JP2854377B2 - 眼用懸濁液 - Google Patents

眼用懸濁液

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JP2854377B2 JP2099150A JP9915090A JP2854377B2 JP 2854377 B2 JP2854377 B2 JP 2854377B2 JP 2099150 A JP2099150 A JP 2099150A JP 9915090 A JP9915090 A JP 9915090A JP 2854377 B2 JP2854377 B2 JP 2854377B2
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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、眼用懸濁液に関する。
〔従来技術及びその課題〕
眼科治療においては、頻繁に眼窩の組織の薬剤を局処
投与することが多い。更に、眼に涙液又は水分が欠乏し
ている場合には、眼に水分や潤いを与える為に人工涙液
を眼に頻繁に滴下しなければならない。
眼に水分や潤いを与えなければならない場合や、或い
は眼に局処投薬をしなければならない場合において、1
つの共通した治療方法は点眼薬を使用することである。
患者は自分自身で眼薬滴下器や延長部を有するディスペ
ンサーを介して点眼薬を眼に滴下出来るので、点眼薬滴
下は極めて容易である。しかし、点眼薬を滴下する場合
の欠点は、薬液或いは潤液が眼窩から涙点とよばれる開
口を介して鼻腔に急速に排出されることである。この排
出される薬液は、鼻や喉の粘膜に吸収されて組織中毒を
引き起こすことになるが、組織中毒は薬液の量と投薬の
回数を少なくしまた薬物を長時間眼に滞留させることに
より低減することができる。更に、点眼薬は眼から簡単
に蒸発する。
このように、点眼薬を使用すると、長時間連続して潤
剤或いは薬剤を投与することは出来ず、点眼薬は眼から
排出されるため、投与時に正確な投薬量を予測すること
が出来ない。また、間欠的に投与する場合でも、点眼薬
は眼から急速に流出するので、投薬の残量を予測するこ
とが出来ないという問題は依然として残る。更に、点眼
薬の連続した投与は不便であるばかりでなく危険でもあ
る。
米国特許に開示されたいくつかのドラッグ デリバリ
ー システムにおいては、眼に連続して薬剤を供給する
ための大型のインサートが提案されている。あるインサ
ートは薬剤を分散させるものであるが、薬剤の分散後、
薬剤の担体を除去する必要がある。しかしながら、米国
特許No.3,845,201、No.4,164,559及びNo.4,179,497号に
は、長時間に亙って薬剤を供給して最後には完全に分解
し、薬剤供給後に除去する必要のない大型のペレット状
の種々のインサートが開示されている。
液薬治療においては、これらのインサートは、薬剤を
急速に流出させることなく長時間に亙って連続的に供給
するので投薬量をより正確に予測出来るという利点があ
る。更に、これらインサートは瞼の裏側の結膜嚢の盲管
に直接配置することが出来る。このように、片状の眼用
単位インサートにより、点眼薬を使用する場合のように
投与を繰り返さなくても長時間に亙って予測可能な投薬
が出来る。
しかし、単位インサートの使用にはいくつかの欠点が
ある。第1に、上記インサートはかなり大きく、鋭敏な
眼の組織に不快感や痛みを引き起こす。更に、単位イン
サートは瞼の裏側に注意して挿入しなければならないう
え、挿入時に特別の処置及び特別の挿入具が必要にな
る。これらインサートを挿入する際の患者教育の難しさ
と特有の技術を要することがインサートの普及を妨げて
いる。また、眼用インサートはかなり大きく且つ1つの
片状のため、まばたきにより眼窩から飛び出すことがあ
る。
液体薬物治療とインサートにおける上記問題を解決す
るための試みとして、シェルの米国特許No.3,914,402、
No.4,001,388及びNo.4,115,554には、溶媒に10μmから
最大300μmの固体粒子を懸濁させた懸濁液からなる眼
薬の剤形が記載されている。シェルの剤形は、インサー
トにおける複雑な挿入やインサートの大きさによる不快
感そしてインサートの飛び出しなどの問題を解消する。
しかし、シェルの懸濁液中の極めて小さい固体粒子によ
り、投薬量が予測出来ることと薬剤や潤剤を連続して投
与出来ることなどのインサートの重要な利点が失われ
る。
上記全てのシェルの特許には、懸濁薬液中の固体粒子
は涙点を介して眼窩から通り抜けられるぐらいに十分小
さいものであることが記載されている。更に、このこと
は固体粒子の大きさが10μmから最大300μmの範囲に
あって且つ涙点の平均の大きさが約0.5mmであることか
らも明らかである。従って、シェルは意図的に固体粒子
の大きさを涙点の大きさよりも小さくしていることがわ
かる。シェルは、懸濁液中の固体粒子は涙点を通って眼
窩から排出されないと主張している。このようにシェル
は主張しているが、なぜ涙点から小径の粒子が導管系の
通常の排泄路に沿って排出されないのかということを実
際に説明することが出来ない。更に、シェルの粒子は、
懸濁液中に分解されているので、眼に過剰に投与された
懸濁液は自然に涙点から排出される。粒子はこの液体中
に懸濁され、特に涙点の径よりも小さいので、排出され
る懸濁液中の粒子がどのようにして眼から排出されない
のか理解出来ない。シェルは異なった主張をしている
が、シェルのシステムにより過剰に懸濁液が供給される
と涙点から粒子の幾分からは排出されるので、シェルの
懸濁液の微粒子は投薬量の予測を妨げる。シェルの懸濁
液のいくつかの微粒子は眼の柔らかい組織に滞留するか
もしれないが、かなりの粒子は眼から排出される。
アブラハムの米国特許No.3,826,285には、徐放性薬物
担体が記載されている。アブラハムの特許は、眼に投与
し得るカプセル剤を使用した局処治療に関するものであ
る。アブラハムの特許は、薬剤による眼の痛みや不快感
の問題を解決しようするものであり、球形カプセル剤の
直径は1mm以下でなければならないと幅広く主張してい
る。アブラハムは、眼に痛みを引き起こさない球形カプ
セル剤の大きさを限定せずに最大直径について述べてい
る。しかしながら、最大直径約1mmのカプセル剤は眼に
大変な痛みを引き起こす。
更に、アブラハムは粒子が眼の涙点から排出される問
題にはふれていない。アブラハムは涙点からの排出を防
ぐためのカプセル剤の最小の大きさについて示唆してい
ない。涙点の平均の大きさは0.5mmであり、従って幅広
い大きさの範囲にあるアブラハムのカプセル剤の大部分
は涙点から排出される。何れにしても、アブラハムは涙
点からの排出の問題にはふれず、カプセル剤は眼に痛み
を引き起こすものであってはならないと広言しているだ
けで、カプセル剤の大きさについての指針がなく、カプ
セル剤の大きさに関する前述の1つの目的を達成する一
貫性に欠ける。
更に、アブラハムは、涙点からの排出と眼の痛みの両
方に関係するカプセル剤の最大寸法に対する最小寸法の
大きさのバランスに関する議論をしていない。それどこ
ろか、アブラハムは、均一な大きさの球形カプセル剤の
使用を示唆している。従って、アブラハムの特許には、
眼に痛みを引き起こす可能性を増加させずに涙点からの
排出を防止し得るカプセル剤の大きさについて提案され
ていない。
次に、眼の涙液と涙膜について説明すると、通常条件
のもとでは、涙液は、角膜と結膜上皮を覆う約7〜10μ
mの厚さの薄い層を形成している。この極めて薄い層
は、角膜上皮の僅かな凹凸をなくして視覚表面を滑らか
にし、角膜と結膜上皮の表面を潤して上皮細胞の損傷を
防ぎ、機械的な水洗いにより角膜の結膜上に微生物が成
長するのを防止している。
通常、涙膜は3層構造になっている。その外層はマイ
ボーム腺の分泌物から派生した脂質層であり、水質層の
蒸発を防止していると考えられている。その中間の水質
層は大小の涙腺で形成され、水溶性物質を含んでいる。
最も内側のムチン層はグリコプロテイン ムチンからな
り、角膜と結膜上皮細胞を覆っている。上皮細胞膜はリ
ポプロテインからなり、疎水性である。水性溶液だけで
は上皮細胞膜の表面を湿らせることができないので、こ
のムチン層は上皮細胞膜の表面を湿らせるうえで重要な
役割を果たしている。従って、ムチンにより涙液が拡散
し得る親水性の表面が形成され、涙液の表面張力の低下
によりその表面は濡らされる。通常の状況では、ムチン
は結膜の杯細胞や涙腺から供給される。
涙膜の成分の何らかが欠乏している場合には、涙膜は
破壊し、角膜と結膜上皮に乾燥点が発生する。上記3つ
の層(水質、ムチン、脂質)のうち何れの層が欠けても
