのように絶縁油中に添加される成分とは限らず、絶縁紙の製造時に用いられた硫黄化合物に由来する硫黄成分や、絶縁油の原料である石油等に由来する硫黄成分も含まれると想定している。
また、上記メカニズムでは、銅錯体もしくは銅化合物が絶縁油と反応して、高分子状の有機銅化合物が生成されると推定している。このような有機銅化合物は、分子量が大きい固体物質であり、高電界領域に誘電泳動により凝集しケーブルコア部等に堆積して、硫化銅と同様、絶縁性能の低下や、絶縁破壊を招く原因と想定される。
すなわち、本発明による硫化銅生成メカニズムは、DBDSのような硫黄化合物を添加しない絶縁油の場合でも、反応速度は非常に遅いが、時間を掛けて有機銅化合物および硫化銅が生成するとの想定に基づいており、銅+絶縁油+高電界の3条件が、有機銅化合物および硫化銅の生成に必要であると推定している。
≪硫化銅生成メカニズムに基づく診断法≫
上記のOFケーブル中の硫化銅生成メカニズムによれば、(ii)銅錯体もしくは銅化合物が絶縁油中に溶解する状態になると、油中溶解銅量及び絶縁油の誘電正接(tanδ)が増加し、その後、(iii)銅錯体もしくは銅化合物が高電界領域に凝集した時点で溶解量は最大値となり、やがて、(iv)有機銅化合生成及び(v)硫化銅生成にともなって、油中溶解銅量及び絶縁油の誘電正接(tanδ)が減少する。
一方、銅錯体の生成反応、有機銅化合物および硫化銅の生成反応にともなって発生するガスは絶縁油に吸収されるため、油中ガス濃度が増加し、油中の可燃性ガス総量(TCG)の測定値が増大する。
図5は、上記のOFケーブル中の硫化銅生成メカニズムに基づく、絶縁油の誘電正接(tanδ)と油中の可燃性ガス総量(TCG)の増減を経時変化として示したトレンドグラフの一例である。
ここで、誘電正接(tanδ)のトレンドグラフは油中溶解銅量のトレンドと相関する。すなわち、油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)のトレンドグラフ(図5)より、これらの特性値の「減少」期が、有機銅化合物および硫化銅の生成期(なお、図5中では「硫化銅生成期」と省略して記載している)に相当し、これらの特性値(絶対値)が大きいと、有機銅化合物および硫化銅になる油中溶解銅量が多いことから、有機銅化合物および硫化銅の生成量は多くなる、と推定することができる。よって、トレンドグラフで示される油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の最大値から、OFケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することが可能となる。
<診断に必要な特性値の測定と分析>
図6は、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の相関図の一例である。模擬試験として、OFケーブルに使用前の絶縁油を用いて、銅棒から銅を溶解させた絶縁油と銅化合物を溶解させた絶縁油について、油中溶解銅量の異なる絶縁油を作製し、各絶縁油について油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)値を測定し、得られた測定値をプロットして近似直線を引き、相関係数を求めたものである。また、合わせて実設備から採油した絶縁油について、油中溶解銅量とtanδ値を測定し、得られた測定値をプロットしたものである。
図6の結果より、銅や銅化合物を溶解させた絶縁油においては、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の相関係数はいずれも0.9以上であり、相関係数0.9以上より直線性を確認できた。
図7は、図6の結果より、OFケーブルに使用前の絶縁油を用いて、銅棒から銅を溶解させた絶縁油の測定結果について、両軸を整数にしたグラフである。
図7より、油中溶解銅量と誘電正接の関係を示す近似直線の近似式は、一次式により表すことができることが確認できた。
これらの知見に基づき、本発明者らは、下記式(1)により、tanδ値の過去最大値から最大油中溶解銅量を推定できることを見出した。
[Cu]max=(tanδmax−tanδ)×{[Cu]/(tanδ−tanδ)}・・・(1)
上記式(1)において、tanδmaxは、誘電正接(tanδ)の過去最大値であり、tanδは、新品の絶縁油の誘電正接(tanδ)の値であり、tanδおよび[Cu]はそれぞれ、使用開始後の実設備から、ある時点で採油した絶縁油の誘電正接(tanδ)および油中溶解銅量の各値である。
上記式(1)によれば、新品の絶縁油の誘電正接(tanδ)の値と、実設備から採油した絶縁油の、過去の誘電正接(tanδ)の最大値と、ある時点(例えば、直近の測定時点)における誘電正接(tanδ)および油中溶解銅量の各値から、容易に実設備の最大油中溶解銅量を算出でき、これにより有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することが可能となる。
