JP3000446B2 - 植物の害虫駆除方法 - Google Patents

植物の害虫駆除方法

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    • A01NPRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
    • A01N25/00Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators, characterised by their forms, or by their non-active ingredients or by their methods of application, e.g. seed treatment or sequential application; Substances for reducing the noxious effect of the active ingredients to organisms other than pests

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、葉菜類、根菜類等
各種植物に付着したアブラ虫、アオ虫、ヨトウ虫、コナ
ガ虫等の害虫を駆除する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えば広い栽培建屋内に培養液を
入れた栽培槽を設置し、該栽培槽の培養液に植物の根を
直接浸漬させて養分の吸収を行わせる水耕栽培において
は、土耕栽培において使用されていた除草剤、土壌改良
剤等の農薬は不要となったが、多くの水耕栽培建屋が開
放型であるためアブラ虫、アオ虫、ヨトウ虫、コナガ虫
等の害虫が発生し、また閉鎖型栽培建屋の場合でも外部
から搬入される苗に害虫が付着してくるので、これら害
虫を駆除するため殺虫剤又は防虫剤を散布する必要があ
り、その結果、使用農薬が収獲物に残留する欠点が未解
決のまま残されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、農薬を使用
せずに植物に付着した害虫を十分に駆除することを課題
とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題解決の手段とし
て、本発明は、害虫駆除処理に使用すべき水溶液の濃度
を、害虫駆除処理を施すべき植物の細胞液の濃度より
0.3mol/l高い濃度から濃度零の間(但し上記植
物細胞の濃度と等しい濃度を除く)に調整することと、
上記濃度を調整された水溶液中に、害虫の付着した上記
植物を、上記害虫の死滅に要する時間浸漬することと、
次に上記植物を上記水溶液中から取り出すことと、から
構成される植物の害虫駆除方法を提案する。
【0005】一般に、アブラ虫、アオ虫等の昆虫は、体
表に開く気門から細かく枝わかれした気管が体内組織に
広がっており、これら気管が、気門を通じて外部から酸
素を組織へ導入し、二酸化炭素を気門から外部へ排出す
る、いわゆる気管呼吸を行っている。従って昆虫は所要
時間液体中に浸ると、気門からのガス交換が不可能とな
って死滅することとなる。死滅所要時間はアブラ虫で3
〜4時間、アオ虫で30分〜2時間である。この事実か
ら害虫を死滅させるだけならば害虫の付着した植物を液
中に長時間浸せばよい。しかしその場合植物自身も長時
間液中に浸ることにより致命的なダメージを受ける危険
がある。
【0006】上記植物の危険について、植物生理学上
は、植物を水溶液に浸したとき植物の葉の気孔からのガ
ス交換が不可能となって光合成が停止しても、植物の細
胞が生き続けていさえすれば、長時間浸漬後に水溶液か
ら取り出した植物は光合成を再開し、通常の成長を継続
できることは明らかである。その場合水溶液に浸漬され
た植物細胞の生死を左右するものは、上記水溶液の浸透
圧であり、該浸透圧を決める濃度であることが知られて
いる。通常、植物細胞液の浸透圧は、植物の種類により
異るが、常温で5〜10atm、濃度は0、2〜0、8
mol/l(モル濃度)であるから、これに対して水溶
液の浸透圧、濃度をいかに選定するかが重要である。
【0007】そこで、まず植物の細胞液と等濃度即ち植
