JP2893462B2 - 腎炎治療剤 - Google Patents

腎炎治療剤

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は腎炎治療剤に関し、更に詳細には、腎炎治療
効果に優れ、かつ副作用の少ない腎炎治療剤に関する。
[従来の技術及び発明が解決しようとする課題] 腎炎は、免疫複合体が腎臓の糸球体に付着することが
引金となって起こる、いわゆる免疫疾患である。小児の
溶連菌感染後急性糸球体腎炎は、発病中の血圧の管理、
安静、保温等に留意することにより、発病後6ヵ月まで
に約80%は治癒する。
しかし、成人の腎炎及び小児の一部の腎炎において
は、その予後は芳しくなく、急速進行性糸球体腎炎に至
っては、発病後数か月で死亡する症例も認められる。現
在、これら糸球体腎炎の治療は、重篤な副作用を有する
ステロイド剤に頼っている。また、ステロイド剤に抵抗
性を示す腎炎も存在し、いまだ決定的な薬剤がないのが
現状である。
[課題を解決するための手段] 本発明者らはかかる実情において、副作用が少なく、
腎炎治療に有効な薬剤を得るべく鋭意研究を行った結
果、特定の酸性ヘテロ多糖類が著しい抗腎炎活性を有す
ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明はポリアンテス チューベローズ
リンネ(Polianthes Tuberosa LINNE)から誘導された
カルスが細胞外に分泌する酸性ヘテロ多糖類を含有する
ことを特徴とする腎炎治療剤を提供するものである。
本発明の有効成分である酸性ヘテロ多糖類は、例えば
ポリアンテス チューベローズ リンネ(Polianthes T
uberosa LINNE)から誘導されるカルスを植物ホルモン
含有培地で培養し、その培養物から採取することによっ
て製造される(特開昭64−10997号公報)。
外植片として使用可能な部位としては、その花、茎、
葉、鱗茎、根等の器官または組織の一部が挙げられる
が、特に花の一部が好ましい。
カルス誘導用の基本培地としては、植物組織培養に通
常用いられるMurasige−Skoogの培地、Linsmaier−Skoo
gの培地、Gamborgの培地、Whiteの培地、Tuleekeの培
地、Nitsch & Nitschの培地等が用いられる。
この基本培地には、植物ホルモンを添加する必要があ
り、植物ホルモンとしては、2,4−ジクロロフェノキシ
酢酸(2,4−D)、α−ナフタレン酢酸(NAA)、インド
ール酢酸(IAA)、インドール酪酸(IBA)等のオーキシ
ン類;フルフリルアミノプリン(カイネチン)、ベンジ
ルアデニン(BA)、ジメチルアミノプリン(2iP)等の
サイトカニン類が挙げられる。その中でも、2,4−D単
独、NAAとBAの組み合わせまたはNAAとカイネチンの組み
合わせが良好な結果を与える。カルス誘導に必要な植物
ホルモン濃度は、2,4−D単独の場合は5×10-4Mから1
×10-7M、NAAとBAまたはNAAとカイネチンの組み合わせ
の場合はNAAの濃度5×10-4Mから1×10-7M、BAまたは
カイネチンの濃度は1×10-7Mである。
カルス誘導培地には上記の基本培地と植物ホルモンの
ほかに炭素源として糖が加えられる。糖としては、グル
コース、フラクトース、マンノース、キシロース、サッ
カロース、ラムノース、フコース、デンプンなどが挙げ
られるが、通常はサッカロースが用いられる。
カルス誘導は固体培地でも液体培地でも可能である
が、通常は固体培地が用いられる。
誘導されたカルスは上記のカルス誘導培地で同じ形態
を維持したまま10代以上にわたって継代培養をすること
ができる。継代培養用の培地としては、通常基本培地と
してLinsmaier−Skoogの培地、Murasige−Skoogの培地
が用いられ、植物ホルモンとして1×10-4〜1×10-7M
の2,4−Dまたは1×10-4〜1×10-7MのNAAと1×10-4
〜1×10-7MのBA、炭素源としては、グルコース、フラ
クトース、マンノース、キシロース、サッカロース、ラ
ムノース、フコース、デンプン等が用いられるが、就中
サッカロースが好ましく、その添加量は1〜6重量%
(以下、単に%という)が好ましい。
カルスから多糖類を製造するには、カルスを寒天培地
等の固体培地、液体培地で培養するが、就中液体培地で
培養するのが好ましい。基本培地としてはカルス誘導培
地と同様のものが用いられる。
植物ホルモンの種類及び濃度は多糖類の生産性に関係
があり、例えば2,4−D、NAA、IAA、IBA等のオーキシン
類;カイネチン、BA、2iP等のサイトカイニン類;ジベ
レリンA3(GA3)等のジベレリン類等が使用される。こ
の中で、2,4−D、NAAを単独で、またはNAAとBAもしく
はカイネチンを組み合わせて用いるのが好ましい。その
濃度は、2,4−DまたはNAAを単独で用いる場合は5×10
-4Mから1×10-7M、特に5×10-5Mから5×10-6Mが;NAA
とBAまたはNAAとカイネチンを組合わせて用いる場合に
は、NAAの濃度は1×10-4Mから1×10-7M、特に1×10
