JP2961236B2 - 酸化ニッケル系エレクトロクロミック材料の製造方法 - Google Patents

酸化ニッケル系エレクトロクロミック材料の製造方法

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JP2961236B2 JP7051762A JP5176295A JP2961236B2 JP 2961236 B2 JP2961236 B2 JP 2961236B2 JP 7051762 A JP7051762 A JP 7051762A JP 5176295 A JP5176295 A JP 5176295A JP 2961236 B2 JP2961236 B2 JP 2961236B2
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oxygen
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、建物や乗り物における
太陽エネルギーの透過率制御のための窓材料技術に関す
るものであり、更に詳しくは、ブラインドやカーテンな
しで自動的に入射する太陽光をコントロールするエレク
トロクロミック薄膜材料の新規製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】外部からの物理刺激により可逆的に色
(光の透過率)の変わる現象をクロミズムといい、その
中でも、電圧印加あるいは電流を通じることにより、可
逆的に色や光透過度が変化する現象をエレクトロクロミ
ズム(electrochromism)と呼んでい
る。
【0003】歴史的には、1963年に Deb が遷移金属酸
化物である酸化タングステン(WO3)のアモルファス薄
膜がエレクトロクロミック現象を示すことを発見し、よ
く知られるようになった。
【0004】エレクトロクロミック材料を用いた実用化
素子の応用としては、大きく表示素子と調光素子に分け
られが、特に近年注目を集めているのが、調光素子とし
ての応用である。調光素子とは、建物や乗り物などの窓
材に用いて、外部からの光及び熱の出入りをコントロ−
ルする素子である。エレクトロクロミック素子を窓材と
して用いれば、建物の冷暖房負荷及び照明負荷をできる
だけおさえるように、窓の太陽光透過率をコントロール
することができ、いわゆるブラインドやカーテンのいら
ないインテリジェントな窓が実現できることになる。
【0005】エレクトロクロミズムを示す材料は、無機
系の材料から有機系の材料まで、広い範囲にわたってい
るが、現在の所、実用化が最も早いと期待されている材
料は酸化タングステン(WO3)をクロミック材料として
用いたもので、プロトタイプの製品が開発されている。
【0006】これに対して酸化ニッケル系のエレクトロ
クロミック材料は、材料コストが安く、しかも着色効率
も高いことから次世代のクロミック材料として期待され
ており、実用化への研究が行われている。
【0007】酸化ニッケル系エレクトロクロミック薄膜
は様々な手法を用いて作成することができるが、1万回
以上の着色消色の繰り返しに対する劣化の少なさという
観点からは、スパッタ法も有力な方法の一つである。ま
た、スパッタ法の中でも反応性DCマグネトロンスパッ
タ法は、ターゲット及び電源のコストが安くてすむとい
うメリットがある。
【0008】しかし、現在、実際の酸化ニッケル系薄膜
のデバイス作成においては、スパッタ法はあまり用いら
れていない。その理由は、成膜速度を早くすると劣化の
激しい膜ができてしまうためにあまり成膜速度があげら
れないことや、ターゲットが酸素ガスと反応して変質し
てしまい、再現性のよい膜が得られないといった欠点が
あるためである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、このよ
うな状況の中で、反応性DCマグネトロンスパッタ法に
よる酸化ニッケル系エレクトロクロミック薄膜の諸物性
の成膜条件依存性を詳しく調べた結果、ある特定の条件
で成長を行えば、従来報告されているよりも、成膜速度
を一桁程度早くして、しかも非常に優れたクロミック特
性を示す膜を作成できることを見いだし、本発明を完成
するに至った。
【0010】本発明は、反応性DCマグネトロンスパッ
タ法を用いて、再現性よく、高速で、しかも非常に良い
エレクトロクロミック特性を持った酸化ニッケル薄膜を
製造することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は金属ニッケルを
ターゲットとして、反応性マグネトロンスパッタリング
によって優れたエレクトロクロミック特性を示す酸化ニ
ッケル膜を作成するものである。
【0012】金属ターゲットを用いた反応性スパッタリ
ング法により膜作成を行う場合、一度スパッタによる成
膜を行うと、ターゲットが、導入した酸素ガスと反応し
