JP2981552B1 - 新規微生物 - Google Patents

新規微生物

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JP2981552B1 JP26104098A JP26104098A JP2981552B1 JP 2981552 B1 JP2981552 B1 JP 2981552B1 JP 26104098 A JP26104098 A JP 26104098A JP 26104098 A JP26104098 A JP 26104098A JP 2981552 B1 JP2981552 B1 JP 2981552B1
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正章 森川
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【要約】 炭化水素類を無酸素条件下(嫌気条件下)で分解可能
で、かつ炭化水素類に対して耐性を有し、しかも操作上
の観点から通性嫌気性である新規微生物を提供する。し
かも該微生物は二酸化炭素を固定し、アルカン類を生産
することができる。 【解決手段】 本発明の微生物は、クレブシエラ(Kleb
siella) 属に属し、アルカン類を生産しまたは嫌気的条
件下でアルカン類を分解する。更に本発明の微生物は、
クレブシエラ アナエロオレオフィラ(Klebsiella ana
erooleophila) である。更に本発明の微生物は、FER
M P−16920として寄託されたクレブシエラ ア
ナエロオレオフィラ(Klebsiella anaerooleophila) T
K−122である。更に本発明は、石油の分解方法であ
って、上記のいずれかの微生物を用いて石油を嫌気条件
下で分解することを特徴とする。更に本発明は石油の製
造方法であって、上記のいずれかの微生物を用いて大気
中の二酸化炭素を固定して石油を製造することを特徴と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規微生物に関
し、更に詳しくは本発明は、クレブシエラ(Klebsiell
a) 属に属し、嫌気的条件下でアルカン類を分解するま
たは二酸化炭素からアルカン類を生産する微生物並びに
該微生物を用いて石油を嫌気的条件下で分解するか又は
該微生物を用いて石油を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、炭化水素類に対する微生物の作用
に関しては、環境汚染防止の観点からこれらの化合物の
分解について多くの研究がなされている。また、微生物
培養法を用いた炭化水素類を原料とする発酵の研究、あ
るいは微生物変換反応の研究も多く報告されており、こ
れらの研究は、微生物を用いた有用物質の生産技術とし
ても非常に重要であると考えられる(石油醗酵研究会編
「石油醗酵」幸書房1970年刊行)。
【0003】具体的な例を挙げれば、海岸汚染原油の微
生物分解、炭化水素類含有排水の活性汚泥処理などの環
境対策技術や、n−パラフィンを原料とする微生物学的
手法による二塩基酸の製造技術などが実用化されてい
る。
【0004】さらに、石油精製プロセスヘの応用や、芳
香族炭化水素の微生物酸化による芳香族カルボン酸の生
産研究に関する報告などがある(1)「微生物による有
機化合物の変換」(G.K.スクリアビン、L.A.
M.ゴロブレーバー著(学会出版センター))、および
(2)R.M.Atlas,Microbial Degradation of Petr
oleum Hydrocarbons. Microbiological Reviews, 45, 1
80-209(1981)] 。これらの研究において、アリスロバタ
ター(Arthrobacter)属、ブレビバクテリ
ウム(Brevibacterium)属、コリネバク
テリウム(Corynebacterium)属、ミク
ロコッカス(Micrococcus)属、ミコバクテ
リウム(Mycobacterium)属、ノカルディ
ア(Nocardia)属、シュードモナス(Pseu
domonas)属、ロドコッカス(Rhodococ
cus)属、キャンディダ(Candida)属、バチ
ラス(Bacillus)属、アシネトバクター(Ac
inetobacter)属などの微生物が炭化水素類
資化分解性を有することを明らかにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の炭化水素類資化分解性菌の大部分は、好気性菌であ
り、栄養分の補給や、大量の水分が必要な上に、間断の
無い通気を必要とするなどの欠点がある。
【0006】このため、炭化水素類の微生物学的応用に
おける好気性菌の使用は、通気が可能な条件下という物
理的制限、あるいは大型通気装置の設備という経済的制
限が多い。また、炭化水素類という危険物と酸素とが共
存する条件となるため、火災、爆発等の危険が伴うとい
う問題もある。
【0007】さらに、炭化水素類は、一般に、微生物に
対して強い毒性を示すため、炭化水素類を基質として用
いる微生物反応を行う場合には、これらの化合物が微生
物に直接接触しないようにガス状で供給するか、低濃度
(0.1%以下)にて接触させる方法が一般的である.
