JP3011705B1 - 高周波フィルタ - Google Patents

Abstract

【要約】 【課題】 ポストチューニングドリフト特性を改善して
電源投入時から直ちに使用できること。 【解決手段】 磁気ハウジング５の凹部５ａには磁気コ
イル１３が固定されている。磁気コイル１３の外周面１
３ａと磁気ハウジング５の側壁面５ｄは熱伝導性の接着
剤１６を介して密接され、磁気コイル１３の発熱をポー
ルピース６と反対の磁気ハウジング５の側壁面５ｄ方向
に伝導させる。磁気コイル１３の内周面１３ｂとポール
ピース６との間には空間が形成され、磁気コイル１３の
発熱が直接、ポールピース６に伝導されない。よって、
ポールピース６と磁気ハウジング５との間の温度差が小
さくなり、ポールピース６，６間のギャップｄが一定に
保たれ、共振周波数を安定化でき、特に、ポストチュー
ニングドリフト特性を改善でき、電源投入直後から使用
できるようになる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ＹＩＧ素子等を用
いた高周波フィルタに係り、特に、電源投入時における
同調周波数の変動（ポストチューニングドリフト）を改
善した高周波フィルタに関する。

【０００２】

【従来の技術】図４は、特開昭６４−８４９０１号公報
に開示されている従来の高周波フィルタを示す側断面図
である。磁気ハウジング５０内には、磁気コイル５１が
設けられ、中央には所定のギャップを有して対向する一
対のポールピース５２，５２が設けられ、このギャップ
には、フィルタハウジング５３が設けられている。フィ
ルタハウジング５３には、磁気コイル５１の磁界中にて
高周波に共振するＹＩＧ素子（イットリウム−アイアン
−ガーネット）が設けられている。このＹＩＧ素子は、
同調により数十ＧＨｚ（例えば３０ＧＨｚ）の共振周波
数を有するフィルタ特性が得られる。

【０００３】この高周波フィルタは、磁気コイル５１を
流れる電流によって発生する熱を放熱させる必要があ
る。このため、図示のように、磁気コイル５１の熱は熱
伝導性板５５を介して磁気ハウジング５０の外部に導出
されており、所定の熱発散装置に接続される構成となっ
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、磁気ハ
ウジング５０の熱は、取付けられるシャーシや冷却ファ
ンによって放熱可能であるのに対して、ポールピース５
２は磁気コイル５１の内部に位置するため放熱されるこ
とが殆どない。このため、使用時間経過に伴い、放熱手
段が施された磁気ハウジング５０よりも、ポールピース
５２の方が相対的に温度が上昇する。この熱膨張によっ
てポールピース間のギャップが小さくなると、共振周波
数が変動する（高くなる）。このため、特別に温度補償
の対策を施す必要が生じた。

【０００５】このような高周波フィルタは、例えばスペ
クトラムアナライザ等の測定器に設けられる。このよう
な構成においては、特に、この測定器の電源を投入して
から、磁気ハウジング５０と、ポールピース５２の熱が
平衡状態になるまでの間（例えば電源投入から１５分
間）は、特別に温度補償をしなければ正確な測定をする
ことができなかった。

【０００６】即ち、熱的平衡状態となるまでの時間内で
は、磁気コイル５１の発熱によって磁気ハウジング５０
とポールピース５２は、時間経過とともに温度差が生じ
る。これにより、一対のポールピース５２，５２のギャ
ップが変化し、図５の点線に示す如く共振周波数が変動
（被測定信号の周波数に対し高周波フィルタの共振周波
数がずれる）する問題がある。これは、ポストチューニ
ングドリフト特性と呼ばれ、高周波フィルタの共振周波
数が、電磁コイルに電流を流し始めてから熱的平衡状態
になるまでに変化する最大周波数変化幅を示している。

