JP2892585B2 - 加速度応動スイッチ及びその製造方法 - Google Patents

加速度応動スイッチ及びその製造方法

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JP2892585B2
JP2892585B2 JP34286093A JP34286093A JP2892585B2 JP 2892585 B2 JP2892585 B2 JP 2892585B2 JP 34286093 A JP34286093 A JP 34286093A JP 34286093 A JP34286093 A JP 34286093A JP 2892585 B2 JP2892585 B2 JP 2892585B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は地震の震動などを検知す
るための加速度応動スイッチに関するものであり、地震
の震動と外乱振動とを確実に区別するためのものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の加速度応動スイッチとし
ては例えば特願平4−272387の「感震器」等があ
る。この感震器は金属製の容器内にこの容器とは電気的
に絶縁して固定された電極を有するとともに導電球を揺
動可能に収納し、この導電球が震動により揺動すると電
極に接触することにより容器と電極との間を電気的に短
絡接続し検知信号を発するものである。
【0003】近年、この様な感震器を各家庭に設置され
る都市ガスやプロパンガスなどのガス流量計に取り付
け、単に流量を記録するだけではなく地震による火災な
どの二次災害の防止やガス洩れなどの早期発見の為の機
能を付与するために所謂マイコンを内蔵したマイコン式
ガス流量計(以下マイコンメーターという。)が使用さ
れ始めている。このマイコンメーターはマイコンと電池
を内蔵し、地震による振動や転倒、ガスの異常な大量流
出や少量ながら長期的な流出等を検知して内蔵した電磁
弁等を閉鎖したり警報器から警報を発したりするなどの
制御を行ない、これらを原因とする事故を未然に防ぐも
のである。
【0004】このうち地震の検知に関しては、マイコン
メーターへの飛来物の衝突とか、自動車の走行や工事現
場などを原因とする人為的な振動と地震の振動とを判別
する必要がある。そのためには感震器が地震の振動領域
である周波数帯域に於いては所定の信号出力特性を有
し、それ以外の周波数帯域に於いては別の信号出力特性
を有する事が必要である。
【0005】例えば、地震の震動は色々な周波数の振動
が複合したものであるが、主に10Hz以下、特に5Hz以
下の振動を中心としており、感震装置の検査などにおい
ては地震の代用特性として5Hz以下の正弦波振動を印加
して行なわれる。そこで例えば前述の導電球などの慣性
子の揺動によってオン−オフ動作をする接点を有した感
震器を使用する感震装置においては、例えば1回の継続
時間が40ミリ秒以上のオン信号及びオフ信号が所定の
時間内、例えば3秒間に3回以上出力された時に、マイ
コンにより地震と判断して信号を出力する構造とし、そ
の他の外乱振動とを区別している。
【0006】この様な方法で地震と外乱振動とを区別す
るために、感震器は地震の振動領域である周波数帯域と
それ以外の周波数帯域に於いては異なった信号出力特性
を有する。例えば5Hz以下の正弦波を印加した時には震
度5に相当する120ガル程度でマイコンが地震発生の
指令を出力してガスの遮断弁を閉止する等の安全装置を
作動させ、5Hzを超え6Hz乃至7Hz以上では300ガル
でもマイコンが制御動作を行なわないようにすることが
好ましい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】これら従来のマイコン
メーター等の制御機器は、検針などの為、戸外に取付け
られる事が多く、例えば建物の外壁に配管を伴って取付
けられる。その為に取付場所によっては、人の通り道や
子供の遊び場などに面する事になり、例えば人が通る時
に体や荷物、自転車等が当たったり、キャッチボールの
ボールなどが当たる事がある。この場合、ガス配管の固
定金具の支持位置の間隔寸法等により多少の差はあるが
1000〜3000ガルの衝撃波の後は10Hz前後の周
期でほぼ正弦波形の1000ガル程度から減衰していく
振動加速度がガスメータに印加されるという事が実験に
より認められた。
【0008】この様な振動は周波数が10Hz前後である
ため、理論的には感震器からの信号はこの周期に同期す
るため少なくともオン信号もしくはオフ信号が40ミリ
秒に達せず、これより可成り短い時間間隔の例えばオン
時間とオフ時間が均等になるとすると25ミリ秒のオン
信号とオフ信号を発するのでマイコンが地震を認識した
制御動作を行なうことはない。
【0009】しかし前述の例の如く円筒形や半球形の容
器中で慣性子として球体を使用している場合には、衝撃
が大きいと慣性子が容器の内壁又は電極に沿って回転運
動をすることがある。この場合、振動が収束する過程で
電極の弾性や底面の形状と慣性子の質量による共振周波
数と加振されている振動周波数の相違から、慣性子は不
完全な円運動に移行し楕円軌道や多角形軌道を描く。そ
のため必ずしも出力信号は振動周波数と同期せず、慣性
子の運動が収束していく過程でオン−オフ信号が上述の
条件、即ち40ミリ秒程度となり地震の判定条件と合致
してしまうことがあり、地震と外乱振動との区別を困難
なものにしている。
【0010】この様な問題を解決するために本出願人は
特願平5−276230の「加速度応動スイッチ」にお
いて、容器内部に制振液体たるフッ素系不活性液体を慣
性球とともに注入し、慣性球の不所望な転動を抑制して
その転動を振動方向にそった動きに規制する規制力を制
振液体により与え、慣性球の共振運動による周回運動へ
の移行を防止し、また衝撃による周回運動を早期に収束
させるものを提案している。
【0011】しかし、フッ素系不活性液体は比重が1.
6以上と比較的大きく、そのため感震器に振動が与えら
れ慣性球が容器底面上を転動する時に慣性球に働く浮力
により慣性球がフッ素系不活性液体の流れにより可成り
影響を受けて、慣性球が一方の接点である容器底面との
間で充分な接点圧がとれなくなる等、その動きに不所望
の影響がでるおそれがある。
【0012】またフッ素系不活性液体を密閉容器内に封
入する場合、密閉容器を溶接などにより形成する場合に
は溶接部付近で瞬間的に高熱にさらされたフッ素系不活
性液体の蒸気が分解し、微量ながらパーフロロイソブチ
レンやフッ化水素などの有毒物質を生じることがあるな
どの問題があった。
【0013】さらにフッ素系不活性液体に於いては低温
時、例えば−30℃に於いて信号が出にくくなるという
問題があった。これらのフッ素系不活性液体は低温にな
るほど粘度が高くなるものであり、例えば常温で動粘度
が0.8センチストークス(以下csと記す)であると−
30℃では3cs程度になる。従って常温時と比較して粘
度の上昇に対応して信号が出にくくなるのは当然の現象
ではある。しかし実際には常温で代替特性を得るために
−30℃での粘度に相当する3csの粘度以上の粘度に相
当する5csのものと比較しても所定時間のオン信号が出
にくくなり、所定の地震波等の振動が与えられてもマイ
コンは地震と判断しなくなるという問題があった。
【0014】実験と測定の結果、この問題は0℃附近を
境にして顕著に発生することが判った。つまり0℃附近
以上の温度に於いてはフッ素系不活性液体の粘度の上昇
に対応してオン信号が短くなっていくのに対し、それよ
り低い温度では粘度の上昇率以上に所定時間のオン信号
が発生しにくくなったりオン信号が跡切れることが確認
された。例えば図10の波形図を参照して説明すると、
加速度応動スイッチを図10(A)に示すような所定の
加速度以上の正弦波で加振した場合、概ね0℃以上の温
度では図10(B)の波形の様に与えられた振動に対応
するオン・オフ信号が出力される。しかしそれより低い
低温域になると例えば図10(C)の波形の様にオン信
号が跡切れたり場合によってはオン信号がほとんど発生
しなくなる。この現象はフッ素系不活性液体以外にシリ
コン系液体についてもさらには炭化水素系液体について
も同様の傾向がみられる。この現象は制振液体中に微量
