JP2885689B2 - ヒト内在性レトロウイルス遺伝子由来のポリペプチドまたは該ポリペプチドに対する抗体からなる癌検出剤 - Google Patents

ヒト内在性レトロウイルス遺伝子由来のポリペプチドまたは該ポリペプチドに対する抗体からなる癌検出剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、癌等の疾患に伴っ
て発現されるヒト内在性レトロウイルス抗原であるポリ
ペプチド、該ポリペプチドに対する特異抗体からなる、
癌検出剤に関する。本発明の癌検出剤を使用して、単離
されたヒトの血清などの体液もしくは組織中から癌を早
期に検出できる。
【0002】
【従来の技術】現在、癌は本邦において主要死亡原因の
一つである疾患である。発癌のメカニズムは完全には解
明されておらず、現時点での癌の予防を行うことは難し
い。
【0003】一般に細胞が癌化すると正常細胞とは異な
る遺伝子発現が起こることが知られ、これら異常遺伝子
発現による生成物が腫瘍マーカーとして利用されてき
た。現在の癌の診断法のほとんどは、癌細胞特異的に生
産されるいわゆる腫瘍マーカーを組織学的に、あるいは
生化学的に検出することによって行われている。
【0004】たとえば、乳癌において、下記文献に示さ
れた現在汎用されている各腫瘍マーカーのステージ別の
陽性率は次の通りである。
【0005】1)Myers,R.E.ら Canc
er (1978)42,1520−1526 CEA(癌胎児性抗原)における乳癌患者陽性率は、 ステージI、(14.8%/81例) ステージII、(23.7%/114例) ステージIII、(40.5%/42例) ステージIV、(73.1%/260例)であった。
【0006】2)杉山和義 ら 日本臨床外科医学会雑
誌 (1990)51(7),1380−1388. 表3(引用) 各癌マーカーの陽性率の比較 BCA225 CA15−3 CEA 疾患名 例数 陽性数(%) 陽性数(%) 陽性数(%) 原発性乳癌 58 5(8.6) 2(3.4) 7(12.1) ステージI 19 1(5.3) 0(0.0) 2(10.5) ステージII 30 2(6.7) 1(3.3) 3(10.0) ステージ III+IV 9 2(22.2) 1(11.1) 2(22.2) 乳癌再発 20 14(70) 11(55) 11(55) 乳癌計 78 9(24.4) 13(16.7) 18(23.1) 上記2つの文献からも明らかなように、従来は、ステー
ジIIIまたはIV段階あるいは再発段階の乳癌細胞など癌
細胞がある程度増殖した段階で初めてはっきりと検出さ
れるにすぎず、早期発見は非常に困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】近年外科手術の手技が
向上し、早期に癌を発見できた場合の治癒率は飛躍的に
上昇してきている。従って、癌を初期の段階で確実に診
断できる方法があれば癌患者の治療のために非常に有用
である。
【0008】しかし、従来の腫瘍マーカーの多くは癌細
胞がある程度増殖した段階で初めて検出されるものがほ
とんどで、早期発見は事実上困難を極めている。従っ
て、新たな癌発生の検出方法の開発が待たれている現状
である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
の結果、これまでヒト体内で癌の発生と発現の関係が明
確に証明されていなかったヒト内在性レトロウイルス由
来のポリペプチドまたはそれに対する特異抗体を検出す
ることにより、早期に癌の発生を検知する方法を発明し
た。すなわち、本発明は、 1)ヒト細胞内で発現する内在性レトロウイルス遺伝子
にコードされるタンパク質もしくはその部分配列からな
る、抗原決定基を少なくとも一個含有していることを特
徴とするポリペプチドからなる癌検出剤;および 2)上記ポリペプチドに対する抗体からなる癌検出剤。
【0010】に関するものである。
【0011】本発明の好適具体例は、上記ポリペプチド
が、ヒト内在性レトロウイルス遺伝子HERV−Eファ
ミリーに属するpol遺伝子領域にコードされたポリペ
プチドからなる癌検出剤および該ポリペプチドに対する
抗体からなる癌検出剤である。
【0012】外来性(感染性)レトロウイルスである H
IV-I や HTLV-I などは RNAウイルスであり、逆転写酵
素によってRNA から DNA を逆転写することができる。
ウイルス遺伝子は感染後宿主のゲノムDNA上に組み込ま
れたプロウイルスの形で存在することが知られている。
プロウイルスは gag (ウイルス構造蛋白)、pol (逆
転写酵素)、env (外被蛋白)遺伝子の両端に LTR (l
ong terminal repeat)と呼ばれる繰り返し配列が存在
する特徴的な構造を示す。こうした外来性レトロウイル
ス類似の遺伝子構造は、正常なヒトのゲノム DNA 上に
多数存在しており、ヒト DNA の0.1〜0.6%を占めると
されている。
【0013】こうしたプロウイルスは内在性レトロウイ
ルスと総称されており、外来性レトロウイルスとは異な
り生殖細胞の染色体中にも組み込まれているため、メン
デルの法則に従って安定的に子孫に継代される。しか
し、多くの場合、外来性レトロウイルス類似の遺伝子構
造は保たれているものの、遺伝子配列中に多数の終止コ
ドンが存在するため、通常はウイルス粒子を形成するこ
とはないと考えられている。
【0014】内在性レトロウイルスに関して、その遺伝
子発現および関連蛋白の発現、さらにウイルス粒子の形
成についての研究は未だ十分に進んでいるとは言えず、
