JP2927855B2 - 複数固定子誘導同期電動機 - Google Patents

複数固定子誘導同期電動機

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JP2927855B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は同期電動機に関する。
〔従来の技術〕
一般に同期電動機は、その回転子を固定子巻線の作る
回転磁界の回転速度すなわち同期速度近くまで加速する
起動機と、回転子巻線の直流励磁が必要である。
この起動機を省略して同期電動機自体に起動トルクを
持たせるように考案されたの誘導同期電動機で、これは
起動時には回転子巻線を短絡して誘導電動機として起動
するために起動機は必要としないが、同期運転に必要な
回転子巻線の直流励磁のために、ブラシを必要とする。
なすわち、回転子の回転速度が同期速度に近づくと回転
子巻線の短絡を開放して外部の直流電源からブラシを介
して回転子巻線に直流電流を流して回転子に磁極を作
り、この磁極が固定子巻線の作る回転磁界に引張られて
回転子は同期速度で回転する。このブラシは保守点検を
必要とすることから保守費が嵩み、ブラシレス構造の同
期電動機の開発が望まれている。
このブラシレス構造の同期電動機としては、従来から
永久磁石形やリラクタンス形があるが、トルクが小さ
く、減磁の問題や、低力率等の欠点があるため小容量の
ものに限られている。またランデル形やインダクタ形の
同期電動機は磁路の構成が複雑で大型となる欠点があっ
た。また交流励磁器と回転整流器を用いる方法も同様で
ある。また回転子巻線にダイオードを接続してインバー
ターの方形波電圧による高調波磁界を利用するブラシレ
ス自励形三相同期電動機は回転子の界磁起磁力が不足で
十分な出力が得られない欠点がある。更には三相の固定
子巻線の一相にダイオードを挿入して固定子の作る正相
分回転磁界に静止磁界を重畳して、同期速度で回転する
回転子巻線に静止磁界による交流電圧を誘起させて、こ
れをダイオードで整流することによって回転子巻線を直
流励磁して、正相分回転磁界を作用させて同期トルクを
発生するブラシレス自励形三相同期電動機があるが、こ
れは誘導機始動が不可能なために、回転子鉄心の渦電流
による起動となり起動トルクが小さい欠点がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
したがって起動トルクが大きく、さらに同期トルクも
大きく、しかもブラシを必要とせず、保守点検が容易で
構造が簡単で専用の起動機も必要としない同期電動機の
提供を技術的課題とするものである。
〔課題を解決するための手段〕
前記課題を解決するために、同一回転軸上に任意の間
隔をおいて設けた複数個の回転子コアに巻装した回転子
巻線のそれぞれを並列に接続すると共に、該回転子巻線
の端子間にダイオードを接続した回転子と、前記各回転
コアにそれぞれ対向して周設した複数個の固定子と、該
複数個の固定子のうち特定の固定子がこれに対峙する回
転子コアの周囲に生じる回転磁界と他の固定子がこれに
対峙する回転子コアの周囲に生じる回転磁界との間に0
゜と180゜の2つの位相差を生じさせる電圧移相装置及
び前記複数個の固定子に設けた直流励磁回路とを備え、
起動時に位相差0゜とし、同期引き入れ時に直流励磁回
路を作動させると共に位相差を180゜として同期運転す
るようにしたことにより前記課題を解決するための手段
とした。
あるいは同一回転軸上に任意の間隔をおいて設けた複
数個の回転子コアに巻装した回転子巻線のそれぞれを並
列に接続した回転子と、前記各回転子コアにそれぞれ対
向して周設した複数個の固定子と、前記複数個の固定子
のうち特定の固定子がこれに対峙する回転子コアの周囲
に生じる回転磁界と、他の固定子がこれに対峙する回転
子コアの周囲に生じる回転磁界との間に0゜と180゜の
2つの位相差を生じさせる電圧移相装置と、前記回転軸