ながら含まれている水分によるものであると考えられ
る。そのため低温域での使用における加速度応動スイッ
チの動作特性は、制振液体の粘度変化のみでは予測でき
ず構成要素や材質の選定が非常に困難であった。
【0015】その対策として出願人は平成5年11月2
5日付けで出願した「加速度応動スイッチ及びその製造
方法」において、制振液体としてアルコールのみ若しく
はアルコールを添加した液体を使用してアルコール中に
水分を溶解させることにより制振液体中の水分の影響を
なくしたり、制振液体として水分を除去した炭化水素等
を使用した加速度応動スイッチを提案した。
【0016】しかし、制振液体としてアルコールを使用
した場合にはアルコールには導電性があるため静止状態
に於いて少なくとも接点部材の一部を浸す量のアルコー
ルを入れると常時電力を消費することになり、例えば電
源に電池を使用した場合などには長期間にわたり使用す
るためには消費電力節約のための設計上の特別な配慮や
電池交換などが必要になるという問題があった。またフ
ッ素系不活性液体やシリコンオイルにアルコールを添加
した場合にはどちらもアルコールをほとんど溶解しない
ため、アルコールとそれぞれの液体は比重の違いにより
分離してしまう。このときシリコンオイルとアルコール
の混合液体では、比重の差が僅かなために振動時に攪拌
されたアルコールがシリコンオイル中を浮遊し接点部材
と容器または慣性球の間を導通してしまうという問題が
あった。
【0017】またこの問題を避けるために制振液体の量
を接点部材に接触しない程度の量にしたものに於いて
は、特に静止時の接点部材と慣性球との間隔が狭いと、
比較的質量の小さな慣性球を使用したり慣性球の動きを
受けるために接点部材をしなやかにした場合に、振動後
に接点部材や慣性球に付着した制振液体の滴の表面張力
により慣性球と接点部材とが引き付けられ静止状態に於
いてオン信号を発する不具合があった。
【0018】また制振液体として水分を除去した炭化水
素等を使用した場合にも、脱水処理が難しくかつ厳密に
は水分を完全になくすことはできないため、処理後の炭
化水素でも不安定な信号が出ることがあった。また脱水
後の制振液体の管理が難しくなるという問題があった。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の加速度応動スイ
ッチは円形の金属板の実質的な中心に穿たれた孔に電気
絶縁性の充填材によって導電性のリード端子を貫通し気
密に固定した蓋板と、有底円筒形の導電性のハウジング
を有し、該ハウジングの底面には実質的な中心部から外
側に向かって同心円状に緩やかに上昇する傾斜面が形成
され、前記蓋板の周縁部にハウジングの開口端が気密に
固着されて密閉容器を形成し、蓋板のリード端子の密閉
容器内側の端部には導電端子ピンを中心としてしなやか
な弾性を有した複数の羽根状部を実質的に同心放射状に
配設する導電材製の接点部材が導電的に固着され、前記
密閉容器の内部には導電性の固体の慣性球が正規姿勢に
おいて静止時には重力によりハウジングの実質的な中央
部に位置するように収納され、振動を受ける事により慣
性球が転動し接点部材と接触して変位させるとともに摺
動し同時にハウジング内面と接点部材との間を慣性球を
介して短絡するように構成され、前記密閉容器中には慣
性球の不所望な転動を抑制するためにスイッチの使用温
度範囲内では流動性を保つ制振液体が封入されるととも
に、この制振液体中に含まれる微量の水分が少なくとも
低温領域で前記接点部材とハウジング間の導電性を阻害
しないようにする液体が所定量添加されたことを特徴と
する。
【0020】また他の特徴は密閉容器中には慣性球の不
所望な転動を抑制するための制振液体として炭化水素
封入されると共にこの制振液体中の水分の凍結片による
導電性の阻害による波形の跡切れを防止するためにアル
コール所定量添加されたことにある。
【0021】また他の特徴は上記の加速度応動スイッチ
に於いて制振液体に対するアルコールの添加量は静止時
にリード端子とハウジングの間の絶縁抵抗値が規定の値
以上になる量に選定されていることにある。
【0022】また他の特徴は加速度応動スイッチの密閉
容器中には慣性球の不所望な転動を抑制するための制振
液体としてアルコールをほとんど溶解しない電気絶縁性
液体が封入されると共にこの制振液体中の水分の凍結
防止用にアルコールが所定量添加され、制振液体に対す
アルコールの添加量は静止時にリード端子とハウジン
グの間の絶縁抵抗値が規定の値以上になるような量に選
定されていることにある。
【0023】他の特徴は制振液体に対するアルコールの
添加量を制振液体に対して体積比で10パーセント以下
であると同時に静止時にリード端子とハウジングの間の
絶縁 抵抗値が100MΩ以上になるような量に選定した
ことにある。
【0024】また他の特徴は加速度応動スイッチ中の制
振液体の量を少なくとも液面が接点部材に接触する量と
されていることにある。
【0025】さらに他の特徴は加速度応動スイッチのハ
ウジング内面には慣性球が前記静止時には無関係で所定
の加速度を受けた時に接触する壁面部分に衝接部が設け
られ、加振時等には前記慣性球が断続的に該衝接部に衝
接して進路を変更させられ慣性球と接点部材との接触が
不連続に乱されるように構成されたことにある。
【0026】またさらに他の特徴は円形の金属板に電気
絶縁性の充填材によって導電性のリード端子を気密に貫
通固定して蓋板とし、該リード端子の端部に複数のしな
やかな弾性を有した羽根状部を持つ導電材製の接点部材
を導電的に固着し、有底円筒形の導電性のハウジングに
導電性の慣性球を収納し、予め制振液体に対してアルコ
ールを含む複数の液体を均一に混合しそのアルコールの
添加量は制振液体に対して体積比で10パーセント以下
とされた所定量の制振液体を注入した後に、ハウジング
の開口端に前記接点部材がハウジング内部に収納される
ように蓋板の周囲を気密に固着して気密容器を構成する
加速度応動スイッチの製造方法にある。
【0027】
【実施例】以下、図を参照しながら本発明の実施例につ
いて説明する。図1は本発明の加速度応動スイッチの一
実施例である。この加速度応動スイッチ1は金属製の円
形の蓋板2を有し、この蓋板2の中央には貫通孔2Aが
穿たれており、この貫通孔2Aには導電性のリード端子
3が挿通されガラスなどの電気絶縁性充填材4により気
密に絶縁固定されている。蓋板2の周縁部にはフランジ
部2Bが設けられ、このフランジ部2Bには有底円筒形
の金属製ハウジング5の開口端がリングプロジェクショ
ン溶接などの方法で気密に固定され制振液体が長期間
にわたり漏出しないような密閉容器を構成している。こ
のハウジング5の底面5Aはほぼ中心部から外側に向か
って同心円状に緩やかに上昇する傾斜面が形成されてお
り、本実施例では円錐面とされているが必要に応じて途
中で傾斜角度が変えてあるもの、或いは球面状となって
いてもよい。
【0028】リード端子3の密閉容器内部側の先端には
導電材製の接点部材6が溶接などにより導電的に固着さ
れている。この接点部材6は複数のしなやかな弾性を有
した羽根状部6Aを有しており、導電端子ピン3を中心
に後述の慣性球7との接触部がほぼ同心円状に配設され
ている。慣性球の質量が0.7グラム程度の場合には、
接点部材6の材質として例えば厚みが0.01〜0.0
3mmのリン青銅板が使用される。
【0029】密閉容器内には導電性の慣性球7が収納さ
れており、通常正規姿勢時で静止時には円錐面状のハウ
ジング底面5Aの中央附近に設けられた静止部5B上に
位置している。この慣性球7は鉄や銅やそれらの合金な
どの導電性の固体の球であり、好ましくは銀メッキや金
メッキ等の表面処理が施されている。そして慣性球7は
地震などによる所定の大きさ以上の振動によりハウジン
グ底面5A上を転動可能にされており、前記接点部材6
の羽根状部6Aと接触−開離可能にされている。なおリ
ード端子3と接触部材6との固着部の下面には厚みのあ
る金属板で作られた保護板8が固着されており、慣性球
7の接点部材6の根元附近への衝接による接点部材の変
形を防止している。
【0030】密閉容器内には制振液体9が封入されてい
る。この制振液体は例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタ
ン、トルエン等の使用温度附近で液体となる炭化水素や
