JP2987669B2 - ラブダナム油香料、その製造方法並びにそれを含有する香料組成物 - Google Patents

ラブダナム油香料、その製造方法並びにそれを含有する香料組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、香りが改善され、調合
香料素材として有用なラブダナム油香料、その製造方法
並びにそれを含有する香料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ラブダ
ナム油はCistus種に属する植物から得られる黒色
のかなり粘稠な液体で、種々の調合香料に用いられてい
る。かかるラブダナム油としては、一般にラブダナム油
を含有する植物を水中で煮沸し分離してくる樹脂を集め
て得られる粗ラブダナム油や当該粗ラブダナム油から無
機固体成分を除去した処理ラブダナム油及び当該処理ラ
ブダナム油を蒸留又は分留した精製ラブダナム油が用い
られている。
【0003】しかしながら、これら従来の粗ラブダナム
油、処理ラブダナム油及び精製ラブダナム油は、アンバ
ー様の香気の他にセダーウッド的でがさついた木様の異
臭があり、色も黒〜黒褐色であるため石鹸・洗剤等の調
合香料に用いた場合には製品の香りが悪化するとともに
着色するという問題点を有している。
【0004】そこで、ラブダナム油のアンバー様の香気
を維持し、調合香料用素材として有用なラブダナム油の
開発が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる実
情に鑑み鋭意検討した結果、粗ラブダナム油等に存在す
る異臭本体がカルボン酸類、フェノール類等の酸性物質
であり、これらをアルカリ物質との接触により除去し得
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、第一に、ラブダナム
油にアルカリ物質を接触させて酸性物質を除去して酸価
が10以下になるようにしたラブダナム油香料を提供す
るものである。
【0007】本発明は、第二に、下記(a)、(b)及
び(c); (a)ラブダナム油を含有する植物を水中で煮沸した後
分離して得られる粗ラブダナム油、 (b)該粗ラブダナム油から無機固体成分を除去して得
られる処理ラブダナム油、 (c)該処理ラブダナム油を蒸留又は分留して得られる
精製ラブダナム油、から選ばれる一種又は二種以上の原
料ラブダナム油を有機溶剤に溶解後、該原料ラブダナム
油の酸当量の0.5〜10倍当量のアルカリ物質水溶液
を添加して混合し、次いで水層を分離除去することを特
徴とする酸価が10以下のラブダナム油香料の製造方法
を提供するものである。
【0008】本発明は、第三に、上記ラブダナム油香料
を含有する香料組成物を提供するものである。
【0009】本発明の酸価が10以下であるラブダナム
油は以下に述べる製造方法により得られる。
【0010】本発明に使用される粗ラブダナム油(a)
は、Cistus種の植物であるCistus Lad
aniferus.Lを水中で煮沸すると分離される樹
脂であり、具体的にはアルカリ水中でこの植物を加温
し、その溶液を硫酸で中和することにより浮遊してくる
油分を集めることにより得られる。このものは市販品を
そのまま使用してもよい。処理ラブダナム油(b)は、
粗ラブダナム油(a)を、例えばエタノールに溶解させ
不溶物である無機固体成分を除去することにより得られ
る。このものは、市販品を用いることもできる。精製ラ
ブダナム油(c)は、処理ラブダナム油(b)を、例え
ば槽内温度140〜240℃、真空度2Torrの条件下に
蒸留又は分留することによって得られる。このようにし
て得られたラブダナム油(a)、(b)及び(c)の酸
価は一般に18〜120程度(文献値18〜86;「香
りの百科」1989年,朝倉書店刊、本発明者らの粗ラ
ブダナム油(a)の実測値111)であり、これらのもの
にはセダーウッド的な木様の異臭がある。
【0011】これら原料ラブダナム油の一種又は二種以
上にアルカリ物質を添加、好ましくはアルカリ物質水溶
液を添加し、混合攪拌することにより両者を接触させ
る。
【0012】使用されるアルカリ物質としては、前記カ
ルボン酸類、フェノール類等の酸性物質を中和し、水溶
性中和塩を形成し得るものであれば特に限定されない
が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物
及びアルカリ金属炭酸塩から選ばれる一種又は二種以上
が好ましく、特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが
好ましい。これらアルカリ物質の使用量は、原料ラブダ
ナム油の酸当量の0.5〜10倍当量、特に1.0〜
5.0倍当量が好ましい。上記混合・攪拌条件は特に制
限されないが、好ましくは0〜150℃、特に好ましく
は50〜100℃で好ましくは0.1〜5時間、特に好
ましくは0.5〜2時間行う。
【0013】なお、この混合・攪拌は有機溶剤存在下に
行うことが好ましい。使用できる有機溶剤としては、ア
ルカリ条件下で安定なものであれば特に限定されない
が、例えばヘキサン、ヘプタンシクロヘキサン、ベンゼ
ン、トルエン、キシレン及びこれらの混合物が挙げられ
る。
【0014】上記接触により得られる反応混合物を常法
に従い分層して水層を除去した後、油層を必要に応じ、
常法に従って水洗及び蒸留する。
【0015】かくして得られるラブダナム油は、その酸
価が10以下のものであり、匂いが著しく良化し、しか
もほとんど着色のないものであるが、更に精密蒸留を行
うことにより脱色及び低粘度化をはかることが好まし
い。
【0016】本発明の香料組成物は、上記により得られ
るラブダナム油を含有するものであるが、他に任意成分
として、本発明の効果を損なわない範囲で、例えばフタ
ル酸ジエチル、ジプロピレングリコール、エチルジグリ