に直結した整流回路を有する回転電機子と該回転電機子
に対向して周設した直流励磁用の固定子とからなる回転
電機子形発電機とを備え、前記回転電機子の整流回路の
直流出力を、前記複数個の回転子コアに巻装した回転子
巻線にダイオードを介して並列に接続して、起動時に位
相差を0゜とし、同期引き入れ時に回転電機子発電機を
作動させると共に位相差を180゜とすることにより前記
課題を解決するための手段とした。
更に本発明では、前記回転子を複数個の突極形回転子
コアで構成し、該複数個の突極形回転子コアの外周上に
連通して複数個の導体を装着しその両端部において前記
導体を短絡する短絡環とを設けて構成すること、前記直
流励磁回路は、固定子巻線の1相にサリスタとダイオー
ドを逆極性に並列に接続した回路を挿入したものとする
こと、前記電圧移相装置は、固定子位置を機械的に回動
し得るように構成すること、あるいは電圧移相装置を、
固定子巻線の端子をスイッチによって切換えて電源に接
続し得るように構成することも有効な手段である。
〔作 用〕
複数固定子誘導電動機の電圧移相装置の作用について
本出願人は特願昭61−128314号においてその詳細を説明
している。
本発明によると、先ず同一回転軸上に設けた複数個の
回転子コアに巻装した回転子巻線をそれぞれ並列に結線
して該回転子巻線の端子間にダイオードを接続した回転
子と、固定子巻線および直流励磁回路を設けた複数固定
子より構成されたものにおいて、起動時には複数個の固
定子巻線の作る回転磁界によって複数個の回転子巻線に
誘起される電圧が同相になるように、すなわち回転子巻
線間を還流する電流が流れるように、従って回転子巻線
の端子間に接続したダイオードには電流が流れないよう
に、電圧移相装置を作動させて一般の誘導電動機として
起動する。起動後回転子の回転速度が上昇して回転磁界
の回転速度すなわち同期速度に近づくと、回転磁界によ
る回転子巻線の誘起電圧は小さくなる。ここまでは誘導
電動機としての動作であるが、すべりSがS=0.05に近
づいた時に同期運転に入る。これは次のようにして行
う。
先ず複数個の固定子のうち特定の固定子がこれに対峙
する回転子コアの周囲に生じる回転磁界と他の固定子が
これに対峙する回転子コアの周囲に生じる回転磁界との
間に180度の位相差を生じさせるように電圧移相装置を
作動させる。このようにすると今まで回転子巻線間を還
流して流れていた電流が流れなくなり、回転子巻線の端
子間に接続したダイオードを通じて電流が流れるように
なる。
また、電圧移相装置と共に固定子に設けた直流励磁回
路を作用させると、この直流励磁回路によって静止磁界
が生じ、回転子巻線はこの静止磁界と鎖交して交流の電
圧を誘起するようになる。この交流電圧は回転子の回転
速度が大になるほど大きくなる。
この交流電圧の位相は前記電圧移相装置と連動させて
あるので、この交流電圧が回転子巻線の端子間に接続さ
れたダイオードに印加され、整流された電流が回転子巻
線に流れるように作用して回転子コアは磁極を形成し、
固定子巻線の作る回転磁界に引張られて回転子は同期速
度で回転する。
ここで同期トルクを考察してみるに、複数個の固定子
のうち特定の固定子が作る回転磁界の位相が、他の固定
子が作る回転磁界のそれよりも180゜移相されるが、前
記静止磁界によって特定の固定子と対峙する回転子の回
転子巻線に流れるダイオードで整流された電流の方向も
他の回転子巻線のそれとは逆方向になるので、同期トル
クはすべての回転子において同一の方向となり、同期ト
ルクはすべて加算されることになって、本発明の誘導同
期電動機は複数固定子ではあるがその合計の容量は、従
来のブラシを有する誘導同期電動機と同等である。
以上のように、本発明の複数固定子誘導同期電動機
は、起動時には従来の誘導電動機の原理で起動するから
起動トルクが大きく、従って他の特別の起動機を必要と
しない。また同期速度においては回転子巻線が直流励磁
