JP3002231B2 - シャント狭窄予防・治療剤 - Google Patents

シャント狭窄予防・治療剤

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JP3002231B2 JP2134891A JP13489190A JP3002231B2 JP 3002231 B2 JP3002231 B2 JP 3002231B2 JP 2134891 A JP2134891 A JP 2134891A JP 13489190 A JP13489190 A JP 13489190A JP 3002231 B2 JP3002231 B2 JP 3002231B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はプロスタグランジンE1(以下、PGE1という)
活性を有する化合物を有効成分とするシャント狭窄予防
・治療剤に関する。
〔従来技術・開発が解決しようとする課題〕
シャントとは2以上の血管(好適には2の血管、特に
動脈と静脈)を人工的に短絡させた状態をいう。シャン
トには内シャントと外シャントとがある。
シャントは、例えば、血液透析等の体外循環を必要と
する操作を行う上で必須のものであり、特に長期透析患
者にとっては命の綱ともいうべきものである。近年の透
析治療の進歩は目覚ましいものがあるが、慢性腎炎、糖
尿病、膠原病(特に、全身性エリテマトーデス)、腎硬
化症、肝不全等の原因で腎不全による透析患者が増加し
ている現在、透析期間の長期化に伴いシャントトラブル
の件数も年々増加している。シャントトラブルの有無
は、長期透析を維持するうえで重要な問題であり、透析
治療を遂行する際に、シャント管理が重要であることは
周知の事実である。そのため機能のよいシャントを作
り、これを長時間維持していくことは長期透析を行うう
えで最も大切な条件となってくる。
最近のシャントトラブルの原因としては、内シャン
ト、外シャントともにシャント狭窄が最も多くなってい
る。シャント狭窄は、透析毎の血管の穿刺、圧迫の反復
が、血管壁を損傷し、血管壁の炎症を生じ、故に血栓を
形成し易い状態等を招来することによるものと思われ
る。
今日、シャント狭窄の予防は、ヘパリン等の抗凝固剤
の投与によって行うのが一般的である。しかし、通常量
のヘパリンでは血小板機能を抑制することはできず、従
って充分に凝固時間が延長しているにもかかわらず血小
板の活性化が強くおこってダイアライザー(透析器)内
凝固の生じる場合もある。ダイアライザー内凝固は動脈
血栓と同様、血小板の粘着からはじまると考えられ、つ
いで、血小板の凝集がおこり、その表面を反応の場とし
て接触活性化された凝固因子が次々に別の凝固因子を活
性化し、最終的にはフィブリンの形成に至る。一般に、
ヘパリンは血小板粘着凝集後におこる凝集反応を阻止す
るものであり、強力な抗凝固作用を有し、安全に使用し
うる抗凝固剤ではあるが、ダイアライザー内凝固の根本
的な原因である血小板の活性化を阻止するものではな
い。従って、ヘパリンを大量投与し、凝固時間が充分延
長しているにもかかわらず、ダイアライザー内凝固を起
こすという欠点がある。このような例にはアスピリン、
チクロピジン等の抗血小板剤が有効なことはよく知られ
ている。しかしこれらの経口抗血小板剤には非透析時に
も血小板が抑制されるという欠点がある。また、連日投
与するとかなりの硬化が得られるが出血傾向等の副作用
があらわれることがあるので、トロンボテスト等の結果
から1日の投与量を細かくコントロールする必要があ
る。
出血傾向の強い患者に対して現在行われているのは微
量ヘパリン法、プロタミン併用による局所ヘパリン法で
ある。前者は透析中、トロンボテスト等で凝固時間を頻
回にチェックし、投与量を常にコントロールすることが
必要であるうえ、全身血凝固時間を完全に透析直前値に
保つことは困難である。後者は透析後、高頻度に反跳現
象があるといわれている。
従って、副作用(出血等)が少なく、作用時間が短
く、投与中のみ有効な予防・治療剤が理想的である。特
に、透析シャントにおいてはダイアライザー内での血液
凝固という特有の問題点がある。