物細胞液と浸透圧の等しい水溶液に植物を浸した場合
は、植物細胞への水の出入りは起らず、細胞は形を維持
しつつ生存する
【0008】次に、植物細胞液より低濃度即ち植物細胞
液より浸透圧の低い水溶液に植物を浸した場合は、細胞
は半透性の細胞膜を通して外側の水溶液から水を吸収し
て原形質が膨らんでいく。ところで、植物細胞は、上記
細胞膜の外側に全透性の弾性組織からなる細胞壁を有し
ているため、上記の膨らんだ原形質が上記細胞壁に押し
広げようとする膨圧を及ぼし、その反作用として細胞壁
から元に戻ろうとする壁圧を原形質に及ぼす。細胞が膨
らむにつれ細胞内の濃度は低下し、その浸透圧は減って
いくと共に、上記膨圧が高まっていき、それと大きさの
等しい壁圧が細胞内の浸透圧と等しくなったとき細胞の
外側からの吸水を自動的に停止し、そして膨らんだ緊張
状態で生存する。これは、濃度零の水に植物を浸漬した
場合も同様である。
【0009】さらに、植物細胞液より高濃度即ち植物細
胞液より浸透圧の高い水溶液に植物を浸した場合は、細
胞内の水が外へ浸出して原形質が収縮していき、遂には
原形質分離を起す。原形質分離を起した細胞は、それが
初期の段階にあるときは、再び水に浸すと元の状態に戻
る、すなわち原形質復帰を行うが、原形質分離がさらに
進行した後は、多くの植物の細胞は原形質復帰が不可能
となって死滅する。
【0010】本発明の害虫駆除方法によれば、上記のよ
うに害虫処理用水溶液の濃度を、害虫処理を施すべき植
物の細胞液の濃度よりわずか高い濃度を上限とし、濃度
零を下限とする範囲内に調整することにより、該水溶液
中に植物を浸漬したとき、植物細胞を健全に生存させつ
つ植物に付着する害虫を駆除することができるのであ
る。
【0011】本発明における上記害虫処理用水溶液の上
限濃度である「植物細胞液の濃度よりわずか高い濃度」
とは、植物細胞が原形質分離を起してもその後原形質復
帰が確実に行われうるような濃度であり、実験により、
それは植物細胞液の濃度より約0.3mol/l高い濃
度である。
【0012】本発明の害虫駆除方法の実施に特に適する
植物は、水耕栽培、礫耕栽培、ロックウール耕栽培等の
方式により栽培中の植物であるが、これらに限定される
ものではない。
【0013】また本発明において使用される「害虫駆除
処理用水溶液」とは、水耕栽培等に使用中の培養液を処
理用水溶液として使用する場合、および別途準備した食
塩水、庶糖水等の水溶液を使用する場合を含む。以下図
面を参照して本発明の実施例について説明する。
【0014】
【実施例1】図1において、上面を開放した箱状の水耕
栽培槽(1)内に、水および各種養分からなる溶液の培
養液(2)を入れ、該培養液(2)の液面に発泡スチロ
ール等の矩形板状の浮揚性定植パネル(3)を浮かべ、
該定植パネル(3)に多数貫設された保持孔に植物(一
例としてホーレン草)(P)…の基部を保持させると共
に、それらの根をパネル(3)下の培養液(2)中に浸
漬させている。上記ホーレン草の細胞液の濃度は0.3
mol/l(モル濃度)であるが、害虫処理用水溶液と
して使用すべき培養液(2)の濃度は、上記細胞液の濃
度より0.3mol/l高い0.6mol/lとしてあ
る。
【0015】上記水耕栽培槽(1)による栽培の過程に
おいて、植物(P)…に付着したアブラ虫およびアオ虫
の駆除は次のように行う。押し枠(4)を用いて図2に
示すように定植パネル(3)を押し下げて植物(P)…
全体を培養液(2)中に浸漬する。
【0016】上記押し枠(4)は、図3に示すように上
記定植パネル(3)よりも若干小さい矩形枠(5)の四
隅部からアーム(6)…をそれぞれ上記枠(5)と直角
に突出すると共に、各アーム(6)…の先端部をカギ形
に屈曲した係止部(7)…に形成し、各係止部に止めネ
ジ(8)…を螺合し、また各アーム(6)…の中間部に
金属線、糸等からなるネット(9)を支持させてある。
【0017】使用においては、枠(5)を定植パネル
(3)の四辺部にのせた後各アーム(6)…を押し下げ
て定植パネル(3)とともに植物(P)…を培養液
(2)中に浸漬する。その際ネット(9)が植物の浮き
上りを防止する。植物(P)…が培養液(2)中に没入
した状態で、栽培槽(1)の側壁に係合した係止部
