JP2947555B2 - アンチセンス遺伝子導入動物 - Google Patents

アンチセンス遺伝子導入動物

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JP2947555B2 JP63094772A JP9477288A JP2947555B2 JP 2947555 B2 JP2947555 B2 JP 2947555B2 JP 63094772 A JP63094772 A JP 63094772A JP 9477288 A JP9477288 A JP 9477288A JP 2947555 B2 JP2947555 B2 JP 2947555B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (技術分野) この発明は、アンチセンス遺伝子導入動物に関するも
のである。さらに詳しくは、この発明は、病態モデル動
物、実験動物等として有用な、アンチセンス遺伝子導入
によってその個体表現型を改変した遺伝子導入非ヒト哺
乳動物に関するものである。
(背景技術) 非ヒト哺乳動物は農業、畜産業、工業等種々の分野に
おいて利用されているが、それら動物をより有用なもの
とするため、新しい遺伝形質を導入、固定する動物の遺
伝的改良がすすめられている。
このような動物の遺伝的改良方法としては、従来より
交配と優良個体の選抜とを繰り返す方法、あるいは突然
変異を誘起しその突然変異体を利用する方法等が知られ
ている。
しかしながら、交配と優良個体の選抜とを繰り返す従
来の方法は新たな遺伝形質の固定に長期間を必要とし、
また、突然変異を利用する方法は、偶然に起こる遺伝子
の変異を利用するものなので、特定の、かつ、所望の形
質は確率論的にしか得ることができない。
このような従来の方法に対して、近年、分子生物学、
遺伝子工学等の発展により、人為的に生物の遺伝子を制
御し、その発現を改変することが可能になってきた。当
初この遺伝子工学的手法の研究は単細胞微生物に対して
広く行われてきたが、今日では高等生物に対してもすす
められており、その形質の改変が様々なアプローチによ
って試みられている。
たとえば、外来性遺伝子DNAを染色体の一部に安定的
に組み込んだ遺伝子導入動物(transgenic animal)が
ガードンらにより報告(Proc.Natl.Acad.Sci,USA,77
巻、7380頁、1980年)されて以来、種々の遺伝子導入動
物が報告されている。
また、特願昭60−134452号(特開昭61−81743号公
報)には、活性化腫瘍遺伝子配列を有する遺伝子導入動
物が開示されてもいる。
これらの遺伝子導入動物は、宿主動物の分化全能性細
胞(潜在的に全ての細胞に分化する能力を有する細胞)
としての生殖系細胞、特に受精卵に、外来遺伝子DNAを
導入し、それを借親の子宮にもどして正常な発生を続け
させることにより産出させるものである。こうして産出
させた遺伝子導入動物は、導入した外来性遺伝子をメン
デルの法則に従って子孫に伝達すると期待されるので、
形質改良生物として注目されている。
このように遺伝子導入動物の産出に用いる遺伝子とし
ては、受精卵を通してβ−グロビン等の遺伝子を導入し
た例(T.E.Wagner et al.,Proc.Natl.Acod.Sci.USA,78
巻、5016頁、1981年)に見られるようなゲノム遺伝子そ
のものと、マウスメタロチオネインIのプロモーターに
ラットの成長ホルモン遺伝子を結合し導入した例(R.D.
