JP3013345B2 - 抗菌性材料からなる容器 - Google Patents

抗菌性材料からなる容器

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JP3013345B2
JP3013345B2 JP8271317A JP27131796A JP3013345B2 JP 3013345 B2 JP3013345 B2 JP 3013345B2 JP 8271317 A JP8271317 A JP 8271317A JP 27131796 A JP27131796 A JP 27131796A JP 3013345 B2 JP3013345 B2 JP 3013345B2
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秀俊 斎藤
茂夫 大塩
教雄 田中
英樹 砂山
幸男 渋木
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恒成株式会社
秀俊 斎藤
高野 雅志
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属、ガラス、セ
ラミックスやプラスチック等の各種基材の表面に、二酸
化チタンからなる結晶配向膜を形成した抗菌性材料によ
り構成され、特に食料品、食器又は調理用器具の保管に
適した容器に関する。
【0002】食料品や食器、調理用器具類の保管に用い
られる容器としては、プラスチック、金属、ガラス、陶
磁器、木材等の種々の材料で構成された、種々の形状の
ものが知られている。食料品や食器、調理用器具類は、
雑菌やカビ等の繁殖を抑え、衛生的に保管する必要があ
り、容器自体を抗菌剤を混入したプラスチックで構成し
たり、容器表面に抗菌剤を塗布又は含浸させて抗菌性を
付与する等、これらの保管用容器に抗菌性を付与する種
々の方法が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
従来の技術では、特殊な方法で製造した高価な抗菌剤を
使用するためにコストが高くなる、得られる抗菌性が充
分なものではない、時間の経過とともに抗菌性が低下す
る、等の問題があった。したがって、本発明の目的は、
簡単な方法で製造することができ、きわめて優れた抗菌
性を有し、しかも時間の経過によっても抗菌性が低下し
ない容器類を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、金属、ガ
ラス、セラミックスやプラスチック等の各種基材表面
に、ある特定方向に配向された二酸化チタンの結晶配向
膜を形成することによって、顕著な抗菌性を有する材料
が得られることを見出し、本発明を完成したものであ
る。すなわち、本発明は、表面に二酸化チタンからなる
結晶配向膜を有し、該結晶配向膜が結晶表面と垂直方向
に(001)、(100)、(211)、(101)及
び(110)からなる結晶面から選択された方向に配向
されたものである抗菌性材料から容器を構成することを
特徴とするものである。
【0005】本発明の二酸化チタンからなる結晶配向膜
とは、二酸化チタンの単結晶からなる配向膜ならびに多
結晶からなる配向膜を意味する。ここで、単結晶配向膜
とは、材料学の分野で通常用いられるように、配向膜全
体が単一の結晶で構成されたものだけではなく、配向膜
が三次元方向の結晶方位が一致する多数の結晶により構
成されたものをも包含するものである。上記特定方向に
配向された二酸化チタンからなる結晶配向膜を有する抗
菌性材料は、本発明者らによってはじめて製造された新
規な材料であり、気化させたチタンアルコキシド(原料
錯体)を担体となる不活性ガスとともに、大気圧開放下
で加熱された基材表面に吹き付けることによって、製造
することができるものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の容器を構成する抗菌性材
料に用いられる基材としては、特に制限はなく、二酸化
チタンの吹き付け時の加熱に耐えられる材料はいずれも
使用可能であるが、通常は金属、ガラス、セラミックス
及びプラスチック等を使用する。これらの材料の中で
も、ステンレス鋼等の金属類が二酸化チタン結晶配向膜
との密着性や配向膜形成後の加工性の点で特に好まし
い。
【0007】二酸化チタン結晶配向膜を形成する原料と
