JP3016014U - スポーツシューズ及びスポーツシューズ用補強部材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本考案は、フィット性、ホールド性が良いば
かりでなく、各種目における競技者の瞬間的な力をロス
無く地面等へ伝えることができ、尚且軽量なスポーツシ
ューズ及びスポーツシューズ用補強部材を提供すること
を目的とする。 【構成】 本考案に係るスポーツシューズは、任意材か
らなる甲被、舌片及び靴底を有するスポーツシューズに
おいて、超高分子量ポリエチレン繊維の糸の織物からな
る補強部材を用いたことを特徴とするスポーツシューズ
であって、トウボックス部の母趾球部及び子趾球部を包
囲する部位、甲被の履口部や甲部に取り付けられた緊締
ベルトなど競技中に強い引っ張り応力のかかる部位や、
甲被の履口部や外月型など着脱の際に引っ張り応力のか
かる部位に前記補強部材を設けた構成からなる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、ランニングシューズ、陸上スパイクシューズ、その他スポーツに用 いられるシューズであって、競技中の甲被の伸張を効果的に抑え、足とシューズ のホールド性を向上せしめ力のロスを防ぐ効果を有し、尚且軽量のスポーツシュ ーズ及びスポーツシューズ用補強部材を提供するものである。

【０００２】

【従来の技術】

従来よりスポーツシューズにおいて、競技中にシューズにかかる応力により、 シューズの甲被材が伸張し、例えば短距離走の選手の場合地面を蹴る力にロスを 生じ、記録に悪影響を及ぼしていた。また、走り高跳びの選手が踏み切る瞬間、 踏切足のシューズには横方向や捩じれの方向に大きな応力がかかり、甲被が伸張 してしまうことにより踏み切る力のロスが生じ記録に悪影響を及ぼしたり、最悪 の場合足首部を捻挫するなどのスポーツ障害を引き起こす虞もあった。 また、シューズを長年使用すると甲被が伸びてしまい、シューズのフィット性 が低下してしまう傾向にあった。

【０００３】 これら不都合を解消するために、甲被裏材に伸びの少ない綿布、ナイロントリ コット生地を用いたり、甲被上面を天然皮革や人工皮革、不織布などからなる補 強部材を縫着するなどしていた。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】

しかし、従来から伸び止めの目的で用いられていた甲被裏材は引張伸度が十分 ではなく、競走競技のスタートダッシュ時やコーナリング時、跳躍競技の踏切時 、サッカーなどの競技においてボールを蹴る瞬間など、競技中にシューズに強い 応力がかかった時には甲被材と共に甲被裏材も伸張してしまい、十分に伸び止め 効果を得られなかった。 また、長期間にわたって着脱を繰り返すうちに、履口部やつま先部、踵部、鳩 目飾りなどが伸びてしまいフィット性が低下するなどの問題があった。 その上、甲被裏材に用いられる綿布やナイロントリコット生地は強度に劣るた め、ソックスと摩擦して破れ易く、また瞬間的に強い応力がかかった場合甲被材 と共に一気に引き裂けてしまうという欠点もあった。

【０００５】 一方、天然皮革や人工皮革、各種不織布からなる補強部材をメッシュ材などか らなる甲被の上面に縫着などして用いた場合、十分な伸び止め効果を得るために は該補強部材を多用しなければならず、シューズの重量増加につながっていた。

【０００６】 よって、このような問題を解決し、フィット性、ホールド性が良いばかりでな く、各種目における競技者の瞬間的な力をロス無く地面等へ伝えることができ、 尚且軽量なスポーツシューズ及びスポーツシューズ用補強部材（以下、単に補強 部材という。）を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

本考案に係るスポーツシューズは、任意材からなる甲被、舌片及び靴底を有す るスポーツシューズにおいて、超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維の糸の織編 物からなる補強部材を用いたことを特徴とするスポーツシューズである。 前記補強部材が設置され得る部位としては、トウボックス部の母趾球部及び子 趾球部を包囲する部位、甲被の履口部や甲部に取り付けられた緊締ベルトなど競 技中に強い引っ張り応力のかかる部位や、甲被の履口部や外月型など着脱の際に 引っ張り応力のかかる部位が挙げられる。

【０００８】 超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維は引張強度が約１５ｇ／ｄ以上で且つ６ ０ｇ／ｄ以下、引張弾性率は約５００ｇ／ｄ以上で２５００ｇ／ｄ以下のものが 使用できる。なお、引張強度が１５ｇ／ｄ未満で引張弾性率が５００ｇ／ｄ未満 では、フィット性、ホールド性が不十分となりシューズの甲被材が伸展してしま い、良好な伸び止め効果を発揮することができない。

