JP2959895B2 - 温度伝導率の計測方法 - Google Patents

温度伝導率の計測方法

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JP2959895B2 JP30403491A JP30403491A JP2959895B2 JP 2959895 B2 JP2959895 B2 JP 2959895B2 JP 30403491 A JP30403491 A JP 30403491A JP 30403491 A JP30403491 A JP 30403491A JP 2959895 B2 JP2959895 B2 JP 2959895B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、物質と熱的に接触する
発熱体が発熱するとき該発熱体から各々異なる距離にあ
る測温素子もしくは該発熱体温度と該発熱体から一定距
離にある測温素子の温度の差が発熱開始から変化し、そ
の差が一定時間経過後は一定の幅を示すような物質にお
ける物質の物性値である温度伝導率を測定する方法に関
し、該温度伝導率の計測により被測定物質の材質特性を
知り、食品や工業製品の冷却、加熱における形状や条
件、及び包装形態、包装材質の設定や、冷却、加熱装置
の設計などに利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】従来、非定常細線法により流体の熱伝導
率を計測する手段として、「流体の熱伝導率の高精度
測定に関する研究」長坂雄次、長島昭、日本機械学論文
集47巻417号(昭56−5)821−829頁
「流体の熱伝導率の高精度測定に関する研究」長坂雄
次、長島昭、日本機械学論文集47巻419号(昭56
−7)1323−1331頁がある。これらの文献によ
ると非定常細線法により流体の熱伝導率、温度伝導率が
計測可能であり、更に実験による追試確認も可能である
ことが記載されている。これらの方法は、流体と熱的に
接触する素子の発熱開始からの温度変化を計測し、その
温度が対数時間軸に対して直線的に変化する非定常状態
における温度勾配を計測する手段である。ここで、熱伝
導率は物質の物性を表す値の一つであり、物質の熱伝導
率を知ることは物質の熱の性質の一つを把握可能とし、
身近には耐火材の設計や、食品の熱変性の把握などに役
立てられている。また、細線を利用した流体の物性の測
定法として、本出願人が先に開示した特開昭59−2
17162号「乳凝固の測定方法」のように、流体の粘
性変化を判定するために細線の温度変化を指標としたも
のがある。この発明は流体の粘性という物性を実測値と
して計測するものではなく、粘性という物性が変化する
ことを細線の定常状態における温度変化から把握するも
のである。更に、このような粘性変化と細線温度の定常
状態における変化を利用するものとして、本出願人が先
に開示した特開昭60−152943号「液体及び半
固体状物質の物性変化の測定方法」がある。この発明
は、非定常状態において熱伝導率の測定が可能な方法を
利用することによって、流体の物性の一つである動粘性
率の変化を計測することが可能であることを主体として
いる。即ち、動粘性率は流体の粘度を密度で割った値で
あるが、熱伝達率が熱伝導率と関係しており、動粘性率
の変化が熱伝達率を介して熱伝導率の変化により把握可
能であるという理論に基づくものである。なお、この発
明は動粘性率を実測値として求めるものではなく、その
変化の有無を把握しようとするものである。更に、本出
願人が先に開示した特開平1−227062号「血液
等の粘性変化の測定方法」は、流体である血液が刺激さ
れてから凝固するまでの医学的に重要な時間であるプロ
トロンビン時間やトロンビン時間の計測に細線技術を応
用した発明である。この発明により、血液の刺激から凝
固までの時間を血液の粘性変化から高精度に計測できる
ことを明らかにしている。また、この発明は流体(血
液)の物性変化である粘性変化を細線の定常状態におけ
る温度変化や該温度変化から把握可能な他の物性変化か
ら把握して時間計測することを主体としており、このこ
とからも流体の物性を知ることの重要性が理解される。
なお、従来の測温素子の機能を有する発熱体を内蔵する