巻線の作用をするので同期トルクが大きく、ブラシなど
の保守を必要としない同期電動機を提供することが可能
となった。
また前記直流励磁回路にかえて、回転軸に整流回路を
有する回転電機子と、それに対向して周設した直流励磁
用の固定子を設け、前記整流回路の直流出力を回転子巻
線に並列に接続し、回転子巻線を直流励磁することによ
って同期運転することも可能である。
また、複数個の回転子コアを突極形とし、その複数個
の突極形回転子コアに巻装した回転子巻線のそれぞれを
並列に接続すると共に該回転子巻線の端子間にダイオー
ドを接続し、さらに突極形回転子コアの外周上にカゴ形
回転子導体を設けて回転子を構成したものは、起動時に
は複数個の固定子の作る回転磁界がすべて同相になるよ
うに電圧移相装置を作動させ、前記回転磁界により回転
子コアに巻装した回転子巻線には還流電流が流れ、カゴ
形回転子導体にも電流が流れて起動する。同期運転時に
は特定の固定子の作る回転磁界の位相を電圧移相装置に
よって180゜移相すると、突極形回転子コアに巻装した
回転子巻線の前記還流電流と、カゴ形回転子導体の電流
とが流れないようにする。このとき固定子に設けた直流
励磁回路を作用させると直流励磁回路の静止磁界により
突極形回転子コアに巻装した回転子巻線に交流電圧が生
じ、よってその回転子巻線の端子に接続したダイオード
を通じて整流電流が流れる。この整流電流で回転子巻線
を直流励磁することによって同期運転することが可能で
ある。また前述の通り、この場合も固定子の直流励磁回
路にかえて回転軸に直結した整流回路を有する回転電機
子と、それに対向して周設した直流励磁用の固定子を設
け、前記整流回路の直流出力を回転子コアに巻装された
回転子巻線に並列に接続し、その回転子巻線を直流励磁
することによって同期運転することも可能である。
ところで上記直流励磁回路は複数個の固定子巻線の1
相を利用して、サイリスタとダイオードを逆極性に並列
に接続した回路を前記巻線の一相に挿入し、サイリスタ
の点弧角を変えてその巻線に直流分電流を流すことによ
って静止磁界を作ることも可能である。
なお、電圧移相装置としては本出願人が特願昭61−12
8314号において固定子の位置を回転軸のまわりに機械的
に回動させることによって変える方法と、固定子巻線の
接続をスイッチによって切換えて行う方法の2つを説明
している。
以上のような構成によって、起動トルクが大きく、さ
らに同期トルクも大きく、しかもブラシを必要とせず、
保守点検が容易で構造が簡単で専用の起動機を必要とし
ない同期電動機を提供することが可能となった。
ところで、前記固定子巻線を励磁する電源は、商用周
波数の交流電源かまたはインバーターを利用した可変周
波数電源を利用できる。また単相においても多相におい
ても利用できるものである。上記可変周波数電源を利用
すると、同期速度の変更が容易に可能となり、その場合
でも通常の誘導電動機の始動トルクで起動可能であり、
利用分野は大きく拡大し、安価な同期電動機の提供が可
能となった。
〔実施例〕
本発明は主として2固定子誘導同期電動機を主構成と
して詳細を説明するが、固定子数はこれに限定されない
ことは言うまでもない。また固定子巻線の結線も並列、
直列、スター結線、デルタ結線のいずれでもよい。さら
に2相、3相、多相のどちらでもよい。また回転子巻線
も同様である。すでに本出願人は、特願昭61−128314号
として本発明の構成の一部である複数固定子からなる誘
導電動機の構成、作用の詳細な説明を行っている。たと
えば、電圧移相装置によって、複数個の固定子のうち特
定の固定子がこれに対峙する回転子の周囲に生じる回転
磁界と他の固定子がこれに対峙する回転子の周囲に生じ
る回転磁界との間の位相差を、たとえば同相すなわち電
気角で0゜とした場合、回転子導体に流れる電流は回転
子導体を還流し、たとえば電気角で180゜とした場合、
回転子導体に流れる電流は回転子コア間で回転子導体間
を連結した連結材を通じて流れることなどを詳説してい
