JP2958453B1 - ブドウ科植物の再分化可能なカルスを形成する方法 - Google Patents

ブドウ科植物の再分化可能なカルスを形成する方法

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JP2958453B1 JP10081750A JP8175098A JP2958453B1 JP 2958453 B1 JP2958453 B1 JP 2958453B1 JP 10081750 A JP10081750 A JP 10081750A JP 8175098 A JP8175098 A JP 8175098A JP 2958453 B1 JP2958453 B1 JP 2958453B1
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  • Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【要約】 【課題】 ブドウ科植物の再分化可能なカルスを形成す
る方法を提供する。 【解決手段】 葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に
変わる直前の時期にある花器の未受精胚珠から再分化可
能なカルスを誘導することを特徴とする、ブドウ科植物
の再分化可能なカルスを形成する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、植物のカルスを形
成する方法、カルスの増殖や再分化の方法、および植物
体の作出方法に関し、より詳細には、ブドウ科植物の再
分化可能なカルスを形成する方法、該カルスの増殖や再
分化の方法、および該カルスから植物体を作出する方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】ブドウは、その果実が嗜好品として食さ
れたり、ワインの原料として利用されている種子植物の
一つであり、品種改良により種々の品種が作り出されて
いる。とりわけ、「巨峰」は果粒が大粒で食味が良いた
め、わが国のブドウの中では最も生産量が多く、年間71
40トンもの量で生産され、栽培面積は全ブドウの栽培面
積の30%を占めている。「巨峰」は「キャンベルアー
リー」の枝変わりにより生じた4倍体品種「石原早生」
Vitis labruscana) と「ロザキ」の枝変わりにより生
じた4倍体品種「センテニアル」(Vitis vinifera) と
の交雑により生じた品種である。これまでこの品種は再
分化系が確立されていなかったため形質転換技術を用い
ることができなかった。
【0003】ブドウで、再分化能を有するカルス(embr
yogenic callus:EC)あるいは体細胞胚を直接分化さ
せる系としては、培養する材料として葯を用いる系(Hi
rabayashi T, Kozaki I, Akihama T (1976) Hort Scien
ce 11(5):511-512; Rajasekaran K, Mullins MG (1979)
Journal of Experimental Botany 30(116):399-407;Ra
jasekaran K, Mullins MG (1983) Agronomie 3(3):233-
238; Hirabayashi T,Akihama T (1982) Proc. 5th Int
l. Cong. Plant Tissue & Cell Culture Plant Tissue
Culture 547-548; Mauro Mcl, Nef C, Fallot J (1986)
Plant Cell Reports 5:377-380; Gray DJ, Mortensen
JA (1987) Plant Cell. Tissue and Organ Culture 9:7
3-80; Stamp JA, Meredith CP (1988) Scientia Hortic
ulturae35:235-250; Harst-Langenbucher M, Allweldt
G (1993) Vitis 32:1-7; Nakano M, Sakakibara T, Wat
anabe Y, Mii M (1997) Vitis 36(3):141-145)、未受精
胚珠を用いる系(Mullins MG, Sriniasan C (1976) Jou
rnal of Experimental Botany 27(100): 1022-1030; Sr
inivasan C, Mullins MG (1980) Scientia Horticultur
ae 13:242-252; Notsuka K, Tsuru T, Matsumoto R (19
