JP2989576B2 - 電子線装置およびその観察方法 - Google Patents

電子線装置およびその観察方法

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寛 岩本
秀男 戸所
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は走査型の電子線装置
およびその観察方法に係り、特に、高アスペクト比のト
レンチやコンタクトホール等の凹部の底から発生する2
次電子を効率良く検出するのに好適な電子線装置および
の観察方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の半導体集積回路技術の進歩に伴っ
て、回路素子が3次元方向に形成されるようになってお
り、例えば、試料表面にはコンタクトホール、容量性キ
ャパシタや素子間分離のための深い孔や溝(以下、コン
タクトホールで代表する)が形成されるようになってき
ている。
【0003】ところが、このようなコンタクトホール内
に電子線を照射してその底部を観察しようとすると、コ
ンタクトホールの底部から放出された2次電子の大部分
はコンタクトホールの側壁に衝突して捕捉されてしま
う。したがって、2次電子がコンタクトホールから脱出
することができず、2次電子検出器まで到達できないの
で、コンタクトホールの底部を観察することができない
という問題があった。
【0004】このような問題点を解決するために、例え
ば特開昭62−97246号公報では、2次電子をコン
タクトホールから引き出すための電極を対物レンズと試
料表面との間に設ける技術が提案されている。
【0005】また、特開昭63−274049号公報で
は、対物レンズの磁極内に設けた円筒形状の電極に正の
電圧を印加して2次電子を対物レンズの電子源側に導く
技術が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】コンタクトホールの底
部から放出された2次電子をコンタクトホールの外へ引
き出すためには、特にコンタクトホール開口部近傍の試
料表面が正に帯電していることが望ましい。これは、試
料表面が負に帯電(以下、チャージアップと表現する場
合もある)していると、2次電子の上昇が試料表面の負
の電荷によって妨げられ、2次電子がコンタクトホール
から脱出できなくなるためである。
【0007】このような試料表面のチャージアップ現象
は、コンタクトホール開口部近傍の試料表面に電子線が
照射され、これにより発生した反射電子や二次電子の一
部が引き上げられること無く試料表面にとどまったり、
あるいはコンタクトホール底部から引き上げられた2次
電子の一部が試料表面の正の電荷に引き寄せられて試料
表面にとどまることによって生じるものと考えられる。
【0008】本発明の目的は、上記した従来技術の問題
点を解決して、2次電子を効率良く検出できる状態を予
め認識し、最適な状態で観察を行えるようにした電子線
装置およびその観察方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明では以下のような手段を講じた点に特徴
がある。 (1) 所望の観察領域を含む広い範囲で電子線スポットを
走査し、その時に得られる観察像の前記所望の観察領域
部分が周辺に比べて暗いときに、前記所望の観察領域表
面が正に帯電されていると判断するようにした。このよ
うな構成によれば、所望の観察領域表面の帯電状態を容
易に認識することができる。 (2) 所望の観察領域を含む広い範囲で電子線スポットを
走査し、その時に得られる観察像の前記所望の観察領域
部分が周辺に比べて暗いときに、前記所望の観察領域を
観察するようにした。このような構成によれば、所望の
観察領域表面が好ましい帯電状態にあるときに観察を行
えるようになる。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の観察方法が適用
される電子線測長装置の対物レンズ2および2次電子検
出器30近傍の断面図である。
【0011】電子線6は対物レンズ2によって試料12
上で収束される。対物レンズ2は、その漏れ出し磁場が
試料12の表面で最大磁束密度を示すように、下磁極2
bの孔径が上磁極2aの孔径よりも大きい下磁極開放形
となっている。このような対物レンズを用いれば、試料
12をレンズ間隙の中に設置するインレンズ方式と同様
に短焦点レンズが得られ、球面収差係数や色収差係数が
著しく小さくなり、高分解能を得ることができる。
【0012】対物レンズ2の上磁極2aには、その磁極
開口部の内側を貫通し、試料対向端にフランジ部7fを
有すると共に内部に電子線通過口を有する円筒形状の第
1電極7が絶縁膜20を介して設置されている。
【0013】第1電極7の上側開口部には、2次電子1
3を検出器30側に引き出すためのグリッドメッシュ7
aが張られている。グリッドメッシュ7aの中央には、
電子線6の偏向通路を妨げないように開口部が設けられ
ている。この第1電極7は導入端子9を介して直流電源
10に接続されている。
【0014】第1電極7の上部には、リング状の第2電
極8が設置されており、第1電極7の場合と同様、その