シリコンオイル等の液体を主液体とし、後述する理由で
制振液体中に含まれる微量の水分が少なくとも低温領域
で前記接点部材とハウジング間の導電性を阻害しないよ
うにする液体としてメチルアルコールやエチルアルコー
ル等のアルコールやメチルトリメトキシシランやビニル
トリメトキシシラン等水分と反応しアルコールを生成す
る所謂シランカップリング剤等を所定量加えた液であ
り、使用条件から適当な粘性や融点などを有するものが
選定されている。また導電性のあるアルコールの制振液
に対する添加量は静止時にリード端子とハウジングの
間の絶縁抵抗値が規定の値以上になるような量に選定さ
れている。
【0031】例えば本実施例では制振液体9としてヘキ
サンにメチルアルコールを質量比で3パーセント溶解し
たものを使用している。制振液体9の全体の量は少なく
とも接点部材6の先端が浸る程度とされている。但しそ
の液面上に気体を存在させる空間を設ける程度の量とし
て温度変化による制振液体の膨張収縮に基づく密閉容器
の変形等を防止している。
【0032】このとき接点部材6は少なくとも羽根状部
6Aの先端が制振液体9に接触しているので、制振液体
9中のアルコールの添加量が多いとアルコールの導電性
により微少電流が流れるが、アルコールの添加量を加速
度応動スイッチの静止時にリード端子とハウジングの間
の絶縁抵抗値が規定の値以上になるような量、例えば実
施例では体積比にして3パーセントとすることにより実
質上無視することができる。
【0033】例えば実施例の構造では実験によると主液
体となるヘキサンにメチルアルコールを添加した場合、
体積比でアルコールが5パーセント程度まではリード端
子3とハウジング5の間は500Vメガーで1000M
Ω以上あるが、8パーセントで200〜300MΩ、1
0パーセントで40〜60MΩと急激に導電性が増す事
が判った。例えば本発明の加速度応動スイッチをマイコ
ンメータ等長期にわたって電池で駆動する必要があるも
のに使用する場合、加速度応動スイッチの絶縁抵抗値は
100MΩ以上と規定されている。そのため本加速度応
動スイッチの様に小形化が要求されるものに於いては、
ヘキサンを主液体としメチルアルコールを添加したもの
を制振液体とする場合には、メチルアルコールの添加
は8パーセント以下とされる。
【0034】また同様の試験に於いてヘキサンにエチル
アルコールを添加したものを使用した時には添加量が8
パーセント程度までのものでは1000MΩ以上、10
パーセントで400MΩ程度、15パーセントで50M
Ω程度であり、エチルアルコールの方が絶縁抵抗値を基
準とした場合の添加量の幅を広く取る事ができるため、
その管理がより容易になる。また例えばヘキサンに対し
てメチルアルコールはやや溶けにくく充分攪拌をしない
と溶解しないが、エチルアルコールは容易に溶けるため
ヘキサンに溶解させるための特別な攪拌を必要とせず製
造はより容易になる。なお低温時の効果に関してはアル
コールの添加量を10パーセントとしたものに於いて
も、8パーセント以下例えば3パーセントとしたものと
同様の効果が得られる。
【0035】また、シリコンオイルにアルコールを添加
した場合にはアルコールはシリコンオイルにはほとんど
溶解しないため、両者は二相に分離する。そのためアル
コールの添加量が多いと、例えば加振時に攪拌された制
振液体中のアルコールの一部が接点部材と慣性球との間
に留ることにより導電性を呈し、静止時の絶縁抵抗値を
規定の値以下、例えば100MΩ以下にしてしまう事が
ある。しかし実験によればアルコールを体積比で10パ
ーセント以下にする事により、静止時の絶縁抵抗値を規
定値以上、例えば100MΩ以上にする事ができ、低温
下における加振時の信号の波形の跡切れも排除する事が
できる。
【0036】次にこの加速度応動スイッチの動作につい
て説明する。正規姿勢時で静止時には慣性球7はハウジ
ング底面5Aの静止部5B上に位置しており、この状態
では慣性球7は接点部材6とは接触せずリード端子3と
ハウジング5及び蓋体2の間は電気的に接続されないの
で信号が出力されることはない。
【0037】加速度応動スイッチ1が所定の値以上の振
動をうけると慣性球7がハウジング底面5A上を転動し
て接点部材6の羽根状部6Aと接触することにより、接
点部材6とハウジング5が電気的に短絡され、リード端
子3−接点部材6−慣性球7−ハウジング5−蓋板2の
経路で電路が形成され信号が出力される。
【0038】この様な慣性球の転動時に振動が一定方向
への往復運動であれば理論的には慣性球は振動方向によ
って決定付けられるハウジングの中心線上で往復運動を
行なうことになる。しかし実際には接点部材との接触時
に軌道をかえられたり、ハウジングの底面の形状と慣性
子の質量による共振周波数と加振周波数の相違等から振
動方向と交差する方向の加速度成分が非常に僅かながら
存在することにより、慣性球がハウジングの中心を逸
れ、ある周波数では慣性球の共振と円錐面状の底面形状
からその方向の動きが増幅されていって楕円軌道や8の
字運動を始めることがある。
【0039】しかし本発明に於いては、密閉容器内に慣
性球7とともに制振液体9が封入されている事により慣
性球7の運動が規制され、振動方向と直交する方向への
慣性球7の運動は実質的になくなりほぼ理想的な往復運
動になる。これは密閉容器内に制振液体9を注入したた
めに慣性球7の共振周波数を制振液体のない場合と比較
して非常に低い領域にまで下げることができるからであ
り、そのため振動方向と直交する方向への慣性球の不所
望の転動が増幅されることはなく、またこの方向への転
動力は振動方向に対して非常に僅かな力なので慣性球の
動きはほぼ理想的な転動になり、もちろん慣性球が周回
運動を始めることはない。
【0040】ここで制振液体9の動粘度などは慣性球7
の電極との接触動作に於いて実質的に問題のないような
値に選定される。例えば実施例に於いては制振液体とし
てヘキサンを使用した場合、−30℃〜60℃の温度で
動粘度が1〜0.3cs程度となる。制振液体9を0.2
〜0.3cc使用した時、常温での正弦波による加振に対
して制振液体9が封入されていないものでは110ガル
で慣性球7が転動を始めたのに対して、制振液体9を封
入したものは120ガルで転動開始しており、この加速
度は震度5に相当する80ガルから250ガルの範囲内
であり実質的に問題はない。
【0041】また、周波数を7〜8Hzとし加速度を増加
して例えば300〜500ガルの値で加振した場合には
ハウジングの底面の形状と慣性子の質量による共振周波
数と加振周波数の相違等から振動方向と交差する方向に
発生する僅かな加速度成分により、制振液体9が封入さ
れていない場合には慣性球7の振動方向と交差する方向
への運動が増幅されて不所望の信号を発したのに対し
て、制振液体9を封入したものではほとんどそのような
運動は発生せず、慣性球7の運動を実質的に振動方向の
運動のみにする事ができた。なお前述の慣性球7が転動
を始める加速度の値はハウジング5の底面形状などを変
更する事により調整できる事はいうまでもない。
【0042】また例えば加速度応動スイッチ1が取り付
けられた装置に人やボールがあたる等して強い衝撃が与
えられると、慣性球7がハウジング5の内面や接点部材
6に沿って回転を始めることがある。このとき本発明で
は制振液体9として例えばヘキサン等の炭化水素やシリ
コンオイル等が封入されているため、その回転運動を短
時間で収束させることができる。そのため信号の出力は
されても、その収束過程を短くすることで前述の条件に
合致する信号の繰り返しを避けることができ、マイコン
が不所望な制御動作を行なうことがなくなる。
【0043】たとえば実施例では衝撃試験に於いて、制
振液体9を封入しないものでは慣性球の運動が収束する
までに20〜30秒かかったのに対して、同様の試験で
制振液体9を封入したものは10秒以下で収束してい
る。そのため例えば前述の様に1回の継続時間が40ミ
リ秒以上のオン信号及びオフ信号が3秒間以内に3回以
上出力された時にマイコンが地震であると判断する如き
ソフトウェアにおいては、40ミリ秒以上のオン信号が
慣性球7の運動の収束過程で発生するものの、3回発生
することなくそれ以前に慣性球の運動は接点部材と接触
しない範囲内に収束し、よってこの様な衝撃ではマイコ
ンは地震発生の誤判断をしなくなる。
【0044】ここで実施例のスイッチを低温域、例えば
