JP2920202B2 - モリブデンまたはタングステンの結晶方位制御単結晶とその製造方法 - Google Patents

モリブデンまたはタングステンの結晶方位制御単結晶とその製造方法

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JP2920202B2
JP2920202B2 JP8178060A JP17806096A JP2920202B2 JP 2920202 B2 JP2920202 B2 JP 2920202B2 JP 8178060 A JP8178060 A JP 8178060A JP 17806096 A JP17806096 A JP 17806096A JP 2920202 B2 JP2920202 B2 JP 2920202B2
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、モリブデンまた
はタングステンの結晶方位制御単結晶とその製造方法に
関するものである。さらに詳しくは、この発明は、物理
的または化学的特性が結晶の特定方位によって大きく変
動するコレクターおよびエミッター素子等の熱電子発電
材料に有用であり、また、強度、耐久性が結晶方位に大
きく依存するセラミック焼成用敷板やウラン還元用敷板
等の耐熱性材料等にも有用な、結晶方位を所定のものに
制御したモリブデンまたはタングステンの単結晶とその
製造方法に関するものである
【0002】。
【従来の技術とその課題】従来より、モリブデン金属や
タングステン金属は、非酸化性の雰囲気中で2000℃
以上の高温にも耐えるという優れた高温強度特性を示す
ことから、原子炉用炉材、セラミック焼成用敷板やウラ
ン還元用敷板、発熱体、高温用反射板、ボート、ルツボ
等の構造材料として有用な、超耐熱金属材料であること
が知られている。
【0003】しかしながら、これらは、実際の高温での
使用時には、多結晶体の結晶粒の粗粒化や再結晶脆性を
引き起こすため、超耐熱材料としての特性を十分に発揮
することができず、その用途開発や利用分野には制限が
あるという問題があった。そこで、これらの多結晶体の
モリブデンやタングステンの欠点を解消するために、こ
れまでにも再結晶法により結晶粒を粗大化したものや単
結晶化したもの等が開発されており、構造材料としての
用途開発において問題とされてきた結晶粒界脆化(再結
晶脆化)の問題点は解決されつつある。
【0004】しかしながら、近年、モリブデン、タング
ステン等の単結晶金属が機能材料として注目され、熱電
子発電用のコレクターやエミッター材料、半導体の基盤
材料、接点材料、レーザー反射鏡材料等への利用が検討
されるにともなって、機能性材料への展開にとって重要
な要件としての特定の結晶方位を有する単結晶体の実現
が求められている。ところが、これまでに開発され、提
案されている方法による単結晶化では、結晶学的な結晶
方位が定まらず、単結晶材料に最も必要な結晶方位の異
方性から生じる材料の物理的、化学的、機械的な特性を
十分に発揮できないばかりでなく、特定の結晶方位(結
晶面、方向)を持つ単結晶材料に対する需要にも応えら
れないのが現状である。
【0005】モリブデンやタングステン等の単結晶化の
方法としては溶融法も知られており、この方法は、たと
えば種結晶をあらかじめ用意し、素材に溶融接合するこ
と等によって結晶方位を制御した単結晶とするものであ
るが、この溶融接合の方法ばかりでなく、一般的な溶融
法(引き上げ法、帯溶融法)も含めた溶融単結晶化の方
法の場合は、その単結晶化の規模や、形状などに制約が
あり、製造技術としてもかなりの熟練を要するという問
題がある。
【0006】そこでこの発明は、以上通りの事情を鑑み
てなされたものであり、従来の溶融法における種付け
(Seeding)等の熟練を要する工程を必要とする
ことなく、また、その単結晶化の規模や形状などの制約
を受けることもなく簡便に製造することができ、単結晶
化の規模や形状の自由度のある、新しい結晶方位を制御
されたモリブデンまたはタングステンの単結晶とそれら
の製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決するものとして、以下の手段を提供する
【0008】すなわち、この発明は、カルシウムおよび
マグネシウムの少なくともいずれか一方が総量で0.0
07〜0.090原子%含有されているモリブデンまた
はタングステンの多結晶体からなる成形体をその端部に
おいて局部加熱して複数の結晶方位を有する2次再結晶
粒を生成させ、そのうちの所望の結晶方位粒のみを選択
焼鈍によって成長させることを特徴とするモリブデンま
たはタングステンの結晶方位制御単結晶の製造方法