下側開口部には、中央に開口部を有するグリッドメッシ
ュ8aが張られている。この第2電極8は、導入端子9
を介して直流電源11に接続されている。
【0015】第2電極8の上部すなわち対物レンズ2の
電子源側には、アース電極3、シンチレータ4、および
ライトガイド5により構成された2次電子検出器30が
設置されている。シンチレータ4には+10kVの高電
圧が印加され、2次電子が加速されるようにしている。
【0016】図2は、対物レンズ2および第1、第2電
極7、8の相互作用により、2次電子が対物レンズ2の
磁極開口部を通過して電子源側(検出器30側)へ引き
出される様子を模式的に表した図であり、前記と同一の
符号は同一または同等部分を表している。
【0017】対物レンズ2は、上記したように、その漏
れ出し磁場が試料の表面12aで最大磁束密度を示すよ
うに下磁極開放形となっているので、観察領域近傍に
は、図中点線で示したような磁界Bが発生し、この磁界
Bにより、試料面12a付近を中心線とするレンズ作用
が生じる。
【0018】このような構成において、試料12に電子
線が照射され、コンタクトホール50の開口部近傍の試
料表面から放出された2次電子は、第1電極7による電
界によって上方へ引き上げられる。このとき、2次電子
は対物レンズ2によるレンズ作用によって中心軸X上に
収束されるので、この2次電子は第1電極7に引き込ま
れることなく上方へ引き上げられる。さらに、この2次
電子は第1および第2電極7、8による電界によって対
物レンズの電子源側へ導かれる。
【0019】一方、コンタクトホール50の底部50a
から放出された2次電子13は、第1電極7による電界
に引き上げられてコンタクトホール50を脱出する。コ
ンタクトホール外に脱出した2次電子13は、対物レン
ズ2によるレンズ作用によって中心軸X上に収束される
ので、試料表面の正電荷に引き寄せられることなく、上
方へ引き上げられる。
【0020】この結果、試料12から放出された2次電
子13は、第1電極7の電子線通過口、グリッドメッシ
ュ7aの開口部等を経て対物レンズ2の電子源側へ引き
上げられ、検出器30に検出されるようになる。
【0021】上記した構成によれば、コンタクトホール
50の開口部近傍から放出された2次電子、あるいはコ
ンタクトホールの底部50aから発生してコンタクトホ
ール外へ脱出した2次電子は、対物レンズが試料面に発
生する収束磁界により中心軸上へ収束されるので、第1
電極7に引き込まれたり試料表面の正電荷に捕らえられ
てしまうことなく、対物レンズの電子源側に導かれる。
したがって、検出器30では、2次電子を効率良く検出
することが可能になる。
【0022】さらに、2次電子が効率良く引き上げられ
ると試料表面のチャージアップが防止されるので、特
に、コンタクトホール50の底部50aから放出される
2次電子13を効率良く引き上げられるようになってコ
ンタクトホール底部の高分解能観察が可能になる。
【0023】図3(a) は、上記した電子線測長装置が測
定対象としている試料の断面図である。シリコン基板1
2−1の主表面には二酸化シリコン膜12−2が形成さ
れ、その上にはレジスト膜12−3が積層されている。
レジスト膜12−3を塗付し、光または電子線で露光し
て現像すると、レジスト部に露光パターンが形成され
る。さらに、エッチング処理を施すと二酸化シリコン膜
12−2の不要部分がエッチングされ、シリコン基板1
2−1まで達するホール20が形成される。同図(b) は
(a) のレジスト膜12−3を除去した状態を示してい
る。
【0024】図4は、上記した電子線測長装置が測定対
象としている他の試料の断面図であり、前記と同一の符
号は同一または同等部分を表している。図4の断面図
は、シリコン基板上にシリコン酸化膜12−2を形成
し、その上にアルミニウム薄膜12−4を蒸着して導体
膜を作り、その上にレジスト材12−3を塗付して露光
し、シリコン酸化膜12−2まで達するコンタクトホー
ルが形成された状態を示している。
【0025】このような導体および絶縁体による層構造
の試料に電子線6が照射されると、コンタクトホールの
底部から2次電子13が発生する。この時、試料12の
表面からも2次電子が発生するが、電子線6の入射電子
数より放出される2次電子の方が多い場合には試料表面
が正に帯電する。発明者等の実験結果によれば、試料表
面を正に帯電させる条件は、加速電圧を1kV以下とし
て電子線量を10-11A以下にすることである。
【0026】なお、加速電圧を1kV以上にして、レジ
スト膜12−3の表面を負に帯電させると、底50aか
らの2次電子はこの表面の負の電位に妨げられて脱出で
きず、全く検出できなくなることが実験的に確認されて
いる。
【0027】上記した観察方法によれば、レジスト膜1
2−3あるいは二酸化シリコン膜12−2の表面の帯電
状態を正に保つことができるので、コンタクトホール底
部から発生した2次電子13を効率良く外部へ脱出させ
ることができる。
【0028】なお、本実施形態では所望の観察領域を例
えば5万倍程度に拡大して観察した後、例えば5000
倍程度に倍率を下げて、当該所望の観察領域を含む広い
領域を観察する。このとき、先に5万倍で観察した領域
が、その周辺よりも全体に暗くなっていれば、試料の表
