JP2853548B2 - 縦型石炭熱分解装置 - Google Patents

縦型石炭熱分解装置

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JP2853548B2
JP2853548B2 JP5348332A JP34833293A JP2853548B2 JP 2853548 B2 JP2853548 B2 JP 2853548B2 JP 5348332 A JP5348332 A JP 5348332A JP 34833293 A JP34833293 A JP 34833293A JP 2853548 B2 JP2853548 B2 JP 2853548B2
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武 古川
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、石炭を熱分解して熱分
解ガスの所望の成分ガスを選択的に回収するための石炭
の熱分解装置に関する。
【0002】
【従来の技術】石炭は、熱分解(乾留)により高カロリ
ーガスを含む種々のガスを発生する。例えばコークス炉
では、熱分解の進行に伴って石炭から発生する熱分解ガ
スの主成分は水分、タール、より高級な炭化水素(例え
ば、エタン、エチレン)、メタン、一酸化炭素、炭酸ガ
ス、水素へと変化する。
【0003】しかしながら、コークス炉においては、上
記成分ガスは全て同一の上昇管に集められるので、得ら
れるコークス炉ガスはこれらの成分ガスの混合物となっ
ている。そこで、例えば化学工業、半導体工業、食品工
業、石油精製等に利用され、今後はクリーンエネルギー
としての利用が期待されている高濃度水素ガスをこのコ
ークス炉ガスから得ようとすると、そのためのガス精製
設備が別途必要となる。
【0004】また、コークス炉ガスは製鉄所内の副生ガ
スの中で最もカロリーが高いが、その低位発熱量はせい
ぜい4,620kcal/Nm3 程度である。現在、製
鉄所内では、このようなコークス炉ガスを高炉ガス、転
炉ガス及び購入燃料ガスと組合せて各種の需要に応える
ようにしているが、今後の製鉄所内でのガス需要に対し
ては、それだけでは対応が困難であるとされており、よ
り高カロリーのガスが望まれている。
【0005】ところで、石炭資源の有効利用を背景とし
て、コークス炉ガスをより高カロリーのガスに転化すべ
く、これをメタン化する技術が提案されている(例え
ば、Q.Yuan及びB.K.Huang、「常圧下の
メタン化による都市ガスの製造」Proc.Pitts
burgh Coal Conf.VOL.6th、N
o.Vol.2,pp721−724,1989)。し
かしながら、このメタン化技術を実施する場合、コーク
ス炉に加えてメタン化反応装置をはじめとするガス変成
設備が必要となり、コスト高の原因となる。加えて、こ
のメタン化技術によると、得られたメタン化ガス中の二
酸化炭素濃度が非常に高いものとなる。従って、これを
実用化するためには、別途脱炭酸設備も必要である。
【0006】また、コークス炉への石炭装入から乾留が
終了するまでの所要時間の内、最初の55〜75%の時
間内に発生する炭化水素含有率の高い高カロリー成分ガ
スと、残りの45〜25%の時間内に発生する水素含有
率の高い成分ガスとを別々に回収する技術が特開昭57
−3882号公報に開示されている。しかしながら、コ
ークス炉では、炉壁付近と炉中心付近とでは乾留温度が
異なるため、炭化水素成分ガス中への水素の混入あるい
は水素中への炭化水素成分の混入が避けられず、目的と
する高カロリーガスや高濃度水素を得ることができな
い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、石炭を熱分解して、石炭から発生する熱分解ガスの
所望の成分ガスを付帯設備を必要とせず比較的簡単な構
成により選択的に回収するための石炭の熱分解装置を提
供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明者らは、
一般炭、改質炭等石炭の熱分解過程において、熱分解温
度によって発生するガスの成分が異なる点に着目した。
すなわち、一般に、石炭を熱分解すると、350〜40
0℃付近で石炭は熱軟化性を示し、コールタールやガス
液を発生する。450〜500℃付近では、石炭を構成
する高分子中の官能基や側鎖が分解してエチレン、エタ
ン等の比較的高級炭化水素、メタン、一酸化炭素、二酸
