JP2932831B2 - 摩擦摺動部材 - Google Patents

摩擦摺動部材

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JP2932831B2
JP2932831B2 JP4141701A JP14170192A JP2932831B2 JP 2932831 B2 JP2932831 B2 JP 2932831B2 JP 4141701 A JP4141701 A JP 4141701A JP 14170192 A JP14170192 A JP 14170192A JP 2932831 B2 JP2932831 B2 JP 2932831B2
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16DCOUPLINGS FOR TRANSMITTING ROTATION; CLUTCHES; BRAKES
    • F16D23/00Details of mechanically-actuated clutches not specific for one distinct type
    • F16D23/02Arrangements for synchronisation, also for power-operated clutches
    • F16D23/025Synchro rings

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  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Mechanical Operated Clutches (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、相手材とのなじみ性及
び耐焼付性に優れ、かつ耐摩耗性及び相手攻撃性にも優
れる摩擦摺動部材に関する。この摩擦摺動部材は、例え
ばトランスミッションを構成するシンクロナイザリング
に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】摩擦摺動部材の一例としての一般的なシ
ンクロナイザリングは、内周に内テーパコーンが形成さ
れ、外周にチャンファをもつスプラインが形成されてい
る。このシンクロナイザリングでは、トランスミッショ
ンにおいて、スリーブがセレクタを介して軸方向に変位
されれば、スリーブのスプラインがチャンファを介して
外周のスプラインと噛合され、同時に変速ギアに近接し
て内テーパコーンが変速ギアの外テーパコーンと摩擦接
触する。こうして、スリーブと変速ギアとの回転が同期
され、スリーブが変速ギアと噛合される。
【0003】従来のかかるシンクロナイザリングとして
は、鉄系、アルミニウム青銅系、高力黄銅系の鍛造部材
からなるものが一般に知られている。また、溶射材、ペ
ーパ材、樹脂材等の摩擦摺動部材を採用したシンクロナ
イザリングも知られている。例えば、特開平2−739
03号公報には、樹脂材を採用したシンクロナイザリン
グとして、気孔率3〜20%のFe系焼結合金に合成樹
脂を含浸させたものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、近年、摩擦摺
動部材は非常に厳しい条件下で使用されるようになって
いる。例えば、トランスミッションの小型化、軽量化、
耐高荷重化、耐高回転化等の要望から、シンクロナイザ
リングも非常に厳しい条件下で使用されるようになって
いる。その結果、シンクロナイザリングの内テーパコー
ンと変速ギアの外テーパコーンとの面圧(P)が高く、
両者の相対すべり速度(V)が大きな高PV条件下で
は、上記従来のシンクロナイザリングでは、内テーパコ
ーンが外テーパコーンとの間で焼付、摩耗等を生じる場
合があり、未だ十分に満足できるものではなかった。す
なわち、高PV条件下においては、高力黄銅系の鍛造部
材を採用したシンクロナイザリングでは、長期の使用に
より摩耗量が増加してしまう。また、溶射材を採用した
シンクロナイザリングでは、変速ギアの外テーパコーン
