JP2919452B2 - コンクリート棒状体の免震構造 - Google Patents

コンクリート棒状体の免震構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地中や地上に鉛直
または略鉛直に設置される、パイル、ポール、タワーあ
るいは煙突等のコンクリート製の棒状構造物ならびにパ
イルに上載する建築物等を地震などの天災から防護する
ためのコンクリート棒状体の免震構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、地中や地上に設置されるパイル、
ポール、タワー、煙突等のコンクリート棒状体は、原子
力施設などの特例を除き、一般にその構造物の供用期間
内に確率的に1〜2度発生する可能性のある地震や風に
よる振動的外力(以下、「レベル1の荷重」と称す)に
対して耐え得るように設計されている。ところが、最近
発生した阪神・淡路大震災の例のように、その供用期間
中に起こる確率が極めて低いが、レベル1の荷重を遥か
に超える大きな強度をもつ振動的外力(以下、「レベル
2の荷重」と称す)に対して、前記のコンクリート棒状
体の構造物も看過できない社会的情勢になってきてい
る。
【0003】しかしながら、このような社会的情勢を踏
まえて、多くの構造物では、耐震強度を高めるために高
強度の素材や大断面の部材を使用することによってレベ
ル1の設計荷重を大きくし、結果的に起こる可能性の極
めて小さな事態に備えてコスト的に高価な代償を払う方
向に設計の基本思想が進んでいる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は前記事
情に基づいてなされたものであり、コスト的に高価な代
償を払うことなく、棒状構造物の特徴を巧みに活かし、
レベル2の荷重に対して本体構造物部分(パイルの場合
は上載建築物等を含む)を破壊から可能な限り防護する
ことができるコンクリート棒状体の免震構造を提供する
ことを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によるコンクリー
ト棒状体の免震構造は、従来のようにレベル1の荷重に
対して耐震強度をもつように設計されており、しかもコ
ンクリート棒状体の一部分に、不連続部分としての脆弱
部を備えることによって、レベル2の超過せん断荷重が
棒状体の長手軸に直交する方向に作用したときに、レベ
ル1の線形的たわみから破壊に至るまえに前記脆弱部が
レベル2の荷重を吸収し、コンクリート棒状体本体を破
壊から可能な限り防護すること、ならびに地中に設置さ
れるパイルの場合、その上載建築物等へのレベル2の荷
重の伝播を大幅に削減させることを特徴とする。
【0006】そして、前記脆弱部は、棒状体本体におけ
る一部の周囲部位に、複数の環状板を積み重ねて取扱い
上ばらばらにならない程度に結束材で結束した積層リン
グを、その積層中心軸が棒状体の長手中心軸に略一致す
るように配設する。これにより、レベル2の超過せん断
荷重に対して積層リング内で層間のずれを起こさせ、不
測の荷重やエネルギーを吸収する役割を果たす。また、
前記積層リングは、螺旋状板を螺旋の中心軸方向に結束
して形成してもよい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図1乃
至図9に基づき具体的に説明する。図1(イ)は本発明
による免震装置としての役割を果たす積層リング1を示
すもので、該積層リング1は円形形状をした同一形状の
環状板2(環状板2の接触面には、上載およびレベル2
の荷重とコンクリート棒状体のせん断耐力の関係から設
計上割り出された摩擦係数を保有するように各種潤滑材
を塗布するなど調整される)を数枚から数十枚をそれぞ
れ上下に重なるように積み重ね、積層リング1の積層方
向に結束部材3により略等間隔で数箇所結束したもので
ある。結束部材3としては、ボルトとナットや鉄線があ
り、鉄線を使用する場合には鉄線の上下両端をかしめる
ことにより積層リング1をばらばらにならない程度に結
束する。
【0008】次に、上記の積層リング1をコンクリート
棒状体に免震機能をもつように配設する場合の一例を示
す製造工程の概要について図2乃至図8に基づき説明す
る。まず、コンクリート棒状体本体の補強芯材となる円
筒状の籠体4を、コンクリート棒状体本体の長さに対応
する方向へ円形に囲むようにして配線する真直な鋼線
と、該鋼線の円形状の周りを囲むように配線する螺旋状
鋼線と、によって編組して形成する(図2参照)。この
ようにして編組した円筒状の籠体4の外径は前述の積層
リング1の内径よりも小さく形成してある。次いで、コ
ンクリート棒状体を成形するための型枠5は、長手方向
に半割に分割された断面形状が半円形の一組の半割型枠
6,7である。そして、そのうち一方の半割型枠6内
に、前記円筒状の籠体4を挿置するものであるが、この
際、免震機能をもたせるべきコンクリート棒状体の円筒
状の籠体4の外周部位には、予め前述の積層リング1を
取付けておく(図3参照)。その後、もう一方の半割型
枠7をかぶせ、両型枠6,7のフランジをボルト締めに
よって固着して円筒型枠5に整型し、編組してある籠体
4の鋼線を緊張処理し(図4参照)、一端から型枠5内
にコンクリートをポンプ8により注入する(図5参
照)。
【0009】次に、コンクリートの注入完了した型枠5
はローラ回転台9上に横に寝かした状態で載置する(図
6参照)。そして台上で両側から挟み込むように配置さ
れたローラ10,10の回転によって型枠5が徐々に高
速回転する結果、型枠5内のコンクリートは遠心力の作
用を受けて型枠5の内壁側に移動し、内部に中空部11
を有するコンクリート棒状体本体12が成形される。最
後に、蒸気養生してコンクリートを固めた後、脱型して
