JP2880024B2 - 植物ウィルスベクター及びプラスミド並びに外来遺伝子を植物中で発現させる方法 - Google Patents
植物ウィルスベクター及びプラスミド並びに外来遺伝子を植物中で発現させる方法Info
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による、外来遺伝子の植物体への導入と、植物の性質の
改良,及び植物体全身における有用タンパク質の製造方
法に関する。
植物ウィルスは、植物に感染すると、その植物内で増殖
し、外被タンパク質と呼ばれるタンパク質を大量に作り
ながら、植物体内で急速に拡がって行くことが知られて
いる。
伝子操作系が幾つか構築されており、この系を用いて外
来遺伝子を植物体内へ導入する試みがなされている。例
えば外被タンパク質遺伝子と外来遺伝子を置換する方法
(特開昭63−14693号公報),或いは外被タンパ
ク質遺伝子と外来遺伝子を直結して融合タンパク質を作
らせる方法(特開平2−49591号公報)等である。
る植物ウィルスベクターはいずれも、植物個体全体に拡
がる能力(全身感染性)を持たないという、大きな欠点
を有しており、植物個体全体に有用な性質を導入した
り、植物個体全体で有用タンパク質を生産することは、
不可能であった。
外被タンパク質による粒子形成が必要である(T.Saito
et al. : Virology Vol.176,329,1990)。既存の植物ウ
ィルスベクターは、外被タンパク質が産生されなかった
り(置換型ベクター)、外被タンパク質が融合タンパク
質となっており、その性質が大きく変化してしまったり
(直結型ベクター)する為、粒子形成をすることができ
ず、全身感染性を示さなかったものと考えられる。
個体全体への感染性(全身感染性)を有する植物ウィル
スベクター、及び該植物ウィルスベクターを双子葉植物
個体に直接接種することによって外来遺伝子を双子葉植
物中で発現させる方法を提供するにある。
ルスの外被タンパク質遺伝子の下流に、リードスルーを
誘起する塩基配列を介して外来遺伝子が接続されている
ことを特徴とする、植物ウィルスベクター、及び該植物
ウィルスベクターを転写産物とするプラスミド、並びに
該植物ウィルスベクターを双子葉植物個体に直接接種す
ることを特徴とする、外来遺伝子を植物中で発現させる
方法によって達成される。
それに先立って、本明細書中で用いた用語について説明
する。
つDNA或いはRNA配列に、外来遺伝子を導入するこ
とによって得られる複製可能な組換え体。
翻訳において、終止コドンで翻訳がストップせず、時と
して次の終止コドンまで翻訳されてしまう現象。リード
スルーされる終止コドンの近傍の塩基配列によって起き
る。
は、カリモウィルス,ジェミニウィルス等のDNAウィ
ルス,タバコモザイクウィルス等のトバモウィルスグル
ープに属するウィルスやブロモウィルス等のRNAウィ
ルス等が挙げられ、植物ウィルスであればその種類は問
わない。
薬理,生理活性を有するペプチド遺伝子や、植物にスト
レス耐性,病害虫耐性を与えるタンパク質遺伝子,植物
の形態や花色を変化させるタンパク質遺伝子等があり、
具体的には、エンケファリン,カルシトニン,グルタチ
オン,コルチコトロピン,ヒト上皮細胞成長因子(EG
F)や、下記に示したような、血圧低下作用を持つ、ア
ンジオテンシン転換酵素阻害(ACEI)ペプチド,イ
ンフルエンザウィルス由来ペプチド,エイズウィルスg
p120由来ペプチド等をコードする遺伝子等が挙げら
れる。
cDNA,或いはプラスミドDNA等から得ることがで
きるが、DNA合成機等を用いて合成することもでき
る。
る塩基配列とは、リードスルー現象を引き起こす塩基配
列ならばその種類は問わないが、例えばタバコモザイク
ウィルスの130/180Kと呼ばれるタンパク質遺伝
子中に存在する塩基配列等のような天然に存在する塩基
配列の他、それらの塩基配列の一部を置換したものであ
っても良い。
30/180Kタンパク質遺伝子中に存在するUAGC
AAUUA,又はそのDNA型に相当するTAGCAA
TTA(下線部は終止コドンである。),あるいは終止
コドンを他の終止コドンに置き換えたUAACAAUU
A(TAACAATTA),UGACAAUUA(TG
ACAATTA),もしくは終止コドン以外の塩基配列
を置換したUAGCARYYA(TAGCARYYA)
(RはA又はG、YはC又はUあるいはTを表す。)等
が挙げられるが、中でもUAGCAAUUA(TAGC
AATTA)が、リードスルー効率が良いという点で好
ましい。
ンパク質遺伝子としては、天然に存在する遺伝子の他、
その一部の塩基配列を欠失させたもの,又は一部の塩基
配列を置換した遺伝子でも良いが、特にリードスルーを
誘起する塩基配列の直前の塩基がAである外被タンパク
質遺伝子が、リードスルー効率の点で好ましい。
モザイクウィルスの場合、外被タンパク質遺伝子の3’
末端のU(T)のAへの置換あるいは3’末端のUCU
(TCT)のCAAへの置換等が挙げられ、これらの置
換はリードスルー効率が著しく向上するという点で好ま
しい。
ては、植物ウィルスがRNAウィルスの場合は、例えば
試験管内転写用のプロモーターとしてPMプロモーター
を持つpLFW3(Meshi et al.:Proc.Natl.Acad.Sci.