自己免疫機序の発現や発癌との関連性が推測されてはい
るが、確かな実証はなされていない。実際、胎盤やある
種癌細胞等で内在性レトロウイルス遺伝子の発現やレト
ロウイルス様粒子の形成が認められているが、遺伝子配
列上は何れも不完全と考えられ、特定の内在性レトロウ
イルス遺伝子の発現による関連蛋白の発現を示唆させる
ものは、類似の遺伝子を持つヒト以外の動物のレトロウ
イルス由来の抗原に対する抗体を用いた交差反応性によ
る間接的な成績ばかりであり、直接的な成績は得られて
いない。
【0015】ヒト本来の遺伝子産物に対して免疫機構が
働き抗体が産生されることは、自己免疫疾患等を除き通
常は生じない現象である。しかしながら、レトロウイル
ス遺伝子産物のような本来非自己の遺伝子産物には、該
遺伝子が癌化に伴って発現されるならば、ヒトの免疫機
構が働き特異抗体を産生する可能性がある。このような
癌化により生成する内在性レトロウイルス抗原に対する
抗体は、癌特異抗原を直接検出するよりもより早期に検
出できる可能性があり、従来の腫瘍マーカーとは異なる
新たな癌等の検出が可能となる。従って、癌の発生に伴
い発現される内在性レトロウイルス遺伝子産物の同定
と、上記機構による抗体の存在を解明することは、新た
な癌等の発生の検出方法を提供できると共に、新たな癌
治療法やワクチン開発への可能性を与えるものである。
【0016】本発明以前には、内在性レトロウイルス遺
伝子は不完全であると考えられ、関連蛋白の生成を示す
直接証拠は無かった。これまでに発見されている内在性
レトロウイルス遺伝子は、ヒト染色体当り2〜100コ
ピー存在する各ファミリー中の数種であり、各ファミリ
ー内での遺伝子配列およびアミノ酸配列の相同性は極め
て高い。本発明者らは、上記ファミリーの中で蛋白の発
現が可能な変異種が存在する可能性があることに基づ
き、不完全内在性レトロウイルス遺伝子からポリペプチ
ドをコードする遺伝子を選択し、遺伝情報に相当するポ
リペプチドを作製した。さらに、作製したポリペプチド
に対する抗体を調製し、癌化細胞中での作製ポリペプチ
ドと相同な内在性レトロウイルス遺伝子由来の抗原の存
在を示すとともに、その様な癌を有する患者の血中に、
そのポリペプチドと反応する抗体の存在を確認すること
によって、本発明を完成した。
【0017】本発明において、ヒト細胞内で発現する内
在性レトロウイルス遺伝子とは、癌細胞などにおいて転
写されるものであればよい。この様な遺伝子は、既にク
ローニングされた内在性レトロウイルス遺伝子配列に相
補する特異DNAプローブによるハイブリダイゼーショ
ン法や、特異ポリメラーゼチェインリアクション(PC
R)プライマーによるRT−PCR法など、一般に用い
られる手法により、遺伝子発現の有無を確認して選択す
ることができる。
【0018】本発明のポリペプチドとは、上記のように
して選択されたヒト細胞内で発現する内在性レトロウイ
ルス遺伝子にコードされるタンパク質に由来するポリペ
プチドであり、このタンパク質全体でも、これから相補
的な抗体と特異的に結合し得る抗原決定基が少なくとも
一個含むような領域を選択して用いてもよい。
【0019】本発明のポリペプチドは、上記遺伝子内の
遺伝情報を基に、遺伝子工学的手法または化学的にペプ
チドを合成する方法等、いずれの方法により生産された
ものも用いることができる。具体的には、種々の周知の
方法によりクローニングした内在性レトロウイルス遺伝
子、または化学合成により作製された該遺伝子を、適当
な発現ベクターに組み込み、大腸菌や酵母等の微生物、
または高等動植物細胞を宿主として目的ポリペプチドを
生成、単離することができる。発現に当たっては、目的
ポリペプチド単独でも、他の適当な蛋白との融合蛋白質
として発現させた後、目的ポリペプチドを単離精製する
ことも可能である。
【0020】ヒト細胞内で発現する内在性レトロウイル
ス遺伝子にコードされるタンパク質もしくはその部分配
列からなる、抗原決定基を少なくとも一個含有している
ことを特徴とするポリペプチドを用いた癌検出剤は、単
離された血清等の検体中における、ヒト内在性レトロウ
イルス由来のポリペプチドに対する特異抗体を検出する
ものであり、以下のようにして行うことができる。検体
としては、ヒト由来の種々の体液を挙げることができ、
例えば、血清及び尿等を挙げることができる。
【0021】まず、人為的に調製したポリペプチドを例
えばマイクロタイタープレートのウエルの内壁のような
固相に結合し、非特異吸着部位をウシ血清アルブミン
(BSA)等でブロッキングした後、検体を反応させ
る。洗浄後、固相に結合しているヒト抗体に対する第2
抗体を反応させる。洗浄後、固相に結合した第2抗体の
量を測定することにより、検体中ポリペプチドに対して
結合したヒト抗体を検出することができる。
【0022】第2抗体の量の測定は、従来より免疫分析
分野において周知の種々の方法により行うことができ
る。例えば、第2抗体を酵素で標識しておき、発色性の
基質あるいは化学発光性の基質を用いて行うことができ
る。あるいは第2抗体にビオチンを結合しておき、この
ビオチンを標識化アビジンと反応させて該標識を測定す
ることによっても行うことができる。更には第2抗体に
特異的に反応する標識化抗体をさらに反応させ、該標識
を測定することによっても行うことができる。第2抗体
の標識には、酵素の代わりに蛍光色素や放射性物質を用
いてもよい。
【0023】また、本発明のヒト内在性レトロウイルス
由来のポリペプチドをラテックスや動物の赤血球のよう
な粒子に結合させ、これと検体を反応させて、粒子の凝