Palmiter et al.,Nature,300巻、611頁、1982年)に見
られるような異種プロモーターと構造遺伝子から人工的
組換え遺伝子とが知られている。
しかしながら、これらの外来性遺伝子を用いることに
より、その生物に本来備わっていない特定の形質を発現
させることはできるようになるが、内在性遺伝子の働き
を人為的に制御し、所要の効果を発現させるようにする
ことには成功していない。
一方、内在性遺伝子の働きを制御する方法として、近
年、アンチセンス遺伝子を利用することが提案されてい
る。
このアンチセンス遺伝子とは、特定の機能を持つ遺伝
子(DNA)から転写されるRNA(センスRNA)と一部また
は全部にわたって相補的な塩基配列を持つRNA(アンチ
センスRNA)が潜在的に転写されるようにした遺伝子(D
NA)である。
一般に、遺伝子の転写の際には、2本鎖DNAの片方の
鎖から、センスRNAが転写され、翻訳されて特定の蛋白
質が産生されるのに対して、相補鎖からはアンチセンス
RNAが転写、翻訳されることはない。実際、自然界の真
核生物においては、ウィルスゲノムを除いてはアンチセ
ンスRNAが転写、翻訳されたという例はこれまでに見出
だされていない。
これに対して、近年、アンチセンス遺伝子を人為的に
細胞に導入してアンチセンスRNAを産生させ、このアン
チセンスRNAによりセンスmRNAの発現を選択的に制御す
るという研究がすすめられている。
たとえば、特定の遺伝子とそれに対応するアンチセン
ス遺伝子を共に細胞に導入し、センスmRNAの発現を抑制
した例としては、Weintraubらが、チミジンキナーゼ活
性欠損(TK-)マウスL(LTK-)細胞にヘルペスウイル
スのセンスTK遺伝子とアンチセンスTK遺伝子を1:100も
しくは1:200の割合で導入した場合に、センスTK遺伝子
の発現を通して見られるLTK-細胞の生存率がアンチセン
スRNAに阻害されること(J.Z.Izant and Weintraub,Cel
l,36巻、1007頁、1984年)、原核生物由来のクロラムフ
ェニコールアセチル転移酵素遺伝子の発現による酵素活
性がそのアンチセンス遺伝子の導入により抑制されるこ
と(Weintraub et al.,Trends in Genetics,1巻、22
頁、1985年)、さらには、β−グロビンのセンスmRNAと
アンチセンスRNAとをカエルの卵細胞内に導入すること
によりセンスmRNAとアンチセンスRNAとの間に二重鎖を
形成しβ−グロビンの合成が抑制されること(D.A.Melt
on,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82巻、144頁、1985年)等
が報告されている。
さらに、特定の遺伝子とそれに対応するアンチセンス
遺伝子を共に細胞に導入するのではなく、アンチセンス
遺伝子のみを細胞に導入し、内在性遺伝子の発現を抑制
した例としては、井上らが大腸菌の細胞外膜蛋白である
Omp Fについて、アンチセンスOmp Fと想定される170塩
基からなる配列(mic F)を染色体中に見出だし、そのm
ic Fを多コピープラスミドにクローニングし、大腸菌に
導入することにより、Omp Fの合成を阻害したという例
(T.Mizuno et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81巻、196
6頁、1984年)、Pestkaらが大腸菌のlac Zオペロン酵素
の合成を阻害できることを示した例(S.Pestka et al.,
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81巻、7525頁、1984年)が報
告されている。これらの例においては、アンチセンス遺
伝子はセンス遺伝子の5′末端側をカバーすることが重
要であり、また、アンチセンス遺伝子は数十塩基であっ
てもセンス遺伝子の発現を抑制できることが注目され
る。
なお、アンチセンス遺伝子の導入による内在性遺伝子
の発現抑制は、哺乳動物の細胞においても確認されてい
る。たとえば、細胞性のプロトオンコジーンc−fosのm
RNAに対するアンチセンスRNAをマウス3T3培養細胞に導