−30℃で動作させると制振液体たるヘキサンの粘度が
上がるため出力信号はそれに対応して短くなる。しかし
本発明では制振液体に対して体積比で10パーセント以
下のアルコールを添加しているため、地震波やそれに相
当する所定の振動に対し低温下でもオン信号が発生しな
かったり跡切れたりする事が無く、例えば図10(B)
の如きオン・オフ波形を低温域でも保つ事ができ、広い
温度範囲でマイコンの動作が可能な安定した信号を発生
することができる。0℃以下の低温域の条件に於いてヘ
キサン等の炭化水素やフッ素系不活性液体、若しくはシ
リコンオイルのみを制振液体として使用した場合には不
安定になった信号がアルコールを添加した制振液体に於
いては不安定にならない理由としては以下の様に推定さ
れる。
【0045】加速度応動スイッチに封入される制振液体
は予め脱水処理をされているが、実際には微量ながら水
分が含有されることは避けられない。例えば各種の脱水
手段を講じても20ppm程度の水分が含まれる事が確認
されている。この水分はフッ素系不活性液体やシリコン
オイルのみを制振液体として使用した場合には、制振液
体に含まれた水分は0℃以下になると水分は制振液体中
で氷の結晶となる。この氷の結晶は界面、特に接点部材
の先端部等に集中しやすく僅か20ppm程度であっても
慣性球と接点部材との接触時に両者の間に入り込み電気
的に絶縁してオン信号の発生を妨げるため、図10
(C)の如く信号全体が短くなったり、信号が寸断され
て一回当たりの信号の出力時間が短くなる等するためマ
イコンは所定の振動を与えられても地震と判断すること
ができなくなるためであると推定される。
【0046】これに対して本発明の加速度応動スイッチ
に於いては少なくともアルコールを添加した制振液体を
使用することにより、微量の水分はアルコール中に溶け
込むと共に水分の凝固点は降下するので低温域において
も水分が接点部材と慣性球の金属表面の凸部相互の接触
を妨げない。そのため低温域においても信号は粘度の変
化に依存した変化のみで、通常の使用温度範囲内であれ
ば信号が寸断されて異常に短い信号となったり、信号が
発生しなかったりすることはなく、低温域においても予
めそれに適した温度−粘度特性を有した液体を使用する
ことにより確実に地震波をとらえることができるものと
考えられる。
【0047】以上の実施例については炭化水素たるヘキ
サンに所定量のアルコールを添加溶解したものを封入し
たものについて述べたが、例えばヘキサンのかわりに前
述のペンタンやヘプタン、トルエン等使用温度範囲内で
液体である炭化水素にアルコールを添加溶解したもの
や、若しくはアルコールとシリコンオイルとの混合液を
制振液体として使用することにより前述の実施例と同様
に低温時に於ける微量の水分の存在による影響を防止す
る効果を得ることができる。またアルコールに換えて例
えばメチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシ
ラン、ビニルトリメトキシシラン等のシランカップリン
グ剤を主液体に所定量添加しておく事により、さらには
シランカップリング剤そのものを制振液体として使用す
る事により、制振液体中の水分がシランカップリング剤
のアルキル基と反応してアルコールを生成するので、結
果として水分が除去されることとなり低温領域での動作
が確実になる。またこれらの液体はアルコールやシラン
カップリング剤に限るものではなく、制振液体中に含ま
れる微量の水分により低温領域において接点部材とハウ
ジング間の導電性を阻害しないようにしたもの、例えば
水分と反応して二酸化炭素を生成するイソシアネートエ
チルメタクレートの様なイソシアン酸系物質等を使用し
てもよい。
【0048】また、本発明においては制振液体の主液体
としてペンタン、ヘキサンの如き炭化水素にメチルアル
コールやエチルアルコール、プロピルアルコールの如き
アルコールを所定量添加溶解したり、シリコンオイル等
のアルコールをほとんど溶解しない液体にアルコールを
添加した液体を使用し、これらの制振液体は接点部材や
慣性球表面をおかすことはなく、またハウジングと蓋板
の溶接時にもその熱によりパーフロロイソブチレンやフ
ッ化水素などの有毒物質が発生することはない。そのた
め封入溶接時に発生した物質の特別な処理や作業者の安
全の確保に対する特別な配慮が不要になる。さらにアル
コールや炭化水素、シリコンオイルの比重は概ね0.6
〜0.8程度でフッ素系不活性液体と比べて小さいた
め、慣性球に与える浮力の影響を低減することができ
る。
【0049】またこのスイッチの通常の使用条件は電圧
5V以下、電流1mA以下であり慣性球と接点部材及び
ハウジングとの接触時に接触部間のアークや発熱等によ
り制振液体が分解したりすることはほとんどなく、シリ
コン酸化物等の電気絶縁物の発生もほとんどない。また
制振液体に対するアルコールの添加量を静止時にリード
端子とハウジングの間の絶縁抵抗値が規定の値以上にな
るような量、実施例では3パーセントに選定されている
ことにより、接点部材6とハウジング5との間を制振液
体9中のアルコールによって微少電流が流れることもな
い。
【0050】また上述の通り接点部材6とハウジング5
との間を制振液体9を介して微少電流が流れることが無
いので、地震等の発生時以外通常は回路を完全に遮断す
るために制振液体9の量を静止時正規姿勢において接点
部材6の下部が接しない程度とする必要がなくなる。そ
こで制振液体9の量を少なくとも液面が接点部材6に接
触する量とすることにより、加振後に接点部材6と慣性
球7の間に残る制振液体の滴は容器内に溜まっている制
振液体の液面と接して表面張力により流れ落ち一体化す
るので、静止時に接点部材上に残った制振液体の滴の表
面張力により接点部材と慣性球が接触してしまうことは
ない。
【0051】また、本発明の実施例のスイッチでは密閉
容器中に制振液体9を封入することにより接点部材6や
慣性球7の表面に汚れが付着しにくくなり、振動時に慣
性球7が制振液体9を攪拌し流れを生ずることによりこ
れらの汚れが落ちやすくなる。また本実施例のスイッチ
では接触部となりうる部分は慣性球では表面全体であ
り、接点部材及びハウジングでは円周状に存在するため
に、例えばシリコン酸化物等の電気絶縁物の発生が1ヵ
所に集中する可能性は実質的に零に近く、よって接触部
間の導通不良は発生しにくい。さらに慣性球と各接触部
は摺動を伴って接触するため、発生した絶縁物は摺動に
より擦り落とされ接触部は常に清浄に保たれる。さらに
制振液体9の比重がシリコン酸化物と比較して小さいた
めに、擦り落とされたシリコン酸化物は沈みやすく、ま
たこれらが浮上して接点部材6と慣性球7の接触を阻害
する可能性は低くなる。そのため電気信号は確実にな
り、長期に亘って所期の性能を維持することができる。
【0052】この様な加速度応動スイッチ1をマイコン
メーターなどに取り付ける場合の例を図2に示し、この
実施例について説明する。この感震器11はケース12
中に加速度応動スイッチ1を収納している。加速度応動
スイッチ1のリード端子3には吊り部13が設けられ、
ケース12内に設けられた保持体14のハンガー14A
に揺動可能に懸吊され、通常は加速度応動スイッチ1が
自動的に正規姿勢となるようにされている。加速度応動
スイッチ1の蓋板2及びリード端子3にはしなやかなリ
ード線15A,15Bの一端が電気的に接続され、各リ
ード線の他端は接続端子16A,16Bを介してケース
12にインサート成形された導電端子17A,17Bに
接続される。ケース12内には粘性流体18が所定量充
填されており、ケース12の開口端には外蓋19が前記
粘性流体18が漏出しない程度の気密性をもって封着さ
れている。
【0053】この感震器11は制御装置のプリント基板
等に直接取り付けられ、導電端子17A,17Bによっ
て基板上の配線に接続される。本発明の如き加速度応動
スイッチはその構造上、取付姿勢が動作特性に大きく影
響し、例えば正規姿勢から1度傾斜すると20ガル近く
動作加速度が変化する。この様に取付姿勢に高い精度を
要求されるため、加速度応動スイッチ1を直接プリント
基板に取り付ける構造とすることは非常に困難である。
しかし感震器11においては加速度応動スイッチ1をケ
ース12内に吊り下げているため、感震器の取付姿勢が
許容傾斜角度の範囲内であれば加速度応動スイッチ1は