面が正に帯電していると判断する。その理由は、試料表
面が正に帯電していると、試料表面から放出された2次
電子の多くが正の電位に引っぱられ、2次電子の検出量
が低下するためである。
【0029】所望の観察領域が、その周辺よりも暗くな
っているか否かは、オペレータがCRTを参照して判断
したり、あるいは2次電子検出器30による検出信号に
基づいて判断すれば良い。また、2次電子検出器30に
よる検出信号に基づいて判断するのであれば、試料表面
が正に帯電しているか否かを、表示あるいは音等の適宜
の手段によりオペレータに告知するようにしても良い。
【0030】このようにして所望の観察領域が正に帯電
していることが確認されたならば、再び倍率を5万倍に
戻して観察を行う。また、負に帯電していることが確認
されれば、適宜の手段を講じて観察領域を正に帯電さ
せ、その後、観察を行うようにすれば良い。
【0031】なお、第1電極7に印加される電圧は、電
子線6の加速電圧によっても異なるが50V以上が効果
的であり、300V〜350Vでは差異がなくなること
が実験により確認された。
【0032】第2電極8には、アース電位から+50V
までの範囲の電圧を印加することにより、2次電子検出
効率を低下させることなく、コンタクトホールの底部5
0aから2次電子信号を検出することができた。
【0033】実際には、各種の試料でも第2電極8への
印加電圧を30V程度に固定して使用しても良い。ま
た、第2電極8に負の電圧を印加すると、2次電子信号
が全体的に減ってしまうがエネルギの高い2次電子や反
射電子のみが検出されるので、孔底あるいは深溝で反射
されてくる比較的高エネルギの信号が検出される。した
がって、底からの信号が相対的に大きくなり、底を観察
するのに良好な画像を得ることもできる。
【0034】なお、良好が画像は電子線を10フレーム
/秒以上の高速走査することにより得られ、1フレーム
/秒のような低速走査では、単位面積当たりの電子線照
射量が増えて実質的に電子線量が増えたことになるの
で、試料表面に負の帯電が生じ、孔の底を観察すること
ができなかった。
【0035】この事実は、高速走査によって電子線走査
領域での試料表面の帯電状態が一様に正に保たれること
によると考えられ、コンタクトホール内の観察には高速
走査が必要であることが実験により確認された。実際の
装置では、テレビ周波数での走査として30フレーム/
秒を選択すれば、電源周波数と同期した走査ができ、ま
た経済的である。
【0036】
【発明の効果】以上、詳述したように、本発明によれ
ば、2次電子を効率良く検出できる状態を予め認識し、
最適な状態で観察を行えるようにしたので、半導体製造
プロセスにおけるコンタクトホールの底や深溝の底部か
ら発生した2次電子信号を良好に検出することが可能と
なり、半導体プロセスの加工の良否判定に十分で良好な
画像が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電子線測長装置の部分断面図である。
【図2】 図1の構成による2次電子の動きを模式的に
表した図である。
【図3】 試料の構造の一例を示した断面図である。
【図4】 試料の構造の他の一例を示した断面図であ
る。
【符号の説明】
2…対物レンズ、6…入射電子線、7…第1電極、8…
第2電極、9…導入端子、10、11…直流電源、12
…試料、13…2次電子、30…2次電子検出器、50
…コンタクトホール
フロントページの続き (72)発明者 岩本 寛 茨城県ひたちなか市市毛882番地 株式 会社 日立製作所那珂工場内 (72)発明者 戸所 秀男 茨城県ひたちなか市市毛882番地 株式 会社 日立製作所那珂工場内 (72)発明者 菰田 孜 茨城県ひたちなか市堀口字長久保832番 地2 日立計測エンジニアリング株式会 社内 (56)参考文献 特開 平1−151147(JP,A) 特開 平1−209647(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01J 37/22 H01J 37/244 H01J 37/28

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所望の観察領域を含む広い範囲で電子線
    スポットを走査し、その時に得られる観察像の前記所望
    の観察領域部分が周辺に比べて暗いときに、前記所望の
    観察領域表面が正に帯電されていると判断することを特
    徴とする電子線装置の観察方法。
  2. 【請求項2】 所望の観察領域を含む広い範囲で電子線
    スポットを走査し、その時に得られる観察像の前記所望
    の観察領域部分が周辺に比べて暗いときに、前記所望の
    観察領域を観察するようにしたことを特徴とする電子線
    装置の観察方法。
  3. 【請求項3】 所望の観察領域を含む広い範囲で電子線
    スポットを走査し、その際に得られる観察像の前記所望
    の観察領域部分が周辺に比べて暗い場合、前記所望の観
    察領域が帯電している旨を表示する手段を備えたことを
    特徴とする電子線装置。
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