入した例(J.Holt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,83
巻、4794頁、1986年)、ハムスターの膵島腫瘍遺伝子の
mRNAに対するアンチセンスRNAを合成し、この合成配列
をハムスターの腫瘍膵細胞に導入した例(C.Inoue et a
l,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,84巻、6659頁、1987年)、
ヒトMYC・DNAに対するアンチセンス配列と大腸菌のサン
チン/グアニン・ホスホリボシル転移酵素(Ecogpt)を
コードする遺伝子とを保持するプラスミドを、ヒト前骨
髄性白血病細胞株HL60にプロトプラスト融合を用いて導
入した例(K.Yokoyama and F.Imanoto,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA.,84巻、7363頁、1987年)等である。これら哺
乳動物の細胞においても、アンチセンス遺伝子は内在性
遺伝子の発現を抑制し、細胞の増殖やDNA合成、あるい
はタンパク質産生等の選択的抑制が観察されている。
しかしながらこのようなアンチセンス遺伝子の導入に
よる内在性遺伝子の発現抑制は、いずれも原核生物また
は細胞培養系に対してなされたものであり、真核生物、
特に哺乳動物個体そのものにおいては成功していない。
哺乳動物の機能や構造を司る様々な内在性遺伝子の働
きを正確に把握するためには、培養細胞系においてアン
チセンス遺伝子の効果を確認するだけでは不十分であ
り、正常な発生・成長過程を経た動物個体において、実
際の個体形成や行動面に対する効果を実証する必要があ
る。また、特定の内在性遺伝子の発厳が生得的に抑制さ
れた非ヒト哺乳動物が得られれば、医学、農業、工業等
の様々な分野において多くの利益がもたらされると期待
される。
(発明の目的) この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたもの
であり、従来の内在性遺伝子の発現制御に関する課題を
解消し、個体を形成する各細胞の染色体に安定に組み込
まれたアンチセンス遺伝子によって内在性遺伝子の発現
が選択的に抑制されたアンチセンス遺伝子導入動物個体
とその作出方法を提供することを目的としている。
(発明の開示) 上記の目的を実現するため、この発明は、非ヒト哺乳
動物の内在性遺伝子が発現するセンスRNAの全配列また
は一部配列に対するアンチセンスRNAを発現するアンチ
センス遺伝子を導入した非ヒト哺乳動物の分化全能性細
胞を個体へと発生させた動物個体、およびこの動物個体
の子孫個体であって、個体の各細胞の染色体にアンチセ
ンス遺伝子が組み込まれていることを特徴とするアンチ
センス遺伝子導入動物を提供する。
この発明のアンチセンス遺伝子導入動物においては、
アンチセンス遺伝子が、内在性遺伝子の発現している組
織または細胞と同所性に働くプロモーター配列および/
またはエンハンサー配列を連結すること、あるいはこれ
らの配列とともに、イントロン領域および転写開始部位
を有していることを好ましい態様としている。また、こ
の発明においては、分化全能性細胞が受精卵等の生殖系
列の細胞であることを好ましい態様としてもいる。そし
て、このような哺乳動物に導入するアンチセンス遺伝子
としては、たとえばマウスのミエリン塩基性蛋白質(MB
P)センス遺伝子に対するアンチセンス(MBPアンチセン
ス)遺伝子を例示することができる。
さらにこの発明は、上記のアンチセンス遺伝子導入動
物を得るための方法として、非ヒト哺乳動物の内在性遺
伝子が発現するセンスRNAの全配列または一部配列に対
するアンチセンスRNAを発現するアンチセンス遺伝子を
非ヒト哺乳動物の分化全能性細胞に導入し、この遺伝子
導入細胞を動物個体へと発生させたのち、個体の各細胞
の染色体にアンチセンス遺伝子が組み込まれている個体
を選別することを特徴とするアンチセンス遺伝子導入動
物の作出方法をも提供する。
この発明の作出方法においては、たとえば、受精卵等
の生殖系列の細胞にアンチセンス遺伝子を導入し、それ