すなわち、最大油中溶解銅量が大きい場合には、有機銅化合物および硫化銅になる油中溶解銅量が多いため、有機銅化合物および硫化銅の生成量は多くなる、と推定することができる。また、最大油中溶解銅量と直近の測定時の油中溶解銅量との差(最大油中溶解銅量からの減少量)が大きい場合には、その測定時において、既に有機銅化合物および硫化銅が多量に生成量している、と推定することができる。
また、本発明者らは、実設備の解体調査結果より、図8に示すように、誘電正接(tanδ)の値が油中溶解銅量に対して、相関直線より高い値の絶縁油を使用している設備では、設備中の多箇所に有機銅化合物および硫化銅が生成していること、また、補強層の広範囲、ケーブルコアの内外層から中層付近まで有機銅化合物および硫化銅が生成していることを確認している。
なお、図8に示すように、設備中の多箇所に有機銅化合物および硫化銅が生成していた設備の誘電正接(tanδ)のプロットは、誘電正接(tanδ)(%)と油中溶解銅量(ppm)の相関を表す直線(傾き0.9(%/ppm)の直線)より上の部分に存在する。
つまり、0.9(%/ppm)を基準値と設定した場合、未知の絶縁油について測定した油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の比が基準値より大きい場合(測定値が直線より上の部分に存在する場合)は、設備中の多くの箇所に有機銅化合物および硫化銅が生成していると推定することが可能である。反対に、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の比が基準値より小さい場合(測定値が直線より下の部分に存在する場合)は、有機銅化合物および硫化銅の生成は設備中の狭い範囲に留まると推定することが可能である。
<診断>
診断に際しては、「診断I」、「診断II」の順で評価を実施する。
最初の「診断I」では、有機銅化合物および硫化銅の生成期に該当する設備を抽出する。
該当設備の抽出に際しては、誘電正接(tanδ)のトレンドグラフ形状を、表1の4種類に分類し、それぞれについて、有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定し、有機銅化合物および硫化銅の生成期およびその前後にある設備を抽出する。
そして、診断必要性の項目が「要診断」のときは、次の「診断II」を行うようにする。「要警戒」のときは、「診断I」の測定評価のインターバルを短くし、グラフが減少傾向(有機銅化合物および硫化銅の生成期)になったら、改めて「診断II」を行うのがよい。「必要無し」のときは、通常ペースで「診断I」の測定評価を行えばよい。
すなわち、本発明の油入りケーブル内における異常発生の危険度を評価する診断方法では、工程1として、油入りケーブルから採取した絶縁油について、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)を測定して、各測定値に基づいて、油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方と、可燃性ガス量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成する。
そして、工程1で作成されたトレンドグラフで示される油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方が、極大値を示した後に減少過程または減少後ほぼ定常状態にある油入りケーブルを抽出し、該ケーブルについては、有機銅化合物および硫化銅が生成している状態にあると推定できるため、要診断と評価するのがよい。
次の「診断II」では、有機銅化合物および硫化銅の生成状況から、設備危険度を診断する。
すなわち、油入りケーブルから採取した絶縁油について測定した、油中溶解銅量、誘電正接(tanδ)および可燃性ガス総量(TCG)の値を用いて、(a)最大油中溶解銅量、(b)可燃性ガス総量(TCG)の最大値、(c)最大油中溶解銅量からの減少量および(d)溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比を算出し、各項目の値を下記評価基準に基づき評価し、該評価結果から下記診断基準に基づき設備の危険度を診断する。
ここで、(a)最大油中溶解銅量は、下記式(1)に基づき算出する。ただし、下記式(1)において、tanδmaxは、工程1で作成された誘電正接(tanδ)のトレンドグラフから導いた極大値であり、tanδは、油入りケーブルの使用開始前における絶縁油(新品の絶縁油)の誘電正接(tanδ)の値であり、tanδおよび[Cu]はそれぞれ、油入りケーブルの使用開始後のある時点における絶縁油の誘電正接(tanδ)および油中溶解銅量の各値である。なお、油入りケーブルの使用開始後のある時点とは、直近の(診断を行う際の)測定時点であることが好ましいが、有機銅化合物および硫化銅の生成期における過去の任意の測定時点であってもよい。