【０００９】 また、着色性、風合い及び布帛の目ずれ防止の観点から、上記高強力・高弾性 率ポリエチレン繊維とポリエステル、ナイロン、アクリル及びビニロン等の合成 繊維とをデニール比、高強力・高弾性率ポリエチレン繊維成分が１５〜６０％、 他の合成繊維成分が８５〜４０％の割合で混合した複合糸となしてもよい。 高強力・高弾性率ポリエチレン繊維成分がデニール比６０％を越え、他の合成 繊維成分が４０％未満では、他の合成繊維の被覆率が小さくなるため、染色した 場合に染まることのない高強力・高弾性率ポリエチレン繊維が染色された合成繊 維で十分に被覆されないことになる。従って、製品とした場合に均一な着色とす ることは困難になる。 更に、他の合成繊維の被覆率が小さいと風合いが良くない上に、布帛が滑り易 く目ずれが発生すると言う欠点も生ずるものである。

【００１０】 また、高強力・高弾性率ポリエチレン繊維成分がデニール比１５％未満で他の 合成繊維成分が８５％を越える場合には、前記着色性、風合い及び目ずれ防止の 点では問題ないが、高強力・高弾性率ポリエチレン繊維の強度が低下し、瞬間的 に強い応力がかかった場合、甲被材と共に一気に引き裂けてしまうと言う欠点が 生ずるものである。

【００１１】 本考案における高強力・高弾性率ポリエチレン繊維或は、上記複合糸を全部若 しくは一部に用いて製編織し、補強部材となす。

【００１２】

【作用】

本考案のスポーツシューズは、超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維の糸の織 編物からなる補強部材が、母趾球部及び子趾球部を包囲する部位、甲被の履口部 、甲部に取り付けられた緊締ベルト、甲被のサイド部など競技中に強い引っ張り 応力のかかる部位に設置されたスポーツシューズである。 更に、前記スポーツシューズの先飾り、鳩目飾り、ラインもしくは外月型など 長年の使用により伸びて形崩れを起こし易い部位に、前記補強部材を設置された スポーツシューズであるため以下のように作用する。 前記補強部材に用いられる超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維の糸からなる 織編物は、高弾性で衝撃吸収性に優れ、低伸度であり、耐摩耗性、耐屈曲疲労性 にも優れその上比重が小さいという特性を有する。 また、前記超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維の糸とナイロン、ポリエステ ル、アクリル及びビニロン等の他の合成繊維の糸と適当な比率で混編織すれば、 着色性や耐スリップ性を向上させることができる。 よって、該織編物を上記スポーツシューズの所望部位に設置した場合、甲被の 柔軟性を損なうことなく、母趾球部、子趾球部、履口部、緊締ベルト及び甲被の サイド部等の競技中における伸張を効果的に防止するよう作用する。 また、繰り返し着脱することによって甲被が伸びたり、形崩れを起こすのを防 止するようにも作用する。

【００１３】

【実施例】

本考案に係るスポーツシューズの実施例のいくつかを図面に基づき説明する。 第１図は本考案に係るスポーツシューズの外甲側から見た図、第２図は本考案 に係るスポーツシューズのトウボックス部周辺の拡大図、第３図は本考案に係る スポーツシューズであって甲部に緊締ベルトを有するスポーツシューズを外甲側 から見た図、第４図は本考案に係るスポーツシューズの内甲側から見た図、第５ 図は本考案に係る他の実施例を示した図である。

【００１４】 本考案は第１図に示すように、天然皮革、人工皮革及び任意素材からなるメッ シュ材、布帛、スポンジ材等を単独若しくは組み合わせてなる甲被２と舌片９、 およびポリウレタン、ナイロン、ラバー等の任意の合成樹脂からなるソール５、 靴紐８、ライン１１等からなるスポーツシューズに係るものであり、所望部位に 超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維からなる補強部材３を設けてなるスポーツ シューズである。

【００１５】 本考案に係る補強部材３は超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維からなる生地 をシート状、もしくはテープ状に形成したものが用いられる。 超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維としては東洋紡績株式会社製「ダイニー マ」（登録商標）が著名であるが、ダイニーマは表１に示すように、極めて高強 度かつ低伸度である上に、比重も従来の繊維に比べて小さいという物性を持つ繊 維である。