従って、分解速度や生産性の低い場合か多く、基質であ
る炭化水素類の濃度を低濃度に制御しなければならない
という問題もある。
【0008】近年、これらの欠点を克服するために、有
機溶媒耐性のある微生物を広く検索する研究も盛んに行
われており、炭化水素類に耐性を示す新規な微生物も明
らかにされてきた(特開昭63−216473号公報、
特開昭63−216474号公報、特開平5−2769
33号公報参照)。これらの耐性微生物もその多くは好
気性菌であり、この中には炭化水素類の資化分解能力を
有するものもある。しかし、資化分解に分子状酸素を必
要とするなどの種々の制約を伴っているのが現状であ
る。特開平5−276933号公報記載の微生物HD−
1は嫌気条件下での資化分解能力を有しているが、その
能力は非常に微弱である。また、絶対嫌気性菌を用いた
嫌気条件下での炭化水素類の資化分解も報告例はあるが
(例えば、Nature, 372, 455-458 (1994))、微生物が酸
素に耐性を持たないため操作が非常に困難であるのが現
状である。
【0009】以上のような状況下において、炭化水素類
を無酸素条件下(嫌気条件下)で資化分解可能で、かつ
炭化水素類に対して耐性を有し、しかも操作上の観点か
ら通性嫌気性である微生物の出現が切望されている。
【0010】本発明は、このような要望に応えるべく、
上記の特性を有する新規な微生物を提供することを目的
とする。
【0011】
【問題点を解決するための手段】本発明者らは、上記目
的を達成するため鋭意検討した結果、炭化水素類を高濃
度で含む培地を用いる条件で、かつ嫌気条件下において
生育可能な微生物、具体的には、脂肪族炭化水素類、脂
環式炭化水素類、芳香族炭化水素類の一種またはそれら
の混合物に対して耐性を有し、かつこれらの炭化水素類
を嫌気条件下において資化分解する能力を有する微生物
を得るべく、先ず、微生物の検索を広く実施したとこ
ろ、そのような特性を有する微生物を見い出した。次い
で、本発明者らは、これらの微生物の中から、さらに好
気条件下での生育を確認することにより通性嫌気性の性
質を有する菌株を選抜し、しかも該微生物が二酸化炭素
を固定し、脂肪族炭化水素(アルカン類)類を生産する
能力を有することを見出だし本発明を完成するに至っ
た。
【0012】すなわち、本発明は嫌気性条件下でアルカ
ン類を分解するかまたは二酸化炭素からアルカン類を生
産し、FERM P−16920として寄託された、ク
レブシエラ スピーシズTK122(Klebsiel
la sp.TK122)である、新規微生物に関す
る。
【0013】更に本発明は、前記微生物を用いて、石油
に含有されるアルカン類を、嫌気性条件下において分解
する方法に関する。
【0014】更に本発明は、前記微生物を用いて、大気
中の二酸化炭素を固定し、アルカン類及びアルケン類を
製造する方法に関する。
【0015】本発明の菌である、クレブシエラ スピー
シズ TK−122(Klebsiella sp.TK122)の菌
学的性質は、下記のとおりである。
【0016】(a)形態 細胞の形 桿菌 細胞の大きさ 0.5×2〜4μm 胞子形成 なし 運動性 なし グラム染色 陰性
【0017】(b)各種培地における生育状態 栄養寒天培地: 生育は豊富で、コロニーの色は乳白色である。やや、光
沢がある。実施例1で示される表1の組成に原油あるい
はアルカン類を加えた寒天培地:コロニーは、乳白色で
光沢がある。
【0018】(c)生理学的性質 酸素要求性 通性嫌気性 メタン生成 生成しない オキシターゼ 陰性 ゼラチン液化 陽性 H2 S生産 陰性 ウレアーゼ 陽性/陰性(微弱) インドール生産 陽性 VPテスト 陰性 糖の資化分解性 グルコース 陽性 スクロース 陽性 D−マンニトール 陽性 イノシトール 陽性 D−ソルビトール 陽性 L−ラムノース 陽性 D−メリビオース 陽性 D−アミグダリン 陽性 L−アラビノース 陽性 有機性の資化分解性 クエン酸 陽性 ピルビン酸 陰性 アミノ酸の脱炭酸反応 リジン 陽性 オルニチン 陽性 菌の生育温度 30℃ 生育する 37℃ 生育する 48℃ 生育しない
【0019】(d)好気条件下における炭化水素の資化
分解性 デカン 陽性 ドデカン 陽性 テトラデカン 陽性 ヘキサデカン 陽性