センサーに関して、例えば特開昭64−44838号の
ような具体例がある。流体の細線加熱法による従来技術
では、以上のように非定常状態における温度変化から物
性の一部である熱伝導率を実測値として得られること、
また、定常状態の温度変化から物性である粘性の変化の
有無を知ることが可能であることが明らかになってい
る。その他、「熱計測技術」荒木伸幸(日本機械学会
編、朝倉書店発行、107頁)には熱的接触を利用した
温度伝導率を計測する方法が記載されており、また、
「レーザーパルス法による熱常数の測定」難波進他二名
(応用物理、第36巻、第8号、1967、661〜6
65頁)にはレーザーパルスによる熱拡散率の測定につ
いて検討されている。この資料では、瞬間熱源が照射さ
れてから試料の反対面における温度が最大値の1/2に
達するまでに要する時間と熱拡散率の関係について報告
されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】例えば特公平2−31
932号に示されるように、従来の細線加熱法において
もその指標値の変化から流体の粘性変化の状態を把握す
ることが行われている。しかし、各種産業分野において
流体の状態変化を計測する場合には、粘性変化の状態を
把握すれば良いというだけにとどまらず、実質的な物性
値を求め、その物性値に基づいて工程を制御することが
必要とされる場合もある。そのような場合は動粘性率、
粘性値、熱伝導率、温度伝導率などの物性値を時間をか
けて数値として計測するようにしている。また、液体や
気体に限らず、固体状、ペースト状、スラリー状などの
物質においても物性値を数値として計測することが要求
されている。例えば、アイスクリームの冷却、発酵後の
パン焼き、冷凍食品の解凍・凍結等の熱伝導現象に支配
される工程にあってはその現象を充分に知悉し、製品の
形状や大きさを決定したり、装置の性能、形式等を設計
するからである。そして、以上のような熱伝導現象にお
いて温度伝導率は熱移動を支配する重要な物性値であ
り、これを正確に計測することは産業上重要な手段であ
る。また、物質の温度伝導率は比熱と密度に関係してい
ることから、物質の構成内容や物質自体の環境温度によ
って変化し、これを簡単に計測することが望まれる。こ
こで、上記従来技術として挙げた、には非定常細線
加熱法により温度伝導率aが計測可能である旨の記載が
あるものの、被測定物の密度ρ、比熱Cpが既知である
ことを前提としており、その方法によって求めた熱伝導
率λから、 a = λ / Cp・ρ により温度伝導率aを求める方法である。従って、前提
として被測定物の密度ρ、比熱Cpの両方が既知である
ことを要するが、実際の工業工程ではこれらの値が既知
であることは希であり、例えば食品などにあっては混合
物が多く、また、季節や環境の変動によって成分配分に
変更があり、現実問題として被測定物の密度ρや比熱C
pを知ることは不可能である。特に固体物質では理論的
には発熱体の発熱による熱伝導が従来の細線加熱法でい
うところの定常状態を示さず、永久的に非定常であるた
め、従来の細線加熱法によっては温度伝導率を熱伝導率
の介在無しで得ることは不可能である。また、上記〜
によって流体の物性値を実測値として得ることは困難
である。即ち、これらの計測においては粘性率を実質値
として知る必要はなく、変化の始点や終点を時期的に把
握する方法である。これらの発明では、物性の一つであ
る粘性変化に基づく流体の状態把握であって物性の他の
一つである温度伝導率の把握がどのような流体の状態を
把握することになるかが明らかにされていない。更に、
はレーザーパルス法により一方面から多方面に達する
温度の最大値の半分に達するまでの時間と熱拡散率(温
度伝導率)の関係であり、固体試料以外には特殊な容器
を要し、先に述べたペースト状、スラリー状の試料では
特に均質性が問題となって、測定に時間を要すると共に
インライン計測は不可能である。また、この測定におい
ては熱伝導の定常、非定常は問題ではなく、試料の厚み
が計測の主たる要因となっている。しかし、この試料で
重要なことは、熱の伝導中である温度の変化する時点で
は、熱伝導率が関係することなく熱拡散率を得ているこ
とであり、後に本発明でいう非定常域における熱伝導で
