JP2903077B2 - 尿素誘導体及び尿素誘導体含有組成物並びに機能薄膜 - Google Patents

尿素誘導体及び尿素誘導体含有組成物並びに機能薄膜

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、基質選択性の高いセンサー,基質の輸送抽
出等に使用される担体,徐放剤,反応場等としての用途
が有望視される尿素誘導体及び該尿素誘導体から製膜さ
れた機能薄膜に関する。
[従来の技術] 化学物質に応答するセンサーは、化学センサーと呼ば
れており、(1)pHセンサーに代表されるイオンセンサ
ー,(2)ガスセンサー,(3)バイオセンサー等があ
る。イオンセンサーは、被測定液に含まれている化学物
質の濃度をイオン感応膜の膜電位変化として検出する。
ガスセンサーとしては多種多様なものがあるが、たとえ
ば半導体ガスセンサーは、ガス分子吸着時の電気抵抗変
化を測定し、定電位電解式及びガルバニ電池式のガスセ
ンサーは、電気化学的酸化還元を利用するものである。
これらイオンセンサー及びガスセンサーでは、被検出物
によって感応部の物性が変化し、その変化量を検出シグ
ナルとして取り出している。また、測定される対象とし
ては、無機分子が多い。
他方、有機分子の検出は、医療検査,発酵,食品工
業,バイオエンジニアリング等の多くの分野で必要とさ
れる。この検出手段としては、酵素センサー等のバイオ
センサーが使用されている。このバイオセンサーでは、
特定の物質を選択的に認識できる生体物質を利用し、被
測定物質との化学反応に含まれる物質変化を検出シグナ
ルとして取り出している。
すなわち、従来のバイオセンサーでは、被検出物質と
特異な反応を行う生体物質を選択し、イオンセンサーや
ガスセンサー等で検出可能な酸素,過酸化水素等の生成
物を与えている。そして、イオンセンサー又はガスセン
サーとの組合わせによって、多種類の有機分子の検出が
可能となり、また微量測定も可能となる。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、従来から使用されているバイオセンサ
ーでは、その機能上から感応部とシグナル発生部が別個
に構成されているため、複雑な構造を持つものとなって
いる。しかも、固定化酵素等を使用するセンサーでは、
酵素の活性が経時的に変化したり、使用温度が酵素の種
類によって定まる生理温度付近に制限される欠点があ
る。
この点、無機化合物を対象とするイオンセンサーやガ
スセンサーと同様な感知応答機構を持った有機物センサ
ーの開発が要求されており、一部では試験的な研究が行
われている。たとえば、岡畑等は、Polymer Preprints.
Japan Vol.37,No.10 p3309−3311(1988)で、二分子膜
で被覆した水晶発振子及び多孔ポリマー膜を使用し、二
分子膜に各種の水性アルコールを吸着させるとき、それ
ぞれ重量,膜電位,膜抵抗等が変化することを見い出
し、センサーとして使用可能なことを報告している。こ
こでの分子識別は、疎水分子が膜の疎水層に分配される
ことによって行われる。
また、小田嶋等は、脂溶性大環状ポリアミンを含む液
膜を分子認識素子とするカテコール類感応センサーを報
告している[第3回生体機能関連化学シンポジウム予講
集p165−167(1988)]。この報告では、中性分子であ
るカテコール類に対して電位応答性を示すことが見い出
されており、ホスト−ゲスト間の水素結合相互作用によ
るプロトンエジェクションを電位応答のメカニズムと推
察している。
ところが、岡畑等が報告したセンサーは、対象とする
化合物が脂溶性のものに限られるという欠点がある。他
方、小田嶋等のセンサーは、応答の原因が明らかにされ
ていないと共に、液膜型であることから、測定できる物
性量が電位変化に限られる。また、利用しているホスト
−ゲスト相互作用が均一溶液系のものであるため、被検
出物を均一溶液系で結合する分子の合成が必要とされ
る。そのため、選択性,感度,操作性が低くなる欠点が
ある。
そこで、本発明は、前述したイオンセンサーやガスセ
ンサー等のタイプに相当する新規な有機物センサーとし
て有用な物質を提供することを目的とする。また、セン
サーに限らず、基質の輸送や抽出等に使用される担体,
徐放剤,反応触媒を提供する反応場として使用される新
規な尿素誘導体及び該誘導体を使用して製膜された機能
薄膜を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本発明の尿素誘導体は、その目的を達成するため、一
般式(1)又は(2)で表されるように、N,N′−ジア