て変質しているため、そのままの状態で成長を行うと、
同じ条件で成長を行っても、前回得られた膜とは異なっ
た物性を持った膜ができてしまう。
【0013】そこで、本発明では、毎回成長前に、シャ
ッターをしめた状態でまずアルゴンガスのみを導入して
ます第1段階のプリスパッタを行い、ターゲットの変質
した表面層を取り除き、もとの金属光沢が現れることを
確認した後、今度はアルゴンと酸素ガスを導入して第2
段階のプリスパッタを行い、ターゲットの状態が安定し
た後、シャッターを開いて成膜を開始するという、2段
階のプリスパッタを行った。これにより、再現性よく成
膜することが可能になった。
【0014】金属ニッケルをターゲットとして反応性ス
パッタにおいて、導入するアルゴンと酸素の全圧を固定
し、導入するパワーと酸素量を変えて、その成膜速度が
どうなるかを調べた。その結果、パワーを一定にして酸
素量を徐々に増やしていくと、成膜速度が急激に小さく
なり、その後、ある酸素量から上では導入する酸素量を
増やしても成長速度がほとんど変化しなくなった。
【0015】通常、アルミニウムやチタンなどの金属を
ターゲットとした反応性スパッタリングでは、ゼロから
酸素量を増やしていくとある酸素量までは、ゆっくりと
成長速度が遅くなっていき、ある酸素量で急激に成長速
度が遅くなり、その後は酸素量を増やしてもあまり成長
速度が変化しなくなるという傾向が見られる。最初の領
域は金属モード、後者の領域を化合物モード、その間の
急激に変化する領域は遷移領域と呼ばれる。ニッケルを
ターゲットとした場合は、これらの場合とは異なり、金
属モードの領域がみられず、遷移領域の幅が広いことが
特徴となっている。従来報告されている成長では、化合
物モードで成長が行われることが多く、あまり成長速度
があげられなかったが、本発明では遷移領域で成長を行
うことにより成長速度を40nm/minまで上げられることを
見いだした。
【0016】成長した膜の構造をX線回折によって調べ
た結果、いずれの条件で成長した膜にも多結晶のNiOが
存在していることがわかった。ただし、成長中の基板温
度を高くしたものの方が、よく結晶化していた。
【0017】この成長直後の膜の組成をオージェ電子分
光によって調べた結果、酸素原子のニッケル原子に対す
る割合は1.25-1.4で、いずれの条件で成長した膜につい
ても、NiOの組成よりも酸素が多い状態になっているこ
とがわかった。X線回折ではNiO以外の構造に起因する
ピークは見られないことから、このスパッタによって作
成した膜ではNiOの微結晶の表面及び界面がOH基などに
よって終端されている可能性が高いと思われる。従っ
て、得られた膜の化学式はNiOxHyと書かれると思われ
る。
【0018】成長した膜について、1N KOHを電解液とし
て白金を対抗電極としたサイクリックボルタンメトリー
を行ってそのエレクトロクロミック特性を評価した。そ
の結果得られた膜のエレクトロクロミック特性は、成長
中の基板温度に強く依存することがわかった。
【0019】基板加熱を行わない場合は、200サイクル
あたりから膜の劣化が見られた。これに対し、基板温度
を200℃から300℃にして成長を行った試料では、100サ
イクル後はあまりよい特性を示さなかったが1000サイク
ルでは極めて良い特性を示した。また、基板温度を400
℃にした場合は、ほとんど良いエレクトロクロミック特
性を示さなかった。また、基板温度を同じにした場合に
は、早く成長したサンプルの法が良い特性を示した。
【0020】
【実施例】続いて、本発明を実施例に基づいて具体的に
説明する。 実施例1 酸化ニッケル薄膜の作製は三連のマグネトロンスパッタ
装置を用い、反応性DCマグネトロンスパッタ法によっ
て行った。基板としては ITO (Indium Tin Oxide) をコ
ーティングしたガラスを用い、ターゲットとしては直径
50 mm の金属ニッケルを使用した。導入ガスとしては
アルゴンガスと酸素ガスを2系統から、全圧が 5 Pa に
なるように導入した。成長速度は、酸素ガスの流量及び
印加するパワーによってコントロールを行った。膜厚
は、成長中水晶膜厚計でモニターし、成長後、光学干渉
計によっても膜厚を測定して校正を行った。
【0021】成長にあたっては、チャンバーを5×10-4
Pa 程度に排気した後、シャッターを閉めた状態で、ま
ず純粋アルゴンのみを導入してスパッタを行い、ターゲ
ット表面の酸化した層を取り除いた。次に、酸素とアル
ゴンを導入してプリスパッタを5分間行い、それからシ
ャッターを開け成長を行った。先にも触れたように、反
応性スパッタにおいてはターゲット表面が変質しやすい
ので、初めのアルゴンのみによるプリスパッタは、再現
性の良い結果を得る上で重要である。
【0022】実施例2 図1は金属ニッケルをターゲットとした場合の成膜速度
を、酸素導入量(アルゴンガスに対する酸素の割合)と