は温度伝導率のみが支配し、熱伝導率は無関係であるこ
とを示唆するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】従って、本発明は物質の
温度伝導率を実質的数値として簡単に計測できる方法を
提供することを目的とする。かかる目的を達成すべく、
発熱体から異なる距離にある少なくとも二つの測温素
子、もしくは自ら発熱し、かつ自らの温度を検出可能な
発熱体内蔵もしくは兼用の素子と測温素子を物質内に配
置し、発熱体を発熱せしめてそれら測温素子、もしくは
発熱体と測温素子の温度差が一定温度差を保つようにな
ったときの該温度差を求め、それら測温素子、もしくは
発熱体と測温素子の温度差が発熱開始から上記一定温度
差の1/Nの値に到達するまでの時間から物質の温度伝
導率を得ることを特徴とする温度伝導率の計測方法を発
明した。なお、これら二つの測温素子の距離は、物質内
の特定点からの距離をL1、L2とし、かつL1<L2
のとき、L2/L1>1となるように構成することが当
然であり、上記Nは1より大きい値として、計測される
時間が非定常域にあるように設定される。更に、以上の
ような方法により、二種以上の物性既知の物質を用いて
各物質の温度差の1/N(但し、N>1)の温度差に到
達する時間を計測して各物質の既知である温度伝導率か
ら較正曲線を定め、この較正曲線に基づいて温度伝導率
が未知の物質の温度伝導率を求めるようにした。
【0005】
【作用】物質内において発熱体と該発熱体から異なる距
離にある少なくとも二つの測温素子、もしくは自ら発熱
し、かつ自らの温度を検出可能な発熱体と測温素子を配
置し、発熱体を発熱させながら経時的に測温素子の温度
差、もしくは発熱体と測温素子の温度差を計測するとあ
る時間で一定の温度差を保つ準定常域に到達する。そし
て、このような準定常域に到達する前の非定常域の間に
おいて、これら測温素子の温度差、もしくは発熱体と測
温素子の温度差が上記準定常域の時の温度差の1/Nの
値に到達するまでの時間は温度伝導率に依存して変化す
る。本発明は、以上の性質を利用し、それら測温素子、
もしくは発熱体と測温素子の温度差が発熱開始から上記
一定温度差の1/Nの値に到達するまでの時間を計測す
ることにより物質の温度伝導率を得ようとするものであ
る。そして、以上のような方法において、二種以上の物
性既知の物質を用いて1/Nの温度差に到達する時間と
温度伝導率の較正曲線を定め、その較正曲線に基づいて
未知物質の温度伝導率を得るものである。なお、非定常
域において測定を行うためにNは1より大きい値である
ことが条件となる。例えばN=2等とすると計算が容易
である。また、このように非定常域において測定を行う
のは、定常域での熱伝導は熱伝達率が影響するからであ
り、熱伝導が温度伝導率に支配される非定常域において
測定を行う必要があるからである。ここで、温度伝導率
aは比熱Cp、密度ρ、熱伝導率λの関数であり、一般
には次式 a = f(Cp、ρ、λ) で表されるが、非定常域においては熱伝導率λが関与し
ない関数となる。このことは先に従来技術のとしてあ
げた文献や伝熱工学資料:日本機械学会、改訂第4版、
昭和61年10月20日出版、第1〜14頁において明
らかにされている。即ち、これらの資料より、円筒座標
系の熱伝導方程式は、次式 ∂T/∂t = a(∂2 T/∂r2 + 1/r・∂T/∂t) …(1) T:温度 t:時間 r:半径方向の距離 で表される。温度分布が時間によって変化が認められな
い定常熱伝導の状態では∂T/∂t = 0であり、そ
の時の基礎方程式は ∇2 T = 0 が成り立つ。ここで、内部発熱がある場合は ∇2 T + Q’/λ = 0 Q’:発熱量 と表されるため、定常域では熱伝導率が関与してくる。
しかし、非定常域では ∂T/∂t ≠ 0 であり、(1)式より温度伝導率aのみに支配されるこ
とが分かる。なお、本発明でいう定常域、非定常域と
は、従来技術でいう定常状態、非定常状態とは意味が異
なる点に留意を要する。即ち、従来技術、等におい
て、流体中に配置した発熱体を発熱させて熱伝達を生じ
させたとき、発熱体の温度は対流熱伝達の安定域までは
上昇し続けるが、熱伝達が安定した後は一定温度とな
る。従来技術における定常状態とはこのように発熱体の