USA,Vol.83,5043,1986),T7プロモーターを持つpT
LW3(渡辺ら,平成4年3月11日,国立遺伝研究所
研究集会「ウィルス増殖に関連した宿主因子とその機
能」)等が挙げられるが、植物ウィルスがDNAウィル
スの場合は、試験管内転写用のプロモーターを持たない
プラスミドでよい。
スがRNAの場合は例えば次のようにして作成すること
ができる。
試験管内転写用プロモーターを有するプラスミドのプロ
モーター下流に組み込む。次に、遺伝子操作において通
常用いられる手法に従い、植物ウィルス由来の外被タン
パク質遺伝子の下流に、リードスルーを誘起する塩基配
列を介して目的とする外来遺伝子を組み込む。
(又はペプチド)を単離し易いように、リードスルーを
誘起する塩基配列と外来遺伝子との間に、タンパク質分
解酵素等が認識するアミノ酸をコードする塩基配列を挿
入しておくのが好ましい。タンパク質分解酵素が認識す
るアミノ酸としては、例えばアルギニンが挙げられる。
験管内転写反応によって、RNAを作成し、植物ウィル
スベクターとする。又、本発明の植物ウィルスベクター
は、更に試験管内で野性型ウィルスの外被タンパク質と
粒子形成させたもの(植物ウィルスベクター粒子)であ
ってもよい。
スを直接プラスミドに組み込み、遺伝子操作を行う。遺
伝子操作を行ったプラスミドからDNAウィルス部分を
切り出す方法等によって、植物ウィルスベクターを作成
することができる。
クターは、RNA又はDNAの形で,或いはRNAの場
合は好ましくは粒子形成させた形で、例えばカーボラン
ダムとともに葉に摺り込んだり、カーボランダムととも
に植物体に噴霧する方法等で、簡単に植物に感染させる
ことができる。
ーを誘起する塩基配列を有している為、外被タンパク質
と融合タンパク質(外来遺伝子由来の有用タンパク質又
はペプチドと外被タンパク質との融合タンパク質)を、
同時に産生する。その為、ウィルス粒子形成が正常に行
われ、全身感染性を示すと供に、植物体全体において外
来遺伝子を発現できるものと思われる。
する。尚、実施例で用いたプラスミドpTLW3を図1
に示す。
olスケールで、図2に示す8本の合成DNAを作成し
た。A及びA’は従来の直結型ベクター(比較例1),
B及びB’はリードスルー型ベクター(実施例1),C
及びC’は外被タンパク質遺伝子の3’末端の1塩基を
置換したリードスルー型ベクター(実施例2),D及び
D’は外被タンパク質遺伝子の3’末端の3塩基を置換
したリードスルー型ベクター(実施例3)に用いるもの
である。いずれのベクターも、発現した融合タンパク質
から、トリプシン消化によってACEIペプチドが単離
できるように、ACEI配列の5’側にアルギニンをコ
ードする配列を付してある。合成したDNAは、ABI
社OPCカートリッジによって精製した。
し、0.2mMのATPによってリン酸化し、フェノー
ル処理とエーテル洗浄によって精製した。精製したDN
Aを0.02μg/μlに調製し、AとA’,Bと
B’,CとC’,DとD’を各々混合して、65℃で5
分間処理した。処理後、室温となるまでゆっくりと冷却
することによってアニールした。
示す制限酵素の組合せにて消化し、各大きさの断片を調
製した。尚、pTLW3中での各断片の位置関係を、図
3に示す。
る分離の後、GENE CLEANキット(BIO 1
01社製)を用い、添付説明書に従って行った。
7.1kbp断片については、アルカリホスファターゼ
処理を行い、末端のリン酸を除いて、以下の反応に用い
た。
アニールした4種の合成DNA溶液各々を、で作成し
たpTLW3に由来する4つのDNA断片溶液ととも
に、以下の組成にて、15℃で15時間反応させること
によって各々結合させ、4種のプラスミドを作成した。
得られたプラスミドのうち、2種を図4に示す(a;比
較例1,b;実施例1)。
を、表4に示す。
B101コンピテントセル〔宝酒造(株)製〕を形質転
換し、カルベニシリン耐性のコロニーを選抜した。選抜
したコロニーの大腸菌から、目的とするプラスミドを抽
出・精製した。
成 1)で作成した4種のプラスミド(従来型ベクターの配
列を持つものと、本発明のベクター配列を持つもの)
を、制限酵素で消化した後、フェノール処理とエタノー
ル沈澱で精製し、鋳型DNAとした。この鋳型DNAを
用い、以下に示す反応系で、37℃,2時間、試験管内
転写反応を行い、4種の植物ウィルスベクター(RN
A)を作成した。作成した植物ウィルスベクター(RN
A)は、フェノール処理とエタノール沈澱により精製し
た。
と、公知の方法(Frankel-Conrat.H,Virology,Vol.4,1