[Cu]max=(tanδmax−tanδ)×{[Cu]/(tanδ−tanδ)}・・・(1)
最大油中溶解銅量が大きいと、有機銅化合物および硫化銅になる油中溶解銅量が多いことから、有機銅化合物および硫化銅の生成量は多い、と推定することができる。
また、(b)可燃性ガス総量(TCG)の最大値は、工程1で作成された可燃性ガス総量(TCG)のトレンドグラフから導かれる、有機銅化合物および硫化銅の生成期(STEP2および3)における、可燃性ガス総量の最大値である。
可燃性ガス総量(TCG)の最大値が大きいと、有機銅化合物および硫化銅になる油中溶解銅量が多いことから、有機銅化合物および硫化銅の生成量は多い、と推定することができる。
また、(c)最大油中溶解銅量からの減少量は、工程1で作成された可燃性ガス総量(TCG)のトレンドグラフから導かれる、有機銅化合物および硫化銅の生成期以降(STEP2および3)のある時点における絶縁油の油中溶解銅量([Cu])と、最大溶解銅量([Cu]max)との差([Cu]maxー[Cu])である。なお、有機銅化合物および硫化銅の生成期以降(STEP2および3)のある時点とは、直近の(診断を行う際の)測定時点である(以下において同じ)。
有機銅化合物および硫化銅の生成期以降のある時点における油中溶解銅量が、最大油中溶解銅量から大幅に減少している(減少量が大きい)場合には、その時点で、既に有機銅化合物および硫化銅が多量に生成量している、と推定することができる。
また、(d)油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比は、有機銅化合物および硫化銅の生成期以降(STEP2および3)のある時点における絶縁油の油中溶解銅量([Cu])と誘電正接(tanδ)の比([Cu]/tanδ)である。
有機銅化合物および硫化銅の生成期以降のある時点において、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の比が、基準値より大きい場合は、その時点で、既に設備中の多くの箇所に有機銅化合物および硫化銅が生成していると推定することができる。
(各項目の評価基準)
上記各項目について算出した値を、表2に示す評価基準で判定する。
なお、上記基準値は一例であり、その数値の設定については後述する。
(診断基準)
表2の各項目について判定した結果に基づいて、表3に示す基準で設備危険度(下記A〜Dの4区分)を診断する。なお、本発明の診断方法では、上記診断Iにおいて、誘電正接(tanδ)のトレンド形状が、STEP0および1に分類されたものは、最終的な診断結果をDとする。
診断IIに際しては、上記評価項目(a)〜(d)にいくつ該当するかを評価するのが好ましい。上記診断基準は、絶縁油を使用した油入りケーブルの解体調査結果とも相関性がある。
特に、評価項目(a)および(b)は、有機銅化合物および硫化銅の生成量と相関するため、この両方に該当する場合はよりリスクが高いと推察され、最も危険度が高いランクAは評価項目(a)および(b)の両方に該当することが前提となる。
上記の順で危険度を評価しランク付けすることにより、設備の危険度を比較的シンプルに判断することができ、また絶縁油を使用した油入りケーブルの解体調査結果とも一致した結果が得られる。
なお、部分放電発生状況を推定は、「補足診断」として実施する。
図5に示した絶縁油の誘電正接(tanδ)、可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを用い、診断Iにより表1にある有機銅化合物および硫化銅の生成状況が、有機銅化合物および硫化銅生成後と抽出された設備(STEP3に分類されるもの)について、誘電正接(tanδ)の減少後の可燃性ガス総量(TCG)の最大値から、予め設定した可燃性ガス総量(TCG)の基準値に対する大小、を評価する。
図5に示す例では、誘電正接(tanδ)の減少後である測定日2010以降で、可燃性ガス総量(TCG)140ppm以上のときに、部分放電発生設備と診断することで、部分放電発生状況を推定することができる。
また、硫化銅生成困難および危険設備の推定は、「補足診断」として実施する。
この補足診断では、上述の油中溶解銅量の測定に合わせて、油中硫黄量を測定する。