とのなじみ性が悪いことから、焼付が生じ、また溶射材
にクラックが発生することがある。さらに、ペーパ材や
樹脂材を採用したシンクロナイザリングでは、発熱によ
り溶損することもある。特に、樹脂材を採用したシンク
ロナイザリングでは、熱的負荷が厳しいと、樹脂が溶出
し、摩擦係数特性が不安定になってしまう。このため、
高PV条件下において、変速ギアの外テーパコーンとの
間で十分に満足できるシンクロナイザリングが切望され
ていた。
【0005】本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされ
たものであって、過酷な条件下であっても、耐摩耗性に
優れるとともに相手攻撃性が弱く、同時に焼付が生じに
くく、かつ摩擦係数が長期にわたって安定した摩擦摺動
部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の摩擦摺動部材
は、10〜20重量%のSi及び残部AlからなるAl
−Si系合金粉末;70〜20重量%と、Mo粉末;3
0〜80重量%とからなり、気孔率;10〜20%で焼
結された母相と、該母相に含浸され、Sn;2〜20重
量%と、少なくともIn;0.05〜15重量%及びC
u;0.01〜5重量%の一方と、残部Pbとからなる
軟質合金と、からなることを特徴とするものである。
【0007】以下、母相の組成及び気孔率を限定した理
由について述べる。 〔Al−Si系合金粉末中におけるSi;10〜20重
量%(以下、重量%を単に%という。)〕Siが10%
未満であれば、硬さが低くなり、摩耗量が急増する。逆
に、Siが20%を超えると、相手攻撃性が大きくな
る。 〔Mo粉末;30〜80%〕Mo粉末が30%未満であ
れば、摩擦面において塑性流動が発生し、摩耗が急増す
る。逆に、Mo粉末が80%を超えると、相手攻撃性が
大きくなる。 〔気孔率;10〜20%〕母相の気孔率については、焼
付防止に関係するなじみ性の確保及び摩擦面での耐摩耗
性を確保するため、10〜20%とした。すなわち、気
孔率が10%未満であれば、母相の占める面積が多いた
め、耐摩耗性は確保されるが、厳しい条件となると、焼
付気味の摩耗を生じる。また、このとき、気孔中への軟
質合金の含浸状態が悪く、軟質合金の占める面積も少な
いため、焼付発生や相手材への攻撃性が大きいことか
ら、耐久性が低下する。逆に、気孔率が20%を超える
と、焼付の発生は抑制できるが、含浸した軟質合金の占
める面積が多いため、摩擦面の硬さが低く、摩耗量が大
きくなるという問題を生じる。また、このとき、母相の
占める面積が少ないことから、摩擦摺動部材としての強
度が保てず、剥離等を生じるおそれがある。
【0008】次に、軟質合金の組成を限定した理由につ
いて述べる。 〔Sn;2〜20%〕Snは軟質合金に耐蝕性、耐摩耗
性を付与する。Snが2%未満であれば、耐蝕性及び耐
摩耗性向上の効果が少ない。逆に、Snが20%を超え
ると、高温下での軟質合金の硬度が低下し、耐摩耗性が
悪化する。Sn;5〜15%がより好ましい。 〔少なくともIn;0.05〜15%及びCu;0.0
1〜5%の一方〕Inは、軟質合金に耐蝕性を付与し、
またSnとの間で金属間化合物を生成してSnを安定さ
せ、軟質合金のなじみ性を向上させる。Inが0.05
%未満であれば、これらの効果が少ない。逆に、Inが
15%を超えると、軟質合金の硬度が低下し、耐摩耗性
が悪化する。In;3〜10%がより好ましい。
【0009】Cuは、軟質合金の組織を緻密化し、耐摩
耗性を付与する。Cuが0.01%未満であれば、耐摩
耗性が低い。逆に、Cuが5%を超えると、耐蝕性及び
耐疲労性が悪化する。Cu;1〜3.5%がより好まし
い。これらInとCuは少なくとも一方が含有されてお
れば、効果を発揮する。なお、本発明の摩擦摺動部材を
シンクロナイザリングに採用し、母相をその内テーパコ
ーンのみに用いる場合は、母相の厚さは0.5〜1.5
mmとすることが好ましい。0.5mm未満では強度が
不足し、1.5mmより大きいものではコスト高とな
る。
【0010】
【作用】本発明の摩擦摺動部材では、所定のAl−Si