リール尿素のアリール基の少なくとも一つを、炭素数10
〜22の長鎖アルキル基,長鎖フルオロアルキル基で置換
したことを特徴とする。他のアリール基は、炭素数10〜
22の長鎖アルキル基,長鎖フルオロアルキル基で更に置
換することもできる。
(ただし、R1〜R4は、炭素数10〜22の長鎖アルキル基
又は長鎖フルオロアルキル基を示す) この尿素誘導体は、LB法,キャスト法,分散法等によ
り製膜することができ、物理的吸着或いはシランカップ
リング剤等を使用した化学的吸着によって、固体表面に
固定化することもできる。
また、本発明の機能薄膜は、この尿素誘導体をLB法,
キャスト法又は分散法で製膜し、分子の組織化によっ
て、尿素基を表面に配向させたものである。更に、この
機能薄膜を物理的或いは化学的吸着によって、固体表面
に固定化した機能薄膜とすることもできる。
[作用] 本発明で使用する尿素誘導体は、 の基本構造をもち、尿素基のN−及びN′−位置にアリ
ール基を導入したものであり、更にアリール基の少なく
とも一つを炭素数10〜22のアルキル基又はフルオロアル
キル基で置換した構造を持っている。この化合物を製膜
することにより、親水基である尿素基の方向を制御した
興味ある化合物が得られる。
Etter等は、J.Amer.Chem.Soc.Vol.110,p.5896〜5897
(1988)で、3−ビス(m−ジニトロフェニル)尿素を
合成し、それをアセトン,THF或いはDMSO等のプロトン受
容体の溶液から結晶化すると、プロトン受容体との間で
特異的な構造をもった包接結晶が形成されると報告して
いる。このとき、フェニル基のm−位にニトロ基のよう
な電子吸引基を導入することにより、尿素の=NH基が一
定の分子内配置をとり、基質との包接結晶の形成が可能
となっている。そしてこれらの系では、包接結晶は有機
溶媒中で形成されている。
一方、本発明では、アリール尿素基にアルキル基を導
入することにより薄膜を形成し、尿素基の配向を制御
し、その部位を利用して特異的な基質の結合を行ってい
る。これら誘導体は、LB法,キャスト法又は分散法で製
膜することによって、水を含む種々の溶媒中で使用で
き、高密度及び高感度の選択性を有する機能薄膜が提供
される。
アリールアミンのアリール基に他の種々の官能基を導
入し、更にアミド化,イミド化,エステル化,エーテル
化等により炭素数10〜22の長鎖アルキルを導入し、長鎖
アリールアミンを合成する。同様に合成されたアリール
アミン誘導体をホスゲン等を用いてイソシアナートとし
たものと反応させることにより、本発明のジアリール尿
素誘導体が得られる。次式は、合成過程の一例を示す。
合成された尿素誘導体は、自己組織性をもっている。
たとえば、この尿素誘導体を水性の液面に展開すると
き、親水基−NH−CO−NH−が界面に指向し、疎水基Rが
逆方向に指向した配列形態をとる。更に、界面に展開さ
れた薄膜を基板に累積させると、この配向性を維持した
LB膜が得られる。このとき、レシチンや長鎖ジアルキル
アンモニウム塩等の他の膜形成化合物と混合した場合に
あっても、尿素誘導体の特性を維持したLB膜が得られ
る。
また、展開法によらず、アセトン,クロロホルム等の
有機溶媒に尿素誘導体を溶解したものを、ガラス板等の
基板上にキャストし、自然乾燥させるキャスト法で製膜
するときにも、更に適宜の方法によって水に分散させて
リポソームを形成しても、同様な分子の自己組織化が行
われる。
得られた薄膜を物理的吸着或いは化学的吸着によって
固体表面に固定すると、安定化する。
配向した尿素基は、水素結合形成により選択的に基質
を結合する。たとえば、種々のヌクレオシド,水溶性ペ
プチド,水溶性ポリマーを添加した水性液体を使用して
単分子膜を形成するとき、基質に応じてそれぞれ膜形成
挙動が異なる基質選択性を示す。
尿素基は、水素結合性を備えた2個の=NH基をもって
おり、=NH基とヌクレオシドの複数個の官能基により多
数の水素結合の組合せをもたせることができる。この組
合せにより、二つの化合物間に起きる相互作用の強さが
変化し、その強度及び基質となる化合物の分子サイズに
応じて膜形成時の挙動が変化する。
この性質を利用して、本発明の機能薄膜は、広範な分
野におけるセンサーとして使用される。
また、本発明の尿素誘導体は、基質を含む適当な溶媒
から結晶化させるとき、基質と選択的に包接結晶を形成
する。
尿素誘導体に取り込まれた基質は、溶媒抽出,pH調
整,熱処理等によって、薄膜或いは包接結晶から解離さ
せて取り出すことができる。そのため、基質の輸送や抽
出等に使用される担体,医薬品分野における薬剤等の徐
放剤を初めとして基質を徐々に放出させる担体,反応触