しては、一般式 Ti(OR)4 で表されるチタンアル
コキシドを使用する。(式中、Rは炭素数2〜10のア
ルキル基を表す。) これらのチタンアルコキシドの中では、Ti(OC2
5 4(以下、「TTE」と略記する)、Ti(O−i
−C3 7 4 (以下、「TTIP」と略記する)、T
i(O−n−C4 9 4 (以下、「TTNB」と略記
する)が好ましく、中でもTTIPは二酸化チタンの堆
積速度が速く、得られる配向膜の結晶構造の制御も容易
であることから、特に好ましい原料である。
【0008】本発明の容器を構成する抗菌性材料を製造
するには、上記原料錯体を気化器で気化し、担体となる
不活性ガスとともに、大気圧開放下で加熱された基材表
面に吹き付け、基材表面に二酸化チタンの結晶配向膜を
形成する。担体となる不活性ガスとしては、特に制限は
なく、窒素、ヘリウム、アルゴン等通常用いられる不活
性ガスはいずれも使用可能であるが、経済性等の点で窒
素ガスを使用することが好ましく、中でも液体窒素を通
して水分を除去した窒素ガスを使用することが特に好ま
しい。原料錯体の気化温度は、原料の種類に応じて調整
するが、例えばTTE、TTIP、TTNBの場合に
は、70〜150℃とすることが好ましい。
【0009】不活性ガス担体により運ばれた原料錯体
を、大気圧開放下で加熱された基体表面に吹き付けるに
あたっては、スリット型のノズルから移動する基材表面
に吹き付けることによって、板状、棒状、線状、パイプ
状の基材、あるいは皿、トレー等種々の形状にあらかじ
め成形した基材表面に、連続的に二酸化チタンの結晶配
向膜を形成することが可能となる。
【0010】基材表面を加熱するには、図1にみられる
ように、炉内温度が通常300℃以下の低温ゾーン1
1、11と、該低温ゾーンよりも高温(通常は、炉内温
度400〜500℃)の高温ゾーン12、12からなる
加熱炉10(通常は電気炉)を使用することが好まし
い。この加熱炉には、低温ゾーン側に基材の入口、高温
ゾーン側に基材の出口を設けて、基材を連続的に加熱炉
中を通過せしめる際に、低温ゾーンで基材を予め加熱
し、高温ゾーンでスリット型ノズル9から気化させた原
料錯体を不活性ガスとともに基材表面に吹き付け、結晶
配向膜を形成する。低温ゾーン11、11と高温ゾーン
12、12の間には仕切13、13を設け、高温ゾーン
の原料が低温ゾーンに流入するのを防止する。また、基
材(被コーティング物)20は、通常は、ローラー、ベ
ルト、チェイン等の搬送体上に載置して、加熱炉内を移
動させるが、加熱炉の通路の形状は、基材の形状に合わ
せて適宜変更すればよい。
【0011】金属表面等に二酸化チタンを熱CVD法に
より被覆することは公知であるが、従来の熱CVD法に
おいては、密閉されたメッキ室中で減圧下に基材を50
0〜800℃程度の高温に加熱して、基材表面に二酸化
チタン薄膜を形成していた。したがって、基材として使
用できる材料に制限があり、また長尺物を対象とするこ
とはできず、しかも二酸化チタン薄膜の堆積速度がきわ
めて遅い為に、薄膜の結晶構造を制御することは不可能
であった。本発明者らの開発した方法は、大気圧開放下
に比較的低温に加熱された基材表面に、高速で連続的に
二酸化チタンの結晶配向膜を形成するものである。した
がって、基材として金属やガラス、セラミックス等の耐
熱性材料だけではなく、プラスチック等の比較的耐熱性
の低い材料を使用することが可能となるとともに、板状
体やパイプ等の長尺物を連続的に加工することが可能と
なった。また、原料の気化温度や供給量、担体ガスの流
量、基材温度等をそれぞれ調整することによって、得ら
れる結晶配向膜の結晶構造を制御し、結晶配向膜の配向
方向、膜の厚さ、結晶の粒径や粒径分布を所望のものに
調整することが可能となった。また、単結晶配向膜を表
面に有する材料からなる基材を使用して二酸化チタン結
晶配向膜を形成した場合には、二酸化チタンの単結晶配
向膜を有する抗菌性材料を得ることができる。このよう
な単結晶配向膜を有する基材としては、例えば、チタン
酸ストロンチウム板等が挙げられ、市販品として入手可
能である。
【0012】すなわち、本発明者らの開発した方法によ
れば、基材表面に形成する二酸化チタン結晶配向膜が、
結晶方向に垂直方向に(001)、(100)、(21
1)、(101)及び(110)からなる結晶面から選
択された方向に配向されたものを得ることができる。こ