自重により自動的に正規姿勢になるので取付けに必要以
上の精度は要求されずその作業は容易になる。
【0054】またケース12には加速度応動スイッチ1
とともにその粘性を選定された高粘度の粘性流体18、
例えば5000cs程度のシリコンオイルが封入されてい
るため、感震器1を取付けた装置が転倒したり急に傾い
たときや地震等の振動に対しては加速度応動スイッチ1
はケース12の動きにほぼ追従し動作信号を発生する。
また取り付け時の傾き等に対しては例えば30秒以内に
正規姿勢に復帰するように粘性流体18の粘度は選定さ
れている。このように図2に示す如き構造の感震器にお
いては取付けが容易になるとともに、地震の振動や急激
な傾斜や転倒を確実に検出することができる。
【0055】なお、本発明の加速度応動スイッチについ
て実施例では金属製の蓋板を有したものについて説明し
たが、制振液体が漏出しない程度の密閉容器を構成する
ことができ導電性のリード端子を絶縁固定できるもので
あれば、樹脂やセラミックスを使用してもよい。この場
合図2に示すリード線15Aの一端はハウジング5に導
電的に固定される。
【0056】次に図3及び図4を参照しながら本発明の
他の実施例について説明する。図3は本発明の加速度応
動スイッチ21の縦断面を図4のB−B断面で表わした
図であり、図4は図3の加速度応動スイッチのA−A断
面矢視図である。なお、前述の加速度応動スイッチ1と
同じ部材には同じ記号を付して重複する説明を省略す
る。
【0057】上述の如く容器内に制振液体を注入したも
のにおいては制振液体の粘度はその温度に大きく影響さ
れるため、広い使用温度範囲にわたって安定した特性を
有した制振液体が要求されるため液体の選定が非常に難
しくなる。そこで低温域、例えば−30℃における粘度
の上昇を補い所期の性能を得るために、制振液体として
低温域でも充分な流動性を有したものを選定するか、そ
の注入量を少なくして慣性球に対する規制力を調整する
という方法が考えられる。しかし制振液体の粘度を低温
域で充分な流動性を有するものに選定すると高温域例え
ば60℃ではさらに粘度が低くなるため規制効果が低下
して所期の性能が得られないことがある。また注入量を
少なくする場合にも制振液体の粘性の温度変化は変らな
いために低温域において正常な動作をするように注入量
を減らした場合には高温域では規制効果が不充分にな
り、さらに前述の様に静止時に於いて制振液体の滴の表
面張力により接点部材と慣性球との間が接触されるとい
う問題もある。このように制振液体のみを使用したもの
においては低温域から高温域までの広い温度範囲に於け
る安定した動作を得ることは困難である。
【0058】そこでこの加速度応動スイッチ21におい
てはハウジング25内に制振液体9を注入しておくと共
にハウジング25の内側の側壁25Cには高温時など制
振液体だけでは規制効果が不充分な時に於いて慣性球の
運動を規制するための衝接部たる突起25Dが実施例で
は図4に示す如く等間隔で6ヵ所設けられることによ
り、低温域から高温域まで安定した動作特性を得る事が
できる。この突起25Dは例えばプレス成形等で形成さ
れており、その数はハウジングや慣性球の大きさや慣性
球の材質等によって決まる共振周波数によって決めら
れ、ハウジング内周に均等に設けられるのであれば5ヵ
所以下例えば3ヵ所若しくは4ヵ所でも良いし、もちろ
ん7ヵ所以上設けてもよい。またプレス加工上の理由等
からハウジング底面25A部分で慣性球7が側壁25C
に当たる迄に実際上動き得る範囲の転動部25Eの形状
に影響を与えないならば、突起25D等の衝接部は例え
ば図3に点線で示す慣性球7の最大移動位置とハウジン
グ側壁25Cとの間の慣性球7と衝接しない位置にハウ
ジング底面25Aの外側の部分から上方に向けて柱状に
設けてもよい。
【0059】また衝接部のハウジング内側への突出量は
慣性球7がこの突起25Dに接触する位置にあっても慣
性球7と接点部材6との接触を妨げず且つ接点部材6が
突起25Dに直接接触せず、慣性球の円運動が確実に進
路変更させられる高さに選定されている。また衝接部の
ハウジングの円周方向の幅は可及的狭くしておくことに
より、慣性球の往復振動時に慣性球7が衝接部に正面衝
突して振幅が減少する機会を最小限にでき、且つ慣性球
7が衝接部である突起25Dに正面衝突する時以外、例
えば僅かな角度で斜めに当たれば慣性球7はハウジング
25の側壁25Cまで到達し、慣性球7の振幅が減少す
ることがなくなるから接点部材6との接触時間にはほと
んど影響はない。
【0060】次にこの加速度応動スイッチ21の動作に
ついて説明する。正規姿勢時で静止時には前述の加速度
応動スイッチ1の場合と同様に慣性球7はハウジング底
面25Aの静止部25B上に位置しており、この状態で
は慣性球7は接点部材6とは接触せずリード端子3とハ
ウジング25及び蓋体2との間は電気的に接続されない
ので信号が出力されることはない。
【0061】加速度応動スイッチ1が所定の値以上の水
平方向の振動をうけると慣性球7がハウジング底面25
Aの転動部25E上を転動して接点部材6の羽根状部6
Aと接触することにより、接点部材6とハウジング25
が電気的に短絡され、リード端子3−接点部材6−慣性
球7−ハウジング25−蓋板2の経路で電路が形成され
信号が出力される。
【0062】この様な慣性球7の転動時に前述の実施例
の説明でも述べた如く、慣性球7がハウジング25の中
心を逸れ、ある周波数では慣性球の共振と円錐面状の底
面形状からその方向の動きが徐々に増幅されていって8
の字運動や楕円軌道や円軌道等の周回運動を始めること
がある。
【0063】しかし本発明に於いては、前述の如く密閉
容器内に慣性球7とともにアルコール等の制振液体9が
注入されている事により慣性球7の転動が規制され、振
動方向と直交する方向への慣性球7の転動は実質的にな
くなりほぼ理想的な転動になる。
【0064】また例えば加速度応動スイッチ21が取り
付けられた装置に人やボールがあたる等して強い衝撃が
与えられると、慣性球7がハウジング5や接点部材6に
沿って回転を始めることがあるが、本発明では制振液体
9が注入されかつハウジング内面に衝接部が設けられて
いるため、その回転運動を短時間で収束させることがで
きる。そのため信号の出力はされても、その収束過程を
短くすることで前述の条件に合致する信号の繰り返しを
避けることができ、マイコンが不所望な制御動作を行な
うことがなくなる。これは衝撃により慣性球7が周回運
動を始めると慣性球7は衝接部たる突起25Dと衝接し
て軌道を変えられるとともに、制振液体9により慣性球
7の共振周波数が下げられているために周回運動は維持
できず、また衝撃時から急激に減衰していく振動では制
振液体9に抗して慣性球の転動を維持することができな
いためである。
【0065】そのため例えば前述の様に1回の継続時間
が40ミリ秒以上のオン信号及びオフ信号が3秒間に3
回以上出力された時にマイコンが地震と判断するものに
おいては、慣性球の動きを不規則に変化させるため前述
の実施例以上に40ミリ秒以上のオン信号が発生しにく
くなり、3回発生する以前に慣性球の転動は接点部材と
接触しない範囲内に収束し、よってこの様な衝撃ではマ
イコンは地震発生と誤判断をしなくなる。
【0066】この様に制振液体、本実施例ではアルコー
ルを溶解した炭化水素やアルコールを溶解しないシリコ
ンオイル等の主液体とアルコールとを混合した液体を注
入した加速度応動スイッチを低温域で使用する場合、制
振液体の粘度を常温での使用に適した粘度に設定してお
くと、低温域では制振液体の粘度が高くなるため慣性球
の動作に対する規制力が大きくなり、所定の振動が与え
られても慣性球が接点部材との接触時間が短くなり例え
ば前述の40ミリ秒以上のオン信号が出力されなかった
り、さらには慣性球が接点部材と接触せず信号が出力さ
れないことがある。しかし本発明に於ては制振液体9は
その粘度が最低使用温度でも所定の値以下であるような
ものを選定されており、たとえば炭化水素のヘキサンは
−30℃で動粘度が1cs程度であり正弦波による加振に
対して130ガルで所定時間のオン信号を出力してお
り、この加速度は前述の通り震度5に相当する80ガル
から250ガルの範囲内である。
【0067】またもちろん、−30℃に於て周波数を7
〜8Hzとし200〜300ガル加速度で加振した場合に