集を吸光度測定等により測定することにより、検体中の
ヒト内在性レトロウイルス由来のポリペプチドに対する
特異抗体を検出または測定することができる。
【0024】なお、ここで用いることのできるポリペプ
チドにはその配列に相補的な抗体と特異的に結合し得る
抗原決定基が少なくとも一個含むものであればよいし、
そのようなポリペプチドを数種類組み合わせて用いるこ
とも可能である。
【0025】更に本発明のポリペプチドに親和性を有す
ることを特徴とするモノクローナル抗体又はポリクロー
ナル抗体を用いた免疫化学的方法あるいは組織化学的方
法による癌細胞等におけるヒト内在性レトロウイルス由
来のポリペプチドの検出は以下のようにして行えばよ
い。
【0026】まず、本発明のポリペプチドに親和性を有
することを特徴とするモノクローナル抗体は、常法に基
づき、上記のような方法により調製したヒト内在性レト
ロウイルス由来のポリペプチドを動物に免疫し、その抗
体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させ、得られるハ
イブリドーマから抗ヒト内在性レトロウイルス由来ポリ
ペプチド抗体を産生するハイブリドーマを選択し、これ
を培養して生産されたモノクローナル抗体を回収するこ
とにより得ることができる。また、同ポリクローナル抗
体は、常法に基づき、上記のような方法により調製した
ヒト内在性レトロウイルス由来のポリペプチドを動物に
免疫し、その血清から回収することにより得ることがで
きる。
【0027】ヒト細胞内で発現する内在性レトロウイル
ス遺伝子にコードされるタンパク質もしくはその部分配
列からなる、抗原決定基を少なくとも一個含有している
ことを特徴とするポリペプチドに対する抗体を用いた癌
検出剤は、一つは単離された血清等の検体中における、
ヒト内在性レトロウイルス由来のポリペプチドを含む免
疫複合体を検出するものであり、以下のようにして行う
ことができる。検体としては、ヒト由来の種々の体液を
挙げることができ、例えば、血清及び尿等を挙げること
ができる。
【0028】まず、本発明のポリペプチドに親和性を有
することを特徴とするモノクローナル抗体又はポリクロ
ーナル抗体を例えばマイクロタイタープレートのウエル
の内壁のような固相に結合し、非特異吸着部位をウシ血
清アルブミン(BSA)等でブロッキングした後、検体
を反応させる。洗浄後、固相に結合している免疫複合体
のヒト抗体に対する第2抗体を反応させる。洗浄後、固
相に結合した第2抗体の量を測定することにより、検体
中のポリペプチドを含む免疫複合体を検出することがで
きる。
【0029】第2抗体の量の測定は、従来より免疫分析
分野において周知の種々の方法により行うことができ
る。例えば、第2抗体を酵素で標識しておき、発色性の
基質あるいは化学発光性の基質を用いて行うことができ
る。あるいは第2抗体にビオチンを結合しておき、この
ビオチンを標識化アビジンと反応させて該標識を測定す
ることによっても行うことができる。更には第2抗体に
特異的に反応する標識化抗体をさらに反応させ、該標識
を測定することによっても行うことができる。第2抗体
の標識には、酵素の代わりに蛍光色素や放射性物質を用
いてもよい。
【0030】また、もう一つの癌検出剤としては、ヒト
内在性レトロウイルス由来のポリペプチドを発現してい
る特定の癌細胞等を、上記の方法により得られるヒト内
在性レトロウイルス由来のポリペプチドに親和性を有す
ることを特徴とするモノクローナル抗体又はポリクロー
ナル抗体によって免疫組織染色することで特定の癌等を
組織レベルまたは細胞レベルで検出するものである。
【0031】なお、上記において用いることができる抗
体は、本モノクローナル抗体そのものでもよいが、酵素
により切断したF(ab')2フラグメントやFabフラ
グメント、あるいは遺伝子操作によりCH鎖CL鎖領域
をヒト型に変換した抗体や一本鎖FV抗体のような抗体
遺伝子の直接クローニングによる組換え抗体などを用い
ても構わない。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明の癌検出剤は、マルチコピ
ーC型内在性レトロウイルスHERV−Eファミリーの
逆転写酵素(pol)をコードする領域より作製した、
分子量約15000のポリペプチドである組換えHER
V−E−POLからなり、単離された血清等ヒト体液中
における特異抗体の検出を行うことによって癌の早期検
出を行うものである。本発明のもう一方の癌検出剤は上
記ポリペプチドに対する抗体からなり、該抗体を用いた
免疫組織染色により癌、特に乳癌の早期検出を行うこと
ができるものである。
【0033】本発明の癌検出剤の成分であるポリペプチ
ドは、癌等の疾患に対するワクチンとしても利用し得る
有用な物質であり、かつ、そのポリペプチドに親和性を
有することを特徴とする抗体、例えばモノクローナル抗
体、は癌等の疾患治療薬としても利用し得る有用な物質
である。
【0034】
【実施例】以下、本発明を、マルチコピーC型内在性レ
トロウイルスHERV−Eファミリーの逆転写酵素(p
ol)をコードする領域より作製した、分子量約150
00のポリペプチドを例としてさらに詳細に説明する。
尚、本発明は、内在性レトロウイルス遺伝子を特異的に
発現する他の種々の疾患に対しても有効な手段となるこ
とは明らかであり、下記実施例に限定されるものではな
い。
【0035】実施例1 1.ヒト乳癌細胞MCF−7で発現されるヒト内在性レ
トロウイルス遺伝子のクローニング MCF−7細胞は10%牛胎児血清(FCS)添加RPM
I1640培地にて10%飽和から培養を開始し、5〜