供する(請求項)。
【0009】また、この発明は、上記製造方法につい
て、所望の結晶方位粒の選択とその焼鈍による結晶成長
のために、成形体の端部に機械的に複数の切り込みを入
れ切り込みによって形成された各々の突起部に、局部加
熱によって結晶方位の相違する2次再結晶粒を各々生成
させ、このうちから所望の方位の結晶粒を持つ突起部の
みを残して他は除去し、次いで残された突起部を含めて
全体を焼鈍すること(請求項)や、光ビーム集光加熱
によって、局部加熱や選択焼鈍を行うこと(請求項
)、X線ラウエ回折法によって、複数種の結晶方位を
有する2次再結晶粒の中から所望の結晶方位を有する結
晶粒を選択すること(請求項)、2000〜2300
℃の温度範囲で、切断後に残った突起部と全体を光ビー
ム加熱によって焼鈍すること(請求項5)も提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】この発明においては、以下の一般
的手順によって、結晶方位が所望のものに制御されたモ
リブデンまたはタングステンの単結晶が製造される。 <1>モリブデンまたはタングステンに対してカルシウ
ムおよびマグネシウムの少くともいずれか一方が総量で
0.007〜0.090原子%含有されている金属の多
結晶体からなる成形体を得る。
【0011】このことは、たとえば、カルシウム酸化物
粉および/またはマグネシウム酸化物粉の少なくとも一
方をカルシウム/マグネシウムの元素総量で0.007
〜0.090原子パーセント、純モリブデン粉またはタ
ングステン粉に添加し、粉末冶金工程(混合、成形、焼
結工程)により焼結体(インゴット)を作製することに
より行われる。
【0012】<2>熱間および温間加工等によって適宜
な形状とした成形体の端部を局所加熱し、複数の結晶方
位を有する2次再結晶粒を生成させる。このことをより
具体化するためには、たとえば、図1に例示したよう
に、成形体の端部に機械的に切り込みを入れて、複数の
突起部(A)(B)(C)(D)を作製する。これらの
突起部(A)(B)(C)(D)を集中的に加熱するこ
とにより、その突起部の数だけ、複数種の結晶方位を有
する2次再結晶粒を生成させることができる。
【0013】<3>X線ラウエ回折法により2次再結晶
粒の結晶方位を解析し、所望の結晶方位粒のみ選択す
る。たとえば図3の例のように、所望の方位の突起のみ
を残し、他の結晶粒を持つ突起部を除去する。 <4>次いで、素材全体焼鈍する。所望する結晶方位粒
のみが素材全体を侵食しながら成長することにより単結
晶化すると同時に結晶方位の制御されたモリブデンまた
はタングステンの単結晶となる。
【0014】以上のことからも明らかなように、この発
明は、固相法による結晶方位の制御された単結晶化によ
るものと定義することもできる。2次再結晶粒は結晶成
長過程における種結晶の役割を担う。また、種結晶粒径
は成形素材が1次再結晶粒径の2〜3倍の粒径であれば
種結晶は原理的に成長可能である。さらに、カルシウム
およびマグネシウム(酸化物)の添加は、種結晶の成長
を促進させる冶金学的因子であり、添加量の範囲も種結
晶が成長できる範囲とされる。
【0015】なお、この発明の2次再結晶と、選択焼鈍
による結晶方位の制御並びに単結晶化では、例示として
の突起部は、図1に示したものに限定されることはな
い。より針状のものでもよいし、微細スリット状等のも
のであってもよい。いずれにしても、突起部と同じ結晶
方位の結晶成長が試料としての素材全体に生じ、単結晶
化と、結晶方位の制御が全体として可能となることはこ
れまでの技術としては全く知られていないことである。
【0016】以下に実施例を示し、さらに詳しくこの発
明の実施の形態について説明する。
【0017】
【実施例】まず、モリブデン酸化物あるいはタングステ
ン酸化物の粉末に、カルシウム酸化物およびマグネシウ
ム酸化物を、カルシウムとマグネシウムの元素が総量と
して0.007〜0.090原子%の割合となる範囲で
添加し、よく混合した後に粉末冶金法によって金属粉末
とした。この金属粉末を圧力3t/cm2 でプレス成形
した後、温度1600〜2000℃の水素雰囲気中で1
0時間焼結した。さらに、得られたこの焼結体を120
0〜1600℃の範囲内の温度で熱間加工し、続いて、
600〜1000℃の温度にて、温間加工を施して最終
圧延率が70%以上となるようにして圧延素材を得た。
【0018】このようにして得られた圧延素材としての
モリブデン成形体について、図1に例示したように、機
械的に切断して厚さ5〜10mm、幅5〜10mm、長
さ50〜100mmの角柱試料とした後にこの試料の端
部に長さ方向に10〜15mmの4分割した切り込みを
