JP2956284B2 - 地熱坑井の最大締切圧力および最高温度の予測法 - Google Patents

地熱坑井の最大締切圧力および最高温度の予測法

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JP2956284B2 JP16471991A JP16471991A JP2956284B2 JP 2956284 B2 JP2956284 B2 JP 2956284B2 JP 16471991 A JP16471991 A JP 16471991A JP 16471991 A JP16471991 A JP 16471991A JP 2956284 B2 JP2956284 B2 JP 2956284B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、地熱坑井のケーシング
プログラムおよび坑口装置の基本設計を行うための、地
熱坑井の坑口締切時における当該坑口の圧力の最大値
(以下、最大締切圧力と称する)および最高温度の予測
法に関する。
【0002】
【従来の技術】地下温度が高い地域において、地熱蒸気
を始めとする高温高圧の地熱流体を発電その他の目的に
利用するためには、地熱坑井を掘削する必要がある。こ
の坑井は、通常、掘削孔内に挿入された鋼製のケーシン
グパイプと、その周囲に充填され、前記掘削孔内におけ
る前記ケーシングパイプの安定性を向上させるセメント
ミルクの固化体とが一体となった深度数千メートルにも
及ぶ構造物で、地中における前記地熱流体の貯留箇所
(以下、リザーバーと称する)から、前記地熱坑井の下
端あるいは側面に形成された開口部(以下、フィードポ
イントと称する)を経て前記地熱坑井内に流入する前記
地熱流体を、その圧力により前記地熱坑井の上端に設け
られた坑口から地上に噴出させるものである。また、前
記坑口にはバルブが装着されており、このバルブを締め
ることにより、前記坑口からの噴気が停止される。
【0003】ここで、前記地熱坑井の坑口における圧力
は、前記バルブを締め噴気を停止させると逐次上昇し、
最大となった後緩慢に低下する。また、この坑口圧力が
最大となった時点では、前記坑口付近の蒸気温度も最大
となることが知られている。
【0004】ところが、この最大締切圧力およびその時
点における温度を事前に予測する方法については、従来
ほとんど検討されていなかった。そのため、上記従来の
地熱坑井においては、最大締切圧力およびその時点にお
ける蒸気温度は専ら経験に依存して推定されていた。そ
して、その推定に基づき、前記地熱坑井におけるケーシ
ングプログラムや、前記バルブを始めとする坑口装置の
基本設計を行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般に、地熱坑井に用
いられるケーシングパイプは、温度変化量の上昇ととも
に熱応力を生じ、その結果、ケーシングパイプの材質に
もよるが、温度差がほぼ150℃ないし230℃を越え
ると損壊する恐れがある。特に、前記地熱坑井の浅部で
は前記ケーシングパイプ設置時の温度が数十℃と低いた
め、比較的低温低圧条件下においても、前記ケーシング
パイプの損壊が起こりやすい。
【0006】一方、コンクリートの線膨張係数は7〜1
3×10-6とされているので、前記ケーシングパイプと
その外周のセメントとほぼ同程度に伸縮していると期待
されるものの、前記ケーシングパイプと前記セメントと
の付着力は約3kgf/cm2と小さいので、伸縮量の
わずかの差によって両者間のボンデングは劣化すると考
えられる。そして、一度前記ケーシングパイプと前記セ
メントとの間に亀裂等の隙間が生じると、それが前記地
熱流体の通路となって前記地熱抗井に物理的・化学的悪
影響をおよぼすおそれがある。
【0007】また、前記ケーシングパイプと前記セメン
トのボンデングが劣化すると、前記セメントが前記ケー
シングパイプから剥離し、その結果、前記地熱坑井内に
おいて前記ケーシングパイプがフリーの状態となる場合
もある。
【0008】ここで、前記熱応力は温度差に比例して大
きくなるので、締切圧力が最大となった時点において前
記ケーシングパイプ内の温度が最高となり、前記ケーシ