れらの特定方向に配向された二酸化チタン結晶配向膜
は、意外にも光、特に紫外線を照射した際に、顕著な抗
菌作用(制菌作用及び滅菌作用)を有するものであるこ
とが判明した。したがって、これら特定方向に配向され
た二酸化チタン結晶配向膜を表面に設けた材料は、抗菌
性を必要とされる容器を構成する素材として広く使用す
ることができるものであり、特に食料品、食器又は調理
用器具を保管する容器を構成する素材として、好適なも
のである。これらの特定方向に配向された結晶配向膜
は、ある1つの方向のみに配向された二酸化チタン結晶
により構成されていても、2つ以上の方向に配向された
二酸化チタン結晶により構成されていても、同様の効果
を奏するものである。
【0013】本発明者らの開発した方法によれば、基材
表面に形成する結晶配向膜の膜厚は、所望のものとする
ことができるが、膜厚を0.1μm以上とすることによ
って基材に顕著な抗菌性を付与することができるので、
通常は0.1〜10μm、好ましくは0.2〜2.0μ
mとする。また、配向膜を形成する結晶の粒径は、可視
光線及び紫外線の波長と同程度とした場合に顕著な抗菌
性が得られ、特に、粒径分布のそろった結晶配向膜とし
た場合にはその効果が著しい。したがって、結晶粒径と
して、0.1〜10μm、粒径分布が実質的に平均値±
100%である結晶配向膜とすることが好ましく、粒径
分布が平均値±50%である結晶配向膜とすることが特
に好ましい。本発明における結晶の粒径分布は、材料学
の分野での常法に従い、つぎのようにして算出する。す
なわち、図16にみられるように、横軸に配向膜を構成
する各結晶の粒径(最大直径)、縦軸に結晶の個数をと
って描いたヒストグラムにおいて、縦軸の最大値Y1
50%以上のものを対象として(図16の斜線部)、結
晶粒径の平均値及び粒径分布を算出するものである。
【0014】従来から、基材上に形成した二酸化チタン
薄膜が何らかの光触媒作用を有し、このような材料を反
射防止膜、センサー材料等に利用することは知られてい
たが、基材上にある特定方向に配向された二酸化チタン
結晶配向膜を形成すること、該結晶配向膜が従来の二酸
化チタン薄膜にない顕著な抗菌性を有するものであるこ
とは、本発明者らの開発した方法によってはじめて可能
となったものである。本発明者らの開発した方法による
特定方向に配向された二酸化チタン薄膜が、顕著な抗菌
性を発揮する詳細な理由は不明であるが、光、特に紫外
線の照射により特定方向に配向された表面層の二酸化チ
タンが励起されて、プラスイオンと電子に分極化するこ
とにより、抗菌性を発揮するものと考えられる。
【0015】また、二酸化チタンからなる結晶配向膜の
表面に、さらに銀、銅又はそれらの酸化物の皮膜を形成
した抗菌性材料から容器を構成した場合には、抗菌性が
一段と改善されたものとすることができる。二酸化チタ
ン結晶配向膜の表面に、銀、銅又はそれらの酸化物の皮
膜を形成するには、上記方法によって二酸化チタン結晶
配向膜を形成した後に、必要により所望の形状に切断又
は成形し、コーティング法、浸漬法、スパッタリング
法、熱CVD法等の通常の方法により、銀、銅又はそれ
らの酸化物の皮膜を形成すればよい。銀又は銅の皮膜を
形成するにはスパッタリング法を、またそれらの酸化物
の皮膜を形成するには本発明と同様の方法を使用するこ
とが好ましい。
【0016】本発明における、食料品、食器又は調理用
器具の保管に用いられる容器の形状やサイズに特に制限
はなく、皿、トレー、ボウル、ざる、弁当箱、箸箱等の
比較的小さなものから、水切りかご、洗い桶、バスケッ
ト、キャビネット、食器棚、冷蔵庫、ショーケース等の
比較的大きなもの、さらには人が出入りできるような大
型の食料品貯蔵庫等をも包含するものである。また、そ
の形状としては、皿、トレー、ボウルのように蓋の無い
ものでも良く、弁当箱、冷蔵庫、ショーケースのように
蓋(扉)の有るものとすることもできる。本発明で使用
する二酸化チタン結晶配向膜を有する抗菌性材料は、
光、特に紫外線照射時に、顕著な抗菌性を発揮するもの
であるために、蓋付きの容器内に可視光線、紫外線等を
光源とするランプを設け、容器の蓋を閉めたときにラン
プが点灯し、容器の蓋を開けたときにランプが消灯する
ように構成すれば、一段と改善された抗菌性を有する容
器とすることができる。
【0017】本発明の容器は、金属、ガラス、セラミッ