眼が乾燥する。乾性角結膜炎として知られている病気に
は多くの形態がある。リウマチ様関節炎に関係している
か或いは他の結合組織の病気に関係しているものはシェ
グレン症候群と呼ばれている。この病気についてのバッ
クグラウンドとなる全ての知識は、Vaughan在住のタバ
ラ等の共著である「General Ophthalmology」(1986年
発行、第11版)の72頁〜77頁の涙液に関する章から得る
ことが出来る。
眼に取付けることが可能な大型の固形の人工涙インサ
ートは知られている。このようなインサートの一例とし
て、「Lacrisert」の商標で販売されているインサート
がある。この杆体には、眼に長時間に亙って徐放される
ヒドロキシプロピルセルローズが含まれている。また、
「General Ophthalmology」の第7章には、インサート
を挿入した場合には、局処的に人工涙液を滴下すべきこ
とが示唆されている。
これら大型のインサートはしばしば霧視や痛みを引き
起こすばかりでなく、これらのインサートは涙膜の1つ
の層を模倣したある物質を供給するだけのものである。
ヒドロキシプロピル セルローズは涙膜にムチン状物質
を供給する。更に、この治療薬は、眼に同時に全ての薬
剤成分を供給出来るような使用が簡単な懸濁液に製剤さ
れていない。これらインサートは特殊な技術を用いて眼
に装着しなければならず、装着後も人工涙液を滴下しな
ければならない。「General Ophthalmology」には、眼
に固形のインサートを装着した後に滴下される人工涙液
の実際の成分についての記述がない。
眼球乾燥症候群は涙膜の3つの層の何れかが欠けるこ
とにより引き起こされるので、涙膜の3つの成分の全て
を備えていないLACRISERTシステムは、眼球乾燥症候群
の全ての症状に対して完全な治療を施すことが出来な
い。
本発明の目的は、長時間連続して薬剤を投与し得る人
工涙液としての眼用懸濁液を提供することである。本発
明の更にもう1つの目的は、予測可能な投薬量又は薬剤
量の眼の治療媒体を投与し得る人工涙液としての眼用懸
濁液を提供することである。本発明の更にもう1つの目
的は、眼に簡単に投与出来、眼から時期尚早に排出され
たり或いは飛び出したりする危険がなく長時間に亙って
眼窩に滞留し得る眼用の治療薬を含んだ人工涙液として
の眼用懸濁液を提供することである。本発明の更にもう
1つの目的は、涙点からの排出が防止又は遅延されるた
めに眼に長時間滞留し且つ鋭敏な眼の組織に痛みを引き
起こすことのない快適な眼用治療薬を含んだ人工涙液と
しての眼用懸濁液を提供することである。本発明の目的
は、涙膜の全ての成分を供給する人工涙液としての眼用
懸濁液を提供することである。本発明の更にもう1つの
目的は、眼に投与されたときに自然の涙膜に酷似した涙
膜を形成する全ての成分を供給して眼の乾燥を治療する
人工涙液としての眼用懸濁液を提供することである。
発明のもう1つの目的は、自然の涙膜成分(水分、ム
チン、脂質)の何れかの成分又は全ての成分の欠乏を補
償する人工涙液としての眼用懸濁液を提供することであ
る。本発明の更にもう1つの目的は、眼に潤いが必要な
ときや或いは眼が乾燥した環境に晒されているときに
は、いつでも使用することが出来る人工涙液としての眼
用懸濁液を提供することである。本発明の別の1つの目
的は、眼の潤剤、コンタクトレンズの洗浄液、隅角鏡レ
ンズの洗浄液、及びその他の人工涙液システムとして使
用し得る眼用懸濁液を提供することである。本発明の更
にもう1つの目的は、簡単に投与出来、涙膜の3つの成
分を効率良く供給し得る人工涙液としての眼用懸濁液を
提供することである。
〔課題を解決するための手段〕
請求項1の眼用懸濁液は、最大部分の寸法が少なくと
も0.5mmの大きさであって且つ1〜2mmの範囲にあり、眼
に投与された状態において最小部分の寸法が0.4mm〜0.7
mm以下である生体分解性物質からなる複数の3次元粒子
と、上記粒子が懸濁される担体であって眼に許容される
pHの液体担体と軟膏担体との一方を含んでいる懸濁液で
あって、眼に投与された状態においてムチン状物質を放
出し且つ眼内に水性物質を保持する為の親水性の表面を
形成する複数の生体分解性ムチン状粒子と、眼に投与さ
れた状態において脂質状物質を放出し且つ眼内の水性物
質の蒸発を抑制する為の層を形成する脂質状物質と、眼
に投与された状態において水性物質を放出する水性物質
とを含んでおり、上記ムチン状粒子が上記脂質状物質担
体と上記水性物質担体の少なくとも一方に懸濁されてい
る人工涙液としての懸濁液であることを特徴とするもの
である。
請求項2の眼用懸濁液は、眼に投与された状態におい
てムチン状物質を放出し且つ眼内に水性物質を保持する
ための親水性の表面を形成する複数の生体分解性ムチン
状粒子と、眼に投与された状態において脂質状物質を放
出し且つ眼内の水性物質の蒸発を抑制するための層を形
成する脂質状物質と、眼に投与された状態において水性
物質を放出する水性物質とを含んでおり、上記ムチン状
粒子が上記脂質状物質担体と上記水性物質担体の少なく
とも一方に懸濁されている人工涙液であることを特徴と
するものである。
請求項3の眼用懸濁液は、請求項1又は2の眼用懸濁
液において、上記ムチン状粒子がコラーゲン、ゼラチン
又は血清のうちの少なくとも1つからなるものである。
請求項4の眼用懸濁液は、請求項1〜3のいずれか1
項の眼用懸濁液において、上記脂質状物質の少なくとも
一部分が粒形であるものである。
請求項5の眼用懸濁液は、請求項4の眼用懸濁液にお
いて、上記脂質状粒子は、ペトロラタム、脂肪酸、脂肪
性エステル、ワックス、脂肪性アルコール又はレシチン
の少なくとも1つからなるものである。
請求項6の眼用懸濁液は、請求項4の眼用懸濁液にお
いて、上記脂質状粒子は、グリコプロテイン、コレスト
ロール又はリン脂質の少なくとも1つからなるものであ
る。
請求項7の眼用懸濁液は、請求項4〜6のいずれか1
項の眼用懸濁液において、上記ムチン状粒子と脂質状粒
子の最大部分の寸法が少なくとも0.5mmであるものであ
る。
請求項8の眼用懸濁液は、請求項7の眼用懸濁液にお
いて、眼に投与された状態においてムチン状粒子と脂質
状粒子の最小部分の寸法が約0.4mm〜0.7mm以下であるも
のである。
請求項9の眼用懸濁液は、請求項4〜8のいずれか1
項の眼用懸濁液において、上記ムチン状粒子と脂質状粒
子は水性物質担体剤に懸濁されているものである。請求
項10の眼用懸濁液は、請求項9の眼用懸濁液において、
上記水性物質の一部分はムチン状粒子の少なくとも一部
分に含まれているものである。
請求項11の眼用懸濁液は、請求項10の眼用懸濁液にお
いて、上記水性物質はムチン状粒子内に封入されている
ものである。
請求項12の眼用懸濁液は、請求項4〜11のいずれか1
項の眼用懸濁液において、上記ムチン状粒子と脂質状粒
子は脂質状物質担体剤に懸濁されているものである。
請求項13の眼用懸濁液は、請求項10の眼用懸濁液にお
いて、上記水性物質を含んだムチン状粒子は脂質状物質
担体剤に懸濁されているものである。
請求項14の眼用懸濁液は、請求項13の眼用懸濁液にお
いて、更に水性物質担体剤を含んでいるものである。
請求項15の眼用懸濁液は、請求項13又は14の眼用懸濁
液において、上記ムチン状粒子は脂質状物質と水性物質
の双方に懸濁されているものである。
請求項16の眼用懸濁液は、請求項1〜15のいずれか1
項の眼用懸濁液において、上記脂質状物質の少なくとも
一部分がムチン状粒子に含まれているものである。
請求項17の眼用懸濁液は、請求項1〜16のいずれか1
項の眼用懸濁液において、担体は、ムチン状粒子と、水
性物質と、脂質物質のうちの少なくとも2つが懸濁され
ている液状担体であるものである。
〔発明の作用及び効果〕
本発明に係る眼用懸濁液(以下、この項では懸濁液と
いう)は、従来技術の項で説明した周知のドラッグ・デ
リバリー・システムの全ての利点を有するとともに、そ
れらシステムの全ての欠点を取り除いたものである。
請求項1の眼用懸濁液においては、生体分解性物質か
らなる粒子の最大部分の寸法が少なくとも0.5mmであっ
て且つ1〜2mmの範囲に設定されているので、眼に投与
後生体分解性物質からなる粒子が徐々に分解していって
も、これら粒子が涙点(平均0.5mm)から短時間では排
出されずに長時間に亙って眼内に残留することになる。
従って、上記粒子に治療用薬剤或いは涙膜成分を予め含
ませておけば、眼内で粒子の分解に応じてそれらの薬剤
や涙膜成分が長時間に亙って眼に供給されることにな
り、また眼に残留する薬剤などの量が予測可能になる。
眼内に投与された状態において粒子の最小部分の寸法
が0.4mm〜0.7mm以下に設定されているので、眼に不快感