6日間培養後培地を30μg/mlの5−ブロモデオキシ
ウリジンを含む10%牛胎児血清(FCS)添加RPMI
1640培地にて1日培養した。培地を10%牛胎児血
清(FCS)添加RPMI1640培地に交換後、さらに
5日間培養し、5−ブロモデオキシウリジン活性化MC
F−7細胞を調製した。5−ブロモデオキシウリジン活
性化MCF−7細胞からポリ(A)+RNAを抽出し、オ
リゴd(T)18プライマー(ファルマシア社製)及びA
MV逆転写酵素(宝酒造社製)によりcDNAを合成し
た。マルチコピーC型内在性レトロウイルス HERV
−Eファミリーのクローン4−1(Repaske,
R.ら、J.of Virol.(1985)54
(3),764−772)の遺伝子配列を基にその遺伝
子の配列番号1750〜3607までのgag−pol
領域を増幅するようなPCRプライマーを合成した。セ
ンス鎖用PCRプライマーとしてGP30F(5’−C
AGGGCCCGGAACTGGAAAAACAAT−
3’制限酵素ApaI部位を付加)、アンチセンス鎖用
PCRプライマーとしてPOL−XhoI−R(5’−
CGCTCGAGGTGGGGGAGTTCTTGAA
−3’制限酵素XhoI部位を付加)。cDNAを鋳型
として上記のPCRプライマーを用いてGeneAmp
PCR Reagent Kit(パーキンエルマー
/シータス社製)により、増幅を行った。結果、約18
00bp.の産物(GP1800)の増幅が得られ(図
1および2)、これをTAクローニングベクターpCR
II(インビトロジェン社製)に組み込みダイデオキシヌ
クレオチド チェイン ターミネーション法にて塩基配
列の確認を行った。結果、クローン4−1と塩基配列の
相同性で約90%の一致が見られ、HERV−Eファミ
リーの1クローンと確認された(図3及び図4)。従っ
て、MCF−7細胞におけるHERV−E遺伝子の発現
が確認された。
【0036】以下、図面にしたがって説明する。
【0037】図1は、MCF−7細胞で発現されたHE
RV遺伝子のPCRクローニングの結果を示し、鋳型と
してMCF−7のmRNAより調製したcDNAを用
い、GP30F及びPOL−XhoI−RをPCRプラ
イマーとして95℃で30秒、40℃で2分、60℃で
3分のPCRサイクルを35回行った時の増幅産物の2
%アガロースゲル電気泳動パターンである。レーン1は
サイズマーカーλ/HindIII、レーン2はPCR産
物で、矢印の位置に約1800bpのフラグメント(G
P1800)の増幅が見られた。
【0038】図2は、GP1800フラグメントを組み
込んだクローニングベクターpCRII(pCRIIーGP
1800)の制限酵素分析の結果を示し、レーン1はサ
イズマーカーλ/HindIII+φχ174/HaeII
I、レーン2はpCRIIーGP1800/EcoRI消
化、レーン3はpCRIIーGP1800/ApaI消
化、レーン4はpCRIIーGP1800/XhoI消化
の2%アガロースゲル電気泳動パターンである。矢印の
位置に約1800bpのフラグメントの挿入が見られ
た。また、ApaI消化の結果からフラグメント内部に
ApaI部位が認められた。
【0039】図3は、クローニングされたMCF−7H
ERV遺伝子の塩基配列1、すなわち、ダイデオキシヌ
クレオチド チェイン ターミネーション法にて決定し
たGP1800フラグメントの5’側の部分gag遺伝
子配列を示す。MCF−7HERVとして今回決定した
遺伝子配列を、また、比較としてその下にHERV−E
(4−1)の配列(1943−2250)を並記し、そ
れとの相同性を比較した。相違部分を*印を記した。両
者には89.3%のホモロジーが見られた。また、部分
gag遺伝子には四角枠で示した終始コドンが存在し、
遺伝子としては不活性であった。
【0040】図4は、クローニングされたMCF−7H
ERV遺伝子の塩基配列2、すなわちダイデオキシヌク
レオチド チェイン ターミネーション法にて決定した
GP1800フラグメントの3’側の部分pol遺伝子
配列を示す。MCF−7 HERVとして今回決定した
遺伝子配列を、また、比較としてその下にHERV−E
(4−1)の配列(3261−3607)を並記し、そ
れとの相同性を比較した。相違部分を*印を記した。両
者には91.6%のホモロジーが見られた。
【0041】2.組換えHERV−E−POLの調製 得られたHERV−E遺伝子から図5に示す部分的なp
ol領域を発現、翻訳させるために、まずHERV−E
−POL発現用のカセット遺伝子調製のためHERV−
E−POL遺伝子の5’側センス鎖用PCRプライマー
としてPOL−Met−F(5’−CATGGGAAT
TATTGTTCCTTGTCAG−3’N端メチオニ
ンコドン付加)を合成し、アンチセンス鎖用PCRプラ
イマーとしてPOL−XhoI−Rを用いてPCRによ
ってHERV−E−POL発現用のカセット遺伝子を調
製した。カセット遺伝子はTAクローニングベクターp
CRIIにサブクローニングした後、図6に示す様にEc
oRI/XhoI断片として切り出し、グルタチオン−
S−トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質とし
て発現させる発現ベクターpGEX−4T−1(ファル
マシア社製)に組み込んだ。このプラスミドにより大腸
菌をトランスフォームし、菌体内にGST−組換えHE
RV−E−POL融合蛋白質を発現させた。この大腸菌
培養液より菌体を集め、破砕後遠心し、不溶性沈殿にG
ST−組換えHERV−E−POL融合蛋白質を回収し