【表１】 特に、引張強度が１５ｇ／ｄ以上で且つ６０ｇ／ｄ以下、引張弾性率が５００ ｇ／ｄ以上で且つ２５００ｇ／ｄ以下、破断伸度が２％以上で且つ１０％以下で ある超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維の糸からなり、超高強力・高弾性率ポ リエチレン繊維の糸が１５％から６０％のデニール比からなる織編物が好適であ る。 上記比率で混織織物とした場合、補強部材の物性地を低下させることなく、着 色性や耐スリップ性を向上させることができる。混織されうる繊維の糸としては ナイロン糸、ポリエステル糸、綿糸など適宜選択しうるものある。

【００１６】 前記超高強力・高弾性率ポリエチレン繊維からなる補強部材３は第１図、及び 第２図に示すように、スポーツシューズ１の前足部分、所謂トウボックス部Ａの 足の母趾球が当接する母趾球部Ｂと子趾球が当接する子趾球部Ｃを包囲するよう に設けられている。 これらの部位は、一連の走行動作の中において競技者が地面を蹴り出す際、最 も大きな引っ張り応力がかかる部位であり、甲被が伸びてしまうと足がシューズ 内で振れてしまい蹴り出す力に大きなロスを生じていた。 該母趾球部Ｂ及び子趾球部Ｃを包囲するように前記補強部材３を設けることに よって、これらの問題を解決するとともに、足が振れることにより発生する捻挫 などの障害を予防することもできる。 なお、該補強部材３は甲被２の上面に設けることも可能であるし、積層構成さ れた甲被に挟持せしめること、及び甲被の裏面に設けることも可能である。

【００１７】 また、前記補強部材３は第４図に示すように、スポーツシューズ１の履口部Ｄ の周りに周設することもできる。 この場合、トラックを周回する競技種目においてコーナリング時にかかる応力 によって、履口部Ｄが伸長し、隙間が発生して履口部Ｄのホールド性が低下する のを防止することができる。 また、競技者はスポーツシューズ１を履く際に、靴紐８を解いて舌片９と踵飾 り４を把んで履口部Ｄを拡張せしめて足を入れるが、長期間にわたり繰り返し着 脱するうちに該履口部Ｄが伸びてしまい、履き口や踵のフィット性が低下したり 、最悪の場合には競技中に靴が脱げてしまうという問題があった。 該履口部Ｄに前記補強部材３を周設することによって、これらの問題を解決す ることができる。 なお、該補強部材３は履口部Ｄの甲被２の上面に設けることも可能であるし、 積層構成された履口部に挟持せしめること、及び履口部の裏面に設けることも可 能である。

【００１８】 更に、他の実施例として第３図に示すように、甲部に緊締ベルト１０を有する スポーツシューズ１において、該緊締ベルト１０に前記補強部材３を設けること もできる。 陸上競技用シューズの中でも、投的種目用シューズや走り高跳び用シューズは 、踏切の瞬間に横方向や捻じれの方向に大きな応力がかかるため、甲部に緊締ベ ルト１０を設けてシューズのホールド性を補強していたが、該緊締ベルト１０も 強い引っ張り応力に対しては伸張してしまい、踏切の力にロスを生じていた。 本考案に係る緊締ベルト１０は前記ダイニーマなど超高強力・高弾性率ポリエ チレン繊維から成るテープ状の部材を単独で、もしくは合成皮革、人工皮革その 他素材と前記ダイニーマから成る補強部材３を積層一体化されたベルトであって 、いわゆるＤ環を介すなどして甲部を緊締し、面ファスナー等任意の止着部材に て止着される構成を有する。

【００１９】 本考案に係る他の実施例として第４図に示すように甲被サイド部Ｅを前記補強 部材３にて補強することも可能である。この場合外甲側と内甲側の両サイドに前 記補強部材３を設けることも可能であるが、トラックを周回する競技種目の場合 、トラックは反時計計回りと決められているため、少なくとも右足の内甲側サイ ド部と左足の外甲側サイド部に設けることによって足の振れを防止することがで きる。

【００２０】 更に、第５図に示すようにスポーツシューズ１の先飾り６、鳩目飾り７、ライ ン１１や外月型１２の裏面などに前記ダイニーマなどの超高強力・高弾性率ポリ エチレン素材から成る補強部材３を設置し、シューズの補強を図ることも可能で ある。 この場合、競技中の甲被の伸長を防止すると共に、長年に渡って使用されるこ とによる甲被の伸びや形崩れをも防止できる。