【０００７】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたものであり、ポストチューニングドリフト特性を改
善して電源投入時から直ちに使用できる高周波フィルタ
を提供することを目的としている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の高周波フィルタは、磁界の発生によりＹＩ
Ｇ素子を所定周波数に同調させて用いる高周波フィルタ
において、中央部にポールピース（６）が前記ＹＩＧ素
子の方向に突出して形成され、該ポールピースと側壁面
（５ｄ）との間に環状の凹部（５ａ）を有する磁気ハウ
ジング（５）と、前記磁気ハウジングの凹部内に前記ポ
ールピースの周囲に巻かれて収容され、前記磁界を発生
させるものであり、前記ポールピースと内周面（１３
ｂ）との間に所定の空間が形成された磁気コイル（１
３）と、前記磁気コイルから発せられる熱をポールピー
スと反対の磁気ハウジングの側壁面方向に伝導させるた
め、前記磁気コイルの外周面（１３ａ）と磁気ハウジン
グの前記側壁面とを密着させる接着剤（１６）と、前記
磁気ハウジングの凹部に面して設けられ、該凹部の前記
側壁面に外周面（１５ａ）が接触固定され前記磁気コイ
ルの底面（１３ｃ）を固定保持し、前記ポールピースと
内周面（１５ｂ）との間に所定の空間が形成された環状
の保持板（１５）と、前記磁気ハウジングの凹部の外周
部分に設けられ、前記保持板を前記磁気ハウジングの底
面から所定間隔を隔てて保持するために段差（５ｃ）
と、を備え、前記磁気コイルから発せられる熱を前記ポ
ールピースに直接伝導させないとともに、前記磁気コイ
ルから発生する熱を磁気ハウジングの側壁面方向に伝導
させてポールピースと磁気ハウジングとの温度差を小さ
くさせることを特徴とする。

【０００９】

【００１０】

【００１１】

【００１２】上記構成によれば、磁気コイル１３の外周
面１３ａと磁気ハウジング５の側壁面５ｄが熱伝導性の
接着剤１６を介して密接されており、磁気コイル１３の
発熱をポールピース６と反対の磁気ハウジング５の側壁
面５ｄ方向に伝導させることができる。また、磁気コイ
ル１３の内周面１３ｂとポールピース６との間、及び磁
気コイル１３を保持する保持板１５と凹部５ａの底面５
ｂとの間にそれぞれ空間が形成されており、磁気コイル
１３の発熱が直接、ポールピース６に伝導されることが
ない。これにより、ポールピース６と磁気ハウジング５
との間の温度差が小さくなり、ポールピース６，６間の
ギャップｄが一定に保たれ、共振周波数を安定化でき
る。特に、電源投入時から磁気コイル１３の発熱によっ
て磁気ハウジング５とポールピース６の温度が上昇し互
いが熱平衡状態となる迄の期間のポストチューニングド
リフト特性を改善でき、電源投入直後から使用できるよ
うになる。

【００１３】

【発明の実施の形態】図１は本発明の高周波フィルタの
実施形態を示す側断面図である。この高周波フィルタ１
は、例えばスペクトラムアナラアイザ等の測定器に適用
され、測定器等のシャーシ２上に固定配置される。磁気
ハウジング５は、図示の如く上下２分割された構造であ
り、図２は一方の平面図である。この磁気ハウジング５
は、上下１対でそれぞれ組み立てた後、図１記載の如く
向き合わせ接合させて用いる。

【００１４】磁気ハウジング５内部には所定径で円環状
の凹部５ａが形成され、中心には対向する磁気ハウジン
グ５と所定ギャップｄを有する高さのポールピース６が
突出形成されている。このギャップｄ部分には高周波回
路部７が配置されている。

【００１５】高周波回路部７は、図３の部分拡大平面図
に示す如く、複数個のＹＩＧ素子８を備え、このＹＩＧ
素子８は、回転軸９で固定保持されループ１０ａを介し
て互いが電気的に接続されている。ループ１０ａの両端
およびループ１０ｂの片端１０ｂａは、高周波回路アー
ス１７に接続され、ループ１０ｂの他端１０ｂｂは同軸
ケーブル１１を介して磁気ハウジング５外周面の同軸コ
ネクタ１２に接続されている。同軸コネクタ１２には測
定器から高周波回路部７に対し共振周波数のフィルタ信
号が入出力される。１４はヒータであり、回転軸９を介
してＹＩＧ素子８の温度を一定に維持するために加熱制
御される。

【００１６】ところで、上記構成のようにＹＩＧ素子８
を複数個用いる構成によって、各ＹＩＧ素子８の特性に
異なるものを用いてフィルタの中心周波数を急峻にした
り、あるいは、通過周波数の帯域を広げことができるよ
うになる。なお、このフィルタとは、所定周波数のみを
通過させるバンドパスフィルタを意味している。

【００１７】凹部５ａには、磁気コイル１３が設けら
れ、磁気コイル１３に電流を流すことより磁気ハウジン
グ５からポールピース６部分を介してＹＩＧ素子８部分
を巡る磁路（磁界）が発生され、ＹＩＧ素子８を所望の
周波数（例えば３０ＧＨｚ）に同調させる。