ングパイプが損壊する可能性も最大となっている。従っ
て、上記のような事故を防止するためには、前記ケーシ
ングパイプに極力温度差を与えないようにすべきである
とともに、最大締切坑口圧力がどの程度の値になるかを
予め予測した上で、坑井を設計するか、あるいは対応策
を検討する必要がある。すなわち、事前に最大締切圧力
およびその時点での温度が予測可能であるならば、予め
適切な対策をとり、ケーシングパイプの損壊を防ぐこと
ができる。
【0009】しかしながら、上記従来の地熱坑井におい
ては、坑口装置およびケーシングプログラムの基本設計
は、専ら経験に依存して行われていた。そのため、個々
の地熱坑井に対する坑口装置およびケーシングプログラ
ムの基本設計が、耐温耐圧性において必ずしもその地熱
坑井に対し適正でない場合も多く、過大な設計を行った
場合には、資材および設備に対する過剰投資を招き、一
方、過小な設計を行った場合には、前記地熱坑井の耐久
性および安全性が不十分となる可能性があるという問題
があった。ところが、前記地熱坑井の最大締切圧力を求
める方法については、従来ほとんど検討されていなかっ
た。
【0010】なお、一般に石油や天然ガス採掘用の坑井
においては、地中における上記天然資源の圧力が、ほぼ
坑口圧力に一致することが知られていることから、この
関係を前記地熱坑井に応用し、前記地熱坑井の最大締切
圧力を推定する方法もとられていたが、同方法において
は、前記地熱坑井内の温度条件が考慮に入れられておら
ず、また、同方法より求めた最大締切圧力は、実際の数
値とは必ずしも一致していなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記事情に鑑
みてなされたもので、地盤を掘削し、形成された坑内に
管状のケーシングチューブを挿入し、このケーシングチ
ューブの下端または側面の前記地盤中に存在する地熱流
体をケーシングチューブ内に流入させるとともに、前記
ケーシングチューブの上端に締切可能な坑口装置を設置
し、前記地熱坑井における液相の長さを、前記地熱坑井
に作用する圧力と、前記地熱流体の密度とを用いた算出
工程および前記地熱坑井の掘削長と前記地熱流体の密度
および比エンタルピーとを用いた算出工程によりそれぞ
れ算出するとともに、上記各算出工程より得た前記液相
の長さを一致させる前記流入温度を求め、その温度にお
ける前記地熱坑井内の圧力を算出する地熱坑井の最大締
切圧力および最高温度の予測法である。
【0012】以下、図面および数式とともに、本発明の
手段について説明する。典型的な地熱坑井のモデルを図
1に示す。ここで、地熱坑井1は地中に埋設されたケー
シングチューブ7と、その上端に設けられたバルブ4か
らなり、また、地中のリザーバー3と接する部分では、
ケーシングチューブ7に破口が生じ、フィードポイント
2が形成されている。そして、このようなモデルにおい
て、地熱坑井1には、フィードポイント2から地熱坑井
1外へとかかる圧力(以下、フィードポイント圧と称す
る)およびリザーバー3から前記地熱坑井1内へとかか
る圧力(以下、リザーバー圧と称する)が作用してい
る。ここで、噴気中のフィードポイント圧は、バルブ4
を締め切り、前記地熱坑井1内が平衡状態となった場
合、すなわちフィードポイント圧とリザーバー圧が等し
くなった場合におけるフィードポイント圧より常に低
い。バルブ4を締め切ると噴気は停止するが、フィード
ポイント圧は依然リザーバー圧より低いので、しばらく
の間はリザーバー3から前記地熱坑井1内に地熱流体の
流入が続く。これがいわゆるアフターフローである。こ
の場合、前記地熱坑井1内に流入する前記地熱流体の温
度はリザーバー3の温度と同一であり、また、前記地熱
坑井1外への前記地熱流体の流出がないため、地熱坑井
1内の上部には蒸気等からなる気相5が、下部には熱水
等からなる液相6が形成される。フィードポイント圧が
リザーバー圧に等しくなった時前記地熱流体の流れは停
止し、この時坑口圧力および坑口温度が最大となる。
【0013】締切最大圧力は、図1に示す坑井モデルに
おいて、以下に示す(1)式〜(7)式を解くことによって求
められる。