も制振液体9により慣性球7の振動方向と交差する方向
への振動成分による周回運動は規制されるので、慣性球
7の転動を実質的に振動方向の転動のみにする事ができ
不所望の信号を発することはない。さらにはヘキサンな
どの主液体中に所定量添加されたアルコールにより、低
温域に於ける制振液体中の微量水分の凍結による影響を
排除する事ができる。
【0068】さらに−30℃での衝撃試験に於いても、
本実施例においては制振液体と衝接部との効果により慣
性球7の転動は10秒以下で収束する。そのためマイコ
ンメータにボールが当たる等の衝撃をうけてもマイコン
は地震発生の誤判断をしなくなる。
【0069】しかし本実施例では低温域でも制振液体9
の粘度が所定の値以上にならないように選定したため、
高温域に於ては逆に粘度が低くなり過ぎて制振液体9に
よる規制効果が充分に得られないことがある。そこで本
発明では制振液体9の規制効果の低下を補うためにハウ
ジング25内面に衝接部たる突起25Dが設けられてい
る。そのため温度の上昇により制振液体9の粘度が低下
してその規制効果が低下しても、慣性球7は突起25D
によりその転動を規制され常温での状態と同様に周回運
動への移行を規制することができる。
【0070】また衝撃などが与えられ慣性球7が周回運
動を始めた場合には慣性球7は突起25Dと衝接するこ
とによりその運動方向を変えられると同時に周回運動の
エネルギーを奪われるため、常温での状態と同様に慣性
球の周回運動ならびに転動を早期に収束させることがで
きる。そのため信号の出力はされても、その収束過程を
短くすることで前述の条件に合致する信号の繰り返しを
避けることができ、マイコンが不所望な制御動作を行な
うことがなくなる。このとき制振液体9は粘度が低くは
なっているものの慣性球7の転動に対して規制力を与え
ていることはもちろんであり、よって使用範囲内のあら
ゆる状況下に於て制振液体と衝接部とは共に慣性球の転
動の早期収束に寄与している。
【0071】たとえば本実施例に於ては60℃で制振液
体9としてヘキサンを使用するとヘキサンの動粘度は
0.4cs以下であり、正弦波による加振に対して慣性球
7は120ガルで転動開始している。この加速度応動ス
イッチ21を60℃に於て周波数を7〜8Hzとし200
〜300ガルの加速度で加振した場合には、制振液体9
の粘度が低下するためにハウジングの底面の形状と慣性
子の質量による共振周波数と加振周波数の相違等から振
動方向と交差する方向に発生する僅かな加速度成分を制
振液体だけでは充分に抑えられない。そのため衝接部を
持たない場合には慣性球7の振動方向と交差する方向へ
の転動が増幅されて慣性球7が周回運動を始め不所望の
信号を発することがあるが、衝接部たる突起25Dを設
けた場合には慣性球7の転動は突起25Dにより規制さ
れるため、制振液体の粘性が低下している温度領域でも
慣性球の周回運動を規制することができ、慣性球7の転
動を実質的に振動方向の転動のみにする事ができる。
【0072】またたとえば60℃での衝撃試験に於い
て、衝接部のないものでは制振液体9の粘度が下がるた
め慣性球7の転動の収束に15〜20秒程度かかったの
に対して、実施例では慣性球7の転動は制振液体と衝接
部との協働効果により10秒以下で収束している。その
ためマイコンはマイコンメータに人やボールが当たる等
の衝撃では地震発生の誤判断をしなくなる。
【0073】なお衝接部の形状は図3及び図4の様な突
起に限定されるものではなく、慣性球が回転運動に移行
する時にその運動方向を急激に変え且つ運動エネルギー
を減少させるものであれば、たとえば図5及びそのC−
C断面図である図6に示すようにハウジング内にハウジ
ングとは別体の前述の例の衝接部と同様の効果を有する
衝接部材を固定した構造としてもよい。この実施例にお
いて前述の例と同様の部材には同一の番号を付しその説
明を省略する。この実施例の加速度応動スイッチ31の
密閉容器内部にも粘度等を選定された制振液体9が注入
されており慣性球7の周回運動や不所望の転動を規制す
る。
【0074】本実施例の衝接部材32は例えば鉄やその
合金等の金属や樹脂等により成形されており、図7
(A),(B)に示す如くリング状の基部32Aに等間
隔で衝接部32Bが設けられている。この基部32Aを
有底円筒形のハウジング5の底面に固定することによ
り、衝接部32Bは所定の位置に配置され、実施例では
等間隔に8ヵ所設けられている。衝接部材32の基部3
2Aはリング状でありその内側の直径は慣性球7の転動
部がこの内側に到達しないようにされているため、衝接
部材32が慣性球7の基本的な転動の特性に影響を及ぼ
すことはない。
【0075】この衝接部材32の衝接部32Bによる効
果は前述の突起25Dの場合と同様であるが、この衝接
部材32はハウジングとは別個の部材で構成されている
ので、例えばハウジングより薄い材料や弾性変形しやす
い材料を使用することが可能であり慣性球7との衝接時
に剛体に近い突起25Dと比較して慣性球7の運動エネ
ルギーを多く吸収することができるように設計可能で、
制振液体9と協働して慣性球7の転動をより速やかに収
束させることができる。
【0076】また図8に示すハウジング45の横断面図
の如くハウジングの側壁45Aを多角形にしたり曲率を
変化させて非円形断面形状とすることにより、側壁45
Aを実質的に衝接部とし、慣性球7のハウジング45の
内面に沿っての周回運動を不安定にするとともに制振液
体の規制効果により収束させる構造としてもよい。この
場合もハウジング底面45B上の点線で示す慣性球転動
部45Cの立体的形状を図1に示したハウジングの底面
5Aと同じ様な勾配にしておけば慣性球7の基本的な転
動の特性に対して影響を与えないようにできる。また慣
性球7の転動方向による転動距離の差により生ずるオン
時間の差を最小限とするよう慣性球7の直径との相対的
寸法を考慮した多角形等の非円形形状に設計すれば、実
質的に震動の検出に支障はなくなる。
【0077】次に上述の加速度応動スイッチの製造方法
について説明する。通常これらの加速度応動スイッチに
おいては使用電圧が比較的低く電流が微弱であるため、
接点部材及び慣性球の表面やハウジング内面に酸化被膜
等が発生すると接触抵抗が大きく変化する。そこでスイ
ッチ本体のハウジングを密閉容器とし、内部空間には汚
損防止用ガスとしてヘリウムやアルゴン等の不活性ガス
や窒素や水素が置換封入され、酸化被膜等の発生を防止
している。特にヘリウムを含有させると、ヘリウムリー
クディテクタで気密検査を行なうことができ好ましい。
また各接触部の酸化等の不都合が無ければ容器内の気体
を置換しなくてもよい事は云うまでもない。
【0078】ハウジング内の制振液体に例えばシリコン
オイルとアルコールの混合液を使用する場合等には既に
述べた通りアルコールはシリコンオイルに溶解しないた
め、その混合比率を一定にするためにはハウジングに2
液を別々に注入する必要がある。しかしこの様な注入方
法は製造上手間がかかり特にハウジング内の気体を不活
性ガス等に置換するものに於いて後述の溶接チャンバー
内で制振液体を注入するものにおいては封入装置が非常
に複雑になり、さらにはアルコールの比率が低い制振液
体とする場合には注入量の僅かな誤差が比率にすると大
きな差となってしまい、安定した性能を得ることが難し
くなるという問題がある。
【0079】そこで本発明の加速度応動スイッチの製造
方法においては、制振液体の主液体とアルコールを均一
に混合した状態でこの制振液体をハウジング内に注入す
ることにより、注入作業を容易にすると共に制振液体中
のアルコールの比率を一定に揃える事ができる。この方
法としては例えば炭化水素の如くアルコールを溶解する
液体を制振液体の主液体とし予め所定の比率のアルコー
ルを溶解したのちにハウジング内に注入したり、シリコ
ンオイルの如くアルコールを溶解しない液体を主液体と
する場合には制振液体中のアルコール分布が均一になる
ように攪拌した状態でハウジング内に注入したり予めシ
リンダー内に加速度応動スイッチ一個分の量の主液体と
アルコールを所定の割合で混合しておきこれをハウジン
グ内に注入する等が考えられる。この様な方法で制振液
体をハウジング内に注入する事により2液を別々に注入
するものと比較して、製造装置、特に注入機構が簡略化
されると共に製造が非常に容易になる。