(7)…の止めネジ(8)…を該側壁に締着し、それに
より押え枠(4)を固定する。
【0018】上記植物の浸漬は、培養液(2)の液温2
0゜Cの下で4時間10分行われた。上記浸漬により植
物の細胞内の水が次第に培養液(2)がわへ浸出してい
き、それに伴い原形質が収縮していき、遂には原形質分
離を起す。しかし培養液(2)の濃度が、植物の細胞液
の濃度(0.3mol/l)よりも、原形質復帰が確実
に行われるように0.3mol/lだけ高いから、上記
植物細胞に発生した原形質分離は初期の分離に止まり、
それ以上の細胞死滅を招く著しい分離に進まない。
【0019】上記浸漬開始とともに植物に付着する害虫
の一部が生きたまま液面に浮上してくるが、それらは液
面を浮遊する間に窒息死して液中に沈下する。残りの害
虫は気管呼吸を停止しつつ培養液中で植物にしがみつい
ているが、約1時間経過後アオ虫が、約4時間経過後ア
ブラ虫がそれぞれ窒息死し、植物から離れて沈下する。
【0020】駆除処理後、押え枠(4)を持ち上げて定
植パネル(3)とともに植物(P)…を培養液(2)か
ら浮上させ、図1の元の水耕栽培の状態に戻せば、植物
はその根から吸収した水分を各細胞に供給し、それによ
り上述のように初期の原形質分離を起した各細胞が原形
質復帰を行う。以後植物は正常な成長を継続する。
【0021】
【実施例2】本例は、図1と同じ栽培槽(1)および定
植パネル(3)によるサラダナの水耕栽培において、該
サラダナに付着したアブラ虫を駆除する例である。栽培
槽(1)内の培養液を一旦別のタンクに回収し、代って
濃度零の害虫処理用水溶液として水を上記槽(1)内に
注入し、そして上例と同様に押え枠(4)を用いて定植
パネル(3)とともに植物を上記水の中に浸漬する。
【0022】浸漬は水温18゜Cの下で4時間行われ
た。上記浸漬により植物の細胞は害虫処理用水を吸収し
て原形質が膨らんでいく。細胞が膨らむにつれ細胞内の
濃度および浸透圧は低下していくと共に、膨圧が高まっ
ていき、該膨圧と大きさの等しい壁圧が細胞内の浸透圧
と等しくなったとき外からの吸水を停止し、それ以上膨
大しない。一方、4時間の浸漬により植物に付着するア
ブラ虫の全てが死滅し、沈下する。
【0023】駆除処理後、槽(1)内の水を排出し、別
のタンクに回収しておいた培養液を槽(1)内に戻して
元の水耕栽培を再開する。上記浸漬時に吸水により膨ら
んだ植物の各細胞は徐々に正常に戻る。
【0024】
【発明の効果】本発明の植物の害虫駆除方法によれば、
殺虫剤を全く使用せずに植物に付着した害虫を十分に駆
除することができ、従ってこれを他に農薬を使用してい
ない水耕栽培等の植物の害虫駆除に使用すれば、完全無
農薬栽培を工業的規模で実現することが可能であり、し
かも実際において、害虫駆除用水溶液の濃度は、植物細
胞液の濃度より約0.3mol/l高い濃度から濃度
の間(但し上記植物細胞の濃度と等しい濃度を除く)
いう広範囲の中から任意に選定すればよいから、該水溶
液の濃度調整作業が容易になる利点もえられるのであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)水耕栽培状態の縦断面図である。 (ロ)害虫駆除状態の同上図である。
【図2】押え枠の斜面図である。
【符号の説明】
1 栽培槽 2 培養液 P 植物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A01M 1/20 A01G 7/00 604 A01G 31/00 601 A01G 31/00 613

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 害虫駆除処理に使用すべき水溶液の濃度
    を、害虫駆除処理を施すべき植物の細胞液の濃度より
    0.3mol/l高い濃度から濃度零の間(但し上記植
    物細胞の濃度と等しい濃度を除く)に調整することと、 上記濃度を調整された水溶液中に、害虫の付着した上記
    植物を、上記害虫の死滅に要する時間浸漬することと、 次に上記植物を上記水溶液中から取り出すことと、 から構成される植物の害虫駆除方法。
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