る。
更に電圧移相装置の構成については、固定子を回動さ
せるものや、固定子巻線の結線の切換えを行うものなど
を示しているが、本発明において、特に固定子巻線の結
線の切換を行なって電圧移相装置を構成すると、前記電
気角の0゜から180゜への切換は瞬時に行なえるため同
期速度への引き込みは容易となる。また回転速度を検出
するセンサーと、直流励磁回路と、電圧移相装置の制御
装置とを設けて連絡すると、同期速度への引き込みが自
動化できると共に、万一脱調した場合でも、回転速度を
検出するセンサーの信号により即座に同期運転から誘導
電動機の運転に切換え可能であり、一般の同期電動機の
ように脱調から急激に停止することがなく事故防止が簡
単にできるものとなる。
第1図により本発明の第1の実施例を説明する。まず
符号20は2固定子誘導同期電動機の固定子側を示す。ま
た符号30は同じく回転子側を示す。
固定子側20は、スター結線した2つの固定子巻線21,2
2が並列に3相交流電源R,S,Tに接続されている。さらに
固定子側20には固定子巻線21,22とは別に直流励磁回路
の直流励磁巻線40が設けてある。一方、回転子側30の同
一回転軸10上に設けた回転子コアに巻装された回転子巻
線31,32は並列に接続し、該回転子巻線の端子間にダイ
オード33,34が接続されている。ここで固定子巻線21に
対峙する回転子巻線31に誘起する電圧をE1,E2,E3とし、
固定子巻線22に対峙する回転子巻線32に誘起する電圧を
E1εjθ,E2εjθ,E3εjθとする。ここでθは電圧の
位相差角である。
以上の構成による作用を説明する。まず起動時には、
回転子巻線31,32の誘起電圧の位相差角θ=0゜になる
ように固定子巻線21,22が結線された状態で電源に投入
して起動する。このようにすると固定子巻線21,22に電
源から三相電流が流れてそれぞれ同相の回転磁界を生
じ、回転子巻線31,32に電圧が誘起される。この場合の
誘起電圧の位相差角θ=0゜であるから、回転子巻線に
流れる電流は回転子巻線31から回転子巻線32へ環流する
ように流れ、回転子巻線の端子間に接続されたダイオー
ド33,34には電流が流れない。従って起動トルクは第7
図に示すような従来の誘導電動機と同じ特性で起動し、
起動トルクは大きく、特別の別個の起動機を必要としな
い。起動後、回転子の回転速度が上昇して回転磁界の回
転速度すなわち同期速度に近づくと、すべりSが小さく
なるので回転磁界による回転子巻線の誘起電圧E1,E2,E3
は小さくなる。ここまでは誘導電動機としての動作であ
るが、すべりS=0.05に近づいた時に同期運転に引入れ
る。これは次のようにしておこなう。
先づ電圧移相装置によって二つの固定子巻線21,22の
一方たとえば固定子巻線22の位置を、当該固定子のコア
を回転軸のまわりに回動させることによって変えて、二
つの固定子巻線21,21の作る二つの回転磁界の位相差角
θがθ=180゜になるようにする。このようにすると二
つの回転子巻線31,32の誘起電圧の位相差角θがθ=180
゜となり、今まで回転子巻線31から回転子巻線32へ還流
していた回転磁界による電流は環流しなくなり、回転子
巻線の端子間に接続したダイオード33,34を通じて流れ
るようになる。したがって回転子巻線31,32にこのダイ
オード33,34を通じて整流された電流が流れるようにな
る。この回転磁界によって回転子巻線に流れる整流電流
は、回転子の回転速度が同期速度になると、すべりSが
S=0になるので、流れなくなって同期運転は出来な
い。そこで固定子に設けた直流励磁巻線40を作用させ
る。すなわち直流励磁巻線40に直流電流を流して静止磁
界を作ると、回転子巻線31,32はこれらの静止磁界と鎖
交して交流の電圧を誘起する。この静止磁界による交流
電圧は回転子の回転速度が大きくなるほど大きくなる。
この静止磁界による交流電圧の位相は直流励磁巻線40が
前記移相装置と連動させてあるので、二つの回転子巻線