92) Journal of the Japanese Society for Horticultu
ral Science 61(SUPPL.2):98-99 (in Japanese))、葉を
用いる系(Hirabayashi T (1985) Collepue Ameliorati
on de la vigne et culture in vitro. Meot-Hennessy,
Paris, pp.75-82; Stamp JA, Meredith CP (1988) Sci
entia Horticulturae 35:235-250; Matsuta N, Hirabay
ashiT (1989) Plant Cell Reports 7:684-687; Harst M
(1995) Vitis 34(1):27-29; Nakano M, Sakakibara T,
Watanabe Y, Mii M (1997) Vitis 36(3):141-145)、子
房(未受精)を用いる系(Gray DJ, Mortensen JA (198
7) Plant Cell. Tissue and Organ Culture 9:73-80; N
akano M, Sakakibara T, Watanabe Y, Mii M(1997) Vit
is 36(3):141-145)が知られている。「巨峰」において
は葯(Hirabayashi T (1985) Collepue Amelioration d
e la vigne et culture in vitro. Meot-Hennessy, Par
is, pp.75-82; Nakano M, Sakakibara T, Watanabe Y,
Mii M(1997) Vitis 36(3):141-145) 、葉(Hirabayashi
T (1985) Collepue Amelioration de la vigne et cul
ture in vitro. Meot-Hennessy, Paris, pp.75-82; Nak
ano M, Sakakibara T, Watanabe Y, Mii M (1997) Viti
s 36(3):141-145) と子房(Nakano M, Sakakibara T, W
atanabe Y, Mii M (1997) Vitis 36(3):141-145) を用
いてECの誘導が試みられているが未だに成功していな
い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、ブ
ドウ科植物の再分化可能なカルスを形成する新規な方法
を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、葯壁の色
が澄んだ黄色から濁った黄色に変わる直前の時期にある
花器の未受精胚珠を用いることによって、再分化可能な
カルスを誘導できることを見い出し、本発明を完成させ
るに至った。すなわち、本発明は、葯壁の色が澄んだ黄
色から濁った黄色に変わる直前の時期にある花器の未受
精胚珠から再分化可能なカルスを誘導することを特徴と
する、ブドウ科植物の再分化可能なカルスを形成する方
法を提供する。葯壁の色について、澄んだ黄色とは透明
な黄色を意味し、濁った黄色とは不透明な黄色を意味
し、ここで黄色としては、JIS標準色票における以下
の番号のものまたはそれらの色に近いものを挙げること
ができる。
【0006】 2.5Y:明度9彩度4、明度8彩度8〜14 5Y:明度9彩度3〜6、明度8彩度10〜12 7.5Y:明度9彩度4〜8、明度8彩度8〜12 10Y:明度9彩度4〜8 2.5GY:明度9彩度6〜8 葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に変わる直前の時
期は、開花の19〜21日前であるとよい。オーキシン
類の植物ホルモンとサイトカイニン類の植物ホルモンを
含む培地で、20〜30℃の温度にて、1ケ月以上培養
することにより、未受精胚珠から再分化可能なカルスを
誘導することができる。培地としては、MS、1/2M
S、NN、またはそれらに組成が近い培地などを用いる
ことができる。培養は、明または暗、振とう(液体培地
中)または静置(固体培地上)のいずれの条件下で行っ
てもよい。明条件としては、1,000 〜10,000 Luxの照度
で市販の蛍光灯からの光の照射を受けている状態が挙げ
られる。培養の期間は、1ケ月〜1年間が好ましい。
【0007】また、本発明は、葯壁の色が澄んだ黄色か
ら濁った黄色に変わる直前の時期にある花器の未受精胚
珠から誘導した再分化可能なカルスを体細胞胚に再分化
させることを特徴とする、ブドウ科植物のカルスの再分
化方法を提供する。寒天濃度が0.7〜3%のホルモンフ
リー培地で、20〜30℃の温度にて、2週間以上、静