(図7参照)、本発明による免震構造を備えたコンクリ
ート棒状体13を得ることができる(図8の(イ)
(ロ)参照)。
【0010】また、コンクリート棒状体の成形は、上記
のような遠心力成形法に限らず、外型枠と内型枠との間
にコンクリートを注入充填して製造する方法を採用して
もよい。尚、鋼線を編組して形成した円筒籠体はコンク
リート棒状体本体12がレベル1の荷重に対する耐力に
相当するように補強するもので、この補強目的に従って
鋼線の太さや本数を設定する。
【0011】このようにして得たコンクリート棒状体1
3の一部の周囲部位に固着された積層リング1は、積層
中心軸が棒状体の長手中心軸と略一致するように取付け
られており、該積層リング1の取付箇所は、コンクリー
ト棒状状体本体12との関係ではコンクリートが薄肉と
なっている脆弱部14となっている。従って、レベル2
のせん断荷重が作用した場合には、前記脆弱部14にせ
ん断変形を起こし、例えば図9に示すように、荷重履歴
後の残留変形量が0から積層リングが破壊するまでの変
位となって現れるが、コンクリート棒状体本体12は破
壊から免れる。
【0012】積層リング1を構成する環状板2の材質
は、鋼材、アルミ合金などで、形状は、多角形環状のも
のであってもよい。また、前記脆弱部14はコンクリー
ト棒状体の長手方向に間隔をあけて数箇所設けても良
い。さらに積層リングは、図1の(ロ)に示すように螺
旋状板22を螺旋の中心軸23の方向に結束することに
よって形成した積層リング21であってもよい。
【0013】
【発明の効果】本発明のようにコンクリート棒状体の一
部に積層リングからなる脆弱部を備えておれば、レベル
2の超過せん断荷重が作用しても脆弱部の積層リングが
ずれることによって前記荷重を吸収し、コンクリート棒
状体本体の破壊を未然に防止するか、あるいは破壊に至
ってもその破壊程度の軽減が可能となり、破壊により生
じる二次被害も最小限度に防ぐことができる。一方パイ
ルに限れば、上載の建築物等に伝播される地震力の加速
度が低減される結果、建築物等の各部材断面の縮小が可
能となり、経済的な設計が期待される。
【0014】地中のパイルとして使用する場合、杭頭な
どのモーメントが大きい位置付近や、あるいは地盤の液
状化ならびに側方流動、地滑りが懸念されるなどの地質
変化点に脆弱部を設置すれば、作用する主動土圧に対し
てそれよりも大きな受動土圧が反作用として期待でき
る。また、地上のポールにおいて地際に脆弱部を設置し
ておけば、自動車等の衝突エネルギーをずれることで吸
収できる。さらに、タワーや煙突において地際に脆弱部
を設置しておけば、地盤から伝達される地震、風などの
不測のエネルギーを効果的に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(イ)(ロ) 本発明の免震装置となる代表例としての環状板よりなる
積層リングを示す斜視図と、他の例としての螺旋状板よ
り成る積層リングを示す斜視図である。
【図2】本発明のコンクリート棒状体の製造工程の一つ
を示すもので、籠体の成形時の鋼線編組工程を示す概略
斜視図である。
【図3】整型工程を示す概略斜視図である。
【図4】鋼線緊張工程を示す概略斜視図である。
【図5】コンクリート注入工程を示す概略斜視図であ
る。
【図6】遠心締め固め工程を示す概略斜視図である。
【図7】脱型工程を示す概略斜視図である。
【図8】(イ)(ロ) 本発明によるコンクリート棒状体の斜視図及びA−A線
断面図である。
【図9】レベル2の荷重が作用した場合の状態の一例を
示す説明図である。
【符号の説明】
1,21 積層リング 2 環状板 12 棒状体本体 14 脆弱部 22 螺旋状板 23 螺旋の中心軸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI E04H 12/00 E04H 12/00 B F16F 15/06 F16F 15/06 E (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) E02D 5/30 B28B 23/00 B28B 23/18 E02D 5/24 101 E04C 3/34 E04H 12/00 F16F 15/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンクリート棒状体本体(12)の補強
    芯材となる円筒状の籠体(4)の外周部位に、複数の環
    状板(2)を積み重ね且つ積み重ね方向に結束した積層
    リング(1)を取付けることによって、コンクリート成
    形される棒状体本体(12)の一部の周囲部位に、前記
    積層リング(1)の積層中心軸が棒状体本体(12)の
    長手中心軸と略一致するように積層リング(1)からな
    る脆弱部(14)を備えていることを特徴とするコンク
    リート棒状体の免震構造。
  2. 【請求項2】 コンクリート棒状体本体(12)の補強
    芯材となる円筒状の籠体(4)の外周部位に、螺旋状板
    (22)を螺旋の中心軸(23)方向に結束した積層リ
    ング(21)を取付けることによって、コンクリート成
    形される棒状体本体(12)の一部の周囲部位に、前記
    積層リング(1)の積層中心軸が棒状体本体(12)の
    長手中心軸と略一致するように積層リング(1)からな
    る脆弱部(14)を備えていることを特徴とするコンク
    リート棒状体の免震構造。
  3. 【請求項3】 前記脆弱部(14)が棒状体本体(1
    2)の長手方向に間隔を保ち数箇所もうけてあることを
    特徴とする請求項1又は2記載のコンクリート棒状体の
    免震構造。
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