31,32に誘起する静止磁界による交流電圧の位相角θは
θ=180゜となり、これらの交流電圧によって回転子巻
線の端子間に接続したダイオード33,34を通じて整流さ
れた電流が回転子巻線31,32に流れ、回転子コアは磁極
を形成し、固定子巻線21,22の作る回転磁界に引張られ
て回転子は同期速度で回転するようになる。この時の同
期トルクは第7図に示すとおりである。この同期トルク
は前記静止磁界の強さに比例するので、大きな同期トル
クを得ることが可能である。ここでさらにこの同期トル
クを考察して見るに、同期運転時には電圧移相装置によ
って固定子巻線22の作る回転磁界の位相が固定子巻線21
のそれに対して180゜移相され、さらに前記静止磁界に
よって回転子巻線32に誘起する交流電圧の位相も回転子
巻線31のそれに対して180゜移相されて、整流電流が回
転子巻線を環流しない方向すなわちそれぞれの回転子巻
線からダイオード33,34を通じて流れるので、同期トル
クは2つの回転子において同一の方向となり、同期トル
クは加算されることになって、本発明の誘導同期電動機
は2固定子ではあるが、その合計の容量は従来のブラシ
を有する誘導同期電動機と同等である。
以上のように、本発明の複数固定子誘導同期電動機
は、起動時には従来の誘導電動機の原理で起動するから
起動トルクが大きく、従って他の特別の起動機を必要と
しない。
また同期速度においては、回転子巻線が直流励磁巻線
すなわち界磁巻線の作用をするので、同期トルクが大き
く、ブラシなどの保守を必要としない同期電動機を提供
することが可能となった。
さて本実施例では回転子巻線の誘起電圧に位相差を設
ける電圧移相装置として、一方の固定子のコアを回転軸
のまわりに回動させる方法を記載したが、固定子巻線の
結線変更すなわち固定子巻線の両端子を入換えて結線す
ることによって電気的に位相差角θをθ=0゜からθ=
180゜に切変えることも可能である。
また本実施例では電源として商用電源を用いる方法を
記載したが、インバータのような可変周波数電源を用い
ることによって任意の同期速度で運転することも可能で
ある。
次に第2の実施例を第2図によって説明する。
この実施例が前記第1の実施例と異なる点は、同期運
転時に必要な回転子巻線の直流励磁の方法である。すな
わち回転軸10には回転電機子形交流発電機50が直結さ
れ、その電機子巻線56の出力電圧を整流回路55によって
整流し、その直流出力端子を並列に接続された回転子巻
線31,32にダイオード33,34を介して並列に接続する。ま
た、前記回転電機子形交流発電機50の固定子側51は同期
運転時には、直流励磁巻線53に直流電源54から直流電流
を流して励磁して、回転電機子56に交流電圧を誘起させ
て、この交流電圧を整流回路55によって整流し、この整
流された電流を回転子巻線31,32に分流させることによ
って回転子巻線31,32を直流励磁し、電圧移相装置によ
って位相差を180゜として、固定子巻線21,22の作る回転
磁界と作用させて同期運転させる。つまり、整流回路55
による整流電流を回転子巻線31,32に分流させること
で、回転子巻線31,32を流れる電流は互いに逆方向とな
り180゜の位相差となっているが、電圧移相装置によっ
て、固定子側も位相差を180゜としてあるので容易に同
期運転に引き入れることができる。
この方法は回転子巻線31,32に流れる整流電流を整流
回路55によって全波整流とすることができるので、前記
第1の実施例の半波整流のものより同期トルクが大にな
る利点がある。
次に第3の実施例を第3図及び第4図によって説明す
る。
この実施例が前記第1の実施例と異なる点は回転子側
60の構成が異なることである。
すなわち第3図に示すように回転子側60の同一回転軸
10上に設けた2つの突極形回転子コア61,62に巻装した
回転子巻線63,64のそれぞれを並列に接続すると共に、
該回転子巻線63,64の端子間にダイオード68を接続し、