置条件下で培養することにより、再分化可能なカルスを
体細胞胚に再分化させることができる。培地としては、
MS、1/2MS、NN、またはそれらに組成が近い培
地などを用いることができる。培養は、明または暗のい
ずれの条件下で行ってもよい。明条件としては、1,000
〜10,000 Luxの照度で市販の蛍光灯からの光の照射を受
けている状態が挙げられる。培養の期間は、2週間〜2
ケ月が好ましい。静置培養は、固体培地上で行うことが
できる。
【0008】さらに、本発明は、葯壁の色が澄んだ黄色
から濁った黄色に変わる直前の時期にある花器の未受精
胚珠から誘導した再分化可能なカルスを増殖させること
を特徴とする、ブドウ科植物の再分化可能なカルスの増
殖方法を提供する。前記の再分化可能なカルスは、オー
キシン類の植物ホルモンを含み、寒天濃度が0.7〜3%
の培地で、20〜30℃の温度にて、1ケ月以上、静置
条件下で培養することにより、増殖させることができ
る。培地としては、MS、1/2MS、NN、またはそ
れらに組成が近い培地などを用いることができる。培養
は、明または暗のいずれの条件下で行ってもよい。明条
件としては、1,000 〜10,000 Luxの照度で市販の蛍光灯
からの光の照射を受けている状態が挙げられる。培養の
期間は、1ケ月〜1年間が好ましい。静置培養は、固体
培地上で行うことができる。
【0009】さらにまた、本発明は、葯壁の色が澄んだ
黄色から濁った黄色に変わる直前の時期にある花器の未
受精胚珠から再分化可能なカルスを誘導し、該カルスか
ら植物体を再生させることを特徴とする、ブドウ科植物
の作出方法を提供する。この方法においては、オーキシ
ン類の植物ホルモンとサイトカイニン類の植物ホルモン
を含む培地で、20〜30℃の温度にて、1ケ月以上培
養することにより、未受精胚珠から再分化可能なカルス
を誘導し、次いで、寒天濃度が0.7〜3%のホルモンフ
リー培地で、20〜30℃の温度にて、2週間以上、静
置、暗条件下で該カルスを培養し、体細胞胚が伸長した
段階で、暗条件を明条件に代えて培養を続けることによ
り、植物体を再生させることができる。あるいまた、オ
ーキシン類の植物ホルモンとサイトカイニン類の植物ホ
ルモンを含む培地で、20〜30℃の温度にて、1ケ月
以上培養することにより、未受精胚珠から再分化可能な
カルスを誘導し、次いで、寒天濃度が0.7〜3%のホル
モンフリー培地で、20〜30℃の温度にて、1ケ月以
上、静置、明条件下で該カルスを培養することにより、
植物体を再生させることができる。未受精胚珠の培養の
ための培地、明暗の条件、振とうまたは静置条件、培養
期間については上記のとおりである。再分化可能なカル
スの培養については、培地として、MS、1/2MS、
NN、またはそれらに組成が近い培地などを用いること
ができる。最初は暗条件下で、次いで明条件下でカルス
を培養する場合には、体細胞胚が約 0.3〜1.0 cmに伸長
するまで、2週間〜2ケ月培養した後、暗条件を明条件
に代えて、さらに2週間〜2ケ月培養を続ければ、本葉
を有する植物体を得ることができる。最初から明条件下
でカルスを培養する場合には、再分化可能なカルスを1
〜3ケ月培養すれば、本葉を有する植物体を得ることが
できる。明条件としては、1,000 〜10,000 Luxの照度で
市販の蛍光灯からの光の照射を受けている状態が挙げら
れる。静置培養は、固体培地上で行うことができる。
【0010】本発明において、ブドウ科植物は、Vitis
属に属するものであるとよく、具体的には、Vitis labr
uscana(アメリカブドウ)、Vitis vinifera(ヨーロッ
パブドウ)、Vitis riparia(Riverbank grape)、Vitis
rupestris(Sand grape) およびそれらの種間雑種から
なる群より選択される種に属するものであるとよく、好
ましくは、巨峰の品種または巨峰との交配により得られ
る品種に属するとよい。本発明は、また、ブドウ科植物
の品種である巨峰のカルスの状態にある再分化可能な細
胞を提供する。本発明により確立された上記の技術は、
ブドウ科植物の形質転換に利用することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、ブドウ科の植物として巨峰
を例にとり、本発明を詳細に説明する。 1.再分化可能なカルスの誘導および再分化 開花19〜21日前の花で黄色い透明な葯を持つ花器から未
受精胚珠を無菌的に取り出し、培養する。培地として
は、1/2MS (Murashige T, Skoog F (1962) Physiol Pla
nt. 15:473-497) 液体培地を用いるとよく、かかる培地
は、オーキシン類の植物ホルモンとして 0.1〜10μM の
2,4-D (2,4-dichlorophenoxyacetic acid)と、サイトカ