や痛みを感じさせることがない。上記寸法が小さすぎる
場合には粒子は眼内で徐々に分解していくので長時間に
亙って粒子の一体性を保持して眼内に残留させるのが難
しくなり、また上記寸法が0.7mmより大きい場合には眼
に不快感や痛みを招くことになるので好ましくない。
上記生体分解性物質からなる複数の粒子が眼に許容さ
れるpHの液体担体と軟膏担体との一方に懸濁されている
ので、投与の際に固形インサートの場合のように特殊な
技術や器具を用いることなく、極めて簡単に投与するこ
とが可能になる。しかも、投与後目ばたきしたときに固
形インサートのように眼から飛び出したりすることもな
くまた霧視を起こすこともなくまた不快感や痛みを引き
起こすこともない。
更に、上記粒子に眼用薬剤を担持させることが出来る
ので、この懸濁液は眼病治療の為の優れたドラッグ・デ
リバリー・システム(DDS)として適用することもでき
る。尚、粒子に薬剤を担持させるとともに粒子が懸濁さ
れる担体に薬剤を担持させることも出来る。加えて、涙
膜層の3成分(ムチン質、脂質、水分)の全てを含んで
いるので、眼に投与されたときには自然の涙膜に酷似し
た涙膜を形成する。従って、眼球乾燥症候群などの治療
において眼の乾燥を防ぐ非常に効果的な人工涙液であっ
て、眼に簡単に投与でき、長時間に亙って効く人工涙液
となる。
この請求項1に従属する全ての請求項の眼用懸濁液
は、少なくとも上記の作用・効果と同様の作用・効果を
奏する。
請求項2の眼用懸濁液においては、請求項1の眼用懸
濁液と同様に、涙膜層の3成分の全てを含んでいるの
で、眼に投与されたときには自然の涙膜に酷似した涙膜
を形成する。つまり、眼の乾燥を防ぐ非常に効果的な人
工涙液として機能する。生体分解性ムチン状粒子を脂質
状物質担体と水性物質担体の少なくとも一方に懸濁して
あるので、特殊な技術や器具を用いることなく簡単に投
与できる。また、固形インサートの場合のように霧視を
起こしたり目まばたきしたときに眼から飛び出すことも
ない。眼に投与された状態において生体分解性ムチン状
粒子は徐々に分解していくので、長時間に亙ってムチン
状物質を供給できる。
この請求項2に従属する全ての請求項の眼用懸濁液
は、少なくとも上記の作用・効果と同様の作用・効果を
奏する。
〔実施例〕
本発明による最も簡単な形態において、この眼用治療
薬システムは、以下に述べるように生体分解性物質から
なる特定の大きさの3次元の粒子を含み、粒子は眼に許
容されるpHの液体担体又は軟膏担体に懸濁されている。
懸濁に使用する溶媒は水性又は非水性の眼に許容される
無菌液体である。適用される非水性溶媒としては、シリ
コンオイル、USPミネラルオイル、ホワイトオイル、例
えばコーンオイルやピーナッツオイルなどの植物性オイ
ルなど生理学的に許容されるオイルを用いることが出来
る。
液体中に均一に粒子を分散するために、溶媒の濃度は
粒子の密度と等しくなるように設定する。従って、粒子
は液体の上部に浮遊したり下部に沈降することはない。
もし、溶媒の濃度が粒子の密度に等しくない場合には、
粒子を均一に分散させるために溶媒の粘度を調整する
か、或いは投与する直前に調合システムによる振動或い
は混合操作により粒子を均一に分散させる。
1つの実施例においては、治療薬用の溶媒には、pHを
調節し、適度な等張を与え、治療薬システムを保存する
ためなどに種々の物質を含ませるものとする。使用し得
る保存剤は、1:15000〜1:30000の範囲の濃度の塩化ベン
ザルコニウム、0.3%〜0.8%の範囲の濃度のクロロブタ
ノール、0.001%〜0.003%の範囲の濃度のチメロソル
(thimersosl)及び1:60000〜1:80000の範囲の濃度のフ
ェニル マーキュリック ニトレート(phenyl mercuri
c nitrate)を含んでいる。また、1つの好ましい実施
例においては、非保存単位又は日用投薬システムとして
使用される。粘性の増加、懸濁の促進、眼に対する適合
性を向上させるために、例えば0.1%〜0.7%の範囲の量
のメチルセルローズや0.4%〜2.0%の範囲の量のポリビ
ニルアルコールを添加することも有り得る。これらの添
加剤は周知のものである。これら種々の添加剤について
は、ロバート・ビー・マンデールの「Contact Lens Pra
ctice」(1965年発行、チャールズ・シー・トーマス発
行)の159頁〜165頁に詳しく記述されており、その一部
を参考までにここに引用した。
1つの好ましい実施例においては、懸濁のための溶媒
に代えて、粒子をラノリンやペトロラタムや他の周知の
軟膏などの軟膏に懸濁してもよい。
溶媒や軟膏剤に懸濁させる粒子は、眼の中で分解して
眼に吸収(又は再呼吸)されるため除去しなくてもよい
ように生体分解性の物質で生成すべきである。“生体分
解性”という用語は次のように定義される。即ち、ある
物質が眼の状況に反応して、例えば醗酵作用、加水分
解、イオン交換、可溶化による溶解、乳化或いはミセル
形成などの1つ又はそれ以上の物理的或いは化学的分解
過程により、長時間に亙ってユニット構造或いは被覆物
から害を及ぼすことなく壊れたり分解することである。
この粒子の生体分解は、眼窩の組織における粒子の生成
を防止するだけでなく、長時間に亙って薬剤の放出を制
御して治療を予測可能なものにする。
本発明の懸濁液の粒子に使用される生体分解性物質
は、無毒であり且つ共に投与される他の薬剤と整合する
ものでなければならない。1つの好ましい実施例におい
ては、生体分解性物質は、薬剤に浸漬されたときにその
薬剤を吸収出来ることが必要であり、また他の好ましい
実施例においては、生体分解性物質は、眼に投与される
薬剤や他の活性物質を全体に包み込む膜を形成すること
が必要である。
粒子は瞼の裏側に投与されたときに快適でなければな
らないし、例えば眼瞼間領域の瞼間の眼の表面に投与さ
れたときも同様に快適でなければならない。1つの好ま
しい実施例においては、粒子は柔らかく快適感を促進す
るものである。
合成物質と同様に生体分解性であって本発明に適用し
得るいくつかの自然物質(例えば、血清など)が有る。
生体分解性の合成ポリマーとして、ポリラクチドやポ
リグリコール酸がある。これらの生体分解性のポリマー
は分解されて二酸化炭素や水などの無害な物質になる。
また、これら合成ポリマーは市販されている。
有用なポリラクチドには単独重合体と共重合体が含ま
れる。通常、これらのポリラクチドは乳酸の環式エステ
ルから生成される。L(+)とD(−)型の乳酸を用い
てポリラクチドを生成することも出来るし、光学不活性
のDL−乳酸混合物或いはD(−)とL(+)型の乳酸の
任意の混合物を用いてポリラクチドを生成することも出
来る。
ポリマーマトリックスの寿命は使用される共モノマー
の量及び型により制御されるので、ラクチド共重合体は
ポリマーマトリックスの寿命の選択に柔軟性をもたらす
ので重要である。適用し得る共モノマーを複数例示する
と以下の通りである。
グリコリド、フロピオラクトン、テトラメチルグリコ
リド、ブチロラクトン、ガンマーブチロラクトン、ピバ
ロラクトン、 及びヒドロキシブチル酸、ヒドロキシイソブチル酸、
ヒドロキシバレリック酸、ヒドロキシイソバレリック
酸、ヒドロキシカプロイック酸、ヒドロキシーエチルブ
チル酸、ヒドロキシイソカプロイック酸、ヒドロキシー
メチルバレリック酸、ヒドロキシヘプタノイック酸、ヒ
ドロキシオクタノイック酸、ヒドロキシデカノイック
酸、ヒドロキシミリスティック酸、ヒドロキシステァリ
ック酸、ヒドロキシリグノシニック酸などの種々の酸の
分子間環式エステル、 及びフェニル乳酸。
ポリラクチドの生成方法は特許文献に詳しく記載され
ている。本発明において参考として引用した以下の米国
特許には、適用し得るポリラクチドとその特性及び生成
方法について詳細に記載されている。
ドローの米国特許No.1,995,970、シュナイダーの米国
特許No.2,703,316、ザルツベルクの米国特許No.2,758,9
87、ザイールの米国特許No.2,951,828、ヒギンズの米国
特許No.2,676,945及びNo.2,683,136、トレフの米国特許
No.3,531,561英国特許No.755,447、No.799,291、No.82
5,335、No.901,037、No.932,382、No.1,048,088、No.1,
123,445、西独特許No.946,664、No.975,191、No.1,112,
293、No.1,152,258、No.1,153,902、東独特許No.14,54
8、フランス特許No.1,425,333、No.1,478,694、No.1,51
2,182、オランダ特許No.99,836、オランダ特許出願No.