油中硫黄量の測定で、採取した絶縁油から硫黄成分が検出されなかった設備については、絶縁油中に含まれる硫黄成分との反応による硫化銅の生成は起こらないと考えることができる。しかし、このような設備でも、絶縁紙中や、その他OFケーブルの材料中に含まれる硫黄成分との反応により、硫化銅が生成する可能性はあるが、このような硫化銅の生成は、絶縁油中に含まれる硫黄成分との反応による硫化銅の生成量に比べて極めて少ない。そのため、このような設備は、硫化銅の生成量が少ない、硫化銅生成困難設備と推定することができる。
また、絶縁油として、製造時に硫黄が多く含まれる鉱物油を使用していない設備については、絶縁紙中やその他OFケーブルの材料中に含まれる硫黄成分が絶縁油中に移行することで、上記測定時に油中硫黄量が高い値を示す場合がある。この場合、その測定時以降は、硫化銅が生成し易くなるため、硫化銅の生成量が多くなる設備と推定することができる。
以上のことから、油中溶解銅量の測定に合わせ油中硫黄量を測定し、硫黄が検出されない設備では、硫化銅生成による絶縁性能の著しい低下は起き難くなるため、硫化銅生成による異常発生の危険度は下がると診断できる。また、絶縁油に鉱物油を使用していない設備において、油中硫黄量が多い場合は、硫化銅生成による絶縁性能の著しい低下が起き易くなるため、硫化銅生成による異常発生の危険度は上がると診断できる。
次に、本発明による診断法による効果の確認結果を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
(1)本診断法よる効果の確認(表4参照)
実設備(OFケーブル17線)について、本発明の診断方法に基づいて診断した推定診断結果と、解体調査結果とを比較した。結果を表4に示す。なお、本発明の診断方法に基づく推定診断と、解体調査は、それぞれ以下の方法で行った。
<本発明の診断方法に基づく推定診断>
まず、各実設備から採取した試料油について、以下の測定方法にて、誘電正接(tanδ)および可燃性ガス総量(TCG)を測定し、得られた測定値に基づき、誘電正接(tanδ)と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成した。
次に、各実設備について作成した誘電正接(tanδ)のトレンドの形状を、上記表1の4種類に分類した(診断I)。
さらに、誘電正接のトレンド形状がSTEP2および3に分類された実設備(OFケーブル17線)について、以下の測定方法で油中溶解銅量を測定し、該測定値と、上記で測定した誘電正接(tanδ)および可燃性ガス総量(TCG)の値を用いて、(a)最大油中溶解銅量、(b)可燃性ガス総量(TCG)の最大値、(c)最大油中溶解銅量からの減少量および(d)溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比を算出した。
次に、各実設備について算出した(a)最大油中溶解銅量、(b)可燃性ガス総量(TCG)の最大値、(c)最大油中溶解銅量からの減少量および(d)油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)を、上記表2の評価基準で評価し、該評価結果から上記表3の診断基準に基づき設備危険度を診断した(診断II)。
(測定条件)
上記各種測定は、以下の手順で行った。
・誘電正接(tanδ)の測定
各実設備から採取した試料油50mlを液体用電極に入れ80℃に加熱し、1000V印加しtanδ測定器により測定した。
・可燃性ガス総量(TCG)の測定
各実設備から採取した試料油の入った油採取注射器(200ml)をガスサンプリング装置にセットして、ガスクロマトグラフにより油中ガスを分離抽出し分析した。
・油中溶解銅量および油中硫黄量の測定
各実設備から採取した試料油をキシレンにより10倍希釈し、調整溶液を作製し、該溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置により分析した。検量線用標準溶液の調整は、市販の油性銅含有標準溶液をブランク油とキシレンにより順に希釈して調整した標準溶液を用いた。
<解体調査>
解体調査は、実設備の補強絶縁紙の沿面および内部、ケーブル絶縁紙の最内外層および内部の層について、有機銅化合物および硫化銅生成部である絶縁紙上の黒色部の生成様相と生成場所を目視確認することにより実施し、下記診断基準に基づき評価した。
また、有機銅化合物および硫化銅の生成確認は、電子顕微鏡と蛍光X線分析装置により、絶縁紙上の黒色化部で銅(Cu)と硫黄(S)の両方が検出される場所を特定し、その特定場所について、有機銅化合物はフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)により、赤外吸収スペクトルから絶縁油と酸化生成物および硫黄化合物の吸収ピークが検出されたことで確認し、硫化銅は顕微ラマン分光装置により硫化銅のラマンスペクトルが検出されたことで確認した。
(診断基準)
A:補強絶縁紙の内部もしくはケーブル絶縁紙内部の層に、シワやオイルギャップ、端部を超える黒色部がある。