さらに第4図の回転子の断面図に示すように前記突極形
回転子コア61,62の外周上に装着した複数個の導体66の
それぞれを連通状に連結してその両端部において該導体
を短絡する短絡環67を設けたカゴ形導体69を設けてあ
る。
ここで突極形回転子コアは2極として図示されている
が、勿論2極に限定されるものではない。また突極回転
子コア61,62は、説明の都合上第3図においてもその断
面形状を示しているが、前述の通り第4図に本例の断面
図を示す。ここで固定子巻線21に対峙するカゴ形導体69
に誘起する電圧を図の方向E1とし、同じく回転子巻線63
に誘起する電圧を図の方向にE2とする。また固定子巻線
22に対峙するカゴ形導体69に誘起する電圧を図の方向に
E1εjθとし、同じく回転子巻線64に誘起する電圧を図
の方向にE2εjθとする。ここでθは電圧の位相差角で
ある。
以上の構成による作用を説明する。
まず起動時には、カゴ形導体69と回転子巻線63,64の
誘導電圧の位相差角θがθ=0゜になるように固定子巻
線21,22が結線された状態で電源に投入して起動する。
このようにすると固定子巻線21,22に電源から三相電流
が流れてそれぞれ同相の回転磁界を生じ、カゴ形導体69
と回転子巻線63,64に電圧が誘起される。この場合の誘
起電圧の位相差角θはθ=0゜であるから、カゴ形導体
69の導体66には両端の短絡環67を通じて電流が環流し、
また回転子巻線に流れる電流は回転子巻線63から回転子
巻線64へ環流するように流れる。従って回転子巻線の端
子間に接続されたダイオード68には電流が流れない。
このときの起動トルクはカゴ形導体69の誘導電動機と
してのトルク特性と回転子巻線63,64の誘導電動機とし
てのトルク特性の合成となり起動トルクは大きい。
次に起動後回転子の回転速度が上昇して同期速度に近
づくとすべりSが小さくなるのでカゴ形導体69の誘起電
圧E1と回転子巻線63,64の誘起電圧E2は小さくなる。
ここまでは誘導電動機としての動作であるが、すべり
SがS=0.05に近づいた時に同期運転に引入れる。これ
は第1の実施例で述べたように、電圧移相装置によって
二つの固定子巻線21,22の作る二つの回転磁界の位相差
角が180゜になるようにする。このようにするとカゴ形
導体69および回転子巻線63,64の誘起電圧の位相差角θ
がθ=180゜となる。
そうするとカゴ形導体69の回転磁界による誘起電圧の
総和Eは E=E1+E1εj180゜=E1−E1=0 となってカゴ形導体69には電流が流れなくなる。
また今まで回転子巻線63から回転子巻線64へ環流して
流れていた回転磁界による電流も流れなくなり、回転子
巻線の端子間に接続したダイオード68を通じて整流され
た電流が回転子巻線63,64に流れるようになる。従って
誘導電動機としての作用は失われる。
ここで第1の実施例で述べたように固定子に設けた直
流励磁巻線40を作用させる。すなわちこの直流励磁巻線
40によって静止磁界を作るとカゴ形導体69と回転子巻線
63,64はこれらの静止磁界と鎖交して交流の電圧を誘起
する。この静止磁界による交流電圧の位相は前記電圧移
相装置と連動させてあるので、カゴ形導体69と回転子巻
線63,64に誘起する静止磁界による交流電圧の位相差角
θはθ=180゜となり、従ってカゴ形導体には電流は流
れず、回転子巻線63,64にはこの静止磁界による交流電
圧によって回転子巻線の端子間に接続したダイオード68
を通じて整流された電流が流れ、回転子コア61,62は磁
極を形成し、固定子巻線21,22の作る回転磁界に引張ら
れて回転子は同期速度で回転するようになる。このよう
に突極形の構造にして突極形の特長を持たせることがで
きる。
次に第4の実施例を第5図によって説明する。
この実施例が前記第3の実施例と異なる点は、同期運
転時に必要な回転子巻線の直流励磁の方法である。すな
わち第5図に示すように、回転軸10には回転電機子形交
流発電機50が直結され、その電機子巻線56の出力電圧を