-4Mから5×10-6M、BAまたはカイネチンの濃度は5×10
-5Mから1×10-9M、特に1×10-5Mから1×10-7Mが好ま
しい。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、マンノ
ース、キシロース、サッカロース、ラムノース、フコー
ス、デンプンなどが用いられる。多糖類の生産は添加す
る炭素源の種類にはあまり強く影響されるものではな
く、通常サッカロースが用いられる。炭素源の濃度と多
糖類の生産量との間にもあまり深い関係はないが、一般
には1〜6%が好ましい。
培養法は特に制限されないが、通常、20〜30℃の温度
で15〜30日間行うのが好ましく、また振とう培養が好ま
しい。
このようにして得られた培養物からの多糖類の採取
は、例えば培養物から細胞を遠沈またはろ過等によって
除去したのち、培養液をロータリーエバポレーター等を
用いて濃縮し、濃縮液にエタノールを加えて沈殿させ、
沈殿物を凍結乾燥することによって行われる。
上記多糖類の精製は、通常の多糖類の精製法に従って
精製することができる。例えば、粗精製の上記多糖類を
水に溶解し、遠心分離して不溶物を完全に除去し、透析
あるいはイオン交換樹脂を用いる方法によって高純度精
製品を得ることもできる。
叙上の方法により得られる多糖類中には、本発明腎炎
治療剤の有効成分である酸性ヘテロ多糖類が含まれてい
る。このものは、2NのH2SO4を用い100℃、8時間加水分
解した後、酢酸エチル:ピリミジン:酢酸:水=5:5:1:
3の混合比の展開溶媒を用いて薄層クロマトグラフィー
を行い、アニリン:ジフェニルアミン:アセトン:燐酸
試薬で呈色させたところ、アラビノース、マンノース、
ガラクトース、グルクロン酸及びキシロースが検出され
た。また、ガスクロマトグラフィーによる分析結果から
も、これらが構成糖として含まれることが確認された。
そして、箱守法によるメチル化の後のガスクロマト分析
(GC−MS法)によれば、その結合様式と構成比は、 であることが認められた。また、グルクロン酸のカルボ
キシル基はその0〜50%がメチルエステル体として存在
する。更に、本発明の有効成分である多糖類は陰イオン
交換樹脂等に吸着するので酸性であると判断された。更
にまた、高速液体クロマトグラフィー(カラム:東曹製
TSK Gel 400PW、5000PW及び6000PW)によれば、その分
子量は1.0×104〜2.0×107であった。
この酸性ヘテロ多糖類は、次の物理化学的性質を有す
る。
溶媒に対する溶解性 水に可溶で、エタノール、エーテル、アセトンに不溶
である。
呈色反応 アンスロン反応:陽性 カルバゾール反応:陽性 エルソン−モルガン反応:陰性 色および形状 エタノール沈殿を経たものは白色ないし灰白色粉末で
ある。
透析を経てイオン交換により精製し、凍結乾燥を経た
ものは白色綿状または繊維状である。
比旋光度 ▲[α]25 D▼:0〜+20(c=1.0,水溶液) 赤外吸収スペクトル 赤外吸収スペクトルは第1図に示す通りである。
核磁気共鳴スペクトル 13C−核磁気共鳴スペクトルは第2図に示す通りであ
る(溶媒:D20、チューブ5mm、内部標準ジオキサン)。
また、本発明に用いる酸性ヘテロ多糖類は、次の繰り
返し構造を有する。
本発明の有効成分である酸性ヘテロ多糖類が新規であ
ることは、特開昭64−10997号ですでに述べた通り他の
多糖類との比較から明らかである。すなわち、本発明の
酸性ヘテロ多糖類に含まれるグルクロノマンナン構造
〔→2)α−D−Man−(1→4)−β−D−G1cUA−
(1→〕を部分構造として持つ公知多糖としては、Dros
era capensisから得られる多糖(CHANNEら,Carbohyd
r. Res.,113巻,113〜124頁,1983年)、Drosera binata
から得られる多糖(CHANNEら,Phytochemistry,21巻,9
号,2297〜2300頁,1982年)、Nicotiana tabacumの培養
細胞から得られる多糖(MORIら,Carbohydr. Res.,91巻,
49〜58頁,1981年;AKIYAMAら,Agric. Biol. Chem.,48巻,2
号,403〜407頁,1984年)などが知られている。しかしな
がら、Drosera capensis及びDrosera binateから得ら
れる多糖類は、主な結合様式に−2Manl−及び−4G1cUAl
−があり、−3Aral−がないという点で明らかに本発明
の酸性ヘテロ多糖類と異なる。また、Nicotiana tabac
umから得られる多糖については、MORIらの報告では主な
結合様式に−3Aral−がないということ、またAKIYAMAら
の報告では主な結合様式に−4GlcUAl−、−2Manl−及び
−5Aral−があり、−3Aral−がないという点で本発明に
用いられる酸性ヘテロ多糖類とは明らかに異なる。従っ
て本発明の有効成分である酸性ヘテロ多糖類は、従来得
られていたものとは異なる新規な酸性ヘテロ多糖類であ
るといえる。