B:補強絶縁紙の沿面もしくはケーブル絶縁紙の最内外層に、シワやオイルギャップ、端部を超える黒色部がある。もしくは、補強絶縁紙の内部もしくはケーブル絶縁紙内部の層の、シワやオイルギャップ、端部に黒色部がある。
C:補強絶縁紙の沿面もしくはケーブル絶縁紙の最内外層に、シワやオイルギャップ、端部に黒色部がある。
D:黒色部はなし。
表4では、実設備の解体調査結果に対して、本発明の診断方法に基づく診断結果が、過小評価(路線名:JH線3LB23)であったものと、過大評価(路線名:RH線1R511)であったものがそれぞれ1設備ずつあったが、その他は解体調査結果と、本発明の診断結果は一致しており、全体としての整合率は88%程度と非常に高かった。
これらの結果から、本発明の診断方法によれば、実設備の解体調査結果に対応する結果が得られることが確認された。また、本発明の診断方法によれば、解体調査のように実設備を解体して試験する必要はなく、OFケーブルから試験油を採取するだけで、各測定評価を行うことができ、比較的簡便に実設備の危険度を診断することができる。
(2)本診断法と硫化銅生成メカニズムの相関確認
実設備の解体調査試験及び各評価試験により、下記の通り、本発明の診断方法が硫化銅生成メカニズムと相関があることを確認した。
(イ)最大油中溶解銅量の算出(図6参照)
銅棒から銅を溶解させた油中溶解銅量が異なる絶縁油(試料絶縁油)と、異なる量の銅化合物を溶解させた絶縁油(銅化合物溶解試料絶縁油)と、実設備から採取した絶縁油について、油中溶解銅量とtanδを測定した結果を図6に示す。
なお、試料絶縁油の油中溶解銅量は、銅棒を浸漬した絶縁油を窒素雰囲気下80℃で加熱し、経時で適時サンプリングを行い上記のICP発光分光分析により測定した。銅化合物溶解試料絶縁油の油中溶解銅量は、市販の銅化合物試薬(アルキルベンゼンスルホン酸銅あるいはオレイン酸銅)を適宜濃度に溶解した後、その後に上記の方法にてICP発光分光分析により測定した。tanδは、誘電正接測定器を用いて測定した。
図6より、銅溶解試料絶縁油では、油中溶解銅量とtanδ値に直線性を示す相関が認められるが、実設備では、油中溶解銅量が同じでも設備によってtanδ値が異なることがわかる。絶縁油の劣化(水分含有や熱劣化)によりtanδ値は増加するが、OFケーブルで絶縁油の劣化が起きることは稀である。一方、図6には、銅化合物を溶解した銅溶解試料絶縁油であっても、用いた銅化合物の種類により油中溶解銅量とtanδ値の相関を示す直線の傾き(相関係数)が異なることが示されており、このことは絶縁油中に溶解している銅化合物の形態によりtanδの値が影響されることを表している。したがって、実設備で油中溶解銅量が同じでも誘電正接(tanδ)の値が異なるのは、油中溶解銅の形態が設備毎に異なることが最大要因であると考えられる。
また、図6は両対数グラフであるが、図7より両軸を整数により表した場合、近似直線は一次式により示すことができる。
以上のことから、油中溶解銅量とtanδ値の関係式を用いて、tanδ値から油中溶解銅量を算出することが可能であること、そして、設備毎に絶縁油中に溶解している銅の形態が異なるため、設備毎に最大溶解銅量を算出する必要があることがわかる。
本発明者らが見出した上記式(1)によれば、各設備の絶縁油の、過去のtanδ最大値と、現時点のtanδ値および油中溶解銅量、新品の絶縁油のtanδ値を用いて、設備毎の最大油中溶解銅量を算出できる。
(ロ)有機銅化合物および硫化銅の生成期の推定
本発明で提唱するOFケーブル中の硫化銅生成メカニズムによれば、有機銅化合物および硫化銅の生成に伴うOFケーブルの危険度との関係を、次のように、油中溶解銅量と関連付けて説明することができる。
(i)導体と絶縁油が反応する。この段階では油中溶解銅量は変化しない。
(ii)銅が銅錯体もしくは銅化合物として絶縁油中に溶解すると、油中溶解銅量が次第に増加していき、やがて時間とともに溶解停止になる。
(iii)溶解した銅錯体もしくは銅化合物は、高電界領域において、誘電泳動により絶縁体(絶縁紙)油隙部に凝集する。
(iv)さらに、銅錯体もしくは銅化合物が高電界領域に凝集することで、絶縁体油隙部における銅錯体もしくは銅化合物による触媒効果が増大する。
(v)触媒媒効果の増大により、油が酸素や硫黄、そして銅錯体もしくは銅化合物と結合して急激に劣化し、絶縁体油隙部に高分子状の有機銅化合物が生成する。この段階から油中溶解銅量は減少し始める。
(vi)有機銅化合物もまた誘電泳動により高電界領域に凝集するため、銅錯体もしくは銅化合物、有機銅化合物が絶縁紙中あるいは絶縁油中の硫黄(本来的に絶縁油に含まれている硫黄)と反応して硫化銅が生成する。硫化銅生成に伴って油中溶解銅量は次第に減少する。
(vii)油隙部に硫化銅が生成すると、油中溶解銅量は減少した状態となり、油隙部の硫化銅によって部分放電発生という事態に陥る。