【００１８】凹部５ａの底面５ｂには所定高さの段差５
ｃが設けられている。図示の例では、段差５ｃは底面５
ｂの外周縁に傾斜面を設けて凹部５ａの側壁面５ｄの径
に対し底面５ｂの径を小径に形成している。そして、凹
部５ａには、側壁面５ｄに密接する外径を有する円環状
の保持板１５が取付けられる。例えばこの保持板１５は
ベーク板等の樹脂板で構成されている。

【００１９】この保持板１５は、段差５ｃによって底面
５ｂに接触せず、所定高さ離れた状態で外周面１５ａが
接着等により側壁面５ｄ部分に固定される。また、保持
板１５の中心部には、ポールピース６の周壁面６ａに接
触しない所定径の開口部１５ｂが形成されている。

【００２０】この保持板１５上には、磁気コイル１３の
底面１３ｃが接着等で固定配置される。磁気コイル１３
は、中央に開口された内周面１３ｂがポールピース６の
周壁面６ａに接触しない程度の径に形成されている。こ
れにより、ポールピース６と磁気コイル１３との間には
所定の空間が形成されている。

【００２１】一方、磁気コイル１３の外周面１３ａは、
凹部５ａの側壁面５ｄに近設する径を有しており、これ
ら外周面１３ａと側壁面５ｄの間は熱伝導性の接着剤１
６で密着される。この接着剤１６は固まる前は液体であ
り、磁気コイル１３の外周面１３ａと磁気ハウジング５
の側壁面５ｄの間から流し込まれこれら外周面１３ａと
側壁面５ｄとを互いに接着し、また、磁気コイル１３の
発熱を磁気ハウジング側に伝導させる。なお、流し込ま
れた接着剤１６は、保持板１５部分で流入が止められ、
底面５ｂへの漏れが防止されている。

【００２２】上記構成によれば、磁気コイル１３から発
せられた熱は接着剤１６で接着固定された外周面１３ａ
から磁気ハウジング５の側壁面５ｄへの経路で外壁面５
ｅに伝導される。一方、磁気コイル１３内周側は、内周
面１３ｂとポールピース６の周壁面６ａが接触しておら
ず、これらの間に所定の空間が形成されているため、磁
気コイル１３の熱が直接ポールピース６に伝導されるこ
とがない。

【００２３】また、保持板１５によって、磁気コイル１
３は磁気ハウジング５の底面５ｂに対しても直接接触す
ることなくこれらの間に所定の空間が形成されており、
また、磁気コイル１３の内周面１３ｂと保持板１５の内
周面１５ｂは、いずれもポールピース６の周壁面６ａに
直接接触していない構成であるため、磁気コイル１３の
底面１３ｃの熱は、保持板１５の外周面１５ａから磁気
ハウジング５の側壁面５ｄへの経路で伝導されることに
なる。なお、上記経路で磁気ハウジング５の外壁面５ｅ
側に伝導された熱は、シャーシ２及び図示しない放熱手
段によってこの磁気ハウジング５から熱が吸収され放熱
される。

【００２４】このように、磁気コイル１３で発生した熱
は、ポールピース６と反対方向である磁気ハウジング５
の外壁面５ｅ方向に積極的に伝導されることとなる。こ
れにより、磁気ハウジング６の内部に位置するポールピ
ース６側の温度上昇を抑えることができ、ポールピース
６と磁気ハウジング５の外壁面５ｅとの間での温度差を
小さくすることができる。

【００２５】特に、測定器の電源を投入し磁気コイル１
３に電流を流し始めてから所定期間迄の間（磁気ハウジ
ング５とポールピース６が熱的平衡状態となるまでの期
間）における、磁気ハウジング５とポールピース６の経
時的な温度差によって生じるギャップｄの変動（膨張）
を抑えることができるようになる。これによって、ギャ
ップｄの変動に基づく共振周波数の変動を抑えることが
でき、ポストチューニングドリフト特性が良好となるよ
う改善できる。

【００２６】図５は、ポストチューニングドリフトの特
性図であり、図中実線が上記構成による特性線である。
横軸は電源投入からの経過時間、縦軸は周波数変化量で
ある。図示のように、上記構成によれば、従来の特性に
比して電源投入時を起点とする共振周波数の変動（周波
数変化量）を小さくできることが示されている。このよ
うに、上記構成によれば、電磁コイル１３に電流を流し
始める初期状態の共振周波数と、電磁コイル１３に電流
を流し熱的平衡状態での共振周波数との差を小さくでき
る。これにより温度補償のための構成が不要にできる。
そして、このような本発明の高周波フィルタを用いた測
定器であれば、測定器の電源投入時から共振周波数が安
定して直ちに測定を開始できるようになる。