クス又はプラスチック等からなる基材の表面に、特定方
向に配向した二酸化チタン結晶配向膜を有する抗菌性材
料により、容器全体を構成することができる。また、容
器本体は通常の抗菌性のない材料で構成し、該容器の一
部、例えば底面、側面などの内張り材として、特定方向
に配向した二酸化チタン結晶配向膜を有する抗菌性材料
を使用する構成とすることもできる。
【0018】
【実施例】つぎに、本発明を実施例により説明するが、
本発明がこれらの実施例により限定されるものではない
ことは言うまでもない。図1は、以下の実施例におい
て、本発明の容器を構成する抗菌性材料の製造に使用す
る、大気圧開放型熱CVD装置を示す模式図である。図
1において、符号1はボンベ等の窒素ガス供給源、符号
2は流量計、符号3は液体窒素を入れたトラップ、符号
4、5、6は配管中に設けられたバルブを表す。符号7
は原料となるチタンアルコキシド8の気化器、符号9は
下部に所定幅のスリットを設けたスリット型ノズル、ま
た符号10は低温ゾーン11、11及び高温ゾーン1
2、12からなり両者の間に仕切13、13を設けた加
熱炉(電気炉)を表す。窒素ガス供給源1から供給され
た窒素ガスは、流量計2を通して液体窒素を入れたトラ
ップ3に送られ、水分を除去した後にバルブ4及び6に
送られる。バルブ4を通った窒素ガスは、気化器7内の
液状のチタンアルコキシド8中に気泡として放出され、
チタンアルコキシドの気化を助ける。気化されたチタン
アルコキシドと窒素ガスとの混合ガスは、バルブ5を経
てバルブ6から送られた窒素ガスと混合され、スリット
型ノズル9に送られる。基材20は、加熱炉の低温ゾー
ン11側に設けられた入口から加熱炉10内に連続的に
供給され、低温ゾーン11で予め加熱された後に、高温
ゾーン12の出口近辺に設置したスリット型ノズル9に
より、表面に原料錯体と窒素ガスの混合ガスを吹き付け
て、二酸化チタン結晶配向膜が形成される。
【0019】[抗菌性材料の製造] (製造例1)原料錯体としてTTIPを用い、原料気化
温度77℃、窒素ガス流量1.5dm3 /min.でT
TIPを気化させた。基材として、厚さ0.5mm、巾
500mm、の帯状のステンレス鋼を、低温ゾーンの温
度300℃、高温ゾーンの温度400℃に設置した加熱
炉中に、0.2m/min.の速度で供給し、巾0.5
mmのスリットを有するスリット型ノズルから上記原料
ガス混合物を吹き付け、基材表面に膜厚2.0μmの二
酸化チタン多結晶配向膜を形成させた。得られた二酸化
チタン多結晶配向膜の状態を、走査型電子顕微鏡(以
下、「SEM」と略記する)及びX線回折により観察し
たところ、多結晶配向膜はアナターゼ構造を持ち、膜を
形成する結晶表面と垂直方向に(001)面に配向され
たものであった。また、結晶の粒径は0.3〜0.8μ
mで、粒径分布は0.55±0.25μmであった。こ
の多結晶配向膜のX線回折の結果を図2に、また表面の
SEM写真を図3に示す。
【0020】(製造例2)原料気化温度を130℃とし
たほかは、製造例1と同様にしてステンレス鋼表面に膜
厚3.0μmの二酸化チタン多結晶配向膜を形成させ
た。この配向膜の状態をSEM及びX線回折により観察
したところ、多結晶配向膜はアナターゼ構造を持ち、膜
を形成する結晶表面と垂直方向に(100)及び(21
1)面に配向されたものであった。また、結晶の粒径は
1.2〜1.5μmで、粒径分布は1.35±0.15
μmであった。この多結晶配向膜のX線回折の結果を図
4に、また表面のSEM写真を図5に示す。
【0021】(製造例3)原料錯体としてTTEを用
い、原料気化温度を92℃としたほかは、製造例1と同
様にして厚さ1mm、巾26mm、長さ76mmのガラ
ス基板表面に膜厚2.0μmの二酸化チタン多結晶配向
膜を形成させた。この配向膜の状態をSEM及びX線回
折により観察したところ、多結晶配向膜はアナターゼ構
造を持ち、膜を形成する結晶表面と垂直方向に(00
1)面に配向されたものであった。また、結晶の粒径は
0.3〜0.7μmで、粒径分布は0.5±0.2μm
であった。この多結晶配向膜のX線回折の結果を図6
に、また表面のSEM写真を図7に示す。
【0022】(製造例4)原料気化温度を162℃とし
たほかは、製造例3と同様にして、ガラス基板表面に膜
厚2.0μmの二酸化チタン多結晶配向膜を形成させ
た。この配向膜の状態をSEM及びX線回折により観察