化炭素等を放出しながら固化による収縮現象を示す。さ
らに高温になると、芳香族縮合環周辺部の分解によって
水素を多く放出するようになり、700℃以上になると
熱分解ガスの主成分は水素となり、最終的に残留炭素が
生成する。
【0009】そこで、各熱分解温度において発生する成
分ガスをその発生温度領域において抽出すれば所望の成
分ガス(例えば、高カロリー成分ガス、高濃度水素ガ
ス)を選択的に得ることができる。本発明者らは、この
点につきさらに研究した結果、石炭の移送の容易さの観
点から石炭の熱分解装置として縦型装置を用い、その内
部を石炭が下降するにつれ熱分解が進行するように装置
上部から下方に向けて温度勾配を設け、所望の成分ガス
の発生温度に対応する熱分解区域からガス回収管等の回
収手段を介して該所望の成分ガスを選択的に回収するよ
うにした。加えて、装置下部に石炭の熱分解残渣のガス
化室を設け、ガス化により発生したガスを熱分解区域の
加熱用熱源として利用することとした。
【0010】すなわち、本発明によれば、石炭を熱分解
してその熱分解ガスの所望の成分ガスを選択的に回収す
るための石炭熱分解装置であって、縦型の石炭熱分解領
域と、該熱分解領域を上方から下方に向い石炭の熱分解
が進行するような温度勾配をもって各所望成分ガスの生
成温度に対応した温度に加熱してそれぞれの熱分解区域
に区画化するための手段と、各熱分解区域にそれぞれ設
けられ、各所望成分ガスを回収するための手段と、該熱
分解領域の下部に設けられ、石炭の熱分解残渣をガス化
して高温ガスを発生させるための手段を備え、該高温ガ
スを該熱分解領域の加熱に利用することを特徴とする縦
型石炭熱分解装置が提供される。
【0011】本発明の縦型石炭熱分解装置において、石
炭は重力によって熱分解領域を下降し、各熱分解区域で
その温度に応じた熱分解を受け、それぞれの熱分解生成
物をを発生する。そのうち所望の成分ガスは、回収手段
から選択的に回収される。熱分解領域から排出される熱
分解残渣は、ガス化室でガス化され、高温ガスとなって
各熱分解区域の加熱に利用される。
【0012】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の一実施例を説
明する。
【0013】図1は、本発明の一実施例に従う縦型熱分
解装置の概略縦断面図である。図1に示すように、本装
置10は、板状部材11からなる幅の狭い縦長中空直方
体(箱型)構造を有し、中央部に仕切り板12a及び1
2bにより直方体形状の石炭熱分解領域13が規定され
ている。石炭Cは、装置上部からホッパ1、供給ダンパ
2及び計量ホッパ3を介して装置10の熱分解領域13
内に供給される。石炭Cは、重力により熱分解領域13
内を下降するので、特別の移送装置は必要とせず、設備
費がそれだけ軽減される。
【0014】石炭熱分解領域13の回りの空間は、石炭
からその所望の熱分解成分ガスを得るために熱分解領域
13を重力により下降する石炭を所定の温度に加熱する
ための加熱領域14を規定している。この加熱領域14
は、板状部材15a〜15cにより縦方向に配設される
加熱室14a〜14dに分割されている。各加熱室14
a〜14dには、以後詳述する石炭の熱分解残渣をガス
化することによって発生する高温ガス(ガス化ガス)が
供給されて各加熱室14a〜14dに対応する熱分解領
域13をそれぞれ所定の温度に加熱する。この加熱によ
り熱分解領域13は、それぞれの加熱温度に対応した熱
分解区域13a〜13dに区画化される。熱分解区域1
3a〜13dが加熱される各温度によって、装置10の
上方から下方に向かい石炭の熱分解が進行するような温
度勾配が形成される。
【0015】各熱分解区域13a〜13dから各熱分解
生成物P1〜P4(例えば、P1:コールタール及びガ
ス液;P2:エチレン及びエタン;P3:メタン、一酸
化炭素及び二酸化炭素;P4:水素等)を選択的に回収
するように、ルーバー式ガス回収管16a〜16dがそ
れぞれの熱分解区域14a〜14dに縦方向に設けられ
ている。回収管16a〜16dはルーバー式であるの
で、熱分解領域13を下降する石炭Cにより閉塞を受け
ることなく、各分解生成物を効率よく連続的に回収する
ことができる。
【0016】熱分解装置10の下部には、石炭の熱分解
残渣をガス化して高温のガス化ガスを発生させるための
ガス化室20が一体的に設けられている。ガス化室20
は、石炭の熱分解残渣を熱分解装置10から排出するた
めのダンパ17を介して石炭の熱分解領域13と連通し
ている。