整流回路55によって整流し、その直流出力端子を並列に
接続された回転子巻線63,64に並列に接続する。また前
記回転電機子形交流発電機50の固定子側51は、同期運転
時には直流励磁巻線53に直流電源54から直流電流を流し
て励磁して、電機子巻線56に交流電圧を誘起させて、こ
の交流電圧を整流回路55によって整流し、この整流され
た電流を回転子巻線63,4に分流させることによって回転
子巻線63,64を直流励磁して、固定子巻線21,22の作る回
転磁界と作用させて同期運転させる。
この方法は回転子巻線63,64に流れる整流電流を、整
流回路55によって全波整流とすることができるので、前
記第3の実施例の半波整流のものより同期トルクが大と
なる利点がある。
次に前記第1および第3の実施例の直流励磁とは別の
直流励磁の実施例を第6図において示す。
この実施例が前記第1および第3の実施例と異なる点
は第1図および第3図に示す直流励磁巻線40を省略して
固定子巻線の一部を流用したことである。すなわち第6
図に示すように固定子巻線21,22の1相にサイリスタ71
とダイオード72を逆極性に並列に接続した回路を挿入し
てある。そしてこれは同期運転時に必要な前記第1およ
び第3の実施例において述べた静止磁界を作る時に作動
する。すなわちサイリスタ71の点弧角を0゜より大きく
すると、ダイオード72によって固定子巻線21,22に直流
分を含んだ電流がながれて静止磁界を作ることが可能で
ある。このようにすれば固定子巻線とは別個の直流励磁
巻線を設ける必要がなく構造が簡単になる利点がある。
しかしこの場合固定子巻線21,22の作る回転磁界は歪
むので、対称座標法による正相分回転磁界によって同期
トルクを生じることになる。その他の作用は第1および
第3の実施例と同様である。
以上のように構成したので本発明の複数固定子誘導同
期電動機は起動時には誘導電動機として起動し、同期速
度に近づくと、したがって、すべりがS=0.05付近から
同期速度に吸引されて同期電動機として回転するもので
ある。
〔効 果〕
以上の構成から本発明の複数固定子誘導同期電動機
は、起動時は従来の誘導電動機と同様のトルク特性で行
い、すべりSがたとえばS=0.05付近から同期速度に移
行して同期電動機のトルク特性で運転するものである。
この複数固定子誘導同期電動機は、起動機やブラシを必
要としないからその構造、構成が簡単となるだけでな
く、従来の誘導電動機と同様のトルク特性で起動できる
ので重負荷がかかったままでも起動と同期運転が可能と
なる。
ところで、本発明の複数固定子誘導同期電動機は、誘
導電動機と同期電動機との両方のトルク特性を備えるか
ら、どちらの電動機のトルク特性でも使用可能である。
このことは、同期速度で運転中、何らかの原因で脱調し
た場合でも、同期電動機トルク特性から誘導電動機のト
ルク特性に切換えて運転することが可能であるから、一
般の同期電動機のように電動機が急激に停止することが
ない。
以上のようにブラシがなく複雑な構成を必要としない
から保守点検も容易であり、起動トルクが大きく同期ト
ルクも大きい同期電動機の提供が可能となった。
【図面の簡単な説明】
第1図は第1の実施例の固定子巻線側と回転子巻線側の
簡略な構成図、第2図は第2の実施例の固定子巻線側と
回転子巻線側の簡略な構成図、第3図は第3の実施例の
固定子巻線側と回転子巻線側の簡略な構成図、第4図は
第3の実施例に示す回転子の簡略な正断面図、第5図は
第4の実施例の固定子巻線側と回転子巻線側の簡略な構
成図、第6図は、第1および第3の実施例に示す固定子
側直流励磁回路の別の実施例図、第7図は、本発明の同
期電動機のトルク特性の一例を示す図である。 10……回転軸、20……固定子側、21……固定子巻線、22
……固定子巻線、30……回転子側、31……回転子巻線、
32……回転子巻線、33……ダイオード、34……ダイオー
ド、35……回転子側、40……直流励磁巻線、50……回転