温度が一定となった状態であり、非定常状態とは発熱体
の温度がこのように一定となるまでの間の状態である。
一方、本発明のように物質内に位置する発熱体を発熱し
続けると、ある時間を経過した後は、発熱体からそれぞ
れ異なる距離にある二つの点の温度は一定の差を保った
まま上昇し続けるようになる。本発明でいう定常域と
は、このように二つの点の温度が一定の差を保ったまま
上昇し続けるようになった状態をいい、その一様温度差
の時間変化だけを扱う、いわゆる準定常域を指してい
る。非定常域とは二つの点の温度がこのように一定の差
を保つようになるまでの間の状態をいう。なお、理論的
には物質が無限の大きさを持っていると考えることがで
きるが、そのような場合には温度が永久的に上昇し続け
るので、 ∂T/∂t = 0 とならず、定常熱伝導でいう定常域は存在しないことと
なる。そこで準定常域という言葉を使用する。また、現
実には物質が有限の大きさをもっているため、本発明で
いう定常域(準定常域)における2点間の温度差が一定
である状態は永久ではなく、物質内の熱の蓄積により2
点間の温度は次第に接近するようになる。本発明では、
このような場合は熱伝導が異常になったものと見なし、
測定の対象としない。従って本発明は、準定常域に達し
てから非定常域に遡って2点間の温度差を測定して温度
伝導率を得ようとするものであり、上述したように非定
常域においては熱伝達率が温度伝導率に影響しない性質
を利用する手段である。
【0006】
【実施例】以下本発明の実施例を説明する。図1に示す
ように円柱形状をした物質1の内部に発熱体2と測温素
子3が埋設してある。発熱体2は自ら発熱し、かつ自ら
の温度を検出可能なものであり、例えば、金属細線を内
蔵した発熱センサー等が利用される。そして、これら発
熱体2と測温素子3により両者の温度差を計測する。図
2は物質1の内部中央に発熱体4を埋設し、この発熱体
4から異なる距離になるように二つの測温素子5、6を
配置した例を示しており、これら二つの測温素子5、6
によって両者の温度差を計測するものである。なお、例
えば発熱体4などの物質1内の特定点から二つの測温素
子5、6までの距離L1、L2はL1<L2のときL2
/L1>1(もしくはL2<L1のときL1/L2>
1)の関係になっている。なお、この場合の発熱体は物
質1の外部にあっても、二つの素子が異なる距離に保て
ば良いことは、いうまでもない。本発明にあっては図
1、図2の何れの構成を採ることもでき、何れにしても
物質内に生じている熱伝導を把握できれば良いものであ
るが、以下、図1に示すように発熱体2と測温素子3に
より温度差を計測するものについて説明する。物質1の
周りには冷却容器7が装着してある。8は冷却水入口、
9は冷却水出口である。このように物質1を冷却するの
は測定前において物質1の内部の場所によって異なる温
度域が生じ、温度勾配を生じるのを避けるためであり、
予め計測を行う前に冷却容器7に冷却水を流通させて物
質1の内部の温度を均一にする。
【0007】以上のようなものにおいて発熱体2を発熱
させて物質1の内部に熱伝導を生じさせると、測温素子
3で検出される温度もそれに追従して上昇する。こうし
て発熱体2と測温素子3により経時的に測温する。図3
において、曲線10は発熱体2で検出される温度、曲線
11は測温素子3で検出される温度、曲線12はこれら
発熱体2と測温素子3の温度差をそれぞれ経時的に表し
たグラフである。図示のように、両者の温度差はある時
間を経過するとやがて一定の温度差Δθを保つようにな
り、準定常域となる。なお、図1の装置では物質1を外
部から冷却する冷却容器7を備えているので、両者の温
度差は準定常域となった後は一定の温度差Δθを保つこ
ととなるが、そのような冷却手段を備えていない場合に
は、発熱体2と測温素子3で検出される温度はそれぞれ
半永久的に上昇し続けることとなり、両者の温度差は次
第になくなる傾向を示す。そして、発熱体2と測温素子
3の温度差が一定温度差を保つようになったときの温度
差の値Δθを求める。次いで、発熱体と測温素子の温度
差が発熱開始から上記一定温度差Δθの1/Nの値に到
達するまでの時間Δtを求める。なお、温度差は緩やか
に推移して行くので、一定温度差Δθとなったか否か、