【0017】装置10外部には、石炭の熱分解残渣をガ
ス化するためのガス化剤を発生させるガス化剤発生装置
30が設けられている。このガス化剤発生装置30に
は、酸素、水及び空気がそれぞれラインL5〜L7を介
して供給される。空気は、ラインL4を通じて導入され
たガス化ガスを燃焼させるものである。この燃焼熱によ
り酸素と水(水蒸気)を加熱する。こうして生成した水
蒸気と酸素との混合物からなるガス化剤は、ラインL
8、L9を介してガス化室20内の熱分解残渣CRに供
給される。ガス化室20内の熱分解残渣CRは、ガス化
剤によりガス化され、高温のガス化ガスとなってガス化
室20のガス排出口20aからサイクロン21を通り、
相隣る加熱室のガス出口と入口を外部で連結するライン
L3〜L1を介して各加熱室14d〜14aを出入し熱
分解区域13a〜13bを所定の温度に加熱する。しか
る後、ガス化ガスは、一部は系外へ排出されるが、上に
述べたように、残りはラインL4を介してガス化剤発生
装置30に導入され、空気により燃焼され、その燃焼熱
を水の水蒸気化及び酸素の予熱用熱源として利用した
後、燃焼排ガスは、ラインL10を介して系外へ排出さ
れる。
【0018】ガス化室20のガス化残渣である灰分AS
は、灰分排出口20bから移送手段31を経て排出機3
2に収容され、そこから収容器33に排出される。
【0019】さて、ガス化室20内で逐次発生するガス
化ガスは、800〜900℃の高温ガスである。これを
上記のように各加熱室14d〜14aに下側から順に導
入することによって各加熱室14d〜14aが高温から
低温の温度に保持され、対応する熱分解区域13d〜1
3aがそれぞれの温度に加熱される。例えば、熱分解区
域13a〜13dは、温度勾配をもって250℃から8
00℃に渡る温度に設定することができる。より具体的
には、熱分解区域13aを250〜400℃に設定して
コールタールとガス液(P1)を回収管16aから回収
し、熱分解区域13bを450℃の温度に設定してエチ
レン及びエタンを主成分とする高カロリー成分ガス(P
2)を回収管16bから回収し、熱分解区域13cを5
00℃の温度に設定してメタンを主成分とし、一酸化炭
素及び二酸化炭素との混合ガスからなる高カロリー成分
ガス(P3)を回収管16cから回収し、熱分解区域1
3dを700℃〜800℃に設定して水素を主成分とす
る成分ガス(P4)を回収管16dから回収することが
できる。
【0020】装置10内の石炭Cの移動速度は、各熱分
解区域13a〜13dにおいて各熱分解生成物の発生が
充分に終了するように石炭Cが各熱分解区域13a〜1
3d内に滞留できるような速度であることが望ましい。
このような速度は、例えば、供給ダンパ2と排出ダンパ
17の開閉制御により石炭を少量づつ定量的に装置10
内に供給すること及び/または熱分解領域13の長さを
調節することによって達成することができる。
【0021】なお、本発明において使用される石炭に特
に制限はなく、泥炭、褐炭、亜瀝青炭、瀝青炭等を使用
可能であるが、熱分解ガス収率を高めるために揮発分の
多い褐炭等が好ましい。また、タールにより膨潤・固化
処理された改質炭を使用してもよい。その場合、熱分解
ガスが多量に得られるという利点がある。
【0022】以下、本発明の熱分解装置を用いて石炭を
熱分解し、熱分解成分ガスを回収した実験例を記載す
る。
【0023】実験例 図1に示す熱分解装置10を使用し、熱分解区域13a
を250〜400℃に設定し、熱分解区域13bを45
0℃の温度に設定し、熱分解区域13cを500℃の温
度に設定し、熱分解区域13dを700〜800℃の温
度に設定した。
【0024】オプチマム炭(水分6.2%、灰分10.
4%、揮発分33.3%、固定炭素56.3%)を約3
0.5kg/時の割合で装置10内に供給した。
【0025】石炭Cが250〜400℃の熱分解区域1
3aを約10時間かけて下降する間に、コールタール及
びガス液がそれぞれ約3.00kg/時及び3.10k
g/時の割合で回収され、次に450℃の熱分解区域1
3b内を約3時間かけて下降する間にエチレン約0.2
6kg/時及びエタン約0.28kg/時を主成分とす
る高カロリーガスが回収された。続いて、500℃の熱
分解区域13c内を約8時間かけて移動する間に、メタ
ン約1.62kg/時、一酸化炭素約0.30kg/時
及び二酸化炭素約0.45kg/時を主成分とする高カ
ロリーガスが回収され、さらに700〜800℃の熱分
解区域13d内を3時間かけて移動する間に水素約0.