油中溶解銅量とtanδ値は相関があることから、tanδトレンドと油中溶解銅量トレンドにも相関があると言える。また、上記のように推定した硫化銅生成メカニズムから、有機銅化合物および硫化銅が生成すると油中の溶解銅量が減少することから、tanδ値も減少することになる。
以上のことから、tanδトレンドが減少した場合は、有機銅化合物および硫化銅の生成により溶解銅量が減少したものと判断することができる。
(ハ)硫化銅生成箇所・生成量からの設備危険度診断
[1]油中溶解銅量と有機銅化合物および硫化銅の生成量の関係
硫化銅生成メカニズムより、油中溶解銅量が多いほど、有機銅化合物および硫化銅の生成量も多くなると言える。
以上のことから、最大油中溶解銅量が多い設備で、有機銅化合物および硫化銅の生成量は多くなると判断することができる。
[2]tanδ、油中溶解銅量と有機銅化合物および硫化銅の生成箇所の関係(表5、図8参照)
図8に、tanδ、油中溶解銅量と有機銅化合物および硫化銅の生成箇所の関係図を示す。図8は、解体調査を行った実設備における油中溶解銅量とtanδの関係をグラフに表し、tanδと油中溶解銅量の比が0.9となるように直線を引いたものである。
さらに、解体調査結果から、有機銅化合物および硫化銅の生成箇所が多箇所(有機銅化合物および硫化銅の生成が広範囲)の設備について、グラフのプロット11箇所(試料名:A〜K)を○で囲み、tanδと油中溶解銅量の比を求めた結果を表5に示した。
その結果、有機銅化合物および硫化銅の生成箇所が多箇所の設備については、tanδと油中溶解銅量の比の最低値(試料名:K)が「0.95」で、比0.9の直線より上部にプロットされた。
ただし、有機銅化合物および硫化銅の生成箇所が少ない箇所の設備でも、比0.9の直線より上部にプロットされた設備があった。しかし、油中溶解銅量が少なく過去の最大油中溶解銅量を算出できた設備(×のプロット)では、算出された最大油中溶解銅量が0.1ppmとかなり少量であった。つまり、元々の油中溶解銅量が少なかったので、生成箇所が少なかったと推測できる。
また、同様に油中溶解銅量1ppm以上の設備では、過去データがなくトレンド傾向が不明であったが、これから有機銅化合物および硫化銅の生成期を迎える可能性が推測できる。
以上のことから、tanδと油中溶解銅量の比の数値が高いと、多箇所に有機銅化合物および硫化銅が生成する可能性のある設備と判断することができ、絶縁破壊につながる劣化設備の判別が可能となる。
さらに、数種の銅化合物を溶解させた絶縁油を、模擬的に作製した高電界領域中で、加熱して固体状の有機銅化合物を作成した。
この有機銅化合物を溶解させた絶縁油の油中溶解銅量とtanδを測定すると共に、固体状の有機銅化合物の入ったそれぞれの絶縁油について誘電泳動試験を実施し、相関を調べた結果を図9に示す。
なお、油中溶解銅量とtanδの測定方法は上述の通りである。また、誘電泳動試験は、上記絶縁油を、シャーレに入れて、その下に2本の導線を置き、電圧をかけ、各種固体状の有機銅化合物の凝集時間を計測した。なお、作成した固体状の有機銅化合物は、上述の解体調査と同様な方法で、電子顕微鏡と蛍光X線分析装置、FTIRにより、実設備と同質の有機銅化合物であることを確認した。
図9に示される結果から、油中溶解銅量とtanδの比が大きい銅化合物ほど、そこから固体状に生成した有機銅化合物は、誘電泳動試験により電源側の導線上に凝集しやすく、凝集時間が短い(凝集力が強い)ことが確認された。これらの結果から、油中溶解銅量と誘電正接(tanδ)の比は、生成される固体状の有機銅化合物の凝集力(誘電泳動力)に相関があることがわかった。
特に、油中溶解銅量とtanδの比が0.9以上の場合に、凝集確認時間は1分を切っており、有機銅化合物の凝集力が強いことがわかる。このことは、図8に示される、有機銅化合物および硫化銅の生成箇所が多箇所の設備と、その油中溶解銅量とtanδの比との関係にも対応しており、有機銅化合物の凝集力が強い実設備では、有機銅化合物が移動しやすく、広範囲に有機銅化合物や硫化銅が生成すると推察することができる。
[3]油中溶解銅量とTCGの関係(図10参照)
実設備(1272箇所)について、tanδ、油中溶解銅量およびTCGのトレンドグラフを作成し、グラフ形状別の各特性値の平均値を、図10にまとめた。
その結果、tanδの増減時は、TCG量が多い傾向だった。これは、生成メカニズムより、銅溶解、有機銅化合物生成、硫化銅生成過程で様々な化学反応が起き、この化学反応時に発生する分解生成ガスとして、TCGが検出されたと推測した。つまり、TCG量が多いほど銅溶解量、有機銅化合物生成量、硫化銅生成量が多いと判断できる。
以上のことから、溶解銅減少時(tanδ減少時)のTCG量が多いほど、硫化銅生成量も多いと判断することができる。
(ニ)各基準値について(表6参照)