系合金粉末とMo粉末とが所定の割合で焼結され、Mo
粉末が硬質粒子として作用する。また、こうして焼結さ
れた母相は内部に連続した気孔をもつ。この連続した気
孔内には軟質合金が含浸され、母相中にほぼ均一に軟質
合金が含まれる。軟質合金は、Pb−Sn−In系合金
又はPb−Sn−Cu系合金からなり、相手材との間で
自己潤滑性を発揮して相手材とのなじみ性を向上させて
いる。このため、この摩擦摺動部材では、耐摩耗性に優
れるとともに相手攻撃性が弱い。また、母相は、Al−
Si+Mo系合金の焼結体であり、負荷荷重を支持して
いる。そして、軟質合金を含浸した母相では、軟質合金
を含浸した母相が経時的に完全に摩耗されてしまうま
で、軟質合金により焼付が生じにくく、ほぼ同じ摩擦係
数が維持される。
【0011】仮に、母相が溶射により形成されたもので
あれば、気孔は存在するものの、気孔が焼結体と比較し
て少なく、また連続した気孔とはならない。このため、
この独立した気孔内に軟質合金を含浸させても、表面近
傍のみしか軟質合金が含浸されない。よって、この場合
には、軟質合金を含浸した母相が薄いことから、軟質合
金を含浸した母相が経時的に摩耗されてしまえば、溶射
により形成された母相が摩耗されることとなり、焼付の
発生が心配される。また、この場合、軟質合金を含浸し
た母相が薄いことから、摩耗初期しか自己潤滑性を発揮
することができず、摩擦係数が短期で経時変化を起こし
てしまう。
【0012】なお、特開昭59−145764号公報に
は、気孔率15〜50%を有するFe合金焼結体に、潤
滑性を有するPb合金を含浸した「制振性および潤滑性
にすぐれた強磁性複合焼結材料」が開示されている。し
かし、この強磁性複合焼結材料は、磁性が要求されるソ
レノイドバルブを目的としていることから、主としてF
eを含有する母相をもち、母相がAlを主とする本発明
の摩擦摺動部材をなんら開示するものではない。
【0013】また、特開平1−252744号公報に
は、気孔率0.05〜5%のCu−Zn−Al−Si−
Mn系の焼結合金からなる「Cu系焼結合金製変速機用
同期リング(シンクロナイザリング)」が開示されてい
る。しかし、Cuを主とするシンクロナイザリングは、
ギア油中で硫化されてCuSを発生させやすく、腐食し
て耐久性が損なわれるおそれがある。一方、本発明の摩
擦摺動部材はAlを主としているため、シンクロナイザ
リングに適用した場合にギア油中でCuSを発生せず、
優れた耐久性を発揮する。
【0014】
【実施例】
(1)以下、本発明の摩擦摺動部材をシンクロナイザリ
ングに具体化した実施例1、2を比較例1〜6とともに
図面を参照しつつ説明する。 (実施例1)実施例1のシンクロナイザリングは、図1
及び図2に示すように、リング状の本体1と、この本体
1の内テーパコーン部位1aにろう付けされた母相2
と、母相2の気孔内に溶浸された軟質合金3とからな
る。
【0015】本体1は、冷間鍛造により形成されたJI
SSPCC製からなる。母相2は、70(Al−15S
i)+30Mo(Al−Si系合金粉末におけるSi;
15%、残部Al。同Al−Si系合金粉末;70%、
Mo粉末;30%。以下、同様。)からなり、気孔率が
15%の焼結体である。この母相2は次のようにして得
た。まず、Al−15Si合金粉末(粒径φ60〜70
μm)と、Mo粉末(粒径φ45〜50μm)とを用意
し、Al−15Si合金粉末70%とMo粉末30%と
を混粉した。この混粉を圧力7ton/cm2 で所定形
状に成形し、成形体とする。この成形体をアンモニア分
解ガス雰囲気中、温度500℃にて60分間焼結し、厚
さ1mmの焼結体を得た。この焼結体の気孔率は15%
であった。そして、この焼結体を本体1の内テーパコー
ン部位1aにろう付けした。
【0016】軟質合金3は、Pb−10Sn−6In
(Sn;10%、In;6%、残部Pb。以下、同
様。)からなる。この軟質合金3は次のようにして得
た。まず、上記組成となるように金属粉末を300℃で
溶解し、溶湯を用意する。そして、この溶湯内に母相2
を60分間浸漬し、母相2の気孔に軟質合金3を溶浸さ
せた。こうして得られたシンクロナイザリングの内テー