【0014】 Ml・1/ρl+Mg・1/ρg=V …(1) Ml・hl+Mg・hg=(Ml+Mg)・hf …(2) Pg+ρl/Ll・9.80665+Patm=Pb …(3) S・(Ll+Lg)=V …(4) S・Ll・ρl=Ml …(5) S・Lg・ρg=Mg …(6) Ll+Lg=Lb …(7) なお、ここで、S :坑口の断面積(m2) V :坑内容積(m3) L :鉛直方向の長さ(m) M :質量(kg) P :圧力(MPa) ρ :密度(kg/m3) h :比エンタルピー(kJ/kg) Lb:掘削長(m) Pb:フィードポイント圧(MPa) Patm:気圧(MPa) f,gおよびl:地熱流体(f)の状態。すなわち気相
(g)および液相(l) である。
【0015】前述の通り、バルブ4を締め切るとやがて
地熱坑井1内が平衡状態となり、その結果、フィードポ
イント圧Pbは一定の値となる。この時、質量保存則を
表す式を変形して、坑内容積Vに関して(1)式が得られ
る。また、(2)式はエネルギー保存則を表す式である。
【0016】一方、フィードポイント圧Pbは(3)式で
求められるが、この場合、坑口圧力は気相5の圧力Pg
で示され、また、気相5の圧力Pgは飽和蒸気圧に等し
いものとする。なお、蒸気密度の影響(蒸気柱圧)につ
いては微小なので無視する。
【0017】ここで、(1)式〜(7)式を液相6の長さLl
について解くと、以下に示す(3)´式および(8)式が得ら
れる。
【0018】 Ll=(Pb−Pg−Patm)/ρl・9.80665 …(3)′ Ll={ρg・(hf−hg)・Lb}/{ρl・(hl−hf) +ρg(hf−hg)} …(8)
【0019】この場合、坑口圧力Pgならびに各相の密
度ρおよび比エンタルピーhはそれぞれ温度Tの関数と
して与えられるので、最終的には液相6の長さLlと温
度Tに関して連立方程式を解くことになる。本発明にお
いては任意の温度Tについてコンピュータ等を用いて繰
返し計算を行い、(3)´式のLlと(8)式のLlとが一致
する値を見い出すものとした。その計算フローチャート
を図2に示す。なお、通常地熱坑井1の坑径は浅部で大
きく、深部になるに従い小さくなるが、ここでは、浅部
から深部まで同一としている。
【0020】上記のように、本発明で設定した地熱坑井
1のモデルにおいては、地熱坑井内の温度と掘削長がわ
かれば最大締切圧力の推定は容易であり、その推定値か
ら、予めバルブ4およびケーシングチューブ7の耐熱・
耐圧条件を設計することが出来る。また、最大締切圧力
が流量に拠らないことを明らかにできた点は地熱坑井1
の設計上重要である。
【0021】なお、バルブ4締切後、時間の経過ととも
に地熱坑井1上部には不凝結性のガスが蓄積するが、こ
れは、地熱流体中に溶存していたものが密度差によって
上方に置換したものであって、この不凝結ガスの圧力が
リザーバー圧を示すものではない。すなわち、不凝結ガ
ス層がフィードポイント2に達し、前記不凝結ガスの圧
力がリザーバー圧に等しくなった時はじめて前記不凝結
ガスの圧力がリザーバー圧を示すことになる。従って、
リザーバー圧より高圧の前記不凝結ガス層が前記地熱流
体と解離されて存在し、地熱坑井が両者を貫いた場合
か、あるいは極めて大量の不凝結ガスが前記地熱流体中
に存在していない限り、坑口圧力に、フィードポイント
2における前記不凝結ガスの圧力が示されることはな
い。
【0022】
【実施例】次に、実施例を挙げて、本発明の効果につい
て説明する。SC−1坑は、1987年に掘削された掘
削長約2850mの地熱坑井である。SC−1坑はいく
つかのフィードポイントを有する坑井で、1990年7
月ないし8月当時における各フィードポイントの深度、
圧力、および温度は表1に示す通りである。
【0023】
【表1】
【0024】ここで、フィードポイントAは蒸気の流入
があると推定される位置であり、フィードポイントBは
掘削中に逸泥が多発した位置である。
【0025】一方、本発明による、同時期におけるSC
−1坑の坑口圧力の計算結果は図3に示す通りである。
なお、これらの計算結果は、それぞれのフィードポイン
トが単独に存在し、他のフィードポイントの影響が無い
と想定した場合の値である。計算の結果、坑口圧力は最
も温度の高いポイントDで7.1MPa、主たるフィー
ドポイントであるポイントEで3.4MPa、また、ポ
イントCで6.9MPa、最浅部のポイントAで1.8