【0020】(e)嫌気条件下における炭化水素の資化
分解性 デカン 陽性 ドデカン 陽性 テトラデカン 陽性 ヘキサデカン 陽性
【0021】(f)炭化水素類に対する耐性 原油 (10v/v%) 耐性あり テトラデカン(10v/v%) 耐性あり
【0022】上記のテトラデカンを含む培地において嫌
気条件下で生育した本発明の微生物の細胞の透過型電子
顕微鏡を用いた形態観察によれば、細胞内には、その容
積当たり10から20%におよぶ油滴状の電子密度の低
い小泡がほぼ全ての細胞において観察される。さらに細
胞膜内側には黒い凝集体が多数観察される(図1参
照)。
【0023】さらに、本発明の微生物は、硫酸塩を含ま
ない培地でも嫌気的にテトラデカンを資化分解すること
から硫酸還元菌でないこと、通性嫌気性菌であることか
ら水素細菌でないこと、メタンを生成しないことからメ
タン生成細菌でないことがわかる。
【0024】以上の菌学的性質を基準として、バージー
ズ マニュアル オブ ディタミネイティブ バクテリ
オロジー(Bergey's Manual of Determinative Bacterio
rogy) 第8版(1975年)およびアピ20Eシステム
(日本ビオメリュー・バイテック株式会社製)を用いて
検索したところ、運動性を有しない点を除外すればセア
チア オドリフェラ(Serratia odorifera)と99%の
同定確率で一致が認められた。
【0025】しかしながら16S rRNA遺伝子の塩基配列
を比較したところセラチア(Serratia)属とは95%の同
一性しかなく、クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella
oxytoca)との同一性は99%であり、又クレブシエラ
プランティコラ(Klebsiellaplanticola) との同一性は
98%であった。近年、菌株(特に属)の同定において
は16SrRNA 遺伝子の比較に基づいてなされるのが主流
になりつつある。以上の検討の結果、最終的に本発明の
微生物はKlebsiella属細菌の新種と認め、クレブシエラ
アナエロオレオフィラ(Klebsiella anaerooleophil
a)と命名した。クレブシエラ属細菌が一般に運動性を
有さない点も本菌株の性質と一致した。クレブシエラ属
細菌の既存の種と異なる点は嫌気条件下でアルカン類を
分解できる点、VPテストが陰性である点、およびオル
ニチンの脱炭酸反応が陽性である点などである。この種
に属する1 つの菌株すなわちTK122 は、本発明の出願日
前(平成10年7月29日)に工業技術院生命工学工業
技術研究所にFERMP−16920として寄託されて
いる。
【0026】本発明の微生物の培養に使用する培地は、
この菌株が良好に生育するものであれば、いかなる組成
の培地であっても良く、また、菌体増殖用と嫌気条件下
における炭化水素類の分解用にそれぞれ異なる2種類の
培地を用いても良い。このときに用いる培地は、培地成
分として適当な炭素源、窒素源および無機イオン等を含
有していても良い。
【0027】上記の炭素源としては、独立栄養的増殖の
場合には二酸化炭素を炭素源とすることができる。また
嫌気条件下における炭化水素類の分解用培地の場合に
は、二酸化炭素および水素の存在は必須ではなく、原料
となる炭化水素類を単独で、あるいは混合して利用して
も良いし、この原料となる炭化水素類に本発明の微生物
が利用できる任意の炭素源を追加しても良い。追加の炭
素源として利用できるものには、グルコース、スクロー
ス等の糖類、クエン酸等の有機酸類が挙げられる。ま
た、菌体増殖用培地の場合には、本発明の微生物が利用
できる上記のような炭素源を利用することができる。
【0028】上記の本発明の微生物による分解の場合の
原料となる炭化水素類の具体例としては、デカン、ドデ
カン、テトラデカン、へキサデカン等の脂肪族炭化水素
類あるいはこれらの混合物である原油等の石油留分など
が挙げられる。
【0029】また、上記の窒素源としては、硫酸アンモ
ニウム、硝酸アンモニウム等の無機窒素化合物、および
ペプトン、酵母エキス等の有機窒素源が利用できる。な
お、有機窒素化合物を用いる場合は、該有機窒素化合物