本発明の目的は、副作用が少なく、シャントを長期間
維持し、再手術を防止することができるシャント狭窄予
防・治療剤を提供することである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者は、上記目的を達成すべく種々研究を重ねて
きたところ、PGE1活性を有する化合物が、シャント狭窄
の予防・治療効果を有することを見出して本発明を完成
した。
即ち、本発明はプロスタグランジンE1活性を有する化
合物を有効成分とするシャント狭窄予防・治療剤、特に
透析シャント狭窄予防・治療剤である。
本発明で使用されるPGE1活性を有する化合物として
は、薬理学的に許容されかつPGE1活性を有する化合物で
あれば特に制限はなく、PGE1およびその誘導体が挙げら
れる。
PGE1誘導体としてはPGE1活性を有し、医薬品として適
合するものである限り、いかなるPGE1誘導体であっても
よい。例えば、特開昭59−206349号、特開昭59−216820
号の各公報に開示のPGE1誘導体等が好適に用いられる。
PGE1活性を有する化合物は、例えばシクロデキストリ
ン包接体製剤の態様、当該化合物を脂肪乳剤化した製剤
の態様等で投与される。
シクロデキストリン包接体としてのPGE1製剤として
は、例えば1アンプル中0.02mg相当のアルプロスタジル
α−シクロデキストリン包接化合物を、0.02mg/生理食
塩液5ml溶解後pH:4.0〜6.5、浸透圧比:約1とした注射
剤(小野薬品社製)等が例示される。
脂肪乳剤製剤(リポ製剤)としては、例えば大豆油5
〜50%(w/v)、大豆油100部に対してリン脂質1〜50
部、好ましくは5〜30部、および適量の水、およびPGE1
活性を有する化合物から主としてなるものが例示され
る。当該脂肪乳剤製剤には必要に応じて、更に乳化補助
剤〔例えば、0.3%(w/v)までの量の炭素数6〜22、好
ましくは12〜20の脂肪酸またはその生理的に受け入れら
れる塩等〕、安定化剤〔例えば、0.5%(w/v)、好まし
くは0.1%(w/v)以下の量のコレステロール類または5
%(w/v)、好ましくは1%(w/v)以下の量のホスファ
チジン酸等〕、高分子物質〔例えば、PGE1活性を有する
化合物1重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5
〜1重量部のアルブミン、デキストラン、ビニル重合
体、非イオン性界面活性剤、ゼラチン、ヒドロキシエチ
ル澱粉等〕、等張化剤(例えばグリセリン、ブドウ糖
等)等を添加することもできる。PGE1活性を有する化合
物の脂肪乳剤中の含有量は、乳剤の形態および投与形態
等によって適宜増減することができるが、一般には当該
乳剤中に極微量、例えば0.2〜100μg/ml含有させること
で十分である。
本発明の脂肪乳剤は、例えば次の方法によって調製さ
れる。
即ち、所定量の大豆油、リン脂質、PGE1活性を有する
化合物およびその他前記添加剤等を混合、加熱して溶液
となし、常用のホモジナイザー(例えば、加圧噴射型ホ
モジナイザー、超音波ホモジナイザー等)を用いて均質
処理することにより油中水型(W/O型)分散液を作り、
次いでこれに必要量の水を加え、再び前記ホモジナイザ
ーで均質化を行って水中油型(O/W型)乳剤に変換する
ことによって製造することができる。なお、製造上の都
合によって、脂肪乳剤の生成後に安定化剤、等張化剤等
の添加剤を加えてもよい。
本発明の予防・治療剤は通常、静脈内注射、動脈内注
射等によって投与され、好適には頚静脈内投与される。
本発明の予防・治療剤の投与対象は、好適には腎不
全、即ち、腎盂腎炎、糖尿病、膠原病(特に、全身性エ
リテマトーデス)、腎硬化症、肝不全等による血液透析
中の症例で内シャント狭窄患者である。
投与に際しては、PGE1として、1回につき約0.1〜10
μg/kg体重、1日1〜2回投与することが一般的である
が、症状、年令等によっては適宜増減することができ
る。投与は1〜10日間、連続または断続的に行うことが
好ましい。
投与時期は、シャント造設術施行後、開存不良状態と
なった時または頻回の内シャント造設症例での予防的処