6,605,197、No.6,605,292、日本特許第17,675号(1966
年)、第7,796号(1967年)、第2,948号(1968年)、第
15,789号(1969年)。
ポリグリコール酸の有する優れた生体分解特性は最近
発見されたものである。ポリグリコール酸はグリコール
酸(ハイドロキシ酢酸)の単独重合体である。グリコー
ル酸をポリグリコール酸に変換する過程において、グリ
コール酸は初期にそれ自体で環式エステルグリコールを
生成するように反応し、この環式エステルグリコールは
加熱及び触媒により高分子量の線型鎖状ポリマーに変換
される。本発明において参考までに引用した1970年7月
11日発行の「Chemistry and Industry」の905頁の記事
“シアナミド研究所は世界初の吸収性合成縫糸を開発”
には、ポリグリコール酸とその特性についてより詳細に
記載されている。
ポリペプチドとポリグリコール酸の分子量は、マトリ
ックスの生体分解と薬剤の浸出の双方に極めて関係す
る。高分子量即ちMw=90,000以上のポリマーマトリック
スはその構造の一体性を長時間に亙って保持し、一方低
分子量即ちMw=30,000以下のポリマーマトリックスは低
速度で浸出しマトリックスの寿命は短いということが発
見されている。
好ましい粒子物質は、豚の鞏膜又は牛の皮から採取さ
れるコラーゲンであって紫外線で架橋したもの或いは紫
外線又はX線で架橋した他の形態のコラーゲンである。
コラーゲンの分子構造と生化学特性についての化学は
既に確立されている。生体物質としての利用とともに薬
剤供給の媒体としてコラーゲンの利用についてはよく知
られている。宮田等の米国特許No.1,464,559号には、薬
剤供給におけるコラーゲンの利用について記述した文献
が記載されている。「Annual Review of Biophysics an
d Bioengineering」(1974年発行、第3巻)の231頁〜2
53頁の宮田等の論文はその一例である。
他の例として、「J.Clin.Pharmacol」(1973年8月9
日発行)の第13巻309頁〜312頁には、ルビン等による
“薬剤供給のための媒体としてのコラーゲン”が記載さ
れている。
コラーゲンは角膜や皮膚などの結合組織の主たる蛋白
質であり、ペプシンのような蛋白質加水分解酵素(コラ
ーゲノーゼ以外の)で処理することにより可溶化し精製
される。可溶化されたコラーゲンは貧テロペプチドであ
り、比較的廉価で、抗原性がなく生体医用物質として有
益である。酵素により可溶化されたままのコラーゲンは
酸性pHにおいて溶性であり、生理学的pH及び体温でも溶
性である。
自然のコラーゲンは生理学的pH及び体温では非溶性で
ある。従って、除去しなくてもいいように眼の中で崩壊
させるために、自然のコラーゲンを変換しなければなら
ない。
宮田等の米国特許には、生理学的pHを有し通常の体温
の眼の中で崩壊し得る化学的に変質させたコラーゲンの
種々の形態が開示されている。
本発明の粒子として使用し得る他の物質は、コラーゲ
ンを選択的に加水分解して得られるゼラチンであって高
分子量の可水溶性蛋白質の複合体を含むゼラチンであ
る。
ここで使用する架橋ゼラチンという用語は、ゼラチン
又はゼラチン誘導体と、ゼラチン分子のハイドロキシ
ル、カルボキシル、或いはアミノ官能基の何れとも反応
するがゼラチン分子のペプチド結合とは反応しないよう
な架橋剤との反応生成物を意味する。架橋反応によって
得られた生成物は、架橋間において20〜50000の平均分
子量を有することが望ましいが、それ以上の分子量であ
っても使用し得る。これらの反応生成物は、眼の中で長
時間に亙って生体分解する。
架橋ゼラチン物質とその生成方法は周知である。ゼラ
チンの架橋の度合は処理条件に依存するとともにゼラチ
ンの生体分解性に著しく影響を及ぼす。架橋剤として
は、例えば、アルデヒド、C1-C4アルデヒドなどのモノ
アルデヒド、デアルデヒド、エポキシド、パラベンゼン
キノン、及び水性過酸化硫酸塩が適用出来る。
アルデヒドとケトンは、特にC1〜C4のアルデヒドとケ
トンであることが望ましく、ホルムアルデヒドは架橋剤
として最も望ましい。
照射はゼラチンの架橋に適した一つの方法である。例
えば、「J.Poly Sci.,」(1961年発行、54,321号)に
は、山田と津田が照射による架橋について紹介してい
る。
ゼラチン100g中には、反応性のヒドロキシル基、カル
ボキシル基及びアミノ基が夫々100meq、75meq及び50meq
と適量に含有されている。これらの量は架橋剤の使用量
を設定するうえで指針となる。
架橋されたゼラチンは、眼液に対して比較的透過性が
あり、ゼラチンを介してある程度薬剤が分散される。従
って、架橋ゼラチンは、分散メカニズムにより薬剤を放
出する放出レート制御物質の好例である。
粒子として使用し得るその他の物質としては、ポリビ
ニールアルコールのポリマー、メチルセルロース、カル
ボキシルメチルセルローズ、ハイドロキシプロピーメチ
ルセルローズ、及びリシチンとコレステロールと脂肪ア
ルコールとその他関連する物質などを含む種々の脂質な
どがある。また、粒子はメチルセルロース誘導体や上記
の生体分解性物質の混成物質を含んでもよい。更に、治
療薬システムは、異なる成分を有して分解速度が異なる
ような種々の粒子を含んでもよい。更に、ある生体分解
性物質は、眼に供給すべきある種の活性剤の吸収や放出
にとってより優れたものであると考えられる。
結晶性は浸出と生体分解性に影響を及ぼす。高い結晶
性を有するポリマーマトリックスの浸出速度は低く生体
分解性も低い。結晶性は物理的特性にも影響を及ぼすこ
とは知られている。このことは、フロリーとポール・ジ
ェーとの共著「Principles of Polymer Chemistry」(1
966年発行、第5版)の49頁以降に記載されている。重
合体は高い結晶性を有しているため、ポリマーの膜を通
る気体の拡散は緩慢であることは文献に記載されてい
る。「J.Poly.Sci.,」(1961年発行、第50巻)の413頁
〜439頁には、マイケル・エー・エスとビックスラーと
の共著である“ポリエチレン及びゴム状ポリマーを通過
する気体の流れ”を参照のこと。
薬剤放出の良好な制御量は、ポリマーマトリックスに
おける適当な結晶度と分子量を選ぶことにより得られ
る。例えば、比較的長時間持続して放出させることが望
ましい場合には、乳酸の純粋光学異性体から生成される
高分子量ポリマーをマトリックスとして用いることが出
来る。一方、短時間に急速に放出させることが望ましい
場合には、低結晶度の低分子量ラクチド共重合体を合成
してポリマーマトリックスとして用いることが出来る。
当業者であれば実験により、所望の放出速度と放出持続
時間を得るためのポリラクチド又はポリグリコール酸の
結晶度と分子量についての数多くの適当な組合わせを決
定することが出来るであろう。
1つ又はそれ以上の上記パラメータを用いて、種々の
浸出速度と生体分解性を有するポリマーマトリックスを
設計することが出来る。マトリックスの寿命が有効な薬
剤供給期間よりも長く又は短く或いは等しくなるように
種々のマトリックスを合成することが出来る。マトリッ
クの寿命を短くすると、薬剤供給は薬剤の浸出とマトリ
ックスの生体分解の組合わせで決まる。マトリックスの
寿命を長くすると、薬剤供給は薬剤の浸出だけで決ま
る。本発明の薬剤供給システムの設計に柔軟性をもたら
したことは大変重要なことである。
更に、本発明の粒子は1つの好ましい実施例において
は瞼と眼からの圧力により変形するように柔らかく且つ
展性に富んでいることが必要である。眼に投与されるま
でに懸濁される溶媒又は油性溶剤中で溶解することはな
い程度まで粒子は半固形であってもよい。
半固形粒子を生成する好ましい方法においては、投与
する直前にゼラチン、コラーゲン或いはポリマーなどの
物質に含水させるか、或いは脱水作用のない混成物又は
軟膏のベースに柔らかい含水固形物を保持する。
一般に、粒子を水性溶液に浸漬して粒子内に水を侵入
させることにより含水させる。患者に投与されるときに