MPaであった。
【0026】実際には、SC−1坑の最大締切圧力は
3.4〜4.9MPaの間で変動していた。この変動に
ついては後に考察するが、主フィードポイントであるフ
ィードポイントEの計算値は3.4MPaで上記変動値
の下限と一致している。更に、上限値がフィードポイン
トCおよびDの計算値を下回っているのは、フィードポ
イントEの影響が大きいことを示している。すなわち、
複数のフィードポイントがある場合の最大締切圧力は、
主たるフィードポイントの特性に拠りつつも、他のフィ
ードポイントとの中間的な値をとるものと考えられる。
【0027】なお、SA−1坑は、掘削長および温度が
前記SC−1坑のフィードポイントCまたはDとほぼ同
一の地熱坑井であるが、この場合でも、最大締切圧力の
実測値は上記計算値とよく一致した。すなわち、前記S
A−1坑の最大締切圧力は6.95MPaであるのに対
し、フィードポイントCおよびDにおける坑口圧力の計
算値は6.9MPaおよび7.1MPaとなっている。
【0028】また、本発明による、SC−1坑における
坑内温度分布の計算結果は図4に示す通りである。
【0029】この場合、上記モデルで予測した通り、坑
内温度では坑口から坑底までほぼ同一となる。ここで注
目されることは、地熱流体の一部が気相に変化するた
め、残った液相の温度はリザーバー温度より低くなるこ
とである。坑井締切直後の坑内温度の実測値がないので
比較検討することはできないが、坑内温度は、締切直後
の一時期には上記のモデルにおける計算結果と同様の温
度パターンを示し、その後、蒸気相直下で飽和温度とな
り、更に深部でリザーバー温度と同一になるものと考え
られる。
【0030】更に、図5は、本発明により、フィードポ
イント別にリザーバーの温度・圧力毎の坑口圧力を求め
たもので、フィードポイントをそれぞれ深度1000
m、2000m、および3000mに設定した場合につ
いて、それぞれリザーバーの温度・圧力に対する最大締
切圧力の出力値が示されている。
【0031】最大締切圧力がリザーバー温度に大きく依
存していることは、図5からも明かである。また、図5
には、リザーバー圧が飽和蒸気圧に等しい場合でも坑口
圧力は飽和蒸気圧を数MPa下廻ることも示されてい
る。これは、地熱流体のエネルギーが気相に移行するこ
とにより、残った液相の温度が飽和温度より低くなるた
めと考えられる。
【0032】更に、図5には、同じ温度条件下でも掘削
長により最大締切圧力が異なることも示されている。こ
の点を説明するため、前記SC−1坑における最大締切
圧力の計算値を示す図に、前記SC−1坑の存する地域
を考慮した標高をプロットした。結果は図6の通りであ
る。
【0033】図6において、標高、温度、および圧力は
以下のように設定した。 Eg=2×T+480 ここで、Eg:ある温度Tにおける地表面の標高(mr
sl) T :レザーバー温度(℃) また、 Ep=101.97/(ρ/1000)×(10−P)−492.6 ここで、Ep:リザーバーの標高(mrsl) P :リザーバー圧力(MPa) ρ :温度Tにおける純水の密度(kg/m3) 従って、掘削長Lbは Lb=Eg−Ep である。
【0034】図6に示すように、深部まで掘削された地
熱坑井では、リザーバー温度が浅部と同一でも最大締切
圧力は大きくなり、また、この傾向は高温域となる程大
きい。また、標高が同一であるような場合には、フィー
ドポイントの位置が深い程最大締切圧力も大きくなる傾
向は増大する。
【0035】一方、前述の通り、前記SC−1坑におけ
る最大締切圧力は3.4〜4.9MPaの間で変動して
いた。すなわち、噴気停止後も坑内とリザーバーとの間
に地熱流体の流出入があることになる。本発明を用いて
この現象を説明するため、本発明に基づきシュミレート
した、リザーバー圧力並びに噴気中ないし噴気停止後に
おける坑口圧力の変化を図7に概念的に示す。
【0036】図7において、噴気中の坑内圧力分布の例
を線Aで示す。線Aにおいては、坑内圧力はいずれのフ
ィードポイントでもリザーバー圧力より低くなってい
る。坑口を締切った後もリザーバーから坑内に向かって
地熱流体の流れがあり、坑内圧力はいずれかのフィード
ポイントでリザーバー圧力と一致するに至り、例えば線