コール、ヘルコリンD(ジヒドロアビエチン酸メチ
ル)、また、天然香料としては、例えばサンダルウッド
油、パチュリ油等を含有することができる。
【0017】本発明のラブダナム油の本発明香料組成物
への配合量は、0.5〜10重量%であることが好まし
い。
【0018】本発明の香料組成物は、上記ラブダナム油
と任意成分とを常法に従い混合攪拌することにより得ら
れる。
【0019】
【発明の効果】本発明により、すっきりしたアンバー様
の香気を有し、しかも着色が大幅に低減したラブダナム
油が簡便かつ安価に得られる。更に、該ラブダナム油を
含有する香料組成物は石鹸、洗剤等に好適に使用され
る。
【0020】
【実施例】以下に実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではな
い。
【0021】実施例1 攪拌器、温度計及びジムロートのついた500ccの4つ
口フラスコに処理ラブダナム油であるラブダナムレジノ
イド(BIO社、酸価58)200g、10%水酸化ナ
トリウム水溶液200g及びトルエン400gを加え、
窒素ガス雰囲気下に90℃で30分攪拌した。これを静
置分液してアルカリ処理水層を除去した。更に水層にト
ルエン400gを加え、同様に攪拌し静置分液してアル
カリ処理水層を除去した。得られた油層に10%芒硝水
を加え2%硫酸により水層のpHを6〜8にし静置分液し
た後、水層を除去し、更に油層からトルエンを留去して
残留物としてラブダナム油80gを得た。得られたラブ
ダナム油は、処理前に比べセダーウッド的でがさついた
匂いが除去されたクリーンなアンバー様の香気を有する
ものであった(酸価0.92)。このラブダナム油を更
にスミス蒸留(140℃→185℃/0.05Torr)
し、着色及び粘度がより改善されたラブダナム油50g
を得た(酸価0.17)。
【0022】実施例2 攪拌器、温度計及びジムロートのついた300ccの4つ
口フラスコに処理ラブダナム油であるラブダナムアブソ
リュート(CMA社、酸価80)のスミス蒸留品(18
5℃/0.05Torr)50g、10%水酸化ナトリウム
水溶液50g及びトルエン100gを加え、窒素ガス雰
囲気下に60℃で30分攪拌した。これを静置分液して
アルカリ処理水層を除去した。油層に更に10%水酸化
ナトリウム50gを加え、同様に攪拌し静置分液してア
ルカリ処理水層を除去した。得られた油層を実施例1と
同様に10%芒硝水で処理してトルエンを留去し、残留
物としてラブダナム油7gを得た。得られたラブダナム
油は、処理前に比べ実施例1と同様にクリーンなアンバ
ー様の香気を有するものであった(酸価3.1)。
【0023】比較例1 実施例2と同様の方法でアルカリとして1%水酸化ナト
リウム水溶液50gを用いラブダナムアブソリュートの
スミス蒸留品50gの処理を行い、ラブダナム油14g
を得た。得られたラブダナム油は、実施例2で得られた
ものに比べ、いまだセダーウッド感が残留したものであ
った(酸価45)。
【0024】実施例3及び比較例2 表1に組成を示す香料組成物をそれぞれ常法に従い調製
した。
【0025】
【表1】
【0026】本発明品(実施例3)は、比較品(比較例
2)に比べ、がさついた木様の異臭の少ない、すっきり
したアンバーグリース香気を有するものであり、しかも
石鹸に配合したときも着色の程度は著しく少なかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 太島 勝比古 千葉県千葉市美浜区高浜4−10−25− 108 (72)発明者 戸井 直 千葉県佐倉市中志津6−21−2 (72)発明者 藤倉 芳明 栃木県宇都宮市山本町271−6 (56)参考文献 特開 平4−154898(JP,A) 特開 昭58−164699(JP,A) 特許89272(JP,C2) 日本香料工業会編 香料ハンドブック −化学的合成品以外の香料− 平成2年 2月15日 初版第1刷 株式会社 食品 化学新聞社 発行 403頁 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C11B 9/00 C11B 9/02 C11B 3/06 CA(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ラブダナム油にアルカリ物質を接触させ
    て酸性物質を除去して酸価が10以下になるようにした
    ことを特徴とするラブダナム油香料。
  2. 【請求項2】 下記(a)、(b)及び(c); (a)ラブダナム油を含有する植物を水中で煮沸した後
    分離して得られる粗ラブダナム油、 (b)該粗ラブダナム油から無機固体成分を除去して得
    られる処理ラブダナム油、 (c)該処理ラブダナム油を蒸留又は分留して得られる
    精製ラブダナム油、 から選ばれる一種又は二種以上の原料ラブダナム油を有
    機溶剤に溶解後、該原料ラブダナム油の酸当量の0.5
    〜10倍当量のアルカリ物質水溶液を添加して混合し、
    次いで水層を分離除去することを特徴とする酸価が10
    以下のラブダナム油香料の製造方法。
  3. 【請求項3】 アルカリ物質がアルカリ金属水酸化物、
    アルカリ土類金属水酸化物及びアルカリ金属炭酸塩から
    選ばれる一種又は二種以上である請求項2記載のラブダ
    ナム油香料の製造方法。
  4. 【請求項4】 有機溶剤がヘキサン、ヘプタン、シクロ
    ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン又はこれらの
    混合物である請求項2記載のラブダナム油香料の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のラブダナム油香料を含有
    する香料組成物。
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