パコーンは、硬さがHv180、表面粗さが20μmR
zであった。 (実施例2)実施例2のシンクロナイザリングは、軟質
合金がPb−10Sn−2Cuからなる点を除いて、実
施例1のものと同一のものである。こうして得られたシ
ンクロナイザリングの内テーパコーンは、硬さがHv1
70、表面粗さが20μmRzであった。 (比較例1)比較例1のシンクロナイザリングは、母相
の気孔率が8%であることを除き、実施例1と同一のも
のである。すなわち、このシンクロナイザリングは、上
記実施例1で使用した混粉の成形圧力を9ton/cm
2 とし、他の製法を実施例1と同一とすることにより得
た。こうして得られたシンクロナイザリングの内テーパ
コーンは、硬さがHv210、表面粗さが20μmRz
であった。 (比較例2)比較例2のシンクロナイザリングは、母相
の気孔率が22%であることを除き、実施例1と同一の
ものである。すなわち、このシンクロナイザリングは、
上記実施例1で使用した混粉の成形圧力を6ton/c
2 とし、他の製法を実施例1と同一とすることにより
得た。こうして得られたシンクロナイザリングの内テー
パコーンは、硬さがHv130、表面粗さが20μmR
zであった。 (比較例3)比較例3のシンクロナイザリングは、母相
の気孔にポリアミド樹脂を溶浸させたことを除き、実施
例1と同一のものである。こうして得られたシンクロナ
イザリングの内テーパコーンは、硬さがHv130、表
面粗さが20μmRzであった。 (比較例4)比較例4のシンクロナイザリングは、母相
の表面にSn;10%と、In;6%と、残部Pbとか
らなるめっき層を形成したことを除き、実施例1と同一
のものである。こうして得られたシンクロナイザリング
の内テーパコーンは、硬さがHv100、表面粗さが2
0μmRzであった。 (比較例5)比較例5のシンクロナイザリングは、軟質
合金を形成しない点を除き、実施例1と同一のものであ
る。こうして得られたシンクロナイザリングの内テーパ
コーンは、硬さがHv220、表面粗さが20μmRz
であった。 (比較例6)比較例6のシンクロナイザリングは、一般
的に使用されている高力黄銅系(Zn−60Cu−5A
l)の鍛造品である。こうして得られたシンクロナイザ
リングの内テーパコーンは、硬さがHv220、表面粗
さが20μmRzであった。 (評価1)実施例1、2及び比較例1〜6のシンクロナ
イザリングを用い、単体摩擦試験を行った。試験条件
は、回転数1400rpm、押し付け力100kgf、
油温120℃、最高継合回数10000回である。相手
材はクロム鋼焼入れ材である。また、潤滑油はギアオイ
ル75W−90を使用し、油量はシンクロナイザリング
の中央部までとした。
【0017】シンクロナイザリングの内テーパコーンと
相手材との間で発生する摩擦係数(μ)と継合回数(サ
イクル)との関係を図3に示す。図3から、実施例1の
シンクロナイザリングでは、摩擦係数が0.08とやや
低いものの、摩擦係数が長期にわたって経時変化もなく
安定していることがわかる。また、実施例2のシンクロ
ナイザリングでは、摩擦係数が0.07であって長期に
わたり経時変化もなく安定している。つまり、これらの
シンクロナイザリングでは、初期の摩擦係数の安定性に
優れる。これは、母相に所定の割合で連続気孔が存在
し、この気孔中に存在するPb−Sn−In系合金から
なる軟質合金が特に初期の当たり付け段階時に相手材と
のなじみ性を向上させているためであると考えられる。
また、摩擦係数について、軟質合金中でInとCuとは
同等の効果が得られることもわかる。
【0018】一方、比較例1のシンクロナイザリングで
は、実施例1、2のものと比較して軟質合金の割合が少
ないため、摩擦係数は高いが、初期の当たり付けの段階
での摩擦係数変化が大きいことがわかる。また、比較例
1のシンクロナイザリングでは、継合回数の増加に伴
い、焼付気味となり、摩擦係数が上昇傾向となることが
わかる。
【0019】比較例2のシンクロナイザリングでは、実
施例1、2のものと比較して逆に軟質合金の割合が多い
ため、摩擦係数の安定性は問題ないが、摩擦係数が0.