は、粒子は含水状態でなければならない。
生体分解性物質粒子は、上記の水性溶液担体に浸漬さ
れて含水する。水性の担体は粒子に含水させ、粒子を上
記担体中に放置しておけば粒子は脱水されない。
また、生体分解性物質を薬剤を含んだ溶液に浸漬して
含水させることが出来る。薬剤を吸収した粒子を水性担
体又は軟膏担体中に保持することにより脱水を防止でき
る。軟膏に分散させると、水分が粒子中に保持され、脱
水は軟膏担体により防止される。
生体分解性粒子の物質として脂質を使用した場合に
は、脂質は柔らかく展性に富んているので含水する必要
はない。
本発明の粒子として使用し得る物質を展性に富む形態
にするその他の方法は知られている。
可塑剤は柔らかく展性に富む粒子を生成する最も好ま
しい手段ではないが、大型の生体分解インサートを開示
したコーヘン等の米国特許No.4,179,497には、本発明に
使用し得る可塑剤の数例が記載されている。使用する可
塑剤の要件は、眼の中で完全に溶解することである。適
当な可塑剤としては、水、ポリエチレン−グリコール、
プロピレン−グリコール、グリセリン、トリメチロー
ル、プロパン、ディプロピレン−グリコールとトリプロ
ピレン−グリコール、ヒドロキシプロピル−サクローズ
などがある。可塑剤は粒子中に種々の範囲で含んでいて
もよい。可塑剤を使用する場合に柔らかさと展性を付与
するのに最も好ましい方法という訳ではないのが、20%
以下の可能な限り低濃度の可塑剤を使用すべきである。
コーヘン等は固形インサート生成品を水で可塑化する
方法を記載している。本発明に適用する場合には、粒子
中の水分が少なくとも約5%になるまで相対湿度が少な
くとも約40%の空気に粒子を接触させることにより、粒
子を柔らかくしなやかにする。好ましい実施例において
は、空気の好ましい湿度は約60%〜約99%であって、粒
子中に約10%〜約20%の水分が含有されるまで接触させ
る。
分散される薬剤と適合可能で、無毒性で、望ましいカ
プセル化特性又は薬剤分散特性と適当な拡散及び分散特
性を有するならばどのような生体分解性物質でも使用す
ることが可能である。上記の物質は好ましい実施例の例
示であって、本発明の懸濁液の粒子に使用し得る物質を
制限するものではない。
好ましいある実施例においては、生体分解性物質の粒
子中に薬剤を含ませる。薬剤は生体分解性物質中に分散
されることもあり得るし生体分解性物質によりカプセル
化することも出来る。ここで“薬剤”という用語はもっ
とも広義の意味で使用され、あらゆる哺乳動物に使用さ
れる全ての薬剤を含むものである。眼の治療に有益な薬
剤は特に望ましいが、本発明は眼の治療用の薬剤に限定
されるものではない。本発明において定義される“薬
剤”という用語は、治療用薬剤、予防用薬剤、診療用薬
剤及びその他の薬剤などの分類の薬剤を含むが、これら
の薬剤に限定されるものではない。ここで述べなかった
種々の分類及びサブ分類の薬剤又は特殊な薬剤も本発明
に適用可能であり、周知の薬剤及び当業者が容易に確認
し得るその他の薬剤も本発明に適用し得るものである。
懸濁液の粒子中に含ませるのに適していて、周知の投
薬量及び用法に適合する薬剤としては、以下の眼の治療
薬があるが、これらに限定される訳ではない。
抗生剤: テトラサイクリン、クロロテトラサイクリ
ン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラ
ミシディン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニ
コール、ジェンタマイシン、ペニシリン、カナマイシ
ン、アミカシン、シソミシン、トブラマイシン、ガラマ
イシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、エリ
スロマイシンなど。
抗菌剤: スルホンアミド剤、スルファセタミド、スル
ファメチゾール、スルフィソエキサゾールなど。
抗ビールス剤: イドグリディン(idoxuridine)。
その他の抗菌剤: ニトロフラゾン、ナトリウムプロピ
ネートなど。
抗アレルギー剤: アンタゾリン、メタピリリン、クロ
ルフェニラミン、ピリラミン、プロフェンピリダミンな
ど。
抗炎症剤: コルチソン、ヒドロコルティソン アセテ
ート、デキサメタソン、デキサメタソン−21リン酸エス
テル、フルオシノロン、ミドリソン、プレドニソロン
アセテート、フルオロメソロン、ベタメタソン、フルオ
コルトロン、インドメタシン、トリアムシノロンなど。
血管収縮剤: フェニルフェリン、ナファゾリン、テト
ラヒドラゾリンなど。
瞳孔縮小剤とコリンエステラーゼ阻害剤: ピロカルピ
ン、エセリン、サリシレート、カルバコール、ディイソ
プロピル フルオロリン酸エステル、フォスフォリン
ヨウ化物、エコティオフェート(echothiophate)、フ
ィソスティグミン、臭化デメカリウムなど。
散瞳剤: 硫酸アストロピン、サイクロペントレート、
ホモトロピン、スコポラミン、トロピカミド、ユウカト
ロピン、ヒドロキシアンフェタミンなど。
交感神経作動剤: エピネファリン(epinephrine)な
ど。
免疫抑制剤: サイクロスポリン、アザチオプリンな
ど。
人工涙液システムとしての実施例において、本発明
は、最も簡単な形態として、生体分解性ムチン物質粒子
と脂質物質と水性物質とを含むシステムを提供する。粒
子は担体としての脂質物質或いは水性物質中に懸濁され
る。従って、3つの層の物質が簡単に投与出来る懸濁液
に含んでいる。
特に好ましい実施例においては、生体分解性物質の粒
子は、自然の涙膜層の成分に追加して或いは涙膜層の成
分を含まずに、自然の涙液の他の種々の成分を含むこと
もある。添加される涙液成分物質は、生体分解性粒子に
分散されたり、生体分解性物質に封入されたり、或いは
液体又は軟膏担体に含ませられる。このように、好まし
い実施例によれば、人工涙液生体分解性粒子に含ませる
ことの出来るその他の物質は、グリコプロテインムチ
ン、リポ蛋白質、アルブミンやグロブリンやリソジムグ
ルコースなどの蛋白質、涙尿素及び眼に適当なpHをもた
らすその他の成分である。
別の有益な実施例によれば、人工涙液として点眼薬に
用いられて来た局処溶液は外側のコーティングが分解す
るのに応じて人工涙液が長時間に亙って眼に放出される
ように、生体分解性粒子に封入してもよい。
上記ムチン状物質は、涙膜のムチン成分層に類似して
いなければならない。従って、ムチン状物質は角膜と結
膜上皮細胞上の水性物質を保持するように作用しなけれ
ばならない。前述したように、上皮細胞膜はリポ蛋白質
から構成されているので、比較的疎水性であるため、そ
の表面を水性の溶液だけで潤すことは出来ない。ムチン
は上皮細胞膜の表面を潤すうえで重要な役割をする。ム
チンの一部は角膜上皮細胞膜に吸着され、表面上皮細胞
のマイクロビリ(microvili)により係留される。この
ようにして涙液が拡散し得る親水性表面が形成され、そ
の表面は涙液の表面張力が低下することにより潤う。
このように、本システムのムチン状物質は水性物質を
上皮細胞の表面に保持することが必要である。この水性
物質は自然の涙液でもよいし、本システムにより供給さ
れる水性物質でもよい。このようにして、ムチン状物質
粒子は、涙膜の自然のムチン成分と同様に眼に水性物質
を留める。
上記したいくつかの自然発生又は合成の生体分解物質
は、本発明のムチン状物質に適用出来る。
涙液システムにおいて、半固形粒子を生成する好まし
い方法には、ゼラチン、コラーゲン、或いはポリマーな
どの物質を投与直前に含水させたり、柔らかい含水され
た固体を脱水性のない混合物や軟膏ベース中に保持する
ことが含まれる。含水は粒子を柔らかくし展性を付与す
るだけでなく、含水時に粒子に含まれた水は少なくとも
水分としてシステムに供給される。一度投与されると、
ムチン状物質粒子は自然のムチンと同様に作用し眼に水
分を繋ぎ留める。このように、含水された粒子は、水が
液体担体として使用されたときの水分に加えて水分を供
給する。更に、含水された粒子が脂質軟膏又は油性担体