媒を提供する反応場としても使用することができる。た
とえば、各種ヌクレオシドに対する結合強度の相違等が
変わるため、ヌクレオシド間のリリース速度をコントロ
ールすることができる。
実施例1:ジアリール尿素誘導体の合成 モノステアリルアミン(I)20.0gをエタノール300ml
に溶解し、無水炭酸カリウム30.0gを懸濁させ、アルキ
ルブロマイド20.0gをEtOH100mlに溶かした溶液を室温で
徐々に滴下し、一晩加熱還流させた。これにより、ジス
テアリルアミン(II)を得た。
次いで、ジステアリルアミン(II)5.0gを無水THF150
mlに溶かし、これにトリエチルアミン1.52gを加えた
後、4−ニトロベンゼンカルボン酸クロライド2.64gをT
HF30mlに溶かした溶液を室温で徐々に滴下し、3時間撹
拌した。これにより、次式の反応に従って4−ニトロベ
ンゼンジアルキルアミド(III)5.57gを得た。
得られた4−ニトロベンゼンジアルキルアミド(II
I)5.75gをTHF300mlに溶かし、5%パラジウムカーボン
1.75gを懸濁させた後、H2を通気させた。次の反応式で
示されるように、ニトロ基を還元し、4−アミノベンゼ
ンアルキルアミド(IV)を3.46g得た。
この4−アミノベンゼンアルキルアミド(IV)1.064g
をベンゼン30mlに溶解し、4−ニトロベンゼンイソシア
ナート284mgをベンゼン5mlに溶解した溶液を室温で徐々
に加えて一晩撹拌することにより、目的化合物(V)を
628mg得た。このときの収率は、47.0%であった。
化合物(V)は、融点が68.9〜69.3℃で、元素分析の
結果、C:74.67%,H:10.58%,N:6.94%であった。この分
析値は、化学式から求められた計算値C:74.41%,H:10.3
7%,N:7.18%と実質的に一致していた。また、化合物
(V)のIR値は、1694cm−1(νC=O),1601,1567cm
−1(δNH),1628cm−1(第三アミド)であった。
また、同様にして得た4−アミノベンゼンアルキルス
ルホンアミド(VI)0.80gを30mlのベンゼンに溶解し、
トリホスゲン0.06gのベンゼン溶液5mlを徐々に加えて90
℃で一晩撹拌し、目的化合物(VII)を550mg得た。この
ときの化合物(VII)の収率は、67.3%であった。
得られた化合物(VII)は、融点が55.8〜56.4℃であ
り、元素分析の結果、C:73.40%,H:11.45%,N:4.05%で
あった。この分析値は、化学式から求められた計算値す
なわちC:73.64%,H:11.45%,N:4.11%と実質的に一致し
ていた。また、化合物(VII)のIR値は1711cm-1(νC
=O),1593,1548cm-1(δNH),1145cm-1(νSO2)であ
った。
実施例2:単分子膜の製造 先に製造されたジアリール尿素誘導体(V)5mgをク
ロロホルム或いはベンゼン10mlに溶解したものを、30℃
に保ったLB膜製造装置を使用して水面に150μl展開
し、0.2mm/秒の速度で圧縮することによって、単分子膜
を作成した。
また、圧縮時の表面圧を20mN/mの一定値に保ち、基板
を20mm/分の一定速度で上下に移動させ、水面上に形成
された単分子膜を基板に累積してLB膜を得た。
なお、基板としては、ガラス,石英,ポリマーフィル
ム,グラファイト,銀等の種々の材質を使用した。
得られたLB膜は、累積挙動の結果としてZ型構造を持
っていた。
また、同様に実施例1で合成したジアリール尿素誘導
体(VII)も単分子膜の作成及びLB膜の作成が可能であ
った。
実施例3:センサーとしての特性 LB膜製造装置の水相に単分子膜構成分子の基質となる
ような物質が含まれている場合、実施例2のように単分
子膜を作製するとき、表面圧と分子占有面積とをモニタ
ーすることにより、基質が単分子膜に及ぼす影響を調べ
ることができる。
たとえば、ジアリール尿素誘導体(V)を20℃の各種
ヌクレオシド水溶液(0.0037M)の液面に展開して、圧
縮速度0.2mm/秒で単分子膜を作製し、表面圧,占有面積
曲線を測定した。その測定結果を、基質としてアデノシ
ン,チミジンを用いたときの表面圧−分子占有面積曲線
として第1図に示す。
一定占有面積に対する表面圧は、ヌクレオシドの種類
により異なる。適当な占有面積を設定した条件下で、そ
のときの表面圧を測定することによって、水溶液に含ま
れるヌクレオシド種類を特定することができる。また、
水溶液中に含まれているヌクレオシドの種類が判ってい
る場合、測定された表面圧に基づいてヌクレオシド水溶
液の濃度を知ることができる。
