JP2858316B2 - 人工血管 - Google Patents

人工血管

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JP2858316B2 JP1053723A JP5372389A JP2858316B2 JP 2858316 B2 JP2858316 B2 JP 2858316B2 JP 1053723 A JP1053723 A JP 1053723A JP 5372389 A JP5372389 A JP 5372389A JP 2858316 B2 JP2858316 B2 JP 2858316B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、編物、織物または不織布の構造を有する繊
維構造物で構成された人工血管及び人工補綴材に関す
る。
(従来の技術及び解決すべき課題) 人工血管や人工補綴材に関する研究は、今世紀の初頭
より数多くなされている。例えば人工血管についてみる
と、その成果としてポリエステル繊維、ポリアミド繊維
或はポリオレフィン繊維など管状編織物や延伸ポリテト
ラフルオロエチレンの多孔質チューブが実用化されてい
る。
ところで、人工血管や人工補綴材は生体内に埋植する
ものであるから、術後の癒合過程において、これら人工
血管や人工補綴材に生体組織が入り込んで成長し、増殖
して線維状新生内膜が形成される必要がある。本発明は
かかる線維状新生内膜などの生体組織の形成が良好であ
る人工血管及び人工補綴材並びにその製造方法を提供す
るこを目的とする。
(課題を解決するための手段) 本発明者等は人工血管や人工補綴材を生体内に埋植し
た際における線維成長や線維芽細胞の増殖について種々
検討した結果、人工血管や人工補綴材を編物織物または
不織布の構造を有する線維構造体からつくり、この編
物、織物または不織布を構成する繊維の表面に多数の微
少な凹みを設けておくことにより、線維成長が良くな
り、線維芽細胞が増殖が良好になることを知見し本発明
を完成した。
すなわち、本発明は、編物、織物または不織布の構造
を有する繊維構造体であって、繊維表面に多数の微小な
凹みを有してなる人工血管または人工補綴材及びこれら
の製造方法に係る。
本発明においては、線維表面に多数の微少な凹みを形
成することにより、この凹みが足掛かりと成って細胞の
生着、線維芽細胞の増殖が円滑に進み、例えば線維状新
生内膜などの生体組織が良好に形成されるものと考えら
れる。
編物、織物または不織布を構成する繊維の表面に多数
の微少な凹みを形成するには、繊維の種類に応じて種々
の方法で行なうことができる。又、繊維表面への凹みの
形成は繊維構造体にした後に行なうが、繊維構造体にす
る前に行なってもよい。
繊維表面の凹みの形成は、例えばポリエステル繊維を
用いた場合にはアルカリ処理により行う。ポリエステル
繊維をアルカリ処理すると、ポリエステル繊維はその表
面から加水分解が進み、徐々に細くなり、減量する。そ
して、この減量処理の際に繊維の表面に多数の微少な紡
錘形の凹みが生成する。生成した凹みの拡大写真を第1
図に示す。この減量処理にはアルカリとして苛性ソーダ
などを用いる。減量処理における減量率(減量処理前後
の繊維の重量差を減量処理前の重量で除した値×100)
は5〜70%が好ましい。5%以下では凹みの形成が不完
全であり、70%以上になると繊維が細りすぎて強度的に
問題があり好ましくない。
また、径の小さい繊維で構成された繊維構造体を人工
血管や人工補綴材に用いると、繊維が生体内で分解する
などして経時的に分断が生じる恐れがあるので、本発明
において繊維の経が8μm以上のものも用いるのが好ま
しい。
さらに、特に人工血管においては、生体内に移植した
場合、血液が洩れないように配慮する必要がある。編
物、織物または不織布の構造を有する繊維構造体を使用
する場合は、その間隙の大きさが問題となる。本発明の
表面に凹みを有する繊維を用いた繊維構造体について
は、その間隙は、透小量が3000cm3/cm2分以下になるよ
うにする。
本発明において、人工補綴材とは、例えば、胸部血管
外科手術における中間欠損補綴用パッチ、腹部の細胞組
織補綴用パッチ、動・静脈血管補綴用パッチ、心臓補綴
用パッチ、心臓弁補綴物、心臓用シート、ヘルニア補綴
用パッチ、気管欠損補綴用パッチなどの各種パッチ類を
始め人工皮膚または人工皮膚用シートなど、生体組織の
欠損部を補綴する部材全般を指す。
ところで、繊維構造体を構成する繊維としてポリエス
テル繊維を用い、アルカリで減量処理した場合には、特
に人工血管については次のような利点がある。
すなわち、従来のポリエステル繊維で構成された人工
血管においては、移植後の出血を防ぐために緻密な構造
となす必要があったが、緻密な構造にすると柔軟性がな
くなり、強張って取扱いにくくなり、移植操作が困難に
なり、又、細胞侵入が悪くなる。しかして、かかる緻密
な構造物を前述したアルカリによる減量処理を行なう
と、前記したとおりの加水分解による繊維の細化によ
り、構造物に柔軟性、しなやかさが与えられ、また繊維
間の間隙が大きくなり前記の欠点を解消することができ
る。
また、ポリエステル繊維をアルカリで処理すると繊維
が細くなると共に、先に述べたとおりその繊維表面に微
小な紡錘形の凹みが多数認められるようになるが、この
繊維表面の微小な紡錘形の凹みと、繊維が細化されるこ
とに伴う繊維構造物の組織間の緩みとが相まって埋植後
の細胞侵入、細胞生着性が一層優れるようになるものと
考えられる。
実施例 市販のポリエステル繊維製のニット地人工血管(USCI
社製Sauvage Bionit 8mmφ、繊維径およそ15μm)を苛
性ソーダ溶液(62.5g/)へ浸漬してアルカリ減量処理
を行なった。処理時間は30分、および60分、液温95℃、
処理液量は浴比1:50でおこなった。減量処理後に後処理
として、水洗、ソーダ灰(1g/)浸漬、水洗、酢酸(1
cc/)処理、水洗、蒸留水洗浄を実施した。その後乾
燥して重量測定をおこない、減量率を求めたところ、第
1表の結果を得た。これらの繊維の表面は、第1図に示
すように、多数の紡錘形の微小な凹みを有していた。
この各種減量処理試料に対して、医療用人工血管基準
(昭和45年8月10日厚生省告示第298号)に準じて、溶
出物試験、急性毒性試験を実施したところ、第2表に示
すように全て適合した。
次に、この各試料から1cm×1cmの小片をそれぞれ調製
し、EOG滅菌を行なった。ウィスターKYラットの背部に
切開を加えて作製した皮下ポケットに、これらの滅菌小
片を埋設し、埋設後3日、7日、14日目に埋入部位の周
囲組織ごと取り出し、試料中への細胞侵入性を調べた。
第3表に示すように、アリカリ減量処理加工で繊維表面
に多数の微少な紡錘状の凹みを形成させたことによる細
胞侵入性の向上が明らかであった。
更に、試料Bを6cm長に切断し、犬胸部大動脈に移植
した。移植に先立ち、試料Bは犬血液を用いてプレクロ
ッティング操作を行なった。移植に当り、試料は柔軟で
扱いやすく、縫合せにおける問題も生じなかった。また
移植後も出血等の問題も生じず、移植3ヶ月で取り出し
たとろ、内、外面は細胞性成分を取り込んだ天然血管と
類似した構造と成っていた。
(発明の効果) 本発明の人工血管または人工補綴材は、編物、織物ま
たは不織布の構造を有する繊維構造体で構成され、その
繊維構造体を構成する繊維表面に多数の微小な凹みが形
成されているから、人工血管または人工補綴材を生体内
に埋植した際に、上記の凹みが線維成長や線維芽細胞の
増殖の足掛かりとなり、したがって本発明の人工補綴を
用いると線維状新生内膜など生体組織の生成が良くな
り、癒合過程が良好になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の減量処理を施したポリエステル繊維
の表面形状を示す拡大写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大林 直博 福井県福井市毛矢2丁目2番6号 (56)参考文献 特開 昭63−246151(JP,A) 特開 昭59−225052(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) A61F 2/02 - 2/26 A61L 27/00