中に保持されると、軟膏又は油性担体は疎水性なので、
それらは水分を粒子中に留めるように作用する。このよ
うに、軟膏又は油性担体を用いることにより、本発明
は、含水粒子中の水分を涙膜の水成分として供給でき
る。
通常、粒子を水性溶液に浸漬して含水させる。患者に
投与するときには、粒子は含水状態でなければならな
い。
生体分解性物質粒子は、上記のように水性溶液担体中
に保持することにより含水させることが出来る。水性担
体は粒子を含水させ、粒子を担体中に放置すると、脱水
が防止される。
また、生体分解性物質を水吸収性溶液に浸漬して含水
させることが出来る。薬剤吸収粒子を水性担体又は軟膏
担体に保持することにより、脱水は防止される。軟膏に
分散させると、水分は粒子中に保持され、軟膏担体によ
り脱水が防止される。
脱脂状物質は粒子状にして供給してもよいし、及び/
又はムチン状物質粒子のための液状担体又は軟膏担体の
形態で供給してもよい。脂質状物質は、リン脂質、糖脂
質及びコレステロールなど周知の脂質を全て含んでいて
もよい。更に、脂質はワックス、レシチン、脂質アルコ
ール及び脂肪酸の形態であってもよい。また、脂質は軟
膏担体としての或いは懸濁粒子小球体としてのペトロラ
タムの形態であってもよい。ここで定義される“粒子”
という用語は、小球体又は半固形塊を意味する。水性担
体に懸濁した状態において、脂質はミセル、リポゾー
ム、バイレイアー(2層体)小球体或いはその他の形態
であってもよい。更に、担体媒体は油などの脂質状物質
と水性物質の双方を含む2成分媒体であってもよい。こ
のようなシステムは、2つの担体成分を混ぜるために投
与直前に充分に振動させなければならない。
涙膜の脂質層の機能は滑らかな表面を形成することで
あって、水分層の蒸発を抑制すると考えられている。無
毒性でこれらの目的を達成するあらゆる物質は脂質状物
質として用いることが出来る。脂質状物質は不連続層に
対して単層の又は連続した水性表面を形成する。
脂質が眼に投与されると、例えば眼の体温により溶解
したり、或いは加水分解などのように眼の中の酵素によ
って分解される。従って、もし脂質物質が担体中に粒子
又は半固形粒子として懸濁されていると、脂質粒子は分
解しないが、眼に投与されると、脂質粒子は分解して涙
膜の脂質層をなす脂質物質を供給する。
従って、本発明による人工涙液システムは、投与の簡
単な懸濁液でもって自然の涙膜の3成分の全てと同等な
ものを供給する。懸濁システム中の3成分の夫々の形態
についてはいくつかの組合せが考えられる。本発明のシ
ステムは特定の形態或いは形態の組合せに限定されるも
のでない。担体が水分及び/又は脂質を供給するように
なっていてもよい。同様に、本発明の懸濁液の粒子はム
チン成分、脂質成分及び水分のあらゆる組合せを供給す
るようになっていてもよい。その他の有利な実施例によ
れば、人工涙液粒子は油性又は脂質媒体中に懸濁されて
いてもよい。
本発明の生体分解性粒子を形成するのに用い得るいく
つかの方法がある。
1つの方法においては、平らな表面上に注入された生
体分解性物質の液又は混合物が用いられる。次に、生成
された膜は、溶剤が蒸発するにつれて乾燥する。膜が乾
燥すると、周知の方法により個々の粒子に切断される。
膜を切断して個々の粒子を生成するには種々の方法があ
る。たいていの実施例においては、切断は適当な寸法に
予め形成されたモールドカッターを用いて行う。
膜厚が粒子の最小部分の寸法である場合には、膜厚は
0.5mm以下でなければならない。生体分解性物質の適当
な液相を用意することによりこの厚さを保証し得る。例
えば、ゼラチン、コラーゲン或いはカルボキシ メチル
セルローズの溶液を乾燥させて所定の形状及び大きさに
切断するか適当な型内で乾燥させればよい。
好ましい実施例によれば、生体分解性物質の液体混合
物は所望の厚さとなるように底の浅い皿又は半型に注入
される。皿又は型の周縁には注入の深さを示すマークが
付けられている。このようにして、適当な厚さが確保さ
れる。乾燥後、粒子は縦方向及び横方向に切断される。
好ましい実施例においては、生体分解性物質の液相は
含水されていない(即ち、溶剤が水性ではない)。更
に、もし液相が注入中に含水された場合には、膜又は成
形物は乾燥時に脱水される。ある実施例においては、膜
又は切断された粒子は次に水性溶液に浸漬されて含水さ
れる。含水された膜又は粒子はその水分に応じてある程
度膨張する。従って、含水していない生体分解性物質の
膜厚を決定する場合には、より薄く注入することにより
含水により増加した膜厚を補償しなければならない。し
かし、含水により、粒子は柔らかく且つ展性に富んだ状
態になっている。従って、投与したときに粒子は眼と瞼
間の力により望ましい厚さに圧縮されるので、粒子は好
ましい厚さの範囲である0.4mm〜0.7mmよりも厚くなって
いてもよく、また、粒子は柔らかいので、上瞼と下瞼間
に投与された場合でも、眼になじみ快適である。
ある好ましい実施例において、含水した膜の好ましい
厚さ(最小部分の寸法)は、約0.5mm〜0.75mmの範囲で
ある。しかし、展性に富み特に半固形の場合には、眼と
瞼間に投与された粒子は圧力により適当な厚さに圧縮さ
れるならば、最小部分の寸法が1mmであってもよい。
膜の注入は厚さを制御する1つの方法にすぎない。他
の方法としては、適当な寸法の型に注入し、乾燥させた
塊を適当な厚さに切断する方法がある。粒子の厚さを特
定の値に設定する方法は上記の例に限らない。
適当な寸法に形成する方法とはかかわりなく、好まし
い大きさの範囲について以下に述べる。
3次元粒子の最小部分の寸法は、眼に投与した状態に
おいて約0.4〜0.7mm以下の厚さでなければならない。粒
子の成分により、もし眼の中で圧縮されないようであれ
ば、粒子を上記の最小寸法に切断するか或いはこの厚さ
の膜を用いなければならない。しかし、好ましい実施例
においては、生体分解性物質は展性を有するように生成
され、粒子が眼と瞼間の圧力により適当な大きさの範囲
に圧縮変形されるならば、上記所定の最小寸法の範囲よ
りも大きく切断してもよい。粒子に展性を付与するため
の方法は既に述べた。正確な大きさは特定された物質と
それら物質の歪度によって変わるが、好ましい実施例に
よれば、眼の中で圧縮される粒子でも、眼に投与される
前の最小寸法が0.4mm〜1.0mm以下になるように切断され
なければならず、眼に投与された状態において0.4mm〜
0.7mm以下の範囲に圧縮されなければならない。
粒子の最大部分の寸法は少なくとも0.5mmでなければ
ならない。眼の排泄系には、上瞼と下瞼双方の縁部(上
瞼と下瞼の中間隅部)における開口又は孔をなす涙点が
ある。涙点の平均の直径は0.5mmである。涙点は、排泄
管即ち眼の領域から物質を排出する排泄システムをなす
涙小管の開口部である。物質は涙小管を通り、涙嚢と鼻
涙管を通過する。従って、涙点を介しして眼から粒子を
排出させない為に、粒子の最大部分の寸法は涙点の大き
さよりも大きくなければならない。0.5mmという大きさ
は、最大部分の寸法の最小値にすぎないということに留
意して頂きたい。好ましい実施例によれば、通常粒子の
最大部分の寸法は1〜2mmであるが、投与物質の量を極
限にまで増加させるために4mm或いはそれ以上にしても
よい。好ましい実施例においては、3番目の寸法即ち幅
を約0.5mm又はそれ以上にすることが望ましく、これに
より粒子の涙点からの排出を防止できる。
上記の2つの寸法のバランスは、眼の領域から排出さ
れることがなく且つ涙点から排出されないような大きな
粒子を含んでいても眼に損傷や痛みを引き起こさないよ
うなシステムを可能にする。こうして、眼に痛みを引き
起こすことなく、また特別な挿入器具を用いた細かい治
療を必要とせずに、長時間に亙る連続した治療を施すこ
とが出来る。
粒子は、球状、半球状、多角形ディスク状、円形ディ
スク状、卵形粒子状、立方体状、長方形状、細長い長方
形状、円柱状、ロッド状、細長いスパゲッティ状、細長
い箱状、細長いリボン状及びその他の形状に生成するこ
とが出来るがこれらの形状に限定されるものではない。