た。不溶性のGST−組換えHERV−E−POL融合
蛋白質は7M尿素を含む緩衝液から再生可溶化し、トロ
ンビンによってGST蛋白を切り離し、硫安分画によっ
て組換えHERV−E−POLを精製した。
【0042】以下、図面を参照して説明する。
【0043】図5はタンパク発現用に発現ベクターpG
EX−4T−1に組み込んだ部分pol遺伝子のアミノ
酸配列とその相同遺伝子間でのアミノ酸配列における相
同性の比較の結果を示す。本発現遺伝子のアミノ酸配列
をMCF−7として示し、比較としてクローン4ー1及
びMo−MuLV(モロニー・マウス白血病ウイルスの
pol)のアミノ酸配列を並記し、その相同領域を枠で
囲んで示した。MCF−7とクローン4ー1とのホモロ
ジーは91.2%、Mo−MuLVとのホモロジーは6
4.0%であった。
【0044】図6は、組換えHERV−E−POL発現
ベクターpGST−POLの構築を示す。PCRクロー
ン化GP1800遺伝子はTAクローニングベクターp
CRIIに挿入後、PCRによってサブクローン化POL
遺伝子を取り出し、pCRIIにサブクローニングした。
発現用のPOL遺伝子はEcoRI及びXhoI断片と
して切り出し、発現ベクターpGEX−4T−1に挿入
した。枠組内には挿入部位近傍の配列構造並びに融合タ
ンパクを切り離す際のトロンビン切断部位を示した。
【0045】3.ヒト抗HERV−E−POL抗体価
ELISA法(Anti−HERV−E−POL EL
ISA) 組換えHERV−E−POL10μg/mlをPBSに
て調製し、マイクロプレートに100μl/ウエルで分
注、室温12時間放置して吸着させた。ウエルを純水で
洗浄後、1%BSAを含むPBSを300μl/ウエル
で分注して未吸着部位をブロッキング後、使用時まで4
℃で保存した。測定は、予め100倍に希釈したヒト血
清検体を100μlづつ分注後、室温で1時間反応させ
た。0.1%Tween20−PBSで4回洗浄後、パ
ーオキシダーゼ標識抗ヒトイムノグロブリンG(ダコ社
製)を2000倍希釈して分注し、室温で30分反応さ
せた。0.1%Tween20−PBSで4回洗浄後、
発色基質5mMオルトフェニレンジアミン−0.025
%過酸化水素−リン酸クエン酸緩衝液(pH5.0)を1
00μlづつ分注して室温で15分反応させた。3N硫
酸を100μlづつ加えて反応を停止させた後、波長4
92nmの吸光度を測定した。測定間のバラツキを平均
化するため、結果は陰性コントロール血清の吸光度を基
準としてその比を比較するべくAnti−HERV−E
−POL(IgG)インデックス(検体の吸光度/陰性
コントロールの吸光度)で表示した。
【0046】4.乳癌患者及び正常者におけるヒト抗H
ERV−E−POL抗体価の比較 上記方法によって乳癌患者(66名)及び正常者(50
名)におけるヒト抗HERV−E−POL抗体価を測定
した結果、図7に示すように、乳癌患者群における抗体
価が有意に高く(p<0.05、マン・ホイットニー検
定)、陰性コントロールの2倍以上の抗体価を示すもの
を陽性としたときの各陽性率は、乳癌患者群全体で40
%、乳癌のステージ別ではI期II期の初期において51
%であった。一方、正常者群で15%であった。これら
の結果より、乳癌患者の血中に抗HERV−E−POL
抗体が存在することが示された。
【0047】5. 抗HERV−E−POLモノクロー
ナル抗体の作製 抗HERV−E−POLモノクローナル抗体は、組換え
HERV−E−POLを抗原としてBALB/cマウス
を免疫して作製した。組換えHERV−E−POL10
0μgをフロインド・コンプリートアジュバントを用い
てエマルジョンにし、6週令マウス(雌)の皮下に2週
間間隔で2回投与した。最終免疫は、組換えHERV−
E−POL100μgのPBS溶液を腹腔内に投与し、
3日後に脾細胞を調製した。単離した脾細胞とマウスミ
エローマ細胞X63−Ag8−6,5,3とを5:1の
細胞数で混合し、50%ポリエチレングリコール400
0を用いて細胞融合を行った。HAT(ヒポキサンチ
ン、アミノプテリン、チミジン)選択培地でハイブリド
ーマを選択し、培養上清の特異抗体価をヒト抗HERV
−E−POL抗体価 ELISA法の項で用いた組換え
HERV−E−POL固相化マイクロプレート及びパー
オキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(ダコ
社製)を用いて調べ、抗体陽性のハイブリドーマを選択
した。得られたハイブリドーマは限界希釈法にてクロー
ニングし、単一コロニーを含むウエルのハイブリドーマ
を1クローンとした。各モノクローナル抗体のサブクラ
スの決定は、サブクラス同定用キット(ザイメッド社
製)を用いて行った。得られたハイブリドーマクローン
は以下の通りであった: ハイブリドーマ#1605(IgM,κ)、#4103
(IgM,κ)、#4117(IgM,κ)、#601
(IgG1,κ)、#706(IgG2a,κ)、#2
201(IgG2b,κ)、#4314(IgG2a,
κ)、#4706(IgG1,κ)、#5701(Ig
G2a,κ) 抗体の大量調製には、プリスタン0.5mlを投与して1
週間後のBALB/cマウスの腹腔にハイブリドーマ細
胞を107個接種し、約10日後に貯留してきた腹水を
採取することによって、抗体を高濃度で含む腹水から回
収した。
【0048】6. HERV−E−POLを含む免疫複
合体の検出 抗HERV−E−POLモノクローナル抗体(#160
5)20μg/mlをPBSにて調製し、マイクロプレ
ートに100μl/ウエルで分注、室温12時間放置し