を借親の子宮に戻して正常に成長させ、個体へと発生さ
せたのち、アンチセンス遺伝子がヘミ接合あるいはホモ
接合で染色体中に安定に保持された個体を選別すること
によって、目的とするアンチセンス遺伝子導入動物を得
ることができる。その改変された表現型は、哺乳動物の
子孫個体に至るまで安定に伝達される。
次に、この発明の実施例を示す。以下の実施例におい
ては、アンチセンス遺伝子の導入により発現を抑制する
哺乳動物の内在性遺伝子をマウスのMBP遺伝子とした。
まず、このマウスのMBP遺伝子について説明すると、
このMBP遺伝子はマウス18番染色体上にあり、ミエリン
塩基性蛋白質(MBP)を産出させる内在性遺伝子であ
る。
MBPは、多層の膜(ラメラ)構造を形成して神経軸索
を取り巻き、神経情報の伝達を促進させるミエリンの主
要構成物質の一つである。なお、ミエリンは、中枢神経
系においては稀突起膠細胞(オリゴデンドロサイト)が
突起を神経細胞の軸索に伸長しそれらを取り巻きミエリ
ン鞘を形成する際に産生し、末梢神経系においてはシュ
ワン細胞が産生する。またマウスの成体の中枢神経系の
ミエリンには、少なくともそれ4ぞれ21,500、18,000、
17,500、14,000ダルトンの分子量を持つ4種の異なる構
造のMBPの亜型が、1:10:3.5:35の量比で存在する。これ
らのMBPは、いずれも単一のMBP遺伝子から転写された初
期転写産物が異なった形にスプライシングされた結果で
きる別々のmRNAが翻訳され産出されるものである。
このようなMBPを産出させるマウスのMBP遺伝子の場合
には劣性突然変異としてシバラー変異が生じる。このシ
バラー変異をホモ接合型にもつマウスは、MBPの欠損
と、ほとんど全ての中枢神経系におけるミエリン形成不
全という特徴を持っている。このマウスは、誕生後2週
間目頃から神経障害である企画振戦症を呈し、週齢が進
むにしたがって強烈な痙攣を起こし、正常なマウスより
も早く死亡するという特徴を有している。
そこで、以下に示す実施例においては、マウスにMBP
アンチセンス遺伝子を導入してMBP欠損を起こさせ、シ
バラー変異による企図振戦症と同様の症状を発現させ
る。
実施例1:マウスのMBPアンチセンス遺伝子の作成 マウスのMBPアンチセンス遺伝子の作成過程を第1図
に示す。
まず、(a)マウスのMBPの最小分子種に対応するcDN
Aがクローン化されているpMBP2(M.Kimura et al.,J.Ne
urochem.,44巻、692頁、1985年)を制限酵素Pst Iで処
理し、得られた場所から電気泳動によりMBP遺伝子をコ
ードする領域を含む1.2kb(kb:1,000塩基)の断片で単
離し、この両端をT4DNRポリメラーゼで消化して平滑末
端にした。一方、(b)cDNAの発現ベクターであるpKCR
H2(Mishina et al.,Nanure,307巻、604頁、1984年)の
β−グロビン遺伝子領域をHind IIIで処理し、Klenow酸
素で断端の相補鎖を合成して平滑末端にした後に、
(c)上記MBP遺伝子をコードする断片の平滑末端化し
たものと平滑末端結合(blunt end ligation)を行っ
た。この際に、MBPのcDNAが本来の読み取り方向に対し
て逆向きのアンチセンスに配向するように結合したクロ
ーンを選択した。
(d)このクローンを分離した後に、MBPアンチセン
スcDNA領域を含むBamH I−Sal I断片を切り出し、pAT15
3(A.J.Twigg and D.Scherratt,Nature,283巻、216頁、
1980年)のBamH I−Sal I領域と入れ換える(pAT153B
S)。
(e)一方、マウスのエミリン塩基性蛋白質(MBP)
遺伝子のプロモーター領域1.3kbを含む3.6kbのMBP遺伝
子がクローン化されているpMP1を制限酵素Nco Iで処理
し、ベクターを含む断片を精製したあと、DNA分解酵素B
al31で末端から翻訳開始コドンを削りとり、BamH Iリン
カーを接続し、さらに制限酵素Hind IIIおよびBamH Iで
切断する。
(f)pAT153BSを制限酵素BamH IおよびHind IIIで切
り開き、その位置にMBP遺伝子のプロモーター領域を含