電機子形交流発電機、51……交流発電機の固定子側、52
……交流発電機の回転電機子側、53……直流励磁巻線、
54……直流電源、55……整流回路、56……回転電機子、
60……回転子側、61……突極形回転子コア、62……突極
形回転子コア、63……回転子巻線、64……回転子巻線、
65……回転子側、66……導体、67……短絡環、68……ダ
イオード、69……カゴ形導体、70……固定子側、71……
サイリスタ、72……ダイオード。

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】同一回転軸上に任意の間隔をおいて設けた
    複数個の回転子コアに巻装した回転子巻線のそれぞれを
    並列に接続すると共に該回転子巻線の接続端子間にダイ
    オードを接続した回転子と、前記各回転子コアにそれぞ
    れ対向して周設した複数個の固定子と、該複数個の固定
    子のうち特定の固定子がこれに対峙する回転子コアの周
    囲に生じる回転磁界と他の固定子がこれに対峙する回転
    子コアの周囲に生じる回転磁界との間に0゜と180゜の
    2つの位相差を生じさせる電圧移相装置及び前記複数個
    の固定子に設けた直流励磁回路とを備え、起動時は位相
    差を0゜とし、同期引き入れ時は前記直流励磁回路を作
    動させると共に位相差を180゜とすることを特徴とする
    複数固定子誘導同期電動機。
  2. 【請求項2】同一回転軸上に任意の間隔をおいて設けた
    複数個の回転子コアに巻装した回転子巻線のそれぞれを
    並列に接続した回転子と、前記各回転子コアにそれぞれ
    対向して周設した複数個の固定子と、前記複数個の固定
    子のうち特定の固定子がこれに対峙する回転子コアの周
    囲に生じる回転磁界と他の固定子がこれに対峙する回転
    子コアの周囲に生じる回転磁界との間に0゜と180゜の
    2つの位相差を生じさせる電圧移相装置と、前記回転軸
    に直結した整流回路を有する回転電機子と該回転電機子
    に対向して周設した直流励磁用の固定子とからなる回転
    電機子形発電機とを備え、前記回転電機子の整流回路の
    直流出力を、前記複数個の回転子コアに巻装した回転子
    巻線にダイオードを介して並列に接続して、起動時は位
    相差を0゜とし、同期引き入れ時は回転電機子形発電機
    を作動させると共に位相差を180゜とすることを特徴と
    する複数固定子誘導同期電動機。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の複数固定子誘導同
    期電動機であって、回転子コアを複数個の突極形回転子
    コアで構成し、該複数個の突極形回転子コアの外周上に
    連通して複数個の導体を装着しその両端部において前記
    導体を短絡する短絡環とを設けて構成したことを特徴と
    する複数固定子誘導電動機。
  4. 【請求項4】前記請求項1または3に記載の複数固定子
    誘導同期電動機であって、直流励磁回路は、固定子巻線
    の1相にサイリスタとダイオードを逆極性に並列に接続
    した回路を挿入したものであることを特徴とする複数固
    定子誘導同期電動機。
  5. 【請求項5】前記請求項1から4のいずれかに記載の複
    数固定子誘導電動機であって、電圧移相装置は、固定子
    位置を機械的に回動し得るようにしたことを特徴とする
    複数固定子誘導電動機。
  6. 【請求項6】前記請求項1から4のいずれかに記載の複
    数固定子誘導電動機であって、電圧移相装置は、固定子
    巻線の端子をスイッチによって切換えて電源に接続し得
    るようにしたことを特徴とする複数固定子誘導同期電動
    機。
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