JP2889594B2 - 半導体光素子および光通信システム - Google Patents

半導体光素子および光通信システム

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、超高速光変調に必要な、光ファイバ通信あ
るいは光によるコンピュータ内配線等に用いる半導体レ
ーザ等の半導体光素子および光通信システムに関するも
のである。
〔従来の技術〕
従来、量子井戸構造の積層方向に電界を加えて量子状
態を変化させ、量子井戸からの出射光強度を変調する方
法が行われ、「応用物理」第55巻、210頁(1986年)に
論じられている。上記従来技術の変調原理を第2図を用
いて説明する。第2図(a)は無電界時の量子準位(破
線)と電子および正孔の波動関数とを示したものであ
る。このように、電子、正孔とも量子井戸層に局在化す
るが、その波動関数は井戸の中心に対して対称性を有し
ている。一方、量子井戸の積層方向に電界を加えると、
第2図(b)に示すようにバンドには傾きが生じ、その
結果、波動関係の対称性は失われる。すなわち、電子の
波動関数は図に示すようにエネルギー的に低い左側に局
在化し、正孔の波動関数は右側に局在化する。つまり、
電子と正孔との波動関数は井戸層内で空間的に分離す
る。この結果、電子と正孔との波動関数の空間的な重な
りが減少するが、これは光学的遷移の確率、つまり、振
動子強度が減少する。すなわち、電界の有無により出射
光強度が変化する。このときの変調速度、つまり、電界
印加の有無による出射光強度変化の速度は極めて速く、
ピコ秒オーダとなり、従来の半導体レーザの直接変調方
式に較べて1〜2桁の速度向上が可能になる。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら上記従来技術には、つぎに示すような問
題点があった。通常の量子井戸構造では、レーザ発振に
必要なキャリア密度が約2×1018cm-3であり、この大き
な密度の電子と正孔との存在は、量子井戸に印加した電
界を打消してしまい(スクリーニングを生じ)、量子井
戸に加わる電界が減少する。すなわち、レーザ発振を生
じるキャリア密度レベルでは、電界印加による量子井戸
の出射光強度変調は不可能であった。したがって、上記
従来技術では、自然放出光状態、つまりレーザ発振前に
おいてしか使えなかった。
本発明の目的は、レーザ発振状態において、電界印加
により量子井戸からの出射光強度を変調する半導体光素
子および光通信システムを得ることである。
なお、本発明に関連する技術は特開昭63−181486号公
報、米国特許第4,700,353号公報、およびジャパニーズ
・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス第26巻
第2号(1987年)L117頁乃至L119頁(Japanese Journal
of Applied Physics,Vol.26,No.2,1987,L117〜L119)
にも開示されている。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するために、本発明者らは、印加した
電界のスクリーニングが生じないような低いキャリア密
度で、レーザ発振を生じる構造を模索し、つぎのような
歪超格子型量子井戸が極めて有効であることを見出し
た。
一般にキャリア密度が1018cm-3以上であると量子井戸
に印加した電界は打消される。したがって、1017cm-3
のキャリア密度で発振できるような量子井戸構造が必要
な手段となり、これに電界印加用電極が形成できれば、
目的は達成することができる。
このように構成した本発明の半導体素子に、光を帰還
させるための共振器としてへき開面からなる反射面を備
えても、あるいは活性層上下の少なくとも一方側に隣接
する光ガイド層上に回折格子を形成してもよい。また量
子井戸層は、InGaAs、InGaAsP、またはInGaAlAsで形成
するとよい。
〔作用〕 歪超格子型量子井戸、すなわち、量子井戸(第1の半
導体層)の格子定数が隣接する障壁層(第2の半導体
層)の格子定数と異なる量子井戸を用いると、上記の目
的は達成される。特に格子定数が大きい量子井戸を用い
ると、また、格子定数のずれが+0.5〜5%の量子井戸
を用いると、しきいキャリア密度を低減することが可能
である。これは、歪系では正孔の有効質量が等価的に小
さくなるので、光学利得が大きくなり、その結果、約3
〜7×1017cm-3の注入キャリア密度で発振させることが
可能になるためである。この状態を示したのが第3図で
ある。上記低キャリア密度においてレーザ発振した状態
が実現できるので、印加した電界は打消されることがな
く、その結果、電子と正孔との波動関係の空間的重なり
を制御でき、第2図に示すように電界による超高速の光
変調が可能になった。上記電界を印加するための電極
は、上記歪超格子型量子井戸層に対して電界を加えるこ
とができるように形成した、例えば上記歪超格子型量子
井戸層を上下に挾むように構成された、少なくとも1対
の電極である。
〔実施例〕
つぎに本発明の実施例を図面とともに説明する。第1
図は本発明による半導体光素子の一実施例を示す断面
図、第4図は本発明による半導体光素子の他の実施例を
示す断面図、第5図は本発明による光ファイバ通信の実
施例を示すシステム図である。第1図において、第2半
導体層である半絶縁性InP基板1上に、InPよりも格子定