11kg/時を主成分とするガスが回収された。熱分解
残渣は、ガス化室20内に導入され、酸素及び水蒸気か
らなるガス化剤によりガス化され、800〜900℃の
高温ガス約56.4kg/時を得た。灰分は、約1.4
6kg/時であった。なお、ガス化室20内で発生され
た高温ガスは、熱分解区域13d〜13aを上記各温度
に加熱するために使用した後、その一部をガス化剤発生
装置30の加熱用燃料ガスとして使用した。なお、本装
置を長時間連続使用しても、石炭による回収管16a〜
16dの閉塞は生じなかった。
【0026】以上の実験結果の一部を下記表1に示す。
【0027】
【表1】 なお、コークス炉ガス及び前記「常圧下のメタン化によ
る都市ガスの製造」によるメタン化コークス炉ガスを上
記実施例において得られた高カロリー成分ガスと比較し
て下記表2に示す。
【0028】
【表2】 以上の結果からわかるように、本発明の装置を使用する
ことにより、格別の付帯設備を必要とせずに石炭の熱分
解のみによって、所望の熱分解成分ガスを選択的に回収
することができる。本発明によって得られた高カロリー
ガスは低位発熱量が高く(500℃の熱分解区域13c
から回収された成分ガスの低位発熱量約7,000kc
al/Nm3 以上、450℃の熱分解区域13bから回
収された成分ガスに至ってはその低位発熱量約13,1
00kcal/Nm3 )、また高濃度水素ガスも容易に
得られる。さらに、高カロリーガス中の二酸化炭素濃度
も低く、高カロリーガス中への水素ガスの混入も見られ
ない。
【0029】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、石
炭から発生する熱分解ガスの所望の成分ガス、例えば高
カロリーガス、水素ガスを付帯設備を必要とせず効率的
かつ選択的に回収できる石炭の熱分解装置が提供され
る。本発明の装置は、縦型であるため、石炭は、重力に
より熱分解領域内を移動(下降)するので、石炭の移送
のための特別の装置は不要である。また、各熱分解区域
からの熱分解生成物の回収をルーバー式回収管を用いて
行うことにより、石炭による回収管の閉塞を生じること
なく安定に連続して熱分解生成物を回収できる。さら
に、装置を幅の狭い箱型とすることによって、熱分解領
域の幅方向における温度をほぼ均一とすることができる
ので、熱分解領域の縦方向長さを長くするだけで装置の
スケールアップに対応できる。加えて、石炭の熱分解残
渣をガス化して発生する高温ガスを各熱分解区域の加熱
用熱源として使用しているので、燃料費等の操作費用も
低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の縦型石炭熱分解装置の一実施例を示す
概略縦断面図。
【符号の説明】
2…石炭供給ダンパ、13a〜13d…熱分解区域、1
4a〜14d…加熱室、16a〜16d…ルーバー式熱
分解生成物回収管、20…ガス化室、30…ガス化剤発
生装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅沼 稔 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭55−48289(JP,A) 特公 昭32−1327(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C10J 3/46 - 3/70 C10B 1/04 C10B 27/02 C10B 49/04 WPI/L(QUESTEL)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 石炭を熱分解してその熱分解ガスの所望
    の成分ガスを選択的に回収するための石炭熱分解装置で
    あって、縦型の石炭熱分解領域と、該熱分解領域を上方
    から下方に向い石炭の熱分解が進行するような温度勾配
    をもって各所望成分ガスの生成温度に対応した温度に加
    熱してそれぞれの分解区域に区画化するための手段と、
    各熱分解区域にそれぞれ設けられ、各所望成分ガスを回
    収するための手段と、該熱分解領域の下部に設けられ、
    石炭の熱分解残渣をガス化して高温ガスを発生させるた
    めの手段を備え、該高温ガスを該熱分解領域の加熱に利
    用し、加熱に利用した後の該高温ガスの少なくとも一部
    を燃焼させて発生させた燃焼熱を該石炭の熱分解残渣の
    ガス化に再利用することを特徴とする縦型石炭熱分解装
    置。
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