には炭素も含まれているため、増殖用培地の場合には別
の炭素源は必ずしも必要でない。
【0030】さらに、上記の無機イオンとしては、リン
酸イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、カ
リウムイオン、鉄イオン、銅イオン、マンガンイオン等
が挙げられ、これら無機イオンを培地に無機塩等の形で
含有させても良い。
【0031】本発明の微生物の培養方法としては、振と
う培養法等の液体培地による培養法および寒天培地等の
固体培地による培養法等が利用できる。培養温度は例え
ば15〜42℃、好ましくは30〜40℃であり、培地
のpHは中性付近であり、培養日数は菌体量ならびに炭
化水素類の分解(すなわち、炭化水素類の種類、量、分
解程度等)に応じて決めることができるが、3日から6
0日、より好ましくは6日から30日が適当である。以
下に本発明の実施例を述べるが、本発明はこれらの実施
例により限定されないものである。
【0032】
【実施例】実施例l 下記の表1に示すBM培地成分を、蒸留水1lに溶解し
たのち、水酸化ナトリウムにて培地のpHを7.0に調
整した。次に、この培地に12gの精製アガロースを加
え、121℃で15分間加熱滅菌したのち、無菌窒素ガ
スにてバブリングを行った(以下、この加熱滅菌後にバ
ブリングする処理を、無酸素・無菌処理という)。表1
に示すBM培地を、表2に示す組成の窒素、二酸化炭素
および水素の混合ガスにて置換された嫌気ボックス内に
入れ、シャーレ内に分注し、これを微生物分離用固体培
地とした。一方、嫌気ボックス内にて、上記培地と同様
の方法により無酸素・無菌処理した蒸留水10mlに、
採取油泥1gを懸濁した。
【0033】上記と同様に無酸素・無菌処理した原油3
0μlと上記の懸濁水0.1mlとを、上記のシャーレ
表面に添加し、37℃で20日間培養した。生育の認め
られたものについて液体BM培地(表1に示す培地成分)
に植え継ぎ、再度37℃で10日間培養した。得られた
菌体は、希釈培養法により純菌化を行った。以上の操作
は、全て嫌気ボックス内で実施した。
【0034】なお、上記の希釈法による純菌化は、次の
ようにして行った。菌体を滅菌水にて適当に希釈し、表
3に示すL培地に寒天を15g加えて調製したL寒天培
地上に塗布して、37℃で1日間培養を行った。適当な
希釈倍率にて生育したコロニーを拾い、得られた菌体を
再度滅菌水にて適当に希釈し、上記の培地上に塗布し、
37℃で1日間培養した。
【0035】嫌気条件下において得られた菌株を、原油
あるいはテトラデカンを1%加えた培地(表1に示す組
成の培地)に植え継ぎ、好気条件下、37℃で1日間培
養し、生育する菌株を単離することで目的とする微生物
を得た。
【0036】
【表1】 緩衝液;リン酸緩衝液 67mM Na2 HPO4 ,6
7mM KH2 PO4ビタミン溶液(1l当り);0.
12g パントテインカルシウム,0.59mg ビチ
オン0.59mg 葉酸,59mg イノシトール,
0.12gニアシン,59 mg p−アミノ安息香
酸,0.12g ピリドキシン,59mg リボフラ
ビン,0.12g チアミン塩酸塩微量元素(1l当
り);31mg H3 BO3 ,57mg CuSO4 ,
34mgMnSO4 ,14mg Na2 MoO4 ,58
mg ZnSO4 ,86mg FeSO4 ,2mg C
oCl2 ,4g EDTA,8g MgSO4 ,4gK
Cl,2g CaCl2
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】 pHは水酸化ナトリウム溶液にて7.2に調整
【0039】以上のようにして得られた菌株の性状、生
理学的性質等は、上述したクレブシエラ・アナエロオレ
フィラの記載事項に一致した。
【0040】実施例2 表1に示した培地を0.3lの密栓フラスコに50ml
入れ、さらに原油を50μl加えて121℃、15分間
加熱滅菌したのち、表2に示す混合ガスを満たした嫌気
ボックス内で一晩放置することにより完全嫌気状態にし
た。その後、TK−122を植菌し、密栓して37℃で
4日間振とうを行った。
【0041】その結果、クレブシエラ・アナエロオレオ
フィラ(Klebsiella anaerooleophila)TK−122の菌