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】編物、織物または不織布の構造を有する繊
    維構造体であって、繊維表面に多数の微小な凹みを有し
    てなる人工血管。
  2. 【請求項2】編物、織物または不織布の構造を有する繊
    維構造体であって、繊維表面に多数の微小な凹みを有し
    てなる人工補綴材。
  3. 【請求項3】繊維の径が8μm以上である請求項第1項
    記載の人工血管。
  4. 【請求項4】繊維の径が8μm以上である請求項第2項
    記載の人工補綴材。
  5. 【請求項5】透水量が3000cm3/cm2分以下である請求項
    1又は3記載の人工血管。
  6. 【請求項6】透水量が3000cm3/cm2分以下である請求項
    2又は4記載の人工補綴材。
  7. 【請求項7】編物、織物または不織布の構造を有する繊
    維構造体を減量処理し表面に多数の微少な凹みを形成さ
    せることを特徴とする人工血管の製造方法。
  8. 【請求項8】編物、織物または不織布の構造を有する繊
    維構造体を減量処理し表面に多数の微少な凹みを形成さ
    せることを特徴とする人工補綴材の製造方法。
  9. 【請求項9】減量率(減量処理前後の繊維の重量差を減
    量処理前の重量で除した値×100)が5〜70%である請
    求項7記載の人工血管の製造方法。
  10. 【請求項10】減量率(減量処理前後の繊維の重量差を
    減量処理前の重量で除した値×100)が5〜70%である
    請求項8記載の人工補綴材の製造方法。
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