【００２７】上記実施形態では、ＹＩＧ素子８を用いた
フィルタについて説明したが、これに限らずＹＩＧ素子
８を用いた発振器として用いることもできる。この場合
においても上記構造により、同様の熱伝導経路で放熱さ
れ同様にポストチューニングドリフト特性を改善するこ
とができる。

【００２８】また、上記実施形態では、水晶球としてＹ
ＩＧ素子を用いる高周波フィルタについて説明したが、
ＹＩＧ素子に代えて、ＮＺＦ（ニッケル−亜鉛−フェラ
イト）や、ＢＡＦ（バリウム−フェライト）などを用い
た高周波フィルタに適用することもできる。

【００２９】

【発明の効果】本発明の高周波フィルタによれば、磁気
コイルから発生される熱はポールピースと反対側の磁気
ハウジングに積極的に伝導される構成であるため、ポー
ルピースと磁気ハウジングとの間の温度差を小さくで
き、ポールピース間のギャップを一定に保ち、共振周波
数を安定化させることができるようになる。特に、電源
投入時から磁気コイルの発熱によって磁気ハウジングと
ポールピースの温度が上昇し互いが熱平衡状態となる迄
の期間におけるポールピースと磁気ハウジングとの間の
経時的な温度差が小さくできるため、この電源投入後所
定期間におけるポストチューニングドリフト特性を改善
することができ、電源投入とともに直ちに使用できるよ
うになる。また、温度補償のための対策を不要にでき
る。これにより、この高周波フィルタを備えたスペクト
ラムアナライザ等の測定器は電源投入とともに測定が開
始できるようになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の高周波フィルタの実施の形態を示す側
断面図。

【図２】同平面図。

【図３】同部分拡大平面図。

【図４】従来の高周波フィルタを示す側断面図。

【図５】ポストチューニングドリフトの特性図。

【符号の説明】

１…高周波フィルタ、２…シャーシ、５…磁気ハウジン
グ、５ａ…凹部、５ｂ…底面、５ｃ…段差、５ｄ…側壁
面、５ｅ…外壁面、６…ポールピース、６ａ…周壁面、
７…高周波回路部、８…ＹＩＧ素子、１２…同軸コネク
タ、１３…磁気コイル、１３ａ…外周面、１３ｂ…内周
面、１３ｃ…底面、１５…保持板、１５ａ…外周面、１
５ｂ…内周面、１６…熱伝導性接着剤、１７…高周波回
路アース、ｄ…ギャップ。

フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H01P 1/215 - 1/218 H01F 27/30

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 磁界の発生によりＹＩＧ素子を所定周波
   数に同調させて用いる高周波フィルタにおいて、 中央部にポールピース（６）が前記ＹＩＧ素子の方向に
   突出して形成され、該ポールピースと側壁面（５ｄ）と
   の間に環状の凹部（５ａ）を有する磁気ハウジング
   （５）と、 前記磁気ハウジングの凹部内に前記ポールピースの周囲
   に巻かれて収容され、前記磁界を発生させるものであ
   り、前記ポールピースと内周面（１３ｂ）との間に所定
   の空間が形成された磁気コイル（１３）と、 前記磁気コイルから発せられる熱をポールピースと反対
   の磁気ハウジングの側壁面方向に伝導させるため、前記
   磁気コイルの外周面（１３ａ）と磁気ハウジングの前記
   側壁面とを密着させる接着剤（１６）と、前記磁気ハウジングの凹部に面して設けられ、該凹部の
   前記側壁面に外周面（１５ａ）が接触固定され前記磁気
   コイルの底面（１３ｃ）を固定保持し、前記ポールピー
   スと内周面（１５ｂ）との間に所定の空間が形成された
   環状の保持板（１５）と、 前記磁気ハウジングの凹部の外周部分に設けられ、前記
   保持板を前記磁気ハウジングの底面から所定間隔を隔て
   て保持するための段差（５ｃ）と、 を備え、 前記磁気コイルから発せられる熱を前記ポールピースに
   直接伝導させないとともに、前記磁気コイルから発生す
   る熱を磁気ハウジングの側壁面方向に伝導させて ポール
   ピースと磁気ハウジングとの温度差を小さくさせること
   を特徴とする高周波フィルタ。