施した。次にこの切り込みにより形成された突起部
(A)(B)(C)(D)を光ビーム集光加熱により、
2000〜2300℃で、30分焼鈍し、各々4つの種
結晶(2次再結晶核粒)を生成した。
【0019】図2は、この4つの突起部(A)(B)
(C)(D)における種結晶粒の結晶方位のX線ラウエ
回折像を示したものである。図2のX線ラウエ回折像よ
り、所望の結晶方位を持つ突起部(A)を選択し、図3
に例示したように、それ以外の種結晶突起部(B)
(C)(D)を切断除去し、再度2000〜2300℃
の温度範囲で角柱試料全体を光ビーム加熱で焼鈍した。
【0020】図4は、所望した種結晶粒突起部(A)と
試料内(E)の方位のX線ラウエ回折像を示したもので
ある。この図4から明らかなように、所望した種結晶粒
の方位と試料内の方位は一致しており、所望の結晶方位
を有する単結晶材料が得られたことが確認された。
【0021】
【発明の効果】この発明により、以上詳しく説明したと
おり、所望の結晶方位の結晶粒だけを極めて容易に成長
させることが可能となる。この結晶方位を制御したモリ
ブデンまたはタングステン単結晶は、熱電子発電用のコ
レクター、エミッター材料、半導体の基盤材料、接点材
料、レーザー反射鏡材料などの特定結晶方位を有する単
結晶体の特性を活用している分野に機能材料としての幅
広い用途拡大が可能である。また、上記の単結晶は高温
状態においても金属組織変化および粒界スベリがないた
め、再結晶脆化を引き起こすことなく、その結果、高温
強度に優れ、機械的に破損することなく原子炉用炉材、
セラミック焼成用敷板やウラン還元用敷板、発熱体、高
温用反射板など耐熱性構造材料としての広範囲に使用が
可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】モリブデン成形体に4等分の切り込みを入れて
局部加熱し、各々の突起部に種結晶部としての2次再結
晶粒を生成させる手段を示した斜視図である。
【図2】図1の場合の4つの突起部での種結晶粒の結晶
方位のX線ラウエ回折像を示した図面に代わる写真であ
る。
【図3】所望する結晶方位粒が試料素材全体での成長の
手順を示した斜視図である。
【図4】所望した種結晶粒突起部(A)と試料素材内
(E)の方位のX線ラウエ回折像を示した図面に代わる
写真である。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルシウムおよびマグネシウムの少なく
    ともいずれか一方が総量で0.007〜0.090原子
    %含有されているモリブデンまたはタングステンの多結
    晶体からなる成形体をその端部において局部加熱して複
    数の結晶方位を有する2次再結晶粒を生成させ、そのう
    ちの所望の結晶方位粒のみを選択焼鈍によって全体に成
    長させることを特徴とするモリブデンまたはタングステ
    ンの結晶方位制御単結晶の製造方法。
  2. 【請求項2】 成形体の端部に機械的に複数の切り込み
    を入れ、形成された各々の突起部を局所加熱して結晶方
    位の異なる2次再結晶粒を生成させ、このうちから所望
    の方位の結晶粒を持つ突起部を残して他は除去し、次い
    で残された突起部を含めて全体を焼鈍する請求項のモ
    リブデンまたはタングステンの結晶方位制御単結晶の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 光ビーム集光加熱によって、成形体の端
    部に施した突起部を局部加熱し、その突起部の数だけ、
    複数種の結晶方位を有する2次再結晶粒を生成させる請
    求項のモリブデンまたはタングステンの結晶方位制御
    単結晶の製造方法。
  4. 【請求項4】 X線ラウエ回折法によって、複数種の結
    晶方位を有する2次再結晶粒の中から所望の結晶方位を
    有する結晶粒を選択し、他の結晶方位を有する結晶粒の
    突起部を切断する請求項またはのモリブデンまたは
    タングステンの結晶方位制御単結晶の製造方法。
  5. 【請求項5】 2000〜2300℃の温度範囲で、切
    断後に残った突起部と全体を光ビーム加熱によって焼鈍
    する請求項ないしのいずれかのモリブデンまたはタ
    ングステンの結晶方位制御単結晶の製造方法。
JP8178060A 1996-07-08 1996-07-08 モリブデンまたはタングステンの結晶方位制御単結晶とその製造方法 Expired - Lifetime JP2920202B2 (ja)

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