即ち準定常域に到達したか否かを決定するには、例えば
演算装置を利用して差分法などによる数値解析で判定す
るとよい。また、Δtが非定常域における時間となるよ
うにするために、Nの値は1より大きい値であることが
必要である。その理由は、上述したように定常域での熱
伝導は熱伝導率が影響するからであり、熱伝導が温度伝
導率に支配される非定常域において測定を行う必要があ
るからである。実施例においてはN=2と定めている。
その主な理由はN=2とすると計算が容易だからであ
る。
【0008】また、以上のような測定において発熱体2
と測温素子3の距離Lが短くなると両者の温度差は小さ
くなる傾向を示す。図4は発熱体2と測温素子3の距離
Lと温度差の関係を示すグラフであり、曲線13は両者
の距離Lが10mmの時の温度差を経時的に示すもので
あり、曲線14は両者の距離Lが8mmの時の温度差を
経時的に示している。曲線15は発熱体の温度を経時的
に示している。図示のように、発熱体2と測温素子3の
距離Lが短くなると両者の温度差は小さくなるので、測
定時間を短くできるようになるが、非定常域において温
度差Δθの1/Nの値に到達するまでの間においては、
曲線13と曲線14は殆ど重複した格好になり、大きな
差が表れない。しかし、発熱体2と測温素子3の距離L
が短くなるほどNは大きな値としたほうがよい。
【0009】図5は発熱体2の発熱量を変えた場合の温
度差の変化を示したものである。発熱体2として金属細
線を内蔵した発熱センサーを使用し、図中曲線16は印
加電圧が1. 3Vの時の発熱体2の温度、曲線17はそ
の時の発熱体2と測温素子3の温度差をそれぞれ示して
いる。また、曲線18は印加電圧が1.4Vの時の発熱
体2の温度、曲線19はその時の発熱体2と測温素子3
の温度差をそれぞれ示している。図示のように発熱量が
大きくなると準定常域に到達したときの温度差ΔTも大
きく表れるようになり、測定時間は短くなる。なお、準
定常域に到達したときの温度差ΔTの1/Nになるまで
の時間ΔtはNの設定により差の無い値を得ることが可
能である。
【0010】以上のような測定を物性(温度伝導率を含
む)が既知の多数の物質について行い、各物質それぞれ
の温度差ΔTの1/Nの温度差に到達するまでの時間Δ
tを計測して各物質の既知である温度伝導率から較正曲
線を定めたものが図6である。なお、測定は塩化ビニル
樹脂、有機質土、花崗岩、マグネシア、ニッケル、クロ
ム、ナトリウム、純銀、エチレングリコールの9種類の
物質について行い、発熱体2と測温素子3の温度差が一
定幅で安定したときの温度差ΔTの1/2の温度差に到
達するまでの時間Δtと各物質の既知である温度伝導率
aとの関係を両対数グラフにプロットすることにより、
図中の較正曲線20を得た。空気と水については実際に
測定せずに理論解析から求めた値をプロットした。ま
た、図1に示したように、測定対象物質を冷却容器7で
冷却して測定し、発熱体2と測温素子3の距離Lは9m
mに設定した。なお、Nを2でない値に定めた場合や発
熱体2と測温素子3の距離Lを変えた場合には、図6と
異なる較正曲線となるので、そのような場合は改めて同
様の測定を行い較正曲線を定める必要がある。
【0011】次に、こうして求めた較正曲線20に基づ
いて温度伝導率が未知の物質の温度伝導率を求める実験
を行った。その結果を以下に示す。 (実験例1) 被測定物質として80℃に加熱したサラダ油に油凝固剤
(商品名テンプル−ジョンソン株式会社製)を13.5
g/400mlの割合で配合して常温に冷却したものを
使用した。発熱体2と測温素子3の距離Lを9mm、発
熱体2の印加電圧を1.3Vとし、発熱開始温度は常温
である27℃とした。図7はその実験の結果を示すグラ
フであり、図中曲線23は両者の温度差を時間の経過と
共に表したものである。この実験において、発熱体2と
測温素子3の到達した一定の温度差ΔTは23℃であ
り、その1/2の値(11.5℃)になるまでの時間Δ
tは0.4分(24.5秒)であった。 この時間Δt
(24.5秒)から図6の較正曲線20を用いて点線2
4のようにしてこの物質の温度伝導率aを求めたとこ
ろ、0.54×10-32 /hとなった。
【0012】(実験例2) ゼラチン20%のゲル試料を用いてその温度伝導率を調