む1.3kbのHind III−BamH I断片を挿入する(pMBP302A
S)。このpMBP302ASの基本構造を示したものが第2図で
ある。
この第2図に示すように、pMBP302ASの基本構造は、
キャップ付加部位を含むMBP遺伝子プロモーター領域
と、MBPアンチセンス遺伝子cDNAを有し、さらに転写産
物のスプライシングを行わせるために、ウサギβ−グロ
ビン遺伝子の第2イントロン領域、またポリA付加を行
わせるために同遺伝子の3′下流域およびSV40の3′下
流域を配置し、転写開始部位を残している。また、導入
したMBPアンチセンスのcDNAは、さらにpAT153由来の276
bp配列が付属している。
なお、マウスの受精卵に注入するMBPアンチセンス遺
伝子には、pMBP302ASから切り出した4.2kb Hind III−S
al I直鎖状断片を用いた。
実施例2:アンチセンス遺伝子導入動物の作成 遺伝子を導入する宿主として企図振戦症の遺伝形質を
ヘテロに持つマウス(shi/+)を用いた。なお、企図振
戦症の遺伝子をヘテロ接合で保持しているマウス(shi/
+)の小脳におけるMBPmRNAの量は、野生型(+/+)
に対して半分であることが知られている(E.Barbarese
et al.,J.Neurochem.,40巻、1680頁、1983年)。
この遺伝子導入動物の作成方法は、基本的にはガード
ンらの方法(J.W.Gorden et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA,77巻、7380頁、1980年)に準じて行った。すなわ
ち、シバラー(shi/shi)マウスの卵管からin vitroで
未受精卵を採取し、次いで、F1(C57BL/6×BALB/c)の
精子で体外受精を行った。その後、受精卵の雄性前核に
2〜10mg/μlの実施例1で作成したMBPアンチセンス遺
伝子を微小ガラスピペットで約2μl注入した。これら
の操作卵を予め偽妊娠状態にしておいた雌マウス(ICR;
MHC,クレア(株))の卵管に移植してMBPアンチセンス
遺伝子導入マウスを産出させた。マウスは20日後に誕生
した。
実施例3:導入MBPアンチセンス遺伝子の検定 実施例2より得た誕生から約4週間後の離乳期の子マ
ウスの尾を切断する。尾の細胞から抽出したDNAについ
て、注入DNAが子マウスの染色体に組み込まれているか
否かをサザンハイブリダイゼーション法(E.Southern,
J.Mol.Biol.,98巻、503頁、1975年)によって調べた。
すなわち、マウスの尾の細胞から高分子量のDNAを精製
し(N.Blin and D.M.Stafford,Nucleic Acid Res.,3
巻、2303頁、1976年)、制限酵素EcoR Iで消化した後、
5μgのDNAを0.7%アガロースゲル電気泳動で展開し、
ナイロン膜(MS1:NO4HY312E5、S&S社製)に転写し
た。次に転写したDNAをフオルムアミド緩衝液中で32Pで
標識した1.2kbのMBPcDNA領域プローブとハイブリダイス
した(A.P.Feinberg and B.A.Vogelstein,Anal.Bioche
m.,132巻、6頁、1983年)。ハイブリダイゼーション
後、ナイロン膜を室温で15分間2XSSPE溶液で2回洗浄
し、次いで、65℃で15分間2XSSPEと0.5%SDSの混合溶液
で1回洗浄したのち、65℃で15分間0.5XSSPEと0.5%SDS
の混合溶液で1回洗浄し、コダック社製X線フィルム
(XRP−5)で2日間露光した。その結果、第3図に示
したように、使用した受精卵128より15匹のマウスが誕
生し、そのうちから5匹の遺伝子導入マウスを得た。ま
た、導入されたMBPアンチセンス遺伝子は2〜50コピー
程度であったが、これらのマウスは第4図に示したよう
に見掛け上正常な表現型を示していた。
実施例4:アンチセンス遺伝子導入動物系の作成 実施例2で得た遺伝子導入マウスのうちの1匹の雄
[AS100(shi/+)]をB6cF1マウス(+/+)と交配さ
せ、50匹の子孫(AS100−1〜As1000−50)を得た。こ
の50匹について、前述のサザンハイブリダイゼーション