〜4,1957)により精製した野性型タバコモザイクウィル
スの外被タンパク質とを、下記の組成にて、20℃で1
5時間反応させることによって、試験管内で人為的に粒
子形成を行った。反応溶液は、そのまま植物ウィルスベ
クター粒子溶液として使用した。
への外来遺伝子の導入 2)で作成した植物ウィルスベクター粒子溶液を10m
Mリン酸バッファー(pH=7.0)によって100倍
に希釈し、カーボランダムを用いて、播種後6週令のサ
ムソン種タバコ(Nicotiana tabacum cv. Samsun)の葉
に、100μlずつ塗擦接種した。
上葉への移行の確認サンプルの調製 植物ウィルスベクター粒子を感染させてから15日後
に、同一個体内の感染葉及び非感染葉各々から10mg
の切片を切り取った。表7に示す組成のSDSサンプリ
ングバッファー50μlを加え、ホモジナイズした後、
100℃で3分間処理した。冷却した後、12,000
rpmで5分間、遠心分離を行い、上清をSDS化タン
パク質サンプルとした。
質及び融合タンパク質の有無によって判断した。で調
製したSDS化タンパク質サンプル1μlを、SDS−
PAGE(12.5%ポリアクリルアミド)にかけ、タ
ンパク質を分離した。分離したタンパク質をゲルから電
気式ブロッティングによりPVDF膜へと転写した。次
に、抗タバコモザイクウィルスウサギ血清をTBS緩衝
液〔Tris−HCl(pH=7.6)20mM及びN
aCl,137mM〕で64,000倍希釈したものを
一次抗体染色液とし、ウサギ抗体用ブロッティング検出
キット(アマシャム社製)を用いて、添付説明書に従
い、抗体染色を行った。結果を図5に示す。
ウィルスベクター(比較例1)は、感染葉中では検出さ
れたが、非感染葉への移行は認められなかった(図5の
1,2)。
を同時に産生するようにリードスルー配列を導入した本
発明の植物ウィルスベクター(実施例1〜3)は、感染
葉と非感染葉の両方において検出され、葉から葉へと移
行している(全身感染性を持つ)ことが確認された(図
5の3〜8)。
転写を行い、抗ACEIウサギ血清をTBS緩衝液で1
28,000倍希釈したものを一次抗体染色液とし、
4)と同様に抗体染色を行った。結果を図6に示す。
に、本発明の植物ウィルスベクターは感染葉及び非感染
葉の両方において、融合タンパク質の形でACEIを産
生していることが確認された。
較 サンプルの調製及びサンプル中の植物ウィルスベクター
の検出は、4)の,と同様に行い、実施例1〜3の
植物ウィルスベクターの融合タンパク質生産能を比較し
た。
ルは、感染葉から抽出し、生葉0.2mg相当量として
揃えた。また、同時にタバコモザイクウィルス外被タン
パク質スタンダード100,75,50,25,10,
5ngもSDS−PAGEにかけた。検出は4)のと
同様、抗タバコモザイクウィルスウサギ血清による抗体
染色によって行った。その結果を図7に示す。
ぞれのベクターの融合タンパク質生産量を算出したとこ
ろ、タバコの葉1gあたり実施例1のベクターは0.0
25mg,実施例2のベクター及び実施例3のベクター
は0.25mgの融合タンパク質を生産していた。この
ことから、外被タンパク質遺伝子の3’末端の塩基配列
をUからA,あるいはUCUからCAAに置換すること
によって、リードスルー効率が向上し、融合タンパク質
生産能が10倍に増大していることが判った。
ィルスベクター粒子溶液を、播種後約6ヵ月のミニトマ
トの〔シュガーランプ種,サカタのタネ(株)から購
入〕葉に感染させた。感染は、実施例1と同様に行っ
た。14日後にトマトの実を収穫し、トマトの実から抽
出したタンパク質サンプル中のACEIを、実施例1と
同様にして、抗ACEI抗体を用いて検出した。結果を
図8に示す。
CEIが産生されていることが確認された。
血圧低下作用を有するACEIを多量に含有しているも
のと期待される。
agglutinin由来のペプチド2種(TLHA
1,TLHA2と略記する。),及びエイズウィルスg
p120由来のペプチド1種(TLHIVと略記す
る。)をコードする遺伝子を用いて1塩基置換リードス
ルー型ベクターを作成し、タバコの葉に感染させた。用
いた合成DNAを図9に示す。
ク質と融合タンパク質とを同時に産生するようにリード
スルー配列を導入した本発明の植物ウィルスベクター
(実施例4〜6)は、感染葉と非感染葉の両方において
検出され、葉から葉へと移行している(全身感染性を持
つ)ことが確認された(図10)。
て、融合タンパク質の形でペプチドを産生していること
が確認された(図11)。