導入パワーの関数として三次元プロットしたものであ
る。
【0023】たとえばパワーが 60W のときを見ると、
酸素導入量が 30% より小さい部分では、酸素導入量の
増加に伴って成長速度が低下しており、これが遷移領域
にあたる。これに対して 30% より大きい部分では、あ
まり成長速度が変化せず、ここが化合物モードにあたっ
ている。そして、ニッケルでは金属領域がほとんど存在
せず、これがチタンやジルコミウムなどの場合と違う大
きな特徴になっている。また、化合物モードに移る酸素
導入量はパワーを下げるにしたがって、低導入量側にシ
フトするという傾向がある(図中の太い実線を境にし
て、左側が遷移領域、右側が化合物モード)。
【0024】この図からもわかるように、酸素導入量を
下げ、かつパワーをあげて、遷移領域において成長を行
うと、成長速度は、化合物モードでの成長より一桁以上
高くすることができるということがわかった。
【0025】実施例3 これらのサンプルについて、サイクリック・ボルタンメ
トリーを用いてそのエレクトロクロミック特性を調べ
た。図2は遷移領域において(全圧 5 Pa、酸素流量 5
%、パワー 60 W)、基板温度を200℃にして成長を行っ
た試料について、サイクリック・ボルタンメトリーにお
けるポテンシャルと電流密度との関係を示したものであ
る。この試料の100サイクル後の電流密度は加熱なしの
サンプルに比べて小さいが、サイクルの繰り返しと共に
電流密度は800サイクルぐらいまで増加していって飽和
し、1000サイクルでは非常に大きくなった。基板温度を
300℃に保った試料でもほぼ同様の特性のものが得られ
る。
【0026】実施例4 図3は実施例3と同じ条件で作成した試料について、1N
KOH 溶液中での、消色状態と着色状態における透過率
の変化を示したものである。この透過率から消色時と着
色時の可視光透過率を計算すると、をれぞれ7.7%と82
%となり、この間の任意の透過率に制御できるという極
めて優れたエレクトロクロミック特性を持った材料が得
られていることがわかる。
【0027】以上、本発明を実施例に基づいて説明した
が、本発明は、前記した実施例に限定されるものではな
く、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限りど
のようにでも実施することができるものであることはい
うまでもない。
【0028】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、反応性
マグネトロンスパッタ法により、金属ニッケルをターゲ
ットとして、酸化ニッケルエレクトロクロミック薄膜を
再現性よく、しかも高速で成膜する事を可能にするもの
である。本発明によれば、可視光透過率において7%から
82.3%まで制御できるという極めて性能のよい膜を30nm/
minという高速で成膜することができる。このよな膜は
太陽エネルギーを建物内部の冷房負荷、照明負荷ができ
るだけ軽減できるようにコントロールすることが可能に
なり、コストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属ニッケルをターゲットとして反応性スパッ
タを行った場合の成膜速度と、導入酸素量及びパワーと
の関係を示す。
【図2】1N KOH 溶液中で、白金を対極として行った、
最も良い特性を示した酸化ニッケル系薄膜のサイクリッ
クボルタモグラムを示す。
【図3】1N KOH 溶液中における、最も良い特性を示し
た酸化ニッケル系薄膜の消色時と着色時の透過率の変化
を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/00 - 14/58 G02F 1/15

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルゴンガスを導入して第1段階のプリ
    スパッタを行い、アルゴンガスと酸素ガスを導入して第
    2段階のプリスパッタを行い、次いで、基板加熱を行っ
    て、反応性DCマグネトロンスパッタ法により、再現性
    よく成膜することを特徴とする酸化ニッケル系エレクト
    ロクロミック材料の製造方法。
  2. 【請求項2】 酸素ガスの流量及び印加するパワーによ
    って成長速度をコントールして、反応性DCマグネトロ
    ンスパッタ法により、高速で成膜することを特徴とする
    請求項1記載の酸化ニッケル系エレクトロクロミック材
    料の製造方法。
  3. 【請求項3】 反応性スパッタを行う際の基板温度が2
    00℃から300℃であることを特徴とする請求項1記
    載の酸化ニッケル系エレクトロクロミック材料の製造方
    法。
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