数が1.5%大きく、膜厚が60Åの第1半導体層であるInG
aAs歪量子井戸層2、更に第2半導体層として半絶縁性I
nPクラッド層3を成長させたのち、上記成長層を突抜け
るまでエッチングした幅1〜5μmの凸状をしたストラ
イプを作成する。その後、キャリア注入手段として、p
−InP埋込み層4、n−InP埋込み層5を形成し、p側電
流注入電極6、n側電流注入電極7および表面と底面と
に電界印加手段として電界印加電極8と9とを形成し、
最後に共振器長100〜500μmにへき開を行った。
試作した半導体光素子は、5〜10mAでレーザ発振し
た。5mW光出力時で電界印加電極8をアースに接続し、
電極9に2Vを印加すると、レーザ発振は止まり、出力光
は0になった。このように電極9に対する電界の有無に
よって、レーザ光の出力強度を変調することができた。
その時のスイッチング速度は約5psで、この値は素子のC
R時定数により限定されている。
つぎに本発明による半導体光素子の他の実施例を第4
図に示すが、本実施例は、エミッタ、ベース、コレクタ
を有する二次元電子ガスヘテロバイポーラトランジスタ
と似た構造である。p−GaAs基板10上にp−GaAlAs層1
1、格子定数がGaAlAsより2.5%大きい膜厚100ÅのInGaA
lAs歪量子井戸24、n−GaAlAs12、p−GaAs13をそれぞ
れ成長させたのち、エミッタ電極14を形成する。つぎに
上記以外の領域のエミッタ電極14とp−GaAs13を除去
し、ベース電極15および下面にコレクタ電極16を形成し
た。この素子では、歪量子井戸への電界印加コレクタ電
極16への電圧の有無によって行う。また、歪量子井戸へ
のキャリア注入は、エミッタ−ベース両電極により行わ
れ、上記実施例と同様なレーザ光強度の変調が得られ
た。
第5図は、本発明の半導体光素子18を光通信に応用し
た実施例を示す図である。上記半導体光素子18には、キ
ャリア注入用電流24と電界印加信号源17を接続してい
る。上記光素子18で変調されたレーザ光19は、光ファイ
バ20を通りその出射光21は光検出器22によって電気信号
に変換され、復元器23で判別された。本実施例では、伝
送速度を100Gbit/s、ファイバ長40kmで行った。
〔発明の効果〕
上記のように本発明による半導体光素子および光通信
システムは、半導体基板上に、少なくとも光を発生する
活性層と光を閉込めるクラッド層とを有する半導体光素
子において、上記活性層は、膜厚が電子のドウブロイ波
長以下の量子井戸層を少なくとも1層有し、上記量子井
戸層の格子定数が隣接した障壁層の格子定数と異なる構
造、すなわち、歪超格子型量子井戸構造であり、かつ、
上記歪超格子型量子井戸層に対してキャリアが注入でき
る少なくとも1対の電流注入用電極と、上記歪超格子型
量子井戸層の積層方向に対して電界を印加する、電界印
加用電極とを有することにより、歪量子井戸に電界を加
えて量子状態を変化させ、その出射光強度を変調するこ
とができる。レーザ発振状態で電界を印加し、量子井戸
からの光変調を可能にしたことは前例がなく、超高速の
光ファイバ通信やコンピュータ内の光配線に対して効果
が大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による半導体光素子の一実施例を示す断
面図、第2図は本発明の動作原理を示す図で、(a)は
無電界時を示し、(b)は有電界時を示す図、第3図は
歪量としきいキャリア密度との関係を示す図、第4図は
本発明の他の実施例を示す断面図、第5図は上記実施例
の半導体光素子を用いた光ファイバ通信の実施例を示す
システム図である。 2、24……歪量子井戸、3……クラッド層 6、7……電流注入用電極(14……エミッタ電極、15…
…ベース電極) 8、9……電界印加用電極(16……コレクタ電極)
フロントページの続き (72)発明者 佐々木 真二 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 茅根 直樹 東京都国分寺市東恋ケ窪1丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−197391(JP,A) 特開 昭63−181486(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01S 3/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】光を発生する第1半導体層と該第1半導体
    層を挟むように形成され且つ該第1半導体層にキャリア
    を閉じ込める第2半導体層を積層してなる積層領域と、
    該第1半導体層にキャリアを注入するキャリア注入手段
    と、該積層領域に積層方向の電界を印加する電界印加手
    段を含み、上記第1半導体層と上記第2半導体層は異な
    る格子定数を有することを特徴とする半導体光素子。
  2. 【請求項2】上記第1半導体層の格子定数は、上記第2
    半導体層の格子定数より0.5乃至5%大きいことを特徴
    とする特許請求の範囲第1項に記載の半導体光素子。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項又は第2項に記載の
    半導体光素子を、光源として用いたことを特徴する光通
    信システム。
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