前記の表2の設備危険度診断の評価項目に記載した各基準値は、現状明確な相関関係を掴んでいないため、表6に示す現時点の試験データから暫定基準値として定めた。この点については、設備実態に合わせ今後見直す必要がある。
表6は、実設備(1272箇所)について、(a)最大油中溶解銅量、(b)可燃性ガス総量(TCG)の最大値、(c)最大油中溶解銅量からの減少量を算出し、これらの値に基づき、各特性値について平均値、標準偏差(σ)、平均値+σを示したものである。さらに、このうち解体調査でAランクと診断された実設備(2箇所)について、各特性値の最小値を示したものである。
表6に示す現時点の試験データに基づき、(a)最大油中溶解銅量は、解体調査Aランクの実設備データの最小値をカバーする値として4.0ppmを暫定基準値として定めた。また、(b)可燃性ガス総量(TCG)の最大値は、実設備(1272箇所)の平均値から260ppmを暫定基準値として定めた。さらに(c)最大油中溶解銅量からの減少量は、実設備(1272箇所)の平均値+σから5.0ppmを暫定基準値として定めた。
なお、(d)溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比については、図8に示す解体調査を行った実設備における油中溶解銅量とtanδの関係をグラフに基づき、0.9を暫定基準値として定めた。
(ホ)補足診断〔部分放電発生状況〕(表1、表6、図10参照)
TCG量(H量)、tanδ、油中溶解銅量を、表1に示した有機銅化合物および硫化銅の生成傾向(tanδ増減傾向)と関連付けて図10に示す。
図10から明らかなように、硫化銅生成後(STEP3のとき)にTCG量(H)は多い(減少しない)傾向を示している。この場合、硫化銅生成後には、様々な化学反応による分解ガスは発生していないことから、従来の絶縁油分析の考え方から、部分放電による発生ガス(Hは放電電荷量が大きい部分放電の発生ガス)と言える。特に硫化銅生成後という点で、硫化銅生成場所での部分放電発生と推測できる。
以上のことから、硫化銅生成後にTCG量が多い設備では、部分放電が多く発生していると判断することができる。
(へ)補足診断〔硫化銅生成困難および危険設備〕
この補足診断では、上述の油中溶解銅量の測定に合わせて、油中硫黄量を測定する。
油中硫黄量の測定で、採取した絶縁油から硫黄成分が検出されなかった設備については、絶縁油中に含まれる硫黄成分との反応による硫化銅の生成は起こらないと考えることができる。しかし、このような設備でも、絶縁紙中や、その他OFケーブルの材料中に含まれる硫黄成分との反応により、硫化銅が生成する可能性はあるが、このような硫化銅の生成は、絶縁油中に含まれる硫黄成分との反応による硫化銅の生成量に比べて極めて少ない。そのため、このような設備は、硫化銅の生成量が少ない、硫化銅生成困難設備と推定することができる。
また、絶縁油として、製造時に硫黄が多く含まれる鉱物油を使用していない設備については、絶縁紙中やその他OFケーブルの材料中に含まれる硫黄成分が絶縁油中に移行することで、上記測定時に油中硫黄量が高い値を示す場合がある。この場合、その測定時以降は、硫化銅が生成し易くなるため、硫化銅の生成量が多くなる設備と推定することができる。
以上のことから、油中溶解銅量の測定に合わせ油中硫黄量を測定し、硫黄が検出されない設備では、硫化銅生成による絶縁性能の著しい低下は起き難くなるため、硫化銅生成による異常発生の危険度は下がると診断できる。また、絶縁油に鉱物油を使用していない設備において、油中硫黄量が多い場合は、硫化銅生成による絶縁性能の著しい低下が起き易くなるため、硫化銅生成による異常発生の危険度は上がると診断できる。
以上説明した通り、本発明のOFケーブル異常発生の危険度の診断方法は、従来の診断方法と比較して、硫化銅生成要因となるジベンジルジスルフィドを添加していない絶縁油にも適用でき、従来の診断方法による特性値(油中溶解銅量、tanδ、TCG)を使用できるため簡易である等の利点を有し、簡易で精度の良い診断手法であると言える。実設備との整合性もある。
ただし、tanδの値が油中溶解銅の形態により影響され、そして、油中溶解銅の形態が設備毎に異なるため、上記診断方法はOFケーブル設備毎に実施する必要がある。

Claims (5)

  1. 絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定する方法であって、
    前記油入りケーブルの使用経過に応じて、該ケーブルから絶縁油を採取して、該絶縁油の油中溶解銅量、誘電正接(tanδ)および可燃性ガス総量(TCG)を測定し、得られた測定値に基づき、油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成する工程1と、
    前記工程1で得られた測定値に基づき、下記式(1)により、最大油中溶解銅量を求める工程2を含み、