体約20mg/lが得られ、他の微生物の混入、生育は
認められなかった。培養液に等量のヘキサンを加えて原
油を抽出し、その1μlをガスクロマトグラフ装置に供
した。検出器にはFIDを用いて原油成分の定量を行っ
た。カラムはヒューレットパッカード社製HP−1
(0.25mm X30m)を用い、25ml/分の流速
でヘリウムをキャリアーガスとして流し、目的成分の迅
速な溶出のためにカラムオーブンに80から300℃の
直線温度勾配をかけた。その結果該微生物はオクタン
(C8 )からからヘキサデカン(C16)までの直鎖炭化
水素を顕著に分解することを確認した。特にドデカン
(C12)を最も良く分解し、分解率は50%以上であっ
た(図2、図3参照)。
【0042】比較例 Klebsiella sp. TK-122 を用いず、好気条件下において
炭化水素類を資化分解することが公知である菌株、アリ
スロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter gilobi
formis) IFO12137、アリスロバクター・ビスコサス(Art
hrobacter viscosus)IFO13497 、シュードモナス・フル
オレッセンス(Paeudomonas fluorescens)IFO392 、シュ
ードモナス・プチダ(Paeudomonas putida) IFO12996 、
同ATCC17484 、同ATCC12633 、シュードモナス・エスピ
ー(Paeudomonas sp.)ATCC17483、ロドコッカス・エスピ
ー(Rhodococcus sp.)ATCC19070を用いる以外は、実施例
2と同様の実験を行った。その結果、これらの菌株は、
いずれも生育が認められず、嫌気条件下において炭化水
素を資化分解できなかった。さらに、特開平5−276
933に記載のHD−1株は嫌気条件下で炭化水素を資
化分解したが、その量は1%以下であり、これに比べて
TK−122は、その能力においてはるかに優れていた
(図2、図3参照)。
【0043】実施例3 酸素の存在しないすなわち嫌気条件下における炭化水素
の資化分解を証明するためには電子受容体として何が機
能しているのかを明確にする必要がある。そこで表1に
示した培地から電子受容体として機能し得る成分を除去
することによりアルカン類分解収率への影響を調べた
(図4(イ)))。実験の手法は実施例2と同様に行っ
た。まず、表1に示した培地成分からSO4 2- を除去した
培地(BM:SO4 2-フリー)ではBMと同程度のアルカン類が
分解されたので電子受容体はSO4 2-ではないことが判明
した。次に微量元素を順次除去して実験を行ったところ
モリブデン酸イオンを除去した場合(BM:MoO4 2- フリ
ー)には全くアルカン類が分解されないことが分かっ
た。すなわち、該微生物は嫌気条件下において酸素の代
りにモリブデン酸イオンを電子受容体としてアルカン類
を資化分解することが明かになった。続いてモリブデン
酸イオン濃度を0から5mMの範囲で変化させてアルカ
ン類分解収率への影響を菌体の増殖と共にしらべた(図
4(ロ))。その結果、0mMでは菌体は増殖せず、モ
リブデン酸イオンは嫌気条件下での菌の生育そのものに
必須であることが分かった。さらにモリブデン酸イオン
濃度が0.4mMにおいてアルカン類の分解収率は最も
高く、オクタンからヘキサデカンまでの約75%を分解
した。一方、菌の生育に最適なモリブデン酸イオンの濃
度は0.2mMであった。
【0044】実施例4 次に培地中の初期原油濃度を0から1%まで変化させ
て、密封フラスコ内の気相をガスクロマトグラフ法によ
りガス分析を行った。この場合、表2に示した混合ガス
の代りに窒素ガスを用いて嫌気条件を作製した。それ以
外は実施例2に従った。分解試験4日後の各フラスコの
気相0.1mlをカーボプロット(CarboPlo
t)カラム(0.53mm X 25m)に供して40℃に保ち、キ
ャリアーガスとしてヘリウムを流速10ml/分の速度
で流した。検出器はTCDを用いて試料気相中のガスの
種類およびその量を測定した。その結果、原油を含む場
合にのみ二酸化炭素の発生が認められた。その量は、
0.1%以上の原油濃度であればほぼ0.07から0.