これらの基質特異性は、基質と尿素誘導体間の水素結
合相互作用の容易性如何等に由来しているものと推察さ
れる。
実施例4:包接結晶の生成 基質と尿素誘導体の相互作用は、有機溶媒均一系で作
製した結晶のIRスペクトルからも調べることができる。
基質と実施例1で合成された尿素誘導体(V)が1:1に
なる比率で調整されたEtOH溶液から得られた結晶のIRス
ペクトル吸収変化を、表1に示す。
得られたIRスペクトルは、尿素ユニットのC=0の吸
収が何れも1694cm-1から1720cm-1付近にシフトしてい
た。これは、尿素誘導体と基質との水素結合によって生
じたものと考えられる。また、シフト量及び強度は、基
質の種類により異なっていた。
このことから、本発明の尿素誘導体は、ヌクレオシ
ド,糖,水溶性ポリマー等に対して、包接結晶を形成す
ることが推察される。
実施例5:基質の固定化 実施例1で得られた尿素誘導体(V)5mgをクロロホ
ルム或いはベンゼン10mlに溶解したものを、20℃に保っ
たアデノシン水溶液(0.0037M)上に展開し、圧縮時の
表面圧を20mN/mの一定値に保ち、銀蒸着板を20mm/分の
一定速度で上下に移動させ、浸漬・引上げを5回繰返
し、水面上に形成された単分子膜を累積してLB膜を得
た。
得られたLB膜のFT−IR(RAS法)スペクトルを測定し
たところ、第2図に示すようにアデノシンに由来して、
1653cm-1及び1602cm-1に吸収が見られた。このことか
ら、得られたLB膜上にアデノシンが固定されていること
が判かる。
[発明の効果] 以上に説明したように、本発明の尿素誘導体を使用す
るとき、ヌクレオシド,核酸塩基誘導体,水溶性ペプチ
ド,ATP等を膜構造内の層間に分子レベルで規則的に取り
込んだリボソーム,LB膜,単分子膜,キャスト膜等等の
薄膜を製造することが可能となる。
また、自己組織性を持つ化合物単独或いは分子の組織
化によって薄膜上に規則的に配列された尿素ユニットに
より、各種の物質に対するセンサーとして使用すること
ができる。
更に、膜内に取り込まれた基質を溶媒抽出,pH調整,
熱処理等によって解離することができるので、抽出,輸
送,貯蔵用等に使用される担体としても有用である。し
かも、生理活性物質等を長期間にわたって有効且つ効果
的に局部に放出させるため、薬剤の調製手段としても有
望なものである。
このように、本発明の尿素誘導体及び該誘導体から作
られた機能薄膜は、広範な分野において使用される。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例3で得られた単分子膜の表面圧−分子占
有面積曲線を示したグラフ、第2図は実施例5で得られ
たLB膜のFT−IRスペクトルを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 栗原 和枝 福岡県久留米市野中町1458 (72)発明者 国武 豊喜 福岡県糟屋郡志免町桜丘1―19―3 (56)参考文献 特開 平3−95153(JP,A) 特公 昭49−11572(JP,B1) 特公 昭46−5320(JP,B1) 米国特許3996253(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07C 275/42,311/16 C08J 5/22 C08K 5/21 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(1)で表される尿素誘導体。 (ただし、R1及びR2は、炭素数10〜22の長鎖アルキル基
    又は長鎖フルオロアルキル基を示す)
  2. 【請求項2】一般式(2)で表される尿素誘導体。 (ただし、R1〜R4は、炭素数10〜22の長鎖アルキル基又
    は長鎖フルオロアルキル基を示す)
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の尿素誘導体をLB法,
    キャスト法又は分散法で製膜し、分子の組織化により尿
    素基が膜表面に向かい配列している機能薄膜。
  4. 【請求項4】請求項3記載の機能薄膜を、物理的或いは
    化学的吸着により固体表面に固定化した機能薄膜。
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MA49885A (fr) * 2017-03-15 2020-06-24 Ziylo Ltd Composés macrocycliques
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