【0080】この製造方法について図1に示したスイッ
チについて図9を参照して述べる。図9は本発明の加速
度応動スイッチの封入に使用する封入装置の一例であ
り、溶接機は省略してあるが溶接電極とその周辺部を示
している。この封入装置に使用される溶接機はコンデン
サに充電した電荷をトランスの一次コイルに放電しその
トランスの二次側の大電流を利用するものが好ましい。
そして上下に加圧力を印加された時大電流を流すように
上側電極105と下側電極106を有している。前記電
極105と106は、各々の開口端がOリングの如きパ
ッキン101Cを介して気密に当接する下保持部材10
1と上保持部材102とによって包囲されたチャンバー
103を構成するように配設されている。
【0081】このチャンバー103内に、貫通孔2Aに
電気絶縁性の充填材によりリード端子を気密に貫通保持
された該リード端子の図示下端に電極6を固定した円形
の蓋板2と、慣性球を収納し制振液体を注入したハウジ
ング5が保持される。このチャンバー103を構成して
いる上保持部材102と下保持部材101とは大電流を
通す事の可能な電極であり例えばクローム銅などの材料
が用いられる。
【0082】チャンバー103に連通された通路101
Aには図示はしないが排気用電磁弁を介して真空ポンプ
が接続され、チャンバー103の内部の空気を通路10
1Aを介して排気できるようにされている。また同じく
チャンバー103に連通された通路101Bには図示し
ない充填用電磁弁を介してガス供給源からチャンバー1
03内に汚損防止用の不活性ガスが通路101Bを介し
てハウジング5内に充填可能にされている。
【0083】チャンバー103内に蓋板2とハウジング
5を保持した後、通路101A側の排気用電磁弁を開き
(充填用電磁弁は閉じてある)チャンバー103内の空
気を通路101Aから排気する。この排気によりチャン
バー103内が所定の真空度に達すると排気用電磁弁を
閉め、次に通路101B側のガス充填用電磁弁を開きガ
スボンベ等の供給源からチャンバー103内に汚損防止
用の不活性ガスを通路101Bを介してハウジング5内
に充填し、所定の充填量に達した時点で充填用電磁弁を
閉じる。この工程まではハウジング5の開口端と蓋板2
の周縁部は所要の隙間を保たれている。
【0084】この場合、例えば制振液体の主液体として
ヘキサンを使用したものを例に説明すると、ヘキサンの
20℃での蒸気圧が約120torrであり、減圧時の圧力
を150torr程度、約1/5気圧に抑えなければならな
い。つまり150torrに減圧した後に不活性ガスの充填
を行なうことにより空間の4/5を不活性ガスとするこ
とができる。また残る1/5は通常は排気前の気体、実
際には空気と制振液体の蒸気、例えば実施例では空気と
ヘキサン及びメチルアルコールの蒸気が残留している。
【0085】この残留量が長期間のスイッチの信頼性に
問題となるのであれば例えば容器の封止前に上述の置換
作業を繰り返す事により置換率は4/5の階乗になり例
えば置換作業を5回繰り返す事により制振液体の蒸気を
考慮しないとすると空気の残留量は1/3125以下に
なる。なお実際には減圧により制振液体の蒸気が発生す
るため、1回の排気による空気の排出量は多くなるので
例えば5回繰り返した後の空気の残留量は計算値よりも
低くなり、5回繰り返さなくても充分に少なくすること
もできる。また予め常温より低い温度に冷却し蒸気圧を
下げた制振液体を注入することにより、封入時にハウジ
ング内の圧力をより低くする事ができるのでハウジング
内の気体の置換作業が容易になる。また封入前にハウジ
ング内に不活性ガス等の汚損防止ガスを貫流させて充分
に置換した後に封入することにより蒸気圧の高い制振液
体を注入し封入する時にもハウジング内の気体の置換作
業が短時間で済むと共にハウジング内部の気体を容易に
置換することができる。また予めハウジング内の気体を
汚損防止ガスと置換した後に制振液体を注入するように
してもよい。
【0086】次にチャンバー103の上保持部材102
は気密を保ち且つ上下に動き得るダブルアクション構造
となっていて、そのうちの蓋板2を保持している部分は
大気圧が印加されてもそれに耐え得る反発力を有するバ
ネ104等により一定の位置に保たれているが、それ以
上の力が印加されると蓋板2の周縁部がハウジングの開
口端と所定の圧力で接触させられ、その後両端面間に例
えばコンデンサ放電形の溶接機の上電極105及び下電
極106によって挟みつけるようにしてこの両電極を介
して大電流を瞬間的に通じて、所謂リングプロジェクシ
ョン溶接と称する気密溶接を完了する。通常は気密検査
のために不活性ガスにヘリウムが混合されており、気密
溶接後ヘリウムリークディテクターによりその漏洩量が
10-9atm・cm3/sec以下となる程度の気密性を付与され
る。
【0087】この様に予め制振液体の主液体に所定の比
率のアルコールを溶解したのちにこの制振液体をハウジ
ング内に注入することにより、注入作業を容易にすると
共に制振液体中のアルコールの比率を一定に揃える事が
できる。
【0088】また上述の実施例においてはハウジング内
の気体を不活性ガス等の汚損防止ガスに置換するものに
ついて説明したが、例えば排気による減圧を行ない、そ
のまま封入し空間内に制振液体の蒸気を充満させる構造
とすれば汚損防止用の不活性ガスは不必要になり封入作
業の効率化がはかれる。
【0089】また例えば慣性球やハウジング内面、接点
部材等に貴金属のメッキ等の表面処理を行なうことによ
り、密閉容器内の気体の不活性ガスとの置換率を下げた
り、不活性ガスとの置換そのものを省略することがで
き、密閉容器の気密性も容器中の制振液体が洩れない程
度に緩和することができる。
【0090】また本実施例においては図2の如き感震器
に使用する加速度応動スイッチとして図1のものについ
てのみ説明したが、他の各実施例の加速度応動スイッチ
を使用しても同様に製造できることはいうまでもない。
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、制振液体で外乱による
慣性球の運動を抑えることにより、慣性球の運動を加速
度応動スイッチに与えられた振動に対して忠実な往復運
動とすることができ、従来のものの様な慣性球の楕円運
動や低温域での信号の不確実さを排除することができ
る。
【0092】また衝撃による慣性球の転動時には、制振
液体によりその運動をすばやく収束させることができ、
収束過程に於ける信号の出力時間を短くすることにより
マイコンによる地震検知条件に合致する信号の繰り返し
を避け、マイコンメーターの誤動作を防ぐことができ
る。
【0093】さらに制振液体としてペンタンやヘキサ
ン、トルエン等使用温度附近で液体となる炭化水素にア
ルコールを溶解した液体や、シリコンオイルとアルコー
ルの混合液を使用することによりフッ素系不活性液体を
使用する時の如く封入溶接時の熱により有毒物質が発生
することがなくなり、発生した物質の特別な処理や作業
者の安全の確保に対する特別な配慮が不要になる。また
制振液体の比重がフッ素系不活性液体に比べて小さいた
め、慣性球に与える浮力の影響を低減することができ
る。
【0094】また本発明では制振液体として炭化水素等
の主液体にアルコールを添加した液体や、シリコンオイ
ル等とアルコールとの混合液の如く制振液体中に含まれ
る微量の水分が少なくとも低温領域で前記接点部材とハ
ウジング間の導電性を阻害しないようにした液体所定
添加した事により低温域に於ける水分の影響をなくす
ことができる。
【0095】また制振液体の主液体に対して添加する
ルコールの混合比率を体積比で10パーセント以下とし
た事によりアルコールが接点間を短絡する事はなく接点
間の抵抗値は充分に高くなり、事実上接点間の制振液体
の導電性は問題ない。
【0096】さらには制振液体の量を少なくとも接点部
材の先端が接触する程度とする事により、加振後に接点
部材上に残った制振液体の滴の表面張力により接点部材
と慣性球が互いに引き寄せられることはなくなる。
【0097】さらに本発明によれば、ハウジング内に制
振液体を注入するとともにハウジング内面に衝接部を設
けることにより高温域での制振液体の粘度の低下による
規制効果の低下を補うことができる。また衝撃による慣
性球の転動時には、制振液体と衝接部とによりその周回
運動及び不所望の転動をよりすばやく収束させることが