    作成されたトレンドグラフにおいて、油中溶解銅量もしくは誘電正接(tanδ)の値が極大値を示した後に減少して行く期間を、有機銅化合物および硫化銅の生成期と推定し、前記工程2で求めた最大油中溶解銅量と、前記トレンドグラフで示される有機銅化合物および硫化銅の生成期における可燃性ガス総量(TCG)の最大値から、油入りケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することを特徴とする方法。
    [Cu]max=(tanδmax−tanδ)×{[Cu]/(tanδ−tanδ)}・・・(1)
    (ただし、上記式(1)において、[Cu]maxは、最大油中溶解銅量であり、tanδmaxは、前記工程1で作成された誘電正接(tanδ)のトレンドグラフから導いた極大値であり、tanδは、油入りケーブルの使用開始前における絶縁油(新品の絶縁油)の誘電正接(tanδ)の値であり、tanδおよび[Cu]はそれぞれ、油入りケーブルの使用開始後のある時点における絶縁油の誘電正接(tanδ)および油中溶解銅量の各値である。)
  2. 前記工程1で得られた測定値および前記工程2で求めた最大油中溶解銅量に基づき、最大油中溶解銅量からの減少量を求める工程3をさらに含み、
    前記工程3で求めた最大油中溶解銅量からの減少量をさらに用いて、油入りケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程1で得られた測定値に基づき、油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比を求める工程4をさらに含み、
    前記工程4で求めた油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比をさらに用いて、油入りケーブル内における有機銅化合物および硫化銅の生成状況を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 絶縁油を使用した油入りケーブルにおいて、該ケーブル内における異常発生の危険度を評価する診断方法であって、
    前記油入りケーブルの使用経過に応じて、該ケーブルから絶縁油を採取して、該絶縁油の油中溶解銅量、誘電正接(tanδ)および可燃性ガス総量(TCG)を測定し、得られた測定値に基づき、油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方と可燃性ガス総量(TCG)の経時変化を示すトレンドグラフを作成する工程1と、
    前記工程1で得られた測定値に基づき、下記式(1)により、最大油中溶解銅量を求める工程2と、
    前記工程1で得られた測定値および前記工程2で求めた最大油中溶解銅量に基づき、最大油中溶解銅量からの減少量を求める工程3と、
    前記工程1で得られた測定値に基づき、油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比を求める工程4と、を含み、
    前記工程1で作成されたトレンドグラフで示される油中溶解銅量および誘電正接(tanδ)の少なくとも一方が減少過程または減少後ほぼ定常状態にある油入りケーブルを、要診断と評価し、
    前記要診断と評価された油入りケーブルについて、(a)前記工程2で求めた最大油中溶解銅量と、(b)前記トレンドグラフで示される有機銅化合物および硫化銅の生成期における可燃性ガス総量(TCG)の最大値と、(c)前記工程3で求めた最大油中溶解銅量からの減少量と、(d)前記工程4で求めた油中溶解銅量に対する誘電正接(tanδ)の比を、予め設定しておいた各基準値に基づき評価し、前記危険度を評価することを特徴とする診断方法。
    [Cu]max=(tanδmax−tanδ)×{[Cu]/(tanδ−tanδ)}・・・(1)
    (ただし、上記式(1)において、[Cu]maxは、最大油中溶解銅量であり、tanδmaxは、前記工程1で作成された誘電正接(tanδ)のトレンドグラフから導いた極大値であり、tanδは、油入りケーブルの使用開始前における絶縁油(新品の絶縁油)の誘電正接(tanδ)の値であり、tanδおよび[Cu]はそれぞれ、油入りケーブルの使用開始後のある時点における絶縁油の誘電正接(tanδ)および油中溶解銅量の各値である。)
  5. (a)前記工程2で求めた最大油中溶解銅量と、(b)前記トレンドグラフで示される有機銅化合物および硫化銅の生成期における可燃性ガス総量(TCG)の最大値との両方が、予め設定しておいた各基準値を超える場合に、前記危険度がより高いと評価することを特徴とする請求項4に記載の診断方法。
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