【００２１】 本実施例では、所謂陸上競技用スパイクを示す図面に基づいて説明したが、本 考案は陸上競技用スパイクに限られるものではなく、サッカー、野球、バレーボ ール、テニス、ランニングなどあらゆるスポーツシューズに実施可能なことは言 うまでもない。

【００２２】

【考案の効果】

本考案のスポーツシューズは上記の構成からなるので、下記の効果を奏する。 本考案のスポーツシューズは、ダイニーマなどの超高強力・高弾性率ポリエチ レン素材から成る補強部材を所望部位に設けたため、従来の補強部材を有するス ポーツシューズに比較して、競技中にスポーツシューズにかかる引っ張り応力や 捻じれの応力により甲被が伸張するのを防止するのに顕著な効果を奏する。 そのため、競技者が地面に伝える力をロスすることがなく、競技記録を向上せ しめ、競技中における捻挫などの障害の低減に寄与する。 また、長期間に渡る使用において甲被が伸びてしまうこともなく、フィット性 、ホールド性を維持し続ける効果を奏する。 更に、スポーツシューズ自体の重量増を低減できるなど理想的なスポーツシュ ーズを提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係るスポーツシューズの一例を示す図
である。

【図２】本考案に係るスポーツシューズのトウボックス
部の拡大参考図である。

【図３】本考案に係るスポーツシューズであって、緊締
ベルトを有するスポーツシューズの一例を示す図であ
る。

【図４】本考案に係るスポーツシューズの内甲側から見
た図である。

【図５】本考案に係る他の実施例を示した図である。

【符号の説明】

１ スポーツシューズ ２ 甲被 ３ 補強部材 ４ 踵飾り ５ ソール ６ 先飾り ７ 鳩目飾り ８ 靴紐 ９ 舌片 １０ 緊締ベルト １１ ライン １２ 外月型 Ａ トウボックス部 Ｂ 母趾球部 Ｃ 子趾球部 Ｄ 履口部 Ｅ 甲被サイド部

Claims (8)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 任意材からなる甲被、舌片及び靴底を有
   するスポーツシューズにおいて、引張強度が約１５ｇ／
   ｄ以上で且つ６０ｇ／ｄ以下、引張弾性率が約５００ｇ
   ／ｄ以上で且つ２５００ｇ／ｄ以下の超高強力・高弾性
   率ポリエチレン繊維を少なくとも一部に用いた織編物か
   らなる補強部材を用いたことを特徴とするスポーツシュ
   ーズ。
2. 【請求項２】 前記スポーツシューズにおいて、前記補
   強部材が母趾球部及び子趾球部を包囲するように設けら
   れたことを特徴とする請求項１記載のスポーツシュー
   ズ。
3. 【請求項３】 前記スポーツシューズにおいて、前記補
   強部材が甲被の履口部に周設されたことを特徴とする請
   求項１または２記載のスポーツシューズ。
4. 【請求項４】 前記スポーツシューズにおいて、前記補
   強部材が甲部緊締ベルトに設けられたことを特徴とする
   請求項１、２または３記載のスポーツシューズ。
5. 【請求項５】 前記スポーツシューズにおいて、前記補
   強部材が甲被のサイド部であって、少なくとも右足の外
   甲側と左足の内甲側に設けられたことを特徴とする請求
   項１、２、３または４記載のスポーツシューズ。
6. 【請求項６】 前記スポーツシューズにおいて、前記補
   強部材が先飾り、鳩目飾り、ラインまたは外月型のうち
   少なくともいずれか一の部材に設けられたことを特徴と
   する請求項１、２、３、４または５記載のスポーツシュ
   ーズ。
7. 【請求項７】 引張強度が約１５ｇ／ｄ以上で且つ６０
   ｇ／ｄ以下、引張弾性率は約５００ｇ／ｄ以上で且つ２
   ５００ｇ／ｄ以下の超高強力・高弾性率ポリエチレン繊
   維を少なくとも一部に用いた織編物からなることを特徴
   とするスポーツシューズ用補強部材。
8. 【請求項８】 引張強度が約１５ｇ／ｄ以上で且つ６０
   ｇ／ｄ以下、引張弾性率は約５００ｇ／ｄ以上で且つ２
   ５００ｇ／ｄ以下の超高強力・高弾性率ポリエチレン繊
   維とポリエステル、ナイロン、アクリル及びビニロン等
   の合成繊維とをデニール比１５〜６０％、８５〜４０％
   の割合で混合した複合糸を少なくとも一部に用いた織編
   物からなることを特徴とするスポーツシューズ用補強部
   材。