法に従って、AS1000からの導入MBPアンチセンス遺伝子
を受継ぐ子孫を21匹選別した。これら21匹の子孫につい
ては、企図振戦症の遺伝形質についてヘテロ接合のもの
(shi/+)と野生型のもの(+/+)がある。ヘテロ接
合についてはシバラー突然変異の染色体にしか存在しな
い制限酵素断片の存在によって確かめた。導入MBPアン
チセンス遺伝子を受継ぐ21匹の遺伝子導入マウスのうち
10匹は、誕生後2週間頃より程度は異なるが、企図振戦
の症状を呈し始め、徐々に企図振戦症特有の表現型を示
すようになってきた。
これらの遺伝子導入マウスの企図振戦症の遺伝型質と
表現型との相関を示したものが表1である。
実施例5:アンチセンス遺伝子を受継ぐ遺伝子導入動物の
脳におけるMBPの検出 遺伝子導入マウスおよび正常マウスから摘出した脳の
半分を4%パラフォルムアルデヒドで固定し、パラフィ
ン包埋した。各プレパラート切片について、マウスMBP
に対するウサギ抗体を第一反応に、ホースラディッシュ
ベルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギlgGを第二反応に
した組織免疫染色を行った。
その結果、第5図に示したように、正常マウスの小脳
では、白質は一様に染色されているが、導入MBPアンチ
センス遺伝子を受継ぐ遺伝子導入マウス(AS100−14)
の小脳では白質の重要な部分は染色されず小脳組織でMB
Pのモザイクが見られるなど、企図振戦症に認められる
組織像がモザイク状に認められた。
実施例6:内在性MBP遺伝子および導入MBPアンチセンス遺
伝子の発現量の測定 誕生後65日目の子孫遺伝子導入マウスと100日目のAS1
00から摘出した脳の半分からChirgwinらの方法(J.M.Ch
irgwin et al.,Biochemistry,18巻、5294頁、1979年)
に従って、全RNAを抽出した。その2.5μgのRNA試料を
グリオキサールで変性させた後(G.K.McMaster and G.
G.Carmichael,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74巻、4835頁、
1977年)、0.9%アガロースゲル電気泳動で展開し、ナ
イロン膜(MSI:NO4HY312F5、S&S社製)に転写した。
その後、まず、内在性MBP遺伝子の発現量を測定する
ために、32Pで標識した1.2kbのMBPcDNA領域のプローブ
をハイブリダイズした。その後、ナイロン膜を室温で5
分間2XSSC/0.1%SDS溶液で2回洗浄し、次いで、65℃で
90分間2XSSC/0.1%SDS溶液で1回洗浄後、コダック社製
X線フィルム(XRP−5)で2日間露光した。
次に、導入MBPアンチセンス遺伝子の発現量を測定す
るために、内在性MBP遺伝子の発現量の測定に用いたナ
イロン膜からプローブを脱ハイブリダイゼーションした
後、SP6ポリメラーゼシステム(Promega製)で合成した
MBPアンチセンスRNAともにハイブリダイズする32Pで標
識した一本鎖のセンスMBP RNAとハイブリダイズさせ
た。その後、ナイロン膜を室温で5分間2XSSC/0.1%SDS
溶液で2回洗浄し、次いで、室温で30分間RnaseA処理2
μg/μl(2XSSC/0.1%SDS溶液中)を行ったあと、65℃
で90分間2XSSC/0.1%SDS溶液で1回洗浄し、コダック社
製X線フィルム(XRP−5)で2日間露光した。
その結果、表2、第6図(A)に示すように、内在性
MBPmRNAの発現量は遺伝子導入マウスであるAS100(shi/
+)、AS100−11(+/+)、AS100−12(shi/+)、AS
100−14(shi/+)では全て、遺伝子導入動物でない同
腹の子孫AS100−10(+/+)と比べて、それぞれ、40
%、50%、30%、20%に減少していた。また、遺伝子導
入マウスでないヘテロ接合(shi/+)のマウス(AS100
−7、AS100−9)のどちらもAS100−10に対してMBPmRN
Aが50%に減少していた、また、遺伝子導入マウスの脳
内の導入MBPアンチセンス遺伝子から発現したアンチセ
ンスRNAの解析では、第6図(B)に示すように遺伝子