べたところ、図8に示す温度差の推移曲線が得られ、発
熱体2が25℃のとき発熱体2と測温素子3の温度差Δ
Tが2.8℃で安定した。これより、温度差ΔTの1/
2の値(1.4℃)になるまでの時間Δtは0.2分
(12秒)であることが解り、この時間Δt(12秒)
から図6の較正曲線20を用いてこの物質の温度伝導率
aを求めたところ、1.1×10-32 /hとなった。
なお、測定は1/1000時間単位で行い、温度変化を
記録したものである。
【0013】次に、このようにして求められた温度伝導
率の真偽について考察する。既知文献である「分散系混
合物の有効温度伝導率」日本機械学会論文集(B編)5
6巻21号(1990−1)によると、アクリルを母材
とし、酸化チタン(TiO2 )を分散材としたときの温
度伝導率比αe* 各材における容積比Φv(%)の関係
が示されている。 温度伝導率比 = 分散材の温度伝導率 / 母材の温度伝導率比 で示されており、この資料によれば、アクリルと酸化チ
タンの温度伝導率比は35.4である。温度伝導率比は
無次元数なので、この比が上記資料に使用された母材
(アクリル)と同じとなるように配合した別の母材を使
用して分散材である酸化チタンとの分散混合物として温
度伝導率比を容積比との関係で調べたとき、上記資料の
母材(アクリル)における関係図と同じ傾向を示すもの
であれば別の母材の温度伝導率は正しいものであると判
断できる。先の実験例1で求められた食用油と凝固剤の
混合物の温度伝導率は図6の較正曲線から求めたもので
あるが、同様の実験により食用油と酸化チタンを混合し
たものについての温度伝導率を調べると図9のような結
果が得られた。この測定結果からこの混合物の温度伝導
率は0.8×10-32 /hが導かれ、各濃度における
温度伝導率比は図10(表1)のようになった。なお、
酸化チタンの温度伝導率は3.02mm2 /sであるこ
とからディメンションをあわせて計算すると容積比0%
のときの温度伝導率比は35.53であり、上記資料と
同じアクリルを母材とした混合物の比と同じであるため
比較が可能となる。
【0014】図11はこうして算出された温度伝導率比
を上記資料に示された温度伝導率比と容積比の関係図に
照合させたものを示しており、図示のように、母材がア
クリルである場合と実験例1のように母材が油である場
合において、一致していることがわかる。従って、上記
資料では分散系混合物において粒子容積比が0.25以
下で求められる温度伝導率が適切値である結果を得てお
り、同容積比の範囲において資料における母材と同じ温
度伝導率である実験例1の食用油を母材とした結果の相
似性から実験例1の食用油の温度伝導率が適切であると
判断できる。もし、食用油の温度伝導率が実質的に異な
っていた場合は、分散系混合物にて温度伝導率の検証を
行った上記資料の方法に即した結果は、資料のアクリル
が示す温度伝導率比の傾向と異なった傾向を示し、食用
油の温度伝導率は間違いであると判断できる。つまりは
図6の較正曲線を利用して求めた物質の温度伝導率が適
切であり、較正曲線の利用について問題がないことが立
証される。ちなみに、寒天についても実験例のようにし
て温度伝導率を求めると、温度伝導率が0.147mm
2 /s(0.529×10-32 /h)であり、これを
母材とする酸化チタンとの各容積比における温度伝導率
比を求めてみると、図12(表2)のようになり、図1
1のごとく実験例1の油よりも小さな傾斜を示す。寒天
の場合は温度伝導率が実験例1の油よりも大きいことか
ら、その温度伝導率比は小さくなることが当然であり、
理論的な考察と実際とが相似した。
【0015】なお、以上においては、N=2とした場合
の各種実験結果を示したが、Nを2でない値に定めた場
合や発熱体2と測温素子3の距離Lを変えた場合には、
図6と異なる較正曲線となるので、そのような場合は改
めて同様の測定を行い較正曲線を定める必要があること
は上記した通りである。但し、N>1とすることが条件
である。なお、もし被測定物質において環境温度が激し
く変化して物質自体の温度も変化し、それによって温度
伝導率も変化するような場合には、各温度における温度
差の1/Nの温度差に到達する時間と温度伝導率の相関
関係を予め得ておくなどの方法により、その相関関係か