Bで示すような分布をとる。ところが、この時フィード
ポイントXおよびYにおいてはリザーバー圧力の方が坑
内圧力より高いので、リザーバーから坑内に向って前記
地熱流体が流れつづけ、線Cの状態に到る。この状態で
は、フィードポイントXおよびYにおいては依然リザー
バー圧力の方が坑内圧力より高いが、一方、フィードポ
イントZにおいては逆に坑内の地熱流体がリザーバーに
流出することになる。もし、フィードポイントYおよび
ZのkhがXのそれよりはるかに小さければ、最終的に
は線Dで示す状態となり、フィードポイントYおよびZ
では坑内の前記地熱流体がリザーバーに向って流れるこ
とになる。
【0037】前記SC−1坑の場合、フィードポイント
の浸透率層厚積はZ>>Y>Xとなるから、線Eで示す
程度の圧力分布で平衡状態を保とうとする。ところが浸
透率層厚積はZ>>Yであるから、フィードポイントX
やYでリザーバーから坑内に流れる流量より、フィード
ポイントZで坑内からリザーバーに流れる流量の方が大
きくなり、結果として坑内の一部に直線Fで示す二相領
域が形成され、それに伴い気相の圧力が高くなる。この
場合、最終的には直線Gで示すような圧力分布で平衡に
至るが、X、Y、およびZの各フィードポイントにおけ
る前記地熱流体の温度が異なること、また、坑井上部に
気相が形成された結果、液相の温度が前記地熱流体の温
度より低くなること等の理由により、フィードポイント
X、Y、およびZにおける前記地熱流体の流出入に伴う
地熱流体の混合と、熱伝導による岩盤からの熱の供給に
よって坑内温度分布がリザーバーと平衡状態になるま
で、線B、E、F、およびGの状態が繰返される。
【0038】また、浅部ではレザーバー温度の方が坑内
温度より低いため、坑井内の地熱流体は冷却されて気相
から液相にかわり、水柱圧力の増加がもたらされて蒸気
圧は減少する。
【0039】このように、噴気停止後の圧力変動は前述
の坑井モデルによって矛盾なく説明される。また、圧力
変動のサイクル時間の長短はフィードポイントの浸透率
層厚積の大小による。
【0040】上記の各実施例においては、前記地熱坑井
内で地熱流体のフラッシュが起こる場合について検討し
た。しかしながら地下温度が高いフィールドでは、多く
の場合地熱流体はリザーバー内でフラッシュするため、
前述のモデルをそのまま使用することはできない。
【0041】地熱流体がリザーバー内でフラッシュする
と、地熱坑井の周囲のかなり広い範囲で、気相および液
相からなる二相領域が発達する。この領域の発達範囲が
広ければ、坑井を締切る時点においても前記地熱坑井周
辺は二相であり、アフターフローの地熱流体も二相なの
で、前記地熱坑井締切圧力を規定する温度は、エクサス
エンタルピーを含んだ前記地熱流体の飽和温度として表
されることとなる。従って、前記地熱流体がリザーバー
内でフラッシュする地熱坑井の締切圧力は、フィードポ
イントの位置が浅い場合や、リザーバー温度が低い場合
でも相対的にかなり高くなる。特に、噴出前記地熱流体
が液相の飽和温度を越える大きな比エンタルピーを持つ
場合には、蒸気柱圧力を無視すれば、その比エンタルピ
ーにおける飽和蒸気圧が坑口に示されることになる。
【0042】また、上記リザーバー内フラッシュによる
温度、圧力の微妙な変化に伴い、前記地熱流体の気液比
が変化し、それによって相対浸透率に支配される気液両
相の流量および比エンタルピーも変化する。そのため、
アフターフローの前記地熱流体が持つ比エンタルピーを
推定することは困難である。通常、坑口圧力が高くなる
と、前記地熱流体が気相卓越流から液相卓越流に移行す
るので、噴気中の前記地熱流体の比エンタルピーから求
めた飽和温度は、アフターフローの温度の最大値を示す
と考えられる。
【0043】前記SC−1坑においては、1990年8
月に噴気停止後、再度噴気試験を行い、10月下旬まで
噴気を継続した。そして10月18日から逐次バルブを
閉じ、坑井特性を計測しながら10月22日に噴気を停
止した。その結果、坑口圧力は上昇して10月25日に
は8.95MPaに達したが、以後降下した。
【0044】ここで、流体の比エンタルピーで飽和した
流体の飽和温度が322℃であるので、この値をもとに
本発明によるシュミレーションを行ったところ、フィー