て吸着させた。ウエルを純水で洗浄後、0.1%BSA
を含むPBSを300μl/ウエルで分注して未吸着部
位をブロッキング後、使用時まで4℃で保存した。測定
は、予め100倍に希釈したヒト血清検体を100μl
づつ分注後、室温で1時間反応させた。0.1%Twe
en20−PBSで4回洗浄後、パーオキシダーゼ標識
抗ヒトイムノグロブリンG(ダコ社製)を2000倍希
釈して分注し、室温で30分反応させた。0.1%Tw
een20−PBSで4回洗浄後、発色基質5mMオル
トフェニレンジアミン−0.025%過酸化水素−リン
酸クエン酸緩衝液(pH5.0)を100μlづつ分注して
室温で15分反応させた。3N硫酸を100μlづつ加え
て反応を停止させた後、波長492nmの吸光度を測定
した。測定間のバラツキを平均化するため、結果は陰性
コントロール血清の吸光度を基準としてその比を比較す
るべくHERV−E−POL免疫複合体インデックス
(検体の吸光度/陰性コントロールの吸光度)で表示し
た。
【0049】7. 乳癌患者及び正常者におけるHER
V−E−POLを含む免疫複合体インデックスの比較 上記方法によって乳癌患者(66名)及び正常者(50
名)におけるHERV−E−POLを含む免疫複合体イ
ンデックスを測定した結果、図7に示すように、乳癌患
者群における免疫複合体インデックスが有意に高く(p
<0.05、マン・ホイットニー検定)、陰性コントロ
ールの2倍以上の抗体価を示すものを陽性としたときの
各陽性率は、乳癌患者群全体で32%、乳癌のステージ
別ではI期II期の初期において52%であった。一方、
正常者群で10%であった。これらの結果より、乳癌患
者の血中にHERV−E−POLを含む免疫複合体が存
在することが示された。また、ヒト抗HERV−E−P
OL抗体価もしくは免疫複合体インデックスの何れか一
方でも陽性となる率では、正常者群で18%に対して乳
癌患者群特にI期II期の初期群において70%の著しい
陽性率を示した。
【0050】8. イムノブロッティングによる特異性
の確認 組換えHERV−E−POL試料及びMo−MuLV逆
転写酵素蛋白試料(ギブコ/BRL社製)を、等量のS
DS/PAGE緩衝液と混合し、沸騰水中で加熱した
後、8〜20%グラジエントゲルによるSDS−PAG
Eを行い、これをニトロセルロース膜に転写した。転写
膜を3%BSA−PBSでブロッキングした後、各モノ
クローナル抗体を反応させた。Tween20−PBS
にて洗浄後、パーオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロ
ブリン抗体(ダコ社製)を反応させた。Tween20
−PBSにて洗浄後、発色液TMBlue(インタージ
ェン−CDP社製)を加えて発色させた。結果、いずれ
も組換えHERV−E−POLの分子量15Kdの位置
にバンドを生じ、特異性を確認した。また、組換えHE
RV−E−POLと64%の相同性を持つMo−MuL
V逆転写酵素とは、#1605及び#4103に関して
は交差反応性を認めた。
【0051】9. 抗HERV−E−POLモノクロー
ナル抗体によるヒト乳癌及び各種ヒト組織の免疫組織染
各種ヒト病理検体組織の未染色ホルマリン固定パラフィ
ン包埋切片を用いて常法に従って免疫組織染色を行っ
て、組織中の発現HERV−E内在性レトロウイルス遺
伝子産物(HERV−E−POL)の存在を確認し、組
織別の結果を比較することによって、その発現特異性を
検討した。用いた抗体は#1605及び#4103を主
として用い、陽性コントロールに抗ヒトB細胞モノクロ
ーナル抗体さらに正常マウス血清を陰性コントロールと
して使用した。結果は、表1に示したように、乳癌にお
いて強い染色結果が得られ、他の癌や正常組織では染色
されなかった。
【0052】
【表1】
【0053】図8に一次抗体としてモノクローナル抗体
#1605を用い、二次抗体としてペルオキシダーゼ標
識抗マウス免疫グロブリン抗体を用いたヒト乳癌におけ
る免疫組織染色の結果(染色像)を写真で示した。免疫
組織染色に用いたヒト乳癌は、乳頭腺管癌、ステージII
期である。癌部を→、非癌部を⇒の矢印で示す。腺癌組
織の細胞質とモノクローナル抗体♯1605は反応して
いる。一方、非癌部組織との反応性は±と判定される。
【0054】以上より、乳癌におけるHERV−E内在
性レトロウイルス遺伝子産物の存在が示された。
【0055】10. イムノブロッティングによるMC
F−7細胞ライセート中の反応抗原の確認 抗HERV−E−POLモノクローナル抗体及びヒト抗
HERV−E−POL抗体陽性乳癌患者血清が反応する
MCF−7細胞ライセート中の抗原を比較分析するため
以下の検討を行った。MCF−7細胞は10%牛胎児血
清(FCS)添加RPMI1640培地にて飽和状態まで
培養した後、回収し、集めた細胞は7M尿素を含む緩衝
液中で溶解させ、その遠心上清をMCF−7細胞ライセ
ート試料とした。MCF−7細胞ライセート試料を等量
のSDS/PAGE緩衝液と混合し、沸騰水中で加熱し
た後、8〜20%グラジエントゲルによるSDS−PA
GEを行い、これをニトロセルロース膜に転写した。転
写膜を3%BSA−PBSでブロッキングした後、抗H
ERV−E−POLモノクローナル抗体#1605及び
ヒト抗HERV−E−POL抗体陽性乳癌患者血清(1
00倍希釈)をそれぞれ反応させた。Tween20−
PBSにて洗浄後、モノクローナル抗体#1605につ
いてはパーオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン
抗体(ダコ社製)また乳癌患者血清についてはパーオキ
シダーゼ標識抗ヒトイムノグロブリンG(ダコ社製)を
反応させた。Tween20−PBSにて洗浄後、発色
液TMBlue(インタージェン−CDP社製)を加え
て発色させた。結果は図9に示したように、抗HERV
−E−POLモノクローナル抗体及びヒト抗HERV−
E−POL抗体陽性乳癌患者血清はいずれも分子量約4
7Kdの同じ位置のバンドを認識した。一方、正常者血
清にはバンドは確認できなかった。この共通抗原の結果
からも乳癌患者におけるHERV−E内在性レトロウイ
ルス遺伝子産物の特異的発現が強く支持された。
【0056】図9は上述のように、抗HERV−E−P
OLモノクローナル抗体及びヒト抗HERV−E−PO
L抗体陽性乳癌患者血清によるMCF−7細胞ライセー
トのイムノブロッティングの結果を示す。図中、Aは、
SDS−PAGE分離像のクマシーブリリアントブルー
染色を示し;Mrは分子量マーカー;mAbは、モノク
ローナル抗体#1605;Serum1は、乳癌患者血
清;Serum2は乳管内乳頭腫患者血清;そしてSe
rum3は正常血清;におけるイムノブロッティング結
果を示す。それぞれ、レーン1は5ーブロモデオキシウ
リジン未処理MCF−7細胞ライセート、レーン2は5
ーブロモデオキシウリジン処理MCF−7細胞ライセー
ト、レーン3はモロニー・マウス白血病ウイルス逆転写
酵素を泳動している。**は、モノクローナル抗体#1
605及び乳癌患者血清、乳管内乳頭腫患者血清が共通
に認識した47Kdの抗原バンドを示す。また、*はH
ERVと共通抗原性があるモロニー・マウス白血病ウイ
ルス逆転写酵素とも反応性があることを示す。
【0057】
【発明の効果】上述の様に、本発明は、これまで遺伝子
からの蛋白発現が明確に証明されていなかった内在性レ
トロウイルス遺伝子から、ヒト細胞内において発現して
いる遺伝子を選択し、この遺伝子にコードされるポリペ
プチドの検出、またはこのポリペプチドに対する特異抗
体によるの検出、を行うことで、内在性レトロウイルス
に関連する疾病発病の早期検出を可能とするものであ
る。
【0058】
【配列表】
【0059】配列番号 :1 配列の長さ:307 配列の型 :核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA 配列 ATTATCAAAA CCCCCAAGAG CATGGAAGGA CCCAGTTGCC AGGAACAGAC CCCCATTTGG ACCCACATGA AAGAGAGGAT ATGCAAAGGC TAAATGAGAC AGGGAAGCTC TCTTGGAAGG ATTAATGAGG GGAGCTCAGA AGGCCACGAA CGTTAACAAG CTCTCTGAGG TCATTCAGGG AAAAGAAGAA AGTCCGGCAC AATTCTACGA GAGACTGTGT GAGGCCTATC GTATGTATAC TCCCTTTGAT CCCGATAGCC CTGAAAATCA GCGTATGATT CACATGGCTT TAGTCCGTCA AAGCCCA
【0060】配列番号 :2 配列の長さ:347 配列の型 :核酸 鎖の数:二本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:cDNA 配列: TGGAATTATT GTTCCTTGTC AGTGTCCATG GAACACTCCC CTCCTGCCTG TTCCCAAGCC ACAGACCAAG GACTGCCGGC CGGTACAGGA TTTGCGGTTG CTTCATCAAG CTACACTGAC TTTACATCCA ACAGTACCTA ACCCGTCCAC ATTCTTGGGG TTGCTGCCAG CTGAGGACAG CTGGTTCACC TGCTTTGACC TGAAAGATGC TTTCTTTCCT ATCAGATTAG CCCCCGAGAG GCAGAAGCTG TTTGCCTTTC AGTGGGAAGA TCCGGAGTCA GGTGTCACTA CTCAGTACAC TTGGACCCGG CTTCCCCTTG GGTTCAAGAA CTCCCCCACC TCGAGCG
【0061】配列番号 :3 配列の長さ:114 配列の型 :アミノ酸 配列: GIIVPCQCPW NTPLLPVPKP QTKDCRPVQD LPLLHQATLT LHPTVPNPST LLGLLPAEDS WFTCFDLKDA FFPIRLAPER QKLFAFQWED PESGVTTQYT WTRLPLGFKN SPTS
【図面の簡単な説明】
【図1】MCF−7細胞で発現されたHERV遺伝子の
PCRクローニングを行った時の増幅産物の2%アガロ
ースゲル電気泳動パターンを示す写真である。
【図2】GP1800フラグメントを組み込んだクロー
ニングベクターpCRII(pCRIIーGP1800)の
制限酵素分析の結果得られた、2%アガロースゲル電気
泳動パターンを示す写真である。
【図3】本発明のクローニングされたMCF−7HER
V遺伝子の塩基配列1、すなわちダイデオキシヌクレオ
チド チェイン ターミネーション法にて決定したGP
1800フラグメントの5’側の部分gag遺伝子配列
を示し、該配列をその下の従来技術によるHERV−E
(4−1)の配列(1943−2250)と相同性につ
いて比較した比較図である。
【図4】クローニングされたMCF−7HERV遺伝子
の塩基配列2,すなわち、ダイデオキシヌクレオチド
チェイン ターミネーション法にて決定したGP180