09mMの間で一定であった。このことから該微生物は
嫌気条件下において原油を資化分解し、その最終産物は
二酸化炭素であることが判明した(図5)。
【0045】実施例5 TK−122を用いた二酸化炭素からのアルカン類生産
は以下のようにして行った。表1に示した培地(BM)
50mlを0.3l容の密栓フラスコに入れ、121℃
の温度で15分間加熱滅菌したのち、表2に示す二酸化
炭素を含む混合ガスを満たした嫌気ボックス内で一晩放
置した。これにTK−122を植菌し、37℃で4日間
振とうを行った。その結果、TK−122の菌体13m
g/lが得られ、他の微生物の混入、生育は認められな
かった。以上のようにして、TK−122は二酸化炭素
を固定することを確認した。次に菌体体積に対して10
倍量のヘキサンを加えホモジナイザーで菌を破砕すると
同時に疎水性成分を抽出した。これを実施例2で示した
方法に従いガスクロマトグラフ法による分析を行った。
その結果1gの菌体当りにアルカン類およびアルケン類
がそれぞれ、0.13mgおよび0.02mg含まれる
ことが分かった(図6、(ハ))。さらに表4に示した
培地(MBM)で同様の実験を行ったところ約80mg
/lの菌体が得られ、他の微生物の混入、生育は認めら
れなかった。この菌体からヘキサン抽出により回収され
たアルカン類およびアルケン類は、合計で約0.28m
g/菌体1gに達していた。またガス成分として二酸化
炭素を含まない対照実験において、窒素を用いて表3に
示す培地(MBM)で培養を行ったところ、約15mg
/lの菌体が得られた。しかし1gの菌体当たりに含ま
れるアルカン類およびアルケン類の合計量は、わずか
0.06mgにすぎなかった。すなわち、TK−122
のアルカン類およびアルケン類の生産は、二酸化炭素に
依存していることが明かである。
【0046】
【表4】
【0047】尚、図6において、 (イ)は、MBM培地(表4)に窒素ガスを充てんした
培養条件であり、 (ロ)は、MBM培地(表4)に二酸化炭素を含む混合
ガス(表2)を充てんした培養条件であり、 (ハ)は、BM培地(表1)に二酸化炭素を含む混合ガ
ス(表2)を充てんした培養条件である; さらに上記(イ)、(ロ)および(ハ)において、YAl
kane/x は、菌体重量当りのアルカン類生産収率を示
し、YAlkene/x は、菌体重量当りのアルケン類生産収
率を示し、そしてYp/x は、菌体重量当りのアルカン類
とアルケン類生産収率の合計である。
【0048】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の微生物は、
炭化水素類に耐性を有し、かつ嫌気または好気条件下に
おいてアルカン類およびアルケン類を資化分解し、また
は二酸化炭素からアルカン類およびアルケン類を生産す
ることが可能である。従って、石油精製プロセス、バイ
オリアクター、廃水処理、プロテインエンジニアリング
等の分野で幅広く利用することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】テトラデカンを炭素源とする実施例1で得られ
た本発明の微生物の顕微鏡鏡写真(倍率は20,000倍)で
ある。
【図2】TK−122を用いて嫌気条件下で、原油の資
化分解能を経時的に比較(0,2,4,6日後)したグ
ラフである。(イ)は0日、(ロ)は2日後、(ハ)は
4日後、(ニ)は6日後の原油の資化分解能力を示す結
果である。
【図3】微生物を用いないで、嫌気条件で原油を保持し
た場合の経時的変化を示すグラフである。
【図4】(イ)は、培地(BM:SO4 2- フリー及びB
M:Mo4 2- フリー)で分解されたアルカン類の収率で
あり、(ロ)は、培地中のMoO4 2- の濃度を変化させ
た場合のアルカン類の分解収率及び相対的菌株増殖比を
それぞれ示すグラフである。
【図5】初期原油(%(v/v) )と気相中の二酸化炭素濃
度(mM)との関係を示すグラフである。
【図6】各培地におけるアルカン類およびアルケン類の
生産収率の比較を表わすグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12P 5/02 C12P 5/02 C12S 1/00 C12S 1/00 //(C12N 1/20 C12R 1:22) (C12P 5/02 C12R 1:22) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 1/00 - 7/08 C12P 1/00 - 41/00 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 嫌気性条件下でアルカン類を分解するか
    または二酸化炭素からアルカン類を生産し、FERM
    P−16920として寄託された、クレブシエラスピー
    シズTK122(Klebsiella sp.TK1
    22)である、新規微生物。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の微生物を用いて、石油
    に含有されるアルカン類を、嫌気性条件下において分解
    する方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の微生物を用いて、大気
    中の二酸化炭素を固定し、アルカン類及びアルケン類を
    製造する方法。
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