したところ、多結晶配向膜はアナターゼ構造を持ち、膜
を形成する結晶表面と垂直方向に(100)及び(21
1)面に配向されたものであった。また、結晶の粒径は
0.8〜1.0μmで、粒径分布は0.9±0.1μm
であった。この多結晶配向膜のX線回折の結果を図8
に、また表面のSEM写真を図9に示す。
【0023】(製造例5)基材として厚さ1.0mm、
巾26mm、長さ76mmのガラス基板を使用したほか
は、製造例1と同様にして、基材表面に膜厚2.0μm
の二酸化チタン多結晶配向膜を形成させた。この配向膜
の状態をSEM及びX線回折により観察したところ、多
結晶配向膜はアナターゼ構造を持ち、膜を形成する結晶
表面と垂直方向に(001)面に配向されたものであっ
た。また、結晶の粒径は0.3〜0.9μmで、粒径分
布は0.6±0.3μmであった。この多結晶配向膜の
X線回折の結果を図10に、また表面のSEM写真を図
11に示す。
【0024】(製造例6)基材として厚さ1.0mm、
巾5mm、長さ10mmの、(100)面に配向したチ
タン酸ストロンチウムの単結晶板(市販品)を使用し、
原料錯体としてTTIPを用い、原料気化温度を77℃
としたほかは、製造例1と同様にして、基材表面に膜厚
2.0μmの二酸化チタンの結晶配向膜を形成させた。
この配向膜の状態を原子間力顕微鏡(以下、「AFM」
と略記する)及びX線回折により観察したところ、配向
膜はアナターゼ構造を持ち、膜を形成する結晶面と垂直
方向に(001)面に配向されるとともに、三次元の結
晶方位が一致する多数の結晶により構成された単結晶配
向膜であった。また、結晶の粒径は、0.1〜0.2μ
mで、粒径分布は0.15±0.05μmであった。こ
の単結晶配向膜のX線回折の結果を図12に、また表面
のAFM写真を図13に示す。
【0025】(製造例7)製造例1で得られた、二酸化
チタン多結晶配向膜を有するステンレス鋼を切断して1
00mm×100mmの断片を得た。密閉型メッキ室を
有する通常の熱CVD装置を使用し、この断片の二酸化
チタン配向膜の表面に、室温、圧力10-1torrでA
rスパッタリング法により膜厚10nmの銀皮膜を形成
した。
【0026】(製造例8)皮膜形成原料を銅としたほか
は製造例7と同様にして、二酸化チタン配向膜の表面に
さらに膜厚10nmの銅皮膜を有するステンレス鋼を得
た。
【0027】(抗菌性試験)上記各製造例で得られた、
表面に二酸化チタン結晶配向膜を形成した抗菌性材料か
ら、10mm×10mmの試験片をそれぞれ作成し、次
のようにして抗菌性試験を行った。予め、増菌、計測し
た液体培養の一般細菌(Bacillus subtilis)を、105
オーダーになるように上記各試験片に塗布し、これをぺ
トリ皿に入れ蓋をし、自然光(晴天日のガラス越し)下
で3時間放置する。その後、生理食塩水9mlを入れ、
よく混和し、常法(衛生試験法:日本薬学会編1980
年度版)に従い、定量採り標準寒天培地にて、35℃で
48時間培養、計測した。比較のために、二酸化チタン
結晶配向膜を有さないステンレス鋼試験片(比較例1)
及びガラス基板試験片(比較例2)についても同様に処
理して、菌数を計測した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】上記抗菌性試験の結果によれば、本発明の
容器を構成する、基材表面に二酸化チタン結晶配向膜を
有する材料は、顕著な抗菌性を有するものであることが
わかる。
【0030】(実施例1)ポリエチレン樹脂を射出成形
することによって、図14に示す形状の容器31を得
た。この容器は縦300mm、横500mm、深さ20
0mmの容器本体32と同形状で深さ50mmの蓋33
からなる。本体32の内部には紫外線ランプ34が設置
され、また本体32と蓋33には一対のスイッチ35、
36が設けられている。この紫外線ランプ34は、蓋3
3が閉じられてスイッチ35、36が接触すると点灯
し、蓋33が開けられてスイッチ35、36が分離する
と消灯するように構成されている。上記製造例1で得ら
れた、表面に二酸化チタン多結晶配向膜を有するステン
レス鋼を切断して容器本体32の底面とほぼ同じ長さの
内張り材を作成し、これを本体32の底面と蓋33の上
面内側全面に接着剤により貼着した。この容器は、蓋3
3を閉じたときには紫外線ランプが点灯し、内張り材表
面の二酸化チタン多結晶配向膜が紫外線により励起され