0フラグメントの3’側の部分pol遺伝子配列を示
し、該遺伝子配列をその下のHERV−E(4−1)の
配列(3261−3607)との相同性について比較し
た比較図である。
【図5】発現ベクターpGEX−4T−1に組み込んだ
部分pol遺伝子のアミノ酸配列(MCF−7)とクロ
ーン4ー1及びMo−MuLV(モロニー・マウス白血
病ウイルスのpol)のアミノ酸配列との相同性比較図
である。
【図6】組換えHERV−E−POL発現ベクターpG
ST−POLの構築を示す工程図である。
【図7】ヒト抗HERV−E−POL抗体価(黒丸)及
び免疫複合体インデックス(白丸)の正常者群及び乳癌
患者群における分布を示すグラフである。
【図8】一次抗体としてモノクローナル抗体#1605
を用い、二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウス
免疫グロブリン抗体を用いて染色した、ヒト乳頭腺管癌
のステージII期の免疫組織染色像を示す写真である。
【図9】抗HERV−E−POLモノクローナル抗体及
びヒト抗HERV−E−POL抗体陽性乳癌患者血清に
よるMCF−7細胞ライセートのイムノブロッティング
の結果を示す電気泳動の写真である。
【符号の説明】
図1の符号:1はサイズマーカーλ/HindIIIのレ
ーン、2はPCR産物のレーン、矢印の位置は約180
0bpのフラグメント(GP1800)の増幅を示す。 図2の符号:1はサイズマーカーλ/HindIII+φ
χ174/HaeIIIのレーン、2はpCRIIーGP1
800/EcoRI消化のレーン、3はpCRIIーGP
1800/ApaI消化のレーン、4はpCRIIーGP
1800/XhoI消化のレーン、矢印はその位置にお
ける約1800bpのフラグメントの挿入およびフラグ
メント内部のApaI部位を示す。 図3の符号:*印はMCF−7 HERV遺伝子配列と
HERV−E(4−1)の配列(1943−2250)
との相違部分;四角枠は終始コドンを示す。 図4の符号:*印はMCF−7 HERV遺伝子配列と
HERV−E(4−1)の配列(3261−3607)
との相違部分を示す。 図5の符号:枠はアミノ酸配列の相同部分を示す。 図7の符号:黒丸はヒト抗HERV−E−POL抗体
価;白丸は免疫複合体インデックス値;*は、カットオ
フ・インデックスを2.0(横方向破線で示す)とした
場合のそれぞれヒト抗HERV−E−POL抗体価測定
もしくは免疫複合体インデックス測定における陽性率
(%);**は、ヒト抗HERV−E−POL抗体価測
定もしくは免疫複合体インデックス測定のいずれかが陽
性の場合の陽性率(%)を表示している。 図8の符号:→は癌部;⇒は非癌部を示す。 図9の符号:Aは、SDS−PAGE分離像のクマシー
ブリリアントブルー染色を示し;Mrは分子量マーカ
ー;mAbは、モノクローナル抗体#1605;Ser
um1は、乳癌患者血清;Serum2は乳管内乳頭腫
患者血清;そしてSerum3は正常血清;におけるイ
ムノブロッティング結果を示す。1は5ーブロモデオキ
シウリジン未処理MCF−7細胞ライセート;2は5ー
ブロモデオキシウリジン処理MCF−7細胞ライセー
ト;3はモロニー・マウス白血病ウイルス逆転写酵素;
の泳動を行ったレーンを示す。**は、モノクローナル
抗体#1605及び乳癌患者血清、乳管内乳頭腫患者血
清が共通に認識した47Kdの抗原バンドを示す。*は
HERVと共通抗原性があるモロニー・マウス白血病ウ
イルス逆転写酵素とも反応性があることを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G01N 33/53 G01N 33/53 D 33/574 33/574 A 33/577 33/577 B // C07K 14/15 C07K 14/15 16/10 16/10 (C12N 15/09 ZNA C12R 1:92) (C12P 21/02 C12R 1:91) (C12P 21/08 C12R 1:91) (56)参考文献 J.Virol.,54(3) (1985),p.764−772 Proc.Natl.Acad.Sc i.,80(1983),p.678−682 Jpn.J.Genet.,62 (1987),p.127−137 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 15/00 - 15/90 BIOSIS(DIALOG) WPI(DIALOG) Genseq

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒト内在性レトロウイルス遺伝子HER
    V−Eファミリーに属するpol遺伝子領域にコードさ
    れたポリペプチドからなる癌検出剤。
  2. 【請求項2】 ポリペプチドが、ヒト内在性レトロウイ
    ルス遺伝子HERVーEファミリーに属するpol遺伝
    子領域にコードされた図5の下記アミノ酸配列 【式1】 を有するポリペプチドであり、検出される癌が乳癌であ
    る請求項1に記載の癌検出剤。
  3. 【請求項3】 ヒト内在性レトロウイルス遺伝子HER
    V−Eファミリーに属するpol遺伝子領域にコードさ
    れたポリペプチドに対する抗体からなる癌検出剤。
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Jpn.J.Genet.,62(1987),p.127−137
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