でき、収束過程に於ける信号の出力時間を短くすること
によりマイコンによる地震検知条件に合致する信号の繰
り返しを避け、マイコンメーターの誤動作を防ぐことが
でき、且つ高温域での制振液体の粘度の低下による規制
効果の低下を衝接部により補うことができる。
【0098】また制振液体の主液体とアルコールを均一
に混合した状態でこの制振液体をハウジング内に注入す
ることにより、注入作業を容易にすると共に制振液体中
のアルコールの比率を一定に揃える事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加速度応動スイッチの一実施例。
【図2】本発明の加速度応動スイッチを使用した感震器
の一実施例。
【図3】本発明の加速度応動スイッチの他の実施例。
【図4】図3の加速度応動スイッチの横断面図。
【図5】本発明の加速度応動スイッチの他の実施例。
【図6】図5の加速度応動スイッチの横断面図。
【図7】図5及び図6の実施例に使用する衝接部材の一
例。
【図8】本発明の加速度応動スイッチのハウジングの一
例の横断面図。
【図9】本発明の加速度応動スイッチの製造に使用され
る封入装置の一例。
【図10】本発明及び従来の加速度応動スイッチの波形
図の一例。
【符号の説明】
1,21:加速度応動スイッチ 2:蓋板 3:リード端子 4:電気絶縁性充填材 5,25:ハウジング 6:接点部材 7:慣性球 8:保護板 9:制振液体 25D:突起(衝接部) 32:衝接部材 32B:衝接部 45A:側壁(衝接部)
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01H 35/14 G01V 1/18 H01H 11/00

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属板の実質的な中心に穿たれた孔に電
    気絶縁性の充填材によって導電性のリード端子を貫通し
    気密に固定した蓋板と、 有底円筒形の導電性のハウジングを有し、 該ハウジングの底面には実質的な中心部から外側に向か
    って同心円状に緩やかに上昇する傾斜面が形成され、 前記蓋板の周縁部にハウジングの開口端が気密に固着さ
    れて密閉容器を形成し、蓋板のリード端子の密閉容器内
    側の端部には導電端子ピンを中心としてしなやかな弾性
    を有した複数の羽根状部が実質的に同心放射状に配設さ
    れた導電材製の接点部材導電的に固着、 前記密閉容器の内部には導電性の固体の慣性球が正規姿
    勢において静止時には重力によりハウジングの実質的な
    中央部に位置するように収納され、 振動を受ける事により慣性球が転動し接点部材と接触し
    て変位させるとともに摺動し同時にハウジング内面と接
    点部材との間を慣性球を介して短絡するように構成さ
    れ、 前記密閉容器中には慣性球の不所望な転動を抑制するた
    にスイッチの使用温度範囲内では流動性を保つ制振液
    が封入されるとともに、この制振液体中に含まれる微
    量の水分が少なくとも低温領域で前記接点部材とハウジ
    ング間の導電性を阻害しないようにする液体が所定量
    されたことを特徴とする加速度応動スイッチ。
  2. 【請求項2】 金属板の実質的な中心に穿たれた孔に電
    気絶縁性の充填材によって導電性のリード端子を貫通し
    気密に固定した蓋板と、 有底円筒形の導電性のハウジングを有し、 該ハウジングの底面には実質的な中心部から外側に向か
    って同心円状に緩やかに上昇する傾斜面が形成され、 前記蓋板の周縁部にハウジングの開口端が気密に固着さ
    れて密閉容器を形成し、蓋板のリード端子の密閉容器内
    側の端部には導電端子ピンを中心としてしなやか な弾性
    を有した複数の羽根状部が実質的に同心放射状に配設さ
    れた導電材製の接点部材導電的に固着、 前記密閉容器の内部には導電性の固体の慣性球が正規姿
    勢において静止時には重力によりハウジングの実質的な
    中央部に位置するように収納され、 振動を受ける事により慣性球が転動し接点部材と接触し
    て変位させるとともに摺動し同時にハウジング内面と接
    点部材との間を慣性球を介して短絡するように構成さ
    れ、 前記密閉容器中には慣性球の不所望な転動を抑制するた
    めの制振液体として炭化水素が封入されると共にこの制
    振液体中の水分の凍結による電流の導通不良防止用にア
    ルコールが所定量添加されたことを特徴とする加速度応
    動スイッチ。
  3. 【請求項3】 制振液体に対するアルコールの添加量は
    静止時にリード端子とハウジングの間の絶縁抵抗値が規
    定の値以上になる量に選定されていることを特徴とする
    請求項2の加速度応動スイッチ。
  4. 【請求項4】 金属板の実質的な中心に穿たれた孔に電
    気絶縁性の充填材によって導電性のリード端子を貫通し
    気密に固定した蓋板と、 有底円筒形の導電性のハウジングを有し、 該ハウジングの底面には実質的な中心部から外側に向か
    って同心円状に緩やかに上昇する傾斜面が形成され、 前記蓋板の周縁部にハウジングの開口端が気密に固着さ
    れて密閉容器を形成し、蓋板のリード端子の密閉容器内
    側の端部には導電端子ピンを中心としてしなやかな弾性
    を有した複数の羽根状部が実質的に同心放射状に配設さ
    れた導電材製の接点部材導電的に固着、 前記密閉容器の内部には導電性の固体の慣性球が正規姿
    勢において静止時には重力によりハウジングの実質的な
    中央部に位置するように収納され、 振動を受ける事により慣性球が転動し接点部材と接触し
    て変位させるとともに摺動し同時にハウジング内面と接
    点部材との間を慣性球を介して短絡するように構成さ
    れ、 前記密閉容器中には慣性球の不所望な転動を抑制するた
    めの制振液体としてアルコールをほとんど溶解しない
    気絶縁性の液体が封入されると共にこの制振液体 中の水
    分の凍結防止用にアルコールが所定量添加され、 制振液体に対するアルコールの添加量は静止時にリード
    端子とハウジングの間の絶縁抵抗値が規定の値以上にな
    るような量に選定されていることを特徴とする加速度応
    動スイッチ。
  5. 【請求項5】 制振液体に対するアルコールの添加量は
    制振液体に対して体積比で10パーセント以下であると
    同時に静止時にリード端子とハウジングの間の絶縁抵抗
    値が100MΩ以上になるような量に選定されているこ
    とを特徴とする請求項4に記載の加速度応動スイッチ。
  6. 【請求項6】 制振液体の量は少なくとも液面が接点部
    材に接触する量とされていることを特徴とする請求項1
    乃至請求項5のいずれか1項に記載の加速度応動スイッ
    チ。
  7. 【請求項7】 ハウジング内面には慣性球が前記静止時
    には無関係で所定の加速度を受けた時に接触する壁面部
    分に衝接部が設けられ、 加振時等には前記慣性球が断続的に該衝接部に衝接して
    進路を変更させられ慣性球と接点部材との接触不連続
    乱すことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれ
    か1項に記載の加速度応動スイッチ。
  8. 【請求項8】 金属板に電気絶縁性の充填材によって導
    電性のリード端子を気密に貫通固定して蓋板とし、 該リード端子の端部に複数のしなやかな弾性を有した羽
    根状部を持つ導電材製の接点部材を導電的に固着し、 有底円筒形の導電性のハウジングに導電性の慣性球を収
    納し、 予め制振液体に対してアルコールを含む複数の液体を均
    一に混合しそのアルコールの添加量は制振液体に対して
    体積比で10パーセント以下とされた所定量の制振液体
    を注入した後に、 ハウジングの開口端に前記接点部材がハウジング内部に
    収納されるように前記蓋板の周囲を気密に固着して気密
    容器を構成することを特徴とする加速度応動スイッチの
    製造方法。
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