05と低く、シンクロナイザリングとして最低必要な
0.07の値に達しないことがわかる。比較例3のシン
クロナイザリングでは、ポリアミド樹脂が溶浸されてい
るため、摩擦係数は実施例1、2のものと比較してやや
低くなることがわかる。また、このシンクロナイザリン
グでは、ポリアミド樹脂が有機物であるという欠点か
ら、継合回数が増して負荷(特に熱的負荷)が厳しくな
ると、気孔からポリアミド樹脂が溶出し、摩擦係数が上
昇傾向となることがわかる。
【0020】比較例4のシンクロナイザリングでは、初
期なじみにおいて優れるが、3000サイクル以降でめ
っき層の摩耗により母相のみとなってしまい、摩擦係数
が急上昇し、焼付が発生した。比較例5のシンクロナイ
ザリングでは、5000サイクル以降、摩擦係数が上昇
傾向となり、7000サイクル時点で焼付が発生した。
【0021】比較例6のシンクロナイザリングでは、2
000サイクル以降、摩擦係数が低下傾向となる。次
に、シンクロナイザリングの摩耗量(シンクロナイザリ
ングの軸方向変位量δ(mm))と継合回数(サイク
ル)との関係を図4に示す。図4から、実施例1のシン
クロナイザリングでは、継合回数が増加しても、摩耗量
は少なく、かつ相手攻撃性が弱く、軸方向変位量がほぼ
安定していることがわかる。また、実施例2のシンクロ
ナイザリングでは、実施例1のものと比較して、やや摩
耗量は多くなるが、目標である0.4mmに対しては満
足できることがわかる。これは、これらのシンクロナイ
ザリングにおいて、所定の軟質合金の部分で相手材との
なじみ性を確保しつつ、母相のAl−Si+Mo系合金
の焼結体で負荷荷重を支持していると考えられるからで
ある。また、摩耗量についても、軟質合金中でInとC
uとは同等の効果が得られることもわかる。
【0022】一方、比較例1のシンクロナイザリングで
は、焼付気味となった時点からの摩耗量が多くなってい
る。比較例2のシンクロナイザリングでは、軟質合金の
占める割合が多いため、初期の段階で摩耗が促進され、
背面当たりとなっている。比較例3のシンクロナイザリ
ングでは、気孔中に溶浸されているものがポリアミド樹
脂であることから、実施例1、2よりもやや摩耗量が多
く、継合回数の増加に伴い、摩耗は多くなる。
【0023】比較例4のシンクロナイザリングでは、初
期に摩耗量が多くなり、背面当たりに至ってしまった。
比較例5のシンクロナイザリングでは、焼付発生に伴い
摩耗量が急増している。比較例6のシンクロナイザリン
グでは、継合回数の増加に伴い摩耗量が多くなり、背面
当たりが発生した。 (評価2)次に実施例1、2及び比較例5、6のシンク
ロナイザリングを実機に組み込み、実機での効果を確認
した。試験は、1600ccエンジン用横置き型マニュ
アルトランスミッションを用いて10万回のハードシフ
トを行なうことにより、焼付の有無の確認、摩耗量の測
定、ギア鳴りの有無の確認を行った。なお、摩耗量はテ
ーパゲージによる出入り量(mm)で測定した。結果を
表1に示す。
【0024】
【表1】 表1より、実施例1のシンクロナイザリングでは、比較
例5、6のものと比較して、焼付の発生もなく、摩耗量
も非常に少なく、かつギア鳴りもないことがわかる。ま
た、実施例のシンクロナイザリングでは、実施例1のも
のと比較して、やや摩耗量が多くなるが、目標である
0.6mmに対しては満足でき、かつ焼付きの発生もな
く、良好であることがわかる。
【0025】評価1、2より、実施例1、2のシンクロ
ナイザリングは、比較例1〜6のものと比較して、相手
材との面圧が高く、相手材との相対すべり速度が大きな
過酷な条件下であっても、耐摩耗性に優れるとともに相
手攻撃性が弱く、同時に焼付が生じにくく、かつ摩擦係
数が長期にわたって安定していることがわかる。 (2)次に、本発明の摩擦摺動部材における母相の組
成、母相の気孔率及び軟質合金の組成を限定した確認試
験を図面を参照しつつ説明する。 (母相の組成)実施例1、2の母相と同一の条件の下、
アルミブロンズ(Cu−9.7Al−1.2Fe−0.
02Ni)粉末で焼結させた皮膜、Al−Si系合金
(Al−15Si)粉末で焼結させた皮膜、Fe−Mo
−C系合金(Fe−13.5Mo−2.46C)粉末で
焼結させた皮膜、Fe−Cr−C系合金(Fe−62.