ドポイントの位置が2045m、最大締切圧力が8.2
5MPa、また、最高温度が322℃という結果を得
た。アフターフローのフィード位置が必ずしも明らかで
はないので、出力値も変動すると見込まれるが、この値
は上記最大締切圧力の実測値にほぼ一致する。
【0045】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、地
熱坑井におけるフィードポイントの深度とフィードポイ
ントにおける前記地熱流体の温度および坑井内への流入
圧力から、予めその最大締切圧力および浅部蒸気相の最
大温度を求めることができ、しかも、その計算値は実測
値と相互によく一致する。従って、この解析方法を利用
して、熱応力や圧力に耐え得るケーシングパイプや坑口
装置を選択し、その地熱坑井に対し適正なケーシングプ
ログラムおよび坑口装置の基本設計を行うことが可能で
ある。その結果、過大または過小な設計による、資材お
よび設備に対する過剰投資や、前記地熱坑井の耐久性お
よび安全性の低下を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】典型的な地熱坑井をモデル化した図である。
【図2】本発明により坑口圧力と坑内の温度を求める際
の、繰り返し計算のフローチャートである。
【図3】本発明の第一実施例における坑口圧力の計算結
果を示す図である。
【図4】本発明の第一実施例における坑内温度分布の計
算結果を示す図である。
【図5】本発明によりリザーバーの温度・圧力毎の坑口
圧力をフィードポイントの深度別に求めた結果を示す図
である。
【図6】本発明の第一実施例における最大締切圧力の計
算値を示す図に、本発明の第一実施例に用いた地熱坑井
の存する地域を考慮した標高をプロットした図である。
【図7】本発明に基づきシュミレートした、リザーバー
圧力並びに噴気中ないし噴気停止後における坑口圧力の
変化を示す図である。
【符号の説明】
1 地熱坑井 2 フィードポイント 3 リザーバー 4 バルブ 5 気相 6 液相 7 ケーシングチューブ

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 地盤を掘削し、形成された坑内に管状の
    ケーシングチューブを挿入し、このケーシングチューブ
    の下端または側面の前記地盤中に存在する地熱流体をケ
    ーシングチューブ内に流入させるとともに、前記ケーシ
    ングチューブの上端に締切可能な坑口装置を設置し、 前記地熱坑井における液相の長さを、前記地熱坑井に作
    用する圧力と、前記地熱流体の密度とを用いた算出工程
    および前記地熱坑井の掘削長と前記地熱流体の密度およ
    び比エンタルピーとを用いた算出工程によりそれぞれ算
    出するとともに、 上記各算出工程より得た前記液相の長さを一致させる前
    記流入温度を求め、その温度における前記地熱坑井内の
    圧力を算出することを特徴とする地熱坑井の最大締切圧
    力および最高温度の予測法。
  2. 【請求項2】 前記地熱流体の流入部位の深度および流
    入圧力を、下記の式1および式2に代入するとともに、
    式1および式2の左辺の値を一致させる前記流入流体温
    度を求め、その温度における前記地熱坑井内の圧力を算
    出することを特徴とする請求項1記載の地熱坑井の最大
    締切圧力および最高温度の予測法。 ここで、式1:Ll=(Pb−Pg−Patm)/ρl・9.80665 式2:Ll={ρg・(hf−hg)・Lb}/{ρl・(hl− hf)+ρg・(hf−hg)} とし、また、上記の各式において、 Lb=前記流入部位の深度(m) Ll=前記地熱坑井における液相の長さ(m) Pb=前記流入圧力(MPa) Pg=前記坑口圧力(MPa) Patm=気圧(MPa) ρl=前記液相の密度(kg/m3) ρg=前記地熱坑井における気相の密度(kg/m3) hf=前記地熱流体の比エンタルピー(kJ/kg) hl=前記液相の比エンタルピー(kJ/kg) hg=前記相の比エンタルピー(kJ/kg) とする。
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