置のための投与である。
〔実施例〕
以下に本発明からなる治療剤の実施例および実験例を
示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 精製大豆油30gに卵黄レシチン3.6g、PGE1900μg、パ
ルミチン酸ナトリウム0.15g及びホスファチジン酸0.15g
を加え、40〜75℃で加熱溶解させた。これに蒸留水200m
lを加え、次いで、日本薬局方グリセリン7.5gを加え、2
0〜40℃の注射用蒸留水で全量を300mlとし、ホモミキサ
ーで粗乳化した。
これをマントン−ガウリン型ホモジナイザーを用い、
一段目120kg/cm2、合計圧500kg/cm2の加圧下で10回通過
させ乳化した。これにより均質化された極めて微細なPG
E1を含有する脂肪乳剤(リポPGE1)を得た。この乳剤の
平均粒子径は、0.2〜0.4μmであり、粒径が1μm以上
の粒子を含有しなかった。
実験例1 実施例1に準じて製造した脂肪乳剤態様の本発明製剤
(リポPGE1)をラットの静脈内に投与してLD50値を測定
したところ、10%脂肪乳剤として200ml/kg体重以上、20
%脂肪乳剤として150ml/kg体重以上であり、通常の速度
で点滴注入すれば溶血現象は全く認められなかった。
実験例2 臨床例1 全身性エリテマトーデスによるループス腎炎による腎
不全 64歳 女性 平成1年3月透析導入 臨床例2 糖尿病性腎不全 76歳 女性 平成1年7月透析導入 臨床例3 糖尿病性腎炎 58歳 女性 昭和63年6月透析導入 臨床例4 多発性脳胞腎による腎不全 66歳 男性 平成2年2月透析導入 上記合併症を有する透析患者に内シャント造設術施行
後、開存不良時よりリポPGE1(20μg)を1週間投与
し、血流ドップラーあるいは他覚的所見により投与前後
での開存状態の比較検討をおこなった。
臨床例1 投与前50ml/min、投与7日後250ml/min 臨床例2 投与前10ml/min、投与7日後70ml/min 臨床例3 投与前触知せず、投与4日後触知良好 臨床例4 投与前触知不良、投与3日後触知良好 以上4例につき投与前後の血流は投与3日目より血流
が良くなり、開存状態にも良好な結果が得られた。
〔結論〕
内シャント造設術施行後に開存不良状態となった症例
に対してリポPGE1(20μg)を1週間投与した結果、血
流が良好となり開存不良状態も改善された。従って、上
記のような合併症を有している透析シャント狭窄患者に
対してリポPGE1を投与することは極めて有用と思われ
る。
〔作用・効果〕
PGE1活性を有する化合物は抗血小板作用と同時に血管
拡張作用も強い。一般にPGE1が抗血小板作用を発揮する
濃度は血管拡張をおこす濃度より低く、この濃度の開き
が大きいものほど、透析中の抗血小板剤として有用であ
る。抗血小板作用を有する濃度がいくら低くても、それ
以上に血管拡張をおこす濃度が低ければ臨床的抗血小板
剤としては失格である。このような観点からPGE1活性を
有する化合物は優れた透析シャント狭窄予防・治療剤と
いえる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 31/557 CA(STN)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プロスタグランジンE1またはその誘導体を
    有効成分とするシャント狭窄予防・治療剤。
  2. 【請求項2】プロスタグランジンE2またはその誘導体が
    脂肪乳剤の形態である請求項(1)記載のシャント狭窄
    予防・治療剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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J.Pharmacol.Exp.Ther.,Vol.243,No.3(1987),p.1055−61
田中千賀子編「NEW薬理学」,南光堂,(1989),p.161−162

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