上記のように、ある好ましい実施例においては、薬剤
は粒子中に分散される。この薬剤を分散するのに、膜を
生成する前の液状の生体分解性物質に薬剤成分を加え、
次に薬剤を温号し、次にその膜を注入し、最後に膜を切
断して粒子を形成してもよい。他の有利な実施例によれ
ば、薬剤は膜を切断して生成された粒子に添加される。
これらの実施例においては、切断された生体分解性粒子
は薬剤溶液中に浸漬されて薬剤を吸収する。薬剤を粒子
中に含有させた後、その粒子は溶媒に懸濁される。
異なる濃度の薬剤溶液に粒子を浸漬することにより、
粒子中の薬剤の量を変化させることが考えられる。更
に、生体分解性物質の種類が異なると、吸収する薬剤量
も異なる。従って、異なる種類の生体分解性物質を用い
ることにより薬剤量を変化させることが出来る。更に、
粒子の密度を変化させると、薬剤の吸収量が異なってく
る。例えば、粒子の物質密度を増加させると、密度が低
い場合よりも薬剤の吸収量は少なくなる。
第1図は、1つの好ましい実施例に係る粒子10の形態
を示し、粒子10は生体分解性物質12とその中に分散され
た薬剤14とを含んでいる。
また、生体分解性物質のコーティング内に薬剤を封入
してもよい。成形でカプセル化してもよい。生体分解性
物質が液状或いは粒子状であるときに薬剤を添加し、そ
の混合物を破砕又は他の方法によりマイクロカプセルに
してもよい。また、薬剤の乾燥微粒子を空気流中に懸架
し、その乾燥微粒子を生体分解性物質の壁で覆うように
その空気流に生体分解性物質の流れを接触させることに
より、薬剤の微粒子をコーティングしてもよい。
マイクロカプセル化する別の適当な方法はコアスサベ
ーション技術である。コアスサベーション技術では、先
ず液体生成相とコア物質相と液体コーティング相からな
る3つの非混和相を形成する。コア剤に液体コーティン
グ剤が塗布され、通常、熱処理、架橋又は脱溶剤処理に
より、コーティング剤は硬化される。
第2図には、ある好ましい実施例に係るカプセル化粒
子20が図示され、生体分解性物質からなるコーティング
剤12が薬剤14を被覆している。
第1図・第2図に示すように、粒子が生成されると、
それらは溶剤又は軟膏剤16に懸濁される。眼用治療薬シ
ステムには、種々の薬剤が分散された種々の粒子を含ん
でいてもよい。更に、治療薬システムには、異なる分解
速度となるような種々の生体分解性物質を含んでいても
よく、こうして眼に物質を長時間連続して放出させるた
めの除放システムが提供される。
投薬毎に、約5〜10個の粒子が投与されるが、粒子数
はこの数に限定されるものではない。しかし、この投薬
量は、薬剤の濃度、剤種、特殊な患者に必要な治療或い
は特定の状況によって変えるものとする。簡単に自己投
与できる従来の点眼液容器に懸濁液粒子を収容すること
も出来る。ある好ましい実施例では、粒子は単一の投薬
容器に収容される。このように、全投薬量が単一の容器
に収容され、患者はその容器の端部を開封して眼に懸濁
液を滴下する。こうして、適切に投薬することが出来
る。前述したように、溶媒中に粒子を均一に分散させる
ために、溶媒の濃度又は粘度を設定してもよいし、或い
は投与する直前に振動を与えることにより粒子を均一に
分散させてもよい。
本発明独特の応用例においては、薬剤が分散された溶
剤が用いられる。こうして、溶媒中に薬剤を分散させ且
つ粒子に同じ薬剤を含ませておいてもよい。従って、溶
液中の高濃度の薬剤が眼に投与され、生体分解性粒子に
より長時間薬剤が投与される。更に、溶液中の薬剤と異
なる薬剤を分散させた粒子を用いることも考えられる。
こうして、状況に応じて、溶液に高単位に溶解させるの
に有利で且つ長時間に亙る必要のない薬剤は溶液に含ま
せ、長時間の投薬を必要とする薬剤は粒子中に含ませて
おいてもよい。薬剤との親和性を高めるために、担体に
は例えばアルロニック酸などの成分を含んでいてもよ
い。
ある好ましい実施例では、粒子行は標準的な眼軟膏担
体に分散される。次に、眼軟膏は標準的な操作により眼
に投与される。例えば、患者の顔を上向きにして下瞼を
反転させ、軟膏を結膜嚢に塗布する。軟膏を溶解させる
ために約1分間瞼は閉じなければならない。
本発明の有利な特徴によれば、懸濁された薬液の濃度
に応じて薬剤を吸収する特定の生体分解性物質を用いる
ことも可能である。種類の生体分解性物質を異なる濃度
の薬液に浸漬させることにより、これら薬液の濃度に応
じて異なった複数の薬剤量を投与することが出来る。こ
のように1つの生体分解性質物質を薬剤が含有された溶
液中に投入することにより、粒子と溶液間の平衡により
正確な濃度と反応持続時間が決定される。
以下に述べる例はあくまで例示のためのもので、本発
明の技術的範囲を限定するものではない。
<第1例> A. 架橋コラーゲン粒子の懸濁液を次のように準備す
る。
90℃、40gの緩衝液に9gのコラーゲンを撹拌しながら
徐々に添加する。上記緩衝液は、1の蒸留水と、7.1g
のリン酸水素二ナトリウムと、6.9gのリン酸水素ナトリ
ウムの一水和物から生成される。緩衝液のpHは6.8とす
る。40mlの上記リン酸緩衝液と0.15gのクロロブタノー
ルとを加熱及び撹拌により結合される。尚、緩衝液を室
温まで冷却した後に,コラーゲンを緩衝液に添加し、次
に、コラーゲンが完全に溶解するまでこの混合液を90℃
まで加熱してもよい。
40℃に下がるまで混合液を4分間十分撹拌し、次に乾
燥した時の厚さが約0.4mm〜0.7mmの範囲になるような深
さまで混合液をポリ塩化ビニル製の皿に注入する。こう
して生成した膜を室温で1日間乾燥させる。
13.1gの38%ホルムアルデヒド試薬を487gのリン酸緩
衝液(pH 6.8)に添加してホルムアルデヒド溶液(重
量比率 1%)を準備する。上記コラーゲン膜をこのホ
ルムアルデヒド溶液に室温で20分間浸漬し、次に素早く
水ですすぎ、その後2時間氷水に浸漬する。次に、氷水
から膜を取り出し、一晩乾燥させる。
次に、乾燥させた膜をモールドカッタで1つ1つの粒
子に切断する。モールドカッタにより、直径1mm、乾燥
膜の厚さである厚さ0.4mmのディスク型粒子が形成され
る。
B. 次に、上記粒子を25℃のトブラマイシンの溶液に15
分浸漬する。溶液中の薬剤濃度は40mg/mlである。粒子
は薬剤溶液を吸収する。
その後、粒子を溶液から取り出し、2時間乾燥させ
る。
無菌蒸留水と、1%w.のポリビニルアルコールと、0.
004%の塩化ベンザルコニウムからなる溶媒を準備す
る。
担体剤0.25ccにつき約5個の粒子を含有する懸濁液を
準備する。上記懸濁液は、ディスペンサー30により眼に
滴下することが出来る。第3図に示すように、下瞼32を
下方に引っ張り、懸濁液34を下瞼32と眼38の間の領域36
に滴下する。1回の投与には約3〜6個の粒子が含ま
れ、約6時間連続してトブラマイシンが供給される。
<第2例> 懸濁用の粒子を第1例と同様に準備する。次に、無菌
蒸留水と、1%w.のポリビニルアルコールと、0.004%
の塩化ベンザルコニウム及び0.1%のデキサメタソンか
らなる溶媒に粒子を懸濁させる。上記懸濁液には、0.25
ccの担体剤につき約5個の粒子が含まれている。投与剤
に、少なくとも20分間粒子を懸濁させなければならな
い。上記懸濁液は第1例と同様にして患者に投与され
る。
<第3例> 第1例と同様にして軟膏懸濁液用の粒子を生成する。
次に、粒子を25℃のガラマイシンの溶液中に20分間浸漬
する。溶液中の薬剤濃度は40mg/mlである。粒子は薬剤
溶液を吸収する。
次に、ガラマイシンを含んだ粒子をペトロラタム軟膏
(40%:固体ペトロラタム、60%:液体ペトロラタム)
に懸濁させる。
上記軟膏は、大きな開口のディスペンサーを有するチ
ューブにより患者に投与される。
<第4例> 治療液懸濁液は第1例と同様に生成されるが、液状の
生体分解性物質の混合物をポリ塩化ビニル製の皿に注入
せずに、型に注入する。型により、粒子を厚さ約0.4m
m、直径約1.0mmの半球状に成形する。
<第5例> A. 90℃、40gの緩衝液に9gのコラーゲンを撹拌しなが
ら徐々に添加する。上記緩衝液は、1の蒸留水と、7.