イニン類の植物ホルモンとして 0.1〜10μM の4PU (N-
(2-chloro-4-pyridyl)-N'-phenylurea)あるいは 0.1〜1
0μM のTDZ (thidiazuron:N-1.2.3-thiadiazol-5-yl)-
N'-phenylurea)を含むとよい。この他にも、オーキシン
類の植物ホルモンとして、2,4,5-T (2,4,5-trichloroph
enoxyacetic acid)、インドール酢酸、ナフタレン酢
酸、サイトカイニン類の植物ホルモンとして、ゼアチ
ン、トランス−リボシルゼアチン、カイネチン、ベンジ
ルアデニンを同濃度で含んでもよい。上記の培地を100
mlのフラスコ1個当たり10〜30 ml ずつ分注し、pHを
5.5〜5.8 に調整して、滅菌する。前記の未受精胚珠を
無菌的に取り出し、5〜30個の胚珠を1つのフラスコへ
置床し、20〜30℃の暗黒条件下で40〜100 rpmで振とう
培養する。培養物は、1〜3ケ月後に同じ培地へ継代し
た後、 0.5〜1.5ケ月に1回継代を行うとよい。
【0012】置床後約1ケ月で、クリーム色のカルスが
発生する。このカルスは、培養を続けると、大きさが増
し、置床から3ケ月後にはカルスの表面が部分的に褐変
し、一部のカルスの表面からは細胞塊がこぼれ落ちはじ
める。この細胞塊を寒天濃度が 0.7〜3%でスクロース
あるいはマルトース2〜10%を含んだ改変1/2MS ホルモ
ンフリー培地へ移して、20〜30℃の温度にて、明ま
たは暗、2週間以上、静置(固体培地上)条件下で培養
すると、約1ケ月後には体細胞胚(somatic embryo) を
形成する。このことから、この細胞塊がECであること
がわかる。
【0013】このようにして得られるECに、外来遺伝
子を導入することにより、形質転換植物を作出すること
ができる。植物の形質転換方法については、Matsuta,
N., H. Iketani and T. Hayashi (1993) Techniques on
Gene Diagnosis and Breeding in Fruit Trees (FTRS/
Japan); Gall, O. Le, L. Torregrosa, Y. Danglot, T.
Candresse and A. Bouquet (1994) Plant Science 10
2:161-170; Martinelli,L. and G. Mandolino (1994) T
heor Appl Genet 88:621-628 に記載されているので、
これらを参照するとよい。植物体に再分化させるのに、
一度増殖させたECを用いる場合、増殖は寒天濃度の高
い(例えば、3%)培地で行うのが好ましい。
【0014】2.再分化可能なカルスの増殖 1で得られた細胞塊状のカルスを寒天濃度が 0.7〜3%
でスクロースあるいはマルトース2〜10%を含んだ改変
1/2MS 培地にオーキシン類の植物ホルモン (好ましく
は、 0.5〜5μM 2,4-D )を加えた培地へ移して、20
〜30℃の温度にて、明または暗、1ケ月〜1年間、静
置(固体培地上)条件下で培養すると、体細胞胚の混じ
った状態で細胞塊状のカルスを増殖させることができ
る。長期間再分化能を保持させるためには、寒天濃度は
従来の 0.7〜1%よりは高い方が好ましい。
【0015】3.植物体の再生 1で得られた細胞塊状のカルスを 0.7〜3%の寒天濃度
の上記の改変1/2MS 培地へ移し、暗条件下で培養し、体
細胞胚が伸長した段階で、暗条件を明条件に代えて培養
を続ける方法、あるいは常に明条件下で培養する方法で
培養すると、1ケ月から2.5ケ月で本葉を有する植物体
が得られる。植物体はポットへ移植し、馴化させるとよ
い。以上、ブドウ科の植物として巨峰を例にとり、本発
明の好ましい態様について説明したが、当業者であれ
ば、上記の方法の改良やブドウ科の植物の種類に応じた
種々の変更が可能であり、本発明はそれらの改良や変更
がなされた方法も含むものである。本発明を以下の実施
例により具体的に説明する。本発明の範囲はこれらの実
施例に限定されるものではない。
【0016】
【実施例】〔材料及び方法〕開花19〜21日前の花で黄色
い透明な葯を持つ花と開花6〜7日前の花から、未受精
胚珠を実体顕微鏡下で無菌的に取り出し、培養に用い
た。培地はオーキシン類の植物ホルモンとして1μM の
2,4-D (2,4-dichlorophenoxyacetic acid)と、サイトカ
イニン類の植物ホルモンとして0.2μM の4PU (N-(2-ch
loro-4-pyridyl)-N'-phenylurea)あるいは0.2, 1.5μM
のTDZ (thidiazuron:N-1.2.3-thiadiazol-5-yl)-N'-phe