7Cr−7.5C)粉末で焼結させた皮膜及びMo(微
少量のMo酸化物含有)粉末で焼結させた皮膜を用意し
た。
【0026】これら5種の各皮膜をテストピース評価に
供した。図5に、皮膜の摩耗量(mg)と相手材の摩耗
量(mg)とを示す。また、図6に、焼付荷重(×10
3 N)を示す。図5及び図6より、Al−Si系合金粉
末からなる皮膜と、Fe−Mo−C系合金粉末からなる
皮膜とが、皮膜及び相手材の摩耗量が少なく、かつ焼付
荷重が高いことから、母相としてこれら2種の組成が好
適であることが確認できた。
【0027】次に、アルミブロンズ粉末、Al−Si系
合金粉末、Fe−Mo−C系合金粉末又はFe−Cr−
C系合金粉末にMo粉末を0〜50%添加し、実施例
1、2の母相と同一の条件の下、皮膜を形成した。ま
た、Al−Si系合金粉末、Fe−Mo−C系合金粉末
又はFe−Cr−C系合金粉末にAl−Pb(Al−1
0Pb)系合金粉末を0〜50%添加し、実施例1、2
の母相と同一の条件の下、皮膜を形成した。図6の試験
条件と同一の条件の下、Mo粉末を添加した各皮膜の焼
付荷重(×103 N)を図7に示す。また、同条件の
下、Al−Pb系粉末を添加した各皮膜の焼付荷重(×
103 N)を図8に示す。図7及び図8より、Al−S
i+Mo系合金からなる皮膜が最も好適であることが確
認できた。
【0028】次いで、Mo粉末;30%で固定し、Al
−Si系合金粉末中のSiを0〜25%で種々変え、実
施例1、2の母相と同一の条件の下、皮膜を形成した。
テストピース評価による各皮膜の摩耗量(×103 cm
3 )及び密着強さ(MPa)を図9に示し、相手材摩耗
深さ(μm)を図10に示す。図9、10より、Al−
Si系合金粉末中のSiが10〜20%であれば、摩耗
量が少なく、密着強さが大きく、かつ相手攻撃性が弱い
ことが確認できた。
【0029】また、Al−15Si合金粉末に添加する
Mo粉末を0〜85%で種々変え、実施例1、2の母相
と同一の条件の下、皮膜を形成した。テストピース評価
による各皮膜の摩耗量(μm)を図11に示し、相手材
摩耗深さ(μm)を図12に示す。図11、12より、
Al−15Si合金粉末にMo粉末を30〜80%で添
加すれば、摩耗量が少ないことが確認できた。
【0030】したがって、母相としては、10〜20%
のSi及び残部AlからなるAl−Si系合金粉末;7
0〜20%と、Mo粉末;30〜80%とからなるAl
−Si+Mo系合金が好適であることがわかる。 (母相の気孔率)実施例1、2と同一組成であって、気
孔率が5〜25%まで異なるシンクロナイザリングを用
意し、これらを評価1と同一条件の下、シンクロナイザ
リングの摩耗量(変位量、mm)と、変速ギアにおける
外テーパコーンの摩耗量(μm)とを求めた。結果を図
13に示す。図13より、気孔率が10〜20%であれ
ば、シンクロナイザリング及び外テーパコーンの摩耗量
が少なく、優れていることがわかる。 (軟質合金の組成)Pb−Sn−In(Pb−10Sn
−5In)系軟質合金と、Sn−Pb−Cu(Sn−7
Pb−4Cu)系軟質合金と、Cu−Pb−Sn(Cu
−20Pb−5Sn)系軟質合金と、Pb−Sn−Cu
(Pb−10Sn−2Cu)系軟質合金とを実施例1と
同様に溶解し、実施例1の母相を用いて、実施例1と同
様に母相の気孔中に各軟質合金を溶浸させた。こうし
て、得た各皮膜について、テストピース評価により焼付
荷重(×103 N)を求めた。結果を図14に示す。図
14より、Pb−Sn−In系軟質合金及びPb−Sn
−Cu系軟質合金が高焼付荷重性を示すことが確認でき
た。
【0031】したがって、軟質合金としては、Sn;2
〜20%と、少なくともIn;0.05〜15%及びC
u;0.01〜5%の一方と、残部Pbとからなるもの
が好適であることがわかる。なお、上記実施例1、2及
び確認試験では溶浸法により気孔中へ軟質合金を含浸さ
せたが、母相に軟質合金が均一に含まれるものであれ
ば、溶浸法に限定されず、例えばPVD法等を採用する
こともできる。また、母相は、内テーパコーンのみでな
く、本体と一体としてもよい。