1gのリン酸水素二ナトリウムと、6.9gのリン酸水素ナト
リウムの一水和物から生成される。緩衝液のpHは6.8と
する。40mlのリン酸エステル緩衝液と0.15gのクロロブ
タノールとを加熱及び撹拌により結合させる。尚、緩衝
液を室温まで冷却した後に,コラーゲンを緩衝液に添加
し、次に、コラーゲンが完全に溶解するまでこの混合液
を90℃まで加熱してもよい。
リン酸緩衝液5mlにつき3gのシクロスポリンを懸濁さ
せる。コラーゲン溶液が約50℃に冷却したときに、上記
混合液を撹拌されたコラーゲン溶液にすぐに添加する。
この混合液が40℃に下がるまでに4分間十分撹拌し、次
に乾燥した時の厚さが約0.4mm〜0.7mmの範囲になるよう
な深さまで混合液をポリ塩化ビニル製のシートに注入す
る。このようにして生成した膜を室温で1日間乾燥させ
る。
13.1gの38%ホルムアルデヒド試薬を487gのリン酸緩
衝液(pH 6.8)に添加して1%のホルムアルデヒド溶
液(重量比率)を準備する。上記コラーゲン膜をこの緩
衝用のホルムアルデヒド溶液に室温で20分間浸漬し、次
に素早く水ですすぎ、その後2時間氷水に浸漬する。次
に、氷水から膜を取り出し、一晩乾燥させる。
次に、乾燥させた膜をモールドカッタで1つ1つの粒
子に切断する。モールドカッタにより、直径1mm、乾燥
膜の厚さ0.4mmのディスク状粒子が形成される。
B. その後、無菌蒸留水と、1%w.のポリビニルアルコ
ールと、0.004%の塩化ベンザルコニウムからなる溶媒
に上記粒子を懸濁する。
担体剤0.25ccにつき約5個の粒子を含んだ懸濁液を準
備する。
その後、上記懸濁液は第1例と同様に患者に投与され
る。
<第6例> 無菌蒸留水と、1%w.のポリビニルアルコールと、0.
004%の塩化ベンザルコニウムからなる液体担体剤を準
備する。
第1例の粒子と同様に、担体剤0.25ccにつき約5個の
コラーゲン粒子を含んだ懸濁液を準備する。また、上記
担体剤に半固形のペトロラタムの小球体を約5個添加す
る。これらの小球体は約0.5mm×1mm×1mmの大きさであ
る。懸濁液はディスペンサー30により眼に滴下される。
第3図に示すように、好ましい実施例においては、下瞼
32の下方に引っ張り、懸濁液34を下瞼32と眼38の間の領
域36に滴下する。1回の投与には約3〜6個の粒子が含
まれ、約6時間連続して涙膜成分が供給される。
<第7例> 第1例と同様にして、軟膏懸濁液用の粒子を準備す
る。その後、粒子を無菌蒸留水からなる溶媒に20分間浸
漬して含水させる。
含水された粒子はペトロラタム軟膏(40%固体ペトロ
ラタム、60% 液体ペトロラタム)に懸濁する。上記軟
膏は、大きな開口のディスペンサーを有するチューブに
より患者に投与される。
<第8例> 治療薬懸濁液は第1例と同様に生成するが、液状の生
体分解性物質の混合物を型に注入する。型により、粒子
を厚さ約0.4mm、直径約1.0mmの半球状に成形する。
本発明を詳細に説明したが、上記はただ例示にすぎず
本発明を制限するものでない。本発明の思想と技術的範
囲は添付した請求項の文言によってのみ制限されるべき
である。
【図面の簡単な説明】
第1図〜第3図は本発明の実施例を示すもので、第1図
は生体分解性物質粒子の拡大図、第2図は別実施例に係
る生体分解性物質粒子の拡大図、第3図は結膜嚢への治
療薬システムの投与を示す説明図である。 10……粒子、12……生体分解性物質、 14……薬剤、16……軟膏剤、20……カプセル化粒子、34
……懸濁液。

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】最大部分の寸法が少なくとも0.5mmの大き
    さであって且つ1〜2mmの範囲にあり且つ眼に投与され
    た状態において最小部分の寸法が0.4mm〜0.7mm以下であ
    る生体分解性物質からなる複数の3次元粒子と、上記粒
    子が懸濁される担体であって眼に許容されるpHの液体担
    体と軟膏担体との一方を含んでいる懸濁液であって、 眼に投与された状態においてムチン状物質を放出し、眼
    内に水性物質を保持する為の親水性の表面を形成する複
    数の生体分解性ムチン状粒子と、 眼に投与された状態において脂質状物質を放出し、眼内
    の水性物質の蒸発を抑制する為の層を形成する脂質状物
    質と、 眼に投与された状態において水性物質を放出する水性物
    質とを含んでおり、 上記ムチン状粒子が上記脂質状物質担体と上記水性物質
    担体の少なくとも一方に懸濁されている人工涙液として
    の懸濁液であることを特徴とする眼用懸濁液。
  2. 【請求項2】眼に投与された状態においてムチン状物質
    を放出し、眼内に水性物質を保持するための親水性の表
    面を形成する複数の生体分解性ムチン状粒子と、 眼に投与された状態において脂質状物質を放出し、眼内
    の水性物質の蒸発を抑制するための層を形成する脂質状
    物質と、 眼に投与された状態において水性物質を放出する水性物
    質とを含んでおり、 上記ムチン状粒子が上記脂質状物質担体と上記水性物質
    担体の少なくとも一方に懸濁されている人工涙液である
    ことを特徴とする眼用懸濁液。
  3. 【請求項3】上記ムチン状粒子がコラーゲン、ゼラチン
    又は血清のうちの少なくとも1つからなることを特徴と
    する請求項1または2の眼用懸濁液。
  4. 【請求項4】上記脂質状物質の少なくとも一部分が粒形
    であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項の
    眼用懸濁液。
  5. 【請求項5】上記脂質状粒子は、ペトロラタム、脂肪
    酸、脂肪性エステル、ワックス、脂肪性アルコール又は
    レシチンの少なくとも1つからなることを特徴とする請
    求項4の眼用懸濁液。
  6. 【請求項6】上記脂質状粒子は、グリコプロテイン、コ
    レストロール又はリン脂質の少なくとも1つからなるこ
    とを特徴とする請求項4の眼用懸濁液。
  7. 【請求項7】上記ムチン状粒子と脂質状粒子の最大部分
    の寸法が少なくとも0.5mmであることを特徴とする請求
    項4〜6のいずれか1項の眼用懸濁液。
  8. 【請求項8】眼に投与された状態においてムチン状粒子
    と脂質状粒子の最小部分の寸法が約0.4mm〜0.7mm以下で
    あることを特徴とする請求項7の眼用懸濁液。
  9. 【請求項9】上記ムチン状粒子と脂質状粒子は水性物質
    担体剤に懸濁されていることを特徴とする請求項4〜8
    のいずれか1項の眼用懸濁液。
  10. 【請求項10】上記水性物質の一部分はムチン状粒子の
    少なくとも一部分に含まれていることを特徴とする請求
    項9の眼用懸濁液。
  11. 【請求項11】上記水性物質はムチン状粒子内に封入さ
    れていることを特徴とする請求項10の眼用懸濁液。
  12. 【請求項12】上記ムチン状粒子と脂質状粒子は脂質状
    物質担体剤に懸濁されていることを特徴とする請求項4
    〜11のいづれか1項の眼用懸濁液。
  13. 【請求項13】上記水性物質を含んだムチン状粒子は脂
    質状物質担体剤に懸濁されていることを特徴とする請求
    項10の眼用懸濁液。
  14. 【請求項14】更に水性物質担体剤を含んでいることを
    特徴とする請求項13の眼用懸濁液。
  15. 【請求項15】上記ムチン状粒子は脂質状物質と水性物
    質の双方に懸濁されていることを特徴とする請求項13又
    は14の眼用懸濁液。
  16. 【請求項16】上記脂質状物質の少なくとも一部分がム
    チン状粒子に含まれていることを特徴とする請求項1〜
    15のいずれか1項の眼用懸濁液。
  17. 【請求項17】担体は、ムチン状粒子と、水性物質と、
    脂質物質のうちの少なくとも2つが懸濁されている液状
    担体であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1
    項の眼用懸濁液。
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