nylurea)を含む1/2MS (Murashige T, Skoog F (1962) P
hysiol Plant. 15:473-497) 液体培地を用い、1フラス
コ当り20ml分注し、pH5.7 に調整した後、オートクレ
ーブにかけ、滅菌した。胚珠は実体顕微鏡下で無菌的に
取り出した。20胚珠を1つのフラスコへ置床し、26℃暗
黒条件下で60rpm で振とう培養した。それぞれの処理区
については5回反復を行った。2ケ月後に同じ培地へ継
代したのちは、1ケ月に1回継代を行った。
【0017】〔結果及び考察〕置床後約1ケ月経つと、
開花19〜21日前の胚珠からは大きさが5mm程度のクリー
ム色のカルスが発生した。カルスはその後大きさを増
し、置床から3ケ月後にはカルスの表面が部分的に褐変
した。また、一部のカルスの表面からは、1mm位の顆粒
状のクリーム色の細胞塊がこぼれ落ちはじめた(図1、
表1)。細胞塊を寒天濃度が3%でスクロースのかわり
にマルトース5%を含んだ改変1/2MS ホルモンフリー培
地へ移したところ、約1ケ月後に体細胞胚(somatic em
bryo) を形成した(図2)。このことから、細胞塊はE
Cであったと考えられた。ECは1μM 2,4-D と0.2μ
M 4PU あるいは0.2, 1.5μM TDZ の組合せのいずれの培
地に置床したものからも得られた。また、ECを誘導で
きた胚珠の数には差がなかった。一方、開花6〜7日前
の胚珠からのカルスの誘導割合は開花19〜21日前の
胚珠に比べて低く、ECは得られなかった(表1)。
【0018】得られたECを誘導に用いた液体培地で継
代したところ褐変、枯死した。そのため、改変1/2MS 培
地に1μM 2,4-D だけを加えた培地へECを移したとこ
ろ、体細胞胚の混じった細胞塊状のカルスの状態で増殖
でき、1ケ月で大きさは約2倍になった。このカルスは
1年間継代を続けているが、現在も高い再分化能を有し
ている。
【0019】この細胞塊状のカルスを0.85%の寒天濃度
の改変1/2MS 培地へ移すと、1ケ月から2.5ケ月で本葉
を有する植物体が得られた。植物体はポットへ移植し、
馴化を行った(図3)。培地の植物ホルモンに関して
は、1μM 2.4-D と0.2μM 4PU あるいは0.2, 1.5μM
TDZ の組合せで、開花前19〜21日の未受精胚珠でECが
誘導されたことから、4PU とTDZ の有用性が確認され
た。
【0020】用いる未受精胚珠のステージに関しては、
6〜7日前の花の未受精胚珠を用いたところECは得ら
れなかった。我々は、葯壁の色で花のステージが識別で
きると考え、葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に変
わる直前の時期を目安にして、そのステージの未受精胚
珠を培養に用いた。また、このステージの未受精胚珠
は、実体顕微鏡下で分離できる最小の大きさである。予
備実験として、室温で栽培していたVitis riparia (雄
株)で、このステージの未受精胚珠を培養したところ、
ECが得られた。しかし、同じ品種の開花直前の未受精
胚珠を用いたところECは得られなかった。「巨峰」に
おいても、葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に変わ
る直前のステージの未受精胚珠を培養したところ、EC
が誘導できたことから、用いる材料のステージが重要で
あることがわかる。
【0021】葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に変
わる直前の時期である開花前19〜21日というこれまでに
試されたことのなかったステージの未受精胚珠を培養に
用いることで、「巨峰」でECを初めて誘導できた。そ
れゆえ、この方法を用いることでこれまでECの誘導が
難しいと考えられている他の品種からも、ECが得られ
るようになると考えられる。
【0022】
【表1】
【0023】
【発明の効果】本発明により、ブドウ科植物の再分化可
能なカルスを誘導することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】「巨峰」の未受精胚珠由来カルスからの細胞塊
(ECの誘導)の写真。
【図2】細胞塊(EC)からの体細胞胚の誘導を示す写
真。
【図3】細胞塊(EC)から体細胞胚を経て再生した植
物体の写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 Hort Science,Vol. 28,No.3,(1993),p.2271 九州農業研究成果情報、No.9, (1994),p.605−606 果実日本、Vol.51,No.10, (1996),p.48−51 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A01H 4/00 C12N 5/00 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に