【0032】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の摩擦摺動
部材では、特許請求の範囲記載の構成を採用したもので
あるため、相手材との面圧が高く、かつ相手材との相対
すべり速度が大きな条件下であっても、次のような優れ
た効果を奏することができる。この摩擦摺動部材は、自
己潤滑性をもつため、優れた耐摩耗性を発揮し、かつ相
手材をさほど強く攻撃しない。
【0033】また、この摩擦摺動部材は、焼付が生じに
くく、安定した摩擦係数を長期にわたって維持すること
ができる。したがって、この摩擦摺動部材を例えばトラ
ンスミッションのシンクロナイザリングに採用すれば、
厳しい条件下でも上記効果を奏することができることか
ら、近年のトランスミッションの小型化、軽量化、耐高
荷重化、耐高回転化等の要望を好適に実現することがで
きる。
【0034】また、本発明の摩擦摺動部材では、母相が
焼結されたものであるため、シンクロナイザリングに適
用した場合に、鍛造成形した従来のものと比較して、成
形性及び寸法精度に優れる。このため、シンクロナイザ
リング全体にこの摩擦摺動部材を適用して、スプライン
のチャンファでも上記優れた効果を発揮させることもで
きる。
【0035】さらに、本発明の摩擦摺動部材では、母相
にCuを採用しておらず、シンクロナイザリングに適用
した場合に、ギア油中で硫化されてCuSを発生させな
いため、腐食しにくく、優れた耐久性を発揮することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のシンクロナイザリングの断面図であ
る。
【図2】実施例1のシンクロナイザリングに係り、図1
の円内拡大断面図である。
【図3】実施例1、2と比較例1〜6とにおける継合回
数と摩擦係数との関係を示すグラフである。
【図4】実施例1、2と比較例1〜6とにおける継合回
数と軸方向変位量との関係を示すグラフである。
【図5】母相の組成の差異による皮膜の摩耗量及び相手
材摩耗量の差異を示すグラフである。
【図6】母相の組成の差異による焼付荷重の差異を示す
グラフである。
【図7】Mo添加量に起因する母相の組成の差異による
焼付荷重の差異を示すグラフである。
【図8】Al−Pb添加量に起因する母相の組成の差異
による焼付荷重の差異を示すグラフである。
【図9】Si量に起因する母相の組成の差異による摩耗
量及び密着強さの差異を示すグラフである。
【図10】Si量に起因する母相の組成の差異による相
手材摩耗深さの差異を示すグラフである。
【図11】Mo添加量に起因する母相の組成の差異によ
る皮膜の摩耗量の差異を示すグラフである。
【図12】Mo添加量に起因する母相の組成の差異によ
る相手材摩耗深さの差異を示すグラフである。
【図13】気孔率の差異によるシンクロナイザリングの
摩耗量及び外テーパコーンの摩耗量の差異を示すグラフ
である。
【図14】軟質合金の組成の差異による焼付荷重の差異
を示すグラフである。
【符号の説明】
1…本体 1a…内テーパコーン部位 2…母相 3…軟質合金
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F16D 23/06 F16D 23/06 D // C22C 11/00 C22C 11/00 11/04 11/04 21/00 21/00 B

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】10〜20重量%のSi及び残部Alから
    なるAl−Si系合金粉末;70〜20重量%と、Mo
    粉末;30〜80重量%とからなり、気孔率;10〜2
    0%で焼結された母相と、 該母相に含浸され、Sn;2〜20重量%と、少なくと
    もIn;0.05〜15重量%及びCu;0.01〜5
    重量%の一方と、残部Pbとからなる軟質合金と、から
    なることを特徴とする摩擦摺動部材。
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