て顕著な抗菌性を発揮するものであり、食料品や食器、
調理用器具類の保管に適したものである。
【0031】(実施例2)実施例1と同様のポリエチレ
ン樹脂製の容器に、内張り材として、上記製造例2で得
られた表面に二酸化チタン多結晶配向膜を有するステン
レス鋼を、接着剤により貼着した。この例においては、
内張り材は容器本体32の底面及び蓋33の上面のほか
に、容器本体32の周壁を構成する4側面にも貼着し
た。この容器は、内容物の保管時に顕著な抗菌性を発揮
するものであり、食料品や、食器、調理用器具類の保管
に適したものである。
【0032】(実施例3)製造例7で得られた、二酸化
チタン多結晶配向膜の表面にさらに銀皮膜を形成したス
テンレス鋼を内張り材として使用したほかは、実施例1
と同様にして容器を製造した。この容器は実施例1の容
器よりもさらに改善された抗菌性を発揮するものであ
り、食料品や食器、調理用器具類の保管に特に適したも
のである。
【0033】(実施例4)製造例8で得られた、二酸化
チタン多結晶配向膜の表面にさらに銅皮膜を形成したス
テンレス鋼を内張り材として使用したほかは、実施例1
と同様にして容器を製造した。この容器は実施例1の容
器よりもさらに改善された抗菌性を発揮するものであ
り、食料品や食器、調理用器具類の保管に特に適したも
のである。
【0034】(実施例5)製造例1で得られた表面に二
酸化チタン多結晶配向膜を有するステンレス鋼を切断
後、常法により深絞り成形して、図15に示す形状のト
レー41を製造した。このトレーの底面の寸法は200
mm×400mm、上面の寸法は240mm×440m
mで深さは20mmである。このトレーは、優れた抗菌
性を有し、食料品や食器、調理用器具類の保管に適した
ものである。
【0035】
【発明の効果】本発明では、表面に二酸化チタンからな
る結晶配向膜を有し、該結晶配向膜が結晶表面と垂直方
向に(001)、(100)、(211)、(101)
及び(110)からなる結晶面から選択された方向に配
向されたものである抗菌性材料から容器を構成すること
によって、きわめて優れた抗菌性を有し、しかも時間の
経過によっても抗菌性が低下しない、特に食料品や食
器、調理用器具類の保管に適した容器類を、低コストで
得ることができる。この特定方向に配向された二酸化チ
タン結晶配向膜を有する抗菌性材料は、本発明者らが開
発した方法によってはじめて得られたものであるが、結
晶配向膜を形成する結晶の粒径を0.1〜10μmの範
囲内とし、粒径分布が実質的に平均値±100%、なか
でも平均値±50%となるようにそろえた抗菌性材料に
よって容器を構成した場合には、特に顕著な抗菌性を有
する容器が得られる。そして、二酸化チタン結晶配向膜
の表面に、さらに銀、銅又はそれらの酸化物の皮膜を形
成した抗菌性材料によって容器を構成した場合には、一
段と改善された抗菌性を有する容器が得られる。
【0036】この二酸化チタン結晶配向膜は、可視光線
や紫外線の照射時に顕著な抗菌性を発揮するものである
から、容器内にランプを設け、蓋を閉めた時にランプが
点灯し、蓋を開けたときに消灯するように構成した場合
には、内容物の保管時にきわめて顕著な抗菌性を発揮す
る容器とすることができる。本発明は、このように顕著
な抗菌性を有し、特に食料品や食器、調理用器具類の保
管に適した容器を低コストで提供するものであり、きわ
めて実用価値の高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する抗菌性材料の製造に使用する
大気圧開放型熱CVD装置を示す模式図である。
【図2】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成した
二酸化チタン多結晶配向膜の1例のX線回折図である。
【図3】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成した
二酸化チタン多結晶配向膜の1例のSEM写真である。
【図4】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成した
二酸化チタン多結晶配向膜の他の例のX線回折図であ
る。
【図5】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成した
二酸化チタン多結晶配向膜の他の例のSEM写真であ
る。