    変わる直前の時期にある花器の未受精胚珠から再分化可
    能なカルスを誘導することを特徴とする、ブドウ科植物
    の再分化可能なカルスを形成する方法。
  2. 【請求項2】 葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に
    変わる直前の時期が開花の19〜21日前である請求項
    1記載の方法。
  3. 【請求項3】 オーキシン類の植物ホルモンとサイトカ
    イニン類の植物ホルモンを含む培地で、20〜30℃の
    温度にて、1ケ月以上培養することにより、未受精胚珠
    から再分化可能なカルスを誘導する請求項1記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 ブドウ科植物がVitis属に属するもので
    ある請求項1記載の方法。
  5. 【請求項5】 ブドウ科植物が、Vitis labruscanaVi
    tis viniferaVitis ripariaVitis rupestrisおよび
    それらの種間雑種からなる群より選択される種に属する
    ものである請求項4記載の方法。
  6. 【請求項6】 ブドウ科植物が、巨峰の品種または巨峰
    との交配により得られる品種に属する請求項4記載の方
    法。
  7. 【請求項7】 葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に
    変わる直前の時期にある花器の未受精胚珠から誘導した
    再分化可能なカルスを体細胞胚に再分化させることを特
    徴とする、ブドウ科植物のカルスの再分化方法。
  8. 【請求項8】 寒天濃度が0.7〜3%のホルモンフリー
    培地で、20〜30℃の温度にて、2週間以上、静置条
    件下で培養することにより、再分化可能なカルスを体細
    胞胚に再分化させる請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】 葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色に
    変わる直前の時期にある花器の未受精胚珠から誘導した
    再分化可能なカルスを増殖させることを特徴とする、ブ
    ドウ科植物の再分化可能なカルスの増殖方法。
  10. 【請求項10】 オーキシン類の植物ホルモンを含み、
    寒天濃度が0.7〜3%の培地で、20〜30℃の温度に
    て、1ケ月以上、静置条件下で培養することにより、再
    分化可能なカルスを増殖させる請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 葯壁の色が澄んだ黄色から濁った黄色
    に変わる直前の時期にある花器の未受精胚珠から再分化
    可能なカルスを誘導し、該カルスから植物体を再生させ
    ることを特徴とする、ブドウ科植物の作出方法。
  12. 【請求項12】 オーキシン類の植物ホルモンとサイト
    カイニン類の植物ホルモンを含む培地で、20〜30℃
    の温度にて、1ケ月以上培養することにより、未受精胚
    珠から再分化可能なカルスを誘導し、次いで、寒天濃度
    が0.7〜3%のホルモンフリー培地で、20〜30℃の
    温度にて、2週間以上、静置、暗条件下で該カルスを培
    養し、体細胞胚が伸長した段階で、暗条件を明条件に代
    えて培養を続けることにより、植物体を再生させる請求
    項10記載の方法。
  13. 【請求項13】 オーキシン類の植物ホルモンとサイト
    カイニン類の植物ホルモンを含む培地で、20〜30℃
    の温度にて、1ケ月以上培養することにより、未受精胚
    珠から再分化可能なカルスを誘導し、次いで、寒天濃度
    が0.7〜3%のホルモンフリー培地で、20〜30℃の
    温度にて、1ケ月以上、静置、明条件下で該カルスを培
    養することにより、植物体を再生させる請求項10記載
    の方法。
  14. 【請求項14】 請求項1記載の方法により形成した再
    分化可能なカルスの状態にある、ブドウ科植物の品種で
    ある巨峰の細胞。
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九州農業研究成果情報、No.9,(1994),p.605−606
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