導入動物の個体間でRNA量は異なるが、遺伝子導入動物
では全て転写RNAのバンドとして期待される1.9kbのサイ
ズのところにバンドが認められた。一方、遺伝子導入動
物でない同腹の子孫では、いずれも、長時間露光しても
このサイズのバンドは検出されなかった。表2に示した
ようにMBPmRNAの量の減少と異常な表現型の現れかたに
は明瞭な相関があることがわかる。さらに、内在性のMB
PmRNAの減少量と企図振戦症特有の企図振戦を示す表現
型の程度ともよく一致している。
(発明の効果) この発明によれば、アンチセンス遺伝子を染色体中に
保持することにより内在性遺伝子の発現が抑制されてい
る非ヒト哺乳動物を作成することができる。これによ
り、産業上有用な遺伝形質を有する非ヒト哺乳動物個体
を容易かつ確実に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、マウスのMBPアンチセンス遺伝子の作成過程
を示す工程図である。 第2図は、MBPアンチセンス遺伝子(pMBP302AS)の基本
構造図である。 第3図は、遺伝子導入マウスの作成結果を表す受精卵数
と誕生マウスとの相関図である。 第4図は、マウスに導入されたMBPアンチセンス遺伝子
のサザンハイブリダイゼーションによる検定結果を表す
図面代用写真である。 第5図は、マウス小脳の免疫組織染色像を表す図面代用
写真である。 第6図(A)は、マウスに導入したMBPアンチセンス遺
伝子に基づく転写RNAの検出結果を表す図面代用写真で
ある、 第6図(B)は、マウスの内在性MBPmRNAの検出結果を
表す図面代用写真である。

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非ヒト哺乳動物の内在性遺伝子が発現する
    センスRNAの全配列または一部配列に対するアンチセン
    スRNAを発現するアンチセンス遺伝子を導入した非ヒト
    哺乳動物の分化全能性細胞を個体へと発生させた動物個
    体、およびこの動物個体の子孫個体であって、個体の各
    細胞の染色体にアンチセンス遺伝子が組み込まれている
    ことを特徴とするアンチセンス遺伝子導入動物。
  2. 【請求項2】アンチセンス遺伝子が、内在性遺伝子の発
    現している組織または細胞と同所性に働くプロモーター
    配列および/またはエンハンサー配列を連結している請
    求項(1)記載のアンチセンス遺伝子導入動物。
  3. 【請求項3】アンチセンス遺伝子が、内在性遺伝子の発
    現している組織または細胞と同所性に働くプロモーター
    配列および/またはエンハンサー配列を連結するととも
    に、イントロン領域および転写開始部位を有している請
    求項(1)記載のアンチセンス遺伝子導入動物。
  4. 【請求項4】アンチセンス遺伝子の配列が、ミエリン塩
    基性蛋白質センス遺伝子の相補性DNA配列である請求項
    (1)記載のアンチセンス遺伝子導入動物。
  5. 【請求項5】アンチセンス遺伝子が、ヘミ接合で保持さ
    れている請求項(1)記載のアンチセンス遺伝子導入動
    物。
  6. 【請求項6】アンチセンス遺伝子が、ホモ接合で保持さ
    れている請求項(1)記載のアンチセンス遺伝子導入動
    物。
  7. 【請求項7】分化全能性細胞が、生殖系列の細胞である
    請求項(1)記載のアンチセンス遺伝子導入動物。
  8. 【請求項8】請求項(1)記載のアンチセンス遺伝子導
    入動物から分離、取得した動物細胞。
  9. 【請求項9】非ヒト哺乳動物の内在性遺伝子が発現する
    センスRNAの全配列または一部配列に対するアンチセン
    スRNAを発現するアンチセンス遺伝子を非ヒト哺乳動物
    の分化全能性細胞に導入し、この遺伝子導入細胞を動物
    個体へと発生させたのち、個体の各細胞の染色体にアン
    チセンス遺伝子が組み込まれている個体を選別すること
    を特徴とするアンチセンス遺伝子導入動物の作出方法。
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