【図6】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成した
二酸化チタン多結晶配向膜の他の例のX線回折図であ
る。
【図7】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成した
二酸化チタン多結晶配向膜の他の例のSEM写真であ
る。
【図8】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成した
二酸化チタン多結晶配向膜の他の例のX線回折図であ
る。
【図9】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成した
二酸化チタン多結晶配向膜の他の例のSEM写真であ
る。
【図10】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成し
た二酸化チタン多結晶配向膜の他の例のX線回折図であ
る。
【図11】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成し
た二酸化チタン多結晶配向膜の他の例のSEM写真であ
る。
【図12】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成し
た二酸化チタン単結晶配向膜の1例のX線回折図であ
る。
【図13】本発明で使用する抗菌性材料の表面に形成し
た二酸化チタン単結晶配向膜の1例のAFM写真であ
る。
【図14】本発明の容器の1例を示す図である。
【図15】本発明の容器の他の例を示す図である。
【図16】結晶の粒径分布の算出方法を説明する図であ
る。
【符号の説明】
4、5、6 熱CVD装置の配管中に設けたバルブ 7 気化室 8 液状チタンアルコキシド 9 スリット型ノズル 10 加熱炉 11 低温ゾーン 12 高温ゾーン 13 仕切 20 基材 31 容器 32 容器本体 33 蓋 34 紫外線ランプ 35、36 スイッチ 41 トレー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大塩 茂夫 新潟県三島郡越路町大字来迎寺甲1641番 地2 (72)発明者 田中 教雄 新潟県長岡市深沢町1993番地1 (72)発明者 砂山 英樹 新潟県長岡市西津町1986番地 (72)発明者 渋木 幸男 新潟県燕市大字小池4929番地 恒成株式 会社内 (56)参考文献 特開 平9−108299(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B65D 81/28

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に二酸化チタンからなる結晶配向膜を
    有し、該結晶配向膜が結晶表面と垂直方向に(00
    1)、(100)、(211)、(101)及び(11
    0)からなる結晶面から選択された方向に配向されたも
    のである抗菌性材料により構成された容器。
  2. 【請求項2】結晶配向膜の厚さが0.1μm以上である
    ことを特徴とする請求項1に記載の容器。
  3. 【請求項3】結晶配向膜を形成する結晶の粒径が0.1
    〜10μmであり、粒径分布が実質的に平均値±100
    %であることを特徴とする請求項1又は2に記載の容
    器。
  4. 【請求項4】抗菌性材料が金属、ガラス、セラミックス
    又はプラスチックから選ばれたものであることを特徴と
    する請求項1〜3のいずれか1項に記載の容器。
  5. 【請求項5】抗菌性材料が二酸化チタンからなる結晶配
    向膜の表面に、さらに銀、銅又はそれらの酸化物の皮膜
    を形成したものであることを特徴とする請求項1〜4の
    いずれか1項に記載の容器。
  6. 【請求項6】容器内に、蓋を閉めたときに点灯し、蓋を
    開けたときに消灯するランプを設けたことを特徴とする
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の容器。
  7. 【請求項7】食料品、食器又は調理用器具の保管に用い
    られる請求項1〜6のいずれか1項に記載の容器。
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