ターは、植物個体での全身感染性という大きな利点を有
しているため、植物個体への有用な性質の導入及び植物
体全体での有用タンパク質の生産が可能となる。
スベクターを作成する際に使用した合成DNAの、塩基
配列を表す図である(A及びA’は比較例1,B及び
B’は実施例1,C及びC’は実施例2,D及びD’は
実施例3)。
いたDNA断片の、プラスミドpTLW3中における位
置関係を示す図である。
作成したプラスミドを表す図である。
の感染実験において、感染葉及び非感染葉中のベクター
ウィルスの有無を調べた図である。
の感染実験において、感染葉及び非感染葉中のACEI
の有無を調べた図である。
3)の、融合タンパク質生産能を調べた図である。
いて、トマト実中のACEIの有無を調べた図である。
を作成する際に使用した合成DNAの、塩基配列を表す
図である(E及びE’は実施例5,F及びF’は実施例
6,G及びG’は実施例7)。
において、感染葉及び非感染葉中のベクターウィルスの
有無を調べた図である。
において、感染葉及び非感染葉中のペプチドの有無を調
べた図である。
Claims (6)
- 【請求項1】 植物ウィルスの外被タンパク質遺伝子の
下流に、リードスルーを誘起する塩基配列を介して外来
遺伝子が接続されていることを特徴とする、植物ウィル
スベクター。 - 【請求項2】 外被タンパク質遺伝子が、一部の塩基配
列を欠損又は置換した外被タンパク質遺伝子である請求
項1記載の植物ウィルスベクター。 - 【請求項3】 植物ウィルスが植物RNAウィルスであ
る請求項1又は2記載の植物ウィルスベクター。 - 【請求項4】 外被タンパク質遺伝子が、トバモウィル
スの遺伝子である請求項1又は2記載の植物ウィルスベ
クター。 - 【請求項5】 請求項3乃至4記載の植物ウィルスベク
ターを転写産物とするプラスミド。 - 【請求項6】 請求項1乃至3記載の植物ウィルスベク
ターを双子葉植物個体に直接接種することを特徴とす
る、外来遺伝子を双子葉植物中で発現させる方法。
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US08/313,127 US5618699A (en) | 1992-03-31 | 1993-03-31 | Plant virus vector, plasmid, process for expression of foreign gene and process for obtaining foreign gene product |
EP01118243A EP1162267A3 (en) | 1992-03-31 | 1993-03-31 | Plant virus vector, plasmid, process for expression of foreign gene and process for obtaining foreign gene product |
DE69333529T DE69333529T2 (de) | 1992-03-31 | 1993-03-31 | Pflanzenvirus-vektor, plasmid, methode der expression fremder gene und methode zur gewinnung obiger genprodukte |
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JP4-108628 | 1992-03-31 | ||
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EP1764414A1 (en) * | 2005-09-17 | 2007-03-21 | Icon Genetics AG | Plant viral particles comprising a plurality of fusion proteins consisting of a plant viral coat protein, a peptide linker and a recombinant protein and use of such plant viral particles for protein purification |
-
1992
- 1992-06-22 JP JP4188744A patent/JP2880024B2/ja not_active Expired - Fee Related
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