上記酸性ヘテロ多糖類は水溶性であり、生理食塩水等
に溶解して注射剤として、またはカオリン、タルク、乳
糖、デンプン、結晶セルロースなどの担体と混合し、錠
剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口投与剤として投
与される。
投与量は、注射剤の場合は成年男子1週間あたり1〜
20mg、1回1〜10mgとするのが好ましく、経口投与の場
合は成年男子1週間あたり10〜200mg、1回10〜100mgと
するのが好ましい。
[発明の効果] 本発明腎炎治療剤は、抗腎炎効果に優れるのみなら
ず、副作用が少なく、腎炎の治療に極めて有効である。
しかも、必須成分である多糖類は植物組織培養法の応用
により均一に製造することができる。
[実施例] 次に、実施例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明
はこれらに限定されるものではない。
実施例1 多糖類の製造: カルスは滅菌したポリアンテス チューベローズ リ
ンネ(Polianthes Tuberosa LINNE)の開花2〜7日前
の蕾みを植物ホルモンとして1×10-5MのNAAと1×10-9
MのBAを含み、炭素源として3%のサッカロースを含むL
insmaier−Skoogの培地(寒天培地)を用いて誘導し
た。誘導されたカルスは同培地で継代培養した。数代以
上に継代し安定化したカルスを植物ホルモンとして1×
10-5Mの2,4−Dを含み、炭素源として5%のサッカロー
スを含むLinsmaier−Skoogの培地(液体培地)に5%濃
度となるよう接種した。培養は暗所にてロータリーシェ
ーカーを用いて振とう数120r.p.m.、27±1℃で30日間
行なった。この後、ろ過及び遠心分離により、培養液か
ら細胞を取り除き、これをロータリーエバポレーターを
用いて濃縮した。この濃縮液に約3倍量のエタノールを
加え、5℃で24時間静置し沈殿を得た。この沈殿を遠心
分離によって回収し、70%エタノールで3回洗浄した
後、凍結乾燥により水分を除去し、目的とする多糖類を
得た。
以上の操作を5回行ない、ロットによる多糖類収量、
全糖量、ウロン酸量、蛋白質量、水分量、中性糖組成比
の変動を比較した。結果を第1表に示す。
第1表より明らかなように、上記製造法により得られ
た多糖類は、完全人工制御下での培養によって得られる
ため、ロットによる多糖類収量、全糖量、ウロン酸量、
蛋白質量、水分量、中性糖組成比の変動は少なく、均一
性の高いものである。
実施例2 腎炎の実験モデルとして、抗GBM(Glomerula Bacemen
t Membrane)腎炎を用いた。すなわち、ラットの腎皮質
からGBMを調製し(「新薬開発のための薬効スクリーニ
ング法−最新の動向と実際−Vol.1」,小澤光監修,清
至書院,1984,P.143)、これをフロインドの完全アジュ
バントと共にウサギに与え、光ラットGBMウサギ血清
(以下、抗血清と略す)を得た。この抗血清0.75mlを体
重160〜180gのSprague Dawley系ラットの尾静脈より注
射し、腎炎を誘発した。本発明品の投与は、20mg/kgの
投与量で、抗血清投与日を起点に、 前投与:5日前から12日後まで投与 同日投与:0日から12日後まで投与 後投与:1日後から12日後まで投与 の3種とした。抗血清注射後1日目、5日目及び10日目
に尿を採取し、尿中の蛋白量を定量した。
結果は、対照群を100としたときの相対値として第2
表に示した。
第2表から明らかなように、本発明品は投与時期にか
かわらず腎炎の重要な指標である蛋白尿を顕著に抑制し
た。
実施例3 急性毒性試験: 7週令のICR系雌マウス5匹を用いて、急性毒性試験
を行なった。実施例1で得た酸性ヘテロ多糖類の19.7mg
/ml液を約0.4ml採り、2時間間隔で4回全投与量が1000
mg/kgとなるようマウスに腹腔内投与した。
その結果、7日目において全てのマウスが生存してお
り、投与後の全身症状にも変化は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明腎炎治療剤の有効成分である酸性ヘテ
ロ多糖類の赤外線吸収スペクトルを示す図面であり、第
2図はこの多糖類の13C−核磁気共鳴スペクトルを示す
図面である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリアンテス チューベローズ リンネ
    (Polianthes Tuberosa LINNE)から誘導されたカルス
    が細胞外に分泌する酸性ヘテロ多糖類を含有することを
    特徴とする腎炎治療剤。
  2. 【請求項2】アラビノース、マンノース、ガラクトー
    ス、グルクロン酸及びキシロースを構成糖として含有
    し、それらの結合様式と構成比が であり、分子量が1×104〜2×107である酸性ヘテロ多
    糖類を含有することを特徴とする腎炎治療剤。
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