ら温度伝導率を決定する手段も考えられる。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、各種設計基礎値や製品
品質の安定のための物性値として重要な温度伝導率を迅
速に求めることができ、各種材料、原料の熱拡散の状況
や状態を迅速に把握できる。密度や比熱が既知の物質の
場合には熱伝導率を参照にすることもできるが、この様
な物性値は多くの場合は不明であり、本発明のように温
度伝導率を求めて熱拡散の状況や状態を把握することが
最も適当である。その具体例としては、例えば、パルプ
原料の調合における材料の温度伝導率の制御や食品原料
の調合における熱変質の防止のための制御用基礎値、樹
脂加工等における加熱時間の制御基礎値等を得る場合な
どをあげることができる。また、各種形状物、特に食品
などにおいて製品を冷却や加熱操作する際の熱拡散の状
況や状態が把握できるようになり、製品形状や包装形
態、加熱、冷却時間の設定や加熱、冷却装置の能力、形
式の決定などの基礎値として温度伝導率を利用できる。
即ち、従来はこれらを決定する場合、経験的な把握や安
全率を高くしてカバーするようにしているが、本発明に
よれば製品の出来高や生産速度を加味して適切な設計が
可能になるので、エネルギーの省力化やコストの低減を
図ることができる。また、本発明によれば従来行われて
いる温度伝導率の測定法であるオングストローム法やフ
ラッシュ法に比較して測定装置の規模が小さくて済み、
加えて製造工程などにおけるインラインでの計測ができ
るようになる。しかも、計測装置が簡単に構成でき、保
守もしやすい利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するための測定装置の部分断
面図
【図2】本発明方法を実施するための測定装置の部分断
面図
【図3】発熱体と測温素子で検出される温度、発熱体と
測温素子の温度差をそれぞれ経時的に表したグラフ
【図4】発熱体と測温素子の距離と温度差の関係を示す
グラフ
【図5】発熱体の発熱量と温度差の関係を示すグラフ
【図6】時間Δtと温度伝導率の較正曲線を示すグラフ
【図7】実験例1の測定結果を示すグラフ
【図8】実験例2の測定結果を示すグラフ
【図9】食用油と酸化チタンを混合したものについての
温度伝導率を示すグラフ
【図10】食用油と酸化チタンを混合したものについて
の各濃度における温度伝導率比を示す表1
【図11】温度伝導率比を照合させたグラフ
【図12】寒天についての各濃度における温度伝導率比
を示す表2
【符号の説明】
1 物質 2、4 発熱体 3、5、6 測温素子

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 発熱体から異なる距離にある少なくとも
    二つの測温素子を物質内に配置し、発熱体を発熱せしめ
    てそれら測温素子の温度差が一定温度差を保つようにな
    ったときの該温度差を求め、それら測温素子の温度差が
    発熱体の発熱開始からNを1より大きい値とする前記一
    定温度差の1/Nの値に到達するまでの時間から物質の
    温度伝導率を得ることを特徴とする温度伝導率の計測方
    法。
  2. 【請求項2】 自ら発熱し、かつ自らの温度を検出可能
    な発熱体内蔵もしくは兼用素子と測温素子を物質内に配
    置し、発熱体を発熱せしめて発熱体と測温素子の温度差
    が一定温度差を保つようになったときの該温度差を求
    め、発熱体と測温素子の温度差が発熱開始からNを1よ
    り大きい値とする前記一定温度差の1/Nの値に到達す
    るまでの時間から物質の温度伝導率を得ることを特徴と
    する温度伝導率の計測方法。
  3. 【請求項3】 二種以上の物性既知の物質を用いて請求
    項1又は2の方法でNを1より大きい値とする各物質の
    温度差の1/Nの温度差に到達する時間を計測して各物
    質の既知である温度伝導率から較正曲線を定め、この較
    正曲線に基づいて温度伝導率が未知の物質の温度伝導率
    を求めることを特徴とする温度伝導率の計測方法。
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